「K A R Y Y N」と一致するもの

Powell - ele-king

 先般、新たなプロジェクト「ƒolder」をスタートさせたばかりのパウウェルが、UKのオンライン・マガジン『The Quietus』の企画で、お気に入りの本を紹介している。遊び心と同時にコンセプチュアルな側面もあわせもつパウウェルであるが、やはり相当な読書家だったようだ。
 なんでも、もう一度音楽をつくりはじめるために、いったん音楽から離れる必要があったとのことで、ここ一年はレコードをほとんど聴かずに、ひたすら哲学や文学を渉猟していたという。「デリダを読むのは好きな音楽を聴くのに似ていて、脳がばらばらに引き裂かれる感じがする」「ドゥルーズはめっちゃ読んだよ。彼は音楽についても多く書いているしね」「ボードリヤールは読み込んできたわけじゃないけど、現実が死んでしまったという彼の考えは、パンデミックのいまこそあてはまる気がする」(意訳)などなど、1冊1冊についてその魅力を語っている。
 カフカやマンなどの小説、以前から好きだと公言していたクセナキスについての本、さらにはサメにかんする本までリストアップされているが(幼いころは海洋生物学者になりたかったらしい)、邦訳のある著作も多いので、気になった方は試しに手にとってみるのもいいかも。

■パウウェルのお気に入りの本

アレクサンダー・クルーゲ『Lernprozesse mit tödlichem Ausgang』
スーザン・ソンタグ『反解釈』&「沈黙の美学」(『ラディカルな意志のスタイルズ』)
ジャック・デリダ『ポジシオン』&『Artaud le Moma』
ジル・ドゥルーズ+クレール・パルネ「英米文学の優位について」(『ディアローグ』)
フランツ・カフカ『城』
スーザン・ケイシー『The Devil's Teeth』
ペーター・スローターダイク『Sphären I – Blasen』
トーマス・マン『ファウストゥス博士』
アルフィア・ナキプベコヴァ「Performing Nomos Alpha by Iannis Xenakis: Reflections on Interpretive Space」(『Exploring Xenakis: Performance, Practice, Philosophy』)
リナ・ボ・バルディ『Stones Against Diamonds』
デイヴィッド・シルヴェスター『フランシス・ベイコン・インタヴュー』
ジャン・ボードリヤール『完全犯罪』
J・H・ロニー兄「もう一つの世界」

記事全文はこちら
https://thequietus.com/articles/28803-powell-interview-favourite-books

Erasure - ele-king

 誰もが才能を認めるジャンルの開拓者であり、数多くのヒット曲を持っていながら、そのわりにはメディアの露出が少ないアーティストが世の中にはいるが、イレイジャーはその代表だろう。プライマル・スクリームやオアシスよりもヒット曲があるのに、メディアがあなたを彼らよりもシリアスに扱わないことをどう思いますかとThe Quetusの取材で訊かれたヴィンス・クラークは、「うーん、答えられないなぁ。そういうことはホントに気にならないんだ、あ、これが答え」と笑っている。余裕というのかナンというのか、自分が好きなことをやり続けてきた彼には、そこはホントに気にならないのだろう。

 もっとも、ヴィンス・クラークには確固たる評価がある。彼はシンセポップというジャンルを開拓したキーパーソンのひとりであり、まあ、マスターのひとりと言ってもいい、そしてなんと言ってもヒットメイカーである。イレイジャーとしてアバのカヴァー集を出しているように、ポップスは彼の永遠のテーマなのだろう。エレクトロニックであることと同時に。
 まずは歴史のおさらいからはじめたい。シンセポップは、70年代末から80年代初頭のUKポストパンク期に表出したスタイルのひとつで、当時はまだ珍しかったシンセサイザー・サウンドを前面に打ち出しながら、ポストパンク時代において“ポップス”を指標し、ニューウェイヴ時代のポップスを具現化したという点で、シーンにおける台風の目にもなった。ゲイリー・ニューマン、ウルトラヴォックス、OMD、ザ・ヒューマン・リーグ、へヴィン17、ブラマンジェ、ザ・ソフト・セルなどなど……、最初にクラークが所属したデペッシュ・モードもそのスタイルを代表するバンドで、デビュー時の彼らは少年の集まりのようにもっとも若く、そしてもっともポップだった。(※数年後に登場するペット・ショップ・ボーイズは最初からハイエナジーを意識した点において、初期シンセポップとはちょっと別モノ)
 その1stアルバム『Speak & Spell』(81)には当時の〈ミュート〉サウンドの魅力が集約されている。クラフトワーク的な最小限の音数による構成、ジョルジオ・モロダー流のシーケンスとDAF流のハンマービート、それらをシンプルなメロディと融合させ、サビのはっきりしたキャッチーな歌を載せる。ヴィンス・クラークはバンドの中核のひとりだったが、もうひとりの中心であるマーティン・ゴアの方向性と噛み合わず、アルバムは商業的に成功したがクラークはそのリリース後にバンドを脱退し、パワフルなヴォーカリスト、アリソン・モエットとのYazooを結成する。反資本主義や反レイシズムといった暗い社会的テーマを手掛けるようになっていくゴア主導のデペッシュ・モードに対して、クラークとモエットの『Upstairs At Eric's』(82)の光沢はシンセポップ・ミュージックの研磨にあり、ソウル・ミュージックとエレクトロニック・ダンスとの情熱的な激突にあった。それはハウス・ミュージックの青写真であり、シカゴ・ハウスやデトロイト・テクノをはじめ、電気グルーヴからハーキュリーズ&ザ・ラヴアフェアまで、あまりにも多くのエレクトロニック・ミュージシャンがその影響を受けている。
 また、この時期のクラークは巷のシンセポップ批判(機材に頼ってまともな曲が書けない、電子機材は生楽器より劣る等々)への反論とも受け取れるプロジェクト、The Assemblyなる名義でも1枚のシングルを出している。燃え上がる性愛のパンク・ソング“ティーンエンジ・キックス”を歌い、他方では「ママにシンセを買ってもらいやがって」(“My Perfect Cousin”)と、当時シンセポップに対にしてよくあった偏見──中産階級的なオタク性を罵倒したことでも有名なジ・アンダートーンズのヴォーカリスト、フィアガル・シャーキーを招いてのギター・ソング“Never Never”で、これもまたヒットしたのである。(サッチャー時代の底辺に生きる家族を描写したPVもいま見ると感慨深い)

 ヴィンス・クラークがアンディ・ベルといっしょにイレイジャーを結成するのは1985年のことだった。デペッシュ・モード~Yazoo~The Assemblyとすでに華々しい成功を収めていた彼は、新たなプロジェクトのための新しいヴォーカリストを探すべく音楽誌紙に求人広告を出し、そこに応募したのがアンディ・ベルだったのだ。ベルは、多くのゲイが自分のセクシャリティをまだ公には言えなかった80年代後半という時期にゲイであることを公言したポップスターのひとりになるが(2004年にはHIV検査で陽性であったことも公言している)、イレイジャーをはじめた頃はシンセポップの天才が見つけた、女性の靴売り場で働きながら売れないバンドをやっていた無名のヴォーカリストに過ぎなかった。
 が、その無名のヴォーカリストを擁したイレイジャーは最初のデビュー・シングルから連続3枚をチャートインさせると、その勢いのまま90年代初頭までに発表したシングルのほぼすべてをチャート入りさせた。当時日本で毎週放映していた「ビートUK」という英ポップチャート番組を観ていた人にはわかる話だが、イレイジャーは出せばとにかくヒットする存在だった。結局、このスーパー・シンセポップ・グループは、1988年の『The Innocents』から1994年の『I Say I Say I Say』までの4枚のアルバムを連続してUKチャート1位にさせ、デビューから現在までのあいだに25曲以上を40位内に入れ、2500万枚以上のアルバムを売ることになる。ベルのエモーソナルな歌と気取りのない、素朴でオネストな言葉で歌われる歌詞、そしてクラークのメロディアスなエレクトロニック・ポップ・サウンドはイギリスの大衆から大いに愛されたのである。

 というわけで、通算18枚目のアルバムが本作『ザ・ネオン』だ。ずっと聴き続けている律儀なファンには申し訳ないけれど、ぼくが聴いていたのはせいぜい『The Innocents』(88)、『Wild!』(89)、『Chorus』(91)、そして自分らのモットーをタイトルにしたかのようなベスト盤『Pop! - The First 20 Hits』(92)という彼らの最初の黄金期の作品で、それ以降はイレイジャーの世界から撤退している。もちろんそれ以降もイレイジャーは自分たちのペースでさらに25年以上も活動を続けていたわけで、ぼくが知らないスタジオ・アルバムを10枚以上も出している。21世紀に入ってからのアンディ・ベルのソロ活動もそれなりの話題になったけれど、日本盤のライナーによれば2013年のクリスマス・アルバム『スノー・グローブ』を契機にイレイジャーは再度注目を集め、2014年のアルバム『ザ・ヴァイオレット・フレイム』が10年ぶりにトップ20入りを果たすヒット作となったという。続く2017年の『ワールド・ビー・ゴーン』もヒットし、そして上昇気流に乗ってリリースされた3年ぶりの『ザ・ネオン』も現在快進撃を続けているようで、なんと現在(8/25)UKではザ・キラーズに続いて2位にまで登り詰めている。1994年の『I Say I Say I Say』以来のヒット作になりつつあるそうだ。

 『ザ・ネオン』の1曲目“Hey Now”は笑ってしまうほどヴィンス・クラークのサウンドだ。ぼくが聴いていた時代、第一期黄金時代を思い出さずにはいられないが、アナログ・シンセサイザー特有のじつに快楽的なサウンドの反復とシンプルなメロディライン、そしてアンディ・ベルのソウルフルな歌は、コロナ禍で疲れた心を励ますかのように響いたりもする。
 そう、コロナ前に作ったことがこれほどアドヴァンテージとなっている作品も珍しいかもしれない。ぶっちゃけ、威勢がいいのだ。暗い時代に前向きな歌詞、気持ちを愉快にさせる疾走感、シンセポップならでは絶妙な軽快さ(ポップさ)。2曲目の“Nerves of Steel”もクラークのソングライティングが光っているキラーな曲で、これまた彼らの黄金時代にリンクしている。いかにも80年代風の“Fallen Angel”も新鮮に響いてしまう。最後に収録された“Kid You're Not Alone”もイレイジャーらしい叙情性を持った感動的なポップ・ソングである。

 『ザ・ネオン』にはナンの迷いもケレンもなく、これぞシンセポップと言わんばかりの、快適でキャッチーな楽曲がたくさん収録されている。結成から今年で35年目というが、イレイジャーはいまのところは、そしておそらくこれからもいきなり新機軸を打ち出したり、新境地を開くことはないだろう。だからといって時代に逆行しているわけではない。シンセポップはいま旬である(ジェシー・ランザやマリー・ダヴィッドソンとか、グライムスやケイトNVとか、シンディとか、パソコン音楽クラブとか電気グルーヴとか……)。

 つまり、ノスタルジックだがタイムリーでもある。それは、彼らが作り上げたスタイルが21世紀でも充分に通用するという話ではない。彼らのポップスが、いま忘れがちな感覚を呼び起こしているように思えるのだ。それはやはり、彼らの音楽に通底するオプティミズムだろう。なにせナイト・ライフに自粛が強いられているこのときに「夜のネオン」がコンセプトである。
 意図したことではなかったとはいえ、オプティミズムを失い、意気消沈しているこの世界において、シンセポップのリジェンドによるこの原点回帰作は、ちょっと良い感じのシェルターとなっているのだ。ぼくも2020年に、よりによってイレイジャーをこんなにも楽しく聴くとは思ってもいなかった(笑)。

電気グルーヴ - ele-king

 ウィー・アー・バック宣言から2ヶ月、電気グルーヴ、ついに完全復活である!
 2019年3月のピエール瀧の逮捕を受け、一時は全作品が出荷停止~配信停止状態になっていた電気グルーヴであるが、去る23日、コロナの影響で開催が延期されたフジロックの配信番組において新曲 “Set you Free” のMVが公開され、昨日、配信も開始となった。
 新たなマネジメント会社「macht inc.」を設立してから初となるリリースで、シングルとしては2018年1月の「MAN HUMAN」以来2年半ぶり、アルバムを含めると2019年1月の『30』以来1年半ぶりのリリースとなる。作詞・作曲・プロデュースを石野卓球が、アディショナル・プロダクションを agraph が担当。
 驚くべきは、アンビエント・タッチのハウスが描くこの暗い時代におけるこのポジティヴなヴァイブだが、「おまえを自由にする」というメッセージの込められたタイトル、そしてその「Set you Free」と「先住民」をかけることば遊びなど、相変わらずというか、表現にもますます磨きがかかっている。
 ここまで来たらもう電気が止まることはないでしょう。まずはこの曲を耳にぶち込んで、卓球&瀧の新たな船出を大いに祝福しよう(配信はこちらから)。

電気グルーヴ、2年半振りのシングル「Set you Free」配信開始

電気グルーヴの新曲「Set you Free」が、8月24日より各配信ストア及びサブスクリプションサービスでリリースされた。

https://linkco.re/DY8tPG5n

同楽曲は、8/23に行われた「FUJI ROCK FESTIVAL'20 LIVE ON YOUTUBE(DAY3)」内でMUSIC VIDEOと共に初公開されたもの。
シングルとしては、「MAN HUMAN」(2018年1月)以来、約2年半振りとなる。

作詞・作曲・プロデュースは石野卓球、ギターを吉田サトシ、アディショナルプロダクションを牛尾憲輔(agraph)が手掛け、ミックスは石野卓球と兼重哲哉、マスタリングは兼重哲哉が担当。

ジャケットはMUSIC VIDEOと同じく、田中秀幸(FRAME GRAPHICS)が手掛けた。

尚、「Set you Free(Video Edit)」MUSIC VIDEOは、「FUJI ROCK FESTIVAL’20 LIVE ON YOUTUBE DAY3(リピート放送)」(8/24(月)07:00から)で配信される。
FUJI ROCK FESTIVAL チャンネル → https://www.youtube.com/fujirockfestival

[“Set you Free”クレジット]
Denki Groove are Takkyu Ishino and Pierre Taki
Produced by Takkyu Ishino
Lyric and Music by Takkyu Ishino
Guitar : Satoshi Yoshida
Additional Productions : Kensuke Ushio(agraph)
Recorded at Takkyu Studio, STUDIO Somewhere
Mixed by Takkyu Ishino, Tetsuya Kaneshige
Mastered by Tetsuya Kaneshige
Designed by Hideyuki Tanaka(Frame Graphics)

[電気グルーヴ プロフィール]
1989年、石野卓球とピエール瀧らが中心となり結成。1991年、アルバム『FLASHPAPA』でメジャーデビュー。1995年頃より、海外でも精力的に活動を開始。2001年、石野卓球主宰の国内最大級屋内ダンスフェスティバル“WIRE01”のステージを最後に活動休止。それぞれのソロ活動を経て、2004年に活動を再開。以後、継続的に作品のリリースやライブを行う。2015年、これまでの活動を総括したドキュメンタリームービー「DENKI GROOVE THE MOVIE?-石野卓球とピエール瀧-」(監督・大根仁)を公
開。
2016年、20周年となるFUJI ROCK FESTIVAL’16のGREEN STAGEにクロージングアクトとして出演。2019年、結成30周年を迎えた。


Bruno Major - ele-king

 コロナ禍によってミュージシャンの活動もいろいろ制限を受け、それによって音楽制作や表現方法も変わらざるをえない部分がある。ロックダウン下にあるときはスタジオに行くこともできないし、人と会うこともままならないので、自宅にスタジオがある人はひたすらそこに籠ってひとりで曲を作る。ブルーノ・メジャーのセカンド・アルバム『トゥ・レット・ア・グッド・シング・ダイ(素敵なことを終わらせるために)』の1曲目の “オールド・ソウル” は、恋人と別れた直後に自己憐憫の情から3週間も家にこもり、一日3食すべてウーバーイーツで済ませるときのための曲ということだが、図らずもコロナの状況下にとてもマッチする内省的な曲である。この曲に限らず『トゥ・レット・ア・グッド・シング・ダイ』に収められた曲はどれも内向きで、またギターやピアノの弾き語りなどシンプルな演奏に乗せて切々と飾り気のない心情を吐露していくものが多い。もちろんラヴ・ソングとかもあるけれど、もっとシリアスに自分の内面に向き合い、己の存在について問いかけているのが『トゥ・レット・ア・グッド・シング・ダイ』である。こうしたアプローチもコロナの状況下ならではかもしれない。

 ジェイムズ・ブレイク、サム・スミス、サンファトム・ミッシュなど、ここ10年ほどを振り返ってもイギリスは優れた男性シンガー・ソングライターを生み出してきた。そしていま、その新たな1ページに付け加えられようとしているのがブルーノ・メジャーである。かつて〈ヴァージン〉とレコード契約を結ぶもののうまくいかず、不遇を囲うなかでシェイクスピアの劇中音楽を作るなど、とにかく曲を書きまくった。2016年からの2年間で400ほどの曲を書いたそうだが、そうやって2018年にファースト・アルバムの『ア・ソング・フォー・エヴリー・ムーン』を発表する。部分的にはトム・ミッシュ、ジェイムズ・ブレイク、サム・スミスなどに通じるところも感じさせるというのが世間一般の評価だが、もっとも近いと感じさせるのは伝説的なシンガー・ソングライターの故ニック・ドレイクだろうか。『ア・ソング・フォー・エヴリー・ムーン』から2年ぶりの『トゥ・レット・ア・グッド・シング・ダイ』でも、ギターの弾き語りに薄っすらとストリングスを絡めた “フィグメント・オブ・マインド” などにニック・ドレイクの影を見ることができる。実際のところニック・ドレイクの『ピンク・ムーン』を聴いてブルーノはソングライターになろうと思ったそうだ。

 『トゥ・レット・ア・グッド・シング・ダイ』の制作はロサンゼルスに赴き、ビリー・アイリッシュの兄でもあるプロデューサーのフィネアス・オコネルとの共同作業で行なわれた。フィネアスが主にリズム・トラックを手掛け、“ザ・モスト・ビューティフル・シング” のようなカントリー調の曲を生み出している。アコースティック・サウンドと歌とリズムのバランスという点では、“タペストリー” に顕著なようにジェイムズ・ブレイクのプロダクションに影響を受けた曲作りも見られる。でもそれだけでなく、シンガーとしてはチェット・ベイカーやエラ・フィッツジェラルドから、ギターはジョー・パスからとジャズ・ミュージシャンからも影響を受けている。アマチュア時代はジェローム・カーンやコール・ポーターら往年のジャズの作曲家をいろいろ研究し、それを現代風に再構築して SoundCloud にアップするということもやっていた。今回のアルバムでは “リージェント・パーク” がまさにそうした作りの曲で、歌い方もチェット・ベイカー風である。プーマ・ブルーやジェイミー・アイザックなど、いまのサウス・ロンドンのアーティストはチェット・ベイカーの影響を受けている人が多いのだが、“オールド・ファッションド” のレトロで枯れた味わいもまさにそんな感じである。

 ブルーノはほかにもランディ・ニューマン、ビリー・ジョエル、ポール・サイモンからの影響を口にしていて、今回はランディ・ニューマンの “シー・チューズ・ミー” をカヴァーしている。2017年発表のアルバム『ダーク・マター』に収録された曲のカヴァーで、本家ランディのスタンダードなアレンジをモダンに換骨奪胎したユニークなものだ。レトロさと現代性をうまく融合させて新しいものを作るという点では、FKJ あたりとも比較されるべき才能を持っている。『トゥ・レット・ア・グッド・シング・ダイ』に関するインタヴューでブルーノは、「マーティン・スコセッシ監督の映画『ディパーテッド』の冒頭で、ジャック・ニコルソンの “I don't want to be a product of my environment. I want my environment to be a product of me” (俺は環境に左右されたくない。環境を俺の手で生み出したいんだ)という台詞がある。まさに真理とも言える言葉で、ひとつの音楽だけでなく、自分が影響を受けてきたすべてのものをインスピレーションにしながら、自分自身の環境、音楽を作り出すことが大事だと思うんだ」と述べている。ジャズ・スタンダードや古典的なポピュラー・ソングなどベーシックな作曲方法を土台とした上で、いろいろな影響を糧に自身の歌や声を編み出していく、そんな彼らしい発言だ。レトロななかにもモダンな佇まいを感じさせる、そんなタイムレスさがブルーノ・メジャーの音楽にはある。

Bibio - ele-king

 歳のせいか、音楽を聴いて涙を流すなんてことはめっきり減ってしまったけれど、いまでも年に一度くらいはそういう瞬間が訪れる。2019年でいえばそれは、ビビオの “Lovers Carving” を聴いたときだった。
 同曲を収める「WXAXRXP Session」は〈Warp〉の設立30周年を祝うべく録音された企画盤で、いわゆるアコースティックな形式でヴォーカルを際立たせつつ(おもに)10年前の『Ambivalence Avenue』収録曲を再演するという内容だったわけだけど、なかでも “Lovers Carving” に惹きつけられてしまったのは、たぶん、大胆にアイリッシュ・トラッドへと舵を切ることで新境地を開拓し(ながら、従来の彼のフォーキーな側面が好きなファンにもアピールし)た、その時点でのビビオの最新型である『Ribbons』のスタイルが接ぎ木されていたからだと思う。
 もちろん、感傷や懐古がなかったといえば嘘になる。でもそれだけじゃない。生まれ変わった “Lovers Carving” は、ある楽曲がまったく異なる姿へと変身しうることの素朴な驚きを呈示してもいたし、また、ノスタルジーをこそ主武装とするアーティストが自己言及を試みることの意味について考える、そのきっかけを与えてくれてもいた。いまビビオは、そして、自己言及に自己言及を重ねがけしている。新作『Sleep On The Wing』収録の “Oakmoss” において彼は、2019年版 “Lovers Carving” で接ぎ木したパートの旋律を移調し、再利用しているのである。

 計30分未満とトータル・ランニング・タイムが短いためだろう、EP扱いしているサイトもちょいちょい見かけるが、レーベルの品番的にはアルバムであるところのこの『Sleep On The Wing』は、『Ribbons』とおなじ遺伝子を有する作品である。たとえば『Ribbons』を特徴づける要素のひとつであったバッハ~バロックからの影響は、本作においても “A Couple Swim” や “Awpockes” といった楽曲から聴きとることができる(前者はもともと、ジブリも一枚噛んだ2016年のアニメ映画『レッドタートル ある島の物語』のために提供された曲)。あるいは、おなじく前作を際立たせる要素のひとつであったヴァイオリンも、くだんの “Oakmoss” や表題曲 “Sleep On The Wing” で大いに活躍の場を与えられているわけだが、こと弦にかんして注目すべきは “The Milkyway Over Ratlinghope” と “Watching Thus, The Heron Is All Pool” の2曲だろう。まるでチェロのような響きを聞かせるその低音は、18世紀のヴァイオリンをもとにビビオ当人が独自の改造を施したヴィオラによって奏でられており、その創意工夫が清冽なメロディと合流することですばらしい情感を生み出している。

 他方、軽快なハンドクラップがダンスへの欲動をかきたてるジグ “Miss Blennerhassett” からはビビオの民俗的なものにたいする関心がうかがえるし(曲名は映画『ウィズネイルと僕』の登場人物に由来)、冒頭から唐突にキャッチーなベースラインをぶちこんでくる異色の “Crocus” は、絶妙な音響上の「揺れ」を強調することで彼の飽くなき実験精神を伝えてくれてもいる。そういった「現在」のビビオの冒険心を体現するアプローチとともに、フィールド・レコーディングを駆使した “Lightspout Hollow” や “Otter Shadows” によくあらわれているような、初期ビビオを想起させる独特のテープの触感も本作の聴きどころだろう。

 彼があえて古い機材を利用したり音質を劣化させたりするのは、ある特定の過去の時代──それは往々にして「あのころは良かった」という根拠なき感慨を人びとに与える──を思い出させるためではないと、ビビオ本人は最新インタヴューで力説している。彼が音を歪ませ、濁らせ、粗く処理するのはずばり、クリーンさを除去するためなのだ。おなじくボーズ・オブ・カナダのフォロワーであるタイコとは正反対のアプローチと言えるが、それはたとえば再開発に代表されるような、過剰なまでの潔癖主義にたいするささやかな反抗であると、そう考えることも可能だろう。
 おなじインタヴューのなかで彼は、興味深い事例を語ってくれている。〈Warp〉と契約する以前、大学で音楽のテクノロジーについて教えていた彼は、単純なギターのループを録音したデモを用意し、それをカセットに入れてふたたび録音、さらにそれをカセットに入れて録音するというプロセスを何度も繰り返した。その各段階の音を学生たちに聞かせたところ、ほとんど全員がもっとも損傷の激しい録音を好んだという。
 この実験は、何度も何度も傷つき、ぼろぼろになっていくことのポジティヴな可能性を示唆している。いうなれば劣化することの肯定であり、汚れていくことの称揚である。ここに “Lovers Carving” から “Oakmoss” へと至る、自己言及の重ねがけが結びつく。どんなかたちだっていい、過去に耽溺するのではなく変わっていくこと、変化することそれじたいをビビオのノスタルジーは肯定しているのだ。そのあまりに力強い肯定の連鎖に、わたしたちは涙を流してしまうのだろう。

Matmos - ele-king

 相変わらず感覚が尖っているというか……。ドリュー・ダニエルのほうはこの春クラストコアのカヴァー集を公開したばかりであるが、ふたり揃ったマトモスとしての新作『The Consuming Flame: Open Exercises In Group Form』が本日8月21日、〈Thrill Jockey〉よりリリースされている。なんとCD3枚組で、そしてなんと99人ものゲストが参加しているからおそろしい。
 マシュー・ハーバートダニエル・ロパティンマウス・オン・マーズ、ラビット、ジャイアント・スワン、ヨ・ラ・テンゴといった強力な面々が集結しているが、なかでも注目すべきは、2020年の音楽の台風の目とも呼ぶべきディフォレスト・ブラウン・ジュニア(スピーカー・ミュージック)の参加だろう。やはりマトモスのふたりはしっかりとした審美眼を持っているようだ。
 なお、かれらゲストたちには「なにをやってもいいが、BPMは99であること」という条件が課せられている。各々がどのように応答しているのか、注目である。

公式サイト
https://thrilljockey.com/products/the-consuming-flame-open-exercises-in-group-form
バンドキャンプ
https://matmos.bandcamp.com/album/the-consuming-flame-open-exercises-in-group-form

Félicia, Akira, Takuma - ele-king

 なんでもイギリスではコロナ禍ではクラシック音楽が売れているそうで、ま、家にいる時間の多いいま楽しめるのは「家聴き」ということなのでしょうか。
 渡邊琢磨の新プロジェクトによる作品が素晴らしい。これは、彼が音楽を手掛けた映画『まだここにいる』(染谷将太監督、脚本・菊地凛子)のサウンドトラックを素材に再構築(recomposed)した曲からなる新作で、アキラ・ラブレーとアンビエント・ミュージシャンのフェリシア・アトキンソンとの共作でもある。
 ロバート・アシュレー風の声とピアノを美しいアンビエントに変換する“The Rain”やイーノ風アンビエントの最良なところを拡張した“その時間にかけ橋が生まれる”、ミニマル/ドローンの美的世界“Particle”、情感たっぷりの“まだここにいる”の4曲。アンビエント好きにはhighly recommendです。

渡邊琢磨 / Akira Rabelais / Félicia Atkinson
『まだここにいる』original soundtrack recomposed
Inpartmaint Inc.
※デジタル配信でのリリース

【渡邊琢磨】
宮城県仙台市出身。高校卒業後、米バークリー音楽大学へ留学。大学中退後ニューヨー クに渡り、キップ・ハンラハンと共同作業でレコーディングを行う。同作には映像作 家ジョナス・メカスらが参加。04 年、内田也哉子、鈴木正人らとバンド [sigh boat] を結成。07 年、デヴィッド・シルヴィアンのワールドツアー 18 カ国 30 公演 に バ ン ド メ ン バ ー と し て 参 加。楽 曲「The World Is Everything( ア ル バ ム 『Sleepwalkers』収録曲 ) を共作。14 年、自身が主宰する弦楽アンサンブルを結成。 自身の活動と並行して映画音楽も手がける。近年では、冨永昌敬監督『ローリング』 (15)、吉田大八監督『美しい星』(17)、染谷将太監督『ブランク』(18)、ヤングポー ル監督『ゴーストマスター』(19)、ほか。

【Akira Rabelais】(アキラ・ラブレー)
米テキサス南部生まれ、ロサンゼルス在住の作曲家 / ソフトウェア設計者 / 作家。 ビル・ディクソンに作曲、電子音楽および編曲を学び、カリフォルニア芸術大学では 電子音楽のリーダーであるモートン・スボトニックおよびトム・エルベに師事。音や 映像を歪めたりノイズを加えることができる自作のソフトウェア『Argeïphontes Lyre』を制作。アキラ・ラブレーはソフトウェアを書くことを詩を書くことになぞっ ており、例えば数あるフィルターを「形骸化蘇生法」「ダイナミック FM 音源」「時間 領域変異」「ロブスター・カドリール」など独特な言葉で綴っている。彼の作り出し たものは、数学の持つ完璧な美しさと言葉の情緒を以て、私たちを別次元へと誘う。

【Félicia Atkinson】(フェリシア・アトキンソン)
1981 年フランス生まれ。レンヌ在住。2008 年、エコール・デ・ボザールで MFA (Master of Fine Arts With honors) を取得し、パフォーミング・アートの可能性を 探求するボリス・シャルマッツと共に人類学およびコンテンポラリーダンスを研究。 彼女の作品はインスタレーション、彫刻、詩、絵画、ドローイング、パフォーマンス、 音楽など多岐に渡り、数多くレコード・リリースやライブ上演、世界各地の実験音楽 シーンやアートフェアへの参加など、国際的な活動を行っている。フランスを拠点と するインディペンデント出版レーベル・Shelter Press にて、バルトロメ・サンソン と共に共同発行人を務める。

the perfect me - ele-king

 ポップスというものの面白い一面に、構築的に作り込めば作り込むほどに、その音楽の表面部が研磨されていき、総体としてのフック(のようなもの)が後景に遠のいてしまうというのがある。こういう抽象的な言い方でピンとこないなら、例えば(特に『Aja』以降の)スティーリー・ダンの音楽について考えてもらうとわかりやすいかもしれない。ハーモニー、メロディー、リズム……それらの綿密な配置を司ろうとする「偏執的作家性」のようなものは、通常それが意識的な聴取によって発見されるまでは、「スムース」で「ポップ」な印象の中に大人しげに匿われることになる。もちろんスティーリー・ダンのふたりは、そのあたりのメカニズムにも通じているがゆえ、ハッとするほどに反構築(脱構築ではない)的な音の引き算をおこなったり、ときに異様ともおもえるほどあからさまに(それこそが彼らのルーツにジャズがあることを教えてくれるのだが)、個々の奏者の極めて一回的で火花散るようなプレイを焚べたりして、その「スムース&ポップ」を内側から壊そうとしもしたのだが。

 福岡を拠点に活動する若きミュージシャン/エンジニア Takumi Nishimura によるユニット the perfect me のセカンド・アルバム『Thus spoke gentle machine』は、彼にとっての初のソロ編成作品でもあり、その幅広い音楽性を思うさま開陳したような快作だ。ユニット名の由来は、かつて来日公演時にサポート・アクトを努めたことのある米バンド Deerhoof の曲名から。その Deerhoof をはじめとしたアヴァンなUSインディ・ロック系アクトや、その少し前の時代に全盛を迎えたポストロック系バンド、あるいはそのもっと前のオルタナ系バンドやニューウェーヴ/ポストロック、さらにはクラウトロックまでをもぐるりと視界に収めようとする折り目正しい内容は、それだけで既に、熱心なインディ・ミュージック・ファンを唸らせるに十分なものだろう。
 ステレオラブ、ハイ・ラマズ、トータス、コーネリアス、トクマルシューゴ、ロバート・ワイアット、吉村弘、10cc、ビーチボーイズ、ビートルズ、ヴァン・ダイク・パークス、ベック、ヴァニラ・ファッジ、初期ディープ・パープル、toe、ダフト・パンク、ウルフペック、ルイス・コール……各曲を聞きながら去来する様々な固有名詞が寄せては消える様は、この作品が確実に真摯な音楽愛好家によって仕立て上げられた音楽愛好家のための音楽であることを告げているが、どうやらそういう「いろいろな音楽の繚乱」を嬉しがるだけの評価に押し込めることのできない特異な煌めきがあるようだ。わかりやすく言うなら、単なる「優れた編集センス」の向こう側、というか……。

 それを読み解く鍵こそはおそらく、彼がフェイヴァリットとして上げているスティーリー・ダンの手法に通じる何かなのではないだろうか。実際、M2. “two colors expressway (album ver)” や、M14. “drive in the basement car park” は、その複雑な和音進行や構成、フレーズ的な類似からしても、かなりスティーリー・ダンっぽいともいえる。昨今、AOR風の意匠を纏うサウンドは溢れ尽くしているわけだが、スティーリー・ダンという高難度のそれに挑戦するという時点で奇特だといっていい(世界を見回せば決して珍しいというわけではないが、満足の行く習熟度で取り入れている例となるとかなり稀に思う)。
 そうしたスティーリー・ダンへの顕示的な類似にもまして感じ取りたいのは、冒頭に述べたような、構築的な手法を追求することで自然と立ち現れてしまう「ポップ&スムース」なテクスチャーに対してどうやら Perfect Me はかなり自覚的な「内部からの攻撃」を仕掛けているふうだ、ということだ。
 まずそれは、(まさにスティーリー・ダンがそうだったように)上述2曲風の曲における個々の演奏へのクローズアップに見出すことが可能だろう。ゲスト参加した Sohei Okamoto によるディーン・パークスやデヴィッド・スピノザがごときギターソロは、あきらかにこの「品の良いオルタナ風の」アルバムの中では(すごく良い意味で)浮きまくっているし、また、曲ごとに加わる白根賢一(GREAT 3, manmancers)、高桑圭(Curly Giraffe)という手練のリズム隊の「熱い」プレイにも、そういう「内部からの攻撃」を嗅ぎ取ることができるだろう。もしかすると、こうしたオルタナティヴ経由のプレイアビリティの表出を指して、コンテンポラリーなジャズとの共振を感じとることもできるかもしれない。

 さて、このアルバムを「スムース&ポップ」の淵へ落とさせないもうひとつの重要な要素がなにかと問われるなら、ずばり、このアルバムの中盤部、特にM5~8へと向けて展開される「ロック」的意匠の奔出にあるのではないだろうか、と応えたい。事実、私が最も楽しんだのがこのパートで、かなり大胆なUKロック的要素(あえて具体名を出すなら、ザ・ストーン・ローゼズとか、ブラーとか)を感じたのである。私見混じりになってしまうが、こうした要素を、先のスティーリー・ダン的メロウネスや甘やかなチェンバー・ポップ~アヴァン・ポップ的な要素と同居させた例を寡聞にして他にしらなく、新世代の屈託のなさだね、といい切ってしまうのを留まらせる鈍色の異様さを放っているように思えた。わかりやすく言うなら、これらはいまもっとも「スムース&ポップ」という感触から遠いものなのではないか?
 スリージーなギター・サウンドやブルージー(とあえていわせてほしい)な歌唱が収まりの悪そうに(繰り返すが、それがなにより素晴らしい)アルバムの中腹部にその腰をデンと下ろす時、いきなりロックという重心点が「オルタナティヴ」という地平線の向こう側から突然現れ、他の「スムース&ポップ」的安寧をグリグリと揺るがしてくるようなのだ。

 そういえば、スティーリー・ダンをAORと評すると怒り出す人がいるらしいけれど、たしかに、仮に本作を「聞き心地の良いオルタナ風アヴァン・ポップ」とか形容している人を見つけたら、私も軽く憤ってしまうかもしれない。一見「よくできた」「心地よい」音楽は、肌を優しく撫でるようにみえて、そこに隠された棘がしたたかに痛点をついてくることもある。

Marie Davidson - ele-king

 君はマリー・デヴィッドソンを憶えているかい? そう、2018年に『Working Class Woman』(w.ele-king.net/review/album/006626/)なるシニカルでユーモラスで挑発的なダンス・アルバムによって世界を笑って踊らせたカナダのプロデューサーのことです。
 彼女がPierre Guerinea(DFAからの作品で知られる)とAsaël Robitaille(Orange Milkからの作品で知られる)の2人と組んだ新プロジェクト、Marie Davidson & L’Œil Nuのアルバムが出ます。
 まずはリリック・ヴィデオ。

 「このレコードはカネを生まない/負け組の見解を調査中/用語なんか気にしない/これは反逆の故障/あなたのアドヴァイスなんか要らない/あなたの政治的アジェンダになんか興味ない/あなたの意図は株式市場のように変動/あなたのスタイル、計算されすぎ」……
 前作はクラブ・ミュージックであることが通底していたけれど、今回のアルバムはハウスやシンセポップはもちろんだが、ギター・ポップからフレンチ・ポップ、はたまたバロック音楽までとヴァラエティーに富み、ポップ作品としての完成度がそうとうに高い。やっぱこの人、才能あるなー。


※Marie Davidson & L’Œil Nuの『Renegade Breakdown』は〈Ninja Tune/ビート〉より9月25日発売

Sufjan Stevens - ele-king

 コロナ禍で経済が落ち込んでいるなか、巷の噂ではゲーム業界は調子良さそうじゃないですか。昔エレキング編集部にいた橋元優歩もゲーム業界だし……。
 そんな折りにスフィアン・スティーヴンスの新曲はずばり“Video Game”。軽めの80年代風エレポップで、MVには10代のTikTokダンサーが大フィーチャーされております。うーん、これは面白い!

 「I don't wanna play your vdeo game....」。ラナ・デル・レイにも同名曲があって、彼氏の家に行ったけど彼氏はゲームに夢中で「一緒にやらない?」みたいな、これって昔からある風景なんですが、スフィアンの曲における“TVゲーム”は、なんつうか、ニューエイジへのアイロニーというか、メタファーですね。「あなたの神になんてなりたくない/自分自身の信者になりたい/宇宙の中心になんかなりたくない/自分の救世主になりたい/あなたのTVゲームなんかやりたくない」

※スフィアン・スティーヴンスのニュー・アルバム『The Ascension(昇天)』は9月25日リリース。

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