「K A R Y Y N」と一致するもの

Spiritualized - ele-king

 アルバム・タイトルとは別に大きくデザインされている文字は「ですよね?」と訳すことができる。イースト・エンド×ユリ風に「だよね?」でも、少し丁寧に「でしょう?」でもいいだろう。何かに対して同意を求めている。

 何に?

 「ロックしていること」ではないかと思われる。ローリング・ストーンズやヴェルヴェット・アンダーグラウンドを適当な因数に分解して再合成したサウンドからは、これしかないという思いが感じられる。残念ながら僕にはその思いは少ししか共有できないけれど、ロックしかないと思っているリスナーは強く同意してあげるといい。もしも、この世にロック・ミュージックしかないのであれば、このアルバムはよくできた作品だと思うから。

 昨年は「ロックは死んだ」33回忌だった。ジョニー・ロットンはそのように言い放って、1978年にセックス・ピストルズから脱退し、自分の名前も変えた(そして、PiLを始動させる......そう、PiLが復活するのは2年早かった。仏教徒じゃないんだから当たり前か)。

 スピリチュアライズドは紛れもなくロックしている。『ロッキン・オン』風にいえば......掛け値なしにロックの王道を爆走している。魂が叫んじゃったり、人生とか光とか明日が大変なことになっている感じだろうか(最近の『ロッキン・オン』は違うのかな? 経済とか論じてたらどうしよう......)。とはいえ、ジミ・ヘンドリクスとルー・リードが揃って婚姻届に判を押したようなタイトルの"ヘイ・ジェーン"からいきなり弾けまくりで、途中で一回、事故を起こしたと思ったらクラウトロックになって曲は蘇ってくる。ラ・ドュッセルドルフ"ドュッセルドルフ"で飛行機が墜落しても、また、何事もなかったように飛んでいくあたりを思わせる。さすが、一度は死に掛けた男である。引用する場所が違う。一転して"リトル・ガール"では情緒的なフォーク・ロック、さらにメロトロン......じゃないと思うけど、プロコル・ハルムをバックにピーター・ペレットが渋い喉を聞かせているようなサイケデリック・ナンバーと、ある種のロック・ページェントが続く。なんというか、自分がどんどん古い男になっていく気がする。なにがダブステップだ。なにがインテリジェント・ブラック・メタルだ。やっぱ、ロックンロールだろう。だよね?

 「ユー・ゲット・ワット・ユー・ディザーブ」のアウトロはなかなかいい。少しばかりスペースメン3のことを思い出せるからである。続く「トゥー・レイト」ではそうはいかない。思い出すのはブリティッシュ・ロックがパンクに蹴散らされる前のこと。「ヘッディン・フォー・ザ・トップ・ナウ」でピアノが連打されるとエルトン・ジョンが映画『トミー』で10メートルぐらいあるブーツを履いていたことを思い出す。授業をサボって初めてひとりで観にいった洋画だった。ティナ・ターナーが全身から血を抜かれるシーン。TVから吹き出るゲロがアン・マーグレットを呑み込むシーン。教祖に扮したエリック・クラプトンの足元でアーサー・ブラウンがただひたすら蠢いているシーン。それらはみなワイルドで「ロック」だったけれど、僕の人生観とか、タマCとかは揺すぶられなかった。『タワーリング・インフェルノ』や『ロッキー』といった映画と同じ娯楽でしかなかった。そう、それがそもそもスピリチュアライズドが『レイザー・ガイデッド・メロディーズ』でデビューした時からの違和感だった。ポカホーンティッドやダブル・レオパードといったゼロ年代のドローン・バンドからそれぞれベスト・コーストやエンドレス・ブギーといったロック回帰も起きたわけだから、サイケデリック・ロックを追求していたスペースメン3からスピリチュアライズドが派生してはいけないとは言わない。しかし、僕のまわりにソニック・ブームの熱心なファンは腐るほどいても、ジェイスン・ピアースに夢中だという人がまったく見当たらないように、スペースメン3のサウンドを形作っていた基礎の方にシフトしたサウンドはやはりスリリングとは言いがたく、娯楽以上のものにはなってくれない。そう、エンターテイメントとしては本当に素晴らしい。"メアリー"から"ライフ・イズ・ア・プロブレム"への流れなんて、なにひとつ文句はないではないか。......ですよね?

 チャド・パースンズとニコラス・ロングウォースがこれまでにリリースしてきた3本のカセットからウイアード・フォレストが独自に編集したコンピレイション『オブジェクト・パーマネンス』は、スピリチュアライズドよりもスペースメン3に近く位置し、まるでゼロ年代のUSドローンからサイケデリック・ロックを捻り出そうとするダイナミズムの交差点に立っているという錯覚を与えてくれる。彼らはそれをバーニング・スター・コアやレリジャス・ナイヴスとは正反対にポップ・ミュージックとして展開しようとする意欲まで見せてくれる。こんなことはトークディモニックにも、インフィナイト・ライト・リミテッドにも、ましてやダイアモンド・グロスにもできなかった。ポスト・クラシカルへ舵を切ってしまったファック・ボタンズも論外だし、エメラルズやマウンテンズが失ってしまったハードさをどこまで持続させることができるのか。USドローン・ヴァージョンのスペースメン3だといえる"ポーター"を聴きながら、僕は不安と期待をいつしか天秤にかけている。ジョニー・ロットンは「ロックは死んだ」と言い放ったかもしれない。しかし、誰もまだ「サイケは死んだ」とは言っていない(僕は聞いたことがない)。そして、"クラッシュド・トゥ・ビッツ"がまたしても曲がりくねった奇妙なヴィジョンへと僕を誘い込む。

interview with Simian Mobile Disco - ele-king


Simian Mobile Disco
Unpatterns

Wichita Records/ホステス

Amazon iTunes

 ロックが不況である......というのは、いかにも白々しいクリシェであるが、しかしそういったお手軽な悲観を使いたいときも、正直、なくはない......。三田/野田世代の『ele-king』読者であれば、あるいは言うかもしれない。「そんなもの90年代後期からずっと死にっぱなしじゃないか......」
 いやだとしても、ゼロ年代のなかごろ、いわゆるインディ・ロックに活気が感じられた季節がたしかにあったのだ。少なくない人が、それをダンス・ミュージックとの交配の季節として振り返る。LCDサウンドシステム、ラプチャー、あるいはシミアン・モバイル・ディスコ(以下SMD)。その後、ニュー・エレクトロの新勢力がむしろロックの巨大さを取り入れていった。SMDは、その分水嶺とも言える存在だった。

 そして、ポスト・ダブステップの拡張、あるいはジュークの登場がシーンに新たな風を吹かせているなか、SMDのフルレンス・アルバムが届いた。シリアスなテンション、冷え冷えとしたシンセ・アンビエンス、そしてミニマルな展開がビート・プロダクションを通底している。アンチ・クライマックスの美学......ここに愛想笑いの類はない。サービスのようなアップリフトもない。早い話、誤解の余地を排したストイックなテクノ・ミュージックが硬質な音色を叩き付けている。『Attack Decay Sustain Release』(2007)のアッパーさや『Temporary Pleasure』(2009)の弾けるような乱雑さの記憶からすれば、季節の変わり目を実感せずにはいられない、というのもたしかだ。

 彼らはいま、どこにいるのだろう? 当時の活況、それは音楽的な交配ではなく、単にダンスとロックにおけるリスナーの重なりがあっただけではないか、その錯覚を自覚できていないだけではないか、という声もある。不躾ながらも、そういった所感を含めてSMDのふたり、プロデューサーとしてはここ数年トップ・クラスの売れっ子ぶりのジェイムズ・フォード、そしてジェイムス・ショーに話を訊いた。
 結果から言えば......彼らのポップ・ミュージック、そしてシーン(という概念がまだ有効ならば、ということだが)に対する認識は、実に中立的である(途中、ややトンチンカンな質問にも真摯に答えてくれた)。彼らは変化を受け入れているし、何も背負っていない。そのニュートラルな姿勢は、ある種達観めいてもいる。そう、私はS.L.A.C.K.によるあの象徴的なリフレインを思い出す。ただミュージックのみ、ただミュージックのみ......。

シーンは確実に変わったと思う。「ダンス/ロックの融合」みたいなのってまずあんまり上手くいかないし、結局そこの地域で根付いているロックの要素が混じったダンス・ミュージック、っていうものになってしまっている。

あなたたちの出身でもあるSimianは、歌とメロディを大切にしたインディ・ポップのバンドだったと思うのですが、ダンス・ミュージックへの傾倒というのは、何がきっかけとなったのでしょう?

SMD:Simianをはじめるずっと前からダンス・ミュージックは大好きだった。歌とメロディを大事にしながら同時にダンス・ミュージックにも傾倒するっていうのは当然可能だよ。

なるほど。ちょっと古い話をさせてください。『Attack Decay Sustain Release』(2007)におけるあなたたちの初期のスタイルは、ロック・ミュージックとエレクトロニック・ミュージックのクロスオーヴァーである、という言い方が当時、少なくなかったと思うのですが、こうした見方には賛同できますか?

SMD:まったくもって不賛成だよ! 僕らが作ってきたのはいつだってダンス/エレクトロニック・ミュージックなんだ。『Attack Decay Sustain Release』にはギターも生のドラムも入ってないし、ロックの要素は全然なかった。あれって、ちょうどあの頃はダンス・ミュージックがいろんなロック/インディ・バンドとそのファン達に人気が出てきた時期だったからそのシーンと関わりがあっただけで、それ自体が僕らのスタイルだったってわけじゃないよ。

わかりました。ところで現在、ポップ・ミュージックは細分化していると、私たちの国ではよく言われています。つまり、異なるジャンルや異なる価値観はお互いに関わらないよう、細かく分断されている、と。こうした見方を、あなたたちは共有しますか?

SMD:イギリスではむしろ逆だと思うよ。いまは違うジャンル同士の交流が盛んだし、とくにダンス・ミュージックの間ではそれが顕著だね。

なるほど。ゲスト・ヴォーカルのパレードとなった2009年の『Temporary Pleasure』もそうでしたね。そこから一転して、2010年の『Delicacies』で、あなたたちはミニマルなテクノ・ミュージックへとスタイルの比重を大幅にずらしたようにも思えました。ヴォーカル・パートがなくなり、曲の長さも8分ほどに長くなりました。当時、何があなたたちを変化させたのでしょう?

SMD:『Delicacies』は、DJのための音楽を作るっていうことに特化したプロジェクトだった。僕ら自身もDJするときにテクノをよくかけるから、自分たち自身のための音楽でもあった。だから新しい方向性っていうのじゃなくて、サイド・プロジェクトっていう方が近いね。どのバンドも自分たちのスタイルを変えて進化させていかなきゃいけないと思う。同じようなアルバムを2回作るなんてことはしちゃいけないんだ。

私もそう思います。さて、では本題です。新作の『Unpatterns』を聴かせてもらいました。『Delicacies』よりもさらにストイックなエレクトロニック・ミュージックで、ミニマルなビートが心地よいですね。ヴォーカル・パートは、歌というよりは声の素材、という小さい扱いになっている。また、ビートは以前よりもソフトなタッチになっているように思えます。これらの変化は意識的なものですか?

SMD:うん、かなりいい表現だね。確かに僕らはこのアルバムを控えめで抑えたものにしたかったし、ヴォーカルはカットアップやループしてミックスすることで楽器のように使っている。さっきも言ったように、『Delicacies』とはまた違ったアルバムを作りたかったんだ。前のアルバムからの要素はいち部残しつつも、同じような思い切りクラブっぽいレコードにはしたくなかった。

どの曲も、たんにアップリフトというだけでなく、沈鬱なフィーリングを時間をかけてときほぐしていく、といった趣があるように思います。自分たちは変化したと思いますか?

SMD:典型的なダンス・ミュージックの美学って、ゆっくりと盛り上げていつまでもクライマックスに達しないままずっと続いて行ったり、緊張感を引き延ばしすぎだったりする。そういう盛り上げて、落としての繰り返しの手法はもう過去数年でやりつくされているんだ。だから僕らはそこから抜け出して、なにかもっと新しいことがやりたかった。

[[SplitPage]]

シーンの細分化? イギリスではむしろ逆だと思うよ。いまは違うジャンル同士の交流が盛んだし、とくにダンス・ミュージックの間ではそれが顕著だね。


Simian Mobile Disco
Unpatterns

Wichita Records/ホステス

Amazon iTunes

"Unpatterns"というアルバム・タイトルは、どういった意味なんでしょう? 字面通り、"模倣ではない"という意味なんでしょうか。本作のコンセプトに関係が?

SMD:そういう意味ではないな......ループやパターンがじょじょに崩壊したり、変化したり、お互いに干渉しあったりすることで、新しくてもっと複雑なパターンや進行が生まれることを指しているんだ。アルバムの楽曲の多くはその考え方に基づいて作られている。シンセのシーケンサーやドラムのパターンがテンポの間でずれたり合ったりするところとか、細かいディテールにそれが表れていると思うよ。アルバムのアートワークにもその考え方が反映されているんだ。モアレ縞(干渉縞)っていう、単純な図形が干渉しあうことで複雑な図形が生まれる効果を利用している。

なるほど。ユニークなタイトルが並んでいるのですが、言葉を使わない曲に、どうやってタイトルを付けているのですか? "The Dream of the Fisherman's Wife"は、葛飾北斎? 日本の文化には影響を受けていますか?

SMD:その通り! 訊いてくれたのは君が初めてだよ、よく気付いてくれたね! 僕らは北斎が大好きだし、あの絵はすごく奇妙で異世界的な作品だよね。その雰囲気が、あの曲に使われている変な水中の音とよく合っていると思ったんだ。
 インストゥルメンタルの曲に名前を付けるのは大抵難しいね。僕らは大体いくつか興味のあるコンセプトを持っていて、それにいちばん合う曲を見つけてタイトルをつけるようにしているよ。
 日本の文化にはすごく魅力を感じているし、日本に行ってプレイするのも大好きだよ。直接的な影響っていう意味で言えば、僕らの音楽に対する日本からの一番の影響はシンセサイザーのパイオニアであるトミタ(筆者注:富田勲)だね、彼の大ファンなんだ。

あなたたちの音楽で変わらない点があるとすれば、やはり、それがダンス・ミュージックである、ということだと思います。なにが、あなたたちをいまでもダンスへと向かわせるのでしょう? 踊ることはやはり大事?

SMD:はは、僕ら自身はもう前ほど踊らなくなったよ! 僕らをダンス・ミュージックに向かわせるのは共有される体験、あのクラブで感じる、長々と進化を続けるダンス・ミュージックの音、そこにいて何時間も音楽を聴き続けることで得られるサイケデリックな空間といったものだね。

最近、一般に、ネットに依存しているような若いリスナーはクラブやライヴでもハメを外さなくなったと話す人もいます。あなたたちの目にはどう映りますか?

SMD:答えるのが難しいな......実際、いまでもまだダンスするために出かけたり、羽目を外す人たちもたくさんいるしね。ネット依存の傾向のある人たちが他に比べてそういうことをしないかどうかはよくわからないよ。

少し乱暴な質問をさせてください。あなたたちのダンス・ミュージックは、現状の生活に満足している人たちと、そうでない人たちのどちらに捧げられるものだと思いますか?

SMD:そんな風に人びとを分けてしまうっていうのは僕らのやり方じゃないよ。権力を持つ人たちが悪用しがちな、「あっちとこっち」や「敵と味方」と分けてしまう考え方を助長してしまうと思う。

なるほど。ちなみに、ここ日本では、政府の世論調査で、「6割以上の若者が現状の生活に満足を感じている」という結果が出て、話題になっています。あなたの国の若者は現状の生活に満足を感じていると思いますか? ロンドンなどからは、大規模な暴動のニュースなども伝わってきましたが。

SMD:なんとも言えないな......どの地域に住むどんな層の若者に聞いたのかにもよるし。ある人たちは満足しているし、そうでない人もいる、そもそも60%って多いと思うかい? 本当ならもっとたくさんの人がそれぞれの人生に満足しているべきじゃないかな。

たしかに、そうですね。ところで、あなたたちと同じく、ロック・ミュージックとエレクトロニック・ミュージックのミックスを実践したと言われる同時期のミュージシャンに、LCDサウンドシステムがいたと思うのですが、すでに活動にピリオドを打っています。2000年代の終わりごろ、なにかシーンの価値観が変わってしまったような雰囲気を感じましたか?

SMD:うん、シーンは確実に変わったと思うよ。「ダンス/ロックの融合」みたいなのってまずあんまり上手くいかないし、結局その代わりにそこの地域で根付いているロックの要素が混じったダンス・ミュージック、っていうものになってしまっている(アメリカでのダブステップの流れみたいに)けど、LCDサウンドシステムはダンス・ミュージックの要素を持ったロック・ミュージックを作っていたよね。

シーンの変化があったとすれば、その原因はどのようなことだと想像しますか?

SMD:自然な進化じゃないかな。シーンっていうのは、絶えず新しいミュージシャンが登場して新しい解釈を与えることでどんどん変わっていくものだと思うよ。

なるほど。その後、新たな潮流として、ロンドンから発信されたダブステップが大きな盛り上がりを見せました。あのシーンに対する共感はありますか? 支持できるアーティストなどはいる?

SMD:そのシーン自体にそれほど共感っていうのはないかな......ただJoy Orbison、Blawan、Martyn、Boddikkaみたいな「ポスト・ダブステップ」って呼ばれるシーンの音楽はよく聴いているし、DJするときにもよくかけているよ。

「ポスト・ダブステップ」という言葉を聞かない日はないくらいですよね。いっぽう、あなたたちが裏方を担ったアークティック・モンキーズやクラクソンズ以降、UKのインディ・ロック・バンドは、盛り上がりに欠けているようにも見えます。こうした見方には賛同できますか?

SMD:エキサイティングなバンドはいつでもいるよ、ただ見つけるのが難しくなっているだけさ。

では、いま注目のインディ・バンドなどを教えてください。あるいは、いま、プロデュースで仕事をしてみたい若いバンドはいる?

SMD:最近JasがPlant Plantsっていうバンドをプロデュースしているけど、いいバンドだよ。(筆者注:https://soundcloud.com/plantplants/sets/plant-plants-ep/)

わかりました。ところで本誌『ele-king』は、1994年にはじまったのですが、最初はテクノの専門誌でした。あなたたちを入り口として、テクノ・ミュージックの世界に足を踏み入れる若いリスナーも少なくないと思いますが、彼らに聴いてほしいテクノ作品はありますか? クラシックから最近のものまで、なにかあれば。

SMD:古いものを振り返ってみるといいと思うよ。初期のPlastikmanとか、Joey Beltram、Jeff Millsとか。

もちろん、「SIMIAN MOBILE DISCOも!」ですよね。では最後に、今後の展望を教えてください。何か夏の予定は決まってる?

SMD:夏の間中はDJをたくさんやって、いま取りかかっている新しいライヴセットも今年中に準備を終わらせたいと思ってるよ。あとは新しい曲にも少しずつ取り掛かっている、将来のシングルや、『Delicacies』シリーズのリリース向けてね。

Mark McGuire - ele-king

 ステージに登場すると、マイクを持って「クリーヴランドから来たマーク・マッガイアと言います」とまずは自己紹介、プロモーターやレーベルへの謝礼、それからオーディエンスに向かって「楽しんでいってください」と言い終えると、よっこらしょとギターを肩にかけて、そしてショーがはじまった。なんだか礼儀正しい人だった。

 ライヴは、ダンス・ミュージックだった。ドラムがないのに......将来音楽からドラムはなくなるだろうと空想したのはアーサー・ラッセルだった。ディスコ・ダンス・ミュージックに情熱を燃やしながら、同時にドラムのない音楽こそが刺激的に思える時代がいつか来ると、彼は予言している。
 音楽によって、ビートは人の内部からスポンティニアスに生まれる、マーク・マッガイアがやったのはそれだった。人びとのざわめきからはじまり、マッガイアはループを重ねてうねりを創出する。いくつもの反復がシンコペーションしているので、リズムが生まる。そうしてでき上がった音の波のうねりの上をマッガイアは滑るようにギターを弾いている。
 ギターを肩からぶらせげて、彼自身も身体をリズミックに動かしながら演奏する。けっこう、ノリノリだ。アンビエント......というイメージからは遠く、良い意味で期待を裏切るようなマッガイアのリズミックな演奏に、オーディエンスの身体はじょじょに反応していく。時折歪ませ、激しさを見せながら、しっかりと起伏のある曲を展開する。曲の途中でベース・ギターに持ち替えて、ベースのループも加え、ふたたびギターを重ねるという芸まで披露した。瞬間的だが、彼はロバート・フリップやデイヴ・ギルモアといった領域にも接近したが、幸いなことにそれがミニマリズムから脱線することはなかった。
 気がつけば、彼は適度に埋まったユニットのフロア全体を桃源郷へと連れていっている。どこまでも連れて行く。気がつくと、もう1時間も経っている。
 そして、まだ20代半ばをまわったばかりの青年は、桃源郷からこの現実への着地までも、しっかりと、焦ることなく、ゆっくりとやった。これがマッガイアのライヴかと、我にかえったオーディエンスは、あらためて驚嘆を感じながら拍手した。アンコールがあった。1時間半ほどの演奏は終わった。終わって帰ろうかと思ったら、松村正人が入ってきた。

 マーク・マッガイアの前に演奏した青葉市子も素晴らしかった。彼女の静かな演奏においては、カウンターバーのあたりのお喋りがライヴ中に延々とステージ前方にまで聞こえていたので、いっしょに来た友人は少々不満を感じているようだったが、そこはまあ、ジョン・ケイジではないが、そうした周囲の雑音もまた音楽(ライヴ)のいち部ということで受け入れよう。日本のライヴでは、なかば信仰めいた感じで、客個人→ステージという図式が絶対化しているけれど、本来なら客同士の相互関係も同様にあってしかるべきだし(サッカーの試合ではある)、公共の場における猥雑さは全否定すべきではない。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのライヴ盤など、客のお喋りがその音楽のいち部になっている。
 その晩は、彼女は、ジョン・フェイヒィを彷彿させるテクニックもさることながら、ほとんど喋りなしで、長めの曲を4曲演奏した。それら楽曲は後方のお喋りがステージまで聞こえるほど静かだが、しかし気迫のこもった演奏だった。いちばん可哀想なのは、その目に前に素晴らしい音楽があるというのに、その晩の青葉市子の演奏を聴き逃している喋っていた連中だった。

 先日のグルーパーのライヴは、可能な限り音量を下げることで(空調のノイズよりも低い音量で)、その場の耳すべてを惹きつけた。マーク・マッガイアはスティーヴ・ライヒとインディ・ロックの溝を埋めるかのようなダイナミックな演奏をした。USアンダーグラウンドの新世代では確実に変化が起きている。その正体がこの日本で明かされた数週間だった。多くの若いリスナー、そして未来に関心のある多くのリスナーが集まった。我々は、いま、確実に、音楽の新しい場面に立ち会っている。

 というか、マーク・マッガイアの追加公演決まりました! 今週日曜日(5/20)、場所は新宿SOUPです!!!!! 行けなかった人はこれを見逃さないように! (DJもやるようですよ)
https://ochiaisoup.tumblr.com/#22780951997


 ※ちなみに、まったくの蛇足ながら、メタモルフォーゼのG2Gのライヴもさすがだった。あれはむしろ、ドラムがないことが考えられない音楽だった。

DJ Doppelgenger - ele-king

 「高校生の時に初めて会ったけど当時からめちゃくちゃコスリが上手くて埼玉ではかなり名の知れたDJだったなー。俺らがサンプラー叩いてライブやってた時はスクラッチで参加してもらってたし、JAR-BEATのコンピやキリコのハクレンでもコスってもらった。破天荒な奴で......」と書かれているフラグメントのKussyのブログを発見。DJドッペルゲンガーは、15歳のときに見た「さんぴんキャンプ」を契機に、日本のヒップホップを好きになって、DJになっている。20歳になってからはバックパックを背負って世界旅行。そして、4~5年前、ゴス・トラッドを通じてダブステップを知って、すっかりベース・ミュージックに魅せられてしまったようだ。先月、彼はデビュー・アルバム『パラダイム・シフト』を自主制作でリリースしたばかり。
 さて、DJクラッシュ~ゴス・トラッドという流れのなかで登場したDJが、いったいどんな音を作るのかは興味深い話である。それは90年代から2010年代へと繋がるホットラインとも言える。もっとも、DJクラッシュの全盛期とはくらべものにならないくらい時代はハードだが、DJドッペルゲンガーのアルバムには、彼なりの時代との向き合い方が刻まれている。真面目な、良いアルバムである。

 ダブステップへと向かった理由が、その音の強度、破壊力だったと言うだけあって、ダイナミックな音が展開されている。と同時に、ベッドルームで作ったというよりも旅して作ったという感覚がリズミックな音に出ている。ダブステップ......とは言うものの、ビートはポリリズミックで、メロディからは東南アジア、ときにはカリブ海も感じるが、ある種の無国籍なフィーリングが全体を貫いている。そうした漂泊している感覚は、このアルバムの魅力となっている。
 まあ、破壊力......とはいえ、全体的に荒々しく、ハードなわけではなく、繊細な曲もちらほらある。"bashon island"を聴いているとアシッド・ハウスを聴きながらミクロネシアの島々の上をボートで走っているような気分になる。"core"のようなアンビエントにも可能性を感じるが、他方では、1曲目の"in the world"なんかはゴス・トラッドへのオマージュかとも思えるほど似たものを感じる。

 DJドッペルゲンガーは、大宮を拠点に日本全国を横断している。「自分がダブステップDJをやりはじめて4年ぐらいなんですけど、それだけでも全然変わってきてますよ」と、彼はここ数年の日本のシーンについてこう語る。「その当時、ダブステップのパーティなんて〈Drum&Bass Sessions〉か〈Back to chill〉ぐらいしかなかったですし、DJも全然少なかった。いまでは小さい規模でもダブステップのパーティが各地で出あるし、リスナーも増えてますし、シーンは確実に認知されてきていると思います。地方もどんどん盛り上がってきてますし、地方でも自分で曲を作ってそれを中心にDJ、パーティしているカッコいいクルーが出てきたりで、これから先もっと面白いシーンができてくると思います」
 地元の大宮では彼は、2年以上、〈MAMMOTH DUB(マンモスダブ)〉という名のパーティを継続中。「東京から電車で30分、近いですけど東京とは全然違うんですよ」と、彼は地元の魅力について言う。「良い意味で地方的っていうか、パーティを楽しもうっていう特別意識と、地元ならではの結束がリンクして、それが良いグルーヴを作るんですよね。制約やルールもないからいいですね。勝手にTシャツ作ってきたり、ステッカー作ったり、デコ作ったり、ブログ作ったり、みんなが参加しながら楽しくひとつのパーティを作っていくってスタイルが......」
 以下、彼の6月までのスケジュール。お、6/9は〈ラジシャン〉だね!
 
 5月19日(土) MAFALi cafe (沖縄)
 5月25日(金) The Dark Room (福岡)
 5月26日(土) Cheerz (小倉)
 5月27日(日) 2110 (熊本)
 6月2日(土)  JUNGAL(富山)
 6月9日(土)  Rajishan(静岡)
 6月15日(金) JIGSOW(熊谷)
 6月30日(土) 444 quad(大宮)

Chart by JET SET 2012.05.14 - ele-king

Shop Chart


1

Hungry Ghost

Hungry Ghost (I Am A Series Of) Strange Loops (International Feel) »COMMENT GET MUSIC
Daniele Baldelli、加えてデトロイト3 ChairsクルーMarcellus Pittmanによるリミックスを収録した前作「Illuminations」もカルト・ヒットとなった、Gatto Fritto & Howard Jacobsの才人コンビHungry Ghostが"International Feel"に再戦。

2

Stupid Human

Stupid Human Toni Rock / Clean Up Your Act (Stupid Human) »COMMENT GET MUSIC
過去4作いずれもカルト・ヒットを記録しているUk発のミステリアス・ユニット、Stupid Human手掛けるリエディット・シリーズ第5弾。引き続きDjユーズに再構築された強力作をカップリング!!

3

Bjork

Bjork Biophelia Remix Series 3 - El Guybcho & Hudson Mohawke Remix (One Little Indian) »COMMENT GET MUSIC
強力過ぎる人選でお届けする『Biophilia』リミックス・カット12"第3弾は、説明不要の人気者2組、El GuybchoとHudson Mohawkeによるリミックスを搭載した大本命盤です!!

4

Georgia Anne Muldrow & Madlib

Georgia Anne Muldrow & Madlib Seeds (Someothaship Connect) »COMMENT GET MUSIC
世界が注目するLaミュージック・シーンから、あらゆるシーンから強い眼差しをあびるGeorgia Anne Muldrowともはや説明不要のMadlibによるソウル・プロジェクト。待望すぎるアルバムが完成!

5

Mmoths

Mmoths S.t. (Sqe Music) »COMMENT GET MUSIC
既に話題沸騰中のアイルランド出身チルウェイヴ~ウィッチハウス新星、Mmoths。Keep Shelly In Athensとの超名曲「Heart」も収録したデビュー・シングル!!

6

Modeselektor With Thom Yorke

Modeselektor With Thom Yorke This (Monkeytown) »COMMENT GET MUSIC
ジャーマン・エレクトロ/ベース最強デュオModeselektorとThom Yorkeによる電撃コラボ7"第2弾。'11年の傑作『Monkeytown』収録の人気トラックのラジオ・エディットA1も収録です~!!

7

Damu The Fudgemunk

Damu The Fudgemunk Bright Side Remix (Redefinition) »COMMENT GET MUSIC
2010年リリースながらもキャリア屈指のクラシックとして認知され、Dj Kiyo氏のミックスにも収録された"Bright Side Remix"が10"仕様で登場! 収録lpも今や入手困難の為これは嬉しすぎます!

8

Mouse On Mars / Prefuse 73

Mouse On Mars / Prefuse 73 Miami / Death By Barber (Monkeytown) »COMMENT GET MUSIC
6年振りの新作アルバム『Parastrophics』が当店ヒット中のMouse On Marsと、6月リリース予定レーベル・コンピにも参加予定のPrefuse 73による超強力スプリット7"が到着です!!

9

Harmonious Thelonious

Harmonious Thelonious Ting Tong Tp (Asafa) »COMMENT GET MUSIC
前作『Drums Of Steel』は即完売、アメリカの前衛ミニマリストとアフリカン・リズムからの影響を公言するレフトフィールド・ミニマリストによる待望の第2弾12"が登場です!!

10

Gizelle Smith

Gizelle Smith Jonny (Mocambo) »COMMENT GET MUSIC
Gizelle SmithがMocamboから最高の新曲をリリース。大ヒット曲"Working Woman"を超える大感動の哀愁込み上げグルーヴィー・ソウルです!!

Shop Chart


1

J.M.F.G.

J.M.F.G. #2 J.M.F.G. / FRA / 2012/5/9 »COMMENT GET MUSIC

2

Los Miticos Del Ritmo

Los Miticos Del Ritmo Los Miticos Del Ritmo Soundway / UK / 2012/5/11 »COMMENT GET MUSIC
QUANTIC指揮の元、現地凄腕ミュージシャンからなる"QUANTICと神話の打楽器隊"、待望のフル・アルバム!伝統的な演奏形態を踏襲し つつも豊潤な音楽観と洗練のアレンジでアップデートした2012年型ハイブリッド・クンビア極上盤◎

3

Vedomir

Vedomir Vedomir Dekmantel / NL / 2012/5/9 »COMMENT GET MUSIC
圧倒的リリース量とそのクオリティから一躍ハウス・シーンの最前線へ躍り出たウクライナの天才VAKULAによる別名義プロジェクト VEDOMIR、ヴォリューミーな2LPフルアルバム!

4

Unknown

Unknown Black Boxx EP Ferrispark / US / 2012/5/9 »COMMENT GET MUSIC
首領SCOTT FERGUSONを中心にKDJ/THEOの流れからポスト・ビートダウン的アプローチの作品まで多彩なラインナップでリリース展開されるデトロイトの良質<FERRISPARK>から、00年代初頭の初期レーベル作品を彷彿とさせる黒光スモーキー・ディープハウスが詰まったノーインフォ/謎の4 トラックスEPが到着。

5

Kelenkye Band

Kelenkye Band Jungle Funk Cultures Of Soul / US / 2012/5/9 »COMMENT GET MUSIC
推薦盤!快挙!ド級のアフリカン・レアグルーヴ古典"JUNGLE MUSIC"で有名なKELENKYE BANDの未発表音源(!!)が発掘&音盤化!内容はやはり最高スギル2枚組7"。

6

Koko Edits

Koko Edits Stay With Me / Burning Up Basic Fingers / GER / 2012/5/8 »COMMENT GET MUSIC
好調リリースの続く<G.A.M.M.>傘下のディスコ・エディット専科<BASIC FINGERS>第8弾!賞味期限無し定番的に使えるため、是非とも持っておきたい一枚!

7

Joaquin Joe Claussell

Joaquin Joe Claussell Unofficial Edits And Overdubs Disc One Of Four Sacred Rhythm Music / US / 2012/5/3 »COMMENT GET MUSIC
LTD.400pcs!!一連の「UNOFFICIAL EDITS AND OVERDUBS」シリーズも遂に最終章!先日の2CDアルバムから12"用にさらにリエディットし全4部作にてアナログ・リリース!こちら第1弾。

8

Joaquin Joe Claussell

Joaquin Joe Claussell Unofficial Edits And Overdubs Disc Two Of Four Sacred Rhythm Music / US / 2012/5/3 »COMMENT GET MUSIC
LTD.400pcs!!一連の「UNOFFICIAL EDITS AND OVERDUBS」シリーズも遂に最終章!先日の2CDアルバムから12"用にさらにリエディットし全4部作にてアナログ・リリース!こちら第2弾。

9

Joaquin Joe Claussell

Joaquin Joe Claussell Unofficial Edits And Overdubs Disc Three Of Four Sacred Rhythm Music / US / 2012/5/3 »COMMENT GET MUSIC
LTD.400pcs!!一連の「UNOFFICIAL EDITS AND OVERDUBS」シリーズも遂に最終章!先日の2CDアルバムから12"用にさらにリエディットし全4部作にてアナログ・リリース!こちら第3弾。

10

Insideman a.k.a. Q-Bo

Insideman a.k.a. Q-Bo Back In The Dayz (G-Luv Classics Vol.1) Blacksmoker / JPN / 2012/5/10 »COMMENT GET MUSIC
東高円寺の音楽酒場GRASSROOTSの主Qさんニュー・ミックスはまさかのGラップ縛り!from <BLACKSMOKER>★特典で<BLACK SMOKER>からのリリースを予定している、狂気に満ちた妖しいG-LUV謎の一族総本山、D.M.F. (DA MASK FAMILY PRODUCTIONS)のスペシャルSAMPLER CD付き!★

interview with Kyte - ele-king


Kyte
Love to be Lost

Hostess

Amazon

 日本が世界に先んじて見つけだした才能として知る方も多いだろう。シガー・ロスやビョーク、レディオヘッドなどと比較されながら、情感豊かでスケール感のあるポスト・ロックを追求してきたバンドである。なんといっても美しいテナー・ヴォイスと轟音ギターの、ときに過剰ですらあるエモーションが彼らの個性だ。そしてまたアイスランドのミュージシャンたちを引き合いに出されるように、どこかつめたく清新なたたずまいを持つところもカイトらしさである。燃える雪というような形容矛盾をふところふかく抱え込んだような、熱くつめたい感情表現。じっくりとテンションを高めてゆき、そのピークでエモーションを解放するドラマチックな曲展開は、サントラとしても好まれ、アメリカの人気ドラマ『ソプラノズ』や、国内映画『余命一か月の花嫁』での楽曲使用も記憶に新しいところである。
 さて、"サンライト"や"プラネット"といった名曲を生んだデビュー作『カイト』、日本先行でリリースされたセカンド・アルバム『サイエンス・フォー・リヴィング』、そのUK盤制作時に内容をリニューアルした(どんどん生まれてきたという新曲に再レコーディングしたテイクを加えている)裏セカンドともいうべき『デッド・ウェイヴス』ときて、昨年リリースされたのがリミックス集であることを考えると、カイトはその第一章を終えたかにもみえる。シーンの先端とはいかないが、ポスト・ロックやシューゲイザーのまじわる地点で自分たちの表現をみつめ、親密なファンを育ててきた彼らに、いま新しく登場する『ハーフ・アローン』の制作やその音世界の原風景について訊ねてみた。
 さっきコンビニで買ったというグミをおずおずとすすめてくれたおだやかな雰囲気の3人には、彼らの音楽のとおり正直な人柄がにじんでいる、と思った。

いろいろなところへ行ってみて不思議な気持ちだね。世界をまわってみて、よっぽど自分の故郷よりもいい場所とかいい環境、おもしろい場所がいっぱいあったよ。あきらかにね。

『サイエンス・フォー・リヴィング』と『デッド・ウェイヴス』とは、制作上の経緯から考えても双子のような作品で、ふたつあわせて完全なセカンド・アルバムということになるかと思います。今回の3作目とも4作目とも呼べる『ハーフ・アローン』までに、たくさんの曲が生まれましたね。リミックス集もリリースして、ひと区切りついたところでの今作ということになるのではないかと思いますが、どうでしょう? どのような気持ちで取り組んだ作品だったのでしょうか?

ニック・ムーン(ヴォーカル): そうだね、いまはすごくわくわくしてるよ。この作品ができたことにはすごくよろこんでる。ちょっと期間があいたぶん、すごくフレッシュな気持ちでのぞむことができたんだ。あいてる期間にいろいろ考えることもできた。ああいうことをやりたいとか。すごくよかったなと思ってるよ。

実際に大きく変わったなと感じている部分はありますか?

トム・ロウ(ギター/キーボード):精神的な部分ですごく変わったところがあると思う。あとは長い期間をかけて制作しただけに、生まれ変わったっていうような気持ちもあるかな。これまでは長い時間をかけて制作したことがなかったから、そのへんも精神的な変化と関係してるのかもしれない。

なるほど。ちょっと乱暴な質問なんですが、カイトの音楽って明るいものだと思いますか? それとも暗いものだと思いますか? いいかえれば、他者に訴えるような音楽か、自分のなかにもぐりこんでいくような音楽か、どのように感じているでしょう?

ニック:いい質問だね(笑)。

トム:音楽的にはすごくハッピーだなと思うし、自分もハッピーな気持ちだと思う......

ニック:そうだね。

トム:だけどすごく不思議なのが、それにのせるニックのリリックはかなしいものが多いんだよね。そういうところが、僕たちの音楽のメランコリックな部分を生んでいるのかなとは思うよ。

ああ、たしかにそうですね。明るさのなかにつめたいかなしみみたいなものがありますよね。どうしてそのような対照が生まれるのでしょう?

ニック:おれは(自分の詞が暗いとは)思わないよ。

ははっ!

トム:明るさと暗さのなかで深みを増すというか、ニックの詞がいろんなレイヤーをつけてくれるという気がしていて、なんか、聴く人の受けとり方を変えてくれるようなものになるって思う。自分の作った曲に対して、ニックがどんな詞をつけるのかっていう関係性もおもしろいし、そういうところでいろんな階層が生まれてるかな。

レイヤーがつくというのはほんとにそのとおりですね。同時に最初の作品からこの新譜まで一貫して、すごく壮大でドラマチックなエモーションがありますが、これにはなにかヴィジュアル的なイメージがあったりするのですか?

トム:壮大さっていうのは僕たちもすごく意識していて、壮大なものにしたいなと思って音楽を作ってるよ。でもシンプルに自分の好きな音が見つかれば、それをループして重ねたりもする。でも、最終的には大きなものにしたいと感じているよ。

[[SplitPage]]

日本に来ていつもいちばんびっくりするのは、みんなとても真剣に演奏を聴いてくれることなんだ。イギリスだと2~3人が真剣に聴いてて、あとの2~30人はうしろで飲んでるって感じだね。


Kyte
Love to be Lost

Hostess

Amazon

あまり比較するのもよくないとは思うのですが、カイトはシガー・ロスやビョークと比べられることがありますね。われわれ日本人が彼らのようなアイスランドのアーティストのなかに幻想するものが、カイトにはあると思うんです。あなたがたの故郷のレスタシャーにはアイスランドと通じるような雰囲気があるのですか?

トム:どっちかっていうと、レスタシャーが僕らの音楽に影響しているというよりは、そこから遠く離れたいっていう気持ちが表れてるかな。故郷はすごく好きなんだけど、現実逃避的な気持ちでそこから出たい、なにか違うものを求めたいっていう感じがあるよ。

どこかに行きたい、逃げたいというような気持ちは、こうしたツアーなんかで物理的に世界を移動することで解消されたりするものですか? ぴったりくるような場所はみつけられます?

トム:いろいろなところへ行ってみて不思議な気持ちだね。世界をまわってみて、よっぽど自分の故郷よりもいい場所とかいい環境、おもしろい場所がいっぱいあったよ。あきらかにね。でも帰ってみるとやっぱり故郷のよさだったり、そこに家族がいたり友だちがいたりして、大切な場所だっていう思いが強くなるよ。ほんとに不思議な気持ちだね。

現実逃避的な気持ちでいることと、音楽が壮大になっていくこととはなにか関連がありますか?

ニック:うん。

(笑)

トム:そうだね。あると思うよ。ただ説明するのが難しいな......。曲を書くごとに気持ちも変わってくるし。

そうなんですねー......。では、ピアノとかグロッケンは今作で重要な役割をはたしていますけど、曲づくりはピアノからはじまるんですか?

トム:いや、だいたいギターで作りはじめるんだ。コードをギターで作って、それをプログラムしてコンピューターに取り込んで、作りこんでくっていうことが多いよ。けど今回はニックがピアノをたくさん弾いてくれて。

"セプテンバー・フィフス"っていう曲がありますね。それは何があった日なんでしょう? とても印象的なピアノのアルペジオと、ストリングスの悲壮なテーマで、時間をかけてゆっくりゆっくり緊張を高めていく曲ですよね? だからこの日っていうのはよっぽどのことがあった日なのかなって思ったんです。あるいは忘れられないインパクトが刻まれたとか。

トム:9月5日にその曲を書いたんだよ。

(一同笑)

ははっ。ええー残念。

トム:はははっ。

歌詞もないし、他の曲と色合いも違うので、このアルバムのなかだとやっぱり注目せざるを得ない曲かなって思ったんですよ。

トム:その曲ができあがってみて、ほんとに曲というよりも、楽譜っていうか......。気持ち的にもほんとにほかの曲と違うものだったから、逆に、タイトルをつけるよりもその日の日付でとどめておいたほうがいいかなって感じで、日付をタイトルにしたんだよね。

たとえばこの曲はすごく特徴的なものではありましたが、基本的には、音のテクスチャー、ソング・ライティング、実際のパフォーマンスのなかでは、なにがいちばん大事なものだと感じていますか?

トム:ええと......コードのシークエンスで、自分が感じるもの、感情が大切だね。それはほかの人でもそうだと思っているし、重要なことだと思う。

なるほど。では故郷のレスタシャーについて教えてください。どんなところで、どんな音楽シーンを持っているのでしょう?

ニック:じつは地元では数回しかライヴをやったことがなくて、東京のほうが多いくらいだよ。地元の音楽シーンにはまったく属してないね。すごくちっちゃな町なので、ミュージシャン同士のつながりがほんとに強くて、残念ながらそのつながりのなかに僕らは入りこめていないんだ。地元でみんなが聴いているのはロックだったりハード・ロックだったり、あんまりそこから大きなアーティストって生まれてなくて、カサビアンくらいかな。

カサビアンが同郷なんですね。

ニック:そうそう。でも彼らも地元のシーンのつながりのなかにはいなくて、突然出てきてメジャー・レーベルに属したって感じなんだよね。

へえー。そういうみなさんは初めて音楽をもっと広いところにむけて発信しようとしたとき、どこで演奏したわけですか? ロンドンとかに出ていくんですか?

ニック:デビュー当時はよくロンドンに出ていってたね。近い町でノッティンガムとかバーミンガムとか、そういうところにいったり、ブリストルとかブライトンとかマンチェスターとか、地元ではないところでいろいろ活動してたよ。他のバンドとかも、ツアーをするときには、うちの地元にはとまらないで、近所の街に行くんだよね。

日本は、カイトという存在を見つけるのが早かったなと思うんですけど、日本のリスナーと自分たちの音楽性との間になにか相性のようなものは感じますか?

トム:そうだよね。

スコット・ヒスロップ(ドラム):それはどこよりも感じるよね。

ニック:日本に来ていつもいちばんびっくりするのは、みんなとても真剣に演奏を聴いてくれることなんだ。イギリスだと2~3人が真剣に聴いてて、あとの2~30人はうしろで飲んでるって感じだね。

ひどいですね(笑)。なにか日本と合うところがあるとすれば、それは風土とかってことなんでしょうか?

スコット:ちょっとしたポップ感のあるコーラスだったり、なにかを描写するような音楽が日本のリスナーに受けてるんじゃないかなって思うよ。

カイトの過大なエモーションというのは、ヘッドフォンで聴くのとライヴで大きな音を共有するのとでは、よりライヴのほうで伝わるものなのかなと思うのですが、今後もそのような音作りは変わりませんか? なにか次の展開についてヴィジョンがあれば教えてください。

スコット:じつはいままでの作品は作ることに没頭してしまって、あとでどうやってライヴをやるのかということをまったく考えてなかったんだよね。けど今作はライヴを意識して、ライヴをどうやってやっていくかということをすごく考えた作品なんだ。今後もそうやってどうやってライヴをいかしていくかっていう音作りをしていこうと思ってるよ。

Tam Tam - ele-king

 一聴してよく制御されたダブ・サウンド、という印象。快楽のポイントを衝くエフェクト、そして揺さぶりをかけるベース、とダブの基本をきっちり抑えている。20代前半のバンドと喧伝されているが、たしかに年齢を思うと完成度が高い。そして、ひょっとしたら渋い? 女性ヴォーカルに強力なバック・バンド、という編成からポスト・パンク世代のニュー・エイジ・ステッパーズを想起させる。もう30年も前のバンドだが、Tam Tamのルーツがその辺にあることは容易に想像がつく。いま、20代前半の子がどんな音楽を聴いてるのか詳しく知らないが、このバンドのメンバーは他の同級生から浮いていたに違いない。きっと、授業中に音楽誌を隠し読みしているようなタイプだ。

 そう、Tam Tamは〈On-U〉、あるいはダブステップまで脈々と流れるブリストル・サウンドの魔力を体感している人なら好きになる音だ。レゲエとロックの混血、さらにはエレクトロニック・ミュージックまで呑み込んでしまうサウンドの生命力は強く、世紀をまたぎ、また遠い東京という地で装いも新たに登場した......というと話がでか過ぎるか。このアルバムはどちらかというとロックと親和性が強く、ゆえに聴きやすくキャッチー。黒田さとみの伸びやかで美しく、ときに力強いヴォーカルはスターのオーラを早くも漂わせている。決してセル・アウトを意識しているわけではない、ただ自分たちに気持ちのよい音を追求した良質なポップ。まずは、そんな評価ができると思う。

 本作はファースト・フル・アルバムでリトルテンポのHAKASE-SAN(exフィッシュマンズ)をプロデューサーに迎えている。昨年、自主流通で発表したミニ・アルバム『Come Dung Basie』がレゲエやスカのルーツに忠実だったのにくらべ、今作はもっと色彩ゆたかで、軽やかにジャンルを横断している。ダブというフォーマットのうえでマッド・サイエンティストのごとく実験しているよう。でも彼らの場合、サイエンティストというよりはプロフェッサー(!)=博士だ。やはり優等生然としている感は否めない。良くいえばサウンドに対して誠実であり貪欲ということ。バック・バンドの3人が揃ってメガネ男子なのも、何かを物語っている。僕個人はそんな姿勢に親近感を持っている。弱肉強食の時代にメガネ男子は大変なのだ!

 アルバム冒頭はヴォーカル黒田の北海道厚岸の音頭を素材にシャッフルした"Akkeshi Dub"からはじまる。ここから前半は"Dry Ride"のようなステッパーズ・リディムあり、ダンスホールに接近したものありとベースの疾走感が際立つナンバーが続く。アルバム中盤ルーツ・レゲエを奏でたあと、黒田のヴォーカルが引き立つラヴァーズ・チューン"Stop The Alarm"ではトロピカル・フルーツのような濃厚な甘さが空間を支配する。一転、インストに呟くようなリーディングが乗っかる8曲目から、ファンクが加味された曲があったり、"Train"はまさにブリストル・サウンドで、マッシヴ・アタックから現在のダブステップまでを彷彿とさせるナンバー。後半は深く、ポーティスヘッドやサイレント・ポエッツのような暗さを持っている。黒田の歌声は「叫び」にはならず呪文のように囁いている。繊細なニュアンスや謎を残し、アルバムは終焉へと向かう。

 洗練していてスタイリッシュで、率直にいってすごく格好いい。紛れもないダブ・ミュージックだが、その範疇をときに乗り越えてしまう振幅があり飽きさせない。でもね......ひとつだけ注文したくなる。Tam Tamにそれを求めるべきではないかもしれないが敢えて言わせてもらおう。レゲエ=レベル・ミュージックであって欲しいと思う人間にとって、「レベル」は何処にあるのだ、とあら捜しをしたくなる。アリ・アップは「拝金主義者が消え去る(フェイド・アウェイ)」と歌っていたし、原発事故以降、デモを渡り歩く筆者にとってサウンド・デモで謳うリクル・マイの誠実なプロテストに純粋に感動していたので、どうしても、そこがね......と。

 でも、本人たちはそんなこと百も承知のうえだろう。何の運命の悪戯か正真正銘「ジュネ」と読む名前を授かり、URやザ・ブルー・ハーブを愛するベースの小林樹音が作詞した"Inside The Walls"ではチェルノブイリで石棺され、いまも原子炉に埋もれる「壁のなか」の遺体のことを描き出しているという......。歌詞を読んでもそれは伝わらないかもしれない。そっと忍ばしているという感じ。たしかに、被害が明白で、世論の大勢がいまや異を唱える原発問題を表現するのは難しい。レベル・ミュージックとして、あまりにありふれた表現に陥る可能性はあるし、反原発の表現は、それでよいのかもしれない。"Inside The Walls"は熟慮し現れた表現なのではないか。より抽象的に表現することで広義に解釈できるというような。「レベル・ミュージック」などとTam Tamにいらぬ責任を負わせるよりも、いまはサウンド・プロフェッサーとしてさらなる進化を期待させる音にひたすらヤラれ、そして聴き惚れていればよいのかもしれない。自分たちの鳴らしている音楽が一体どんな出自を持っているのか、それが嫌でも突きつけられる日がくるだろう。
 ちなみにベースの小林樹音はJitteryJackal名義で〈術ノ穴〉のコンピレーションにも参加しポスト・ダブステップ風味の曲を提供している。Tam Tamのダークサイドのような感じで印象的だ。また、アルバムに先攻して〈JET SET〉とコラボし制作された"Dry Ride"のEPも発売されている。

DJ DYE (THA BLUE HERB / Oplusd.) - ele-king

春アルバム


1
Aphex Twin - Drukqs - Rhino/Wea

2
Moog - The Electric Eclectics of Dick Hyman - ABC Records

3
Heatsic - Intersex - Pan

4
Donato Dozzy - K - Further Records

5
Marumari - The Wolves Hollow - Carpark

6
Stewart Walker - Stabiles - Force Inc.

7
Billy Cobham - Crosswinds - Atlantic Recording

8
Moodymann - Forevernevermore - Peacefrog Records

9
Apparat - The Devil's Walk - Mute

10
Maino - Day After Tommorow - Atlantic Recording

P-RUFF (radloop) - ele-king

Smoky Beats 7" 10選 (2012.5.8)


1
Benjamin Herman - Haze - Benjamin Herman

2
Anthony Valadez - B-side for philly - Record Breakin

3
Black Monk - Northern Lights - Poo Bah Records

4
Mike Slott - Knock Knock - All City

5
Baptman - GROO - Melting Pot Music

6
C&C Edits - Bonbar - Point

7
Bushmind - Wakers Chant - Lazy Woman

8
Kissey Asplund - Move Me - Record Breakin

9
OBAH - Four Women - Bstrd Boots

10
Electric Conversation - Melodie - Futuristica Music
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727