「K A R Y Y N」と一致するもの

Chart JET SET - ele-king

Shop Chart


1

Missing Linkx - So Happy (Philpot) /
SoulphictionとMkによるプロジェクトMissing Linkxによる最新作!Moodymannの作風に通ずるブラックネスを放つ"You Ain't Hip"が脳髄直撃!

2

Michel Cleis - Mir A Nero (Pampa) /
2012年サマーアンセム、最有力候補!Cadenza等から数々の傑作をリリースした事でもお馴染みスイスの気鋭プロデューサーMichel Cleisによる最新作!

3

Sunlightsquare - Heart's Desire (Sunlightsquare) /
超人気ラテン・バンドSunlightsquare、今回は、フリーソウルとしても再評価されたのあの曲です。B面はスピリチュアル・ジャズ・ファンク名曲カヴァー!!

4

Ondatropica - S.t. (Soundway) /
Flowering Inferno、Combo Barbaroでのアルバムや数々の過去音源発掘等でコロンビア~ラテン音楽の再評価を盛り上げてきたQuanticによる最終到達地点。

5

Large Professor - Professor @ Large (Fat Beats) /
Large Professorの新作が遂に全貌を現しました! 客演にはBusta, Lil Fame, Tragedy, Mic Geroinoのベテラン勢から、Action Bronson, Saigon, Roc Marcianoまで豪華メンツが参加!

6

Karriem Riggins - Alone (Stones Throw) /
プロデューサーとしてSlum VillageやErykah Baduの作品でも手腕を振るった氏のオール・インストゥルメンタル・アルバム!

7

Hazel - Lost Tapes (The Beat Down) /
Onra主宰レーベルからのデビュー12"が話題騒然となったクリエイターの新作アルバム!客演には若手筆頭株のDrakeや、Bbeからのリリースで知られるSlakah The Beatchildをフィーチャー!

8

J Rocc - Minimal Wave Edits Vol.1 (Stones Throw) /
ミニマル・シンセ・リイシューレーベルMinimal WaveとStones Throwが強力タッグ!プロデューサーとしての資質も一級の彼が、90'sカルト・シンセサウンドを再構築。

9

Moody - Why Do U Feel Ep (Kdj) /
Kenny Dixon Jr. A.k.a. Moodymann手掛けるセルフ・レーベル"Kdj"からの話題新作が遂に解禁。Pv公開と共に話題を集めた昨年リリースの傑作「I Got Werk」も収録されています!!

10

Oddisee - People Hear What They See (Mello Music Group) /
客演には旧知のDiamond Districtの面々や、同郷ワシントンD.c.のソウルスター・Olivier Daysoul、Bullionとのスプリット盤でも話題を呼んだTranqill等が参加した全12曲。

Kindness - ele-king

 サファイア・スロウズは、彼女のLAツアーの記録において、アマンダ・ブラウン(LAヴァンパイアズ)の家に行って、「将来こんなふうに生活したいよね.....(略)。かっこいいことしてるかっこいい人たちがかっこいい家に住んでてよかった」と、素直な感想を述べているが、日本に住んでいる限り彼らと同じような生活はほまず無理だろう。
 これはインディ・シーンや音楽文化の質の問題ではない。より大きな問題だ。そもそも日本の建築物、こと住居に関する建築物の考え方そのものが欧米と日本とでは違う。欧米では、たとえば集合住宅の部屋を買う場合、土地ではなく、その建築物に金を払う。ニューヨークやロンドンなどの場合、必ずしもそうとは言えないだろうけれど、伝統的にはそう考えている。つまり、日本とは逆。だから、建築物がしっかりしていないと売れない。デトロイトでもベルリンでも、緯度が高いところに位置する都市部では、だから保温はその建物全体でおこなう。遮音や配管に関してもしっかりしている。ところが日本は、土地が資産となっている。ゆえに地価が高く、ゆえにその上に建てる建造物へのコストはカットされ、ゆえに世界のスタンダードで言えば、先進国でありながら平均的な人たちはスラム街並みの狭い空間で暮らしている。国土が狭いからそうなったわけではない。国のシステムや考え方に依拠している。
 このように、日本の外から日本を見ると悲しくなることが多々ある。今日の民主党+元民主党の無責任ぶりを見れば外に出なくてもそのとんでもなさはわかるだろうが......。

 しかし「思い込み」というのは恐ろしいもので、80年代まで、日本人の多くは自分たちは経済大国に住んでいるんだし、欧米人並みの暮らしをしているんだと錯覚していた。信じられない話だが、自分たちは白人だと勘違いしていた人も少なくない。
 土地を株券のように売り、価値を与えたのは日本政府だ。税収が増えるし、資産として運用できる。それがゆえにバブル経済が起きたわけだが、結局のところ間違った「思い込み」に気づかされたのが80年代の日本だった。
 だいたい平均的な大学生の暮らしは、地方から上京してきた場合など、男も女も風呂なしの木造アパートが当たり前だった。しかし、80年代の生まれの橋元優歩は、あの時代の日本では多くの若者がYMOに表象される「トーキョー」に酔っていたと思い込んでいる。ある種ヴァーチュアルなノスタルジーに支配されているのだ。

 今年の3月に店頭に並んだカインドネスのデビュー・アルバムをいまさらレヴューしたのはふたつの理由がある。ひとつは三田格によるピュリティ・リングのレヴュー。彼は「チルウェイヴもいい加減、ディスコ・リズムからは離れて16ビートを意識したようなものになっていくか」と書いているが、僕が知っているだけでもチルウェイヴは1年以上前から16ビートを意識している。トロ・イ・モアが昨年の2月に発表した『アンダーミース・ザ・パイン』の、たとえば"Go With You"を聴いてもらえればわかる。トロ・イ・モアはその年の12インチ「フリーキング・アウト」でもブラコン的な16ビート路線を追求している。また、〈4AD〉のインクにもそのあたりのセンスがプリンス・リヴァイヴァルのなかで受け継がれている。

 カインドネスの『ワールド、ユー・ニード・ア・チェンジ・オブ・マインド』という、もっともらしい題名のアルバムは、アートワークが物語っているように、何のことはない、スタイリッシュなトロ・イ・モアといったところである。
 ラ・ファンク・モブもモーターベースも聴いていない世代がカインドネスにいち目置くのは無理もない、ラ・ファンク・モブが出てきたとき、君たちはまだ小学生だったかもしれないのだ。僕がこのアルバムを手にした理由は、プロデューサーがフィリップ・ズダールだったからだけれど、カシアス以降のズダールは中途半端にビジネスを意識していて、いまひとつ冴えがない。それでもまあ、経験豊富なフランス人がチルウェイヴをどういう風に料理するのか興味があったし、彼はトロ・イ・モア以降の流れをそれなりにうまくまとめてはいる。16ビートを基調としながら、ディスコ(80年代)からハウス(90年代)へと、じょじょにだが移りゆくモードも捉えている。80年代風のテクスチャー(ディスコ、ブルーアイド・ソウル、AOR......等々)も残しつつ、新しい衣装を同時に見せている。

 80年代からはじまった「スタイル文化」の背後では、アーバン・ルネッサンス計画に沿って、この都市の殺伐とした景観がかたち作られている。そんな80年代の日本において、たとえばルインズ(廃墟)やボアダムス(倦怠)を名乗った音楽が、その後のブルックリン(ブラック・ダイスやアニマル・コレクティヴ)へと伝播されている。それなのに橋元優歩ときたら......。
 たしかに言われてみれば、いまよりもお花畑の若者は多かったかもしれない......けれど、80年代とは「日本ってやっぱダメだったんだな」と気づかされた時代だった。不思議国でも何でもない。
 周知のように、新自由主義がはじまったのも80年代だ。百歩譲ってそれにはそれなりの良さがあったとしよう。だが、日本で公営が民営化されたと言っても、結局そのトップは官僚のままだったりする。そのことと「チルウェイヴは16ビートですよ」という実に些細なことを言いたかっただけなのに、こんなにも書いてしまった。風呂に入ろう。stay loose, play funk and write reviews...

 洋楽聴くと売れなくなるぞ、売れたきゃバンプだけ聴いてろぉと業界では言われているとかいないとか......、そんな話がまとこしやかに囁かれている今日の邦楽で、たとえ無意識であろうとシーンのガラパゴス化に抵抗し、音楽という想像力に意識的なアーティストたちのリリースが相次ぐ。
とはいえ、ほんとうにつまらない音楽ばかりなのかといえばそうでもない。無名の才能たちを拾い上げることができなくなってしまった痩せて力ない音楽業界を、彼ら先達者たちやわれわれリスナーが揺さぶらなければならない。投票だと仮想してみようではないか。あなたはどの票でもって意思を表明するだろう? 全部買ってもいい。しかしどれもそれに値しないかもしれない。あなたの期待の作品を、どうぞコメントしてください!

 8月8日の七尾旅人『リトルメロディ』は、前作『ビリオン・ヴォイシズ』発表以降全国を行脚し、とりわけ震災以降の福島へいち早く赴くなかで受けた大きなインスピレーションが止められている。ツイッター上のコミュニケーションを制作に援用したり、多くの個性的な奏者たちを交えるレコーディング・スタイルをとったりと、七尾らしい取り組みも健在だ。また、昨今のSSWブームの火付け役でもある。
詳細 https://tavito.net/

 9月5日のコーネリアスは、これまでに手がけたリミックスやミックス作品のコンピレーション「CMシリーズ」の第4弾。1995年から2012年まで、国の内外を問わずオファーを受けた作品を一挙収録している。こちらは残念ながらオリジナル・アルバムではないが、定評ある小山田圭吾のリミックス作品をまとめて聴けるのは嬉しい。MGMT、相対性理論、アート、リンゼイ、小野洋子、布袋寅泰、三波春夫......などなどの曲のコーネリアス・リミックスが収録される。"赤とんぼ"のリミックスは必聴。

 同日のトクマルシューゴは約2年半ぶりのリリースとなる。予定されているフル・アルバムに先駆けたシングルだ。タイトルは『デコレート』。CDやデジタル・フォーマットのほかにソノシートも予定されているところにインディ・シーンの時流がとらえられているようにもみえる。ご存知バグルスの名曲"ヴィデオ・キルド・レディオ・スター"カヴァーなどはアルバムへは収録されない注目トラックだ。
詳細 https://blog.shugotokumaru.com/?eid=1030256

 9月19日はオウガ・ユー・アスホール。演奏力もさることながら、若いバンドのなかではダントツに多種多様なレコードを買い、探求をつづける志高きバンドでもある。物事が移りかわったり終わったりしていくことは、悪いことではない......『ホームリー』とは真逆のチルな境地を目指しつつ、ポップ・センスも注がれている『100年後』には、そうした意味もこめられているようだ。
詳細 https://www.ogreyouasshole.com/news.html

石野卓球 - ele-king

 YMOとクラフトワークとアンディ・ウェザオールとパレ・シャンブルグを聴いた後、という非常にヘヴィな状況で、もう帰ろうと思っていたんだけど、石野卓球がDJをはじめた途端にどんどんひとがフロアから出て行くという滅多にない光景を見てしまったものだから、それまでのすし詰め状態から自由に踊るくらいの余裕ができたダンス・フロアのど真んなかにわざわざおりていったら、卓球の繰り出す魔術的なビートに絡めとられて、しばらく踊り念仏と化してしまった。以前はほんとにしょっちゅう聴いていた彼のDJだけど、最近は本当にごぶさたしていて、それでなのか懐かしいようなとてもフレッシュなような、いろんな感覚がぐるぐると渦巻いた。

 初回から昨年まで、13年分の〈WIRE〉コンピに収録された卓球の曲を古い順に並べた今回の企画盤は、たぶん初回からずっと〈WIRE〉に通い詰めているようなオールド・ファンに同じような感覚をもたらすんじゃないかと思う。本作に関連したインタヴューでもアルバム収録の本人解説でも語っているように、初期の頃にはこのフェスの顔になるような、アンセム的な曲をオーガナイザー自ら提供している感じで、実際会場でも何度も耳にしてすごく記憶に残っているトラックが多い。途中からそういう意識が変わって、〈WIRE〉でのプレイ中に使うわけでもない、コンピの中の一曲というものになったという。当然、後半にいくに従っていわゆるオオバコ映えする派手なトラックからBPMも下がって、地味で実験的な曲が増えていくんだが、だからといって卓球らしさというか、「味」みたいな部分が減退しているかというとそんなこともなくて、むしろ歳を取るにつれてそのひとの本性が顕わになるみたいなところもある。
 去年のコンピからの収録曲"Five Fingers"は5拍子で、イントロからしばらくは普通の4/4のストレートな曲からは感じえない妙なきもちわるさがある。だんだんと音数が増えるとその異物感も緩和されて、卓球の持ち味のひとつであるトランシーな上物が輝き出すと、あっという間にその世界に引き込まれる。去年、WIREコンピを入手した後すぐループで聴いていて、この曲がすごく耳に残ったのを覚えている。そのときは5拍子だからっていうのはパッとわからなかったけど、いっぽうで彼が昔Mijk Van Dijkと作ってヨーロッパ中でヒットしたUltra-Takkyu vs Mijk-O-Zilla名義のトラックとよく似たハマリ系のトランシーさを持っていて、ずっと変わらない本質的な快楽原則を追求した部分と、そのチャレンジングな冒険とがこんな具合にブレンドされるのはすげえなと思ったのだ。しかも、それ1回では飽きたらず、今年のWIREコンピでも、今度は7/4拍子というまたも「変」なリズムを探求するという筋金入りの変態っぷりを披露している。
 毎年欠かさず〈WIRE〉に遊びに行っているロートルとしては、当時小学生だったリアル・キッズがいまや成人して堂々とオールナイトで酒飲んで大暴れできる年齢になってると改めて考えると衝撃を受けるが、そういう人たちがこのアルバムで石野卓球の〈WIRE〉における変遷をはじめて振り返るとどういう風に聞こえるのかは結構興味がある。おじさんは、懐かしさもあるから初期の曲にはもちろんかなり思い入れもあるし、いまでも全然かっこいいと思うんだけど、いまの耳で聴くならこっちかなというのは07年の"St. Petersburg"とか09年の"Slaughter & Dog"とか、もしくはボーナス・ディスクに入ってる10年の"Carrie"あたり。でも、こないだShin Nishimuraくんと、若いクラバーは、パンチの効いた往年の"ザ・テクノ"みたいなノリはあまり体験してないから、そういうのが逆に新鮮なんじゃないかと話していて、実際彼が自分のパーティに石野をゲストに呼んで「クラシック」をテーマにオーガナイズした晩も、どう見ても20代前半の若いお客さんが、10~20年前の曲でガンガンに盛りあがっていた。たぶん、90年代に一般化した編集/DJ的な聴き方や、00年代のiPod的シャッフル感すら遠くの過去のものにする感性を、彼らはもっているに違いない。

 歌謡曲でもロックでも、購買力があって思い入れが強いのは中高年のファンだから、そういう人たちに向けて再結成や懐メロ的な展開して一稼ぎっていうのはもうどこでもあたりまえの光景になってしまったけど、年代的にもキャリア的にもそろそろそういう部類に入りそうな卓球が、こういう「思い出を振り返る1枚」みたいな装いの企画をこなしながらも実際はまったく明後日の方向へひょいひょいと走ってることは感動的ですらある。

Moritz Von Oswald Trio - ele-king

 パレ・シャンブルグの再結成――東京公演を楽しみしていた私は前の週は気もそぞろだったのに、なぜか当日にはすっかり忘れ、幕張から代官山をハシゴする「オヤジ殺し」はまぬがれたものの、忘却という(かボケというか)別の意味のオヤジ殺しにわが家でくつろぎながら苛まれていたことにさえ気づかない有様だったが――に参加しなかったモーリッツ・フォン・オズワルドに、ヴラディスラヴ・ディレイ名義のサス・リッパティとサン・エレクトリックのマックス・ローダーバウアーとを加えたトリオの3作目。『Fetch(フェッチ)』とは「連れて来る」の意で、派生的に「(聴衆などを)魅了する」という語意を含む(『ジーニアス英和辞典』)が、ファーストの『Vertical Ascent』(2009年)、昨年の『Horizontal Structure』に続く本作でも、長尺のきわめて抽象的なアンサンブルを聴かせるトリオの基本路線に異同はない。つまるところ、ジャズのスタイルを借りたテクノをダブで再生したミニマル・ミュージック。ゼロ年代ダンス・カルチャーの共通言語のひとつであったベーシック・チャンネルの方法論を展開した、ほとんど至高の職人芸ともいえる細部を味わえるかいなか、そこにこのアルバムを聴く醍醐味がある、と書くと、またぞろオヤジ殺しかよ、とかいわれそうだが、とはいっても、まるで耳の毛細血管を流れる血の音を聴くように細かく脈動する、聴くことの楽しみを鼓舞する音楽を無視する道理はない。

 たとえば、冒頭の"Jam"にはトランペットをフィーチャーしている。ところがそれはジャズでいうソロイストの役目を担わない。MVOTは唯一のメロディ楽器を煙幕の向こうに追いやり、フューチャー・ジャズ的な構成要素と、パーカッション、シンセサイザー、ノイズ、エレクトリック・ベースのハーモニクスなどとの位置関係を転倒(ダブ)させることで、簡単にそこに収斂させはしない。さきほど、「ジャズのスタイル」と書いたが、援用されているのは即興の方法論と合奏の形態であり形式ではない。ここでは、リズムの磁場/重力に対置されたワウモノすべてがスポンテイニアスにソロをリレーしていく。その縦軸の力に対する横軸の運動はダンスミュージックそのものであるばかりでなく、ジャズの、とくにプレ・フュージョン期からフューチャー・ジャズまでの底流ともいえるエレクトリック期以後のマイルスのモーダルな手法を彷彿させる。つまり、演奏は自由に展開する(ようにみえるが)グルーヴとモードが舫となる。その綱引きこそファンクネスである。MVOTはテクノでありミニマルでありダブであるが、いずれにも偏らず、むしろその綜合として、ジャズやファンクの"原理"に接近していったのは、人名をグループ名に冠するというジャズ的な(と断定することができないけれども)命名であらかじめ表明されていた......というか、私はここでようやく思い出したが、そんなことは"Vertical Ascent(垂直上昇)""Horizontal Structure(水平構造)"といったタイトルにとっくに掲げていたのでした。

 だったら『Fetch』はどうなのかといえば、言葉の意味は前段に書いた通り。ところが、"Pattern""Structure"(『ライヴ・イン・ニューヨーク』では"Nothing")に番号を振っただけのそっけなかった曲目には『Fetch』では"Jam""Dark""Club""Yangissa"と、テーマないしは情景を思わせるタイトルが付されている。"Jam"はジャム・セッションを、"Dark"はヘヴィなグルーヴがとぐろを巻く曲のムードを指すのだろうし、四つ打ちの"Club"はタイトルの通りのクラブ仕様。三連符のボトムと打楽器の刻みと遠くに鳴るホーンがエキゾチックな幕引きの"Yangissa"はMVOTがこれまでも試みてきた(『Vertical~』の"Pattern 3"など)ワールドミュージック的手法の拡張版だが、ヴィラロボスやジョン・ハッセルを思わせる(とすると、"Jam"のハーモニクスの使い方はどう考えても『Possible Music』あたりのパーシー・ジョーンズを意識しているとしか思えない)ムードにはしかし、ここではないどこかに向かう浮ついたところはない。むしろ、すべての要素を繋留するリズムこそ彼らの真骨頂であり、MVOTの磁場が「連れて来た」記号はその上をゴースト・ノートとして彷徨するのである。
 そういえば、"Fetch"には「生き霊」の意味もあったのだった。
 Rhythm & Fetch...

The Orb feat. Lee Perry - ele-king

 いやー、暑い、暑いっす。この暑さのなか、ご機嫌な曲をお届けしましょう。ジ・オーブとリー・スクラッチ・ペリーによる待望のアルバムから先行で発表されている"Golden Clouds"です。あの名曲"リトル・フラッフィー・クラウド"でサンプリングされたフレーズ(スティーヴ・ライヒの曲です)がミキシングされています。アルバム『ジ・オーブ・フィーチャリング・リー・スクラッチ・ペリー・プレゼント・ジ・オーブザーバー・イン・ザ・スターハウス』の発売は8月8日。アレックス・パターソンへのインタヴューは8月のなかばにはアップされる予定です。



 
 

Your Favorite Summer Song - ele-king

 「夏が来た、路上で踊るには良い季節」......こう歌ったのは1960年代のマーサ&ザ・ヴァンデラスでした。彼女たちがデトロイト市内のホールでこの曲を歌っているときに、町では暴動が起きていたという話は有名です。
 さて、梅雨が明けて、夏到来です。スタンダード・ナンバーの"サマータイム"にたくさんの名カヴァーがあるように(ジャニス・ジョップリン、ニーナ・シモン、ブッカー・T&ザ・MG'S、サム・クック......)、この世界には夏をテーマにした名曲がたくさんあります。ビーチ・ボーイズは夏だらけだし、マーサ&ザ・ヴァンデラスには他にも"ヒートウェイヴ"があります、エレクトロニカ/IDMには『エンドレス・サマー』があるし、ハウス・ミュージックにもベースメント・ジャックスの「サマー・デイズEP」があり、チルウェイヴにはウォッシュト・アウトの「ライフ・オブ・レイジャー」があります。あるいはドナ・サマーやメキシカン・サマー......芸名やレーベル名が"夏"であるケースもあります。
 
 夏の音楽は多くの場合ロマンティックですが、セックス・ピストルズの"ホリデー・イン・ザ・サン"を聴いたら怒りがこみ上がってきて、ザ・ドアーズの"サマーズ・オールモスト・ゴーン"を聴いたら夏が終わってしまった気持ちになるかもしれません。そしてジミ・ヘンドリクスの"ロング・ホット・サマー・ナイト"を聴けば、あたり一面は燃え上がるでしょう。
 MFSBの『サマータイム』のアートワークに使われている写真も素敵ですね。熱波で焼けた路上でひとりの女性が水浴びしている姿にグッと来ます。
 日本の音楽にも多くの夏の曲があります。曽我部恵一"Summer '71"、フィッシュマンズの"夏の思い出"や"Sunny Blue"......RCサクセションなどはホントに多くの夏の曲を作っています。
 
 以下のチャートを見て、自分の「Favorite Summer Song」が入ってないじゃないかという方は、コメント欄に書いてください!


1
Martha And The Vandellas - Dancing In The Street

2
Miles Davis - Summertime

3
Jimi Hendrix - Long Hot Summer Night

4
Fennesz - Endless Summer

5
Sex Pistols - Holiday in the Sun

6
The Associates- Fire To Ice

7
The Ramones - Rockaway Beach

8
RCサクセション - 海辺のワインディイングロード

9
Alice Cooper - School's Out

10
The Beatles - Mr. Moonlight

11
RCサクセション - 楽しい夕に

12
Eddie Cochrane - Summertime Blues

13
The Style Council - Long Hot Summer

14
Best Coast - Summer Mood

15
The Doors - Summer's Almost Gone

16
Sly And The Family Stone - Hot Fun In The Summertime

17
The Drums - Saddest Summer

18
Pub - Summer Pt 1

19
MFSB - Summertime

20
The Beach Boys - All Summer Long

21
RC サクセション - サマータイムブルース

22
Girls - Summertime

23
Yo La Tengo - Beach Party Tonight

24
Bruce Springsteen - Backstreets

25
Pink Floyd -Summer '68

沢井陽子

The Beach Boys - Endless Summer

サマーソングといえば、いまのタイミング的にも真っ先にビーチ・ボーイズ。イメージが先行しているのですが、こちらは、1966年前のヒットソングのコレクションで、初心者も十分楽しめる内容。ロスアンジェルスにいた頃、ジョニー・ロケットというレトロなハンバーガー・チェーン店に行って、ハンバーガーとフライズを食べながら、ジューク・ボックスに"サーフィンU.S.A."を入れて、パーフェクトな夏を満喫した思い出があるので、曲も素敵だが、そのときのイメージも多々影響。楽しい出来事ばかりでなく"イン・マイ・ルーム"で、もの悲しい夏の残骸を胸に抱え、自分の心の中にグッとしまっても、最後に"グッド・ヴァイブレーション"が流れると、ドラマチックな夏物語を「まあ、いいか」とまるく収めてくれる。全体が、夏のさまざまなシチュエーションに当てはまり、イメージが膨らむが、サマーソングって、結局それが楽しいのです。

DJ Yogurt(Upset Rec)

RCサクセション - サマータイム・ブルース

"サマー・マッドネス"、"サマー・イン・ザ・シティー"、"サマー・ミーンズ・ファン"、etc...
いろいろな曲が頭に浮かんだけど、2012年の日本の夏にハマっているのは、エディ・コクラン作の名曲に、いまは亡き清志郎が日本語の歌詞をのせた"サマータイム・ブルース"ではないかと。「電力は余ってる、いらねー、欲しくねーー」。

大久保潤 aka junne(メディア総合研究所/大甲子園/Filth)

SxOxB - "レッツ・ゴー・ビーチ"("ドント・ビー・スウィンドル")

ハードコア・パンクはナパーム・デスなどにより"速さ"という点において90年前後にネクスト・ステージに進み、90年代半ばにはファストコアとかパワー・バイオレンスとか呼ばれる激速なバンド群がシーンを席巻した(あの頃はそういうバンドの7インチが毎週のようにリリースされて本当に楽しかったなー)わけだが、そのルーツのひとつが初期S.O.Bである。大阪ハードコア・シーンから現れた彼らは「世界最速」と謳われ、日本にとどまらず世界のハードコアに多大な影響を与えた。
そんな彼らの初期の代表曲のひとつが"Let's Go Beach"で、歌詞はただ「Hot Summe soon comes again.
Let's Go Beach. Let's Go Surfin」だけ。ハードコア・パンクとサーフィンという組み合わせ(当時はまだ日本ではハードコアとスケートの関係もあまり一般的じゃなかったはず)、そしてファスト・パートから後半はキャッチーなシンガロング(♪レッツゴサマービ~~~チ!)に移行するポップなセンスもおそらく当時は斬新だったろうし影響力もデカかったんじゃないかな。ポップに始まって一転して激速! みたいなのって90年代には(たぶん今も)本当にたくさんありましたからね。
この曲と、ハノイ・ロックスの"Malibu Beach Nightmare"とラモーンズの"ロッカウェイ・ビーチ"を「新・三大ビーチソング」とさせていただきます!(全然新しくないけど)

DJ Hakka-K (Luv&Dub Paradise)

Baiser - Summer Breeze

夏といえばレゲエやその他大好きな曲はたくさんあるのですが、僕がいちばん最初に影響を受けたDJ Soneが夏になると必ずかけてたのが、83年に発表されたこの曲。いまでも夏になるとレコード・バッグに入れておく想い出がたくさん詰まったDISCOの隠れた名曲です。

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山田蓉子

ピーナッツ - 恋のバカンス

言わずと知れた昭和歌謡の大名曲。中学生の頃からカラオケで必ず歌っているのだが、気持ちよくハモりながらひたすら「そっかーバカンスってのは、金色にかがやく熱い砂の上で裸で恋をするのねー。素敵」と思い続けてきた。全国民が一年中バカンスのことばっかり考えて暮らしているフランスで生活するようになったのも、そんな刷り込みのせいなのだろうか。でもまだ金色にかがやく熱い砂の上で裸で恋なんかしたことない。バカンスのために生き続ければいつかできるんだろうか...。
合掌。

why sheep?

私見ですが、夏は24,25と2日で勝負のクリスマスと違って日本人にも長丁場ですので、一曲に絞るのはむずかしいのです。

というわけで、アルバム単位で失礼します。これは、僕のサマー・ソングのオールタイム・フェイバリットで、オールタイムというからには理由があって、日本がどの季節であっても、暑くてビーチのあるところになら、僕が必ず持っていくアルバムだからでもあります。実家のある茅ヶ崎に帰郷する際はどんな季節であっても必ずです。

ちなみにわたくし、渋谷区神宮前生まれ、現住所湘南というプレミアムな、昔なら免許証だけでナンパできると言わましたがそれは昔の話で、もし免許証に写真を載せなくて良かったら、人生は今とずいぶん違ったことでしょう。さて、

閑話休題、

神奈川県茅ケ崎市の出身であればだれもが知ってることですが、
茅ヶ崎市民=サザン・オールスターズ・ファン
というのが公理となります。
茅ヶ崎市民≒サザン・オールスターズ・ファン
は許されませんし、
茅ヶ崎市民なのに≠サザンオールスターズ・ファン
はばれたらその場で公開処刑されます。

しかし、どんなところにも反逆者はいるもので、江戸時代の隠れキリシタンのように
そんな中でサザンを崇拝しなかったのがこの私です。もちろんサザンの曲も大好きですが、神宮前の生まれの私にはあまりにも野暮ったすぎました。

長くなるとあれなので順不同ということで三枚選ばせていただきますと、

Boz scaggs - Down To Then Left

もちろんbozの名盤といえばsilk degreesですし、一枚後のmiddle manは東海岸AORあげての名盤ですが、その中庸にあるこのアルバムなぜか期待されていたほどに売れませんでした。だからこそぜひ聴いてみてください。超ゴールド・ディスクのsilk・degreesの直後になんでこんなアルバム作ったのかと俄ファンは首をかしげたかもしれまえんが、ルーツと言えばパンクと忌野氏の話しかしない三田格が即座にこのアルバムの名前を言えるということだけお伝えすれば、ele king読者は気持ちは動くことでしょう。三田さんが好きかどうかは知りませんが。

Bobby Caldwell - Carry On

アルバムのすべての曲が珠玉としか言いようががありません!
邦題は原題とまったく関係ない「センチメンタル・シーサイド」と付けられてましたが、その心は当たらずとも遠からず。。
1980年代、日本のサマーリゾートの代表である湘南は傍目はアメリカ西海岸、(実情はサザン=茅ヶ崎駅南口)だったのですが、桑田圭祐もその音楽的ホームグラウンドであるという茅ヶ崎の現存するレコード屋さん「CHIYAMA」(桑田さんが青学に通ってる頃厨房の私が通っていた)につつましげに張ってあったポスターが忘れられません。
「マイアミの蒼い風」
そこにはそう書いてありました。
当時の日本の理想とするカリフォルニアでもなく、はたまた湘南の実情ださいヤンキー文化でもない、架空のビーチがあった!そこはマイアミ(本当のマイアミは行ったことないので知りません。。)
あぁ...哀れなるかなbobby caldwell。3枚目にして自身のもてるすべてを注ぎ込んだ、そして当時のレコード会社も起死回生を図って宣伝したこのアルバム、期待ほど売れませんでした。当然です。日本人はカリフォルニアしか頭になかったのですから。

長々と前節書きましたが、この感傷性の至高とも言えるアルバム。アラサー独身男子の方ならきっと理解してもらえることでしょう。はまっちゃったら一生結婚できないこと請け合いです。

さて最後、

J.D.Souther - You're Only Lonely

あぁ、このメロディーにこの歌詞に極め付けのこの声。同胞のイーグルスのほうが100倍有名ですが、彼はイーグルスの第五(第六だったかな?)のメンバーと言われるほどイーグルスに貢献したソロ・シンガー・ソングライターです。(名曲"New Kid In Town"は彼の曲)
一聴したら単なるアメリカの野暮ったいカントリー&ウエスタンの歌手と間違える人もいるかもしれませんが、よく聴いてくださいこの声。
現代音楽の大家メシアンは音を色に例え、詩人ランボーは言葉を色に例えたそうですが、わたしに言わせればJ.Dの声は「いぶし銀の声」と呼んでいます。
それをもっとも感じるのはこの前のアルバムの『Black Rose』収録の"Silver Blue"ですが、夏の間聴くべきはこのアルバムです。
とくに一押しは彼の出世曲の"You're Only Lonely"ではなく!!!!"If You Don't Want My Love"、このモラトリアムから抜け切れないガキっぽい歌詞が胸をえぐります。しかしなんといっても必聴すべきは、彼の声もさることながらハモンド・オルガンB3の旋律というかその音色!!!
はっきり言って"Let It Be"のBilly Prestonを軽やかに凌駕しています。その名はJai Winding。ちょっと調べた限りでは往時の人気スタジオ・ミュージシャンということですが、実際のところよくわかりません。"My Funny Valentine"のときのJimmy.Smithぐらい良い!!!知ってる人いたら情報求む!!!

それでもどうしてもと野田努に一曲選べと言われたらこの曲、

佐野元春
Heartbeat』収録 "Interlude"~"Heartbeat"
↑ここには私の少年ゆえの切ない恋愛体験がすべて詰まっております。くれぐれも("Interlude"から聴いてください)

他にも山下達郎の"Big Wave"(口が裂けても『Beach Boys』の"Pet Sounds"とか言いたくない)とかあるんだけど、この企画が来年も続いたらその時にでも。

おやすみなさい。みなさん家のエアコン止めてビーチでセンチメンタル・シーサイドしようぜ!

summer, 2012
why sheep?

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三田格(e-Busters...)

Wham! - Club Tropicana

なんてな

竹内正太郎

□□□ - 渚のシンデレラ

夏、夏か、、、。この、永遠に思わせぶりで無責任な季節は、これからもギリギリのところで前向きな予感たりえてくれるのだろうか? いや、しかしこうも明らかな異常気象が続き、つい先日も日本国内の最高気温都市の上位三位を独占したような場所に住んでいる身としては、サマー・ソングを悠長にセレクトするにも体力を使って仕方がない。しかし橋元優歩に催促され、限られた時間内に直感で選ぶとしたら、("真夏のラストチューン"も捨てがたいが)やはりこの曲になるだろう。クチロロがバンド編成時代に残したきらきらのクラシック。超多層構造のトラックをハイパーなまでに軽く聴かせるその手さばきは、今なお並々ならぬセンスを見せつけている。それはもう、嫌らしいほどに。ヴォーカル/大木美佐子の安定しない高音域もいい。夏は楽しく充実しているべきか? この疑問自体、広告業的な価値観に刷り込まれたちゃちな不安でしかないわけだが、優れたサマー・ポップは何度だってその空虚さを上塗りする。とても鮮やかに。パルコの広告にほだされ、私は今年も嫌々と海に出掛けるのだろう。一年に一度くらい、まったく見当違いの恋をしてみるのもいいものだ。それがどれほど軽薄なものであっても。「ここから物語は続く/忘れたものもあの角を曲がればきっと思い出すさ」!!

松村正人

XTC - Summer's Cauldron

私は夏が大好きなので、好きな曲はビーチの砂の数ほどありますが、そのなかでもこの曲は、陽がのぼるとすぐにうだるようで、退屈で、楽しくないので、どこかに逃げたいがまわりは海ばかりで、しょうがないと諦めつつ、それもそう悪くないかと思いはじめたころ、暑気がひけて、虫や鳥の声が際だちはじめた、島に住んでいたころの夏の日の宵の記憶をくすぐるようでとても甘美だ。

水越真紀

戸川純 - 隣りの印度人(玉姫様)

21世紀の日本の夏、80年代に比べて湿度は低くなった。絶対なったと思うのだ。数年前、そのことを示すグラフをネットで見つけたのだけど、二度と出会えないでいる。
ともあれ、目の前の暑さをどうにかして「涼しぃ?」と断言する、言いくるめる、歌い上げる姿勢に私は共感するのである。ポストモダンな感じがする。人間の知恵、つー感じだ。しかし、現実逃避の知恵ばかり身につけてしまうのもどうかとも思う。
私は冷房を使っていない。本当に暑いには空気がゆらゆら揺れているのが見える。汗が吹き出しては乾いて皮膚を冷やす。
去年の夏は2時間置きに猫を冷やす保冷剤を取り替えていた。濡れたタオルで拭いてやり、耳を氷で冷やしたりした。今年こそ冷房を入れてやらねばと思っていたが、それを待たずに彼女は逝った。今年、冷房を入れる理由はなにひとつなくなった。

橋元優歩(e-Busters...)

Animal Collective - Fireworks
Photodisco - 盆踊り

わたしも夏が大好きです。黄色といったときに山吹からレモンとかまでいろいろあるように、夏というのもいろいろあって、お盆とかかなり好きです。"Fireworks"は詞に夏が明示されているわけではないのですが、わたしには幻想的なお盆メンタル・ソングとしか考えられません。海外にお盆はないでしょうが。

木津毅

R.E.M. - Nightswimming

 昔から自分が惹かれてきたのは、夏の盛りよりも夏の終わりの歌でした。それは青春そのものよりも終わっていく若さ、すなわち中年に惹かれるのと似ている......かもしれません。真夏を謳歌するのと同じくらい、夏を無駄にした......という感覚をポップ・ソングは拾ってきたようにも思えます。
 R.E.M.のこのナンバーは彼らの代表曲のひとつで、もう去ってしまった誰かのことを思いながら、晩夏の夜にひとりで月に焦がれながらプールで泳いでいるという、「夏を無駄にした」度では抜きん出た名曲です。リリカルな風景描写はマイケル・スタイプの詩人としての才能を見せつけ、それ以上にこのポップ・ソングに美しいフォルムを与えています。「君のことを、僕は知っていると思っていた」......悲しすぎますが、それがとても穏やかに歌われることで、夏の終わりの感傷が許されるようでもあります。「9月がじきにやって来る」......。

國枝志郎

Chapterhouse - Summer Chill

俺と言えばシューゲイザー、シューゲイザーと言えば俺(反論上等)なんで。チャプターハウスが1stアルバム『Whirlpool』と2nd『Blood Music』の間に発表した神シングル「Mesmerise」(俺的にはスロウダイヴのシングル「5 ep」と並ぶ究極ロッキン・チルアウト)収録の1曲。2ndアルバムにはもうひとつサマーネタで「Summer's Gone」というナンバーもあるけどやっぱりこっちでしょう。タイトルも最高!!!!!!!!!! あーチルりたい。

Photodisco

H Jungle with t - GOING GOING HOME


夏といえば、やっぱりこの曲ですね。お盆に帰省した際、実家でビールを飲みながら聴きこうと思います。

オノマトペ大臣(Maltine Record/TJNY)

Phillis Dyllon - Nice Time

夏になるたびに学生時代を思い出します。

白い太陽、青い海、赤く日焼けしたあの子の細い腕
楽しいはずなのに何故だか寂しい、いつか終わってしまう刹那的な煌めく青春の夏。。。

どこかの誰かが過ごしているそんな極彩色の夏を尻目に、マジで永遠に続くんじゃないかと思うような怠惰な余暇を、クーラーガンガンの部屋でカーテンを閉め切り、ゴローンと横になって手に持った黒い文字の羅列を追うことでやり過ごしていたしょっぱい夏。
ベッド横に置かれたローテーブル上に、氷が沢山入った透明なグラスが置かれ、カナダドライのジンジャーエールがパチパチとはじけると、西宮の六畳間にも、にわかに夏の気配が漂います。
近所の外資系CDショップで買ってきた3枚組3000円ちょっとのTrojanのCalypso Box Setをミニコンポにセットすると、いよいよ目の前に常夏のトリニダードトバゴが広がるのでした。
内容の薄っぺらい新書を読み進め、40ページぐらい行ったところでPhillis Dyllonの歌声が響き渡ると、心は完全に夏の夢の中。
新書をベランダから捨て去って、背中の羽をパタパタとして舞い上がり、ヤシの木の上の方に座り心地よく揺られたものでした。

それから4年が過ぎた、2012年の夏。
永遠に続きそうだった怠惰な夏は、心のアルバムの中で色褪せるどころか、それなりに輝いて見えます。

今年の夏はどのように過ごそうか、とりあえずPhillis Dyllonを聞いて、西宮のトリニダードトバゴで考えようと思っております。

(最近サンクラに上がってたCoconuts Beat Clubによるmoombahton editもすごく好きです。https://soundcloud.com/coconuts-beat-club/nice-time-coconuts-beat-club )

赤塚りえ子

Brian Jones Presents the Pipes of Pan at Joujouka

44年前の7月29日、ブライアン・ジョーンズは真夏のジャジューカ(モロッコ)に行きMaster Musicians of Joujoukaの演奏を現地で録音した。
彼の死の二年後にリリースされたこのアルバムでは、ブライアン・ジョーンズというフィルターを通したジャジューカを体験できる。
今年6月、ついにそのMaster Musicians of Joujoukaの生演奏を現地で体験してきた。
全身にものすごいグルーヴ浴びて、何本もの生ガイタ音が立体的に脳を直撃、そのまままっすぐに脳ミソを突き抜けた。
ブライアン・ジョーンズがなぜジャジューカにハマったのか?一瞬にして体でわかった。
来年の夏もまたジャジューカで、4000年のダンスミュージックで踊りまくってくるゼィ!

Yuji Oda (The Beauty/Cuz Me Pain)

No Joy - Negaverse

カナダの男女3人組バンドNo Joyが送り出す12インチシングル。
全てが正しいと思わせるオルタナギターと儚いボーカルが夏の荒野を駆け抜け交差する疾走シューゲイズ。
2012年の夏はこれ。

YYOKKE (White Wear/Jesse Ruins/Cuz Me Pain)

Junei - You Must Go On

夏はこんな涼しげな曲を何も考えずにずっと聴いていたいです。

Nobuyuki Sakuma (Jesse Ruins/Cuz Me Pain)

Prurient - There Are Still Secrets

夏に熱いものを食べる的な感じで暑苦しい曲も聴きたくなります。

寺尾紗穂

サニーデイ・サービス -"海岸行き"
saigenji - El Sur

夏の終わりを歌う以下の二曲が好きですが、youtubeにはあがっていないようです。

サニーデイ・サービス「海岸行き」
サニーデイの曾我部さんのさらりとした感触の歌詞は自分にはなかなか書けないもので、よく羨ましく思います。いつかカヴァーしたい曲。

saigenji「El Sur」
「El Sur」はサイゲンジさんと歌ったことがありますがもう一度歌いたいです。
「南へ帰るなら僕のさみしさもその翼に乗せていっておくれ」とツバメに語りかける歌詞が切ないです。サイゲンジさんのライブというとアップテンポの曲でノセたりアゲたりしてくれるイメージがありますがスロウで穏やかな曲にも名曲が多いです。

洋楽で好きなJudee Sillの歌詞を読み直したら「Jesus Was A Cross Maker」がちょっと夏の気配でしたので挙げておこうかと思います。
クラシック的な手法を織り込むというのは色んな人がやっていることなのだろうと思うのですがこの人の場合、その織り込み方がとても大胆で生き生きとしていていつ聞いても新鮮な感じを受けます。


San Proper - ele-king

 暑いし......何も考えたくないのでフィジカル・リリースのあるものから今年前半のベスト・シングルを選んでみたら、

■Jam City / The Courts (Night Slugs)
https://soundcloud.com/pdis_inpartmaint/jam-city-classical-curves-the
■Kodiak / Spreo Superbus (Numbers)
https://soundcloud.com/nmbrs/kodiak-spreo-superbus-actress-girl-unit
■Mieux / Next Episode (Up My Alley )
https://soundcloud.com/upmyalley/sets/mieux-alleyx001/
■San Proper / Animal Ricardo Villalobos Remixes (Rush Hour)
https://soundcloud.com/rushhourrecords/sets/san-proper-animal-12/
■Swindle / Do The Jazz (Deep Medi Musik)
https://soundcloud.com/sbdubstep191/swindle-do-the-jazz-deep-medi
■Eltron John / Electric Worldlife (U Know Me)
https://soundcloud.com/u-know-me-records/eltron-john-electric-worldlife
■Dauwd / What's There (Pictures Music)
https://soundcloud.com/dauwd/whats-there-pictures-music
■A.N.D. / Resonance EP (Hidden Hawaii LTD)
https://soundcloud.com/hidden-hawaii/hhd-014-a-n-d-resonance-ep
■Daniel Stefanik / Dambala Experience #2 (Dambala Experience)
https://soundcloud.com/daniel-stefanik/sets/dambala-experience-2/
■Kaiju / Close Break (Osiris Music UK)
https://soundcloud.com/osirismusic-uk/kaiju-close-break-release-date
次点でKahn & Neek / Percy (Bandulu)か、October / String Theory(Simple)か。

 ......こーんな感じかなーと。自分でも驚くのはUKガラージやベース・ミュージックに混ざって、いまだに「ヴィラロボス・リミクシィーズ」などというものが入ってしまうこと。この世界は浜崎あゆみとレイディオヘッド、そして、リカルド・ヴィラロボスで止まってしまったのかもしれない(暁美ほむらがいちいち元に戻しているのでなければ......)。

 シャクルトン"ブラッド・オン・マイ・ハンド"やDJスニーク"デルタ・トリッピン"もまだ記憶に新しかったヴィラロボスが春先にリミックスを手掛けたサン・プロパー"アニマル"を長々と聴いていて(例によって2ヴァージョンで25分ぐらいある)、この奇妙な技はやはりヴィラロボスによるもので、オリジナルはそれほどのものではないのだろうと勝手に決めつけていた。なので、デビュー・アルバムがリリースされてもスルーのつもりが......

 全曲試聴→https://soundcloud.com/rushhourrecords/sets/san-proper-animal/(実際の曲順とは全然違います)

 ......ははは。要するに音楽をショッピングするのがリッピングやダウンロードよりも好きなんですねw。すべては80年代のせいです。つーか、いまだに80年代を生きているのかも(だっせー)。

 いまひとつ狙いのわからないスリーヴ・デザインに包まれた『アニマル』は退屈な4つ打ちで幕を開ける。シカゴ・アシッド風のリフが悪い予感を打ち砕き、激しい盆踊りへと突入。ほとんどの曲に呪文のようなヴォーカルが入り、"カラーズ&カラーズ"ではブレイクビートとも相性がいいことを印象づける。巷ではミニマル・テクノとして売られているようだけれど、プリンスとグリーン・ヴェルヴェットが出会ったかのような"デジャ・ヴー"といい、なんというか、ゲットー・ソウルとでも呼んだ方がしっくりくるような気がしてくる。ためを効かせた"ウォーター・キャッスル"から"アニマル"のオリジナルへ進むとシカゴ・アシッドをクールにアップ・トゥ・デイトさせた未知の感性が広がりはじめ、もしかしなくてもヴィラロボスが手を加える以前に、しっかりと構築されたものがあったことを思い知らされる。アルバムの後半はスウィング感が増し、"シェルズ"では少し毛色を変えて異様なほど雰囲気のあるアコースティック楽器が多用される(歌詞の内容がヘヴィイすぎるのでインナーには記載しないとあるけれど、要するにインストゥルメンタル)。
 〈ラッシュ・アワー〉はシカゴやデトロイトなどクラシックの再発にも務めるレーベルだけあって、伝統と現在を行き来するのがとても上手い。あるいはそういうイメージをこつこつと築き上げてきた。カール・クレイグとトム・トラーゴのリレイションもそうだし、初期のコンフォースやBNJMNなどを経て、ここにサム・プロパーが加わったことは自然な流れといえる(金の流れかもしれないけど)。ちなみにミックスは全曲、ヴィラロボスが手掛けている。かつてデトロイト・テクノ・リヴァイヴァルを促した『ヴァーチュアル・セックス』をリリースしたのもオランダだったけれど、ここからまたデトロイト・テクノが新たな次元に突入すると予想することは安易だろうか(つーか、「ここから、フィッシュマンズを連想するのは安易だろうか」って、安易だよ、安易! 二木はまた逮捕されて下さい)。

interview with Ariel Pink - ele-king

僕が心と呼んでいるものには
どんなものが詰まっているんだろう
"ブライト・リット・ブルー・スカイ"

  赤ワインと餃子、それだけではない。スパゲティと唐揚げもあった。エレベーターから出てきた彼はよろめきながら、コップでワインを飲み干し、餃子を手づかみで貪り、次にスパゲティと唐揚げを同時に口に入れた。箸もフォークもなかった。
 ステージが思うようにいかなかったらしい。機嫌も悪かった。猫背で、うつろな目をした彼に挨拶した。握手はしなかった。紙eke-kingの最新号を渡す。受け取り、ぼそりと「グライムス」とだけ言った。「ジュリア・ホルターも載ってる」と教えると初めて笑顔を見せた。「友だちなんだ」と彼は言った。

 アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティの作品を初めて聴いたのは2004年のこと。3枚目のアルバム『ザ・ドルドラムス』がその作品だった。アニマル・コレクティヴが主宰していた時代の〈ポー・トラックス〉からのリリースで、当時の僕はアニマル・コレクティヴをよく聴いていた。欧米のメディアでも注目が高まりつつある時期だった。先を行くライターたちは『サング・トングス』と同時に『ザ・ドルドラムス』を持ち上げはじめた。僕はそれに乗せられて買った。

取材のため、橋元から『スケアード・フェイマス』(2007)と『ウォーン・コピー』(2003)の2枚を借りた。餃子にぱくつくアリエル・ピンクを前に、とりあえず『スケアード・フェイマス』をテーブルの上に出す。「それどうしたの?」と彼はびっくりしたようだった。「日本で売ってるの? 信じられない」、そんな感じだった。

E王
Ariel Pink's Haunted Graffiti - Mature Themes
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取材の2時間前。恵比寿のガーデンホールの舞台では、アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティが演奏していた。彼らの音楽を聴きながら、僕は1970年代初頭のサイケデリック・ロックを思い出した。たとえばデヴィッド・アレンの『バナナ・ムーン』(1971)だ。あの時代特有のキラキラした夢のサウンド。やわらかいトリップ。しかし、アリエル・ピンクのサイケデリアにおいて、あんな風な楽天主義はない。

 いまいちど、ポップの意味を問うてみる。ポップとは......現実に対する大衆からのユートピア的な抗議なのか、現実との妥協の果てに生まれ、想像力を矮小化する消費物なのか。『バナナ・ムーン』は前者である。『マチュア・シームス』はそのどちらでもない。アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティの新作は、ポップにおけるディストピア的な抗議である。

――ちなみに取材日は、彼の34回目の誕生日だった。

印象深かった誕生日はないね。10歳くらいの頃から、敢えて誕生日を覚えないようにしている。そう決めたことだけを記憶している。僕の両親はあまり宗教心とかがないんだ。

お誕生日おめでとうございます。誕生日と言えば、いままでで印象深かった誕生日はありますか?

アリエル:(実に素っ気なく)ないね。10歳くらいの頃から、敢えて誕生日を覚えないようにしている。そう決めたことだけを記憶している。

ははは......

アリエル:僕の両親はあまり宗教心とかがないんだ。

『スケアード・フェイマス』のインナーでは、アモン・デュールIIの『地獄』(1970)のジャケをコラージュしていますよね。

アリエル:そうそう、あのカヴァー、僕自身の写真をアモン・デュールの上にかぶせたやつね。

どうしてこの忌まわしいヴィジュアルを使おうと思ったんですか?

アリエル:これがすごく良いアルバムだからだよ。僕の銀行の口座のパスワードはみんな「Amon Duul II」さ。

はははは。で、アモン・デュールの何が好きですか?

アリエル:楽園に向かうデュール』(1970)とか、「Eternal Flow / Paramechanical World」(1970)とか。あと〈キャプテン・トリップ〉ってレーベル知ってる?

もちろんです。〈キャプテン・トリップ〉をやっている人も知ってますよ。

アリエル:へー、君の知り合いが経営してるの? あとは〈スカイ・レコーズ〉もいいよね。

〈スカイ・レコーズ〉も良いですよね。ちなみに、ケヴィン・エアーズ、デヴィッド・アレン、シド・バレットの3人のなかでは誰が好きですか?

アリエル:(即答)デヴィッド・アレン。

それはなぜ?

アリエル:彼はみんなの良いところを集めたみたいなんだ。3人のなかでいちばん何をやっているのかよくわからないしね。彼はシド・バレットやケヴィン・エアーズと同じくらい素晴らしいけど、ケヴィン・エアーズは保守的すぎるし、シド・バレットは商売っ気がなさすぎる。でもデイヴィッド・アレンはすべてのバランスが取れているんだ。もっとも、彼がいちばんイカれてるけどね。

はははは。新作はメロディが際立っているというか、前作以上に心に残るメロディがありますよね。

アリエル:ああ、そうだね。

70年代初頭の、いわゆるプログレッシヴ・ロックと呼ばれていた音楽と70年代初頭のA&M系のソフト・ロックのようなものが混じり合っているような印象を持ったのですが。

アリエル:うん、そう思う。でも......そうだね。

その頃の音楽でとくに好きだったのは?

アリエル:デヴィッド・アレンの『バナナ・ムーン』。

ちょうどインタヴューの前、あなたのショウの後に僕たちは『バナナ・ムーン』の話をしていたんですよ。

アリエル:ああ、『バナナ・ムーン』は大好きだね~。「♪well big bad businessman~"(と、ゴングの"Pretty Miss Titty"を歌いだす)

はははは。

アリエル:ほかには......ピーター・ハミルだね。ヴァンダー・グラフ・ジェネレイターの諸作、もちろんカンも大好きだよ。ほかにもいろいろあるな、ザ・シャッグスもお気に入りだよ。

ガールズ・バンドですよね。

アリエル:そうそう、アパラチア山脈出身のさ。とくに2枚目のレコード『The Shaggs' Own Thing』がまたいいんだ。"マイ・キューティ"とか、"マイ・パル・フット・フット"、カーペンターズのカヴァーの"イエスタデー・ワスモア"とか......1枚目のアルバムじゃなくて、2枚目のアルバムのほうが好きなんだよ。それともちろん、アリス・クーパー!

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シェーンベルク、ジョン・ケイジ、シュトックハウゼンなんかの前衛的な音楽も、何度も何度も聴いていればポップ・ソングみたいになってくる。曲を覚えて、曲を聴きながら次にどんな展開がくるかを覚えるようになると、それはその人にとってのポップ・ソングになるんだ。

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アリス・クーパーは良いですよね! ところで、ゴングあたりの音が今回のアルバム『マチュア・シームス』に大きく影響を与えているんでしょうか?

アリエル:いや、こういう音が好きなのはずっと昔からだよ。90年代に買い集めていた〈キャプテン・トリップ〉の再発盤が僕にとってすごく大切だった。〈キャプテン・トリップ〉から出ているCDを聴いているうちに僕も自分で音楽を作ってみようと思うようになったんだ。だからいままで僕が作ったすべてのレコードがそういった音楽に影響されているとも言えるね。〈キャプテン・トリップ〉は、その時代の音楽(1970年代初頭のクラウトロック)に対する日本人への再評価にも繋がっているんだよ。

へー、ところであなたはどっかの取材で、「前作(『ビフォー・トゥデイ』)が本当のファースト・アルバムである」というような言い方をしていたそうですね。たしかに『ビフォー・トゥデイ』はあなたが初めてバンド・サウンドで録音したアルバムですが、となると『ザ・ドルドラムス』などの以前の作品、もしくは今回のニュー・アルバムはどのような位置づけになるんでしょうか?

アリエル:僕が言ったのはつまり、どのレコードもファースト・アルバムみたいに感じるっていうことなんだ。僕が新しいアルバムを作って、その作品によって僕のライヴに来てくれる人が増えると、そういう新しいファンにとってはそれが初めて僕のことを見る機会になる。だからそれが初めてみたいに感じるんだ。僕はいつも(自分の)音楽を聴くとき、それを初めて聴いているつもりで聴くんだ。人びとが僕の音楽を初めて聴くときを想定してね。だから、どのアルバムもファーストみたいな感覚なんだよ。今回のアルバムだってファースト・アルバムみたいに感じるよ、ただ今回は"Round and Round"ほどの大きなヒット曲は出ないだろうと思うけどね。

ある種のMOR(中道路線)、さっき言った70年代のソフト・ロックはどれほど意識しましたか?

アリエル:君がソフト・ロックと呼んでいる音楽は、僕にとっての実験音楽だね。たとえば、トッド・ラングレンがホール&オーツのプロデュースをしたのなんかは、僕にとってはソフト・ロックではなくてエクスペリメンタル・ミュージックだ。ソフト・ロックはエクスペリメンタル・ミュージック的な発明なんだよ。スティーリー・ダンはいろいろな要素を加えてスムーズな音楽を作ったソフト・ロックの発明者だね。

ほほー、なるほど。いまあなたの言った「実験的」というタームを別な言葉で置き換えるとどのようになるんでしょう? 一般的にソフト・ロックというのは中道路線と言われますが、あなたからしたらそれは誤解で、よりエクストリームなものだということでしょうか?

アリエル:そうそう、その通り。ソフト・ロックはエクスペリメンタル・ミュージックの発明なんだ、ポップ・ロックと同じようにさ。ポップ・ロックと言われている音楽、例えば60年代のものとかも......僕はビートルズでさえ多少前衛的だと思うんだよ、ま、ちょっとだけだけどね。それこそキャプテン・ビーフハートなんて、60年代にすごく前衛的なことをやったり、いろいろなことを発明していて、それを続けていた。

つまり、あなたはそういったエクスペリメンタルな音楽に影響を受けながら、それをポップに変換しているわけですね? あなたにとってポップとはどのようなものなんでしょう?

アリエル:いや、違う。僕自身はエクスペリメンタルに比重を置いているんだ。だから僕のやっているのがポップだと思う人たちは、僕の音楽と比較している対象を間違っている!

なるほど。しかし、さっきもあなたも認めたように、今回のアルバムではあなたはわかりやすい、どこかで聴いたことあるようなメロディを意識されている。例えば"マチュア・シームス"などは僕は1~2回聴いただけでメロディを覚えてしまいました。そのわかりやすさ、覚えやすさを「ポップ」と呼んでもいいんじゃないかと思えるのですが。

アリエル:それは誤解だよ! メロディを覚えるというなら、例えばシェーンベルク、ジョン・ケイジ、シュトックハウゼンなんかの前衛的な音楽も、何度も何度も聴いていればポップ・ソングみたいになってくる。曲を覚えて、曲を聴きながら次にどんな展開がくるかを覚えるようになると、それはその人にとってのポップ・ソングになるんだ。ポップ・ソングっていうのを3つのコードで3つのヴァースがあって、3つのサビがあって......ていうものだと考える人たちもいるけど、僕にとってはそういうことじゃない。アヴァンギャルドはポップという要素を長いあいだ吸収してきているから、単純でキャッチーでわかりやすいものが必ずしもポップとは言えないと思う。

あなたにとってシュトックハウゼンもバート・バカラックも同じようなものであると?

アリエル:僕にとってはどちらも前衛的だね。どちらも芸術性が高いし、それがアヴァンギャルドのひとつの定義でもある。

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ブルース・スプリングスティーンは言ってることが極端すぎる。エクスペリメンタルな精神というモノを知らない。パティ・スミスは大嫌いだね。僕にとってはでたらめばっかりで、ベタで、そして陳腐に感じられるんだ。

なるほど、あなたの音楽に対する考えはわかりました。それでは歌詞に関してはどうでしょう? 『ビフォー・トゥデイ』がホステスから出たので、僕たちは初めてあなたの歌詞を読むことができたんですが、そうとう捻くれてますよね。たとえば金持ちを小馬鹿にした"ビバリー・キルズ"とか、政治をからかった"レヴォリューション・ライ"など相当屈折した歌詞で興味深いと思ったんですが、言葉の面で影響を受けた人物などがいれば教えてもらえますか?

アリエル:うーん......(しばらく沈黙)筋が通っている人たち......ドストエフスキーとか......。僕自身は物語っていうものにとても興味があるよ。うーん、僕はときどき歌詞を書かなきゃいけないけど、あまりそれについて深くは考えないんだ。だからあんまり深読みし過ぎて背景について考えすぎるのもどうかと思うけど......でもトーマス・ラガーディやピーター・ウィッセルゼフ(註:読み方間違っているかもしれません。このふたりの名前をご存じの方、教えてください)とかが好きだよ。

知らないですね。その人たちは小説家ですか?

アリエル:哲学者だよ。

思想家が好きなんですか?

アリエル:良い文章を書く作家なら誰でも好きだけど、とくにしっかりと論理立った主張をして論証をする人が好きだよ。自分自身はまったくそういうタイプじゃないけれどね。

では、三田格的な質問ですが、フロイトとドゥルーズでは?

アリエル:(即答)フロイト!

ほんと?

アリエル:ははは、こう見えても僕は保守的なのさ。

強い父親を倒して逞しく成長していくアリエル・ピンクはまったく想像できないんですけど(笑)。

アリエル:僕は(精神分析家の)ジジェクみたいなんだ、悪魔の擁護者に回ってしまうんだよ。まぁはっきりとしたことは言えないけれど、そういう意味では僕はドゥルーズであるとも言える。ただ僕は究極的には、(フロイトのエディプス・コンプレックスをさして)人間はみんな性に傾倒しがちだと思うんだ、とくに男性はね。

性に絡めていくのが良いんですか?

アリエル:僕らが最初に出てくる性的な問題を避けて、エディプス・コンプレックスを避けるようにするというのはいいことだと思う。僕自身は、ユングなんかよりもフロイトのほうがずっと信じられるんだ。僕にとってのユングは抑圧さ、性的にも抑圧されている。ユングはデヴィッド・クローネンバーグの映画(『危険なメソッド』)みたいに、「これはエディプス・コンプレックスについてであって性についてじゃない、性がすべてじゃないんだよ、フロイト!」って言うことができないから抑圧されているんだ。でも実際のところ、性っていうのは僕たちの人生にはじめから刷り込まれているものだろ?

ははは......。

アリエル:僕がよく言うことなんだけど、みんなでたらめだらけなんだ! そしてでたらめな奴ほど説得力があるんだよ。とはいっても、良い議論っていうのはそれ自体価値のあるものだけどね。

『危険なメソッド』は日本ではまだ公開されていないんですよ。ちなみにクローネンバーグではそれ以外の作品も好きですか?

アリエル:全部好きだよ、『ヴィデオドローム』、『クラッシュ』......。だけど『危険なメソッド』がとく好きだね、僕が観たなかでいちばんクローネンバーグらしい映画だと思う。それに彼の映画のなかでもとくに個人的な内容だ。映画のなかで提起されている問題は歴史上の物語のなかで上手く語られていて、彼自身すごくその物語に没頭してこの映画を作っていたんじゃないかと感じられるね。

今回のアルバムにおいて、歌詞の面での変化はありますか?

アリエル:ないね、僕は歌詞のことをあまり気にしたことがないから。いつもぎりぎりまで歌詞を書かない。そのことを考えもしないで待っていて、本当にぎりぎりのところで決まった歌詞に落ち着くんだけど、それが僕のなかの世界を表現するいちばんいい方法だと思うんだよ。だからあまり歌詞のことは考えないけど、それがたぶん、いちばん良いやり方だと思っている。

アルバムのタイトルが「Mature Themes」となったのは?

アリエル:バンドがそういう風に決めたからさ。ホントは『Farewell American Primative(昔ながらのアメリカ人よ、また会う日まで)』というタイトルにしたかった。でも、たまたまニール・ヤングとダン・ディーコンが、同じ月にタイトルに「アメリカ」って言葉の入るレコードをリリースしたんだけど、そういうのと関係があると思われたくなかった。宣伝上よくないしね。

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音楽が必ずしも多くのことをできるとは思っていないよ。現代では、革命は音楽とは別なところで起こっている。コミュニケーションや情報といったところでね。僕は僕自身らしくいて、自分の主張をもっと多くの人に届けるってことだね。

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ブルース・スプリングスティーンやパティ・スミスについてはどう思いますか?

アリエル:ブルース・スプリングスティーンは言ってることが極端すぎる。エクスペリメンタルな精神というモノを知らない。

パティ・スミスは?

アリエル:大嫌いだね。

ええええええ! 何故? どうして?

アリエル:僕にとってはでたらめばっかりで、ベタで、そして陳腐に感じられるからさ。

えー、日本人の僕からするとああいう人がいるアメリカって良いなーと思うし、だいたいああいう風に矢面に立ってくれるミュージシャン、彼らのような存在こそアメリカの音楽文化における誇りでしょう?

アリエル:んんん......

あなたは前作で「革命なんて嘘さ、革命するくらいなら逃げろ」と歌っていますが、「音楽で社会を変える」という発想があなたにとって陳腐に感じられるのですか? それとも彼らのやり方が好きになれないんですか?

アリエル:彼らのやり方だね。人びとの「革命」というものへの考え方を改悪していると思う。そもそも革命っていうのは理解するのが難しい概念だよ。僕の意見では、革命というのはとてもマルクス的なんだ。そもそもマルクスの共産主義っていうのは、革命を呼び起こすことで、それを果てしなく続けることだ。だからある意味、僕にとって共産主義というのは継続的な革命なんだ、アナーキズムともよく似ている。だからすごく難しいことだとは思うけれど......でも、僕らが革命っていう概念を複雑化させるのはいいことだと思うよ。

あなたにとってスプリングスティーンやパティ・スミスは単純過ぎるんですね?

アリエル:そうだよ。逆に言えば、そもそも革命なんてしょっちゅう起きている必要はない。僕が思うに、マルクス主義は、ひたすら革命を作り出すものとして理解されている、パティ・スミスがやっていることがそうだよ。もしかしたら僕がマルクスを誤解しているのかもしれないけどね。だけど、僕がマルクスに賛同するのは、ある意味では社会の発展するままに技術が発達して、より高度な産業的な社会へと向かっていけば、そこには共産主義的な傾向が生まれるという観点においてなんだ。社会が発達するほどに共産主義的傾向が強くなるとしたら、いいことだ。それによってもっといろいろな場所のたくさんの人に利益がおよぶようになるからね。そうだろ? 誰も搾取される対象がいないっていうのが理想だ。そう言う意味では共産主義は道理にかなっているとは思うよ。

うーん、もっと話したかったけど、もう時間なんで、最後の質問です。あなたが思う、音楽にできうる最善のこととは何だと思いますか?

アリエル:音楽が必ずしも多くのことをできるとは思っていないよ。現代では、革命は音楽とは別なところで起こっている。コミュニケーションや情報といったところでね。僕に何ができるかってことでいうと、僕は僕自身らしくいて、自分の主張をもっと多くの人に届けるってことだね。僕に注意を向けてくれる人たちもいるから。そして、議論や会話が生まれるんだ。もっとも、革命は1曲の神秘的なパワーから生まれることはない。そういうのはただの幻想さ。

「アメリカは自分たちを変えることに夢中になっている人の文明である」という言葉がある。取材でもっとも印象に残ったのは、言うまでもないことだが、僕が「ブルース・スプリングスティーンやパティ・スミス」という言葉を言ったときの彼の苦虫をかみつぶしたかのような表情、彼があまりにもストレートに彼ら社会派に「ノー」を言ったことだった。

『マチュア・シームス』は、『ビフォー・トゥデイ』とは比較にならないくらいに悪意に満ちている。収録曲のすべては耳のなじみの良いポップ・ソングだが、言葉は気が滅入るほどネガティヴで、狂っている。「夢のような防弾チョッキをまとってふらふら歩いてる/海向きの船は精子まみれの脳みそにちょうどいい」「バカット・ジャグジーワッドが君のケツを愛撫する/自殺団子が睾丸爆弾を投下する/テクニカラーで蹴っとばせ/相談はママにしろ/ユングやジークムント・フロイトみたいに/ブロンドを掌握した爆弾&死のフェラチオ/ペニス付きの女たちがシャブで大興奮だ」"キンスキー・アサシン"
歌詞だけ読めば三上寛......とういか、フロイトを弄んでいるのだろうけれど、『マチュア・シームス』は音だけ聴いていると、取材で言っているように甘々のMORテイストさえ強調する、キッチュなポップ・ミュージックだ。もしこのアルバムにキャッチコピーを付けるなら、「ジョン・ウォーターズが作詞したカーペンターズ」といったところだろうか。バッド・テイストやシニシズムを繰り返しているわけではない。アリエル・ピンクはたぶん、いや、明らかに新自由主義にも毒づいている。「やってられないよ、冬は悲しい気分になるから隠れてるんだ/身を切るような寒さに心が病みそうだし頭がおかしくなりそうだ/でもそれはぼくじゃない/北朝鮮こそがぼくだ/さようならアメリカ人/君のお金なんだから必要なときに使いなよ」"フェアウェル・ アメリカン・プリミティヴ"

そして、アルバムの最後に収録された"ノストラダムス・アンド・ミー"だ。あらゆる方角に毒をまき散らしたあと、この男はぬくぬくと心地よい夢に惑溺していく。ゆっくりと......恍惚のなかを......「間もなくこの忌々しい世界も/果てしない過去によって転覆させられるだろう/さようなら バイバイ」......。
 新世代(ミレニアルズ)からの抵抗である。コンセプトとして、実に興味深い"問題作"(と呼ぶに相応しいアルバム)の登場だ。

三田格先生のテクノ講座 - ele-king

 なんと、今週金曜日、横浜にて三田格のテクノ講座が開かれます! お題は1992年に〈ワープ〉が発表したコンピレーション『Artificial Intelligence』から20年ということで、1992年のテクノ・シーンについての講義になります。こんな機会、なかなかないので、ぜひ足を運びましょう!

モリィ・バーンズのHARD-BOP-HIGHSCHOOL
第15回: 再考 『Artificial Intelligence Series』

2012 7.27(Fri)黄金町 試聴室その2 https://cafe.taf.co.jp/live/index.html

進行:Morry Burns
ゲスト:三田格

開場 19:00/開演 19:30
※999Yen+order

●マンスリー・トーク・イベント「モリィ・バーンズのHARD-BOP-HIGHSCHOOL」その第15回は「再考 Artificial Intelligence Series」と題し、その画期的なリリースから今年で20周年を迎えるコンピレーション作『Artificial Intelligence』と、その関連シリーズ、並びに世界中でそれに呼応し、また同時多発的に発生したリスニング・テクノの動きについて再考していきます。

 1992年、イギリスはシェフィールドのレーベル"WARP"はコンピレーション・アルバムとして「Artificial Intelligence」発表します。それは当時まだ駆け出しだったPolygon Window(Aphex Twin),B12,Black Dog Production,FUSE(Richie Hawtin),Speedy J,Autechre等がコンパイルされた内容で、続いて彼らのオリジナル・アルバム作品がそのシリーズ作として次々とリリースされていきます。シリーズ作に共通する実験的かつリラックスしたトーン、フロアや喧騒からは意識的に距離をとったかのようなチル・アウト的傾向によりそれらは"リスニング・テクノ"と称され、後のエレクトロニック・ミュージックの進化に多大な影響を与えることとなります。

 92年当時のテクノ環境においては、The KLFが解散を表明しセカンド・サマー・オブ・ラヴが終焉を迎えるなか、The Orbが「Blue Room」にて全英シングル・チャート1位を獲得。そして『Selected Ambient Works 1985-92』にてAphex Twinがいよいよアルバム・デビューを飾り、新時代を担っていきます。
その当時のヨーロッパのダンス・フロアにおいてすでに一時代を築いていたベルギーの〈R&S Records〉は、突如その傘下にアンビエント・サウンドにフォーカスしたサブ・レーベル〈Apollo〉を設立。
カナダのレーベル〈Plus 8〉はコンピレーション作「From Our Minds To Yours Vol. 2」においてそれまでのハード・テクノ路線からリスニング・テクノ・サウンドに急接近。
アメリカはデトロイトのCarl Craigは自身のレーベル〈Planet E〉からのコンピレーション作『Intergalactic Beats』においてBlack DogやKirk Degiorgio等のヨーロッパのリスニング・テクノ勢とのコンパイルにも成功します。
一方ではドイツのPete Namlookがレーベル〈FAX+49-69/450464〉を立ち上げ、凄まじいペースでチル・アウト作品をリリースしていったのもこの年からのこと。
またベルギーのレーベル〈BUZZ〉がコンピレーション『PANIC IN DETROIT』を発表するほか、これら1992年のシーンの動向を象徴する最重要作品としても『Artificial Intelligence』の存在は位置づけられるのです。

 当日はライターの三田格氏をトーク・ゲストとしてお迎えし、上記に羅列したアーティストに関連する音源を可能な限り紹介しながら、『Artificial Intelligence』のその今日に至るまでの影響力やサウンドの魅力についてをたっぷりトークしていく予定です。是非ご期待ください。
(Text by Morry Burns)

※入場料としては徴収致しません。終演時にお支払いください。内容に応じたご判断で結構です。999Yenとあるのはひとつの目安です。飲食物に関しては会場をご利用ください。

@試聴室その2
横浜市中区黄金町2丁目7番地先
045-251-3979

[アクセス]
●京浜急行電鉄「黄金町」駅下車 徒歩3分
●横浜市営地下鉄「阪東橋」駅下車 徒歩8分

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