「K A R Y Y N」と一致するもの

Just Off - ele-king

 米国生まれの漂泊のチェリスト、トリスタン・ホンジンガーはデレク・ベイリーのカンパニー、ミシャ・メンゲルベルグ、ハン・ベニンクらのICP、アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハやペーター・ブロッツマンとのグローブ・ユニティ、セシル・テイラーの欧州グループに名を連ねる歴戦の即興者であるばかりか日本にも浅からぬ縁がある。22年前の初来日のおりの近藤等則、ペーター・コヴァルト、豊住芳三郎との『What Are You Talking About?』はこの顔ぶれからすわ、ごりごりばりばりの即興かと身がまえたリスナーをあざやかにいなすフォービートあり、歌ものあり、全員が脳天から突き抜けて裏がえしになるかのような集団即興ありの、ジャズのポストモダンうんぬんのしちめんどくさい議論する以前の奇妙でひとなつこい顔つきでひとを喰った即興カーニヴァルの趣だった。そこでのトリスタンは弦を軋ませメロディを紡ぐだけでなく、調性と常道からの逸脱合戦を近藤とくりひろげながら、狂言回しとして即興の導線をきりもりした。それはたぶん、ことジャズにおいて、チェロの構造上の特性(音域とか)とそこから導かれた役割とが、彼の生来の資質とタマゴとニワトリさがらの関係なるところから来るものでありいまもそれは変わらない、というか変わりようがないけれども変わらないからといってなにか問題でも?

 ジャスト・オフはトリスタンと千野秀一、向島ゆり子、瀬尾高志との、上述のアルバムと同じくカルテット編成だがこちらは三艇の弦楽器に千野秀一の鍵盤を加えた変則弦楽アンサンブルが基調である。表題の『The House Of Wasps』の“Wasps”はトリスタン自身ライナーで断っているとおり、ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタントとは関係ない。もっといえばブラッキー・ローレス率いるメタル・バンドとも(たぶん)関係ない。これはまったくの余談だから読み飛ばしてけっこうだが、私はブラッキー・ローレスは血濡れたパブリックイメージを保つためみずからヤスリで歯を削り尖らせていたとむかしものの本で読んだ憶えがある。ものすごく痛いそうだ。トリスタン・ホンジンガーは歯を削ることはないであろう。しかしながらしっかりした歯並びの間から彼の発する音楽言語はもはやトリスタン・ホンジンガー固有の独立語といえるほどのものだ。トム・コラともハンク・ロバーツともちがう。無数の記号を散りばめるのに、ネコのようの軽やかに身をかわし、毛を逆立てたと思えば日だまりに丸まって前足を舐めるような弓づかいに指づかい。朗々としたバリトンに高音の金切り声。その声音は意味を伝えるためのみにあるものではない。私たちがラッキーなのは音はどんなものであれともかくも聴けてしまう、聴いてしまうことだ。

 ジャスト・オフもまた弦楽曲の既視感を借りながら形式を断裁し、飛躍をひそませることで異化しながら曲のかもす情感にゆさぶりをかけつづけ、沖縄民謡やらキャバレー・ミュージックやらフリージャズやらがひょっこり顔を出す数分の旅路のうちに手の内に掴まえていたはずのモチーフが気づけば雲散霧消している。これを現代音楽ないしインプロにくくって知ったふうになって遠ざけるのはもったいない。前半の組曲形式に、“Ace Of Wasps”“Queen Of Wasps”“Jack Of Wasps”などの「wasp」入りの曲の数々。そこでは12本の弦と白鍵と黒鍵が追いかけっこするうちに結び目にもつれたかと思えば解けていく。もちまえのユーモア感覚こそ今回はやや抑え気味だが、大道芸人は宮廷道化師にとりたてられたからといってやることに変わりはない。だからといって彼らはトリックスターなどではない。それもまたわかったつもりになるための道具にすぎない。『The House Of Wasps』にはただ蜂(wasp)の羽音に似た唸りがあり、複雑性の謂いともいえるそれに擬態/描写するトリスタン・ホンジンガーの変わらぬ資質があり、ジャスト・オフにしかできない協奏と狂騒がある。まったく自然だ。

Praezisa Rapid 3000を知っているか? - ele-king

 2012年、world's end girlfriendやSerphなどのリリースで知られる〈noble〉が、海外バンドとして初めて手掛けたPraezisa Rapid 3000。彼らはドイツはライプチヒを拠点として活動するトリオで、マウント・キンビー(Mount Kimbie)やアントールド(Untold)などベースミュージック勢との共演がある一方で、今回のツアーでもコラボレーションするように、〈Morr Music〉のSing Fangなどカラフルでドリーミーなエレクトロニカとも共振する音楽性が魅力的だ。今回報ぜられた来日情報は桜の頃を過ぎるが、楽しみに待ちたい。

■Praezisa Rapid 3000 - Japan Tour 2015

ドイツはライプチヒの新世代トリオ、Praezisa Rapid 3000。待望の初来日ツアーが今年4月に決定しました。
ドイツ東部ザクセン州の音楽都市、ライプチヒを拠点に活動するPraezisa Rapid 3000は、Simon 12345、Devaaya Sharkattack、Guschlingの3名からなるトリオバンド。ネパールやインド、中近東など、多国籍なエキゾチック・サウンドに最新のベース・ミュージックを掛け合わせた2nd アルバム『Miami/Mumbai』のリリースも記憶に新しい彼らが、今年4月に待望のジャパン・ツアーを行います。

東京公演には、昨年12月に1stフル『White Girl』をnobleよりリリースしたmus.hibaと、100%サンプリング製法を謳い、昨年11 月にVirgin Babylon Records より初のCD アルバムをリリースしたcanooooopyも登場。京都では、ベルリンのMorr Musicからリリースする共にアイスランドのアーティストSoleyとSin Fangとのコラボでの来日公演を行います。山形公演には、nobleとも何かと縁の深い現地在住のアーティスト/DJ のSHINYA TAKATORI も出演。埼玉公演には、kilk 勢に加え、2nd『Miami/Mumbai』にもリワークで参加した服部峻も大阪より駆けつけます。

今回のツアーには、Simon12345による別動トリオSimon12345 & The Lazer twinsのメンバー二人もサポート・ミュージシャンとして来日し、5人編成でのパフォーマンスを行います。

世界中の好事家たちを魅了する、錬金術師めいた抜群のコラージュ・センスで生み出されるレフトフィールド・ポップス、どこかユーモラスで謎めいた、新世代のハイブリッド・サウンドを、ぜひ生でご堪能ください。みなさまのお越しをお待ちしております。

■Tour Details

Praezisa Rapid 3000 - Japan Tour 2015

東京公演:
Miami/Tokyo
4月22日(水)
東京・渋谷 O-nest(https://shibuya-o.com/category/nest
Live Act: Praezisa Rapid 3000、mus.hiba、canooooopy
開場:19:00/開演:19:30
料金:3,000円(前売)/3,500円(当日)_ドリンク代別
チケット:ローソンチケット(Lコード:71522)/e+
問い合わせ:O-nest(https://shibuya-o.com/category/nest

京都公演:
night cruising「Praezisa Rapid 3000 Japan Tour 2015 "Döbeln/Kyoto"」+「sóley & Sin
Fang Japan Tour 2015 in Kyoto」
4月23日(木)
京都 METRO(https://www.metro.ne.jp/
Live Act: Praezisa Rapid 3000、sóley、Sin Fang、miaou
開場:19:00/開演:19:30
料金:3,000円(前売)/3,500円(当日)_ドリンク代別
予約:info@nightcruising.jp
問い合わせ:night cruising(https://nightcruising.jp/

山形公演:
Yamagata/Mumbai supported by RAF-REC
4月26日(日)
山形 sandinista(https://www.sandinista.jp/
Live Act: Praezisa Rapid 3000、SHINYA TAKATORI、about me
DJ:Satoru Akiyama (CSGB)、A-bit (slow motion)、Takatox、
Live Painting : SOLID
開場&開演:19:00
料金:2,500円(前売)/2デイズチケット : 3,000円(※27日のアフターパーティーとの通しチケット
です)/3,000円(当日)_ドリンク代別
予約:RAF-REC(https://rankandfilerec.com/)/sandinista(https://www.sandinista.jp/
問い合わせ:RAF-REC(https://rankandfilerec.com/

山形公演アフター・パーティ:
pr3k ancient spacebase
4月27日(月)
山形 RAF-REC(https://rankandfilerec.com/
DJ:Simon12345、Devaaya Sharkattack、;..(from Praezisa Rapid 3000)、SHINYA TAKATORI
(RAF-REC)
開場&開演:19:00
料金:1,000円(当日)
問い合わせ:RAF-REC(https://rankandfilerec.com/

埼玉公演:
Saitama/Detroit
4月29日(水)
埼玉・大宮 ヒソミネ(https://hisomine.com/
Live Act: Praezisa Rapid 3000、服部峻、Aureole、at her open door
開場:18:00/開演:18:30
料金:3,000円(前売)/3,500円(当日)_ドリンク代別
チケット:Peatix(https://peatix.com/event/72632)
問い合わせ:ヒソミネ(https://hisomine.com/

 

ツアー企画・制作:noble
共催:night cruising(4/23)、RANKandFILE RECORDS(4/26, 4/27)、kilk(4/29)
助成 ドイツ連邦共和国外務省
協力:Goethe-Institut ドイツ文化センター、HiBiKi MaMeShiBa (GORGE IN)
ツア


Frank Bretschneider - ele-king

 フランク・ブレットシュナイダーは東ドイツ出身の音楽家・映像作家である。1956年生まれで、あのカールステン・ニコライらとともに〈ラスター・ノートン〉の設立に関わっている人物だ(フランク・ブレットシュナイダーとオラフ・ベンダーが1996年に設立した〈ラスター・ミュージック〉と、カールステン・ニコライの〈ノートン〉が1999年に合併することで現在の〈ラスター・ノートン〉が生まれた)。

 ブレットシュナイダーは1980年代より音楽活動をはじめている。1986年にAG Geigeを結成し、1987年にカセット・アルバムをリリースした。いま聴いてみると奇妙に整合性のあるパンク/エレクトロ・バンドで、現在の彼とはまるでちがう音楽性だが、そのカッチリとしたリズムに後年のブレットシュナイダーを感じもする。その活動は東ドイツのアンダーグラウンドの歴史に大きな影響を残したという。
 そして1999年から2000年代にかけて、正確/複雑なサウンド・デザインと、ミニマルなリズム構造による「数学的」とも形容できるグリッチ/マイクロスコピックな作風を確立し、あの〈ミル・プラトー〉や〈12k〉などからソロ・アルバムをリリースすることになる。コラボレーション作品も多く、たとえば〈ミル・プラトー〉からテイラー・デュプリーとの『バランス』(2002)、〈12k〉からはシュタインブリュッヘルとの『ステータス』(2005)などを発表した(どちらも傑作!)。カールステン・ニコライ、オラフ・ベンダーとのユニット、シグナルのアルバムも素晴らしいものだった。また昨年(2014年)もスティーヴ・ロデンとの競演作(録音は2004年)を〈ライン〉からリリースした。

 2000年代中盤以降のソロ・アルバムは、おもに〈ラスター・ノートン〉から発表している。『リズム』(2007)や『EXP』(2010)などは、反復するリズム構造と、複雑なグリッチ・ノイズのコンポジションによってほかにはない端正なミニマリズムが実現されており、レイト・ゼロ年代を代表する電子音響作品に仕上がっている傑作だ。また、2011年にコメット名義でリリースした『コメット』(〈Shitkatapult〉)もフロア向けに特化した実に瀟洒なミニマル・テクノ・アルバムである。
 2013年、〈ラスター・ノートン〉からリリースした『スーパー.トリガー』は、カールステン・ニコライとオラフ・ベンダーのダイアモンド・ヴァージョンとも繋がるようなエレガント/ゴージャズなエレクトロ・グリッチ・テクノ・アルバムである。いわば「音響エレクトロ」とでもいうべきポップでダンサンブルな音響作品であり、彼の新境地を拓くものだった。

 そして、本年リリースされた新作において、その作風はさらに一転する。サージ・アナログ・シンセサイザーなどモジュラー・シンセサイザーを鳴らしまくったインプロヴィゼーション/エクスペリメンタルなアルバムに仕上がっていたのである。音の雰囲気としては2012年に〈ライン〉からリリースされた『Kippschwingungen』に近い(東ドイツのラジオ/テレビの技術センターRFZで、8台のみ開発されたという電子楽器Subharchordを用いて制作された)が、本作の方がよりノイジーである。アルバム全8曲41分にわたって、アナログ・シンセサイザーの電子音のみが横溢しており、電子音フェチ悶絶の作品といえよう。
 制作は2014年7月にスウェーデンはストックホルムのEMSスタジオに滞在して行われたという。じつはすでに2017年7月に、EMSでモジュラー・シンセを駆使する動画が公開されていたので、まさに待望のリリースでもあった。

 アルバム・タイトルはドイツ語で「形式と内容」という意味で、カオス(=ノイズ)を操作して、デザイン(形式化)していくという意味にも読み込める。ジャケットの幾何学的なアートワークや、アルバム・リリースに先駆けて公開されたMVにも、そのような「形式と内容=デザインとカオス」の拮抗と融合と反復とズレを感じることができるはずだ。

 この「フランク・ブレットシュナイダーによるモジュラー・シンセサイザーのみのアルバム」というある意味では破格の作品が成立した過程には、近年のモジュラー・シンセによるコンクレート・サウンドの流行も関係しているだろう。町田良夫からトーマス・アンカーシュミット、マシーン・ファブリックまで、サージなどのモジュラー・アナログ・シンセサイザーを用いた音楽/音響作品がひとつのトレンドを形成しているのである。
 しかし、そこはサイン派やホワイトノイズを用いて、リズミックかつ建築的なウルトラ・ミニマル・テクノを作り続けてきた電子音響・グリッチ界の「美しきミニマリスト」、もしくは「世界のミニマル先生」、フランク・ブレットシュナイダーの作品だ。「ツマミとプラグの抜き差しによるグルーヴ」とでもいうべき電子音が自由自在に生成変化を繰り返すのだが、そのフリーなサウンドの中にも、どこかカッチリとしたリズム/デザインを聴き取ることができるのである。とくにシーケンスとノイズを同時に生成させる4曲め“Free Market”にその傾向が随所だ。また、5曲め“Funkstille”や6曲め“Data Mining”などは、エレクトロニカ的なクリッキーなリズムも感じさせるトラックである。
 カオスと形式(=ノイズとリズム)に着目して聴くと、複数の音のパターンがモチーフになって変化していることも聴き取れてくる。その傾向は、1曲め“Pattern Recognition”、8曲め“The Machinery Of Freedom”に特徴的に表れている。いくつもの音のエレメントが反復・変化するモチーフとして展開していくさまが手にとるように(?)わかるだろう。
 そう、このアルバムで、フランク・ブレットシュナイダーが鳴らしている電子音は、インプロヴィゼーションであっても、どこかデザイン的なのだ。たとえば、3曲め“Fehlfunktion”のように極めてノイジーなトラックであっても、そこにデザイン化されたリズム(形式化)を聴取することが可能である。

 前作『スーパー.トリガー』における「80's的なゴージャズなエレクトロとグリッチ・ビートの融合」が2013年~2014年のモードだったすると、本作の情報量豊富なフリー・インプロヴィゼーション的電子ノイズの生成・運動感覚は、紛れもなく2015年のモードだ。もしかすると、現在のわれわれの耳は、電子音楽/音響の中にあるマシニックな形式性を侵食する音響の運動性・肉体性のようなものを求めているのかも知れない。その意味で、まさに「いま」の時代ならではのアナログ・シンセサイザー・アルバムである。現在進行形の電子音楽マニア、全員必聴と断言してしまおう。

 最後に。本作に関係する重要なプロジェクトして、フランク・ブレットシュナイダーがピアース・ワルネッケ((https://piercewarnecke.blogspot.jp/)と共同制作をした同名インスタレーション作品を挙げておこう(ふたりはベルリンで開催されたエレクトロニック・ミュージック・フェスティバル“CTM”でもパフォーマンスを披露したという)。このインスタ作品は、本作を思考する上で重要な補助線を引いてくるはずである。

SINN + FORM // Preview from Pierce Warnecke on Vimeo.


BURGER RECORDS JAPAN OFFICIAL STORE OPEN - ele-king

 BURGER RECORDSのジャパンオフィシャルウェブストアがオープン!! アメリカ本国から取り寄せたカセットテープはもちろん、日本オリジナルプロダクトのアパレル&雑貨を取り揃えております!初回購入者特典もありますのでチェックしてみてください!

JAPAN OFFICIAL STORE
https://burgerrecords.jp

JAPAN OFFICIAL Twitter
@BurgerRecordsJP

■ And A BURGER RECORDS STORE OPEN

2月20日(金)からAnd A渋谷店にて、And A BURGER RECORDS STOREがオープン!!

東京都渋谷区神南1-3-4 And A 渋谷店
TEL:03-5428-6720
営業時間:12:00~20:00

And A
https://www.and-a.com

□ about BURGER RECORDS

2009 年 LA のオレンジ・カウンティにて、ザ・メイクアウト・パーティ! (Thee Makeout Party!)というバンドのメンバーであった、リーとショーンによって設立された音楽レーベル兼レコードショップ。
 「ドライブ中にカセットで音楽を聴くのが好きだから」という理由で、カセットテープでの発売を中心に展開している。西海岸を中心に個性的なアーティスト・バンドを多数輩出。
 また、サンローランのクリエイティブ・ディレクターであり、音楽好きとして知られるエディ・スリマンも絶賛。レーベル所属アーティストであるザ・ガーデンズやレックスなどをモデルとして起用。
 さらにこれまでベックやダフト・パンクが登場したサンローラン ミュージック プロジェクト(SAINT LAURENT MUSIC PROJECT)において、バーガー・レコーズ所属のカーティス・ハーディングをフィーチャーするなど、ファッション界でも熱視線が注がれている。他にも、90年代より活躍するパンク・バンド、ザ・マフスが所属。


Vakula - ele-king

 ブライアン・イーノにベースを足せばジ・オーブ、ジョン・ケージにベースを足せばOPN、テリー・ライリーにベースを足せばジェフ・ミルズで、ペリー&キングスレーにベースを足せばジェントル・ピープル。そう、ニュー・ウェイヴにベースを足せばエレクトロクラッシュで、UKガラージにベースを足せばダブステップと、なんでもベースを足せばクラブ・サウンドに早変わりしてしまう(われながらテキトーだなー)。では、ピンク・フロイ ドにベースを足せば……『アルクトゥールスへの旅』である。TJ・ヘルツによるオブジェクトが19世紀の中編小説「フラットランド」にヒントを得れば、こちらは20世紀初頭にコーンウォールへと引きこもったSF作家の代表作を一大音楽絵巻に仕立て上げた。基本的にはシンセサイザーが波打ちつつも、曲によってはホーンが炸裂し、ギターもソロのリードを弾きまくる。風景は次から次へと移り変わる。まさに「旅」である。(1時間29分40秒)

 トーン・ホークやマーク・マッガイアーによるアメリカのクラウトロック・リヴァイヴァルとはやはりどこかが違う。ヨーロッパに特有の淀みがあり、〈デノファリ(Denovali)〉に通じる絶望感も成分としてはしたたかに含まれている。ここまでくるとディープ・ハウスという文脈もさすがに遠のいて、プログレッシヴ・ロックをエレクトロニック・ヴァージョンとして再定義したと捉えるほうがぜんぜん素直だと言える。そういう意味では2000年に再始動したブレインチケットの試みに追従するものとはいえ、全体的な瞑想性の強さでも踏襲している部分は多い。フュージョン的なセンスもまったくといっていいくらい同じ。違いがあるとすれば、それぞれの立場だろうか。ヴァクラはご存知の通り、停戦とは名ばかりの状態が続くウクライナからこの作品を発している。彼が住み、前作のタイトルにも使われたコノトープは軍事的な意味合いの多い場所だという。ヨーロッパで売れなくなった天然ガスを日本に売るため、サハリンと茨城をパイプラインで結ぶという計画がいまも話し合われていると思うと、ウクライナが置かれている立場はまったくの他人事とは行かないだろう。

 前人未踏の地へ突き進んでいく勇気を描いた『アルクトゥールスへの旅』は彼の音楽的なチャレンジ精神をトレースするものであると同時に、真実と虚偽やこの世とあの世を超越しようという哲学の書でもある。本人がそこまで意識しているかどうかはわからないけれど、戦争体験を経た水木しげるが『河童の三平』で同じ問いを投げかけていたことを思うと、彼の目の前で起きていることから人間というものについて何かを考えざる得なかったのだろうという推測はどうしても進んでしまう。そして、そのような思索のなかに彼がハウス世代であること、つまりは、プログレッシヴ・ロックの世代にはない若さやわずかな希望を聴き取れるような気がしてしまう。少なくとも〈デノファリ(Denovali)〉にはもはやこのような足掻きさえ感じられないからである。あるいはフランスのトランペット奏者とメキシコのモダン・ミニマルが組んだ『ビーイング・ヒューマン・ビーイング』である。2回めのコラボレイションとなるトラファズとムルコフのセッションはあまりにも絶望感が強く、アルクトゥールスへと旅立つ前にそのまま座り込んでしまう音楽にしか聴こえない。そして、もちろん、それには説得力がある。

 エリック・トラファズはジャズにクラブ・ミュージックの要素を持ち込もうとした先駆者のひとりである。初期の代表作となった『ベンディング・ニュー・コーナーズ』(1999)からいきなりラップをフィーチャーし、最後まで一定のテンションを保つ演奏内容はなかなか見事だった。その後もアラブ音楽を取り入れたり、トリップ・ホップをイメ-ジしているようなサウンドと、ここまでやってしまうと果たしてジャズ・ファンは聴くのかなというぐらいの逸脱ぶりを見せたものの、個人的にはどうにも締りのない演奏に成り果てていったという印象が拭えない。ムルコフとのジョイント・アルバム『メキシコ』(2008)はそのような低迷を経て彼がたどりついた新機軸であった。ベーシック・チャンネル・ミー ツ・ジョン・ハッセルとでもいえばいいだろうか。スウィングすることを拒否されたようなビートがストイックに構築され、トランペットはどこか凍りついたように悲しみを掻き立てていく。どちらかというとムルコフの世界観にトラファズが色を添えたものに思えた。

 これが6年を経て、もっと複雑な音楽性を表現するものに発展することとなった。リズムは多様性にあふれ、等しく絶望的でありながらも、そこにはさまざまな色合いが認められるような瞬間の連続に成りかわっていったのである。『人間であること』というタイトル=問いはヴァクラとそう遠くにあるものとも思えない。遠くまで行く体力はもうないかもしれないけれど、考える力なら同じかそれ以上だと言いたげでもある。社会が効率を求めれば意味と自由は失われるとマックス・ヴェーバーが予言し、それを回復するのではなく、肯定するところからはじめようといったハーバーマスの言葉を思い出す。

ジャンル的にはまったく異なるものの、『アルクトゥールスへの旅』と『ビーイング・ヒューマン・ビーイング』がどうしても合わせ鏡のように聴こえて仕方がない(ジャケット・デザインが似ていることには、いま、ここまで書いてから気がついた)。悪く言えばヨーロッパ的な観念性は堂々巡りでしかない。しかし、ヨーロッパ的な精神にはそれができることが取り柄だともいえる。ウクライナでまた兵士が4人ほど死んだらしい。 

Model 500 - ele-king

 昨年末、ファンカデリックは33年ぶりの3枚組33曲入りのオリジナル・アルバムを発表した。ジョージ・クリントンはいまはもうデトロイトにはいないが、彼の地にPファンクが存在したことは、デトロイト・テクノを語る上で強調し過ぎてもいいくらい重要である。「デトロイト・テクノとは、エレヴェイターのなかでクラフトワークとジョージ・クリントンが鉢合わせになった音楽」とはデリック・メイの名言だが、その「ジョージ・クリントン」の部分、すなわちモータウンとキング牧師の記憶、すなわちレベル・ミュージックとしての黒人音楽というコンテキストは、デトロイトならではのメルクマールであり、そういう意味でホアン・アトキンスとは、文字通りのゴッドファーザー・オブ・デトロイト・テクノだ。
 “ノー・UFOズ”は、ハウスとエレクトロ(=クラフトワーク)を融合した最初の曲だと評価されているが、同時にリリックには、Pファンクのセンスが注がれている。ダマされるな、UFOはいる(希望はある)、飛べ……この「飛べ(fly)」には、ハイになるイメージと飛翔するイメージが重なっている。
 いまならこの曲こそ重要だったと言えるのだが、当時はいろいろなものがいちどにどさっと来てしまったので、紛れてしまったのだろう。あるいは彼の政治性は70年代的なものを引きずった古くさいものに見えてしまったのかもしれない。アシッド・ハウスの時代では、ひたすら踊るのに歌詞は邪魔だった。

 モデル500名義でのアルバムとしては、1999年の『Mind And Body 』以来の4枚目(うち1枚はベスト盤だから、オリジナル・アルバムとしては3枚目)となる。マイク・バンクスとアンプ・フィドラーという、Pファンクを知るふたりが参加した本作は、まさに「クラフトワークとジョージ・クリントンが鉢合わせた」音楽としてのデトロイト・テクノだ。1曲目の“ Hi NRG”から順に聴けばいい。ファンクとテクノ、あやゆる要素をひとつのまとめた“ノー・UFOズ”の頃のアトキンスがいる。6曲目の“GROOVE”では、“マゴット・ブレイン”のエディ・ヘイゼルじゃないかと錯覚してしまうであろうギターソロが挿入される。
 アルバムのほとんどはクラフトワーク『コンピュータ・ワールド』のアフロ・アメリカン・ヴァージョンだが、作品にはミニマル・テクノがあり、驚くべきことにダブステップへのリスペクトもある。新生〈R&S〉は、5年前に、みんが知るところの青と銀色のスリーヴでモデル500の新曲をリリースしたものだが、あれはたしかに粋だった。これが俺たちのルーツだ。レーベル側の主張が見える。「CMYK」がヒットしていた頃だったからなおさら。
 アルバムの最後は、2012年に〈R&S〉からシングルとしてリリースされた“ Control”。クラフトワークが歳を取らないように、モデル500はいまも現役のマンマシンだ。電子音に命を吹き込み、リスナーの感情を発展させる華麗なマシン・ファンク。しかもこれはデトロイトでしか生まれない音なのである。

RHYDA(VITAL) - ele-king

都内を中心に活動するサウンドフリーク集団「VITAL」のMC。B-BOY文学でありながらパンクとも形容されるLIVEは唯一無二!必見です!

3.15土曜、今年一発目の”You gonna PUFF?”@吉祥寺WARP開催します。
チャートにもいれたvvorldはtoo smell record店長赤石による新band。
鬼すぎるのでチェック12!

3.15sat
You gonna PUFF?
@吉祥寺WARP
open 0:00 Entrance 1500/1d

Live:
櫻井響 / vvorld / RHYDA

DJ:
Libelate / OG / RESORT / m28 / g1
NSR Dubby X / charabomb

Clothing:
Delta Creation Studio
mo'
MBJP

https://vitality-blog.blogspot.jp/

special talk : tofubeats × Yoshinori Sunahara - ele-king


tofubeats
First Album Remixes

WARNER MUSIC JAPAN INC.

J-PopTechnoHouseEDMExperimental

Amazon iTunes

 つい先日デジタルで発売されたトーフビーツの『First Album Remixes』の1曲目が“Don't Stop The Music”の砂原良徳リミックス。新世代の作品にベテランが手を貸した最初のヴァージョンとなった。

 トーフビーツからは「現在」が見える。インターネット時代の(カオスの)申し子としての彼の音楽には、90年代を楽しく過ごした世代には見えにくい、重大な問題提起がある。ゆえに彼の楽曲には「音楽」という主語がたくさん出てくる。音楽産業、音楽文化、あるいは知識、音楽の質そのもの。

 自分が若かった頃に好きだった音楽をやる若者は理解しやすいが、自分が若かった頃にはあり得なかった文化を理解することは難しい。なるほど、ボブ・ディランは最近ロックンロール誕生以前の大衆音楽をほぼ一発で録音して、発表した。これは、インターネット時代の破壊的なまでに相対化された大衆音楽文化への本気のファイティングポーズなんじゃないだろうか……だとした、さすがディランだ。しかしもう時代の針を戻すことはできない。
 インターネット文化には、そもそもヒッピーの聖地近郊のシリコンバレーには、カウンターカルチャーの遺伝子がある、と今さら言うのは、80年代を懐かしんでいるわけではない。僕がUSの若い世代の音楽批評を読んでいてあらためて感じるのはそのことなのだ。ヴェイパーウェイヴの「日本」には、『ニューロマンサー』の「チバシティ」と似たものを感じるでしょう? それはずっとあり続けているのだ。
 が、しかし……それを反乱と呼ぶには、瞬く間に資本に取り込まれているのかもしれない。自由であるはずが、意外なほど窮屈だったりするのかもしれない。トーフビーツは、そうしたもうひとつの現実も知っている。親は、子供がライヴハウスに出演することよりも四六時中インターネットにアクセスしているほうを心配するだろう。電気グルーヴが登場したときのように、トーフビーツにも賛否両論の新しい価値観がある。ものすごーく引き裂かれたものとして。


だから電気グルーヴは聴かなきゃいけないみんなの教科書的なものなんですよ。──トーフビーツ
電気グルーヴが教科書ってどうかと思うけど(笑)。──砂原良徳

今日が初対面っていうのがあまりにも意外でした。

砂原良徳(以下、砂原):ハハハハ!

当然もう何回も会っているものかと。

砂原:クラブとかの入れ替わりで1回くらいはどっかのイベントでね。

トーフビーツ(tofubeats以下、T):それこそサーカスとかで1回くらい会っていてもおかしくはないんですけど。

砂原:会ってなかったね。

意外だよね。とにかく、今回のリミックス・アルバム『First Album Remixes』は、まりんが参加したってことが大きなトピックだから。トーフビーツ世代と電気グルーヴ世代がいままで一緒になることって、作品というカタチではなかったよね?

T:そうなんですよね。こっちからソニーに「マスターをください!」って言って“MAD EBIS”をリミックスしたことはあったけど。

砂原:あったねー! それは俺も聴いたよ。

T:実は僕、××(大手メジャーの新人発掘部門)に5年くらいいて。

砂原:あ、そこにいたんだ!

だってWIREに出てるんだよ。

T:WIRE08の一番上のちっちゃいアリーナに出てて。

しかも高校生で。

T:それで、てっきりそこからデビューすると思っていたら、ワーナーさんからデビューすることになって。

このひと(トーフのマネージャーのS氏)もそこだったんだよね。

T:だから、最後の最後に、これまでのリミックスをまとめたアルバムを出しましょうってなって、「“MAD EBIS”のパラをもらえますか?」って聞いたら、「DATがテープしかないから、スタジオに請求するから」という流れでいただいて作ったんですよね。

砂原:俺はそれを何で知ったんだっけな。電気のリミックスをやったんだって経緯を後で聞いたんだけど。

T:そのときに「“Shangri-La”じゃなくていいの?」みたいな話をされたって言いましたよね。

砂原:ははは、自惚れ。

T:ハハハハ!

あれは何年前?

T:まだ3、4年前ですね。

砂原:ちなみにいまはおいくつなの?

T:僕は24です。

砂原:まだ若いもんね。

T:90年生まれです。

砂原:90年生まれ! そうかぁ……。

それは……って感じだよね(笑)。

砂原:いやでもまぁ、そんなもんなんだろうね。

24歳のときって何してた?

砂原:電気グルーヴですよ。24歳のころはアルバムでいうと『DRAGON』のときかな。

ちなみにWIREに出ていながら、いままで面識がなかったじゃない? トーフビーツのなかで電気グルーヴとか砂原さんはどういう存在だったんですか?

T:卓球さんには僕はまだ会ったことないんですよ。

砂原:会ってないんだ。いずれはどっかで会うと思うけどね。

T:WIREは僕、2回出させてもらったんですけど、どっちもあいさつできなくて。

砂原:まぁ、DJしてないときは遊んでるからね。あと、あの日はあいさつしたりいろいろあるんだよね。

T:あとNHKの『MJ』でご一緒したときも、『メロン牧場』で「楽屋挨拶にきたら殴る」っていうのをまだ読んでいなくて、あいさつに行っちゃって、マネージャーさんに「ダメだから」っていわれて(笑)。

砂原:ハハハハ!

T:後から考えて、「そうだ! 『メロン牧場』を読んでなかった!」って。あの日はすごい後悔したんですよ。「ほんと、すいません」って。

WIREに出てたっていっても、まだ10代だったし、早い時間の出演で、早い時間に帰らなきゃならなかったしね。

T:そうなんですよ。だから帰らされてたんですよね。

砂原:そうかぁ。90年代に生まれたってことは、本当にうちらの音楽を聴いていたときは、4歳とか5歳っていってもウソじゃないっていうことだもんね。僕らのアルバムで『KARATEKA』って作品があるんだけど、あれはパカって開けたところに赤ちゃんが出てくるじゃん? あの世代ってことだもんね(笑)。

T:そうです(笑)。

砂原:恐ろしいな(笑)。

T:いま25周年じゃないですか? だから(電気グルーヴは)僕より年上なんですよ。

ハハハハ!

砂原:そうだね。まぁ、でもそのくらい時間はたってるよ。だって人間って20年ちょっとでこんなんになっちゃうんだよ(笑)?

T:でもそのときは『DRAGON』だったわけじゃないですか? 僕はまだデビューして間もないですけど、『DRAGON』のときは砂原さんはすでに何枚か出しているじゃないですか?

砂原:でもまぁ、あのときといまじゃ音楽のあり方が違うもんね。もっとリリースすることが主体だったというか。

そこは今日のテーマですよ。

T:そんな時代に生まれたっていう話ですから。

いま思うと象徴的だったね。トーフビーツがWIREに出たときに、ちょうど僕が〈マルチネ・レコーズ〉周辺の子たちをWIREに連れて行って。

T:ありましたね。

まだみんな高校生や大学生でね。4、5人で行ったんだよ。そのときに、みんなが「トーフくんが出てるんで」って言ってて。トーフは神戸で、みんな東京の子どもたちだからね。ネットでは知り合っていても、そんなに会えるわけじゃなかっただろうし。で、僕はそこで初めてトーフに会うんだけど、みんなを引き連れて会場に入ろうとしたときに、ちょうどタサカくんが通りかかって、「なんか引率の先生みたいだね」って言われてね。

砂原&T:ハハハハ!

おじさんが子どもたちを連れているようにしか見えないよね(笑)。でも、そのときの子供たちがネット・レーベル世代として日本のサブ・カルチャーに大きな影響与える存在になるわけだから。その晩のWIREではそういうことも起きていたんだよ。

T:その頃は、全員まだクラブに行ったことがない歳ですから。まだ18にもなっていなかったし。

砂原:でも本当にはじめるのってそのくらいの歳だったよね? 僕もライブハウスとかに出だしたのって高1とかだよ。中学の3年くらいのときに早いやつは出てたから。それを知って、「これはヤバいな」って焦った記憶があるくらいで。

T:おー。

砂原:高1でライブハウスに出てなかったら、もうやる気がないやつみたいな感じだったよ。

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ドミューンで初めて見たとき、「コイツ面白いな」というのと「いい顔してんな」って思った(笑)。──砂原良徳
宇川さんが悪意たっぷりで俺の顔のアップとかを超抜きまくってていまだにけっこう言われるんですよ。「コイツの説明よりも顔が面白い」って。──トーフビーツ

昔、もう何年も前だけど、トマドくんにインタヴューをしたとき、何に影響を受けたのか聞いてみたら、最初はライムスターとかが好きだったみたいで。

T:そうだ! 俺、その話、超好きなんですよね。

だから最初は日本語ラップが好きで、その延長で電気グルーヴへ……っていう。

T:リップ・スライムの“ジョイント”って曲を聴いて、2曲くらい聴いたらもうジャングルへいっちゃったんですよ。それで、この音楽をもっと聴きたいってなって電気グルーヴのラジオを聴いて。それで、こんなことになってしまいました、って出てきたのが僕の友だちのレーベルなんですよ。だから、日本語ラップを2曲くらい聴いて、あとはテクノを聴きだしたっていうのが僕らのヘッドというか。

砂原:へぇー!

T:だから電気グルーヴは聴かなきゃいけないみんなの教科書に的なものなんですよ。

砂原:電気グルーヴが教科書ってどうかと思うけど(笑)。

ハハハハ!

T:そこで流れていた当時の音源とかをシェアして、シカゴ・ハウスをチェックしてとかそんな感じでした。

砂原:なるほどね。

世代的に情報源がTSUTAYAなんだよね。小学校、中学校のお小遣いがないときはとくにね。

T:TSUTAYAだけで聴ける絞られた有名なテクノだけを。

砂原:でも野田さんとかが出していたコンピレーションはけっこうあるもんね。

石野卓球とやっていた『テクノ専門学校』ね(笑)。

T:そうなんですよ。あと、ソウルとかも『フリー・ソウル』でしか聴けない。ボサノヴァもコンピでしか聴けない。そういう感じでTSUTAYAで頑張るみたいな。そうやって最初はスタートしましたね。

そこでいきなり電気グルーヴの影響がね。90年代にはあまりなかったじゃない? 2000年代も出てこなかったと思うしね。

砂原:あんまり出てこなかったもんね。だから、それくらいの時間が一応必要だったというか。影響力もないわけじゃないけど。まぁ、こんなものなのかな、くらいに思っていて。だいぶ遅れて影響が出てきているところっていうのはあるのかな。

T:どうなんですかね。そのサイクルは意識したことがないですけど。

砂原:たまにイベントとか行って、若い子とかとごはんを食べながら話しをしてて「昔は何を聴いていたの?」って聞くと、「電気グルーヴとか」って言うんですよ(笑)。「いや、まじめに話しをしてよ!」「いや、まじめですよ!」みたいになるのね。

T:まじめですよ(笑)。

砂原:「えー! そうなの!」ってなることはありましたね。あとは「小学生のときに聴いていました!」とか。「ウソつけ! そんなことねぇだろ!」って思って計算してみたら当たってるっていう(笑)。

T:ハハハハ!


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まりんは、トーフビーツの名前を当然知っていたんだよね?

砂原:いつ知ったかは憶えてないけど、最初は「またこんな名前付けやがって」って思った(笑)。

T:えー! 名前なんすか!?

砂原:まずその印象で、自分にインプットされて。それでドミューンか何かに出てたのを見たのかなぁ……。なんかね、サンプルを細かく切り刻む説明をしていたような気がする。

T:やってました。

砂原:だよね? それってやっぱり、音楽の手法としてはメインにくるものではないじゃないですか? それを主食とするような説明をしてて、「コイツ面白いな」というのと「いい顔してんな」って思った(笑)。

一同:(爆笑)

T:その日すごく憶えてるのが、宇川(直宏)さんが悪意たっぷりで俺の顔のアップとかを超抜きまくってて。

砂原:ハハハハ!

T:いまだにけっこう言われるんですよ。「コイツの説明よりも顔が面白い」って。

砂原:実はそのとき、顔を見たてたら、瀧の若い頃とちょっとかぶって見えたんだよ。

一同:(爆笑)

砂原:それでたぶん、いい顔だって思っちゃったんだよ。その後、ツイッターとかフェイスブックみたいなものが浸透してくるとさ、どんなことをやっているかが自動的に流れてくるじゃん? 

T:はい。

砂原:それで曲を聴いてみたら、意外と普通の……

T:顔のわりにはちゃんとというか(笑)。

砂原:普通というか曲っぽい曲をちゃんと作っていて、「あ、こういうのも作れるんだ!」って思って。でもサンプルを切り刻むのはずっと主食なんだなって。強く認知されたのは、どこがポイントだったの?

T:メジャー・デビューの前にボンってなったのは、テイ・トウワさんと今田耕司さんが作った曲を弾き直して作った曲がインディーズ・ヒットになったんです。そこでアルバムを出して、そのままメジャー・デビューって感じだったんで。

“水星”だよね。

T:そうですね。

でも、その前の“しらきや”とか。

T:それがターニング・ポイントになっていると言うのは、野田さんだけですよ(笑)!

トーフビーツには電気グルーヴにとっての人生みたいな時期があったんですよ。

砂原:そうそう。最初はその印象だったんだよ。

T:某グループのブートレグとかを作ったり、リミックスのCD-Rをゴニョゴニョとかしてて、高校のときはそれでお小遣いを作っていました。

“しらきや”っていう曲は初期の電気グルーヴに似ているといえば似てるよ。言葉のコンセプト的には。

T:どうなんですかね。ハイ・ファイ・セットのループで2ちゃんのコピペを読み上げただけなんですけど。

砂原:わりと初期衝動をそのままパッキングするようなね。

ようするに、白木屋でバイトしている友だちとの会話みたいな感じで、「あの頃の俺は時給いくらだった」みたいな。アホみたいな会話のなかのディレイのかけ方とか。

砂原:でもさぁ、そういうのって面白いよね。ああいうのって、何だろうね。そういうのは、そういうときにしか作れないし。そんなくだらないこと大人になったらやらないから、やっとくべきだよ。記録しておくべきだね。

T:大事にとってあります。

砂原:あとからすごく面白くなると思うんだよね。

しかも、なんで俺がトーフビーツを知ったかっていうと、静岡のクラブで“しらきや”がかかってたんだよね。電気グルーヴっていまでこそ誰もが評価しているけど、初期の頃は、当時の若い世代が熱心に支持していた印象があって、その感じも似ているんじゃないかと思った。

砂原:へぇー!

若い大学生くらいの子たちのパーティに行ったらアンセムになってたんだよね。

T:青臭いヤツらだ(笑)。

砂原:それは随分いびつな状況だ(笑)。

T:いびつな流行り方をしていって、最終的には就職しようってなったときに、ワーナーさんが申し出をくれまして。まぁ、一応は体良くアーティストっぽく収まった感じなんですよ。

砂原:なるほどね。まぁ、でも、ミュージシャンも野球選手みたいなものでポジションがなかったらすぐに「いけ」って言われるけど、外で空いていたら「じゃあうちで」っていうのはあるよね。

まりんのマネージャー氏の前で言うのもあれだけど、本来であれば電気グルーヴを見いだしたソニーがね(笑)。

T:その話は実際に野田さんとしていたじゃないですか?

砂原:でもねぇ、そうじゃないところの方がいいかも。やっぱり過去にこういうことがあったってところに、当てはめちゃうきがしない? 

たしかにね。

砂原:だからそれが必ず正解だというわけじゃないからね。

まりんも昔、(YMOがいた)アルファ・レコードから出したいって思ったものなの?

砂原:思ったこともあったけど、ほんの一瞬だけかな。スタジオが見たかったからね。2回くらい見たけど。

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サンプルを切るのもそうなんですけど、切ると現実じゃない音を出したりできるのがよくて。ピッチを落とすのもそれに近いというか。──トーフビーツ
そういう意味でいうと、僕も昔、音楽を聴いていたときに、タンテで自分が好きなところにピッチを合わせて聴いて「コレは落とした方がいいんだよ」とか、「45回転でもいける」とかね。──砂原良徳

それでまりんはトーフビーツの、顔やサンプリング以外では、他にどんなところが気になってたの?

砂原:その、ネット・レーベルと言っていいのか、電気グルーヴを子どものころに聴いていた世代と言っていいのかわからないけど、なんかそういう地位みたいなものがうようよあって。そのなかのわりと目立っているひとつなんだなって認知はしてたね。やっぱり気にしてみてたんじゃないかな。やっぱり記事とかあるとクリックして読んだりとかしていたと思うし。興味がなかったらクリックすらしないからね。


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音は今回のリミックスより前も聴いてたの?

砂原:ネットにあがってるのとかは聴いてたよ。

T:マジっすか! ヤバい。

砂原:だから、最初の初期衝動っぽいやつとかも聴いたことがあるし。あと、わりと普通っぽい曲を聴いたときに、こういうのも作れるんだって思ったかな。

T:それはありがたいです。

砂原:それでなんか、化ける兆候が見えてきたなってそのときは思った。それでアルバムが出たっていうから、聴いたんだけど、「あっ、普通に作るんだな」って思ったかな。ただ、普通なんだけど、サンプルを切り刻むのがね。

T:本当はそれをやりたいけど、メジャーにいくと権利のクリアランスとかもあるので。

砂原:でもそういうのを取り入れるバランス感というか、それはよくできてるなって。電気とかだとさ、そうじゃなくて初期騒動をそのまま7インチで出そうとかってなっちゃうこともあったけど、それをひとりでうまくまとめてる気はしますね。

T:電気グルーヴを見てて思うのが、僕はひとりなんで、それができないっていうのか、それがずっと俺の悩みというか。このひとといたら、俺を開放できるとか。あと、このひとがふざけてくれるから、俺はまじめにやろうとか、そういうのもないので。

砂原:ソロはねぇ、いいところもあるけど、バンドっていいよ(笑)。

ハハハハ! それは何周目かして言える意見だよね。

砂原:バンドってホントいいよ。楽しいしね。

T:いいな!って思いながら見てます。

砂原:僕自身音楽を聴いてきてさ、ソロで好きなひとがいなかったわけじゃないけど、やっぱり最初に好きになるのはバンドだよね。僕の場合は。クラフトワークだって、最初はラルフ・ヒュッターを好きになったわけじゃないし。

たしかに。

砂原:4人が並んでああやっている感じがよかったわけで。YMOやディーヴォやトーキング・ヘッズとかもそうだけど。あのへんはバンドとしてかっこ良かったというか。

そうだよね。そのバンドっていう単位も、現代ではカジュアルではなくなっているよね。この10年で、いろいろなものが変わったからね。たとえば、トーフビーツの『First Album』を聴いてひとつ思ったことがあって。アルバムのなかで、テーマとして「音楽」って言葉をくり返し使うじゃない? まりんがリミックスした曲も“ドント・ストップ・ザ・ミュージック”だけどさ、「音楽を止めないで」っていうのはクリシェ的なところもあるんだけど、トーフビーツが「音楽を」とかって言うとさ……アルバムのはじまりも「音楽サイコー」っていう言葉でしょ。で、「音楽で~」って歌がはじまって、なんか、大袈裟に言うと、「音楽」っていうものはいまどうなっているのか?っていうか。不自然なほど「音楽」という言葉が出てくるんだよ。

T:悲壮感が漂っていることが多いですからね。

「音楽」に、複層的な感情が込められている気がするの。それは夢であり、もはやたんなる消費物で、もはや過去の文化かもしれなとか……それは、トーフがインターネット時代に打ち込みの音楽をやっているということが、大きいと思うんだよね。初期の電気グルーヴがライヴハウスでやっていた時代とはぜんぜん別の世界でしょ。

砂原:うんうん。

だから、トーフビーツのアルバムを聴いていると、なんか問題提起を聞いているような気持ちになるんだよ。

T:みなさん打ち込みだけど、スタジオとかでやって、マスタリングへいって、トラックダウンもひとがやってとか、当たり前ですけど、結局僕は90%くらいが家ですもん。

あと、トーフビーツはわざわざ「僕はメジャー・デビューしました」ってすごく主張するんだけど、90年代に同じことを言ったとしても全然意味が違うというか。

砂原:うん。全然違うよね。

インターネット時代には、ヴェイパーウェイヴだとかチルウェイヴだとか、シーパンクだとかって、ある種のアマチュアリズムを面白がる文化空間があって。そこは、機会のチャンスの増えた分、音楽の価値が相対化している場所でもあるんだよね。だから、トーフの表現には、そのアンビヴァレンスがすごく出ている。

T:アンビヴァレンスというか、僕は単純に昔が羨ましいって一点張りなんで。

ハハハハ。でも『First Album』の前半なんかは、サンプリングをするにしてもスクリューしたりね、それは現代のネット音楽や若い世代が好んで使っている手法なんだよね。そういうディテールは、明らかに現代的なんだけどね。

砂原:あのピッチをすごく落とすのはなんなの? 西海岸のあれなの?

アメリカのテキサスにDJスクリューってやつがいてね。

T:「ピッチを下げたほうがよく歌詞が聴こえるじゃないか」って名言を残しているひとなんですけど。

砂原:なんか僕そういうのを探してたな。エイティーズのもののピッチをガツンと落としたものばっかりあって。そこに俺の曲のネタも入ってて。それで俺の曲とか聴いてんだって思って。

あー、まさにそのノリ。さっき言ったヴェイパーウェイヴとかって。

T:日本語は一番スクリューにいいっていう話しがあって。中高域が出てるから、下げるとちょうどよくなるっていう。

砂原:なるほどね。

T:僕は意味もなくピッチを下げるのが超好きなんです。普通に自分で聴くように、ピッチを70パーセントくらいにしたボニー・ピンクの曲とかがiPhoneに入っているんですよ。そういうのをやりたいみたいな。

砂原:あのピッチを落としたのを聴いたときに、意味はわからないけどすごくいいと思って。

T:DTMをやっていて一番いいのは、現実にはできない音が作れるってところが好きなんで。

砂原:例えばどういう音?

T:サンプルを切るのもそうなんですけど、切ると現実じゃない音を出したりできるのがよくて。ピッチを落とすのもそれに近いというか。

砂原:そういう意味でいうと、僕も昔、音楽を聴いていたときに、タンテで自分が好きなところにピッチを合わせて聴いて「コレは落とした方がいいんだよ」とか、「45回転でもいける」とかね。

T:『音楽図鑑』の“チベタン・ダンス”とかみんなが45でかけているのを見て、俺はあの曲はずっとあの速さだと思っていたんですよ(笑)。家で『音楽図鑑』を聴いてみたら、全然違うじゃんって。

ここ5年くらい、ずっとスクリューは流行りなんだよね。

砂原:あれ流行りなんだね。

アンダーグラウンド・シーンの流行りだよね。だから、トーフビーツは、ポップスを意識しているけど、アンダーグラウンドの要素もちゃんと入っている。そこも電気グルーヴっぽいんだけど、ただし現代では、そういうトレンドが生まれる場所はインターネットで、しかもそこでは音楽がタダでもある。

砂原:そうなんだよね。

だからトーフは、敢えてメジャーにいったってことを強調しなきゃいけない。

T:そうそう。いまはこれで生計を立ててるぞっていう。

そうすると、「音楽を止めないで」っていう彼の言葉も意味深に思えてくるんだよね。

砂原:「音楽を止めないで」は、音楽をやるひとの普遍的なテーマというか、それこそクラフトワークですら「ミュージック・ノン・ストップ」って言っているくらいだから(笑)。でもいまそう言うってことはそういう意味があるってことなんだね。

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俺がいま高校生だったらCDとか絶対に買わないと思うよ。──砂原良徳
データもクレジットカードがないから買えないしっていう話なんですよね。そうなるともう八方塞がりで。──トーフビーツ

インターネットはいろんなものを破壊しちゃったから。


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砂原:そういうことができていたのって僕らくらいまでだよね。僕より下の世代とかだと、ACOとかスーパーカーのナカコーとかさ、あのへんの世代って多いじゃん? あの世代になってくると、それで生活できていたひとと、そうじゃないひとが分かれてきている感じがするんだよね。そのくらいからそうなってきていて、現代では、ほとんど難しいっていうことだよね。

そういう意味ではトーフビーツは、シーンというか現在に対して問いかけをしている存在でもあるんだよね。

T:あと、あんまり言いたくはないんですけど、「こうこうこうだから買ってくれ」って言うって感じですけどね。

砂原:難しいよね。昔だったら普通にCDっていう形しか方法がなかったから、お金を出していたんだけど。

T:いまは形がどうこうっていうよりも、あんまりみんな聴いてもないって気もしますし。

砂原:シーンとか音楽の内容とかよりも、システムの話になっちゃうけど、昔だったらCDやレコードの棚とかプレイヤーを買ってさ、そういうことをやらなきゃいけなかったじゃない? 音楽を聴くためのシステムとして、棚からプレイヤーから全部あったってことなんだけど、いまそれをきちんと代用できるものがないんだよね。

T:たしかに。

砂原:たとえば、iTuneで買っても歌詞カードはどこで見るんだよっていう。

T:クレジットも見れないし。

砂原:そうそう。そういうところがパーフェクトにできるシステムが存在していないわけ。お金を稼ぐことだけがその唯一の道じゃないと思うけど、世界中の音楽ビジネスを守っていきたいってひとがいたら、ある程度は合意して統合したシステムを作らないといけないと、守れないような気がしているんだよね。
 だから、「いまハイレゾって言っとけば、とりあえずは稼げるか」みたいな雑なビジネスをしようとしているひとはいっぱいいるでしょう?

ハハハハ。

砂原:そうじゃないひともいるけども、せっかくハイレゾにするんだったら、もうちょっと音楽が周りのことも巻き込んでカルチャーを作ってきたことを認識して、いままでできてきたことを当たり前のようにできるようにしなきゃいけないんじゃない? なんでそうしないのかなって思うんだけど。

T:それはホントにマジですよね。

砂原:音だけ良くなったらいいと思う?

T:僕、ハイレゾはあんまり信仰していないです。

砂原:まぁ、音が良いのはいいんだけどね。

T:先日、小室哲哉さんと対談させて頂いたんですけど、作っていたときの音質で聴ければ大丈夫だよっていう。

砂原:それはそうなんだけど、歌詞カードもクレジットもないし。ヴィジュアル的に音楽を聴くためのきっかけみたいなものを与えてくれないとうかね。

T:ハイレゾの機械はデカいし、液晶画面は小さいから、iPhoneよりもテンションが下がるんじゃねえかって思いますよね。

砂原:それでなんでiPodクラシックがバカ売れしてくるかっていうと、入れる曲そのものがなかったりとか、電話とプレイヤーが一緒になっていると、電話がかかってくると音楽を止めなきゃいけないからっていうのもあるんじゃないかな。「音楽を止めないで」って言っているのにさ(笑)。

T:そうそう。それはありますね。

砂原:あるでしょう? だから音楽プレイヤーは独立する必要性があると僕は思うんだよね。

友人にハイレゾでまた音楽に夢中になっている男がいて、それなりに魅力はあるんじゃないの。

砂原:ハイレゾ自体はそうなんだけど、なんでそこで止まるんだってね。

T:結局はヘッドフォンを売るためとか、そういうところに着地しているような気がしてて。

砂原:カルチャーを守ろうとか育てるっていう気があまりなくて、「とりあえずお金になるものはなんだ?」ってところしか考えていない感じがしちゃう。音が良いことだけで満足できるひともいるとは思うんだけどね。

T:自分のインタヴューでも言うんですけど、「最近は音楽そのものがカッコいいと思われていないんじゃないか?」説というものがあって。最近、マネージャーと〈トリロジー・テープス〉の話しをしていて、あれを聴いてカッコいいって話せるひとが国内に数百人くらいしかいない。「これをどうすればいいんだ!」っていう話になっても、「どうすることもできないよね」ってなるんです。そもそも「CDを出しました、買ってください」ってところを、昔に比べたら聴いているひとの10分の1くらいしか音楽をカッコいいと思っていないんじゃないかなって。

砂原:テレビを見ているとさ、これから音楽が流行りますってなってCDプレイヤーが出てきて、芸人が「えっ! いまどき!?」って言うシーンを何回も見てるよ。だから一般的な考えだと、CD買ったり、CDプレイヤーを持っていることって「いまどきそんなことあんの?」みたいなことなんだよ。

T:電車で隣のひととかを見ていても、携帯でYouTubeを開いて曲を聴いてる、みたいな。

それはホントに多いよね。ほとんどスマホでYouTubeで音楽聴いているよね。

T:それが悪いこととは言えないんですけど。でも昔みたいに、ウォークマンでカセットのミックスを聴いてる俺ってもうないわけで。それはどうにかならないのかってよく思うんですけどね。

砂原:YouTubeが潰れるだけで、状況は随分と変わると思うけどね。

T:YouTubeが潰れても状況は変わらないんじゃないですか?

砂原:いや、変わってくると思うね。YouTubeに情報が一極集中で蓄えられているのが僕は問題だとおもうんだよね。だから、それが分散していけば違ってくるんじゃないかな。投稿系はここで、聴く用の音楽はここ、みたいにね。でも、YouTubeがどういうものかよくわからないからね。日本のものでもないし。

トーフビーツの場合は、そこでネガティヴなことも言っているけど……

T:恩恵も超受けている世代でもあるんですよね。

砂原:もしYouTubeに違法アップロードがなくなったとしても、プロモーション的なことはそこでやるわけじゃん? そういう合法のものもあるわけで、それはこっちが認証するかしないかの話だから、それはそれでいいと思う。でも買ったCDを違法に拡散する権利を俺は獲得したと思っているひとがいるけども。

T:そのおかげで、僕たちが中高時代の音楽を聴けた側面も無視はできないというか。

砂原:それを言ったら、レコード時代からカセットのコピーとかはあったし。レンタル・レコード屋で堂々とカセットが売られていたりとか。そういうことは昔からある程度あったからね。みんながそうなったっていうのが問題なんだよね。

T:結局、それが普通になっちゃって、たまに大学生に会うんですけど、CDを買ったことがないっていうレベルのひともいるんですよ。CDドライヴがついていないパソコンもありますからね。

砂原:俺がいま高校生だったらCDとか絶対に買わないと思うよ。

T:でも、データも(高校生にとっては)クレジットカードがないから買えないしっていう話なんですよね。そうなるともう八方塞がりで。

砂原:なるほどね。カードがなきゃ買えないか。

T:母校の高校生に話を聞いたら、みんなPCでDJをはじめているんですよ。オートでピッチを合わせてくれるやるです。「曲はどうしてるの?」って聞くと「サウンドクラウドで落としてます」みたいな。どうしよう?ですよね(笑)。何もかける言葉がない、みたいな。

トーフビーツはインターネットの恩恵を授かりながら、アナログ盤も必ず出すじゃない? ホント引き裂かれているっていうか。

T:それはアナログを自分が買うからなんですけどね。

トーフのアナログ盤って売れているんだよね。CDもちゃんと売ってるでしょう。

T:でも、絶対的な量でいうと、1万って大学のひと学年より少ないわけですから。

まぁ、いまの時代を考えると、それだけでもね。

T:普通に考えて、1万売れたら僕らも「おー!」ってテンションが上がるんですけど、俺の母校のひとたち全員にCDが売れたらオリコンでデイリー1位だって思う虚無感というか。幕張メッセでフェスをやってて、ここにいるひとたち全員がCDを買ったらオリコンで絶対に1位って思う、あの感じが……。

砂原:いや、そう考えると1万なんて規模はすごく小さいよ。業界はそれに馴れちゃって、「1万、うぉー! やったー!」って感じかもしれないけど、冷静にみたら全然そうじゃないからね。

T:フェスもいいんですけど、「CDは買わなくて4千円のTシャツを買って帰るって、なんなんだそれ!?」って。

砂原:ハハハハ。

T:この状況はほんとにどうしよう?って思います。自分がそう思ってても、そうじゃないひとが大半だとしたら、俺にはこれはどうすることもできんと。でも「どうにかなるんやったら、一応ここにおったらおもろいかな」みたいな。この状況がどうなるか見てみたいなと。

砂原:昔は音楽を楽しもうと思ったら受け手に回ろうと思うことが多かったんだけど……

T:いまはみんなやり出すんですよね。

砂原:そう。やるってこと自体が音楽を楽しむ形に変わってきている。だから、電子楽器とかはそれなりに売れていると思うんだよね。

T:だから高校生のDJがめっちゃ増えているんですよ。

砂原:パソコンに何かをくっつける形で何かとりあえずはできるじゃない? そう考えると、受け手になるよりも送り手になって楽しもうってひとが多くて。たとえば、20人、30人のサークルみたいなものが星のように日本中にあってさ、定期的にイベントをやったりして。そこから爆発的に広がっていくことは稀だと思うけど、そういうものが点在していて音楽自体の勢いは、そういうところに担保されていると僕は思うんだよね。

T:楽器メーカーの調子がいいみたいな話ですよね?

砂原:だから消費していくという形だけじゃくて、消費しながらも送り手に回るっていうそういう状況に変わってきている感じがするかなって。

T:でも、純粋に音楽ファンとしてインストラクターと生徒だけみたいになるのって気持ち悪いなって気もするんですよね。

砂原:それはわかるね。

T:いま、DJスクールってむちゃくちゃあるんですよね。道玄坂にも大きいのができて。

砂原:学校を批判するわけじゃないけど、DJスクールって何を教えてくれるの?

T:知らないですよ、そんなの(笑)。言い方が悪いですけど、DJなんて30分あれば仕組みなんて全部わかるんですから。あとはそれをどうするかって話じゃないですか? ギターとかと全然違いますよ。

砂原:それこそ寺とかに3日くらい入って、最初の30分だけDJのインストラクションをしてあとは座禅でも組んで叩かれたりした方が、よっぽどいいDJができそうだよね(笑)。

T:座学みたいな話ですからね。

砂原:でさぁ、いろんなひとがいるんだけれども、たまにそういう若い子と接して「何かやってみなよ!」って言っても何をやっていいのかわからない。でも、何をどうやるかっていうことはみんなわかっている。この状況は異常だなって僕は思うんだよね。

T:最近よく言うんですけど、DTMをやっているひとは多いと。ただ、面白くないひともいると。

砂原:面白くないひとのほうが多いよ。好みは増えたよね。

T:でも、その溝は何なんだって話をみんなでしてたんです。たとえば素人とひとが、プロの描いた丸と素人が描いた丸を見分けられんのか、みたいな話で。僕らもDTMで作っている。それで若い子も作っていると。その間の違いを売上っていう意味でもそこまでちゃんと説明できていないし。

砂原:それはでも、説明できるものであったらつまらないと思うね。

T:でもそれで結局、「打ち込みってあんまりうまくないひとが多いんだ」ってイメージがついていって、「打ち込みとかダサくね?」みたいになったら大丈夫かよって思います。いまって音楽のほとんどが打ち込みですからね。いまのアイドルとかもそうですけど、よくわからないアイドルがいっぱい出てきて、良いアイドルもいるけど、「アイドルってつまんなくね?」ってあるけど、打ち込みがそうならないのかっていう。

砂原:わかる。たまにYouTubeとかに自分で作りましたってやつが上がってて、ヒドいのがあるときはあるよね。

T:あとはそれっぽいだけとか。上手いけど毒がないというか。

砂原:要するに手法だけを知っていてコアがないというか。

T:自分でお金を使って音楽を聴いていない、つまりギャンブルをして対価を得ていないから、そりゃそうだろって気もするんですよね。痛い目をみないと覚えないじゃないですか? だからネットで流行っぽいものを聴いて、それを作る方法を自分で調べて、それっぽいモノを作って俺に送ってくれたりするんですけけど「うーん」って思うんです。だけど、サークルでそうやってみんなで楽しいってなったら……。

砂原:わかるわかる。だから、それのことも言ってるんだよね。

T:だから自分が音楽をやるんだったら、説明をちゃんとしなきゃダメだ、みたいな。だからアナログを切ることもしないといけないわけです。それでも、わかってくれるひとはちょっとだろうって気持ちはあるというか。

砂原:若い子の方がそういう危機感はあるのかもね。

T:同世代に対しては余計ありますね。「コイツら、何も考えてないんだな」というか。

砂原:ちょっと、ソニーの会社にきてその話をみんなにこれからしてあげようよ。

ハハハハ。

T:そういうことを言ってたら、ソニーから3年くらい前にパーンってされて(笑)。「iTuneやりましょうよ!」、パーンッみたいな。

砂原:それでやってんじゃん、みたいなね。

T:あとあとね。あのときはスゲえ笑いましたよ。だからそのときはアグリゲーターと個人で契約して、僕はiTunesでシングルを出しました。そういう感じでやってましたね。

砂原:そういえば、ミュージック・アンリミテッドがなくなったんだよね? スポティファイに変わるんだっけ。あれは合併なの? 名前は消えるんだよね? それって吸収されたってことじゃないの(笑)?

T:まぁ、スポティファイの方がブランドは強いですよね。

砂原:データとして、いままでアナログやCDでできていたことがある程度は仮想現実として確立すれば、音楽産業にお金が入ってきて自分たちのやりたいことができると僕は思うんだよね。世界中のいろんな事情が関係あるからさ、どっちにいくかはわからないけど。最近、アナログが爆発的に売れてって言うひとがいるけど、あれは勘違いだから。

T:「爆発的」ではないですよね。

砂原:それこそスカイマークの株とかでもいいんだけどさ(笑)。

T:ハハハハ!

砂原:株を持ちまくったらちょっと上がるから。どんなもので落ちるときは大体落ちて、またちょっと上がるって感じだよね。だから、そのちょっと上がっているところを指して「去年の20倍」っていうのは、去年がすごく落ちていただけじゃんっていう。

でも、実際に工場にプレスを頼むと予約がいっぱいなんだよ。

T:まぁ、それは工場が減ったというのもありますからね。

UKとUSは事情が全然違っていて、ヨーロッパはどっちかっていうと昔のリイシュー版をアナログ180グラムで出すっていうのがメインなんだけど、USはトーフビーツじゃないけど、ネットの洗礼を世界でいち早く浴びている国なんだよね。最初にタワーレコードがなくなって、作品では稼げないかもという瀬戸際でやっている国だから、インディ・シーンにとってのアナログ盤、カセットテープは、ちょっと切実な問題かもね。

T:USとかってインディはフィジカルでちょろっと100、100くらいで出して、あとはデータで売ってツアーで回るって感じですよね。

砂原:「100、100」っていうのは100枚ずつ出すってこと?

T:そうですね。カセット100本、7インチ100枚とか作って。

砂原:100枚じゃねぇ……。

ちょっと話題になっている人でも、まあ、500枚限定から、いっても1000枚とかね。とにかく、音楽を取り巻くシーンは、こうやって変化しているわけですよ。

砂原:でも起こっていることは大体わかっているというか。気にはしていることだけどね。もし自分にたくさんのお金と決定権があったら、統一規格を作りたいなと。そうしたほうが、一番音楽って変わるんじゃないかなって僕は思うんだよね。

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すごいモノを作っているやつに「何を聴いてきたの?」って聞いて「いや、何も聴いてない」って答えられるのが一番恐いていうか、「うわぁ、お前すげえ!」って。──砂原良徳
でも、インターネットをやっていてわかったのは、何かしらをやっていたやつからじゃないと、結局は何も出てこないってことなんですよ。──トーフビーツ


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PC一台で音楽が作れて、発表の場もあって、それは、民主主義的には良いとするじゃない? もうひとつ問題提起すると、インターネット時代の作り手の多くが、歴史から切り離されているってことだよね。まりんやトーフビーツにはバックボーンがあるけど、歴史なんてそんな重たいモノ、必要ないじゃんっていう考え方もあるし……

砂原:俺はそのなかからとんでもないものが出てくる可能性ってかなり高いと思っているけど。

それはたしかにあるんだよ。

砂原:それが一番恐ろしいというか、すごいところっていうか。

さっき言ったペーパーウェイヴやシーパンクみたいなものって、ひょっとしたら彼らにはある程度の知識はあるんだろうけど。

T:彼らはどっちかって言うと、歴史参照派ですよ。

砂原:すごいモノを作っているやつに「何を聴いてきたの?」って聞いて「いや、何も聴いてない」って答えられるのが一番恐いていうか、「うわぁ、お前すげえ!」って。

T:でも、インターネットをやっていてわかったのは、何かしらをやっていたやつからじゃないと、結局は何も出てこないってことなんですよ。

砂原:なるほどね。

T:これが逆に言うとよくわかるというのがあって。今回のリミックスにまりんさんを呼んで、僕の友だちもたくさん入れたのは、言い方は悪いですけど、僕の友だちはプロの仕事を全然見たことがないから、自分と同じレベルの素材をもらってどうなるかっていうのを、見てほしかったっていうのもあるんですよね。

あー、そこには熟練や経験も必要だと。

T:自分がメジャーにいって、マスタリングをひとにやってもらったりとか、そういうことの機会さえ普通のひとには与えられていないわけですよ。今回のまりんさんの納品のされ方とかも、「ちゃんとこのビット・レートで長さはこのくらいで納品してくださっていますよ」とか、「原曲のパラデータをちゃんと歌以外のところも使っていますよ」とか。そういうのって勉強というよりも経験と自分が習得した技術の上にしか絶対に築けないんですよ。突然の天才も出てくるんですけど、そいつも見ず知らずにうちにやっているから、意識して勉強しないで出てくるって話で。

砂原:そうだね。

T:その手の知り合いが長野にひとりいるんですけど、結局は見ず知らずのうちに勉強していたってことなんですよ。してないって思っていただけで。昔みたいに、勉強のためにスタジオに入るような端から見て明らかに歴史を勉強したっていうのがないだけで、逆に家にいながらもトップクラスの勉強ができる時代にはなってきているんですよね。

砂原:それはそれでいいよね。

T:だから、僕らも早い段階でDTMをはじめられたと思うんですけど。

砂原:昔ははじめるとなったら一大決心というか。出家に近い感じだったからね(笑)。

T:何十万とか、何百万の世界ですもんね。DTMがギターみたいになればいいって思ったりもするんですよね。

砂原:昔は僕がテクノをやろうと思ったら、ドラムマシンを買って、シーケンサーを買って、シンセサイザーを買って、MTRを買ってってさ、一通りやろうと思ったら最低でも5、60万はかかっちゃうわけ。でもギターのやつは5万円で済むわけ(笑)。ギターはスタジオに抱えて来れるじゃん? 俺なんか父ちゃんにお願いして、車で運んでもらって機材を一緒にセッティングしてってすげえ大変だったんだよ(笑)。昔はホントに大変だったけど、いまは逆に一番楽になっちゃっているもんな。

T:そうですね。

砂原:USBだけもってきましたとかさ。

T:ライヴとかでは、僕はラップトップだけなんですけど、家で作るときはどうしてもそれがいやで。ハードを使いたくて、使いたくて、みたいなのがすごくありました。僕の周りで一緒にやっているひとはけっこうお金をハードに使ってますね。逆にみんなパソコンだけの音だから、それだけでやっていても面白くないというか、ベッタリしちゃうから。ハードを買うくらいの努力はしなきゃ無理っていうか。

砂原:買えば全てを解決できるとは言わないけど、でもやっぱりそこにはそういう差がある程度は存在するよね。

T:そうそう。めちゃくちゃあればいいってわけでもないですけど、必要なものは必要だなと。

砂原:ただ僕は、それなりの時間を使って、すごく高い機材を使ったりとか、すごく高いスタジオを使ったりしてきたけど、たまにインターフェイスとパソコンだけですごい音が良いひととかいて、そのときは「うわぁ、恥ずかしいな、俺」って思うね(笑)。これを使えば間違いなく音がよくなるって機材はいまもあるんだけど、僕はそういうのを安易に採用しないようにしているんだよね。やっぱり、同じ土俵で戦いたいというのが自分のなかであって。にしてもお金は使わなきゃだめだけどね。

T:そんなことを言ったらプラグインだってそうじゃないですか? パソコンだけでやるひともプラグインに金を使っているかもしれないし。

砂原:昔はプラグインもすごく高かったんだよ。

T:って言いますよね。僕が高校のときと比べても、いまは当時の半分以下というかね。

砂原:いや、4分の1くらいじゃない?

T:僕は高校生のときにアカデミック版のエイブルトンを買ったんだけど、それでも8万円とかして、「学生じゃ買えねえよ!」ってなったのを憶えてますもん。

砂原:プラグインを買うにしても、WAVESに何十万と使ってたよ。

T:WAVESは良いやつだといまでも40万くらいはしますよ。でも年に1回くらいは安くなったりするっていう。あれ、すげえ腹立つんですよね(笑)。

砂原:腹立つよね(笑)。でも、昔は売れたらお金が入るからさ、たとえば、ファッション、映像、文学の世界のひとたちが音楽の世界に入ってくるんだよね。だから違うジャンルの融合みたいなものが盛んにあったような気がするんだけど。そういうのが一時よりは減っている感じがするね。

T:てか、いまは全員がお金がないっていう。ファッションも映像もデザインもないし。

 

※以下、続編&ele-king vol.16(3月30日発売)に続く……。

 昨年末、青山ブックセンター本店さんにスピーカーと大量の7インチを持ち込んで行われたあのイヴェントを覚えていますか? 止められるまで止まらない、保坂和志さん×湯浅学さんによる音楽とトークの会〈音楽談義 Music Conversations〉が、花にさきがけふたたび催されます! 今度の会場は下北沢のB&Bさん。どうぞ界隈の散策がてらにご観覧ください。
前から後ろから、斜めに読んでも楽しい『音楽談義』は、ライヴ版でもやっぱり楽しい!

■『音楽談義 Music Conversations』(ele-king books)刊行記念
保坂和志×湯浅学 続・音楽談義~サン・ラーかディランかそのほか

 それぞれ小説家と音楽評論家として活躍する同学年のふたりが、おもに70~80年代のロック、ポップス、歌謡曲までを語り明かす、紙『ele-king』の同名人気連載が『音楽談義 Music Conversations』として単行本化! 音楽論にして文学論であるばかりか、時代論で人生論。他の記事とは圧倒的に流れる時間の異なる本対談は、このスピードでしか拾えない宝物のような言葉と発見とにあふれています。
今回はその番外編となる出張トークイヴェント・その2! 雑誌のほうでは毎度紙幅の都合で泣く泣くカットする部分もありますが、イヴェントとこの新刊はそんなあたりもばっちり収録のディレクターズカット版。歌謡曲からサン・ラーにボブ・ディランまで、止められるまで止まりません!
ぜひ、ふたりにしか出せないグルーヴを堪能してください。

■著者紹介

保坂和志(ほさか・かずし)
1956年山梨県生まれ。90年『プレーンソング』でデビュー。93年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、95年『この人の閾(いき)』で芥川賞、97年『季節の記憶』で谷崎潤一郎賞、平林たい子文学賞を受賞。著書に『カンバセーション・ピース』『小説修業』(小島信夫との共著)『書きあぐねている人のための小説入門』『小説の自由』『小説の誕生』『小説、世界の奏でる音楽』『カフカ式練習帳』『考える練習』など。2013年『未明の闘争』で野間文芸賞受賞。近刊に『朝露通信』。

湯浅学(ゆあさ・まなぶ)
1957年神奈川県生まれ。著書に『音海』『音山』『人情山脈の逆襲』『嗚呼、名盤』『あなのかなたに』『音楽が降りてくる』『音楽を迎えにゆく』『アナログ・ミステリー・ツアー 世界のビートルズ1962-1966』『~1967-1970』『ボブ・ディラン ロックの精霊』(岩波新書)など。「幻の名盤解放同盟」常務。バンド「湯浅湾」リーダーとして『港』『砂潮』など。近刊に『ミュージック・マガジン』誌の連載をまとめた『てなもんやSUN RA伝 音盤でたどる土星から来たジャズ偉人の歩み』(ele-king books)がある。

出演:
保坂和志
湯浅学

時間:
2015年3月1日(日)

15:00~17:00 (14:30開場)

場所:
本屋B&B
世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F

入場料:
1500yen + 1 drink order

詳細・お申込みはこちらから:
https://bookandbeer.com/blog/event/20150301_bt/


アイスランド・ミュージシャン・インタヴュー・シリーズ#2:
interview with Sindri Eldon(シンドリ・エルドン)

アイスランド・ミュージシャン・インタヴュー・シリーズ#3:
interview with Paul Fontaine(ポール・フォンティン)

アイスランド・ミュージシャン・インタヴュー・シリーズ#4:
interview with Leifur Bjornsson(レイファー・ビョーンソン)

 この2年、アイスランド・エアウエイブスというレイキャビックでおこなわれるフェスティヴァルで、アイスランドのインディペンデント・ミュージックの活き活きとしたシーンに感銘を受けた。フェスということもあって、都市自体が盛り上がっていたこともあるが、バンドのクオリティの高さ、年齢幅の広さ、国をあげてフェスをサポートする姿勢(飛行機に乗るとブローシャーが配られ、音楽プログラムには、エアウエイブスのチャンネルがある)などから、アイスランドという国にも興味が湧いた。
 初めてアイスランドに行ったときは、レイキャビック以外の郊外にも出かけたのでショックが倍だった。違う惑星かと思うくらい、厳しい自然の姿が目の前に広がる。これが日常なら、私たちは違った感覚も生まれるのではないかと思えるほど。

 ここに、アイスランド・シーンのキーパーソン3人のインタヴューを紹介する。3人とも、経済破綻に関係なく、アーティストはずっと貧乏だというが、バーに入るのに夜中の3時でも行列を作り、街で浮浪者を見たこともないし、治安も良い街では、その言葉の意味も、私たちの使っているそれとはちょっと違うのではないかと思えてしまう。
 街が小さくて、街を出て行っても、しばらくするとアイスランドに戻ってくる人が多いのもそのため?

 音楽、アートなどの文化に関しては、気候(寒くて外に出れない)、国民性(大酒呑みでフレンドリー)、アイスランドに対する批判的な意見はあるが、自分にはどうしようもない、ここに居るしかない、という一種の諦めが、創造性を掻き立て、クオリティが上げているのだろう。
 子供の頃から、文化に触れる機会が多々あることや(エアウエイヴスには親子連れに観客や18歳以下のバンドも多い)、アイスランドのイメージからは遠い、アフロ、レゲエ、ヒップホップ、ラップ・シーンまである多様性も、音楽シーンを独特にしている。それら音楽にアイスランド語が乗ると別物に聞こえる。
 平均的なアイスランド人はグローバリゼーションには関心がないようだが、シーンはとてもグローバリズムに感じる。

まず自己紹介をお願いします。

Sindri(シンドリ):僕は、あまり知られていないミュージシャンで、翻訳とソーシャル・メディアでお金を稼いでいます。

※Sindri Eldon
ミュージシャン(シンドリ・エルドン&ザ・ウェイズ)、ソーシャルメディア&翻訳家。アイスランド出身。
https://soundcloud.com/sindri-eldon

Paul Fontaine(ポール・フォンティン):僕はジャーナリスト/ライターのポール・フォンティンです。grapevine.isで僕の書いた記事が読めます。

※Paul Fontaine
ジャーナリスト、ライター。アメリカ、メリーランド州出身。
媒体grapevineで執筆。
Paulの記事はこちら: https://grapevine.is/author/paul-nikolov/

Leifur Bjornsson(レイファー・ビョンソン): 僕はレイファー・ビョンソンです。ロウ・ロアというバンドでキーボードやビート、サンプラーを担当しています。僕は、ロンドンで勉強をしていたアイスランド人の両親から生まれました。アイスランドに戻ってからは、西海岸の小さな街で育ち、怖いもの知らずの、とても自由な環境で育ちました。

※Leifur Bjornsson
アイスランドのバンドLow Roarのメンバー。アイスランド出身。
https://www.lowroarmusic.com

どのくらいアイスランド(レイキャビック)に住んでいますか。現地の生活について教えてください。

S:行ったり来たりしているけど、だいたいアイスランドに住んでいます。一番長くアイスランドから離れていたときで3、4年ぐらい。小さいときはロンドンに住んでいました。しかし、僕はアイスランドが大嫌いで、なんとか離れようとしています。頑固で頭が小さく、外国人嫌いで、貪欲な保守的な大バカ者と自己中心なスノッブが、不注意に共謀し、出来るだけ物を高く、視野を狭く、古い考えに持っていく、愚かで無意味な小さな国です。田舎は素敵ですが、それは人があまりりいないからです。

P:15年ぐらい前にアメリカからアイスランドに引っ越してきて、ここ8年はアイスランドの市民です。僕の人生のように、ここはとても快適です。

L:レイキャヴィックには高校に進学する為に引っ越し、それ以来ずっとここで暮らしています。レイキャヴィックは素敵な街ですが、小さいと感じる時が良くあります。幸運な事に、僕はバンドで、時々ここを離れる事が出来ますが、レイキャビックは、素晴らしい自然に囲まれているので、それもここに住む利点だと思います。

ポールはなぜイスランドに引っ越したのですか? アメリカからアイスランドに引っ越すのは簡単ですか?

P:僕は元々メリーランド州のバルチモア出身です(TVシリーズの「ザ・ワイア」を見たことあるならそこです)。アイスランドに引っ越したのは冒険心からです。1998年にヴァケーションで来て、国を旅行しているうちに何人かのアイスランド人に会い、同じ年の後半に、またこの新しい友だちに会いにきました。バルチモアに戻ってから、真剣にアイスランドに引っ越すことを考え始めました。何故なら……出来るときにやろうと決めたからです。もしうまくいかなかったら、戻ってきたら良いだけですし。結果うまくいったのです。ヨーロッパ以外の国から引っ越すとなるとアイスランドは難しいです。引っ越す前に、仕事と住むところが必要です(幸運にも僕には助けてくれる友だちがいました)。市民になりたいのなら、7年間は法に触れることができませんし、6ヶ月以上国を離れることは出来ません。ヨーロッパの人は、比較的簡単にアイスランドに引っ越せます。

バルチモアとアイスランド(レイキャビック)とではインディ・ミュージックシーンはどう違いますか。

P:面白い質問ですね。と言うのは、バルチモアとレイキャビックは同じようなインディ・ミュージックシーンがあると思うからです。お互いのショーに行き、サイドプロジェクトのためにメンバーを交換したり、バンドはお互いをサポートしています。ですが、アイスランドのミュージシャンは、バルチモアより世界に露出できる確率が高いと思います。

アメリカとアイスランドでは生活費などは違いますね。アイスランドは生活コストが高いですが、どの様に暮らしているでしょう。

P:アイスランドは世界で4番目に物価の高い国です。冗談じゃないです。しかも、右翼の政府は、食べ物の税を上げたばかりです。食べ物ですよ!

アイスランド語はとても難しい言語ですが、あなたはアイスランド語をはなしますか? もし話せないのであれば、そこに住んでいて疎外感など感じることはないのでしょうか。

P:僕はアイスランド語を話します。英語と同じ言語家族ですが、習得するのはかなり難しい言語です。僕は字幕のついたテレビをたくさん見て覚えましたが、この方法はオススメしません。僕もアウトサイダーの気持ちはわかります。まだ言葉を理解できない1年目は孤独でした。とにかく習えるだけ習って、移民の友だちも作り、結果たくさんのアイスランド人の友だちができました。

私は、2013/14年のアイスランド・エアウエイヴス時にレイキャヴィックに滞在し、ユニークなインディ音楽シーンと文化に魅せられました。アイスランドは、一度経済崩壊した国にも関わらず、少なくとも、同じように、経済的、将来の不安にさらされながら、活動している他の国のインディバンド達に比べて、とても元気で活発なエネルギーがあります。それはなぜでしょうか。

S:経済崩壊は、バンドの人たちに影響を与えませんでした。彼らは元々お金を持っていなかったし、崩壊しても、失うものがありませんでした。一般的に言って、この国はうまく渡っていて、ほとんどの人は借金のために働く賃金奴隷ですが、道で食べ物に困って倒れているわけではありません(いまの政府は、この10年の間にみんな貧困で死ぬように働きかけているけど)。なので、彼らは趣味でバンドをするための時間、お金、エネルギーがあります。ここの90%の音楽シーンはアマチュアが基本で、ミュージシャン、テクニシャン、ブッキング・エージェントも、本当の「仕事」を持ちながら、自分たちの音楽をサポートしています。ここにも、経済的、将来への不安はありますが、単純に、ミュージシャンでやっていける人はいないし、だから基本的に何も変わらないし、経済がどうであれ、僕たちは、やっぱり貧乏で必死にもがいているのです。

P:抜け目ない観察力ですね(笑)。たしかに、とくにレイキャヴィックは、長いあいだ、とても良い揺れ動くようなインディペンデント音楽シーンがあります。最近は、競合するようになりましたが、地元のバンドはお互いを助け合っていますし、違うバンドのメンバーたちが、同じ音楽シーンから出てきて、一貫性の感覚を加えます。正直に言って、インディペンデントミュージシャンは元々貧乏で、厳しい中で繁栄しプレイし続けるので、良くも悪くも、経済が音楽シーンに影響したとは思いません。

L:ここアイスランドは、たしかに生々しく、保存された才能に溢れています。音楽コミュニティはとても小さく孤立していますが、ほとんどのミュージシャンは、いくつかのバンドを掛け持ちし、リンクしています。アイスランドの音楽シーンの人びとは、音楽やアートを作ることだけに占領されず、ラジオやメディアなど、あらかじめ決められた基準にフィットしているような気がしますが、これが物事を本物で新鮮にしているのかもしれません。経済破綻のあるなしに関わらず、アートは発見されるのです。アイスランド通貨の低下など、良い面、悪い面はありますが、アイスランドは、いままでで最高に観光地として人気で、アイスランド文化やアートへの興味がどんどん上がりました。

レイキャヴィックに、マクドナルドやスターバックスがないのはなぜでしょうか?

S:マクドナルドやスターバックスが他の国で占めているニッチな部分を、ここでは他のチェーン店が占めています。マクドナルドの支店は、10年ほどありましたが、彼らは生き残れませんでした。なぜかはわかりませんが、アイスランドの人びとは、すでにドミノピザ、KFC、サブウェイなどを食べ過ぎていたので、マクドナルドがなくても困らなかったのではないでしょうか。スターバックスについては、アイスランドには、KaffitárとTe & Kaffiというふたつの地元のチェーン店があって、スターバックスと同じような機能を果たしているからだと思います。

P:はは、その通りです! 最後のマクドナルドがアイスランドを去ったのは2008年。マクドナルドの材料を輸入するにはコストがかかりすぎで、ちっぽけな値段でしかチャージできないからだと思います(マクドナルドには、彼らが生産した物しか使わないと言う、材料に厳しい規定があります)。それにマクドナルドは、ドミノピザなどの、他のチェーン店に比べ、アメリカンフードとして、そこまで人気がでなかったです。スターバックスに関しては、ここには、Te og Kaffi(tea and coffee) という同じようなチェーン店があって、すでにコーヒー市場を占領していて、さらには個人経営のコーヒーショップもあります。スターバックスのアイスコーヒーのボトルはスーパーマーケットで見かけますが、スターバックスがアイスランドで生き残れるチャンスは少ないと思います。小さな市場にたくさんの競争相手です。

 注:アイスランドで最後に出されたマクドナルドのチーズバーガー(2008年)が、6年たっても変わらないという記事がPaulも執筆する媒体に出ている。
https://grapevine.is/news/2015/01/26/last-mcdonalds-burger-sold-in-iceland-unchanged-after-6-years/

L:アイスランドにマクドナルドは昔ありましたが、スターバックスはないです。何故だかわかりませんが、大手の企業はこんな小さな市場、たった30万人の人口から、十分な利益が出ると思わなかったのでしょう。アイスランド人はクールなので、大企業はまわりにいらないという人もいますが、そうだとは思いません。アイスランドの郊外の生活を見たらわかると思いますが、何処でもあるような光景が広がっていて、全然クールだと思いません(笑)。

アイスランドの人びとは、反グローバリゼーションを意識しているのでしょうか? またアイスランドがEUに加盟しない理由はなんでしょうか?

S:アイスランドはEU加盟国ではありません。この問題はいまも続いていて、僕が覚えている限り、熱い討論になることもあります。いまの政府は、無能なハッカーと貪欲者、操られた田舎者によって成っていて、なかにはEUへの加入についての話し合いを辞めるように、任意に決める反社会者ギリギリの人もいます。なので、いまのところEUに加盟していませんが、いままで起こっていることを総体し考えると、それが良いのかもしれません。個人的にはどちらでも良いですし、正直に言って、僕の毎日の生活がからりと変わるとは思えないし、EU加入国になったら、魚が載っている馬鹿げたコインを使わなくてよいぐらいだと思います。
 反グローバリゼーションについてはわかりません。わかっているのは、グローバリゼーションがなければ、アイスランドは存在していないでしょう。我々はほとんどの物を輸入に頼っていますし、個人的に僕は、グローバリゼーションのプロです。でも君もわかっていると思いますが、僕にはアイスランド全体のことは話せません。

P:アイスランドから見て、グローバリゼーションとEUへの加盟は別の問題と考えています。平均的なアイスランド人は、彼らがグローバルな企業から買う製品は、発展途上国で低賃金で作られた物で、未開発で危険な時もあるとは、そんなに真剣に考えていません。
 EUについては、ほとんどのアイスランド人は加盟することに反対です。ただし、反対意見にも、問題について意見を混ぜています。いまの右翼の政府は加盟に反対していますが、反対の左翼は問題に対して国民投票を望んでいます。アイスランドがEUに加盟するのは、良くも悪くも、時間の問題だと思います。

L:グローバリゼーションはアイスランドではそんなに大きな問題ではないので、人びとはあまり気にしていませんが、EUは大きな問題です。EUに加盟しないのが、良いのか悪いのかわかりませんが、一般の人びとは良いと思っているのでしょう。アイスランドは、世界で10本の指に入る物価の高い国ですが、人びとはそんなにお金を稼ぎません。問題はアイスランドが他の国と天然資源を共有しないことかもしれませんが、僕にはわかりません。

ビョークのニューアルバムが発売されましたが、ビョークはアイスランドでも特別人気があるのでしょうか? レイキャヴィックで素晴らしいバンドをたくさん見た後では、ビョークもアイスランドではごく普通なのではと思いました。

S:君はだいたい正しいと思います。ビョークは、ここではそこまで人気ではありません。ヨーロッパで人気がでるまで、彼女やシュガーキューブのことを誰も凄いと思っていませんでしたが、ここでは良くある話なのです。実際同じことは、オロフ・アーナルズやオーラヴル・アルナルズ、アウスゲイル、オブ・モンスターズ・アンド・メンに起こっています。いまでも、ここでは彼らのことを聞いている人はあまりいません。彼らは、アイスランド以外で人気があるのです。ビョークは、ここ何年かでアイスランドの顔になってきましたが、いまでも平均的なアイスランド人はそんなに彼女を聞かないし、聞くのは他の場所と同じように、アーティなオルタナティブ・キッズのみだと思っています。

P:アイスランド人は、もちろんビョークが好きですが、他の国ほど彼女に対して大騒ぎはしません。彼らは、彼女を地元ではなく、グローバルシーンにいる、一人のアイスランド人としてみています。彼女を尊敬し賞賛していますが、地元で活躍するアーティストの方に注目しているのではないでしょうか。

L:アイスランドはビョークが誰かは知っていますが、知名度はそこまで大きくはありません。僕のまわりの人たちはビョークの作品を高く評価し、素晴らしいアーティストだと思っています。しかし地元のメディアや僕のまわり以外は、そこまでではありません。一般的なアイスランド人は、ビョークが世界的にインパクトあるアーティストだと思っていないのではないでしょうか。

シンドラはアイスランドが大嫌い、ということですが、どこに住んでみたいなど、希望はあるのでしょうか。

S:いま、シアトルに引っ越そうと思っています。僕の妻がシアトル出身で素敵な都市だし、快適に暮らせると思うのです。

アイスランドの音楽に共通する特徴は何だと思いますか? 自然主義的なところはひとつあると思うのですが。

P:難しいですね。アイスランドの音楽は、他の国の同様に多種多様です。世界的に知られているとは思いませんが、アイスランドのラップ・シーンもあります。一般的に言って、アイスランドのポップ音楽はインディ・テイストに、ソフトロック、アコースティック、フォーキーな感覚が備わったものが多いと思います。Of Monsters And Menなんかは良い例です。

L:自分のまわりの自然、話す言葉の響きなど、人は自分の置かれた環境に影響を受けるので、それがアートにも表れるのでしょう。ある場所の、全ての音楽に共通点を見つけるの、難しいです。恵まれたことに、たくさん種類のアイスランド音楽がありますから。

アイスランドで好きなバンドを教えて下さい。彼らはコミュニティとして存在するのか、より独立しているのでしょうか?

P:お恥ずかしいことに、そんなにたくさん「いま」のアイスランドの音楽を聴いていないのですが、僕がアイスランドのミュージシャンで好きなのは、100,000 Naglbitar、とくにアルバム『Vögguvísir fyrir skugguprins』、Emiliana Torriniのアルバム『The Fisherman's Wife』、Ragnheiður Gröndalのモノならなんでも。彼女の声は素晴らしいです。『Rokk í Reykjavík』のサウンドトラックや、Mammút、友だちのシンドリも、とても良い作品を作ります。

L:すでにレコードを出しているアーティストなら、Múm, Sin Fang, Sóleyなど。新しい物なら、Mr. Silla のニュー・アルバムは楽しみです。今日はいつも素晴らしいと思う、スロウブロウというアイスランドの古い音楽を聞いていました。新しい物、古い物、どちらも良い物がたくさんあります。

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