「K A R Y Y N」と一致するもの

Elzhi - ele-king

 一時は J Dilla 脱退後の Slum Village にも在籍しながら、Black Milk がメイン・プロデューサーを務めた『The Preface』(2008年)によってアルバム・デビューを果たしたデトロイト出身のラッパー、Elzhi(エルザイ)。2011年には WIll Sessions をバック・バンドに従えて制作した Nas『Illmatic』のカバー作『Elmatic』がヒップホップ・ファンの間で広く話題を呼び、さらに2016年のアルバム『Lead Poison』を経て、3作目のオリジナル・アルバムとしてリリースされたのが本作『Seven Times Down Eight Times Up』である。日本のことわざ「七転び八起き」を直訳したと思われるアルバム・タイトルが示す、現在42歳である Elzhi のこれまでの人生の流れが本作に反映されており、前作『Lead Poison』では内省的かつナイーブな面も見せていた Elzhi であるが、メンタル的にも完全復活し、次のレベルへと完全にバージョンアップした姿を本作で披露している。

 多少ぶっきらぼうに語るイントロによって幕を開け、続く “Smoke & Mirrors” からラストの “JASON” まで、決して大袈裟な表現ではなく、捨て曲は一つもない。本作のプロデュースを手がけているのは、ブルックリン出身で現在、ヴァージニアを拠点とするプロデューサーの JR Swiftz という人物で、これまで Conway The Machine や Westside Gunn の楽曲を手がけてきたそうであるが、おそらくヒップホップ・シーンではまだまだ無名に近い存在だ。SNSを通じて JR Swiftz が Elzhi へ直接コンタクトを取ったことによって今回のコラボレーションがスタートしたとのことだが、まるで人知れず眠っていたお宝のように光り輝く JR Swiftz のビートに Elzhi が強く刺激を受けたことで、このアルバムがこれほどまでに高い水準の作品になったのは疑いようがない。

 J Dilla や Black Milk に強い影響を受けたという JR Swiftz のビートが Elzhi のラップと相性が良いというのは至極当然のことではあるが、思わずヘッドバンギングしたくなるような太く響き渡るドラムにバラエティに富んだサンプリング・サウンドを乗せて作られたビートに対して、Elzhi は感情の強弱をつけながら、自らの経験を踏まえたドキュメンタリーから映画に着想を得たストーリーテリングまで、さまざまなテーマを横断しながら極上のラップを展開する。本作の何が特別なのかを言葉に表すのは非常に難しいのだが、この二人を掛け合わせることによって特別な化学反応が起きていることは、アルバムを一聴すればすぐに分かるだろう。特にアルバム前半部、“Smoke & Mirrors” から “Light One Write One” までの4曲は完璧すぎるほどの流れで、30代後半以上の日本語ラップ・ファンであれば “Light One Write One” のサンプリング・ネタにニヤリとする人もいるに違いない。

 本作によって JR Swiftz がプロデューサーとして今後大きく飛躍することは間違いなく、そして Elzhi 自身のアーティストとしての第二章のはじまりさえも感じさせる素晴らしいアルバムだ。

Sleaford Mods/スリーフォード・モッズ - ele-king

 ♪ウィ・アー・モッズ、ウィ・アー・モッズ、ウィアー、ウィアー、ウィ・アー・モッズ♪ではありません。時代は、♪スリーフォード・モッズ、スリーフォード・モッズ、スリーフォー、スリーフォー、スリーフォード・モッズ♪です(嘘だと思うなら、彼らのライヴ映像を検索すべし)。
 来春早々、新しいアルバム『スペア・リブス』をリリースするそのスリーフォード・モッズが、ビリーちゃんをフィーチャーした気怠く魅力的な“Mork n Mindy”に続いての新曲およびそのMVを先日公開した。曲名は“Shortcummings(ショートカミングス)”。
 「ショートカミングス」とは、まあ、「早漏」のことだが、この場合は、ロックダウン中にぬくぬくと家族旅行した政治家ドミニク・カミングスにかけられている。日本にもいます──緊急事態宣言下でちゃっかり会食した議員、性風俗に行った議員、現在でもこうした政治スキャンダルは後を絶たない(元首相がまさにその渦中でもある)。スリーフォード・モッズは、ふざけた政治家たちを巧妙な言葉遣いと煉獄ループをもって、容赦なく虐殺しているわけだが、これぞパンクってもんでしょう。自分がイギリス人だったら合唱してる。「ショート、ショート、ショート、カミングス〜」って。(訳せないよね、これは)

Rian Treanor - ele-king

 アフリカおそるべし。近年アンダーグラウンドで蠢動しつづけ、この2020年、一気にその存在が爆発した感のあるアフロ・テクノ。グライムともスピード・ガラージとも形容された前作『ATAXIA』で斬新なサウンドを呈示したUKのプロデューサー、ライアン・トレイナーもみごとその流れに乗っている。
 ちなみに、彼の名前の発音は「ライアン・トレイナー」が正しい。2019年末の来日時、直接本人に確認した。いわく、「アイルランド系の名前なんだけど、イギリスの学校にいたときでさえおれの姓を正しく発音できたやつはいなかった」(原口美穂訳、以下同)
 と、じつは去年、彼に取材する好運に恵まれたのだけれど、こちらの準備不足がたたり、うまく記事にまとめることができなかった。せっかくの機会なので以下、そのときの彼の発言も盛りこみながら書き進めてみたい。

 のっけから速すぎてびっくりする。冒頭 “Hypnic Jerks” は、これ、拍を倍でとってもまだ踊りづらいんじゃないだろうか。足でリズムを追ったら貧乏ゆすりになることまちがいなしなので、オフィスや電車で聴くときは注意したほうがいい。
 きっかけは2018年の9月。ウガンダの首都カンパラを訪れニゲ・ニゲ・フェスティヴァルに出演、4週間のレジデンシーを務めたライアンは、当地のプロデューサーたちと交流し大いに霊感を得ることになる。同フェスを主催する〈Nyege Nyege Tapes〉はタンザニアの高速ダンス・ミュージック、シンゲリを世に紹介したレーベルだ(詳しくは行松陽介によるレヴューを参照)。
 「あのフェスはクレイジーだった。アフターパーティをハリウッドっていう小さなバーでやったんだけど、ジェイ・ミッタ(Jay Mitta)、スィッソ(Sisso)、エラースミス(Errorsmith)、それからザ・モダン・インスティテュート(The Modern Institute)、そのみんなでDJをして、全員が速い曲をプレイしたがった。最終的に 220bpm とかになってさ(笑)。みんな超クレイジーになってた(笑)。めちゃくちゃ楽しかったし、あんな状態これまで見たことがなかった。だから、次の日にあのミックス(『FACT mix 672』)をレコーディングしたんだ。あの夜がインスピレイションになっているんだよ」
 かくしてまんまとシンゲリの魅力にとりつかれたライアンは、そのモードのまま新作の青写真となるトラックを制作。昨年末の来日ツアー中に最後の仕上げを終え、この『File Under UK Metaplasm』が生み落とされることになった(たしかに、WWWβでのショウはめちゃくちゃ速かったし、本作収録の “Hypnic Jerks” や “Metrogazer” もプレイされていたような覚えがある)。

 ただし新作は、シンゲリのみを武器に突っ走っているわけではない。リズムはほかのスタイルと折衷されている。たとえば3曲目や6~8曲目はダンスホールだし、4曲目はフットワークだ(カンパラ滞在時、うっかりジェイリンを 225bpm でかけてしまったところ意外に良かったんだとか)。リズムを練るとき彼は、「非左右対称なもの」を意識しているという。「たとえば4/4拍子は左右対称の構成。でも、リズムのなかにはパターンはあっても不規則なものもある。心臓の鼓動でいう不整脈とおなじ。ようは一定ではないものってこと」
 そこに、“Mirror Instant” の場合はロレンツォ・センニガボール・ラザール風の点描的な電子音が、“Opponent Process” や “Orders From The Pausing” の場合は90年代末ころのオウテカを思わせる上モノが乗っかっている。「オウテカとか、〈Planet Mu〉の作品のような風変わりなエレクトロニック・ミュージックからは大きな影響を受けてるよ」と彼は明かす。音楽のテイストにかんしては、父マーク・フェルからの影響も大きいという。ようするに、シンゲリとダンスホールとアヴァン・テクノの奇蹟的なアマルガム、それがこの『File Under UK Metaplasm』なのだ。
 ところで、タイトルにある「メタプラズム」ってなんやねんと思いググッてみると、「語音変異」なる訳語がヒットする。「新しい」はもともと「あらたしい」だったとか、秋葉原はもともと「あきばはら」だったとか、どうもそういうことばの変化を指しているらしいので(間違ってたらスンマセン、言語学に詳しい方教えて)、おそらく「メタプラズム」とは、シンゲリをダンスホールやUKテクノと混合し独自に変容させた今作の、音のあり方をあらわしているのだろう。
 「おれは、大衆性のあるサウンドとパンチの効いたサウンドの両方をつくりたい。たとえば、ダンス・ミュージックってだけで(じゅうぶん)人びとがエンジョイできる音楽ではあると思うんだけど、おれはそこにディストーションだったりスクリーミングだったり、そういうサウンドを入れたくなる。じぶんにとってはそれが聴こえのいいサウンドなんだ。そういったパワフルなパンチの効いたサウンドが大きなサウンドシステムから聴こえてくるのはすごくかっこいいと思う。だから、両方を混ぜ合わせたものをつくりたいんだ」
 ライアン、安心してほしい。この『File Under UK Metaplasm』では、リズム面でも音響面でも、まさにその願望が達成されているから。

 しかし、〈Planet Mu〉の快進撃はすさまじい。かつての『Bangs & Works』のときもそうだったけれど、一度波に乗るともう止まらないというか、スピーカー・ミュージックといいイースト・マンといい本作といい、今年は驚くべき作品がぽんぽん出てきている。25周年を迎えてもアグレッシヴな姿勢を崩さないレーベルなんて、そうそうないんじゃなかろうか……というわけで、12月25日発売の年末号にはレーベル主宰者マイク・パラディナスのインタヴューを掲載しています。
 アフリカだけじゃない。〈Planet Mu〉もまたおそろしいのだ。

ele-king vol.26 - ele-king

増ページ特別号!

オウテカ4万5千字インタヴュー
──ヒップホップ、海賊放送、そしてシュトックハウゼンからレイヴまでを語る
使用機材についてのコラムやディスクガイド付き

特集:エレクトロニック・リスニング・ミュージックへの招待
──1992年に提唱された概念を軸に、部屋で聴く電子音楽を再考する
「90年代サウンド」「追悼アンドリュー・ウェザオール」「ダブ・テクノ」「ヒプナゴジック・サウンド&エスケイピズム」「ジョン・ハッセル再評価」「モダン・クラシカル」の6つの切り口から必聴盤134枚を紹介、マイク・パラディナスのインタヴューも

2020年ベスト・アルバム30発表
総勢32組によるジャンル別2020年ベスト10&個人チャート
──この激動の1年、もっとも心に響く音楽は何だったのか?

目次

オウテカ──その果てしない音の世界を調査する

4万5千字インタヴュー (野田努)
part1/part2

[コラム]
オウテカの使用してきた機材を考察する (Numb)
作り手側から見たオウテカ (COM.A)
生成と創造性──オウテカとMax/MSP (松本昭彦)
 
[ディスクガイド]
オウテカ厳選30作 (河村祐介、久保正樹、COM.A、小林拓音、野田努、松村正人)

特集:エレクトロニック・リスニング・ミュージックへの招待

[コラム&チャート]
エレクトロニック・リスニング・ミュージック=家で楽しむ電子音楽の大衆化 (野田努)
多くのプロデューサーが「マッド・マイク病」にかかっていた──90年代テクノについて (三田格)
90年代ELM──わたしの好きな5枚 (河村祐介、KEN=GO→、小林拓音、佐藤大、杉田元一、髙橋勇人、野田努、三田格)

[ディスクガイド]
(河村祐介、小林拓音、野田努、三田格)
90年代エレクトロニック・リスニング・ミュージック
追悼アンドリュー・ウェザオール
ダブ・テクノ
ヒプナゴジック・サウンド&エスケイピズム
ジョン・ハッセル再評価
モダン・クラシカル

[インタヴュー]
マイク・パラディナス (野田努+小林拓音)

2020年ベスト・アルバム30
──selected by ele-king編集部

ベスト・リイシュー15選

ジャンル別2020年ベスト10

エレクトロニック・ダンス (髙橋勇人)
テクノ (佐藤吉春)
アンビエント (三田格)
ハウス (Midori Aoyama)
ジャズ (小川充)
USヒップホップ (大前至)
日本語ラップ (磯部涼)
インディ・ロック (木津毅)
アフロ・テクノ (三田格)

2020年わたしのお気に入りベスト10
──アーティスト/DJ/ライターほか総勢31組による2020年個人チャート

Midori Aoyama、天野龍太郎、磯部涼、荏開津広、大前至、小川充、小熊俊哉、海法進平、河村祐介、木津毅、クロネコ(さよならポニーテール)、坂本麻里子、篠田ミル(yahyel)、柴崎祐二、高島鈴、髙橋勇人、デンシノオト、tofubeats、德茂悠(Wool & The Pants)、ジェイムズ・ハッドフィールド(James Hadfield)、原摩利彦、ジャイルス・ピーターソン(Gilles Peterson)、二木信、細田成嗣、Mars89、イアン・F・マーティン(Ian F. Martin)、増村和彦、松村正人、三田格、yukinoise、米澤慎太朗

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interview with Isayahh Wuddha - ele-king

シティ・ポップ特有の一部のハイソな出来事や愛を聞いたり歌うのは、どこか虚しさでもあるし、満たされない欲求でもある。でもそれがエンターテイメントでもあるのだけど、決定的にあれはリアルではないし共感なんかできないと思っていました。

 京都の秘宝……いや、もしかするとこれは世界に誇る秘宝かもしれない。去年偶然に、本当に偶然に手にとった1本のカセットテープを繰り返し聴く中で、ふとそんな予感がした。そしてあれから約1年半、その予感は次第に確証になりつつある。

 Isayahh Wuddha(イサヤー・ウッダ)。台湾と日本にルーツを持ち、現在は京都に暮らすインナートリップ・シンガー・ソングライター。昨年、カセットテープのみでひっそりとリリースされたファースト・アルバム『アーバン・ブリュー』が口コミでじわじわと広がり、気がつくとジャイルス・ピーターソンがアルバム収録の “something in blue” をオンエアし、イギリスのディープ・ガラージ系レーベルの〈Wot Not〉からアナログ・レコードでもリリースされるに至った。BTS や BLACKPINK から、Yaeji や CHAI まで、メジャー/インディー問わず若き東アジア産のポップ・ミュージックが世界規模で注目を集め、細野晴臣や山下達郎の旧作もまた欧米の若い世代に聴かれている2020年。年齢も素性も謎に包まれた Isayahh Wuddha が飄々と国境を超えている様子は痛快極まりない。

 もちろん、DJやクラブ・ミュージックのフィールドでは古くから日本のクリエイターたちが海外で評価されていたし、YMO やサディスティック・ミカ・バンドのような例外もあるにはある。だが、竹内まりやの “Plastic Love” が近年、ネットミームで拡散されているような状況を目の当たりにするにつけ、この曲がリリースされた80年代にタイムラグなく海外でも聴かれていたらどうなっていただろう……と思う。そういう意味では、YouTube はもとより、SoundCloud や Bandcamp を通じ、全ての国の音楽にリスナーがどこからでも自在にアクセスできるようになった現代は幸せな時代だとも言えるだろう。実際、Isayahh Wuddha の『アーバン・ブリュー』が海外リリースされることになったのも、Bandcamp を通じてレーベルから直接連絡があったからなのだという。派手なプロモーションもない、ライヴも滅多にやらない、そんな彼が京都の自室でカセットテープのMTRでひっそりと作った曲が、世界中でじわじわと面白がられている状況は、そもそもが「海外リリース」という古くからの戦略概念をニヒリスティックに嘲笑しているかのようだ。

 公表されている Isayahh Wuddha の経歴は、「第二次世界大戦中に日本統治下の台湾にて徴兵され、衛生兵として日本へ従軍した台湾人の祖父と、日本人の祖母の孫にあたるということと、自身は日本に生まれ、現在は京都に暮らしていて、今も時々台湾におもむく……」ということくらい。2019年にトラックメイカーとして活動を開始し、自ら歌も歌いながら曲を作るようになった彼は、しかしながら、かなり確信犯的にポップ・ミュージック制作を視野に入れている。アーサー・ラッセル、プリンス、エイドリアン・シャーウッド、スリッツ、カエターノ・ヴェローゾ、デヴェンドラ・バンハート、クルアンビン、あるいはフランク・オーシャンやジェイムス・ブレイクあたりまでもチラつかせる豊かな音楽体験を武器としつつも、どこか人を食ったようなシニシズムとユーモアを掲げ、同時にロマンティシズムと妄想を抱えたまま、それでもポップな存在であろうとする開かれた感覚が魅力だ。

 そんな Isayahh Wuddha がセカンド・アルバム『Inner city pop』を12月16日にリリースする。ファーストはカセットテープでの販売だったが、今回はCDでの発売。ファンク、ダブ、トロピカリズモ、アシッド・サイケ、ディスコなど様々な音楽性を横断させながらも、深く語られることからスルリと抜け出してしまうような自嘲的軽やかさがさらに際立っているのがいい。曲そのものもキャッチーだし、呟くようにリフやフレーズに寄り添わせながらラップするメロウなヴォーカルも健在だ。

僕が目指しているのはマイケル・ジャクソンのようなキング・オブ・ポップ。より多く消費されて楽しんでもらえたら嬉しい限り。諸行無常

 タイトルにあるインナーシティについて、Isayahh 本人はこう話してくれた。
「日本の事、貧困、スラム化している現状です。通常インナーシティとくればマーヴィン・ゲイの “Inner City Blues” になりますが、ここはシティ・ポップにかけてポップを付けました。音楽家・プロデューサーの冥丁さんが言っていたことなんですが、架空の東京の音楽が溢れて、日本の地方どこでもそんな架空の東京の音楽ばかり鳴らしているという話がありまして。まさに2010年代のシティ・ポップ・ブーム、ヴェイパーウェイヴと重なるように思います」

 アルバムは11曲入り。ライヴでも使用するカセットテープMTRのチープな音像を生かしているからか、音自体は極めて不安定に揺らいでいる。ファースト以上にジャストなリズム、ジャストなメロディとは最も遠い位置で鳴らされ、アウトラインのハッキリした音処理を嫌って仕上げられたとんでもないアルバムだ。それは1970年代のタイやベトナムで制作されていた無国籍ファンクやソウルの持っていた妖しい歌謡性をも連想させ、ひいては Isayahh のルーツが台湾にあることを再認識させられる。実際、近年の台湾から登場している 9m88、落日飛車など新しい世代のシティ・ポップ系、AOR系アーティストとのシンクロもここにはあると言っていい。もっとも、Isayahh の作品は全くハイファイではないが。

「シティ・ポップ特有の一部のハイソ(上流社会)な出来事や愛を聞いたり歌うのは、どこか虚しさでもあるし、満たされない欲求でもある。でもそれがエンターテイメントでもあるのだけど、決定的にあれはリアルではないし共感なんかできないと思っていました。それは多様化ではなくてソフトに形骸化した音楽の様に感じます。アク抜きされたホウレンソウみたいな、一斉に栽培された味の薄い野菜みたいなものです。自分にとってそれらは美味しく感じませんでした。そもそも自分の音楽は歪で、世間一般からみて不完全だと思われるでしょうが、音像の歪さ、不完全さ未完成さが逆説的にリアルを体現していると思うのです。それは有名アーティストのデモ・テイクやライヴ盤に魅力を感じるのと同じかと思います。目に見えない息遣いがそこにあるような感覚なんです。自分はひねくれているから、誰かができる事を自分がやる必要はないと思いますし、自分が出せる音があるからそれをやると、音質もカセットテープMTRだから下手くそに音が割れたりする、そこも含めて誰も僕の音を鳴らす事はできないだろうって勝手な自信があります」

「僕が目指しているのはマイケル・ジャクソンのようなキング・オブ・ポップ。より多く消費されて楽しんでもらえたら嬉しい限り。諸行無常」と自虐的に話す Isayahh Wuddha。超絶にウィアードで超絶にミステリアスで超絶にフリーキーで、超絶にポップでチャーミング。新型ウイルスで人間ありきの社会が転覆した今、人間様の鼻っ柱を排除したところから始まる資本主義葬送行進曲のためのこのアンチ・ポップが、最後の消費文化の一つとして世界中でユラユラと鳴らされることを待ち望んでいたい。


プロフィール

■台湾と日本にルーツを持つ蠱惑(こわく)のインナートリップ・シンガーソングライター、Isayahh Wuddha(イサヤー・ウッダ)による 2nd Full Album『Inner city pop』が完成。
どこにも属さずサイケデリックに揺らぎながら鳴らされる、愛と狂気の密室ドラムマシーン歌曲集。

カセットテープとアナログレコードで発表された前作『urban brew』(2019)に引き続き、ヴィンテージのカセットテープMTRを用いて制作された Isayahh Wuddha(イサヤー・ウッダ)の2ndアルバム『Inner city pop』。演奏、録音はすべて本人が行った密室ドラムマシーン歌曲集がここに完成。本作にも収録の先行 7inch シングル「I shit ill」でもみられるサイケデリックなリズムに揺らぐ LO-FI サウンドは、音楽の深層に触れる喜びを想起させる。ミュージック・マガジン誌2020年9月号特集「日本音楽の新世代 2020」では注目の10組に選出され注目を集めながらも、未だ所在不明の彼から焙りだされる陰りを帯びた天然色の煙は社会と対峙するサウンドトラックになるだろう。

2nd album 『Inner city pop』
2020年12月16日リリース
形態:CD maquis-008
価格:2000円+TAX

01. In to r
02. for ever
03. agricultural road
04. i shit ill
05. celebretions
06. need
07. spacey
08. guitar
09. sexy healing beats
10. together
11. wait

JUN TOGAWA BIRTHDAY LIVE 2020 - ele-king

11/30にクラブチッタ川崎で行われたJUN TOGAWA BIRTHDAY LIVE 2020のアーカイブ配信です。20曲配信予定。
期間:12/18 19:00~12/21 23:59まで。
Streaming+、ZAIKO共に¥3500。
ZAIKOは、香港、韓国、台湾、マカオなどからでも視聴可能。中国本土も、VPN接続でなら視聴可能。

■Streaming+
https://eplus.jp/sf/detail/3352540001-P0030001

■ZAIKO
https://juntogawaoffice.zaiko.io/_item/333030


戸川純(Vo)
中原信雄 (B)
ライオン・メリィ (Key)
矢壁アツノブ (Dr)
山口慎一 (Key)
ヤマジカズヒデ (G)

■SET LIST
1.ヴィールス
2.ヒト科
3.ロリータ108号
4.夜が明けて
5.隣の印度人
6.肉屋のように
7.赤い戦車
8.孤独の男
9.フリートーキング
10.ヘリクツBOY
11.赤い花の満開の下
12.12階の一番奥
13.ヒステリヤ
14.諦念プシガンガ
15.蛹化の女
16.バージンブルース
17.バーバラ・セクサロイド
18.好き好き大好き
19.電車でGO

パンク蛹化の女

校了しました - ele-king

 恒例の『ele-king』年末号、無事校了しました。今年はコロナの影響で夏号を出せませんでしたが(かわりに臨増や別冊をたくさん刊行)、年末号はしっかり12月25日に発売します。

 先に白状しておくと、これまでより定価が50円アップしています。ただしそのぶんヴォリュームも増量、いつもより32ページ多い特別仕様です。

 巻頭は、鮮やかな新作を2枚も送り出したオウテカの超ロング・インタヴュー。なんと、4万5千字もあります。
 ふたりの出会いについて、ヒップホップやエレクトロについて、かつてやっていた海賊放送について、シュトックハウゼンについて、レイヴについて……どれもこれまで語られていない貴重かつわくわくする話ばかりで、カットしてお蔵入りにしてしまうのがもったいなかったため、ページ数を増やすことにした次第です。50円の値上げ、お許しください。

 それと関連して、特集は「エレクトロニック・リスニング・ミュージック」。1992年に提唱されたこの概念を周回しつつ、90年代リヴァイヴァル+コロナ禍の現在、家で聴く電子音楽の名盤たちにフォーカスした、一家に一冊の保存版に仕上がっています。アンディ・ウェザオールの追悼やマイク・パラディナスのインタヴューもアリ。

 そしてもちろん、お待ちかねの年間ベスト・アルバム30枚も発表。総勢32名のライター/アーティスト/DJたちによるジャンル別ベストおよび2020年の個人チャートも掲載しています。この激動の1年、もっとも心を揺さぶる音楽はなんだったのか?

 発売は12月25日、どうぞご期待ください。

【寄稿者一覧】
●オウテカ特集
 河村祐介、久保正樹、COM.A、小林拓音、Numb、野田努、松本昭彦、松村正人
●ELM特集
 河村祐介、KEN=GO→、小林拓音、佐藤大、杉田元一、髙橋勇人、野田努、三田格
●ジャンル別ベスト&個人チャート
 Midori Aoyama、天野龍太郎、磯部涼、荏開津広、大前至、小川充、小熊俊哉、海法進平、河村祐介、木津毅、クロネコ(さよならポニーテール)、坂本麻里子、佐藤吉春(TECHNIQUE)、篠田ミル(yahyel)、柴崎祐二、高島鈴、髙橋勇人、デンシノオト、tofubeats、德茂悠(Wool & The Pants)、ジェイムズ・ハッドフィールド(James Hadfield)、原摩利彦、ジャイルス・ピーターソン(Gilles Peterson)、二木信、細田成嗣、Mars89、イアン・F・マーティン(Ian F. Martin)、増村和彦、松村正人、三田格、yukinoise、米澤慎太朗

ARTHRALGIA presents KALMANEIT - ele-king

 これは激動の2020年を締めくくるのにふさわしいイベントかも。12/28(月)渋谷 CONTACT にて、「ARTHRALGIA presents KALMANEIT」と題されたパーティが開催される。GONNOと増村和彦によるデュオ、GONNO × MASUMURAYPY山本達久のコンビ、KOPY によるライヴのほかに、Romy Mats、Kotsu、Celter といった気鋭のDJたちが数多く出演。しっかり感染対策しつつ、豪華なラインナップを楽しもう。

オフィシャルHP:
https://www.contacttokyo.com/schedule/arthralgia-presents-kalmaneit/

Brandee Younger & Dezron Douglas - ele-king

 ハープ、来てる。近年メアリー・ラティモアアーニェ・オドワイアーなど、ハーピストたちが良質な音楽を生み出しているが、ジャズの分野におけるその筆頭はブランディ・ヤンガーだろう(昨秋コットンクラブで観た来日公演でもすばらしい演奏を披露してくれた)。
 マカヤ・マクレイヴン『Universal Beings』や、2020年の特筆すべきジャズ・アルバムの1枚、カッサ・オーヴァーオール『I Think I'm Good』にも参加している彼女だが、来年1月21日、ベーシストのデズロン・ダグラスとともに録音したライヴ盤がリリースされる。
 今年3月のロックダウン中に配信されたセッションのハイライトを集めた内容で、アリス・コルトレーン “Gospel Trane” やファラオ・サンダース “The Creator Has A Master Plan”、ジョン・コルトレーン “Wise One” などのカヴァーも収録。ハープで再演される名曲たちの美しき息吹に耳を傾けたい。

Dezron Douglas & Brandee Younger
Force Majeure

ラヴィ・コルトレーンからマカヤ・マクレイヴンまで支持されてきた実力派ベーシスト、デズロン・ダグラスとジャズ、ヒップホップ~R&Bのフィールドを中心に華やかな共演歴を誇る話題の女性ハープ奏者、ブランディ・ヤンガーによる伝説的なロックダウン・ライブストリーム・ブランチ・セッションアルバム。ボーナストラックを加え、日本限定盤ハイレゾMQA対応仕様のCDでリリース!!

Official HP : https://www.ringstokyo.com/dezrondouglasbrandeeyoungerfm

マカヤ・マクレイヴンの力作『Universal Beings』のNYセッションにも共に参加した旧知の仲であるベーシストのデズロン・ダグラスとハープ奏者のブランディ・ヤンガーが、2020年3月、リビングルームでライブストリームを開催した。彼らがリビングルームで奏でる美しく自然な音は、多くの友人や家族を励まし、勇気づけた。このアルバム『フォース・マジュール』に収録されているのは、二人による伝説的なロックダウン・ライブストリーム・ブランチ・セッションのハイライトを集めた作品で、日本盤はボーナストラックを加え、ハイレゾMQA対応仕様のCDでリリース。アリス&ジョン・コルトレーン、スタイリスティックス、ジャクソン5、ファラオ・サンダース、ケイト・ブッシュ、スティング、カーペンターズなどの名曲のカバーも含まれている。ニューヨーク、ハーレムの聖域の暖かさを醸し出している、精神的な癒しの音楽である。

ブランディ・ヤンガーのハープとデズロン・ダグラスのダブルベースとのデュオ演奏は、毎週金曜日の朝にリビングルームから配信された。コロナ禍での、このロックダウン・ライヴストリーム・ブランチ・セッションは、ソーシャルメディアで絶大な支持を得た。彼らは人々に親しみのある楽曲を選び、静かな高揚感と歓びを与える演奏をおこなってみせたからだ。このアルバムでその素晴らしいハイライトを楽しむことができる。(原 雅明 rings プロデューサー)

アーティスト : Dezron Douglas & Brandee Younger (デズロン・ダグラス&ブランディ・ヤンガー)
タイトル : Force Majeure (フォース・マジュール)
発売日 : 2021/1/20
価格 : 2,800円+税
レーベル/品番 : rings (RINC72)
フォーマット : MQA-CD (日本企画限定盤)

* MQA-CDとは?
通常のプレーヤーで再生できるCDでありながら、MQAフォーマット対応機器で再生することにより、元となっているマスター・クオリティのハイレゾ音源をお楽しみいただけるCDです。

All music arranged by Brandee Younger & Dezron Douglas;
except "Inshallah" arranged by Dezron Douglas.
Dezron Douglas - double bass, bass guitar, voice
Brandee Younger - harp, voice
Recorded between March and June, 2020, at Dezron & Brandee's apartment in Harlem, New York.
Engineered by Brandee Younger.
Remote Recording Assistance by David Allen.
Edited & Sequenced by Scott McNiece.
Mixed & Mastered by Dave Vettraino.
Cover Art by Esther Sibiude.
Design & Layout by Craig Hansen.

Tracklist :
01. Coffee (intro)
02. Gospel Trane
03. Equinox
04. The Creator Has A Master Plan
05. Sing
06. You Make Me Feel Brand New
07. We'll Be Right Black
08. Never Can Say Goodbye
09. This Woman's Work
10. Nothing Stupid
11. Inshallah
12. Wise One
13. Force Majeure
14. Toilet Paper Romance
15. Flatten The Curve (outro)
16. Body and Soul (Japan Bonus Track)

好評の書評集第二弾!
「科学する心」があなたと世界を変えるかもしれない

本当に読者の役に立つ書評――良い本はしっかりと評価し、ダメな本はしっかりと批判する。そんな「まっとうな書評」が高く評価された山形浩生の書評集、第2弾は「サイエンス・テクノロジー」編。

「科学する心」の尊さ、テクノロジーの楽しさと未来に託す夢。そしてデマやあおりに惑わされない冷静な思考を解く、古びることのない、今の時代に必要な本の数々が紹介されています。その数およそ120冊!

目次

はじめに

第1章 サイエンス
 科学と文明と好奇心――『鏡の中の物理学』
 「わからなさ」を展示する博物館――The Museum of Lost Wonder
 星に願いを:天文台に人々が託した想い――No One will Ever have the Same knowledge again
 「別の宇宙」は本当に「ある」のか? 最先端物理理論の不思議――『隠れていた宇宙』
 若き非主流物理学者の理論と青春――『光速より速い光』
 物理学のたどりついた変な世界――『ワープする宇宙』
 「ありえたかもしれない世界」にぼくは存在するか? 確率的世界観をめぐるあれこれ――『確率的発想法』
 スモールワールド構造の不思議――『複雑な世界、単純な法則』
 分野としてはおもしろそうなのに:特異な人脈の著者が書いた変な本――『人脈づくりの科学』
 トンデモと真の科学のちがいとは――『トンデモ科学の見破りかた』
 真の科学理論検討プロセス!――『怪しい科学の見抜きかた』
 あらゆる勉強に通じるコツ――『ファインマン流物理がわかるコツ』
 あれこれたとえ話を読むより、自分で導出して相対性理論を理解しよう!――『相対性理論の式を導いてみよう、そして、人に話そう』

第2章 科学と歴史
 人々の格差は、しょせんすべては初期条件のせいなのかしら――Guns, Germs and Steel『銃・病原菌・鉄』
 参考文献もちゃんと収録されるようになり、単行本よりずっとよくなった!――『銃・病原菌・鉄』
 『銃・病原菌・鉄』のネタ本のひとつ『疫病と世界史』を山形浩生は実に刺戟的な本だと思う――『疫病と世界史』
 マグル科学の魔術的起源と魔術界の衰退に関する一考察――『磁力と重力の発見』
 魔術と近代物理学との接点とは――『磁力と重力の発見』
 文化を創るのは下々のぼくたちだ――『十六世紀文化革命』
 社会すべてが生み出した近代科学の夜明け――『世界の見方の転換』
 コペルニクスが永遠に奪い去ったもの:地動説がもたらした人間の地位の変化を悼む――Uncentering the Earth: Copernicus And the Revolutions of the Heavenly Spheres
 「星界の報告」新訳。神をも畏れぬ邪説を唱えたトンデモ本。発禁にすべき――『望遠鏡で見た星空の大発見』
 イスラムの現状批判とともに、もっと広い科学と宗教や規範の関係を考えさせられる――『イスラームと科学』
 アメリカとはまったく別の技術の系譜――『ロシア宇宙開発史:気球からヴォストークまで』
 有機化学がイノベーションとハイテクの最前線だった時代――『アニリン―科学小説』

第3章 環境
 脱・恫喝型エコロジストのすすめ:これぞ真の「地球白書」なり――The Skeptical Environmentalist『環境危機をあおってはいけない』
 地球の人々にとってホントに重要な問題とは? 新たな社会的合意形成の試み――Global Crisis, Global Solutions
 温暖化対策は排出削減以外にもあるし、そのほうがずっと効果も高い!――Smart Solutions to Climate Change: Comparing Costs and Benefits
 環境対策は、完璧主義ではなくリスクを考えた現実性を!――『環境リスク学』
 マスコミのあおりにだまされず、科学的な環境対応を!――『環境ホルモン』
 温暖化議論に必要な透明性とは?――『地球温暖化スキャンダル』
 壮大な地球環境制御の可能性――『気候工学入門』
 真剣なエコロジストがたどりついた巨大科学への期待――『地球の論点:現実的な環境主義者のマニフェスト』
 いろいろ事例は豊富ながら、結局なんなのかというのが弱くて総花的――『自然と権力――環境の世界史』
 誇張してあおるだけの温暖化議論でよいのか?――『地球温暖化問題の探究』

第4章 震災復興・原発・エネルギー
 震災復興の歩みから日本産業の将来像を見通す――『東日本大震災と地域産業復興 II』『地域を豊かにする働き方』
 原発反対のために文明否定の必要はあるのか?――『福島の原発事故をめぐって』
 正しく怖がるための放射線リテラシー――『やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識』
 主張は非常にまっとうながら、哲学はどうなったの?――『放射能問題に立ち向かう哲学』
 頭でしか感じられない怖さの恐怖――『廃墟チェルノブイリ』

第5章 建築
 いろんな表現の向きと具体性のこと――『住宅巡礼』『日本のすまい―内と外』
 真に自然の中に位置づく建築のあり方などについて――『時間の中の建築』
 人間くさく有機的な廃墟の本――『廃墟探訪』
 失われゆく現代建築の見直し――『昭和モダン建築巡礼 西日本編』
 楽しい探訪記ながら明らかにしたかったものは何?――『今和次郎「日本の民家」再訪』
 家の持つ合理性を見抜いた名著――『日本の民家』
 「構想力」の具体的な中身を分析したおもしろい本――『群像としての丹下研究室』
 長すぎるため、どうでもいい些事のてんこ盛りに堕し、徒労感が多い一冊――Le Corbusier: A Life
 言説分析が明らかにしたのはむしろ分析者の勝手な思い込みだった――『未像の大国』
 記憶術が生み出した建築による世界記述と創造――『叡智の建築家』

第6章 都市計画
 街と地域の失われた総合性を求めて――『廃棄の文化誌』
 都市に生きる人たちと、都市を読む人――『恋する惑星』&『檻獄都市』のこと――『檻獄都市』
 土建政治家の構想力とは――『田中角栄と国土建設』
 都市開発とぼくたちの未来像など――『最新東京・首都圏未来地図―超拡大版』
 次世代に遺すインフラ再生問題――『朽ちるインフラ』
 数十年にわたって継続する都市開発を養うには――『ヒルサイドテラスウェストの世界』
 槇文彦も村上龍も、ハウステンボスの怪にはまだかなわない――『記憶の形象』
 電気街からメイド喫茶へ:おたく的空間のあり方とは――『趣都の誕生』
 古代中世の話で9割が終わる都市空間デザイン論というものの現代的意義は?――『都市空間のデザイン』
 日本のバブル永続を想定した古い本。すでに理論は完全に破綻、今更翻訳する意義はあったのか?――『グローバルシティ』
 うーん、いろいろやったのはわかるが、それで?――『モダン東京の歴史社会学』
 その金科玉条の「オーセンチック」って何ですの?――『都市はなぜ魂を失ったか』
 建築と都市が重なる奇妙な空間へ――『S,M,L,XL+: 現代都市をめぐるエッセイ』

第7章 医療・生命
 肥満二段階仮説、あるいはデブの免疫療法に関する一考察――『免疫の意味論』
 死体になったらどうなるの? 決定版:ぼくらの死体完全マニュアル本!――Death to Dust: What Happens to Dead Bodies?
 死体関連のネタ満載。この分野のおもしろさを何とか知らせて認知度をあげようとする著者の熱意が結実――『死体入門』
 医学生がジョークで撮った解剖記念写真集。医学と死体解剖のあり方を考えさせる、二度と作れないだろう傑作――Dissection: Photographs of a Rite of Passage in American Medicine 1880-1930
 現実のドリトル先生にして現代外科医学の開祖――The Knife Man: The Extraordinary Life And Times Of John Hunter, Father Of Modern Surgery
 おおお、エミリー・オスターきたーっっっっ!!――『お医者さんは教えてくれない 妊娠・出産の常識ウソ・ホント』

第8章 遺伝・進化
 歪んだ標的にされた、遺伝とは無関係な知能偏重社会批判の書――『ベルカーブ:アメリカ生活における知能と階級構造』
 人種とスポーツと差別について――Taboo: Why Black Athletes Dominate Sports and Why We Are Afraid to Talk About It
 遺伝子分析とITが交差する新分野の魅力書――『実践バイオインフォマティクス』
 きみは進化のために何ができるか? バカやブスの存在理由について――『喪失と獲得』
 ラスコー展とニコラス・ハンフリー
 進化論の楽しさと威力、そして宗教との共存――Evolution for Everyone: How Darwin's Theory Can Change the Way We Think About Our Lives
 生得能力と最適な社会制度について考えさせられる本――『心の仕組み』
 人間での遺伝の役割をドグマから救う勇気の書――『人間の本性を考える』
 初歩から最先端の成果までを実に平易に説明、日本の研究水準紹介としても有益。あとは値段さえ……――『自己変革するDNA』
 日本人は昔からあれこれ混血を進めてきました、という本――『ハイブリッド日本』
 日本人の起源を総合的に見直すと?――『日本人はどこから来たのか?』
 すばらしい。創発批判本!――『生命起源論の科学哲学』
 人間の遺伝子分布についての立派な百科事典。ネトウヨどもは本書についてのインチキなデマをやめるように――The History and Geography of Human Genes
 人類進化と分布のとても優秀な一般向け解説書。インチキに使わずきちんと読もう!――The Great Human Diasporas: The History Of Diversity And Evolution
 クローン生物の可能性と現実――『第二の創造:クローン羊ドリーと生命操作の時代』
 ネアンデルタール人の精神世界にまで踏み込む――『ネアンデルタール人の正体』
 すべての人工物の理論と進化について――『システムの科学』『進化と人間行動』

第9章 脳と心
 異分野を浸食する脳科学の魅力がつまった一冊――『脳のなかの幽霊、ふたたび』
 脳科学から倫理と道徳を考える――『脳のなかの倫理』
 心や意識の問題でも、もはや哲学はジリ貧らしいことについて――『MiND』
 Do Your Homework! 思いつきの仮説だけでは、脳も心もわからない――『脳とクオリア:なぜ脳に心が生まれるか』
 意識とは何か? 「人間である」とは?――Conversations on Consciousness: What the Best Minds Think About the Brain, Free Will, And What It Means to Be Human
 妄想全開:フロイトの過大評価をはっきりわからせてくれる見事な新訳――『新訳 夢判断』
 インチキだと知って読むと、読むにたえないシロモノではある――『失われた私』
 原資料をもとに、多重人格シビルのウソを徹底的に暴いた本。でも批判的ながら同情的でフェアな視点のため、非常に感動的で悲しい本になっている――Sybil Exposed: The Extraordinary Story Behind the Famous Multiple Personality Case
 え、プラナリアの実験もちがうの?!!――『オオカミ少女はいなかった』
 人を丸め込む手口解説します――悪用厳禁!――『影響力の武器』
 意識の話はむずかしいわ――『ソウルダスト』
 うーん、ヤル気の科学よりいいなあ――『WILLPOWER 意志力の科学』
 文明を築いた「読書脳」――『プルーストとイカ』

第10章 IT
 マイケル・レーマンの偉大……それと藤幡正樹――『FORBIDDEN FRUITS』
 さよなら「ワイアード」――「ワイアード 日本版」
 がんばれ!! 微かに軟らかい症候群――『マイクロソフト・シンドローム――コンピュータはこれでいいのか!?』
 コンピュータはあなたの知性を反映する!――『あなたはコンピュータを理解していますか?』
 プログラミングの傲慢なる美学と世界観――『ハッカーと画家――コンピュータ時代の創造者たち』
 気分(だけ)はジャック・バウアー!――『世界の機密基地―Google Earthで偵察!』
 意味を求める人間と、自走する情報のちょっと悲しい別れ――『インフォメーション―情報技術の人類史』
 バーチャル世界だけで人類は発展できるのだろうか――『ポスト・ヒューマンの誕生』
自分でできる深層学習――『Excelでわかるディープラーニング超入門』

第11章 ものづくり・Maker・テクノロジー
 技術的な感覚のおはなし――『root から/へのメッセージ』が教えてくれるもの
 夢のロボットたち:「ロボコンマガジン」は楽しいぞ――「ロボコンマガジン」
 狂気の自作プラネタリウムの教訓と可能性など。――『プラネタリウムを作りました。』 出来の悪い後輩たちの空き缶衛星物語と、草の根科学支援の方向性について――『上がれ! 空き缶衛星』
 本気で夢を実現しようとする驚異狂喜の積算プロジェクト――『前田建設ファンタジー営業部』
 施工見積から見えてくる空想と現実の接点――『前田建設ファンタジー営業部Part 3「機動戦士ガンダム」の巨大基地を作る!』
 トンネルの先の光明――『重大事故の舞台裏』
 ピタゴラ装置の教育効果――『ピタゴラ装置DVDブック1』
 世界に広がる、ミステリーサークルの輪!――The Field Guide: The art, History and Philosphy of Crop Circle Making
 自分で何でも作ってみよう! 農作物からITまで――『Made By Hand』
 よい子は真似しないように……いやしたほうがいいかな?――『ゼロからトースターを作ってみた』
 アンダーソンは嫌いだが、Makersビジネス重視の視点はおもしろく、実践も伴っていてえらい――『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』
 ものづくりとしての科学的お料理解説書――『Cooking for Geeks: 料理の科学』
 ジブリ『風立ちぬ』に感動したあなたに!――『名作・迷作エンジン図鑑』
 新ジャンルに取り組むアマチュアたちの挑戦とその障害をまとめた、わくわくする本――『バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!』
 量産からバイオまですべてに貫徹するものづくり思想とは――『ハードウェアハッカー』

あとがき

著者
山形浩生(やまがた・ひろお)
1964年、東京生まれ。東京大学大学院工学系研究科都市工学科およびマサチューセッツ工科大学大学院修士課程修了。
大手シンクタンクに勤務の頃から、幅広い分野で執筆、翻訳を行う。
著書に『新教養主義宣言』『たかがバロウズ本。』ほか。訳書にクルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』、ピケティ『21世紀の資本』、スノーデン『スノーデン 独白:消せない記録』、ディック『ヴァリス』ほか。

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