「K A R Y Y N」と一致するもの

YUKKE - ele-king

10 records in my bag now (no particular order)

Bibio - ele-king

 ナイス・タイミングですね。5月27日・28日に開催されるTAICOCLUBへの出演が決まっているビビオが、急遽新たなEPをリリースします。昨年の『A Mineral Love』はソウルやファンクからの影響を独自に取り入れた素敵なアルバムでしたが、今度はなんとハウスです。なんでも彼は、いまのような音楽スタイルになる以前はハウス・トラックを作っていたんだそうで。きっとビビオの新たな一面が見られるEPに仕上がっていることでしょう。リリースは5月5日。なお、国内流通盤は100枚限定だそうですよ。

B I B I O
TAICOCLUB’17 出演も話題!
来日に先駆け、BIBIOが最新EP『Beyond Serious』を来週緊急リリース!
全世界1000枚、国内流通100枚限定の12”は即完必至!

人気の野外音楽フェスティバル「TAICOCLUB」への出演も発表され、初披露となるLIVEパフォーマンス決定のニュースも話題のBIBIOが、過去最高傑作の呼び声高いアルバム『A Mineral Love』、アルバムに参加したオリヴィエ・セイント・ルイスとのコラボレート作品『The Serious EP』に続く新作EP『Beyond Serious』を来週5月5日(金)にリリースすることが決定! 発表に合わせ、リード曲“Beyond My Eyes”が公開! 本EPは、全世界1000枚、国内流通100枚限定の12”ヴァイナルとデジタル配信でリリースされる。

Bibio - Beyond My Eyes
https://vimeo.com/214653200/9e4d745ed1

本作では、BIBIOことスティーヴン・ウィルキンソンが10代に熱中したという90年代中期から後期のフレンチ・ハウスにインスパイアされた楽曲を4曲収録。キャリアの原点でもあるBIBIOスタイルのハウス・トラックにオリヴィエ・セイント・ルイスの歌声がフィーチャーされている。

僕が最初にサンプラーを買ったのは1998年なんだ。とてもローファイなやつで、機能やサンプリングの可能な時間もかなり限定されていた。そのサンプラーを使って初期に作ったのは、僕が大好きだった90年代半ばから後半にかけてのフレンチ・ハウスにインスパイアされた、荒削りなハウス・トラックだったんだ。実際のところ、BIBIOとしていま知られているような様々なスタイルの音楽を作る以前は、ハウス・ミュージックを作ってたんだよ。

そこから18年が経って、Rolandのドラムマシーン、TR-808を手に入れたんだ。その808で2016年にたくさんのリズム・トラックを作って、リング・モジュレーターを使ったサウンドで実験を繰り返した。それから808以外の楽器を一切使わずに4つのトラックを作ったんだ。それらを携帯に入れて、家で聴き込んだ。そのままでも楽しめたけど、そこから何かへと発展できる確信を持ったんだ。808を買ったことで、ハウス・ミュージックを作りたいって願いが強くなったんだよ。その後、それらのドラム・パターンをベースにさらに発展させることにした。僕のハウス好きだった一面を知ってる親友は、ハウス・トラックだけでEPか何かをリリースすべきだって言ってくれてたし、それはつねに僕がやりたかったことだった。

だからスタジオに戻って、808だけで作った4つのリズム・トラックにシンセサイザーを加えることにした。その後ヴォーカル・サンプルを加えたいって段階になって、どんなアカペラが使えるかを考えてるとき(スタジオの中には使いたいサンプルがないということもあって)、オリヴィエ・セイント・ルイスが「Why So Serious?」用の送ってくれたヴォーカル・トラックやその他の素材があったのを思い出したんだ。リミックスEPを作ることには興味がなくて、オリヴィエのヴォーカルの生素材から、オリジナルのメロディーを使って、まったく新しい楽曲を作ることが今作のコンセプトで、挑戦だった。
- Bibio

Labels: Warp Records
artist: BIBIO
title: Beyond Serious

release date: 2017/05/05 FRI ON SALE

iTunes Store: https://apple.co/2oI8FYm

01. This Ain’t ‘bout The Feelings
02. Beyond My Eyes
03. Turn It All Down
04. Fix This Thang

Jack Peoples - ele-king

 ま、まだあったのか! さすがにもう未発表曲は残されていないだろうと思っていたが、ぜんぜんそんなことはなかったようである。オランダのレーベル〈Clone〉が、ドレクシアの片割れである故ジェイムズ・スティンソンの新たな音源をリリースすると発表した。そのアナウンスによれば、2000年代初頭にジ・アザー・ピープル・プレイス名義でリリースされた2タイトルのすぐ後に、それと関連するミニ・アルバムが用意されていたのだという。スティンソンが亡くなってしまったためそれが日の目を見ることはなかったそうだが、最近になって「長いこと失われていたDATテープ」が見つかったとのこと。そのジャック・ピープルズ名義の未発表曲集『Laptop Cafe』には6曲が収録されており、6月26日に発売される。リリース元は、これまでドレクシア関連の音源に特化してきた〈Clone〉のサブ・レーベル、〈Clone Aqualung Series〉。
 ちなみに、上述のジ・アザー・ピープル・プレイス名義の2タイトルとは、アルバム『Lifestyles Of The Laptop Café』と12インチ「Sunday Night Live At The Laptop Cafe」のことで、それぞれ今年の2月と4月にリプレスされたばかりだ。さらに、ドレクシアのもう半分であるジェラルド・ドナルドのドップラーエフェクト名義の新作もつい先日リリースされたところで、スティンソンが亡くなってから15年というこの節目の年に、どうもドレクシア再評価の波が来ているような気がしてならない。
 ともあれ件の『Laptop Cafe』は、SoundCloudに公開された音源を試聴するかぎり、ジ・アザー・ピープル・プレイス名義で展開されていたのと同じスウィートでロマンティックな路線のようである。正直、もうこのサンプラー音源を聴く段階で泣きそうになってしまう。ああ、スティンソンよ。

アーティスト:Jack Peoples
タイトル:Laptop Cafe
レーベル:Clone Aqualung Series
カタログ♯:CAL008
発売日:2017.06.26

[トラックリスト]
01. Song 6 (Instrumental)
02. Song 2
03. Song 1
04. Song 4
05. Song 3
06. Song 5 (Vocal)

Run The Jewels - ele-king

←前編

エル・Pとキラー・マイクの出会いは、ボム・スクワッドとアイス・キューブが出会って作り上げた『AmeriKKKa's Most Wanted』にたとえられたりもしますね。 (二木)

ふたりは、人種、出身地、スタイルの違いを越えて、ラップ・ナードであるという共通点によって奇跡的にベスト・パートナーになったと。 (吉田)


Run The Jewels
Run The Jewels 3

Run The Jewels Inc. / Traffic

Hip Hop

Amazon Tower HMV iTunes

吉田:今回のビートもクラブ・ミュージックの文脈が色濃いですが、エル・Pがソロで2012年にリリースした『Cancer 4 Cure』ってアルバムからスタイルや音像が変わっていて。最初はずっとサンプラーを使っていたじゃないですか。で、『Fantastic Damage』からシンセとか使い出すんですよね。だけどその頃はまだローファイなサンプル・ベースの音像で、それにシンセの音を合わせていく感じ。で、その後ソロがもう1枚あって、そこまではまだ全体のトーンとしてはローファイな印象です。それで2012年のソロ・アルバムからラン・ザ・ジュエルズの3枚にかけて、このローファイとハイファイの融合を図っているというか。もちろん全体的にはハイファイ側に寄ってきているんだけど、初期のエル・Pの特徴はやっぱりローファイなので、持ち味を崩さずどのようにこの二層のレイヤーを重ねるかを考えたのかもしれません。それから近年はリトル・シャリマーとワイルダー・ゾビーという楽器ができる兄弟ふたりとビートを共作しているんですよね。

二木:あー、そうなんですね。『I'll Sleep When You're Dead』から楽器演奏者が参加するようになってその路線を推し進めて到達したのが『Cancer 4 Cure』ですよね。

吉田:今回のアルバムは特にそうかもしれないですけど、音楽的じゃないですか。ビートが効いていてグルーヴが楽曲を引っ張るんだけれど、フックになると楽器の音が入ってきて、カマシ・ワシントンがサックスを吹いている曲もそうですけど、フックがコード感や旋律のある展開になっているんですよね。見方によっては楽器の生演奏をサンプリング・コラージュしているとも取れると思いますが。しかし特徴的なのは、その音楽的というのがR&Bやソウル的なものではないじゃないですか。曲によってはもろにナイン・インチ・ネイルズっぽいと思うけど(笑)。

二木:まさにインダストリアル。

吉田:だからそこも逆に日本の従来のラップ・ファンにはいまいち受けづらいのかもしれないですね。音数も多いし、たとえばいまトラップが好きという人にこれを勧めようとすると……。というかこれは磯部涼氏も言っていたんだけど、音数多そうだし、言葉も多いし、言っていることも密度がありそうだし、いまはそういう雰囲気じゃないんだよねぇ、いまはミーゴスで踊っていたいんだよ、みたいな(笑)?

二木:例えば、『Run The Jewels 3』の“Call Ticketron”ではリン・コリンズの“Think”をサンプリングしているけれど、その声ネタによるリズムのアクセントの付け方はまさにロブ・ベース&DJ E-Zロック“It Takes Two”ですよね。で、ブーストしたプリミティヴなベースとキックがぐいぐい引っ張ってその上でスピットしまくる。だから、オールドスクール/ミドルスクール・マナーを継承しながらいまのダンス・ミュージックをやっていますよね。さらに音楽的という点では、本人たちが意識していたというのもありますし、エル・Pとキラー・マイクの出会いは、ボム・スクワッドとアイス・キューブが出会って作り上げた『AmeriKKKa's Most Wanted』にたとえられたりもしますね。サンプリングやスクラッチや演奏が騒々しく、しかも緻密にアレンジされているという。それと彼らのもうひとつの大きな特徴はなんと言ってもバトル・ライムじゃないですか。まずはセルフ・ボースティングありきなんですよね。バトル・ライムがポリティカルなメッセージと下品なジョークやFワードを共存させていると言えますよね。最終的にバトル・ライムによるセルフ・ボースティングに昇華していきますよね。あるアメリカ人の友人が『I'll Sleep When You're Dead』ってタイトルも洒落が効いていて面白いと言うんですよ。どういうことかと言うと、一般的には「I'll Sleep When I’m Dead」と表現して「俺は死んでから、寝る」みたいな意味になるけど、それを「I'll Sleep When You're Dead」とすると、「お前が死ぬまで、俺は眠らねえから」という攻撃的な意味合いになると。あと、『Cancer 4 Cure』も「Cure For Cancer」つまり「ガンの治療」という意味を逆転させているところとかどこか皮肉っぽい(笑)。

吉田:たしかに、最初のソロの『Fantastic Damage』というタイトルもそういう意味で皮肉めいてるし、やはり滅茶苦茶ヒップホップ思考ですよね(笑)。

二木:滅茶苦茶Bボーイ・スタンスを感じますね(笑)。

吉田:だからこそこれだけ評価され続けているんだと思うんですけど、その基本が揺るがないんですよね。要するにビートはローファイとハイファイの融合、サンプラーとシンセの融合、ブレイクビーツとTR-808のダンス・ビートの融合に成功して、進化したと。じゃあ従来の「ロー」なバトル・ライムをどんな「ハイ」コンテクストなボキャブラリーとデリバリーで進化させられるんだろう、みたいなことをヒップホップ・メンタリティでずっと考え続けているみたいな(笑)。

二木:そうそう。

吉田:ヒップホップの外側から考えたんじゃなくて、内から考えているんだと思うんですよね。

二木:まさにそうですね。日本に置き換えて考えてみると、エル・Pのラップに関していえば、例えばの話ですけど、降神の志人が攻撃的なBボーイ・スタンスに軸足を置きながらスピリチュアルなタームやヒッピー的な思想、寓話的なストーリーテリングをバトル・ライムでスピットするような感覚に近い気もしますね。スピリチュアリズムやヒッピー・カルチャーに軸足を置きながらラップするんじゃなくて、ヒップホップに軸足を置きながらそういった文化や思想をシェイクしてラップするような感じですかね。それか、SHING02が“星の王子様”をセルフ・ボースティングとしてラップする、みたいな(笑)。いずれにせよ、エル・Pがヘッズを唸らせ続けることができるのは、そのアグレッシヴなBボーイ・スタンスゆえですね。

吉田:SFというのも具体的にはアーサー・C・クラークとか、ディストピア繋がりでジョージ・オーウェルとかも引用していたりするんですけど、やっぱりフィリップ・K・ディックはデカいと思うんですよね。ディックの小説に特徴的なパターンとしてあるのが、いま目の前の現実に見えている世界は、実は何らかの装置や権力が見せている偽の現実、幻影みたいなもので、その現実だと思っていた世界が崩れていくみたいな話じゃないですか。例えばこのアルバム(『Run The Jewels 3』)も前半は直接的に現実の近さで歌っていて、だんだん寓話とともに世界のほころびが入ってきて、最後にすべてを裏で牛耳っている権力が目の前に現れて「支配者を殺せ!」と叫びながら世界が崩壊するというような流れになっている。そういう構造を取り出すと、ディックの小説をなぞっているようにも見えて、やはりエル・Pにとってディックの影響力は大きいと思うんですよね。ディストピアと言っても描き方が色々あると思うんですけどね、例えばカンパニー・フロウの“Tragedy Of War (In III Parts) ”や“Population Control”なんかは戦争をトピックにしていますが、SFの歴史改変モノのように見ることもできる。

二木:あと、僕はそれこそGen(ocide)AKtionさんの『探求HIP HOP』の記事で曲の意味をより深く知ることができたんですけど、エル・Pの“Stepfather Factory”の資本主義批判もSFモノですよね。

吉田:そうそう。あとはこのようなエル・Pのやり方が後世に与えた影響力も大きいと思うんです。まず直接的には〈デフ・ジャックス〉のアーティストであるキャニバル・オックスとかエイソップ・ロックに出たじゃないですか。キャニバル・オックスはジャケットからしてわかりますがSF的な世界観にストリートを歌うラップを乗っけたらどうなるかっていう、ある意味実験ですよね(笑)。で、エイソップ・ロックはエル・P以上に難解で詩的なライムで、SFと言うよりは寓話的なところがありますが、シニカルな視線も持ち合わせていて、それはそれこそ西海岸のアンチコン以降の流れにもつながるという。実際にエル・Pとアンチコンのソールのビーフも有名ですが。しかしともかく絶対エル・Pがいなかったら「ここまで自由にやっていいんだ」ってことになっていなかったと思うんですよね。その辺は当時の日本ではリリックの翻訳があまりなかったこともあって共有されていなかった印象ですが。

二木:さっきも少し話しましたけど、エル・Pや〈デフ・ジャックス〉、〈ローカス〉の日本での受容のされ方は、パフ・ダディを象徴とするようなメインストリームのヒップホップへのアンダーグラウンドからのアンチテーゼとしてまずあったと思います。彼らこそが“ヒップホップの良心”だと。1999年のDJ KRUSHとMUROが表紙の『ele-king』で「パフ・ダディは表現者? ビジネスマン?」というテーマでDJヴァディムとアンチ・ポップ・コンソーティアムのメンバーが激論を交わすという記事があって、当時はそういうメインストリームとアンダーグラウンドの対立構造が産業的にも表現的にもいまよりも明確にあった気がしますね。そういう90年代後半に、モス・デフとタリブ・クウェリのブラック・スターもいたし、DJスピナのジグマスタズ、ショーン・J・ピリオドとかもいたじゃないですか。そういう中でカンパニー・フロウも聴かれていましたよね。

吉田:当時は、〈ニンジャ・チューン〉なんかを中心にアブストラクト系も盛り上がっていましたからね。

二木:そう、アブストラクト系みたいな括りの中で聴かれていましたね。僕の知るかぎりエル・Pの言葉や思想を深く掘り下げた当時の記事とかはあまり思いつかないです。

吉田:ですよね。だから当時DJ KEN-BOが……(笑)。

二木:KEN-BOさん!

吉田:KEN-BOさんが『FRONT』誌で10枚の12インチを紹介するコーナーで「Eight Steps To Perfection」を紹介していて、俺もそれをシスコで買ったんですよね。KEN-BOさんはRZAの変則的な感じが表れているとコメントしています。たしかにそのときはとにかくちょっと変わっているって感じで、ビートがダークでぜんぜんキャッチーじゃないし、ネタも怪しげなノイズみたいなのが入っているしで。

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彼らのもうひとつの大きな特徴はなんと言ってもバトル・ライムじゃないですか。まずはセルフ・ボースティングありきなんですよね。バトル・ライムがポリティカルなメッセージと下品なジョークやFワードを共存させていると言えますよね。 (二木)

従来の「ロー」なバトル・ライムをどんな「ハイ」コンテクストなボキャブラリーとデリバリーで進化させられるんだろう、みたいなことをヒップホップ・メンタリティでずっと考え続けているみたいな(笑)。 (吉田)

二木:さきほど吉田さんが『Run The Jewels 3』が、「最後にすべてを裏で牛耳っている権力が目の前に現れて『支配者を殺せ!』と叫びながら世界が崩壊するというような流れになっている」という話をされていたじゃないですか。そこで今日話そうとしていたことを思い出したんですけど、最近炎上したペプシのCMのことなんです。ペプシが近年のいわゆる「ブラック・ライヴズ・マター」のデモを連想させるようなCMを作って公開したんですよね。そのCMでモデルのケンダル・ジェンナーという女性が群衆の前に立ちはだかる警官にペプシを渡してそれを警官が飲むと、群衆と警官隊が歓喜の渦に包まれてみんなが仲良くハッピーになるというようなものなんです(笑)。それに対して、キング牧師の娘をはじめ、いろんな人から批判の声が上がったんです。キング牧師の娘は「父もペプシの力を知っていればよかったのにね」みたいな皮肉めいたツイートをしたんです。このCMに対する批判のポイントはおそらくいくつかあって、「デモや政治活動を商業利用するな」という批判から「デモ隊と警官隊がペプシを飲んだくらいで和解するわけがないだろ」という批判まであると思う(笑)。

吉田:それはベタなツッコミですよね(笑)。

二木:結局ペプシはCMを取り下げることになったんですけど、実はこのCMのパロディ映像があって、ジョン・カーペンターの『ゼイリブ』風に仕立てられているんです。ある特殊な眼鏡をかけると、権力者や支配者の座につき地球を支配するエイリアンの姿が見えるというあの有名なSF映画です。要は警官隊がエイリアンだったという10秒ぐらいのパロディ映像があるんです。で、その映像にエル・Pのラップが使われているんですよ。

吉田:へえ、それはハマってますね。

二木:その映像がエル・Pの知るところになったんですよ。そこで、あるアカウントが「これはあなたの許可取ってんの?」みたいなメンションをエル・Pに飛ばしたら、「許可は取っていない。でもこのケースはOKだ」みたいなことをツイートしていて。

吉田:「俺のことよくわかってるな」みたいな(笑)。

二木:そうそう。で、そのリリックは『ラブル・キングス』っていう1960年代後半から1970年代初頭のニューヨークのギャングを描いた日本未公開のドキュメンタリー映画にRTJが提供した“Rubble Kings Theme”っていう曲のエル・Pのあるラインなんです。で、吉田さんだったら正確に訳せるんじゃないかなと思って、そのリリックを持ってきたんですけど(笑)。

吉田:(リリックを見ながら)やっぱり権力に対するプロテストみたいです。「悪いがオレたちはお前らの賛歌は歌わない/誓約にもノラない/クズの中から現れる/落ち着きのない人々の支配者たちよ/オレらを試しても無駄だぜ」みたいな感じですかね。

二木:だいぶ詩的ですね。

吉田:さっきの話で言うと、これが警察権力みたいなこととも言えるし。このアルバム(『Run The Jewels 3』)の中心に据えられているのは、資本主義批判で、権力者批判であり、そこはエル・Pもキラー・マイクも足並みが揃っているところだと思うんですが。キラー・マイク目線では警察権力に対する視線もありつつ、やはり格差の問題ですね。1%の人間がすべてを支配している世界で、その支配者たちを“Kill Your Masters”と繰り返し言っていて、それもバトル・ライムのマナーで「Kill」と強い表現で。またコー・フロウの話になっちゃいますけど、コー・フロウのときに“Bladerunners”って曲があったじゃないですか。あれはマイク・ラッドの曲にフィーチャリングされるという形でしたが、当時はSF的な想像力でディストピアを描いていた。今回のアルバム(『Run The Jewels 3』)は、ザック・デ・ラ・ロッチャのヴァースで最後締められる“Kill Your Masters”って、別の世界の話じゃなくてこの現実の世界の話なんだけど、彼がかつてSF的想像力で書いていたディストピアといまの現実が重なっちゃったというところにアイロニーがあるなと思って。

二木:なるほど。ディストピアといまの現実が重なっちゃったアイロニーという話で言うと、DJシャドウがRTJをフィーチャーした“Nobody Speak”のPVを思い出しますね。ダーティな言葉が散りばめられたキラー・マイクとエル・Pのライムを、どこかの議会かサミットに集まった、ビシッと背広を着た各国の代表者か政治家に扮した出演者に口パクさせて、円卓を挟んで罵り合わせて最後は大乱闘になるという作りになっている。しかもその中のひとりがアメリカの国旗を振り回しながら大暴れするという(笑)。このPVを一緒に観ていたNYの友人が隣でゲラゲラ笑いながら、「でも、これっていまのトランプ以後の世界っぽいよね」って言うんですよ。キラー・マイクとエル・Pの下ネタやキワドイ言葉を織り交ぜた政治批判、社会風刺のライムは、コメディアンからの影響もあるんだと思いますね。彼らは、インタヴューでレニー・ブルースやリチャード・プライヤー、ジョージ・カーリン、ビル・ヒックスといったコメディアンの名前も挙げてます。だから、彼らのライムってブラック・ジョークなんですよね。そういういわゆるメタ視点があるところが、同じようにNワードやFワードを連発するトラップやギャングスタ・ラップとの違いでもあると思いますね。吉田さんが言うように、ディストピアではないですけど、戯画化して描いていた世界がそのまま現実と重なってきているというのはありますよね。

吉田:そうですよね。シャドウとやったのもタイミングが絶妙で。

二木:うん、この曲はかっこいいですよねー。DJシャドウやってくれた!って感じです。

“Kill Your Masters”って、別の世界の話じゃなくてこの現実の世界の話なんだけど、彼がかつてSF的想像力で書いていたディストピアといまの現実が重なっちゃったというところにアイロニーがあるなと思って。(吉田)

彼らのライムってブラック・ジョークなんですよね。そういういわゆるメタ視点があるところが、同じようにNワードやFワードを連発するトラップやギャングスタ・ラップとの違いでもあると思いますね。 (二木)

吉田:そういう意味だと、シャドウもいままでのやり方に安住しない男じゃないですか。だからちょっとエル・P的な進化をし続けるんだけど、昔の様式美として何度も同じものを求めるファンからすると「変わってっちゃうから今回のどうなの?」と言う人たちもいると思うんですが、そこはやはり自分の革新的な音楽への探究心にすごく誠実でいるというか。昔のエル・Pのビートに対してのラップのしかたってひたすら詰め込むスタイルで、オフ・ビートというか、ビートに対してスクエアじゃなかったと思うんですよね。最初の“Eight Steps To Perfection”はオーソドックスなビートにジャストのラップなんだけど、“Vital Nerve”なんかになると急激にビートの隙間を埋めたり外れたり複雑なライムで、いわゆるエル・Pらしいものになっている。で、今回はビート自体はもうグリッドに対して変則的な打ち方、ヨレるとかズレるってことはなくて、打ち方は変則的だけれど完全にクオンタイズされた世界じゃないですか。そんなビートの上に乗るライムもグリッドにすごく合っているじゃないですか。それってある意味では後退にも見えるし、90年代にもシンプルなライム回帰みたいなものってあったと思うんですよね。例えばブラック・ソートとか、後はOCなんかも僕の中ではそうだったんですけど、最初に出てきたときはけっこう複雑なライムをしていて、韻を踏む場所もけっこう凝っていたり、でもそれがシンプルにただケツで踏むだけのスタイルに近付いたりと。それがオールドスクール回帰みたいな良さもあった一方で、物足りなさもあったと思うんですよね。RTJではエル・Pもある意味ではそれに近いような原点回帰でケツで踏んでいて、あれだけビートから外れて言葉を詰め込みながら中間韻で複雑に踏んでいたのに、それをある種捨てているようにも見える。でも言葉の密度は相変わらず高くて、ぜんぜん物足りなくないじゃないですか(笑)。

二木:ぜんぜん物足りなくないですね。『Run The Jewels 3』の“Everybody Stay Calm”のエル・Pとキラー・マイクのラップの掛け合い、それとこの曲のスペーシーな上ネタは、ボブ・ジェームスの“Nautilus”をサンプリングしたラン・DMCの“Beats To The Rhyme”を彷彿させますよね。ビートの打ち方は変則的で、ここでもオールドスクールを継承しながら、また新たな試みをしようとしていると思いました。

吉田:なるほどね。あとはやっぱりそうは言ってもトラップ的な流れのスタイルも無視できなくて、トラップのBPMが70だとして、今回はもうちょっと速いのが多いですけど、ハイハットの32分音符が意識される作りになっていて。トラップのラッパーたちはその32分音符が意識されるビートに16分音符や3連符を多用して速度でなくてフレージング重視で乗せるけれど、昔のそれこそフリースタイル・フェローシップ周辺の奴らなんかだと普通にスキルフルに倍速で乗せるじゃないですか。例えばボンサグとかの世界になるんですよね。

二木:倍速で乗せるか、あるいはBPMを半分に落としてビートの合間を縫うような発想でラップをするかってことですよね。

吉田:そうそう。それでラン・ザ・ジュエルズも今回は倍速とか3連の磁場がすごく効いていて。その中で先ほど「物足りなくない」と言ったのは、リリックの内容の話は一切抜きにしてただ音楽として聴いたときに、倍速とか3連のフレージングでケツで踏むっていうオーソドックスなスタイルにも関わらず音楽的に素晴らしいという。それは彼らの絶対的なスキルに支えられていて、それがまたさっきのヒップホップの話になると思うんですよね。やっぱりヒップホップのスキル至上主義、バトル・ライム/ボースティング至上主義というのがあって、これだけ作品を出している中で、エル・Pって今回もつねにそこがマックスなんですよね(笑)。

二木:まったく衰えていない。というか、年齢を重ねてレイドバックするどころか、 バトル・ライムにしろ、スピットにしろ150キロの剛速球を投げ続けている感じですよ。

吉田:そうそう(笑)。だからそこの徹底した美学というか、本当にヒップホップの人なんだなという。年も食って人間としては丸くなっている感じがあるし、ライヴでもにこやかなんだけど、ラップしはじめたら絶対誰にも負けないという感じ(笑)。キラー・マイクとエル・Pのふたりの馴れ初めも、キラー・マイクがエル・Pに1曲やってもらったときにめちゃくちゃ惚れて「アルバムもやってくれるってことなんだよね?」って毎日電話して口説いて、エル・Pが「しょうがねえな」って言って(笑)。

二木:やってやるかと。

吉田:それでマジックが生まれたみたいなことを言っていますけど、さっきの対照的なことは色々とあるにせよ、例えば〈ローカス〉繋がりで言うと(笑)、昔タリブ・クウェリが「絶対クルーはちゃんと選べ。ワックな奴とやるとお前もワックになるぞ」と言っていましたけど、そういう意味でベスト・パートナーですよね。だってラン・ザ・ジュエルズももう3枚も続いているし、けっこうああいうふうに見えてふたりの仲には「やったらやり返す」みたいな関係性も絶対あると思うんですよね。「あいつやばいヴァース出してきたな、オレも絶対負けられない」みたいな(笑)。そういうことが裏には絶対あると思うんですよ。

二木:それはありますね。さっき例に出した“Everybody Stay Calm”の掛け合いもまさにそうですしね。だからエル・Pもキラー・マイクもお互いすごくいいパートナーを見つけたってことですよね。エル・Pはキラー・マイクに対して、自分が言えないことを言ってくれているという頼もしさも感じていそうですし。これがザック・デ・ラ・ロッチャとエル・Pで成立するかと言われたら絶対に成立しないですよね。

吉田:そうそう(笑)。ビッグ・ジャスとの関係もかなり面白かったんですけどね。ビッグ・ジャスはビッグ・ジャスで相当ぶっ飛んでいたというか、ソロやオルコ(・エロヒーム)とのユニットでもかなりアヴァンギャルドなアルバムを出していました。内容も社会批判系からスピリチュアル系、陰謀論系まで。

二木:ラップ・ミュージックで社会批判を生真面目にやりすぎると陰謀論になってしまうというパターンもあったりしますからね。90年代のモブ・ディープやアウトキャストにもそういう側面が多少ありました。

吉田:そう。そういう意味だとキラー・マイクはアウトキャスト文脈で出てきているけど、あんなちゃんとしている人っていう(笑)。めちゃくちゃ真っ当なことを言うという。

二木:キラー・マイクはお父さんが元警察官だったんですよね。

吉田:そうなんですよね。警察権力についてはRTJの前作の“Early”って曲でもすでに歌っているから、そこはすごく問題意識としてあったんでしょうね。しかしコンシャスな曲にしても今作と前作でもまた取り上げ方が違いますね。同様に彼のソロとRTJでも違う。

二木:なるほど。南部のアトランタのキラー・マイクとNYブルックリンのエル・Pが一緒に共作している面白さもありますよね。

吉田:いまだとサウス、特にトラップの世界を考えたときに、ニューヨークとはいちばん相容れないというか、いちばん遠い存在だとすると、それが90年代だと西と東が同じような距離の状態だったわけじゃないですか。だから、キラー・マイクとエル・Pの出会いをボム・スクワッドとアイス・キューブの出会いに重ね合わせるのは本当にその通りだと思いますね。そしてふたりは、人種、出身地、スタイルの違いを越えて、ラップ・ナードであるという共通点によって奇跡的にベスト・パートナーになったと。もちろんニューヨークと南部でもラッパーとしてコラボするみたいなことはあるわけですが。

二木:そうですね。キラー・マイクとエル・Pみたいにここまでがっつりタッグを組んで立て続けにアルバムを3作も出すことはなかなかない。RTJは間違いなく素晴らしいので、あとは聴いてたしかめてください!ってことですね(笑)。

interview with Ásgeir - ele-king

コンセプトやテーマはとくになかったんだ。強いて言うならば……自分探し、かな。一生懸命自分を見つけようとする僕がそこにいるんだ。


Ásgeir - Afterglow
One Little Indian/ホステス

PopR&BElectronic

Amazon Tower HMV iTunes

 ジョン・グラントがアメリカから逃げ出し、放浪ののちアイスランドに移住したのはやはり傷心のせいなのだろうか。孤独な人間は北国に向かわずにいられないのだろうか……。グラントはその歌詞から偏屈な皮肉屋に違いないと思っていたら、しかし、実際に会ってみれば何てことのない気さくな中年だった。だが、たくさんの問題を抱えていた彼を再生させたのはアイスランドという土地そのものだったのではないか、とも思う。
 そのジョン・グラントが英語詞を提供したことでも話題となったアイスランド生まれのシンガーソングライター、アウスゲイルの朴訥でまっすぐなフォーク・ミュージックを聴いていると、わたしたちがアイスランドに抱きがちな、厳格で豊かな自然に囲まれた国というある種のステレオタイプさえも大らかに受け止められるように感じられてしまう。ビョークとシガー・ロスのような特例に限らず、アイスランドは何かしらの形で音楽に携わる人間の割合が高いことで知られているが、そのなかでもとくに辺鄙な土地で育ったというアウスゲイルもまた北国の大自然と向き合いつつ、すくすくと音楽で育ったことが鳴らす音と歌によく表れている。

 以下のインタヴューは、2016年夏に〈ホステス・クラブ・オールナイター〉のためにアウスゲイルが来日した際におこなったものだ。その時点では制作中だったセカンド・アルバムからは5曲のマスタリング前の音源を聴くことができ、すでにサウンド面での新たな展開も予見することができたが、完成音源は遥かに音響的に洗練された仕上がりとなった。
 インターナショナル盤としてはセカンド・フルとなる『アフターグロウ』は、全世界的に流行中のオルタナティヴなR&B解釈と、シンセ・ポップ、あるいはよりエレクトロニック・ミュージックの意匠を取りこむことによってサウンド面での大胆な更新に取り組んだ作品だ。ジェイムス・ブレイクやボン・イヴェールのような、モダンなシンガーソングライターたちに続かんとする意志が感じられる。ソングライティングの骨格自体はフォークを大きく外れることはないが、ピッチシフトやノイズの挿入、凝ったエフェクトも多用されており、ファーストにおける北欧フォークトロニカの印象を大きく覆すアウスゲイル流オルタナR&B“アンバウンド”、ミニマル・テクノ的なトラックが展開する“アイ・ノウ・ユー・ノウ”などははっきりと新基軸だと言える。『イン・ザ・サイレンス』はポテンシャルを秘めた若いミュージシャンの習作といった向きもあったが、『アフターグロウ』は現時点での彼の最新の成果を衒いなく報告してくれる。それでいてアウスゲイルが多くのひとに親しまれる所以となった、透明感のある歌声やあくまでも穏やかで温かみのあるメロディを惜しむことも隠すことも一切ない。
 この北国からやってきた青年とその歌には、曲がっているところがまるでないのだ。

アイスランドから来られたら、日本の夏はさぞおつらいと思うんですけど――。

アウスゲイル:(ため息をついて)ああ。

(笑)こんな風にツアーで海外を回っていると、アイスランドが恋しくなるのではないですか?

アウスゲイル:うーん、アイスランドはもちろんいい国だと思うんだけど、このツアーの前はブレイクを取ってずっと地元にいたからそろそろ外に行きたいとは思ってたんだよ。でも、ここまで暑いとあっという間に疲れちゃって困るね。でも、いまは日本にいて、見るものがたくさんあるから楽しいよ。

それが救いですね。今日はアイスランドのお話を訊きたいなと思っていて。というのは、アウスゲイルの音楽って、日本にいるわたしたちにも「アイスランドらしさ」みたいなものが伝わってくるものだと思うんですよ。ただ、アウスゲイルの音楽にはアイスランド以外の音楽への関心や興味もすごく織り込まれていますよね。あなた自身は、アイスランドの風土による影響と、外国の音楽の影響とどちらのほうが大きいと思いますか?

アウスゲイル:その融合だと思うね。自分では意識しているわけではないから、正直自分でははっきりとはわからないけれど、でも両方あるのは間違いないね。

アイスランドの音楽に共通する要素として自然そのものを表現するサウンドがあるよね。僕の音楽にもそういう要素があると思う。でもそれは、敢えて出そうとして出しているものではないんだよ。

アイスランドらしさというところで言うと、シガー・ロスから影響をすごく受けたとお聞きしていますが、そこには自然の厳しさに対する敬意みたいなものが表現されていると思うんです。シガー・ロスからはどのような影響が大きいですか?

アウスゲイル:たしかに自然に対しての考え方での彼らからの影響はあるんだろうなあ。僕の場合も、曲によってそういうテーマが出ている気がするね。とくに、アイスランドの自然の厳しさだね。その厳しさはアイスランドの自然の個性なんだよ。これは国外からよく指摘されることなんだけれど、アイスランドの音楽に共通する要素として自然そのものを表現するサウンドがあるよね。僕の音楽にもそういう要素があると思う。でもそれは、敢えて出そうとして出しているものではないんだよ。

あともうひとつ、僕がアウスゲイルの音楽に対して思うのは、生活と音楽がすごく近い感じがするんですよね。たとえば日本だと、何かあるとすぐ音楽みたいなことにあまりならないんですけど、アイスランドではひとが集まったらすぐ音楽が鳴っているようなイメージがあって。

アウスゲイル:ああ、そうだね。ほかの多くの国とは違って、楽器をやるひとがとにかく多いんだよ。僕も海外を回って知ったんだけど。学校でも音楽の授業があるし、みんなどこかの段階で楽器に触れるんだよ。30万人ぐらいしかいない国ってことを考えるとバンドの数は相当だし、しかもその多くが海外で成功してる。これはすごいことだな、と。僕の家族も、僕の姉もバイオリンをやっていて、母親もオルガンを弾いたりクワイアをやったり、父親がアコーディオンをやっていたり……僕はギターとドラムをやってるし、兄は何でも演奏する。だからうちには早くから楽器で溢れていたし、僕も6、7歳でギターに触れて、両親はどんどんやれって言ってくれたしね。クラシックから入って、しだいにそれはやりたいものではなくなったから19歳ぐらいで転向したけど、それがいい基礎にはなっていると思う。たしかにアイスランドにはそういう傾向があるね。

漠然としたイメージですけど、ホームパーティなんかで何人か集まったら演奏しようぜ、っていう感じというか。

アウスゲイル:ああ(笑)。僕はすごく小さい町で育ったんだけど、子どもの頃から音楽好きの仲間っていうのは何人かいて。そいつらと放課後、誰かの家のガラージで音出してってことをしょっちゅうやってた。ただ、家族ではそんなにやっていなくて……母親がクラシックのひとだったんで、譜面を読んできちんとっていうのに対して、僕はインプロで作っていくのが好きだったからね。父親もやっぱり譜面派だったから、うちのなかでいっしょに演奏するということはあまりなくて。兄がたまに実家に帰ってくるとギターを教えてくれたり、それぐらいかなあ。

なるほど。でも、お友だちとガレージで演奏するっていうのもすごく素敵ですよね。

アウスゲイル:たしかに(東京のように)こんなに大都会だと難しいだろうね。僕の場合は、4つか5つそんな場所が確保してあって、いつでも演奏していい、そんな感じだったよ(笑)。

羨ましいですねー。では、日本限定リリースの7インチ・シングル「ホェア・イズ・マイ・マインド?」の話なのですが(『アフターグロウ』国内盤のボーナス・トラックとして収録)。これまでライヴでニルヴァーナの曲をカヴァーしていたこともありましたが、今回はピクシーズのカヴァーですよね。あなたの音楽からするとちょっと意外な気もするんですけど、そもそも1990年前後のアメリカのオルタナティヴ・ロックからの影響ってけっこう大きいんでしょうか?

アウスゲイル:ああ、確実にそうだね。ものにもよるけど、幼いときは当時の音楽が好きだったよ。ニルヴァーナは、彼らを通じてああいう音楽を知ったというのが大きいね。ピクシーズのカヴァーに関しては、カヴァーをやることは決めてたんだけど、何をやるかってなったときにレコードをひっくり返してたら彼らのアルバムが出てきて、すぐにイメージが浮かんだんだ。その通りにピアノのパートを弾いてみたらいい感じに行けそうで、そのままトントン拍子で全体像が見えてきて、あっという間に完成したよ。で、いい感じのカヴァーができたから、7インチを出してみようとなったんだ。

なるほど。ただ、そのピクシーズの“ホェア・イズ・マイ・マインド?”もサウンドはロックではなくて、たとえばジェイムス・ブレイクみたいな実験的なR&Bに近いものになっています。そういったいまのR&Bやヒップホップも、サウンド・プロダクションの面で意識されているんでしょう。

アウスゲイル:ああ。そこは自分でもすごく意識してたと思う。今回はヴォーカルにオートチューンをはじめて使ったし、ビートもすごくルーズに、R&B風にした。ドラムの音の数も少ないし、ピアノもレイドバックしていて、あとはベースとギターが少しだけ。すごくスロウだし、スペースを生かしたんだ。こういうサウンドだと、ミックスしたときに分かるんだけどすべての音がちゃんと聞こえるんだよね。それだけがあればよくて、そういうシンプルなサウンドだと手拍子ひとつでもリヴァーブを効かせればバッと広がりが出るんだ。その広がりが出ればよくて、ミックスのときにトラックが50もあったらゴチャゴチャして何も聞こえなくなっちゃうから、それだけは避けたかった。この曲に関しては、全体像が見えた上でスタジオに入れたから時間もかからなかったしね。思った通りの仕上がりだったからすごく嬉しかったよ。

そういったサウンド面での挑戦が、完成目前だというセカンド・アルバムにも繋がっていくと思うんですが――

アウスゲイル:いや、じつはそうとも言えなくて。たとえば7インチのもう1曲の“トラスト”なんかはR&Bテイストとは全然違うし、アルバムも曲によってサウンドはバラバラになっているよね。そういう意味ではアルバムの参考になる7インチだと思う。

アルバムのテーマやモチーフは見えていたんですか?

アウスゲイル:コンセプトやテーマはとくになかったんだ。強いて言うならば……自分探し、かな。一生懸命自分を見つけようとする僕がそこにいるんだ。使っている「絵の具」自体は前回と同じだと思う。つまり、アコースティックとエレクトロニックなんだけど。そしてメロディに焦点を絞っていて、とりわけ進歩的なことをしようとしているわけではないんだ。とくに曲作りに関しては感覚的には前作から続いている。ただ、できた曲に施したサウンドは前作よりもドラマティックになっている部分はあるかな。

いまの時点ではアルバムから5曲聴かせていただいたんですが、まさにいまおっしゃたように、アコースティックとエレクトロニックのサウンドでの融合をさらに洗練されていますよね。なかでもダンス・ミュージックの要素が入っているのは新基軸かなと思ったのですが、もともとダンス・ミュージックを好んでお聴きになっていたんですか?

アウスゲイル:いいや(笑)。

(笑)ただ、“アイ・ノウ・ユー・ノウ”なんかは、ダンス・ミュージック的ですよね。

アウスゲイル:どうやって作ったんだっけ……思い出してみるよ。……そう、自分で作ったサンプル・ヴォイスから広がっていった曲なんだ。前半はゆったりと、どちらかと言えばオーガニックに盛り上がっていく曲なんだけれど、中盤で別の曲かっていうぐらいの展開になる。でもじつはコード進行は同じなんだ。そのまま違うチャプターに進化していく構成になってるんだ。そのせいもあって曲の色合いがかなり変わっていくから、かなりクレイジーな感触を受けるかもしれないね。で、最初に使ったサンプル・ヴォイスを最終的にはシンセサイザーにかけて、それで違う響きを作って、違う次元に持っていったっていうのかな。オーガニックな感触の、変わったダンス・チューンに仕上がったと思うよ。

なるほど、すごくよくわかりました。では時間なので最後の質問なのですが、アウスゲイルの音楽には悲しさや切なさがありながらも、最終的にはホープフルな感覚が満ちていくように感じられます。ご自身では、どうしてそのようなムードになるのだと思われますか?

アウスゲイル:うん、昔から感じてきたインスピレーションから来るものなんだと思う。17歳くらいから僕はずっと曲を書き続けているんだけど、ずっと同じ書き方をしているんだ。なぜと訊かれて正確に答えるのは難しいけれど、いまはこれが僕の曲作りのスタイルなんだと思うし、自分が心地いいと思うやり方に純粋に従っているんだよ。僕という人間の一部分が音楽を通じてたしかに出てきているんだ。

DUB SQUAD - ele-king

 まるで〈モ・ワックス〉のタイトルのようなアートワークじゃないか! これは間違いない! と鼻息を荒くして『Versus』をレジに持っていったのは高校生の頃だった。それから16年。ついにDUB SQUADが帰ってきた。かれらはまさにパーティの現場から登場してきたユニットだけれど、そこに留まらないレンジの広さを持っているところが魅力でもあった。だからこそ、当時の僕みたいに東京を知らない田舎のガキンチョが、DUB SQUADを聴きながらまだ見ぬシーンを想像して勝手に盛り上がることができたのだろう。その視野の広さはかれらの16年ぶりのアルバムにも引き継がれている。砂原良徳、ZANIO、DUB-Russell、空間現代、System7――参加しているリミキサー陣の名前を見てもそのことがわかるはずだ。発売日は5月24日。まだ1月ほど先の話だけど、16年という時間に比べればあっという間である。待つべし。


System 7、砂原良徳、ZANIO、DUB-Russell、空間現代が参加。
ブレイクビーツ・テクノ・ユニットDUB SQUAD新作『MIRAGE』の全貌を公開!

先日、16年ぶりの活動再開をアナウンスした、中西宏司、山本太郎、益子樹(ROVO)の3人によるブレイクビーツ・テクノ・ユニット DUB SQUADが、5月24日にリリースする新作『MIRAGE』の全貌を本日公開した。

新作『MIRAGE』は、独自のトランス感溢れるオリジナル・サウンド5曲を収録したDISC1と、System7、砂原良徳、空間現代、DUB-Russell、ZANIOといった、世代もジャンルも様々な5組のアーティストによるリミックス曲を収録したDISC2の2枚組。

リミックスについてはノン・リクエスト、ノン・ディレクションを徹底することで個々のアーティストの独自の解釈が生かされており、“MIRAGE(蜃気楼)”と対となり乱反射するかのように輝きを放つ個性的な全5曲が揃う。

DUB SQUADの新作『MIRAGE』は、U/M/A/Aより5月24日に発売。収録曲の詳細は下記にて。


【CD情報】

DUB SQUAD『MIRAGE』
5月24日リリース

価格:¥3,000+税
品番:UMA-9086-9087
仕様:2CD
収録曲数:DISC1、DISC2各5曲、計10曲

◆Disc1
01. Mirage
02. Psycho Out
03. Star position
04. Exopon
05. Straight Ahead

◆Disc2
01. Mirage – Yoshinori Sunahara remix
02. Psycho Out – ZANIO remix
03. Star Position – DUB-Russell remix
04. Exopon – Kukangendai re-form
05. Straight Ahead – System 7 Space Lab remix

詳細:U//M/A/A
https://www.umaa.net/what/mirage.html

Run The Jewels - ele-king

エル・Pは「黒さ」という価値観に従属しないところが際立っていたというか、音もサンプリングの仕方が独特でプログレを彷彿とさせるサウンドが生まれたり、トレント・レズナーやマーズ・ヴォルタとも共演したりとロック寄りでもある。 (吉田)

黒いグルーヴじゃなくて、インダストリアルとして表出したのが、エル・Pとカンパニー・フロウの特異性だったんですよね。(二木)


Run The Jewels
Run The Jewels 3

Run The Jewels Inc. / Traffic

Hip Hop

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前作がさまざまなメディアで年間ベストに選ばれたヒップホップ・デュオ、ラン・ザ・ジュエルズ。かれらがついに3枚めのアルバムを発表しました。ポリティカルなメッセージを発する一方で、じつはダーティなリリックも満載、そのうえトラックはかなりいびつ。にもかかわらずチャートで1位を獲っちゃうこのふたり組は、いったい何者なんでしょう? いったいRTJの何がそんなにすごいのか? このデュオのことをよく知る吉田雅史と二木信のふたりに、熱く熱く語っていただきました……そう、あまりに熱すぎて長大な対談に仕上がってしまいましたので、前後編に分けてお届けします。まずは前編をご堪能あれ。

二木信(以下、二木):小林くん(編集部)からのメールの中で、「カンパニー・フロウやエル・P、〈ディフィニティヴ・ジャックス〉、ラン・ザ・ジュエルズは欧米の音楽メディアやUSのヘッズには高く評価されているけど、日本ではそこまで評価されていない。その理由とは何か」という問いがありましたよね。でも実は日本のコアなヒップホップ・リスナー、特にヘッズと言われる人たちの間ではカンパニー・フロウとか〈デフ・ジャックス〉、〈ローカス・レコーズ〉って確固たる人気があると思うんですよ。そもそもがインディペンデントでアンダーグラウンドな音楽だから、例えばいまでいえばケンドリック・ラマーとかと比較するとそこまで人気がないように見えるんですけど、日本のアンダーグラウンドのリスナー、ヘッズの間ではカンパニー・フロウ、〈デフ・ジャックス〉、〈ローカス〉の影響はいまだに根強いと思いますね。おそらく小林くんが言いたかったのは、エル・Pのリリシズムや言語表現の文脈が日本の中で理解されて伝わっていないんじゃないのか、ということじゃないですか。そこは僕も非常に興味深い点で、今日は吉田さんにもいろいろ教えてもらいたいなと(笑)。まず、エル・Pのリリシズムは英語がネイティヴの人が聴いたり、読んでも難解な側面があると思います。わかりやすいストーリーテリングではないし、それこそフィリップ・K・ディックとか、トマス・ピンチョン、テリー・ギリアムからの影響を公言するようなラッパーですし、サイエンス・フィクション色が強く、ディストピアめいた世界を描いていたりもする。だからまず、英語がネイティヴではない人間にとってはリリックの難解さは大前提としてありますよね。

吉田雅史(以下、吉田):そうですね。だから先ほど指摘のあったように日本でも受け入れられていたというのは、実はリリック面の特異性が評価されたというより、サウンド面も革新的だったからそこだけでも十分に評価されたということですよね。だけど実際アメリカではサウンド以上に評価されているのは、さっき仰っていたみたいにやっぱりリリックであり、ボキャブラリーであるわけで。カンパニー・フロウの曲で最初に注目を浴びて日本にも入ってきた12インチが「Eight Steps To Perfection」で、そのエル・Pのヴァースは、1979年のSF映画『ブラックホール』に登場する「マクシミリアン」というロボットを冒頭から引用しながら「俺をマクシミリアンと呼んでくれ/狂ったロボットだ/宇宙空間の端っこを彷徨いながら/ブラックホールに飲み込まれるまで/弾丸をばら撒くようにラップする」というラインで始まるんですね。この曲がリリースされた1996年の状況としては、まず数年前の1993年にウータン・クランのファースト・アルバムがリリースされて、ある種サブカル的なものを取り入れたと。

二木:カンフーとかね。

吉田:そうですね。ウータンはそのことによって、新しいボキャブラリーを持った奴らが出てきたというふうに思われたところがあった。エル・Pはその前例を経た上で、サイファイ的なボキャブラリーや世界観を取り入れる形で、ヒップホップにサブカルを持ち込んだということですね。たとえばギャングスタとかストリートといったそれまでの価値観とは全然違う抽象的かつサブカルを引用したスキルフルなラップで、しかもあのサウンドという。

二木:ドロドロ・サウンド。

吉田:そうそう。で、当時のニューヨークで現場を見ていた人間から話を聞くと、本当にカンパニー・フロウ以前と以後で世界が変わったような感じで、ものすごく衝撃的だったと。何を言っているかよく分からない抽象的で難解なライムだけど、やたら攻撃的で、しかもフィリップ・K・ディックの世界を参照するようなSFフレイヴァーも入ったリリックをスピットする白人ラッパーが現れた衝撃ですよね。ブラック・ミュージックの系譜でSF的と言うと、連想されるのはいわゆるアフロ・フューチャリズム的な想像力や、サミュエル・R・ディレイニーのような作家だったりすると思うんです。一方でエル・Pは「黒さ」という価値観に従属しないところが際立っていたというか、音もサンプリングの仕方が独特でプログレを彷彿とさせるサウンドが生まれたり、トレント・レズナーやマーズ・ヴォルタとも共演したりとロック寄りでもある。RTJ(ラン・ザ・ジュエルズ)の音もブラック・ミュージックというよりもダンス・ミュージック、クラブ・ミュージックの系譜ですよね。日本でもヒップホップと言ったときに、非ブラック・ミュージック的なダンサブルなサウンドにラップが組み合わさるものは珍しいと思うんです。共演もしているダニー・ブラウンの異質さなんかもそういう意味では近いのかもしれないですけど(笑)、だからRTJも、いわゆるヒップホップ・ファンというより、ダンス・ミュージックの系譜としてマニアックな層に聴かれることが多いのかなという気もします。

RTJはポリティカルだから知的と捉えられる向きがあって、もちろんそれは間違いじゃないんですけど、エル・Pの知性に関していえば、言葉にしても音にしても文脈を理解した上で意味をいかに組み替えていくかという発想力にあると思う。(二木)

二木:だから、カンパニー・フロウが『Funcrusher』(1996年)や『Funcrusher Plus』(1997年)をリリースして登場したとき、日本のコアなヒップホップ・リスナーに大きな戸惑いを与えつつ、そのいびつなサウンドがかなり求心力を持ちましたね。というのも、当時はパフ・ダディによるヒップホップのビッグ・ビジネス化や、ティンバランドのいわゆるチキチキ・ビートが席巻しはじめた時代で、そういう流れやサウンドに乗れないヘッズたちが彼らに可能性を感じてのめり込んでいったのはあると思う。ただ、いまあらためて『Funcrusher』や『Funcrusher Plus』を聴き直して印象的だったのは、エル・Pのビートはサンプリング・ヒップホップに忠実だったんだなということでしたね。

吉田:そうですよね、あくまでもブレイクビーツの打ち換えとネタのオーソドックスなスタイルで。時代背景的にもニューヨークではサンプリング・ベースのビートが主流で、まだシンセ・サウンドを足すようなケースはあまり見られなかった時期ですしね。

二木:例えばDJプレミアのフリップへのリスペクトを感じるし、その手法をいかに自分なりに解釈して表現するかという挑戦をしているように思いましたね。それが結果として、黒いグルーヴじゃなくて、インダストリアルとして表出したのが、エル・Pとカンパニー・フロウの特異性だったんですよね。エル・Pはブルックリン生まれですが、彼はセント・アンズ・スクール(Saint Ann's School)という芸術系のプライヴェート・スクールに通っていた経験があるんですよね。バスキアとか、ビースティ・ボーイズのマイク・D とかも通っていた学校らしいんです。元々そういった芸術志向があって、ヒップホップというアートフォームの中で言葉と音でどこまで、何を表現できるかを模索していたように思いますね。

吉田:そうですね。カンパニー・フロウの2枚目の『Little Johnny From The Hospitul: Breaks & Instrumentals Vol.1』はインスト・アルバムじゃないですか。エル・Pは元々少年時代にラップをしたかったからビートメイクを始めたと言っていますが、インスト・アルバムをリリースするくらいにビート・メイカーとしての自意識もかなり強いわけですよね。先ほども言ったようにサンプリング・ビートの時代だった当時、カンパニー・フロウの頃はエンソニックのEPS16+というサンプラーをメインに、サンプリングのアートを追求していた。当時、例えばDJプレミアとか、ATCQ(ア・トライブ・コールド・クエスト)とかがやろうとしていたことって、複数のレコードからネタを持ってきて、それらを重ねてもキーやリズムがうまくあってハーモニーやグルーヴが生まれるという、どちらかと言うと調和に重きが置かれていたわけですよね。この曲のこの部分と、また別の曲のこの部分がこんなにうまく融合するぞ、みたいなことじゃないですか。

二木:まさにトライブの『The Low End Theory』(1991年)ですよね。

吉田:そうそう。ATCQの最初の3枚は、それを体現してますよね。

二木:あの作品のエンジニアであるボブ・パワーは「ヒップホップ版の『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』だ」とも言っていますね。

吉田:そうですよね。エル・Pはそれに対してある種逆をやろうとしたというか。いびつさの美学とも言うべき、調和の対極を目指したところがあったと思うんです。昔ミスター・レンやビッグ・ジャスがインタヴューで言っていたのは、デモ段階ではクソみたいなビートらしくて(笑)。聴けたもんじゃないみたいな。それが最終的に仕上げる段階で素晴らしいものに生まれ変わるらしいんですよね。要するにデモの段階での制作プロセスは、ゴミクズを集めて何か造形できないか、みたいなことを彼はやっているイメージですよね。だからサンプリング・ネタも明らかにグルーヴがあって音楽的な旋律を成しているようなものではないという。本人もいわゆるネタの掘り師というわけではないと言っていますが、どこにでもある価値のないレコードのネタを生まれ変わらせる錬金術に長けているというか。“Population Control”とか“The Fire In Which You Burn”のように、旋律のないノイズっぽいネタに、ドラムの打ち方も変則的でヨレたビートというか、クオンタイズせずにグリッドに合ってないんだけど、それを当時積極的にやっていたのはRZAとかエル・Pくらいでしたよね。

二木:たしかに。

吉田:それをどこまでずらしたらイケるかとか、ハットを打たないで変則的にやってみるとか、エル・Pはビートメイクは「実験」だし、1曲完成までに5回も6回もやり直すと言っていますが、カンパニー・フロウの初期の方が、権威のない素材からいびつなビートを造形するという、直接的にアートっぽい作り方をしている気はしますよね。

二木:聴いている側に驚きを与えようというか、そういう意図はかなりあったと思う。エル・Pのインタヴューで「El-P’s 10 Favorite Sample Flips」って記事があって。読まれました?

吉田:はいはい、ありましたね。

二木:これがすごく面白くて、その『エゴトリップランド』の記事を『探究HIP HOP』というブログをやっているGen(ocide)AKtion(@Genaktion)さんが日本語に訳していて。この記事を訳していることが本当に素晴らしいんですけど。この中でエル・PはDJプレミアが手がけたジェル・ザ・ダマジャの“Come Clean”や、ラン・DMCの“Peter Piper”とか、エド・OG・アンド・ダ・ブルドッグスの“I Got To Have It”とか、マーリー・マールがアン・ヴォーグの“Hold On”をサンプリングしたLL・クール・Jの“The Boomin' System”とかを挙げて、サンプリングの真髄について熱く語っていくんです。Gen(ocide)AKtionさんの訳をそのまま引用させてもらうと、エル・Pはサンプリングに関してこんなことを言っているんです。「サンプリングというモノの大きな役割は、人々の予想を裏切る所にあるんじゃないかと思うんだ。知的に物事を変化させるって事さ。使うべきだとは思えないモノを使用し、いざそのサンプルを使った時に皆が他の曲を加えたがる場合は、敢えてそのやり方に背く事でね」。まさに「ゴミクズ」を集めて新たなものを生み出すサンプリングの発想ですよね。“Peter Piper”はボブ・ジェームスの“Take Me to the Mardi Gras”をサンプリングしているんですけど、ここでエル・Pはリック・ルーヴィンが“Peter Piper”を作った偉業を知るためには“Take Me to the Mardi Gras”の一部のブレイク以外がどれだけダサいかを知らなければいけないとも語っているんですよ。RTJはポリティカルだから知的と捉えられる向きがあって、もちろんそれは間違いじゃないんですけど、エル・Pの知性に関していえば、言葉にしても音にしても文脈を理解した上で意味をいかに組み替えていくかという発想力にあると思うんです。吉田さんが磯部(涼)さんと大和田(俊之)さんと作った本(『ラップは何を映しているのか――「日本語ラップ」から「トランプ後の世界」まで』)の中でエル・Pについて語っていましたけど、彼はフリー・スタイルで出てきたリリックを並べ替えたりしてヴァースを作ったりもするそうですよね。

吉田:そうそう。あれもカット・アップの手法ですよね。

二木:そう、彼はカット・アップの手法にすごく忠実にやっているというのがすごく面白いところで。

吉田:だからそういう意味ではウィリアム・バロウズなんかも好きかもしれない(笑)。

二木:そうですよね。

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キラー・マイクとエル・Pのコンビは、ポリティカル・ラップとコンシャス・ラップみたいな捉え方もできると思うし、具象と抽象とも言えるし、だからこそ対照的なふたりのコンビネーションというのが光っている。 (吉田)

吉田:好きそうだなあ(笑)。で、いま仰ったようにポリティカル対コンシャスということについても話したいんですけど、直接的に政治的なメッセージをラップするポリティカル・ラップに対して、コンシャス・ラップの中には寓話的な語りで現代社会の有り様を考えさせるようなスタイルがあると思っているんですが、エル・Pにも後者の寓話タイプの特性があると思うんですよね。1曲丸ごと物語調という曲はあまりないけれど、マイク・ラッドの“Bladerunners”で「俺は見たんだ/奴隷船がオリオン座の沿岸で火を吹く姿を」とか“Krazy Kings Too”で「錬金術/アートでお前の苦痛を癒せ/そのやり方を学ぶことだ」とか、ヴァースの最後のラインでストーリーをまとめる力も光っていて。彼はいわゆるコンシャス・ラッパーには分類されないけれど、SFマナーのディストピア的な世界観がインストールされているから、それらを描くことで逆にいまの世界の問題に光を当てている。それは近未来の人間社会を映すタイプのコンシャスなSFの書き方そのものでもあると思うんですが。でも彼自身『Fantastic Damage』をリリースしたときに自分はSFのつもりでは書いていない、現実を書いているだけだと言ってもいるんですけどね。9.11以降の世界では、現実が十分に終末論的だと。だからキラー・マイクとエル・Pのコンビは、ポリティカル・ラップとコンシャス・ラップみたいな捉え方もできると思うし、具象と抽象とも言えるし、だからこそ対照的なふたりのコンビネーションというのが光っている。まあ、僕はどうしてもエル・Pの話の方に力が入ってしまうところがありますが……(笑)。

二木:やっぱりエル・Pのほうが好きですか?

吉田:いや、実際持っている資質が違うので簡単に比べられないと思うんですけどね。やはりカンパニー・フロウの衝撃が大きい世代なので。一方のキラー・マイクは最早ブラック・コミュニティのご意見番のような感じになっていますよね。

二木:いまやそうですよね。

吉田:で、バーニー・サンダース支援についても、ラッパーであそこまで堂々と長々と本人とも対談していて、しかもコメントもすごく的を射ている。コミュニティからの信頼感もすごくある。で、なんでそういうふうに信頼される存在になったのかというと、エル・Pもインタヴューで言っているんですけど、ふたりは一見ポリティカルなメッセージを発信したり、シリアスな曲もあるんだけれど、一方で下品なジョークやFワードも連発するという(笑)。要するに二面性があるわけです。

二木:いや、これねえ、ライムは本当にダーティ(笑)! キラー・マイクは床屋でバーニー・サンダースにインタヴューしていましたよね。バーニー・サンダースが大統領候補として民主党から出馬しているときに黒人からの支持があまりないとも言われていて、キラー・マイクは床屋と言えばブラック・ピープルが集う場所だからと、そういう設定もすごく考えて、床屋でバーニー・サンダースにインタヴューするということをやったと思うんです。で、キラー・マイクってある種原則的な左派なんですよ。というのも、彼はあるインタヴューでプロレタリアートという単語を使っていました。いわゆるコンシャス・ラッパーと言われる人でもなかなかプロレタリアートという言葉までは使わないと思うんですよ。そういうのもあって明確な理念や理想があって活動しているアクティヴィストだと思いました。彼の話を聞いていると、自由や平等、社会的な公平性の重要さを真摯に説いたり、例えば家を出て玄関の前に穴が開いていたらちゃんと行政に言おうとか、コミュニティに根差した模範的なアクティヴィスト然としているんですよ。なのに、それとは対照的にリリックのほうはびっくりするくらいダーティで(笑)。もちろんドラッグやマリファナのライムも多い。

吉田:そう(笑)。一方のエル・Pもサイファイ好きでサブカル・ラップみたいなものを代表していて、それでナードだったり文学的だったりするのかというと、そんなことはなくて結局マッチョなんですよね。要するにボースティングするとかヒップホップ的であることは全く捨てずにそれをやっているから、そこが文系みたいな感じでもないじゃないですか。

二木:ないですね。

吉田:で、キラー・マイクも、俺はパブリック・エネミーが好きだけどトゥー・ライヴ・クルーも好きだし、ふだん奥さんとストリップ・バーに行ったりしてるし、そういうダーティな自分とポリティカルな自分と両方あるから、その両方を見せないとある意味信頼も勝ちえられないと思っていると。だから俺は全部見せるんだと言っていて。それでエル・Pはすごくシニカルな人でもあるけれど、「そんな正しいことばかりできるわけじゃないんだから、俺はバカなことや間違ったことも言うし、そういうところを持っているのが人間だろ」とふたりとも別々のインタヴューで言っていて。だから、彼らはポリティカルなメッセージを発信していると見られているけれど、実際にリリックを見ていくと「アレェ?」みたいな(笑)。


ラン・ザ・ジュエルズの場合は、今回のアルバムでダンス・ミュージックに振り切りながら、時代性もありポリティカル/コンシャスなメッセージを今までよりも大幅に投入しているのが面白いと思うんですよね。両方とも減らすんじゃなくて、両方とも増しているという。 (吉田)

二木:今回のアルバムの“Hey Kids”という曲でキラー・マイクが「馬鹿げたライムの野蛮なラップ」と言っていて、これは自分がやっている表現についての説明的なリリックですね。エル・Pも同じ曲で「1/2パウンドのウィードを吸って逃げるのさ」とかライムしているんですが、そうかと思ったら後半のヴァースで「ラン・ザ・ジュエルズがブレグジットの息の根を止めるんだ」というフレーズが飛び出してくる。そういうリリックが混在していますよね。エル・Pが全面的にプロデュースしてキラー・マイクの出世作になった2012年の『R.A.P. Music』に“Big Beast”って曲があるじゃないですか。このPVがだいぶスプラッターですよね(笑)。露悪趣味ともとられかねない。けれども、これはただの露悪趣味ではないと思います。ラン・ザ・ジュエルズがBBCのチャンネル4って番組でインタヴューを受けている動画がYouTubeに上がっているんですが、キラー・マイクは「グラヴィティ(重力)から解放されるために音楽をやっている」というようなことを語るんです。おそらくここで言うグラヴィティってシリアスネスってことだと思うんですけど、これはさっき吉田さんが仰った「ストリップ小屋に行くことも大事なんだ」って話と同じことだと思うんですね。また面白いのが、そのインタヴューでエル・Pがなんだか退屈そうにしているんですよ(笑)。

吉田:ははは(笑)。

二木:その対比がまた良くて(笑)。キラー・マイクが「異なる人種が仲良くして友達になることが、いまのトランプが大統領になった世界に対する対抗策だ」というようなことを真摯に語る一方で、エル・Pのほうはニヒルな笑いを見せたりして、ちょっと達観した主張を語るんです。僕の印象ですけど、エル・Pはどちらかと言えば、皮肉屋でペシミスティックな性格なんじゃないかなと。そういうエル・Pのパーソナリティとディストピアめいたリリシズムは無縁ではないように思います。


吉田:後はユーモアに溢れているというか、さっきの言葉遣いやライミングの仕方もそうだし、たとえばYouTubeに上がっている「NPR Music Tiny Desk Concert」なんかのライヴ映像も、とにかくヒップホップのMCであることを楽しんでいる感じですよね。カンパニー・フロウの時代は、エル・Pもステージ上ではアングラのアイコンとばかりにシリアスに振る舞っていた印象でしたが。それから昨今のポリティカル・ラップの文脈で考えると、ラン・ザ・ジュエルズの、特に今回のアルバムの場合はダンス・ミュージックの上にポリティカルなメッセージというのがポンポンと出てきて、特に後半にかけてシリアスな曲が何曲かあるけど、ビートのグルーヴは最後までキープされてリスナーを引っ張っていきますよね。昔ECDがライヴで反原発の曲なんかをやるときに、クラブに踊りにきたり、現実逃避しにきたりしているお客さんに向かって、そういう現実的で政治的な曲をやることに躊躇もあるってことを言っていたんですよ。ラップに限らず多くのリスナーを相手取る音楽にはそういう側面があって、どうしてもポリティカルなメッセージを発信するときに「僕はそういうのはトゥー・マッチです」というお客さんもいるわけじゃないですか。さらにBLMや大統領選の影響もあって、最近は政治的なメッセージをはっきり持つラップと、そういったものは食傷気味で、ポストテクスト・ラップとも言われるような、サウンドやフレーズ重視のラップに向かう傾向も見えたりすると。つまり意味と無意味、あるいは記号の対立みたいなことにある種なっていますよね。ラップ・ミュージックは、メッセージなんて要らない、ただラップ・ミュージックで踊りたいという欲望に応える。でも、ダンス・ミュージックだからこそ、普通に語られたらトゥー・マッチに思ってしまうメッセージも乗っけられるという側面もあって。ラン・ザ・ジュエルズの場合は、今回のアルバムでダンス・ミュージックに振り切りながら、時代性もありポリティカル/コンシャスなメッセージを今までよりも大幅に投入しているのが面白いと思うんですよね。両方とも減らすんじゃなくて、両方とも増しているという。

※ 後編に続く。

interview with YungGucciMane - ele-king


YungGucciMane
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Hip HopTrapPshychedelic Rap

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 YungGucciManeの音楽、そして発言はまた極めて感覚的だ。このインタヴューを読んで興味が湧いたなら、まずはYouTubeにアップされている新作アルバム『JADE』の楽曲をぜひ聴いて頂きたい。KOHHの『YELLOW TAPE3』、そして『Concrete Green13』にその名を見れば、YungGucciManeが一部好事家の支持を集めるのも頷けるのではないか。YungGucciManeが鳴らすのは新しいヒップホップだ。ほとんどYungGucciManeというジャンル、そう言ってもいいほどに日本には類を見ない音楽である。初めてのインタヴューの日(今回は3度目だった)、YungGucciManeに影響を受けた音楽について聞くと、彼はチーフ・キーフとビートルズ、そして久石譲と即答した。これらの音楽の影響が渾然一体となり、YungGucciManeというアウトプットで鳴らされたものが『JADE』だ(『NO PAPERS』『Static』といったこれまでの作品は、主にTRAPのみを取り込んでアウトプットした楽曲だ)。これについては1曲目の“I CAN’T WAIT”、2曲目“Across The Universe”と聴いて、なるほどと頷けるものがあると期待したい。
 初めてのインタヴュー時と同じく、この日も彼のクルーHASA MONEY(ハザ・マネー)のラッパーJUICY Bと一緒に話を聞いた。

僕に対する僕自身のイメージなんですけど、リンだったり……トラップの、なんていうか…ドラッグネタというか、そういう音楽を作るイメージが強いと思ったんですよね。そういうのを作るのもいいんですけど、まぁそれだけじゃないというか。『JADE』に関しては、そういうものを廃除していきたかったんですよ。

アルバム『JADE(ジェイド)』には「JADE」という楽曲が収録されているわけではありません。このタイトルは何を意味しているのですか?

YungGucciMane:JADE(翡翠)という緑色の石があるんですけど、『NO PAPERS』(YungGucciManeの第1作目収録)の「Emerald Splash」から連想していって、このタイトルになりました。

ああ、エメラルドも緑の宝石ですね。では、これもまた曖昧な質問なのですが、そもそも発端となった「エメラルド」はどこから出てきた言葉なんですか? 

YungGucciMane:一番最初に『NO PAPERS』を従兄弟の宮下慎二と一緒に制作している時に、こう…なんですかね……「エメラルドスプラッシュ!」っていう言葉が出てきたんですよ。

JUICY B:ハッハッハ(笑)。

YungGucciMane:そのときの感覚のイメージですね。ああ、エメラルドスプラッシュだわ、いまヤバいわっていう……感じの言葉から生まれてきました。そこからまだ使っているという感じです。

なるほど……。でも『JADE』全体の印象は『NO PAPERS』とはまったく違いますね。

YungGucciMane:これまでの僕のイメージだと……それは僕に対する僕自身のイメージなんですけど、リンだったり……トラップの、なんていうか…ドラッグネタというか、そういう音楽を作るイメージが強いと思ったんですよね。そういうのを作るのもいいんですけど、まぁそれだけじゃないというか。『JADE』に関しては、そういうものを廃除していきたかったんですよ。絵を勉強したりしたこともありますし、もっと自分の内面を出したいと思って作ったアルバムで、だから結構幻想的なアルバムになったのかなとは思います。

『JADE』の制作期間は絵を描いたり、生活そのものがクリエイティブなモードだった感じなんですね。

YungGucciMane:できあがったのは多分、リリース前の3、4か月くらいで、その前は私生活ですごいゴタゴタしたりしていたんですよ。トラブルに巻き込まれたりしたこともあって。それが済んで、芸術と音楽の世界に浸れる期間になって一気に作っていった感じですかね。

いろいろトラブルみたいなことがあった分、かえって高まったんですかね。

YungGucciMane:完全にそうですね。そういうことを全部処理して自由になった後に……

JUICY B:気分的には最高の状態でやっていた感じ?

YungGucciMane:そうそう。でも、そういう期間でも曲はずっと録り続けてましたけどね。ゴタゴタを片付けながら、でも音楽はずっと作っていた。それが完璧になる状態を待って、なった状態でそれまで作っていた曲を完璧に仕上げていった感じですね。

評判や反響はどうですか?

YungGucciMane:iTunesStoreのデータは見てないので詳しいことはわからないんですけど、ただ聴いたと言ってくれる人は結構いて、その人たちの評判はすごい良かったですね。Twitterとかインスタの感触も結構いいですね。いろんな人がいるので全部に対応はできないんですけど、気になった人とはそれで繋がったりもしています。

僕もこのアルバム、すごい好きです。ちなみにどの曲からできたんですか?

YungGucciMane:“Across The Universe”です。それが去年(2016年)の冬ぐらいですね。この曲から発想が広がっていった感じです。

 Across The Universe これは歌い出す壁画
 頭の中に洗濯機 グルグル飾り付ける石器
 “Across The Universe”

『JADE』を出した後に、また『NO PAPERS』みたいなふざけてる、そのまんまの俺を次は出そうかなと思っています。『JADE』で一度内面的なものを出して、次はもろトラップで遊んでいるアルバムを出してやろうかなと。

先ほど内面を出したかったという話や幻想的なアルバムになったという話が出ましたが、こういうリリックは象徴的ですね。

YungGucciMane:ちょっと宇宙の感じというか、瞑想じゃないですけど、サイケデリックに近い感じはしますけどね。音楽を創るときにすごい集中すれば、そういう世界に行けちゃうタイプなんで、そういう感じで作りました。

“アンレムスイミング”もまさにそういう世界観を連想させる曲です。どこかサイケデリックな感覚ですね。

YungGucciMane:これは後半にできた曲です。この曲はダジャレなんですよ。ノンレム睡眠てあるじゃないですか。それだとつまらないので、そこからアンレム睡眠という言葉が思いついて、睡眠をスイミングにしたらどうなのかなと。そのイメージで作った感じですね。ちょっと「エメラルドスプラッシュ」っぽい……自分のなかの言葉が生まれた感じだったんですよね。

造語というんですかね。それをパッと出して使えるというのは、僕が自分の感覚に置き換えて考えるとすごい難しい行為です。でもたしかに“エメラルドスプラッシュ”も“アンレムスイミング”も独特のきらめきや浮遊感を持った言葉で、何か伝わるんですよね。そもそもYungGucciManeさんは人に何かを伝えたいという思いはあるんですか?

YungGucciMane:ありますよ。言葉でというよりは、音楽でという感じですが。

ああ……今回“グリーンエメラルド”という曲もありますが、これにしても言葉というよりは、音楽でエメラルド感は伝わります。

YungGucciMane:そうですね。それに尽きます。エメラルド感ですね。それを出したかった。このアルバムは“Across The Universe”の世界観に始まり“グリーンエメラルド”まで繋がっていった感じです。

アルバムを通して伝えたかったことみたいなのはあるんですか?

YungGucciMane:『NO PAPERS』の時は絶対これがあったほうがいいって感じで出して、『JADE』はこういうのがあってもいいんじゃないかっていう感覚ですかね。

それはあえて言えば、“どこ”に“それ”があったほうがいい、あってもいいということなんですか?

YungGucciMane:それはもう全体ですね。

全体というのは世界の音楽シーンにということですか?

YungGucciMane:そうですね……って感じで思ってました。世界的に見てもこういうヒップホップがあってもいいんじゃないかっていうことですね。『NO PAPERS』みたいな世界観を壊したかったというのもありますね。さっきも話しましたけど『JADE』の制作は絵やアートに目覚めていた時期でもあったので、そういう世界観のなかで録った。これはコンセプトを作ったタイプのアルバムだったと思います。

ここまでお話を伺うと「内面的」「瞑想」みたいな単語からシリアスな作品と誤解されそうですが、そういうわけではないですよね。本当に、もっといままでどこにもなかった音楽という強さがあるというか。とくに“ナッシング”という曲がそれを象徴していると思っているのですが、この曲の客演のフィーメルラッパー、ド着☆幽霊テレサのバースがまた凄まじくて。この名前も凄まじいのですが(笑)。

YungGucciMane:(ド着☆幽霊テレサの客演は)単純にあのラップはかっこいいから入れたんですけど、ちょうどいいバランスで入れられたかなとは思ってるんですよね。超イケてるんですよ。ラップがいかれてるんで。いきなり「やる」と言いはじめて、「いいよ、やりなよ」と言って。最初は俺にかぶせてくるのかなと思ったんですよ。フロウだったり。そうしたら全然関係ないことをラップしはじめて、そこがめっちゃ面白くて。なんだこいつ、クソ関係ねぇこと歌いはじめたと思って(笑)。そこが最高でしたね。あれはマジで最高だった。ぶっ潰されたなぁみたいな。

JUICY B:(笑)。

(笑)。YungGucciManeさんからのディレクションは一切なかったんですか?

YungGucciMane:いきなりっすよ。ハンパないですよね。

ハンパないですね。ハンパないといえば、このアルバムのジャケットがまた……イケていて……。超かっこいいですね。

YungGucciMane:あれはすごい気に入ったアーティストの人がいて、その人の作品を使わせてもらったんですよ。ツイッターで知り合ったんですけど、美大生の女の人の作品なんです。僕の音楽を聴いてくれていて、仲良くなって使わせて欲しいとお願いしたらぜひ使ってくれと言ってくれて。あの作品に惚れちゃったんですよね。この作品は実物があるんですけど、それを撮った写真がこれなんです。

JUICY B:マジで? なるほどね。加工しているのかと思ってたわ。マジでヤバイね。

そのアーティストのお名前を伺ってもいいですか?

YungGucciMane:マザーファッ子さんですね。ツイッターでもマザーファッ子で出てます。

JUICY B:名前がウケるね。ははは(笑)。

こちらもすごい名前ですね(笑)。これはマスターピースだと思いました。もうひとつ、『JADE』の制作中にCherry Brownさんとのシングル『新世界』をリリースしています。こちらの動きはどうなっているんですか?

YungGucciMane:チェリー君とはまだアルバムの制作が続いてます。そっちは作りたいように作って、かっこいい曲を入れてこうって感じです。最近、新しいのを送ってくれて、それでデモで乗っけたりしたのが何曲かありますね。もう結構できてます。

JUICY B:(できてるのは)全部かっこいいよね。

そういった楽曲を作りつつ『JADE』を作っていたということですよね。ふたつの作品に相互の影響や関係はありますか?

YungGucciMane:チェリー君とやるときも、普通に俺の世界は俺の世界、チェリー君にはチェリー君の世界があるので、それを合わせればいい。だからあんまり切り替えはしないですね。俺が中心になってチェリー君がそれに付け足してくれるパターンとチェリー君が中心になって俺がそれに付け足すパターンがあって、お互いの世界を侵し合わない。そういう感覚のノリを保って作り続けている感じです。

『新世界』も広く聴いて欲しい曲ですし、こちらのアルバム完成も楽しみです。では、最後にYungGucciManeさんの今後の動きや展開があれば教えて下さい。

YungGucciMane:『JADE』を出した後に、また『NO PAPERS』みたいなふざけてる、そのまんまの俺を次は出そうかなと思っています。『JADE』で一度内面的なものを出して、次はもろトラップで遊んでいるアルバムを出してやろうかなと。いまドープ目なトラップを録りためているので、そこら辺を次は出そうかなと思っています。

ありがとうございました!

 インタヴュー中にはCHIEF KEEF、YOUNG THUG、Migos、J $tashの曲が鳴り響き、筆者が訊くとYungGucciManeがそれぞれの音楽が持つ魅力についてレクチャーしてくれる(大抵、それは「ノリ」という言葉で説明される。例えば「YOUNG THUGはクソオリジナルなノリが好きなんです。Lil’ Wayneからつながっているけど、完全にオリジナルなノリにしてる」「Migosはノリが好きですね。合いの手的な感じの独特なノリが……」など)。その合間合間に、ロヒプノールは、ベンザリンは、ザナックス(ソラナックス)は、ドグマチールは……というレクチャーまで挟み込まれ……。
 やがて最近外国から送ってきたというビートを鳴らしながらYungGucciManeとJUICY Bはレコーディングを始める。ふたりとも相変わらずリリックは一切書かない。

『NO PAPERS』 

「Across The Universe」

「ナッシング」

Songhoy Blues - ele-king

 きました。前作すっごい好きだったんですよ。2015年に出た『Music in Exile』は、個人的にその年のベスト10に入るアルバムでした(レッド・スナッパーによるリミックスも最高でした)。ソンゴイ・ブルースはマリのバンドで、最高のブルース・ロックを奏でる前途有望な4人組です。どれくらい有望かというと、かれらは昨年、ザ・ストーン・ローゼズのマンチェスター公演のフロントアクトに抜擢されています(諸事情により実現しませんでしたが)。その組み合わせに舞い上がったのは私だけではないはずです。
 そんな彼らが6月にセカンド・アルバムをリリース! これは正直、今週いちばん心躍ったニュースかもしれません。しかも新作にはなんとイギー・ポップが参加しています。イギー御大は昨年アルヴァ・ノト(!)と共作を発表していましたが、今度はソンゴイ・ブルースですか。御大、年をとればとるほど先鋭的になっているというか、素直にかっこいいですよね。日本盤もリリースされるようなので、とりあえずは公開された新曲“Bamako”を聴いて待っていましょう。いやあ、楽しみだわあ。

マリのソンゴイ族4人組から成るブルース・バンド、
ソンゴイ・ブルースのセカンド・アルバムが完成!
新曲“Bamako”を公開!

アフリカのマリ共和国とニジェール共和国に分断して居住する部族、ソンゴイ族の4人が組んだブルース・バンド、ソンゴイ・ブルース。デーモン•アルバーン率いる音楽プロジェクト、アフリカ・エクスプレスのアルバムに楽曲が抜擢されたことをきっかけに注目を集め、ヤー・ヤー・ヤーズのギタリスト、ニック・ジナーとマーク・アントワーヌ・モロー(マルーン5、ケイナーン、アマドゥ&マリアムほか)プロデュースによるデビュー・アルバム『ミュージック・イン・エグザイル』を2015年にリリース。

ブライアン・イーノが大絶賛していたり、デーモン・アルバーンやジュリアン・カサブランカスがサポート・アクトに起用するなど、著名なミュージシャンからも熱い注目を集めているほか、アラバマ・シェイクスのシカゴ公演にスペシャル・ゲストとして登場したりと一躍話題のバンドとなった彼ら。

あれから2年、そんな彼らからセカンド・アルバム『レジスタンス』が届けられた! 2016年秋にプロデューサーにニール・コンバー(M.I.A.、ジャンゴ・ジャンゴ、クリスタル・ファイターズ)を迎えて制作された今作は、ロンドン発のトラックメイカー、ラグジュアリーがシンセで、イギー・ポップ、スティーリング・シープらがヴォーカルでゲスト参加している。

早速アルバムから“Bamako”が公開となった。

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「Bamako」の音源試聴はこちら:
https://youtu.be/xBujXJVBxNU
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「Il Ma Fata」直訳すると「外へでかけよう」というフレーズを繰り返し歌うこの曲は、マリ共和国の首都バマコでのナイト・ライフを祝したもの。リード・ヴォーカルのアリユ・トゥーレは次のように話す。

「自分たちの故郷についてポジティヴで楽しい曲を書きたかったんだ。アフリカっていうとネガティヴで、戦争や飢饉といった悪い報道しかされない。そんなイメージを払拭できて、誰もが共感できる曲にしたかった。土曜の夜に出かけることについて歌うことで、人々が普段知らないアフリカを伝えたかった」

ファースト・アルバムを気に入ったなら今作でガッカリすることはない。今作でもソンゴイ・ブルースらしく、地元の伝統的なスタイルとモダンなギター音楽を融合させた独特のサウンドを奏でてくれている!

■アルバム情報
アーティスト名:Songhoy Blues(ソンゴイ・ブルース)
タイトル:Résistance(レジスタンス)
海外発売日:2017年6月16日(金)
レーベル:Transgressive / HOSTESS
※日本盤詳細は追ってご案内

■トラックリスト
01. Voter
02. Bamako
03. Sahara (featuring Iggy Pop)
04. Yersi Yadda
05. Hometown
06. Badji
07. Dabari
08. Ici Bas
09. Ir Ma Sobay
10. Mali Nord (featuring Elf Kid)
11. Alhakou
12. One Colour

※新曲“Bamako”iTunes配信スタート&アルバム予約受付中!(高音質Mastered For iTunes仕様)
リンク:https://itunes.apple.com/jp/album/r%C3%A9sistance/id1227668291?app=itunes&ls=1&at=11lwRX

■バイオグラフィー
2012年1月に起きたマリ北部紛争を乗り越え、ソンゴイ族であることに誇りを持つ4 人の若者、アリユ・トゥーレ(Vo)、ウマール・トゥーレ(B)、ガルバ・トゥーレ(G)、ナタネール・ダンベレ(Dr)で結成したブルース・バンド。伝統と現代、国産と 外国産、若さと古代がブレンドされたサウンドは聴く者の心を躍らせ、ブライアン・イー ノ、デーモン・アルバーンなど著名アーティストも大絶賛。2015年、ヤー・ヤー・ヤー ズのギタリスト、ニック・ジナーとマーク・アントワーヌ・モロー(マルーン5、ケイナーン、アマドゥ&マリアムほか)プロデュースによるデビュー・アルバムをリリース。2017年6月、2年ぶりとなる新作『レジスタンス』を発売することが決定。

CLAP! CLAP! - ele-king

 クラップ!クラップ!といえばリズム、リズムといえばクラップ!クラップ!です。これまでリリースされた2枚のアルバムは、いずれも魅惑的なリズムを聴かせる伝統的かつコンテンポラリなダンス・ミュージックでした。そりゃあポール・サイモンも魅了されるわけです。そんなクラップ!クラップ!が5月20日に来日公演を開催します。しかも今回のライヴは、ドラム2台を従えてのバンド・セットになるそうです。あの個性的なサウンドがいったいどう再現されるのやら、いまから気になってしかたがありません。きっと深夜帰りの病んだ気持ちに優しく作用することでしょう!

[5/19追記]最終ラインナップが決定しました。食品まつり a.k.a foodman、JUN KAMODA、1-DRINK、RLPが参加します!

祝! CLAP! CLAP! バンド・セットによる来日公演決定!

ビート・ミュージック~ベース・ミュージック・リスナーから辺境~民族音楽ファンやサイケ系インディ・ロック・ファンまで巻き込んで話題騒然となった大ヒット・ファースト・アルバム『TAYI BEBBA』に続く全世界待望のアルバム『A THOUSAND SKIES』を携えて CLAP! CLAP! の再来日公演が決定! しかも、今回はツイン・ドラムを配したバンド・セットでのライヴを本邦初披露! CLAP! CLAP! 衝撃のサウンドをライヴでご堪能あれ! さらに一筋縄ではいかぬメンツのブッキングが進行中、さらなる詳細は近日発表! 密林のごとき熱量マックス、そしてその物語は宇宙へと飛躍する前代未聞のパーティになること必至、乞うご期待!

*既に発表されております同日(5.20 sat)THE STAR FESTIVAL @スチールの森・京都はソロ・セットでの出演となります。バンド・セットは東京公演のみとなります。

[5/19追記]追加ライヴ・アクトとして、USツアーを目前に控えたジューク/フットワーク・プロデューサー、食品まつり a.k.a Foodman が決定。パーティを司るDJ陣は、CLAP! CLAP! のシングル「Hope feaat. OY」のリミックスを手掛けた ILLREME こと JUN KAMODA、テクノからビート~ベース・ミュージックまでボーダーレスな現場最前線でのパーティー・メイキングに絶対的信頼の 1-DRINK、海外ビート・シーンからも厚い信頼を得ている次世代ビート・サエンティスト RLP の参戦が決定!
過去2回の来日公演を確実に凌駕するであろう熱量マックスの密林グルーヴでオーディエンスを宇宙まで昇天させてくれることでしょう!

UBIK version
5.20 sat @東京 代官山 UNIT
Live: CLAP! CLAP! (Band Set), 食品まつり a.k.a foodman [5/19追記]
DJ: JUN KAMODA, 1-DRINK, RLP [5/19追記]

Open/ Start 24:00-
¥3,000 (Advance), ¥3,500 (w/ Flyer, Under 25), ¥4,000 (Door)
Information 03-5459-8630 (UNIT)
www.unit-tokyo.com

Ticket Outlets: PIA (330-316), LAWSON (72575), e+ (eplus.jp), diskunion CLUB MUSIC SHOP (渋谷, 新宿, 下北沢), diskunion 吉祥寺, TECHNIQUE, JET SET TOKYO, clubberia, RA Japan, UNIT

CLAP! CLAP! (Black Acre, IT)
CLAP! CLAP! は、ディジ・ガレッシオや L/S/D など多数の名義で活躍するイタリア人プロデューサー、クリスティアーノ・クリッシがアフリカ大陸の民族音楽への探究とサンプリングに主眼を置いてスタートさせたプロジェクトである。様々な古いサンプリング・ソースを自在に融合して、それらを極めてパーカッシヴに鳴らすことによって実に個性的なサウンドを確立している。彼は伝統的なアフリカのリズムをドラムマシーンやシンセといった現代の手法を通じて再生することにおいて類稀なる才能を持っており、その音楽体験におけるキーワードは「フューチャー・ルーツ/フューチャー・リズム」。CLAP! CLAP! の使命は、トライバルな熱気と躍動感に満ちていながらも、伝統的サウンドの優美さと本質を決して失わないダンス・ミュージックを提示することである。2014年にリリースされ翌年CD化されたファースト・アルバム『TAYI BEBBA』は、ビート・ミュージック~ベース・ミュージック・リスナーから辺境~民族音楽ファンやサイケ系インディ・ロック・ファンまで巻き込んで大ヒットを記録中、その勢いをさらに加速させる日本独自企画アルバム『TALES FROM THE RAINSTICK』を2016年5月にリリースした。さらにはポール・サイモンの最新アルバム『ストレンジャー・トゥ・ストレンジャー』にも参加、注目を集めてきた。そして、CLAP! CLAP! 全世界待望の新作『A THOUSAND SKIES』は、2017年2月にリリースされたばかりである。

[リリース情報]

CLAP! CLAP! "A Thousand Skies"
クラップ!クラップ!『ア・サウザンド・スカイズ』
in stores now
PCD-93997
★日本独自CD化
★アーティスト本人によるストーリー仕立ての全曲解説&対訳を封入
https://p-vine.jp/music/pcd-93997


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