「K A R Y Y N」と一致するもの

Nick Cave and The Bad Seeds - ele-king

 イギリスを代表する戯曲家・詩人シェイクスピア。その生涯はおろか作品歴にも諸説ある謎多き人物とはいえ、妻アン・ハザウェイとの間に男児と女児の双子がいたとの記録は残っている。彼の唯一の息子である男児ハムネットは1596年に11歳で亡くなった。その数年後にシェイクスピア悲劇の名作のひとつでありもっとも長い戯曲『ハムレット』が書かれたとされる。いにしえの北欧伝説に想を得た作品ではあるが、亡き子の名前にとてもよく似た名の王子が主役なのは奇遇なのか、それとも。

 ニック・ケイヴ・アンド・ザ・バッド・シーズの17作目のスタジオ・アルバム『Ghosteen』は、ニック・ケイヴの息子アーサー(双子のもうひとりに男児アールがいる)が2015年夏に15歳でブライトンの崖から転落し命を落とした悲劇を経て書き下ろした楽曲を収めた作品だ(2016年発表の前作『Skelton Tree』も結果的に一種の追悼作になったが、収録曲そのものは彼の死以前に書かれていた)。
 2018年に世を去った元バッド・シーズのコンウェイ・サヴェージに捧げられているとはいえ、この2枚組の大作アルバムにアーサーのスピリット(霊)は大きく影を落としている。タイトルの「een」は古いアイルランド語の接尾辞「in(イーン)」の英語化で、主に「小さな」を意味する。「小さな幽霊」と訳せそうだが、字面からストレートに想像される「Ghost+Teen」=10代のゴーストというニュアンスも、もちろん作家としてのケイヴの巧みな狙いだろう。

 アルバムはパート1、パート2に分かれている。収録曲①〜⑧が第1部、残る3曲が第2部に当たり、第2部の2曲はそれぞれ12分、14分台のスポークン・ワードを主体とするトーン・ポエムというかなり変則的な作りだ。それだけでも「敷居が高そう」と感じるリスナーがいて当然だと思うし、子供を失った親という本作のバックストーリー自体が実に重い。
 子を亡くした親の悲しみは子を持たない筆者には到底理解できない。軽々しく想像したくもない。だがその悲嘆(grief)は、人間の悲しみの中で恐らくもっとも深い、己の身をちぎられるほど辛いものではないかと思っている。若くして世を去ったとなれば、共に過ごした時間の短さ、その子の「これから」が青い樹の段階で摘み取られたやるせなさもあって尚更だろう。

 しかし漆黒のタブローに旧式なコンピュータ画面文字が浮かぶ『Skelton Tree』のミニマリズムとは対照的に、本作のジャケットは花咲く森に動物が憩う、ワトーやフラゴナールを連想させるロココ調の童話めいた世界観を提示する。1曲目“Spinning Song”の歌詞にエルヴィス・プレスリーと彼が地上に建てた夢の地:グレイスランドが登場するように、ここではないどこか=ユートピアあるいはパラダイスへの希求は何度か現れる。優れたストーリー・テラーであるケイヴにしては抽象的な、イメージの連なりから聴き手の想像力に行間を埋めさせるタイプの歌詞が多いが、車旅、列車、船、太陽、樹、鳥、蝶、蛍といった単語は移動や上昇、飛翔の象徴だ。『Skelton Tree』は静かな怒り・フラストレーションを内に抱えたダークで重い作品だったが、本作の情動は抑制されていながらも大地に縛られてはいない。亡き子が楽園にいることを信じつつ、自らも悲しみからの救済を求めているのだろう。
 行間を埋めると言えば、音楽的にも多くの空間が残されている。ケイヴと共同プロデュースに当たった右腕ウォーレン・エリスの繊細なエレクトロニック・ループやドローンの数々がアンビエントな波を静かに淡く流していく中にピアノ、ストリングス、コーラスが墨滴のように落とされ、語りと歌唱の中間にある歌が立ち現れては消える。長い尺の中で曲が変化し推移していく構成が見事な“Ghosteen”と“Hollywood”はさながら耳で聴くドラマだ。ギターはもちろんリズム楽器は無いに等しく、『Skelton Tree』でのストイシズムを更に突き詰めている。名義こそ「〜アンド・ザ・バッド・シーズ」ながら、本作はむしろケイヴ&エリスが過去10余年に渡って続けてきた映画やテレビ番組向けサントラ仕事の成果に多くを負っている。

 ケイヴにはいくつかの顔がある。聖と俗の垣根を破り反転させるダーティなブルーズ・マン、マニックに雄叫ぶゴシックな伝道師、ピアノ・バラードでしっとり酔わせるクルーナー等々、複数のペルソナがあのスーツ姿の下に隠されている。だが本作で彼が用いたペルソナはそのどれとも異なるもので、『No More Shall We Part』(2001)以来とも言える、誇張ではなく等身大、シニシズムを脱ぎ捨てた生身なフラジャイルさには心打たれる。メロディを抑えたストイックなプロダクションで、生の重みに黒ずみ疲れた声に焦点を据えたレナード・コーエンの最期のアルバム『Thanks for the Dance』もだぶる。
 その新たなペルソナが切り開いたのはファルセット歌唱だ。ケイヴといえば男性的な低音ヴォーカルで知られるので実に新鮮だし、本作の随所で彼が時にさりげなく、時に引き絞る高音もまた、リーチできない領域や悲しみを越えたところにある高みに手を伸ばそうとする人間の姿とその業を感じさせる。“Hollywood”で彼が響かせる和紙のように薄く透ける痛切な「It’s a long way to find/ peace of mind(心が安らぎを得られるまで/道のりは長い)」のフレーズ、“Bright Horses”の冒頭や“Sun Forest”を始めとするウォーレン・エリスのサイレンを思わせる美しい歌声、そしてコロス的なコーラスはスピリチュアルな祈りとして響く。

 祈りは亡くなった我が子の魂に捧げられているだけではなく、ケイヴ自身を含む「遺された者たち」にも向けられている。本作のエモーショナルなハイライトのひとつ“Ghosteen Speaks”は「I am beside you/Look for me(あなたのそばにいるから/私を見つけて)」「I am within you, you are within me(私はあなたの中に、あなたは私の中にいる)」という歌詞を軸とするシンプルなリフレインから成る曲だ。「ゴースティーンは語る」というタイトルからして亡き子からの呼びかけと解釈するのが妥当だろう。だが聴くほどに、悲嘆のせいで心が虚ろになり遠ざかってしまった妻(母)への慰め/励ましとも、あるいは悲しみの闇の中に取り残された者たちに小さな光をもたらす霊魂(それを「神」と呼ぶ者もいるだろう)のささやきのようにも聞こえる。
 だが悲しみがそうたやすく癒えるものではなく、悲嘆のプロセスは長いことも本作は示唆している。ケイヴは昨年メディアに対し、長年暮らしてきたブライトンには子供の思い出が多過ぎて辛く、家族と共にロサンジェルスに移住したいとの意向を明かしていた。本作に差し込む光の瞬間のひとつである“Galleon Ship”で歌われる船出の思いは、過去を慈しみつつも生き続けるしかない人間の胸のたけだ。しかし最終曲でカリフォルニアにいるナレーターは、陽光とビーチを前に「And I'm just waiting now, for my time to come/for peace to come(そして今はとにかく、自分にその時がやって来るのを待つだけ/心の安らぎが訪れる時を)」のつぶやきを潮風に寂しく散らす。

 独特なサウンドスケープで1枚に完結した世界観を作り上げたこの傑作アルバムは、ケイヴにとってひとつのアーティスティックな達成であると同時に開始地点でもある。今夏予定されているツアーで、彼とバッド・シーズはロンドンではなんと初めてO2アリーナ(キャパ2万)の大舞台を踏む。BBCのヒット・ドラマ『Peaky Blinders』の主題歌に“Red Right Hand”が使用され、これまで以上に広い層の耳に彼の音楽が届いた追い風効果もあっただろう(何せティーンエイジャーもあの曲を知っている)。一貫して劇的でロマンティックな歌詞と歌声で人間の生(性)を赤裸々にポエティックに描き出し、ミック・ハーヴェイやウォーレン・エリスをはじめとする優れたミュージシャンたちとのコラボを絶え間なく重ねつつ音楽性を深め続けてきたケイヴは、アーティスティック/コマーシャルの両面で今こそ最高潮に達しているのだ。
 野性と知性が同居するこの唯一無二のカリスマを育んだ彼に、近年のボビー・ギレスピー、ジャーヴィス・コッカーやアークティック・モンキーズのアレックス・ターナー等が憧れるのも無理はない──ケイヴの妻スージー・ビックは「The Vampire’s Wife」というファッション・ブランドを経営しているが、女は寝たがり、男はそのパワーに惹かれるドラキュラは、ある意味最初のロック・スターだったのだから。「アクセスしやすさ」「親しみやすさ」が人気のキーとされる昨今、ベージュ色でヴァニラ味の無難な普通人がスターになる風潮は強まっている。しかしボウイやジョン・ライドンを生んだ国でこうしてケイヴ熱がまた上昇し、ビリー・アイリッシュのようなアクトがブレイクしている状況にはまた、異端児/マイノリティに対するイギリスの根強い愛情・共感の巻き返しを感じて嬉しくなる。

 本作のデリケートなサウンドをライヴでどう再現するのかは興味深いが、パーソナルを悲劇から始まり普遍へと突き抜けるケイヴの歌は、2万人の観衆をひとつにするはずだ。前述したように、ケイヴが父として経た悲しみは筆者には到底理解できない。しかし“Hollywood”には、死んだ我が子を生き返らせて欲しいと釈迦に訴える母キサー・ゴータミーの物語が挿入されている。キサーに対し釈迦は「死者を出したことのない家からカラシの種を一粒もらい持って来ればあなたの望みをかなえよう」と答え、彼女は何軒もの家を回る。だが家族や親類を亡くしたことのない家などない、探索は無為に終わる。
 死とは人間に不可避な自然のサイクルの一部であることを悟り、彼女はようやく息子の遺体を埋葬し弔うわけだが、ケイヴが個人としてくぐった悲嘆とソウル・サーチングもまた、親を、子を、恋人を、友人を、あるいは愛する対象や信じる何かを失ったことのある者なら誰でも共感できる普遍になり得るだろう──それはもしかしたら、グレンフェル高層住宅火災で、戦地で、デモで、ストリートで命を落とした者とその家族の悲しみ、ブレクジットで民主主義やヨーロッパとの絆を失った者の、溶けて消えた氷や自然を悼む者の思いとシンクロするかもしれない。死せる魂と生きる魂とが共存し語り合い、その見えない繫がりを受け入れ祝福しようとする本作。加速する一方の世界の中でついおざなりになりがちな、トラウマと向き合うことを促してくれる素晴らしい1枚だと思う。

Squarepusher - ele-king

 あけましておめで……たくないニュースばかりで新年早々うんざりな毎日ですけれども、これはストレートにめでたいニュースです。スクエアプッシャーの来日が決定しました。4月1日から4月3日まで、名古屋・大阪・東京の3都市を巡回します。昨秋も《WXAXRXP DJS》に出演しアツいDJセットを披露してくれたトム・ジェンキンソンですが、今度は待望のライヴ・セット!! 映像の演出もヤバそうっすね。単独来日公演としてはじつに5年ぶりとのことで、期待で胸がはちきれそうです。
 さ・ら・に! 今月末に発売されるニュー・アルバム『Be Up A Hello』から新曲 “Nervelevers” が解禁されました。あ~、このアシッディでドラムンなテイスト、90年代を彷彿させます。まさしくスクエアプッシャーです。まずは3週間後に迫った新作のリリースにそなえましょう。

[1月14日追記]
 本日より、来日公演チケットの主催者先行発売がスタートしました。また、全国に貼り出されるツアー・ポスターには、ボーナストラックがダウンロードできるQRコードが記載されているとのこと。詳しくは下記をご確認ください。

[1月29日追記]
 来日公演も決定し大きな盛り上がりを見せているスクエアプッシャーですが、急遽、新作『Be Up A Hello』のリリース前夜祭が決行されることになりました。明日30日、渋谷のタワレコにて、同新作(隠しトラックがダウンロードできるポスター付き)が1日はやく販売されるほか、真鍋大度、mito、たなしんの出演するトーク&ライヴ・イヴェントも開催されます。詳細は下記をチェック。

緊急決定!
SQUAREPUSHER『BE UP A HELLO』
リリース前夜祭!!
1月30日(木) タワーレコード渋谷店6Fにて
アルバム世界最速販売!!
店頭にて真鍋大度 (Rhizomatiks) × mito (clammbon) × たなしん (グッドモーニングアメリカ/タナブロ)によるトークライブも開催決定!!

来日決定も超話題! スクエアプッシャー5年ぶり待望の最新作『BE UP A HELLO』リリース前夜祭が、発売前日である1月30日(木)、タワーレコード渋谷店6Fにて行われることが緊急決定!!!

タワーレコード渋谷店限定で国内盤CD、TシャツセットやLP含む全フォーマットの世界最速販売、そして店頭にて真鍋大度 (Rhizomatiks) & mito (clammbon) & たなしん(グッドモーニングアメリカ/タナブロ)によるスペシャルトークライブの開催が決定!

また当日の世界最速販売期間のみ、限定特典として既にファンの間で話題となっている隠しトラックがDLできるQRコード付きの来日ポスターを購入者にプレゼント。

同フロアにて観覧無料で開催となるトークライブには、過去にMV制作やライブのサポートDJなど親交のある真鍋大度(Rhizomatiks)、かねてよりスクエアプッシャーの大ファンであることを公言している mito (clammbon)、司会進行にたなしん(グッドモーニングアメリカ/タナブロ)をむかえ、1時間では足りないほど濃い内容となることは間違いなし。同時に、その様子がタワレコTVよりネット生放送となる。詳細は以下。

【世界最速販売】
開催日:1月30日(木曜日)20:30〜23:00
場所:タワーレコード渋谷店 6F
先行販売商品:スクエアプッシャー『BE UP A HELLO』(日本盤CD、輸入盤CD/LP含む全形態)

★先行販売限定特典:
シークレットトラックDLコード付来日ポスター

★日本盤CD購入特典:
四角缶バッヂ(タワーレコードオリジナル特典)

【トークライブ】
開催日:1月30日(木曜日)
場所:タワーレコード渋谷店 6Fフロア
21:00〜22:00 観覧無料
出演:真鍋大度 (Rhizomatiks) × mito (clammbon) × たなしん(グッドモーニングアメリカ/タナブロ)

※ スクエアプッシャーの出演はありません
※ なお、番組内容は予告なく変更になる場合があります。予め、ご了承ください。

タワーレコード渋谷店イベントページ
https://towershibuya.jp/2020/01/28/143379

★トークライブの様子はこちらでネット生配信!
FRESH LIVE!: https://freshlive.tv/towerrecordstv/275981

スクエアプッシャー来日公演
チケット主催者先行スタート!!!
ツアーポスターはシークレット・トラックがDLできるQRコード付!
待望の最新作『BE UP A HELLO』1月31日(金)発売!

2020年4月1日 (水) 名古屋 CLUB QUATTRO
2020年4月2日 (木) 梅田 CLUB QUATTRO
2020年4月3日 (金) 新木場 STUDIO COAST

TICKETS : ADV. ¥7,000+1D
OPEN 18:00 / START 19:00

※未就学児童入場不可

ただいま1月14日(火)正午より東京/名古屋公演の主催者先行がスタート! 大阪公演は今週1月17日(金)より SMASH FRENDS 先行が開始となる。

また、全国各所に貼り出される本公演のポスターにはQRコードが掲載されており、アクセスするとボーナストラックがDLできるようになっている。CDショップやライブ会場等、お出かけの際はぜひ探してみてほしい。

チケット情報

【先行発売】

4/1 (水) 名古屋 CLUB QUATTRO

4/2 (木) 梅田 CLUB QUATTRO

4/3(金) 新木場 STUDIO COAST

【一般発売】

スクエアプッシャー来日決定!!!
1月31日(金)リリースの最新作『BE UP A HELLO』より
新曲 “NERVELEVERS” をドロップ!

5年ぶりとなる超待望の単独来日公演が大決定!!

2020年4月1日(水) 名古屋 CLUB QUATTRO
2020年4月2日(木) 梅田 CLUB QUATTRO
2020年4月3日(金) 新木場 STUDIO COAST

チケット等詳細は来週1月14日(火)に発表を予定。

毎回驚異のライヴ・パフォーマンスで観客を圧倒してきた鬼才スクエアプッシャー。常に新しい響きと新たな試みを求め、リスナーに驚きと衝撃を与え続けている唯一無二のアーティストであり、初期の楽曲をバンド生演奏で再現するショバリーダー・ワンの衝撃的感動的ライヴ・パフォーマンスや、〈WARP〉30周年イベントではフロアを満場の熱狂へと導いた初披露のDJセットも記憶に新しい彼が、最新作『Be Up A Hello』の楽曲と共に、度肝を抜く圧巻の照明&映像演出を含む最新ライヴ・セットで来日! 完売必至、まさに必見の公演!!

そして、いよいよ発売が3週間後に迫った待望の最新作『Be Up A Hello』より、多くのファンから愛される彼のキャリア形成期の楽曲群を彷彿とさせる猛烈なブレイクビーツ、アシッドなベースラインが際立つ新曲 “Nervelevers” が解禁!

Squarepusher – Nervelevers (Official Audio)
https://youtu.be/qtSJA_U4W1U

今作『Be Up A Hello』は、エレクトロニック・ミュージックに目覚めた当時の思いや記憶を綴った日記のようでもありつつ、直感と初期衝動に従って一気に完成させ、強烈で、スピーディで、目まぐるしくて、刺激的で、先の予測のつかない、これぞスクエアプッシャーと言える内容となった最新アルバム。いよいよ今月、1月31日(金)発売! 国内盤にはボーナストラックが追加収録され、解説書が封入される。また数量限定でオリジナルTシャツ付セットも発売決定!

Tシャツセットに付属されるダウンロードカードからは、CDに収録された音源とは異なるボーナストラックがダウンロードでき、90年代のアナログ機材が多用されたという最新アルバム『Be Up A Hello』の制作中、様々なアイデアを試み、様々な形でファンに届けようとするトム・ジェンキンソンの積極的な姿勢が垣間見られる。

各CDショップでの購入特典もチェック!

 Tower Records:四角缶バッヂ

 disk union:丸缶バッヂ

 Amazon:マグネット

 その他CDショップ:ステッカー

Vortrack (Original Mix)
https://youtu.be/s3kWYsLYuHc

Vortrack (Fracture Remix)
https://youtu.be/59ke5hp-p3E

label: Warp Records / Beat Records
artist: Squarepusher
title: Be Up A Hello
release date: 2020.01.31 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-624 ¥2,200+税
国内盤CD+Tシャツ BRC-624T ¥5,500+税

国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説書封入/ボーナスDLカード封入
(Tシャツセットには限定ボーナストラックDLカードも封入)

Ichiko Uemoto - ele-king

 写真家・植本一子による最新作品集『うれしい生活』が河出書房新社より刊行されている。「家族のかたちを模索した十年の軌跡」がテーマで、晩年の ECD の姿も多く写し出されている。なお、1月10日から1月23日にかけて、同書の出版記念写真展が渋谷 nidi gallery にて開催。詳しくはこちらより。

植本一子
うれしい生活
河出書房新社
A4変形 192ページ
ISBN:978-4-309-25648-1
本体2900円+税

内容
夫との出会いと結婚、子どもの出産と成長、そして突然訪れた夫の死──変容する現代に、家族のかたちとはなにか? 光の束のなかにその姿を写す、気鋭の写真家による初めての作品集。

著者
植本一子(ウエモト イチコ)
1984年、広島県生まれ。2003年キャノン写真新世紀で優秀賞を受賞。著書に『働けECD 私の育児混沌記』『かなわない』『家族最後の日』『降伏の記録』『フェルメール』『台風一過』など。

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309256481/

Amazon

Tokyo Protest Rave 2 - ele-king

 紙エレ最新号『ele-king vol.25』でもフィーチャーした Mars89 がまたやってくれます。去る10月26日、Mari Sakurai、Mars89、Miru Shinoda の主導により実行された《渋谷プロテストレイヴ》、その第2弾が1月12日に開催されます。今度の舞台は新宿で、「#0112新宿プロテストレイヴ」と題されています。DJとして Mars89、行松陽介が、MCに ONJUICY が出演。アフターパーティも予定されており、そちらには Miru Shinoda、Mari Sakurai、JACKSON Kaki、1017 Muney も参加。ちなみに同レイヴは「#新宿占拠0112」の一環として開催されるものでもあるようで、おなじ日に札幌、新潟、名古屋、大阪、和歌山、北九州でも一斉に抗議がおこなわれる予定。詳細はこちらhttps://occupyshinjuku.qcweb.jp/)より。路上で踊るのは楽しいですよ~。

#0112新宿プロテストレイヴ
We Dance Together. We Fight Together.

1/12 (日)
新宿中央公園水の広場
13:00集合 13:30出発
参加費: 無料
※出発、解散地点でカンパの呼び掛け有り。
年齢制限: なし
ドレスコード: 強め

DJ:
Mars89
行松陽介

MC:
ONJUICY

「ダンスは抵抗である」

We Dance Together. We Fight Together.
アフターパーティー

1/12 (日)
新宿アルタ前
15:30スタート
参加費: 無料
※現地でカンパの呼び掛け有り。
年齢制限: なし

DJ:
Miru Shinoda
Mars89
Mari Sakurai
行松陽介
JACKSON Kaki
1017 Muney

MC:
ONJUICY

「ダンスは抵抗である」

 現実から立ち去ってしまいたい夜。もしあなたがラッパーなら、そんなときでも、ラッパーというペルソナを持っていることで、なんとかこの世界に踏み止まれるかもしれない。巧みなスキルに裏打ちされたラップの美学を用いて「告白」することが可能だからだ。そんな夜にざわつく心境を、めくれ上がる傷の襞を、溢れ出す表現力を用いて、ライムにしたためてしまえばいい。もしあなたがラッパーではないとしても、そのような夜をいくつも乗り超えるラッパーの心性を覗きたいなら、本書のページをめくってみてほしい。

 それにしても、なぜラッパーたちはみな、ここまで頻繁に神のことを口にするのだろうか? USのラップ・ミュージックを嗜み、そのリリックの内容にも耳を傾ける愛好家なら、一度は疑問に思ったことがあるかもしれない。もちろんラップに限らずキリスト教圏由来のあらゆるコンテンツで、僕たちは神や宗教への言及を頻繁に目にする。映画、文学、Netflix のドラマ、音楽全般。宗教や倫理がメインテーマとなる作品も多い。日本で生まれ育った者の多くは、それらの作品を本当の意味で理解することの難しさに突き当たるかもしれない。

 例えば、ケンドリック・ラマ―の傑作『good kid M.A.A.D city』のなかでも終盤の重要な一曲 “I’m Dying of Thirst” を例に挙げよう。「ストリートコーナーのドラッグ絡み/あそこには検死官/娘を亡くして/母親が悲嘆にくれる/流れ弾だった/AK-47 のやつだ/奴らは彼女を蘇生させようと何度も試みる/だがそれは叶わない」というケンドリックの言葉数少なく冴えわたった描写は、僕たちに直感的に映像を喚起させる。だが一方で楽曲が終わった後のスキットはどうだろう。まずは、ケンドリックの仲間が吐き捨てるように言う。「くそっ、こんなことはウンザリだ。逃げ回るのはもう飽きちまった」と。彼らは過酷な現実から逃げ回り続ける日々に絶望している。するとそこへマヤ・アンジェロウが演じる老婆がやってきて、彼らを導こうとする。彼女は、罪人としての神への祈りの言葉を唱える。そしてそれらを若者たちに復唱させ、そこから新たなる人生が始まるのだと諭すのだ。この展開を頭で理解するのは難しくないだろう。しかしそこに実感が伴っているかと言われると、ためらいがあるかもしれない。神に祈り、悔い改めることで、赦されるという実感。

 このことはラップのリリック面に留まらない。サウンド面においても、そのような理解へのためらいが生じる場面もあるだろう。例えばカニエ・ウエストの『Jesus Is King』のオープニングや “God Is” のような楽曲に耳を傾けてみよう。ゴスペル節が前景化した希望に満ちたサウンドは、一聴すると、すっと胸に入ってくる感覚がある。だがカニエを突き動かす信仰溢れ出す彼の歌声とセットで聞くとき、その賛美のサウンドを理解できているのかと問われれば、少し考え込んでしまうかもしれない。ここでもまた、名状し難いためらいがつきまとう。

 このようなためらいはさらに、ラッパーたちの振る舞いを目にすることで、困惑に変わるかもしれない。例えば、ギャングスタ然としたマチズモ全開のラッパーが、良心や倫理感を持ち合わせていないかのような過激なリリックを披露しながらも、別の曲では神に祈り自らの罪を告白するような場合だ。そのようなある種のダブルスタンダードを、一体彼らはどのように処理しているのだろうか。そしてキリスト教とは、このようなダブルスタンダードをどのように受け止めているのだろうか。

 神学を学び、牧師となった著者の山下壮起は、アフリカ系アメリカ人の社会で7年近くの時間を過ごした経験を持つ。山下は、自身のヒップホップヘッズと神学者というふたつのペルソナからの見地で、そのようなダブルスタンダードが生まれた理由を丁寧に解きほぐしていく。ラッパーたちを始めとするヒップホップ世代の若者たちは、神や宗教に対して、アンビヴァレントな感情を抱いている。端的に、彼らは引き裂かれている。本来、救済を求める者の受け皿となるべき教会は、ヒップホップのような世俗的な音楽を批判し、貧困層の現実には目を向けてくれない。だから、むしろヒップホップ・ミュージック自体に困難な現実からの救済を求めるようになる。だが、彼らは決して非宗教的になったわけではない。そのことは、ラッパーたちが聖書の物語を引用する例が後を絶たないのを見ればよく分かる。

 ヒップホップは「聖と俗の両面から救済へのアプローチをもつ」、つまりゴスペルとブルースの両方の機能を持つのだと、山下は指摘する。聖俗二元論では割り切れない「救済」としてのヒップホップは、僕たちから見ると、ときに非常にアンビヴァレントな表現を抱えている。ラッパーたちは、極めて不条理な現実を前に、もはや神を信じることはできないと明言する。しかしそのような神への不信をライムすること自体がすでに、神の存在を前提としているからだ。

 ラッパーたちは、生きることの困難さを歌う。そのとき、生きてラップすることこそが、救済にも抵抗にもなりうる。ラップという表現を持ち合わせたことが、ラッパー自身にとっては生きる理由ともなるからだ。それは端的に、救いだ。「ラップがなかったら、どうなっていたことか分からない」というラッパーたちの発言を耳にすることも多い。そして、そのラッパーとしての道を全うし、サヴァイヴすることこそが、不条理を生み出す社会構造への抵抗でもある。

 そしてなによりも、忘れてはいけないことがある。ラップは、ためらいながらもすがるような思いでそのリリックに耳を傾けるリスナーたちへの救済として、いつでもそこにある。

Da Lata - ele-king

 1990年代半ばのアシッド・ジャズやクラブ・ジャズのムーヴメントの中で、サンバやボサノヴァなどブラジル音楽が人気を博した時期があった。1960~1970年代の古い音源をDJが発掘してプレイする一方、実際にブラジル音楽やラテン・ジャズなどを演奏するバンドやユニットも現われた。そのほとんどがいまは活動していないのだが、代表格のダ・ラータは現在も地道に活動をおこなっている。
 ダ・ラータはDJのパトリック・フォージとミュージシャン/プロデューサーのクリス・フランクを中心としたユニットで、バトゥというバンドを母体に1994年頃から活動している。ダ・ラータの特徴はブラジル音楽とアフロビートをミックスさせた点で、それが純粋なブラジル音楽を演奏するバンドとの大きな差異となっていた。パトリック・フォージのDJとしての嗅覚や音楽知識に裏打ちされ、ダ・ラータはアフロビートだけでなく様々なタイプの音楽を結び付けていき、2000年前後のウェスト・ロンドンのブロークンビーツ・シーンともリンクした活動をおこなっていた。
 2000年にファースト・アルバムの『ソングス・フロム・ザ・ティン』をリリースし、2003年にはセカンド・アルバムの『シリアス』を発表するが、その後はクリスが別のプロジェクトで活動するため、ダ・ラータは一時休止状態となる。そして2011年に再始動し、2013年にリリースした『ファビオラ』ではこれまでのロンドンのミュージシャン以外にも、ミゲル・アトウッド・ファーガソンやリッチ・メディーナなどを招いている。いままでの路線に加え、ロックやフォーク、レゲエやタンゴなどさらに多種の音楽を取り入れており、全体的によりグローカルなテイストを感じさせるアルバムとなっていた。

 『ファビオラ』と続くシングルのリリースとライヴ活動の後、ダ・ラータは再び休止状態となってしまっていたのだが、2019年に自身のレーベルからシングル「オバ・ラタ」を発表して復活し、そして6年ぶりとなるニュー・アルバム『バーズ』を完成させた。
 ウェスト・ロンドンのブロークンビーツ・シーンからの長い付き合いとなるヴァネッサ・フリーマンとベンベ・セグェのほか、ブラジル人でグラヴィオラというバンドでシンガーも務めるルイス・ガブリエル・ロペス、セネガル出身でアフリカの民族楽器も操るディアベル・シッソコーという『ファビオラ』の参加者、そして新たにシンガー・ソングライターのサイレン・リヴァーズ、イタリア出身で現在はロンドンで活動するシンガー/ピアニストのエイドリアン・ヴァスケス、新進R&Bシンガーのリチャード・コリンズなどが参加している。演奏はマイク・パトゥー(キーボード、シンセ)、トリスタン・バンクス(ドラムス)、ジェイソン・ヤード(サックス)などダ・ラータの常連ミュージシャンに加え、かつてアウトサイドの名義で活動し、インコグニートでも演奏してきたマット・クーパー(エレピ、シンセ)、アシッド・ジャズ時代にガリアーノなどで演奏し、〈ブギー・バック・レコーズ〉を運営してきたアーニー・マッコンヌ(ベース、ドラムス)などのヴェテランが参加している。

 レゲエ/ダブ調のロウなファンク・ビートの “メンタリティ” でアルバムは幕を開ける。ディアベル・シッソコーによるアフリカンなヴォーカルが妖しいムードを運んできて、続くミステリアスな雰囲気の “ダカール” へと受け継がれていく。“オバ・ラタ” と共にシングル・カットされた曲で、クリスがセネガルへ旅行したときに断食などを伴うイスラム教のラマダーンの儀式を体験し、それがモチーフとなった曲だ。
 親しみやすいメロディの “スウェイ” はブラジリアン・メロウ・ソウルといった趣で、ウェスト・ロンドンの歌姫だったヴァネッサ・フリーマンが歌う。サイレン・リヴァーズが歌う “メモリー・マン” も同系の曲で、ダ・ラータらしいボッサ・ジャズのリズムにフルートやギターが哀愁を帯びたメロディを奏でる。“トゥ・B” はさらにアコースティックな質感のフォーキー・ブラジリアンとも言うべき曲で、エイドリアン・ヴァスケスのスキャットは大御所のジョイスのそれを彷彿とさせる。
 リチャード・コリンズのしっとりとした歌で始まる “ルナー・ヴュー” は、途中からリズム・セクションが加わってメロウ・フュージョン調の演奏となっていく。故リンデン・デヴィッド・ホールを思わせるシルキーなファルセットのリチャードの歌声と洗練された演奏が楽しめる曲だ。“サンダー・オブ・サイレンス” は往年のダ・ラータらしい1曲。サンバのリズムにジャズ・ファンク、ブギー、ブロークンビーツなどの要素を混ぜ、ヴァネッサ・フリーマンと共にウェスト・ロンドンの歌姫だったベンベ・セグェの歌やジェイソン・ヤードのサックスがフィーチャーされる。
 シングル曲の “オバ・ラタ” もダ・ラータ得意のアフロビートで、ヨルバ語のコーラスと妖しげなシンセがアクセントとなる。“ホリークウッド・パーク” はクリスが全て楽器演奏をおこなったインスト曲で、カリンバ(親指ピアノ)の音色がアフリカの土着的な風景を連想させる。タイトル曲の “バーズ” はルイス・ガブリエル・ロペスの歌とギターで綴るフォーキーなバラード。しっとりとしたムードでアルバムは締め括られる。
 アフロ・サンバやMPBなどブラジル音楽を土台に、アフロビートからソウル、ブロークンビーツなど様々な要素を混ぜていくスタイルはダ・ラータがデビュー当時からずっと貫いているもので、今回のアルバムでもそれは変わっていない。流行や時代の流れなどとは無関係のところで、息の長い活動を続けているダ・ラータらしいアルバムと言えるだろう。

Tiny Mix Tapes - ele-king

 昨日、音楽批評サイトの『タイニー・ミックス・テープ(Tiny Mix Tapes、以下TMT)』がツイッターにて活動休止を宣言している。

 2001年にローンチした同メディアは、おもにヴォランティアによって運営されてきたという。今回休止を決断した理由の詳細は明らかにされていないが、もともとブルックリンのアニコレやブラック・ダイスなどをプッシュしていた『ピッチフォーク』が徐々にメインストリーム寄りになったことへ対抗するかのように、『TMT』はアンダーグラウンドへの愛を表現しつづけ、独特の審美眼でその動向を捉えてきた。
 LAのサン・アロウやNNF一派、ないしはアンビエントやドローンにも着目する一方、積極的に日本のナードな音楽(アイドル含む)も紹介していたし、PCミュージックやディーン・ブラントなどのネット以降の音楽シーン、とりわけチルウェイヴ~ヴェイパーウェイヴの隆盛に一役買ったのも彼らだった。そのあり方をむりやり一言で要約するならば、OPN の台頭と並走するかたちで10年代の音楽を盛り上げてきた音楽メディア、ということになるだろう。じっさい、昨年末に発表された『TMT』が選ぶ2010年代の100枚の第1位はチャック・パーソンで、OPN 名義の作品も20位内に2作選ばれている(3枚もピックアップされたのはロパティンだけ、だったはず)。
 哲学を援用したり謎のポエムを披露したりするレヴュー文も、垢抜けない大学院生っぽさが漂っていたとはいえ、それはそれで魅力的だったし、個性的なタグ付けも毎度ほほえましく、またレコメンド作品を「ユリイカ!(EUREKA!)」と呼ぶところも気が利いていた。
 じつはわれわれ『ele-king』は2013年に、同メディアの設立者であり編集長であるマーヴィン・リンにインタヴューを試みている(その後、個人的に何度かメールで文通したりもしました)。さらに昨年は同氏の著書『レディオヘッド/キッドA』を邦訳刊行してもおり、少なからず繋がりがあった。
 ちょうど2010年代が終わるこのタイミングで『TMT』が活動を休止するのは、ひとつの大きなサイクルの終わりを象徴しているように思えてならない。
 『TMT』のみなさん、長い間お疲れさまでした。

Oren Ambarchi - ele-king

 音楽史におけるほぼと言っていい全ての段階で、即興演奏をする楽しみが存在してきた。音楽上のテクニックや作曲形式で、即興演奏による実践から発していないもの、本質的に影響を受けていないものはないからだ。にもかかわらず即興演奏に関する定義や知識にはっきりしたものはない。これはインプロヴィゼーションの「決して止まることなく、つねに変化し状況に合わせて姿を変える」(デレク・ベイリー『インプロヴィゼーション』)性質による。ジャンルを超えた新しいサウンドを作り出し、どの作品も異なるカラーを持つオーレン・アンバーチの音楽も定義できるものではないし、定義すること自体がナンセンスかもしれないが、それこそがオーレンの作品をかたちづくるものであることは間違いないでしょう。

 オーストラリア、シドニー出身でエクスペリメンタル、インプロヴィゼーション界隈で活動を続けている、オーレン・アンバーチが『Simian Angel』を〈Edition Mego〉より2016年の『Hubris』以来の3年ぶりにリリースしている。(2019年7月)(オーレン主宰のノイズ、インプロ、実験的音楽を扱う〈Black Truffle〉のリリースも要チェックです!)

 SUNN O))) のメンバーとしてはもちろん、灰野敬二やメルツバウPhewジム・オルークなど多くのミュージシャンとのコラボレーション作品を制作し、ソロではドラムとギターによる編成を好んできたオーレンだが、今作はジョン・ゾーンやハービー・ハンコック、坂本龍一との共演でも知られるブラジル出身パーカッション奏者シロ・バプティストをフィーチャーし、ブラジル音楽からの影響が濃密に反映されている。

 『Simian Angel』は “Palm Sugar Candy”、“Simian Angel” の2曲からなる。どちらも16分から20分前後の長さで、オーレンの実験的に繰り広げられ、発展し、フェードアウトしていくようなサウンドスケープに没入するには心地よい長さに感じる。“Palm Sugar Candy” はコンガと水のようなシンセがゆったりとした「時間の音楽」を生成していく。“Simian Angel” ではビリンバウのパーカッシヴなパターンが反復されていく。様々な楽器を用いながら、ジャンルを超えた新しいサウンド、楽器、音素材の可能性を拡張し続けてきたオーレンだが、今回はシロ・バプティストの巧妙でリズミカルなハンドリングや、ビリンバウ、コンガの音色を取り入れることによって、ブラジル音楽への可能性を拡張していく。(オーレンはもともとパーカッション奏者という経歴もある)。また本作『Simian Angel』ではエレクトリック・ギターへの新たなアプローチに焦点が当てられている。一聴してオルガンのように聴こえるあの音もギターの音で作り上げられ、スリーブに「guitars & whatnot」と記される。このアルバムはギターとその他のなんやかんやの音でできているわけだ。

 インプロヴィゼーションの世界では、楽器は単なる記号として楽譜に記された音符を演奏するという目的のための手段、道具ではない。ジョン・ケージが言うところの「音そのもの」に興味があるというオーレンにとってもそうであろう。ギターから作られる音色で様々な音色を作り出せるオーレンにとっても楽器は音素材の源であるはずだ。

 また、インド生まれの母親を持つ彼は幼少期からラーガの音楽によく触れてきたようだ。このような音楽では、ラーガのある種の秩序よって素材、その素材を規格化された方法、演奏の骨格が用意されるが、全ては流動的であって、演奏されたときに最終的な状態へと達する。音素材や旋法等に上下関係はなく、装飾音、効果音と聴こえるようなものでもその音が何か別の音の下位に位置しているわけではない。なるほど、彼がラーガに影響を受けてきたことに納得する。オーレンは音素材やメロディに優劣をつけない。一聴して、これはブラジルのリズムだ、コンガの音だと知覚することはあるものの、なにかある音が支配的なものなのではなく、すべての要素を平等に不可欠なものとして解放する。16分から20分前後で展開され発展しては消えていく音たちは何か別の音の上位に存在しているものではないと感じることができるだろう。シンセの音もパーカッションの音もその他のなんやかんやの音として平等に扱われる。

 オーレンが作り出すギターの音、ギターでないようなギターの音、その他の音、メロディ、パーカッション、さまざまなものが合わさったとき、インプロヴィゼーションのなかで、ライプニッツの言うところの「音楽は魂がなにをしているか気づかぬうちにおこなっている秘密の計算」をこの音楽からも色濃く感じることがきっとできるだろう。

 https://orenambarchi.com/

宣伝でも素朴な感想文でもない、本当に “読者の役にたつ書評” とはこれだ!

長年にわたり価値を失わない良書をしっかり紹介し、ベストセラーであろうとダメな本は徹底的に批判する──
辛口書評家が30年ちかくにわたり書き綴った膨大な書評より、経済、ビジネス、経営、政治、歴史、社会などの分野をここに集成!

速度過剰な情報社会で、〈論争〉が成立しがたくなっている中、
これぞパワフルなマジレスだなって感動する……。
最強書評人・山形浩生が、
数多の書籍、数百万の言葉を横断し、複雑世界の案内人となる!(荻上チキ)


目次

はじめに:書評について

第1章 経済
二一世紀の経済を考える十冊強/痛快ってのはこういう本を言うんだよ/経済学における過度の単純化を戒め、倫理学との接続をはかる講演集/一九三〇年代の論争をもとに、現代日本の不景気を見渡す/教育も希少な資源の配分問題なのだ!/近年のおかしな経済状況分析をしっかり批判/経済学も基礎が大事! 高校生の教科書で学ぼう/お金だけが大切じゃないことを、説教としてではなく理論的に解明しようとする経済学の新潮流/マネーロンダリングの手口と、それがぼくたちにとって持つ意義/正しい理論が政策に反映されない理由/政治的配慮一切なし! 快刀乱麻を断つ必読の経済書/アメリカの世界経済介入/不況は需要不足が問題といいつつ対策は供給側の技術革新に増税?/知識人の左翼的な妄想を捨て、経済成長の重要性を理解しよう!/行動経済学の発想をうまく紹介した、開祖の独自論文集/常に混合し合う文化のダイナミズムを経済学的に描く/不勉強な左派と図に乗った右派の両方をくさし、経済学の価値を認めるべきところでは認めろと主張するえらい本/資源自体ではなく資源の価値をどう残すか?/行動経済学や幸福研究などの成果紹介で、数多い類書から傑出はしていないが、よくまとまっている/概説書としてはまあまあ。でも量子ゲーム理論って何のためにあるの?/日本経済の現状を無視した許し難いデフレ本/異様な密度でアンチョコにさせていただきます/人民元をネタにした単なるゴシップ本/技術が人を操り自らを進歩させる、倒錯した議論の魅惑

第2章 ピケティ/格差
ピケティ『21世紀の資本』の翻訳進捗についての弁明/ピケティの前の本、読んだ!(本文だけだけど)読んだぜコノヤロー!/時事コラムで仏欧のローカルネタが中心。入門にはつらいんじゃない?/死んでもなおらないある病気の人に、ウルフが親切に教えてあげる教育的配慮に充ちた本/デジタル産業革命の先にある宿題 その1/デジタル産業革命の先にある宿題 その2/戦争、革命、疫病……数十万人単位で人が死なないと “経済格差” 解消しない問題

第3章 ケインズ
古い本とはいえケインズについてしっかりまとめた好著/著者が脳内ケインズをもとに実物を批判する異様な本/単著ではないうえ、まとまりもバランスも悪いわかりにくい本/マンガとしてはとてもよいできだが、解説の小野理論偏重はどうよ/全体の見通しがないし、ケインズが動学でないというのは批判すべきことか?/変なケインズ理解をもとに小野理論を持ち上げようとする歪んだ本/ケインズを階級対立の先駆者として見ようという昔の変な試み/伝記とケインズの理論や貢献、その後のケインズ経済学をバランスよく描いている/安易な人物像や哲学談義に流れ、経済学者としての評価から逃げた本/ケインズがいかにイヤミなやつかよくわかる/古い、英語知らない、原文勝手に改ざん/まだ続きます。ほんっと、だれか指摘してあげなかったの??

第4章 クルーグマン
世代の沙汰も金次第、ではないのかもしれない/罵倒と茶化しの効用/非効用──おまけに Beavis & Butthead 讃/クルーグマンが教えてくれる経済学の驚き/学問の力と遊び心/クルーグマンのコラムがつきつける現代マスコミの問題など

第5章 ファイナンス
投資でよりよい人生を!/日本の夜明けは遠いかも──投機に堕したゴミ投資家たち/完敗──『ゴミ投資家のための人生設計入門』はすごいです/いまの日本で豊かさを求めるには?/オンライン株式なんかよりも確実なハイリターン本です/企業価値の計測に関する標準的な教科書/数学者の大やけどで学ぶ、株式投資の標準セオリーの正しさ/何か下劣で馬鹿な著者の『思いつきの名にも値しない投資と称するどぶに金を捨てるすすめ』/オイシイ儲け話は教えてくれないけれど。──株価のフラクタル変動を家元自ら語ってくれます/人間の合理性の限界を見きわめるための本/読んでひがもう非モテたちよ!/世界金融危機の顛末記:正しい者が勝つとは限らない

第6章 経営
日本型システムからの自由と解放/おもしろいだけじゃだめなんだ/あまりに常識的な経営者のお題目集/新聞の取材力が十分に発揮されたメガバンク統合ドキュメンタリー/いまや常識となったドラッカーの原点/告発の書か、優れた経営手法の実録か?/驚異のプレゼンでもダメな中身は救えない/労作ながら有名すぎる異才の伝記として新機軸を見いだせず/あまりエピソードがなく、また怪物の怪物たる所以についての洞察が皆無で残念/企業アイデンティティ形成過程を分析した面白い本

第7章 ビジネス
ぼくの秘密を教えよう:コンサルタント業究極の暴露本/本誌の読者たる最高の知識人諸子必読──『パーキンソンの法則』と組織の病理/現場で足で稼げ! 知識は現場から生まれる/具体性に富んだニューヨーク市長の各種施策/みんなが知ってるつもりの財界のすべて/モジュール化による効率性向上/お気楽なリーダーシップなんかありません/無内容きわまる駄本/働くというのはどういうことなのか?/口で言ってることとは裏腹にお金に縛られた不自由な本/堅実なプレゼンテーション手法紹介/マーケティングの基礎の基礎/顧客の顔色をうかがっても売れない!/悪者扱いされがちな看板側からの魅力誘発手法/失敗を前提にシステム設計をするには?/施設経営再生の実録/日本各地にひそむすごい中小企業/理屈とかけ声だけのMBAなんかいらない/起業にあまり幻想を抱いてはいけないことを実証分析/だらしなくてもだいじょうぶ/メッセージぶれてません?/好奇心を引き出し自由に変わり者であることを恐れず……つまらん/経済学のプロにビジネスのセンスがあるとは限らないのだ/現実ばなれした会社論の問題の根っこはどこにあるのか/インチキ外人の無知垂れ流し本。いまだにだまされている人がいるとは!/主張がすべてはずれていた駄本の、柳の下のドジョウを狙ったさらなる駄本

第8章 政治
理念と現実のせめぎあい/だれも考えたことのない「平和」について/「国際」人諸君、これを読んで「リスク」を学びたまえ──およびクレア・デーンズ in 「My So-Called Life」/小さな本にこめられた、現代のイスラム談義への大きな批判/組織内で苦しんだ人なら身につまされる、いろんな意味で絶望の名著/マクナマラの悲しい弁明/アフガン爆撃への道だが、米政府事務手順解説書の趣きすらある/恐怖どころか「バカ殿シリーズ」を思い出させるトランプ政権の内実/軍事力こそすべて! のネオコン思想全貌/原著から第三部を完全改竄した不誠実な本/国際機関は本当に日本や世界のためになっているの?/新しい福祉社会の見取り図を提案する希有な本。ただ監訳者の我田引水解題はないほうがまし/PFIを口実にした刑務所自体の改革/シビリアンコントロールは本当に有効か?/ゾンビ相手の外交理論、人間にも通用するか?/「市場制民主主義──選挙権を売ろう! ―TN君に捧げる、おれの政策提言/反民主主義はおかしく、そして居心地悪い/社会の背後にある細かい仕組みへの無配慮/配慮について

第9章 歴史
よくぞ昭和に生まれけり:裕仁天皇の時代/君主制に未来はあるか?/『マオ』における毛沢東の思想形成史の不在/チアン=ハリデイ VS フィリップ・ショート:二つの毛沢東伝を比べると/専門家による本当に有益な書評のありかた/公式毛沢東伝とも言うべきものながら、プロパガンダにとどまる/支離滅裂で二〇世紀末で大躍進の意味すら理解できていない悲惨な本/文化大革命で日本の左翼知識人のうろたえぶりだけが伝わってくる一冊/文化大革命翼賛文書。フランス現代思想の浅はかさの一端をどうぞ/ソ連強制収容所の凄惨な歴史と教訓について/ムッソリーニについての「修正主義」的な伝記/大英帝国のスーパーおばさんが見た李朝朝鮮の実態/無謀だが壮大な試み:でも堂々巡りになってないか?/身に染みて感じられる宦官たちの実態/マヤ文字解読をめぐるイデオロギーと政治攻防/明解。白川静や藤堂について客観的に評価がわかって嬉しい/巧みで味わい深いが、初出時点で完結してしまっている印象強し

第10章 思想・ノンフィクション
各論賛成、総論反対:宮崎哲弥『正義の見方』の反動的立脚点/知の統合の可能性についての、壮大ながら具体的な見通し/家族に期待しすぎなさんな/かわいそうな星占いと現代人/小国に教わる国の存続理由と愛国心/個人的な恨み節を一般化できると勘違いした、偉大な学者の悲しい本/脱北者たちの実像とその心の歪み/各種思想の持っていた可能性とその実際の影響を具体的に描き出す/突撃ライフルの名機から見えてくる武器とその取引の実態/ダッチワイフのあれこれ/ビールが持つ意外な闘争の歴史/ゲーミフィケーションでつらい仕事も楽しく?/世界各国の、普通の人の家計簿とは? 各国の似て非なるお財布事情/本当の「天職」を見つけた人たち/抜群におもしろい、日本でのミシン史。物販と金融と生産に消費、産業と文化と女性の社会進出、なんでもあり!/せっかくの調査が強引なイデオロギーはめこみで台無し

おわりに

著者
山形浩生(やまがた・ひろお)
1964年、東京生まれ。東京大学大学院工学系研究科都市工学科およびマサチューセッツ工科大学大学院修士課程修了。
大手シンクタンクに勤務の頃から、幅広い分野で執筆、翻訳を行う。
著書に『新教養主義宣言』『たかがバロウズ本。』ほか。訳書にクルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』、ピケティ『21世紀の資本』、スノーデン『スノーデン 独白:消せない記録』、ディック『ヴァリス』ほか。

Tunes Of Negation - ele-king

 年明け早々から大変なことが起こっている。いや、緊張それじたいはもっとまえからはじまっていたので、たんにわれわれが他者に無関心すぎるだけというか、ようするに今回は日本における中東の報道の非対称性があらためて浮き彫りになったということなのかもしれないけれど、個人的に昨年もっともよく聴いたアルバムがイランの電子音楽家ソウトによる「生を破壊する傲慢とそれにたいする抵抗のサウンドトラック」だったこともあり、そしてちょうど年末に同作を聴き返したばかりだったこともあり、なにか絶対的な存在から啓示を受けているような気がしてならない。あるいはラファウンダのルーツもイラン(とエジプト)だし、ふだん好きで動向を追っかけている音楽たちが、ここ数日、なにかのしるしのように再浮上してきているのだ。シャックルトンの新作もそのしるしのひとつだった。
 00年代半ばにダブステップの隆盛と連動するかたちで頭角をあらわし、以後ミニマル・ミュージックやアジア~アフリカの音楽を貪欲に吸収、独自に昇華させていったサム・シャックルトン。彼自身はイングランドのランカシャー出身だけれども、その新作『Reach The Endless Sea』のタイトルは、13世紀スーフィズムの詩人、ジャラール・ウッディーン・ルーミーの詩に由来している。ルーミーが生涯の大半を過ごした地は現在のトルコにあたるが、彼はペルシア文学の巨星としてイラン文化にも大きな足跡を残している。

 おそろしいほどに毎度マンネリとは無縁なサウンドを届けてくれるシャックルトンだけれど、「否定の曲たち」という意味深な名を与えられた今回のチューンズ・オブ・ネゲイションは、タクミ・モトカワ(鍵盤/パーカッション)およびラファエル・マイナー(マレット)とのコラボレイション・プロジェクトである(+ヴォーカルで、〈Editions Mego〉からもリリースのあるヘザー・リーが2曲に参加)。シャックルトンらしいトリッピーでトライバルな感覚はそのままに、オルガン(好きですね)や鉄琴の音色、3を強調した(ポリ)リズムが全体のムードを決定づけており、バンド内の有機的な衝突が最大の聴きどころとなっている。
 冒頭 “The World Is A Stage / Reach The Endless Sea” ではヘザー・リーの歌と宗教的な響きの鍵盤が全体を支配しているものの、途中で強烈なパーカッションに主導権を奪われてもいる。続く “Tundra Erotic” では、おなじく鍵盤とパーカッションによって生成される催眠的な空間のなかで、どことなく OPN のエディット法を思わせる声の断片たちが幽霊のように顔をのぞかせている。“Rückschlag / Rising, Then Resonant” におけるインド古典音楽の要素やくぐもった音のかたまり、“The Time Has Come” のドローンなどにも目を見張るものがあるけれど、もっともキラーなのは先行シングル曲 “Nowhere Ending Sky” だろう。作曲に参加したモトカワの手によるものかもしれないが、2分過ぎに差し挟まれるメロディがじつにもの憂げで、すぐに過ぎ去ってしまうそのキャッチーな旋律を、背後のミニマリズムや後半のドローンが強固に脳裏に刻みつける仕組みになっている。

 しかし、『無限の海への到達』とはなにを意味するのだろう。レーベルのインフォによればそれは、シャックルトン本人が音楽で成し遂げたいことらしい。いわく、「変化を促し、光のなかへと入りこむこと」。ルーミーが開いたトルコのメヴレヴィー教団は、スカートをなびかせながら回転する舞踏で知られているが、かつてルーミーの作品をフィリップ・グラスがオペラ化していたことも合わせて考えると、シャックルトンもまたそのくるくるまわることで神に接近するという発想に、自身のミニマリズムを重ねあわせているのかもしれない。反復こそが互いのちがいを際立たせるのであり、すなわち他者へ到達するための契機なのだ、と。

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