「K A R Y Y N」と一致するもの

Black Country, New Road - ele-king

「references, references, references(参照、参照、参照)」──“Science Fair” でヴォーカルのアイザック・ウッドが物憂げにつぶやく。強烈なギター・ノイズで幕を開け、管楽器が混乱したようにうなる、アルバムでもとりわけ不穏な響きのナンバーだ。歌詞に登場する主人公はほとんど錯乱しているかのように、現代のライフスタイルを語っていく。とくに笑えるのは、「だけど僕はまだ母親と一緒に暮らしている/影響を受けるマイクロインフルエンサーを次々と変えながら」というくだり。デジタル・ネイティヴ世代による風刺の効いた言葉だ。すべての知識や経験はインターネット上でフラットな情報となり、彼らはそれらに飲みこまれつつも巧みに「参照」することで何とか生きているのかもしれない。「僕はこの街を愛しているんだ/自分で好みを選ぶという重みを背負いながらも/なんという時代に生きているんだろう」。ほんと、なんという時代なんだろうね……と世代が違う自分も勝手に共感してしまうが、しかし、この曲は開き直ったようなこんな言葉で幕を閉じる。「失うものなど何もない/ああ、僕は逃れるために生まれた/向こうでブラック・カントリーが待っている」。「I was born to run」……? ブルース・スプリングスティーン “Born to Run(明日なき暴走)” の引用じゃないか! 頭のなかでただちに、「Baby, we’re born to run」と、あの輝かしいメロディが流れる。
「歌詞にスプリングスティーンの引用があるよ」とエレキング編集長に教えられ、あらためて歌詞を読みながらブラック・カントリー、ニュー・ロード(以下、BC,NR)による大量の参照に彩られたデビュー・アルバムを聴いていると、最終曲 “Opus” でもたしかに “Thunder Road(涙のサンダーロード)” の引用に出くわす。BC,NR はもちろん音楽的にも歌詞的にも膨大な固有名詞と接続されるバンドなので、そのなかのひとつにスプリングスティーンがあるのも驚くべきことではないのかもしれない。だけど、自分は「ああ、スプリングスティーン “も” 好きなんだね」で済ますことができない。なぜならば、よりによって “明日なき暴走” と “涙のサンダーロード” とは……ストレートに熱いセレクトすぎやしないか。若者たちが苦境にめげずに、未来に立ち向かおうとするロック・チューンだ。つい、そこに BC,NR の若々しい情熱を嗅ぎ取りたくなってしまう。

 現代のUKインディ・ロック・シーンから登場した7人組による『For The First Time』における音楽的参照元を挙げればキリがないが、あえていくつかポイントを絞るとすれば、スリント辺りを連想させるポスト・ハードコア、NYのノーウェイヴ、英国ポスト・パンク、スティーヴ・ライヒのミニマル・ミュージック、ポスト・クラシカル、そしてユダヤの伝統音楽クレズマーといったところだろうか。すでに多くの論者が指摘していることだ。それらは様々にぶつかり合い、混ぜられ、盟友ブラック・ミディに負けじとカオティックなうねりを生み出していく。その様は率直に言ってスリリングだ。
 BC,NR の音楽的な知識は膨大で、演奏力も抜群だが、いっぽうで、だからこそアルバムではフォーカスがあまり定まっていないのではないか……というレヴューもある。たしかに、よくも悪くも、過去の多くのアーカイヴが生み出した BC,NR はストリーミング・サーヴィスが一般化した時代ならではのバンドなのだろう。たとえば自分も聴いたことのない過去の名盤の名前に出くわしたとき、つい検索窓にコピー&ペーストしてどんなものか「確認」してしまうことが増えたが、そこに後ろめたさも感じる。それは本当に過去に出会っているということなのか? こんなに簡単に「名盤」にアクセスできてしまうことは、リスナーに過去への敬意を忘れさせるのではないか? 『For The First Time』のアートワークがネット上のフリー素材の画像を使っているというのは、現代文化への批評に他ならない。つまり、過去の優れた音楽はもはやフリー素材であり、自分たちはその時代の申し子なのだと。
 けれども、まさに BC,NR が言うように、大量のアーカイヴから「自分の好みを選ぶことの重荷」に本作は向き合っている。どれだけ多くのものにアクセスできたとしても、それらを巧みに混ぜ合わせるのだとしても、最終的にはそこから選択しなければならない。「すべての知識や経験はインターネット上でフラットな情報となり」……と冒頭で自分は書いたが、それは怠惰な認識なのだと BC,NR を聴くと気づかされる。たとえば BC,NR におけるほかのバンドと一線を画す個性であるクレズマーの要素は、サックスのルイス・エヴァンスとヴァイオリンのジョージア・エラリーが持つジャズとクラシックのバックグラウンドに由来しているとのことで、それは大所帯のバンドだからこそ実現したものだ。結局のところ、個人がどれだけ多くのものを知っていたとしても限界は必ずあって、他者と出会って起きる化学反応がなければ新しいものは生まれない。まさにクレズマーの要素が前面に出る “Instrumental” と “Opus” における祝祭的なフィーリングは、BC,NR のハイブリッド・サウンドがメンバーそれぞれの個性の集結によるものであることを讃えているように感じられる。BC,NR のエネルギッシュな音楽は、膨大な断片のなかからそれでも自分の好みを選び抜いた若者たちが集まり、そこから何か新しくて面白いものを生み出そうという……そんな自分たちのあり方を祝福するものなのだ。

 だから、スプリングスティーンの参照がたんなる情報の処理だと自分は思わない。それもやはり、彼らが情熱とともに選び抜いたものだ。「僕の新しい自転車の後ろにきみを乗せて/今夜、サンダーロードを後輪走行で駆け抜けていく/これほど勇敢な気持ちははじめてだ/いつになく寛大な気分の日曜日」──“Opus” によるどこか黙示録的で、それでも前向きなアルバムの終わり方は、BC,NR が持つ「いま、このとき」を肯定する志をよく表している。スプリングスティーンは “涙のサンダーロード” で「遅れたけど、走れば間に合うさ」と歌っていた。BC,NR はまさに「遅れてきた者たち」として、“涙のサンダーロード” の精神を引き継ぎながら、しかしスプリングスティーンのロックン・ソウルとはまったく異なる音を鳴らそうとする。サンダーロードを経由して、いま、彼らは新しい道(New Road)を颯爽と走っている。

Tyler, the Creator - ele-king

 いま現在もしジョイ・ディヴィジョンという名前のバンドがデビューしたら、どんなことになるのだろうか。1979年に彼らが登場したとき、ほとんどの人はこのバンドがナチのシンパだとは思わなかった。スージー・スーは鉤十字の腕章をしたために殴打されもしたが、メディアもファンも彼女をファシストだとは思いもしなかった。が、21世紀のいま同じことをしたらそうはいかないだろう。SNSを使ってコールアウトされるばかりか、ヘタしたらそれは拡散の娯楽(ヴァイラル・エンタテインメント)と化し、公的な屈辱(パブリック・シェイム)を味わい、そしてキャンセルされ、一生を台なしにされるかもしれない。時代は変わった。21世紀の現代ではチャールズ・ブコウスキーも昔のようには読めないのだろう。

 10年前、タイラー・ザ・クリエイターの『ゴブリン』を手放しに賞賛してしまったことをぼくは後悔した。ラップ・ミュージックをサウンドだけで評価することのリスクは間違いなくある。1999年にエミネムが“My Name Is”において性的暴力をも含んだ言葉をラップしたときも非難は多々あったが、白人下層階級出身のラッパーへの理解も同じようにあった。しかし、2011年の『ゴブリン』は、エミネムでも2ライヴ・クルーでもカンニバル・コープスでもアナル・カントでも受けなかったようなインパクトで、シリアスな批判を食らっている。そのひとつにあるのが、1枚のアルバム中に213回もゲイを罵倒するのは想像力の欠如だと辛辣な批判を書いたロクサーヌ・ゲイの著書『バッド・フェミニスト』(野中モモ訳)だった。
 海外のポップ・カルチャーに親しんでいる人にはお馴染みの話かもしれないが、この10年欧米では人種、ジェンダー、障害者への人権意識がいっきに高まっている。安倍前首相はこうした先進国の時流とは逆行した政治/教育に終始したわけだが、タイラーが歌詞に問題ありとメイ前英首相から入国をキャンセルさせられた背景には、公序良俗への脅威というよりは、こうした文化状況の変化が大きかったのだと思う。タイラーは、フェミニスト団体からの抗議によってオーストラリア公演もキャンセルされている。
 自分で蒔いた種とはいえ、タイラーはこうした逆風のなかでコンセプチャルだった『フラワー・ボーイ』以降、その作品をもって世間を見返してきた。PC を前に萎縮している様子もないし、ある意味中指を引っ込めてもいないだろう。ゆえにいまでもヘイターは少なくないと思われる。しかし、『バスタード』や『ゴブリン』の頃とは違った自分を見せているし、眩いばかりのブラック・ポップ・ミュージックが押し寄せる前作『IGOR』が各処において賞賛の嵐を起こしたことは記憶に新しい。

 言うまでもなくぼくはSupremeを着てスケートする20歳ではないし、日がな一日部屋に籠もっているオタクでもないが、タイラーが“Deathcamp”という昔の曲中で、実存的な苦闘に満ちた『イルマティック』よりも遊び心ある『In Search Of...』を持ち上げたことを興味深く思っている。N*E*R*Dが登場した時代はまだ黒人のキッズがスケート文化とリンクすることはあまりなかったように思うし、タイラーもまた人種や文化のステロタイプを打破するアーティストのひとりだと思える。彼がGGアレンを意識したかどうかまでは知らないけれど、オッド・フューチャーの初期段階においては、黒いソウルよりも白いパンクからのインスピレーションが際立っていた。そういう意味では彼もまたアイデンティティ・ポリティクスの使徒であり、文化闘争の当事者でもある。CANのもっとも有名な曲“スプーン”の、あまり有名ではないソニック・ユースによるリミックスをループさせてラップするほどだから、時代に逆行した自民党と違って、彼のクリエイティヴィティは時流に乗ったものだと言えるだろう。なにせ水曜日のカンパネラをLAに呼ぶくらいのセンスの持ち主だったりもする。

 で、ここまで書いておいてこれを言うのもナンだが、ぼくにはタイラーの言葉の際どさを楽しむほどの英語力はないので、結局いまもサウンドとしての面白さに重点を置いている(『ウルフ』、『フラワー・ボーイ』と『チェリー・ボム』は対訳付きの日本盤CDがあります)。BLM への彼のリアクションは知りたいところではあるが、「密度の高い万華鏡のようなアルバム」と中道左派を代表する『ガーディアン』が大絶賛の本作『Call Me If You Get Lost』にかつてのように火種になる言葉はないと思われるし、サウンドとしては前作『IGOR』の続編的な内容と言える。要するに、エッジが利いているスタイリッシュでヴァラエティ豊かなブラック・ポップ・ミュージックのアルバム。しかも、それをやるのはいまダサいとでも言わんばかりに、トラップもなければオートチューンもない。
 たとえばアルバムにある“Sweet / I Thought You Wanted To Dance”は、80年代半ばのスクリッティ・ポリッティを思わせるニューウェイヴ調のポップ・レゲエという、『ゴブリン』からは想像もつかない透明感のあるメロウな曲で、リル・ウェインが参加した“Hot Wind Blows”における70年代スピリチュアル・ジャズめいたフルートのサンプリングはメランコリックだがピースフルでさえある。90年代のポップR&Bスタイルの“Wusyaname”はいささかクリシェに思えるが、1曲目のDJドラマとの共作“Sir Baudelaire”におけるジャジーな響きと激しいラップとのコントラストには引きがあり、ストイックでミニマルなブレイクビートが際立つ“Massa”や“Lumberjack”もクールで、ファレル・ウィリアムスが参加した“Juggernaut”もリズムが面白い。 “Wilshire”もビートが出色で、8分もあるというのにまったく飽きさせない。前作の“Earfquake”のようなメロディアスなポップ・ソングよりも、ダンサブルなヒップホップ・ビートが通底する今作のほうがぼくは好みかな。
 というわけで『Call Me If You Get Lost』で泣きはしないが、充分に楽しませてもらっている。派手なサンプリングが印象的な最後の曲“Safari”では、彼ら自身が無茶苦茶楽しんでいることがよくわかる。そういえば“Manifesto”なる曲では「キャンセルされる前に俺がキャンセルした」などという強気なラインがあるようだが、もしタイラー・ザ・クリエイターが誇らしげに見えたのなら、時代に体当たりしている彼のもうひとつの側面に、また別の感情が湧き上がってきそうでもある。ジャケットにデザインされた身分証明書の名前の欄には、19世紀後半のパリでその作品の性描写や悪魔主義を告訴(キャンセル)された詩人の名前、タイラー・ボードレールと記されている。

owls (GREEN ASSASSIN DOLLAR & rkemishi) - ele-king

 GREEN ASSASSIN DOLLAR と言えば、舐達麻などのプロデュースで近年大きな注目を集めているビートメイカーだ。その GAD とMCの rkemishi (エミシ)から成るユニット、owls が昨年発表したセカンド・アルバム『24K Purple Mist』が完全限定プレスにてアナログでリリースされる。
 さらに、同作のアートワークを手がけたえすうとのコラボ企画として、限定ボックスセット『24K Purple Mist - ESSU Edition』も発売される。こちらは完全手づくりのすごい内容になっているようなので、チェックを。詳細は下記より。

owlsのセカンド・アルバム『24K Purple Mist』が完全限定プレスでアナログ化! さらにジャケットを描いたライター、"えすう" とのコラボによるスペシャルなボックスセット『24K Purple Mist - ESSU Edition』が完全限定20セットで発売! 8/6(金)18時より予約受付開始!

 舐達麻などの楽曲プロデュースでシーン内外・多方面から大きな注目を集めているGREEN ASSASSIN
DOLLARと東京ストリートで暗躍する要注意人物なMC、rkemishi(エミシ)による世間を騒がす噂のユニット、owls(オウルズ)。STICKY(SCARS)やDOGMA、T2K a.k.a. Mr. Tee、Gottz(KANDYTOWN)とそうそうたる面々が参加し、大きな話題となった2020年リリースのセカンド・アルバム『24K Purple Mist』が完全限定プレスで待望のアナログ・リリース!
 今回のアナログ盤には川崎のレジェンダリーなラッパーであるA-THUG(SCARS)、SEEDA作品などでも知られる人気シンガーのEMI MARIAを迎え、GREEN ASSASSIN DOLLARが新たにトラックも作り直し、アルバム・リリース後にデジタル・シングルとしてリリースされた話題曲 "blessin remix" もボーナストラックとして収録!
 さらにジャケットを描いたライター、"えすう" とのコラボレーション<owls x えすう>としてのボックスセット『24K Purple Mist - ESSU Edition』が完全限定20セットで発売! そのジャケットデザインをえすう自身がハンドペイント&シルクスクリーンプリントしたスペシャルなLP、ジャケットデザインをパックプリントして "えすう" がシルクスクリーンなどを加えたオリジナルTシャツ、"えすう" が手掛けたowlsのジン、レンチキュラー(3D)ポストカード、ステッカーをセットにしてボックスにコンパイル。さらにそのボックス自体も "えすう" のデザインでパッケージングしたオンリーワンな逸品で、こちらはP-VINE OFFICIAL SHOPでのみ20セット限定で予約を受け付けております。(※ボックスセットの予約・購入はお一人様2セットまでとなります)

*owls x えすう "24K Purple Mist - ESSU Edition" 予約ページ / ※8/6(金)18時より受付開始
https://anywherestore.p-vine.jp/products/owls-24klpdx

★ボックスセットに関する注意事項
※ひとつひとつが手作りになりますので色味やデザインなどが商品ごとに異なり、作品の性質上Tシャツやジャケット、ボックスなどにインクなどが付着している可能性もあります。あらかじめご了承ください。
※商品発送は8/25(水)を予定していますが、新型コロナウィルスやオリンピック・パラリンピック開催による状況などによっては発送が遅れる可能性がございます。あらかじめご了承ください。
※受注数が販売予定数に到達した時点で受注は終了となります。
※オーダー後のキャンセル・変更は不可となります。
※配送の日付指定・時間指定は出来ません。
※TシャツのボディはGILDAN T2000 6oz ウルトラコットンヘビーウェイトになります。

[LP情報]
アーティスト:owls
タイトル:24K Purple Mist
レーベル:P-VINE, Inc.
発売日:2021年8月25日(水)
仕様:LP
品番:PLP-7145
定価:3,520円(税抜3,200円)
Stream/Download/Purchase:
https://smarturl.it/owls_24KPurpleMist

[ボックスセット情報]
アーティスト:owls x えすう
タイトル:24K Purple Mist - ESSU Edition
レーベル:P-VINE, Inc.
発売日:2021年8月25日(水)
仕様:シルクスクリーンジャケットLP+オリジナルTシャツ+ジン+レンチキュラーポストカード+ステッカー〈特殊ボックス仕様〉
定価:22,000円(税抜20,000円)

LP:トラックリスト ※ボックスセットのLPも同内容になります。
SIDE A
1. owl side theory
2. killah
3. greedy feat. Gottz
4. back yard
5. 4:20 feat. DOGMA
6. mood at shibuya
SIDE B
1. b2h
2. smoke sleep (co-prod. Aru-2)
3. blessin
4. fonk you
5. 4:20 remix feat. T2K a.k.a. Mr.Tee & STICKY
6. blessin remix feat. A-THUG & EMI MARIA (Bonus Track)

Phew - ele-king

 先日ニュー・アルバム『New Decade』のリリースがアナウンスされた Phew ですが、嬉しい続報です。10月22日に発売される日本盤CDと輸入盤LP、それぞれにTシャツ付きの限定盤が登場! ディスクユニオンのみで購入できます。どちらもS、M、L、XLの4サイズあり。数に限りがあるため、早めに予約しておきましょう。

Phew、ニュー・アルバム『ニュー・ディケイド』のTシャツ付限定盤をディスクユニオン限定で発売!

Phewのニュー・アルバム『ニュー・ディケイド』(New Decade)のTシャツ付限定盤がディスクユニオン限定で発売されることとなった。Tシャツのデザインは、ニュー・アルバムのアートワークを手掛けた鈴木聖、写真は塩田正幸によるもので、対象商品は日本盤CDと輸入盤LPとなり、オリジナル商品と同様10月22日に発売される。

Traffic / MUTEレーベルよりワールドワイド・リリースされるニュー・アルバム、現在は第一弾先行シングル「Into The Stream」が公開されている。日本盤CDには、20分以上にも及ぶドローン作品「In The Waiting Room」がボーナス・トラックとして収録される。

■ディスクユニオン 予約リンク
https://diskunion.net/jp/ct/news/article/0/98955

■第一弾先行シングル「Into The Stream」ミュージックビデオ
(青木理紗監督)
https://youtu.be/K060lQ7sEAU

■ニュー・アルバム詳細
https://trafficjpn.com/news/phew-2/

■プレスリリース抜粋
「感傷的なものは排除したかった」と語る、約30年ぶりにMuteから発売されるアルバム『ニュー・ディケイド』は、世界の、自己陶酔する偽物たちへの彼女からの断固たる反撃なのだ。「今の状況を考えると、私はラッキーだったのかもしれません。昨年は特に、生きているだけでもある意味、幸運という状況でしたから。ミュージシャンやアーティストとして、自分の気持ちを率直に語ることができるのは、このような状況下においてはある種の特権であり、それを濫用してはいけないと感じました」

「30年前には、“ニュー” という言葉は、進歩や物事がよくなることの同義語でした」と、80年代のバブル期の日本が熱狂した拡大主義を思い出して、Phewがいう。「今はもう、そんな事は信じていません」そして、このアルバムを通して、時間の認識についての、緩いコンセプトが流れているのだという。「80年代、そして90年代までは、物事が過去から現在、未来へという流れで進行していましたが、特に21世紀が始まって以来、その流れが変わってしまったと感じます。個人的には、現在から連なる未来というものが、見えなくなってしまいました」

*プレスリリース全文
https://trafficjpn.com/news/phew-pr/

■商品概要

アーティスト:Phew (Phew)
タイトル:ニュー・ディケイド:Tシャツ付限定盤(New Decade: Limited Edition with T-Shirts)
発売日:2021年10月22日(金)

Tracklist
1. Snow and Pollen
2. Days Nights
3. Into the Stream
4. Feedback Tuning
5. Flashforward
6. Doing Nothing
7. In The Waiting Room (日本盤CD:bonus track)

●仕様: 日本盤 CD+T-SHIRTS

定価:5,450円(税抜)
サイズ:S、M、L、XL

●仕様: 輸入盤 LP+T-SHIRTS

定価:6,264円(税抜)
サイズ:S、M、L、XL

*Tシャツ・サイズ、品盤など詳細
https://trafficjpn.com/releases/phew-new-decade-shirts/

[ディスクユニオン 予約リンク]
https://diskunion.net/jp/ct/news/article/0/98955

■プロフィール

伝説のアート・パンク・バンド、アーント・サリーの創設メンバーであり、1979年解散後はソロとして活動を続け、1980年に坂本龍一とのコラボレーション・シングルをリリース、1981年には、コニー・プランク、CANのホルガー・シューカイとヤキ・リーベツァイトと制作した1stソロ・アルバム『Phew』を発売。1992年、MUTEレーベルより発売された3rdアルバム『Our Likeness』は、再びコニー・プランクのスタジオにて、CANのヤキ・リーベツァイト、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのアレックサンダー・ハッケ、そしてDAFのクリスロ・ハースと制作された。2010年代に入り、声と電子音楽を組み合わせた作品を次々に発売し、エレクトロニック・アーティストとしても世界的評価を高めた。ピッチフォークは「日本のアンダーグラウンド・レジェンド」と評している。また、アナ・ダ・シルヴァ(レインコーツ)、山本精一(ex. ボアダムス)等とのコラボレーション作品も発売。2021年10月、最新ソロ・アルバム『ニュー・ディケイド』はTraffic/Muteより世界発売。

https://www.instagram.com/originalphew007/
https://twitter.com/originalphew
https://www.facebook.com/Phew-508541709202781
https://phewjapan.bandcamp.com/merch

Sam Gendel - ele-king

 LAを拠点に活動するサキソフォニスト、サム・ゲンデル。カルロス・ニーニョとの交流やヴァンパイア・ウィークエンド作品への参加などでも知られ、昨年は〈Nonesuch〉に移籍したことも話題となった。そんな彼がかつて組んでいたバンド、インガの音源がリイシューされる。幻のデビュー・アルバムに未発表曲を追加した、日本独自のCD盤とのこと。ローランド・カーク “Volunteered Slavery” のカヴァーも収録されているそうです。注目。

SAM GENDEL
inga 2016

“現代のアウトサイダー・ジャズ”(Pitchfork)と評され、米名門レーベル・ノンサッチからのリリースで更に注目を集める、新進気鋭のサックス奏者 Sam Gendel (サム・ゲンデル)が結成していた INGA 初のフィジカルリリースが日本企画で実現!!

サム・ゲンデルによるジャズ・グループ、インガ(Inga)の音源が遂にリイシュー! 封印された幻のデビュー・アルバム『en』とローランド・カークの “Volunteered Slavery” を収録したEP、そして未発表曲から、サム・ゲンデル自身が厳選した、日本限定のスペシャル盤がマスタリングされCDで発売! 今最もクリエイティブな音楽を奏でているといっても過言ではない作曲家サム・ゲンデル。アートワークも自身のデザインによるもの。

サム・ゲンデルが、ドラマーのケヴィン・ヨコタ、ギタリストのアダム・ラトナーと組んでいたのが、インガだ。封印されてしまった幻のファースト・アルバムとEPには、ラサーン・ローランド・カークのカヴァーをはじめ、実に魅力的な音楽が収められていた。プロデューサーとしてというより一リスナーとして、サムにリリースの提案をし、彼自らの選曲でその封印が解かれることとなった。この音楽を再び聴けることが何より嬉しいし、いまサムの音楽に惹かれている人にも必ずや響く音楽だと思う。(原 雅明 rings プロデューサー)

アーティスト : Sam Gendel (サム・ゲンデル)
タイトル : inga 2016 (インガ2016)
発売日 : 2021/10/6
価格 : 2,727円+税
レーベル/品番 : rings (RINC80)
フォーマット : CD (日本企画限定盤)
BARCODE : 4988044068803

Official HP : https://www.ringstokyo.com/samgendelinga2016

K-Hand - ele-king

 デトロイトのテクノ/ハウスのDJでありプロデューサーとして知られるK-ハンド(ケリー・ハンド)が逝去したことが8月3日に判明した。死因は現在不明だが、親しい友人によって確認されたという話だ。56歳だったというから、デトロイト・テクノのオリジネイターたちとほとんど同じ世代になる。黒人女性DJがまだ珍しかった時代からおよそ30年以上にわたって活動してきた彼女の死に、世界中から哀悼のコメントが寄せられている。

 デトロイトで生まれ育った彼女は、80年代にはNYのパラダイス・ガラージ、シカゴのミュージック・ボックスといった伝説のクラブに通うことで最良のダンス・ミュージックを吸収した。地元デトロイトの電話会社で働きながらDJをはじめ、そして1990年には自分のレーベルを立ち上げて作品を発表するようになると、1993年にレーベル名を〈Acacia Records〉と改名し、K-ハンド名義としてのトラックをリリースしていく。日本で彼女の名前が知られるようになったのも〈Acacia〉以降で、とくにクロード・ヤング(凄腕のDJで、初期の彼女における共作者)とのスプリット盤「Everybody」は初期の人気盤だった。
 90年代の彼女のトラックの特徴のひとつはシカゴのアシッド・ハウス風の野太いリズムにあり、1994年に〈Warp〉からリリースされた「Global Warning」にもその個性は活かされている。ちなみに同タイトルは気候変動に警鐘を鳴らしているのではなく、当時のダンス・カルチャーの勢いを表現しているであろうことは、同曲のサンプリング・ソースにいちばん良い時期のラヴ・パレードのテーマ曲(Der Klang Der Familie )があることからもうかがえよう。
 初来日は1995年のYellowだったか。ぼくが彼女のDJを最後に聴いたのは、 もうずいぶん前の話で、2001年にデトロイトのハートプラザで開催されたDEMF期間中のことだったが、その年に彼女は〈Tresor〉から『Detroit-History Part 1』という同フェスティヴァルに捧げたアルバムをリリースしている。テクノ、ゲットー、アシッド、ディープ・ハウスなど、いろんなスタイルの楽曲を作ってきたケリー・ハンドだが、テクノ系で1枚選べと言われたら、ラリー・レヴァンとケン・コリアーの思い出にも捧げられ、彼女をサポートしたURとジェフ・ミルズへの感謝が記されている同作品になるだろう。シングルで1枚と言えば、迷うことなく2004年に〈Third Ear〉からリリースされた「Moody EP」だ。彼女の最高のディープ・ハウスが聴けるこの4曲入りは、音楽的にはデトロイト・ビートダウンにリンクしている。
 それにしてもあれだけ強烈な個がひしめくデトロイトのアンダーグラウンド・シーンで早い時期からレジデンシーとなり、DJプレイをもって頭角を表すことは並大抵のことではなかったと推察する。デトロイトのファーストレディが切り拓いた道は、むしろこれから先の未来においてより評価されていくのだろう。ほんとうにお疲れ様でした。

K-Hand Best 11 - Selected By M87 a.k.a everywhereman

1. Etat Solide - Think About It 〈UK House Records〉(1990)

自身のレーベル(後に 〈Acacia Records〉へと改名)からの別名義による初リリース。タイトル曲(Sous-Terrain Mix)のブリーピーなド変態ベースがスゴい。

2. K. Hand Featuring Rhythm Formation - Rhythm Is Back 〈Acacia Records〉(1993)

みんな大好きJoey Beltram「Energy Flash」のベースラインを堂々と引用し、彼女のとびきりファンキーな才能を世に知らしめた傑作。

3. K. Hand / Claude Young - Everybody / You Give Me 〈Acacia Records〉(1993)

女声サンプルが連呼する「Everybody」は、オランダの 〈EC Records〉にもライセンスされ、全世界のフロアで轟いた。地元デトロイト・イーストサイドの後輩、Claude Youngの出世も後押し。

4. K HAND - Global Warning 〈Warp Records〉(1994)

〈Warp〉からの唯一のリリース。「Der Klang Der Familie」のお馴染みフレーズをサンプリングしたタイトル曲は、石野卓球氏もお気に入り。

5. K. Hand - Acid Nation 〈Loriz Sounds〉(1995)

盤面に自らが主宰するレーベルのロゴがデカデカと印刷されたピクチャーディスクにてリリース。アシッドベースの名士ぶりを発揮している。

6. K-Hand / Graffiti - Roots / Graffiti's Theme 〈Sublime Records〉(1996)

デトロイト・テクノのアーティストにヒップホップを製作してもらうという企画の一環。愛機、MPC3000を駆使したディープなトラックで新境地を見せてくれた。

7.K. Hand - Project 69 EP 〈Acacia Records〉(1997)

スカスカのリズムトラックと無慈悲なボイス・サンプルが、シカゴの〈Dance Mania〉の作品群と同じ匂いを漂わせる。彼女の心は常にゲットーと共にあった。

8.K. Hand - Project 5 EP 〈Acacia Records〉(1997)

Mike Banksから伝授されたアングラ魂が発する実験的な土着グルーヴは彼女そのもの。収録曲「Candlelights」は、02年に<LIQUIDROOM>にて開催されたURのパーティでRed PlanetなるDJがプレイ。

9.K. Hand - Supernatural〈Pandamonium〉(1999)

KDJの盟友として知られるサックス奏者Norma Jean Bellが主宰するレーベルから。デトロイトのシンガー、Billy LoことBill Beaverが作詞を手掛けたソウルフルな逸品に仕上がっている。

10.K. Hand - Detroit-History Part 1 〈Tresor〉(2001)

地元デトロイトへの感謝を込めて制作された集大成アルバム。裏ジャケには、Carl Craig、Larry Levan、Ken Collier、Mike Banks、Jeff Millsといった先達への謝意も記されている。

11.K-Hand - Project 6 EP 〈Acacia Records〉(2017)

Bee Geesネタの「You Stepped Right Into My Life」では、往年のディスコからのサンプリングも得意とする彼女の才能が炸裂。自らのレーベルからは本作が最後のリリースとなった。

Keenan Meyer - ele-king

 シャバカ&ジ・アンセスターズタンディ・ントゥリ、マブタ、セバ・カープスタッドといったアーティストたちの活躍で、近年スポットが集まっている南アフリカ共和国のジャズやその周辺のシーン。今年2月にはジ・アンセスターズやタンディ・ントゥリも参加した『インダバ・イズ』というオムニバス・アルバムが〈ブラウンズウッド・レコーディングス〉からリリースされ、南アフリカのジャズの魅力がさらに拡散されている。『インダバ・イズ』には初めて欧米や日本などに紹介される南アフリカの若いミュージシャンたちの作品が収められていたのだが、ピアニストのキーナン・メイヤーも新しく登場した期待の星である。
 現在25才という彼はヨハネスブルグ出身で、もともとクラシック・ピアノを学んできた。なかでもラヴェルやドビュッシー、ラフマニノフなどの影響を受け、彼らの作曲技法についても研究を重ねてきたという。ネルソン・マンデラとセシル・ローズを由来とするマンデラ・ローズ奨学金を得てプレトリア大学に進学したエリートで、2018年に音楽学士号を取得して卒業するが、音楽と共に南アフリカの歴史や西欧との関係、アパルトヘイトの変遷、「#FeesMustFall(フィーズマストフォール運動)」(2015年に南アフリカの大学生らが興した学費値上げに対する抗議活動で、低所得世帯出身の黒人学生たちが中心となっていた)などについても見識を広め、卒業論文は反アパルトヘイト運動やフィーズマストフォール運動と音楽の関連性についての考察だったそうだ。

 こうして彼は人間の意識を活性化させる音楽の力についての理解を深めていくのだが、一方でクラシックの世界からジャズの世界へ歩みだす。故ヒュー・マセケラや、今年1月に亡くなったジョナス・グワングワなど南アフリカのジャズ界のレジェンドたちの音楽を学び、なかでも特にアブドゥーラ・イブラヒム(ダラー・ブランド)に深く影響を受け、その調性と精神性の繋がりに多大な感銘を受けた。また、ジ・アンセスターズのマンドラ・ムラゲニやセバ・カープスタッドのゾー・マディガなど同世代のミュージシャンたちとセッションに励み、レコード・デビューへ向けての準備を進めていった。
 デビュー・アルバムとなる『ジ・アルケミー・オブ・リヴィング』は、こうしたキーナンの歩みや音楽と社会に対する研究と考察、経験がテーマとなっている。参加ミュージシャンはヴィウェ・ムキズワナ(ベース)、スフェレロ・マジブコ(ドラムス)、ステンビソ・ベング(ホーン)、セポ・ソテシ(サックス)で、ストリングス・アンサンブルも入るほか、ゾー・マディガ(ヴォーカル)とケオラペツェ・コルワネ(ヴォーカル)がゲスト参加している。スフェレロ・マジブコやスゼンビソ・ベングはタンディ・ントゥリのグループで演奏し、『インダバ・イズ』にも参加するミュージシャンだ。ゾー・マディガはセバ・ケープスタッドでの活動のほか、ニコラ・コンテの『レット・ユア・ライト・シャイン・オン』(2018年)にもジ・アンセスターズのメンバーたちと参加していた。

 キーナンは世界のいろいろな国を旅しており、そうした旅からの着想も『ジ・アルケミー・オブ・リヴィング』に反映されている。“サンタ・テレサ” はブラジルを旅したときにリオデジャネイロでの印象がもととなっている。独特のリズムを生むスフェレロ・マジブコのドラムスや情感に満ちたホーン・アンサンブルも印象的だが、何と言ってもモーダルな美しいキーナンのピアノが素晴らしい。魂で奏でるようなそのピアノには、アブドゥーラ・イブラヒムの影響が見て取れる。
 “ヒーリング” はヨーロッパを旅行したときにベートーヴェンの墓をみたことからインスパイアされた楽曲で、弦楽四重奏を交えた演奏となっている。芳醇なアフリカン・リズムを取り入れた楽曲で、中間でのストリングスとハンドクラップが交錯する瞬間はとても神々しい。アフリカ音楽と西洋音楽が調和した世界は、キーナンの音楽性と同時に南アフリカ共和国という国そのものも表わしている。“コマニ” はかつてクイーンズタウンと呼ばれた南アフリカの東ケープにある場所についての曲で、そこにはキーナンの母方の祖先であるレッドクリフ氏族が住んでいた。キーナンは幼い頃によくそこを旅行したそうで、自身を育んだルーツへの憧憬が込められたアフリカ民謡のような楽曲となっている。

 “ムーンチャイルド” はケオラペツェ・コルワネの英語詩ヴォーカルをフィーチャーした美しいバラードで、楽曲自体も西欧のポピュラー音楽的な構造となっている。彼女は “ピース・オブ・マインド” でも英語で歌っており、こちらはソウルやR&B的なニュアンスを感じさせるダウンテンポ・ジャズとなっている。一方、“オザム” ではゾー・マディガが南アフリカの先住民族のズールー語で歌っており、アフリカ民謡を下敷きとした楽曲となっている。
 このように『ジ・アルケミー・オブ・リヴィング』は西欧とアフリカが交わったアルバムであり、キーナンの音楽はアフリカ音楽や民謡から、西欧のジャズ、クラシック、ポピュラー音楽などが融合して作られていることがわかる。“Ikigai” という曲は日本語の「生きがい」を示していて、全体的に和や雅楽のモチーフに満ちている。ピアノの音色はどこか琴のようでもあり、フルートもどこか和楽器の横笛のようでもある。キーナンが敬愛するアブドゥーラ・イブラヒムは、京都の上賀茂神社でコンサートをおこなうなど日本の文化や精神を愛するピアニストでもある。彼が説く「生きがい」の哲学にインスパイアされ、そうした和のテイストや精神をも取り入れた楽曲となっている。アブドゥーラ・イブラヒムはゴスペルやクラシックをルーツに持つジャズ・ピアニストで、反アパルトヘイトを代表する偉大な音楽家でもあった。キーナン・メイヤーもタンディ・ントゥリもクラシック畑出身のジャズ・ピアニストだが、彼らはアブドゥーラ・イブラヒムの世界観を現在に受け継ぐ存在と言えるだろう。

第7回 未来は既にそこにある - ele-king

 この現実離れした惨劇は、残念ながら現実そのものだった。目を覆っても耳を塞いでもそこにそれが存在していることに変わりはない。繰り返し視界に現れる五つの輪。あるときは路上に貼られた紙に、あるときはバスで乗り合わせたおじさんの服の上に、そしてネットのニュースに友人のインスタグラムのストーリー、しまいには空にまで。カルト的なものの存在を感じさせるそれはそこかしこに現れ、その度に私の精神を汚染する厄災のような何かを連れてくる。
 普段の私の精神の汚染指数が全くのクリアだとは自分でも思えないが、いまは台風が訪れたときの河川のようになっている。

怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。

 これはニーチェの『善悪の彼岸』に書かれた有名な言葉だが、私が最近この言葉を見たのは、自宅の近くにある老舗台湾料理屋の壁だった。そこには『羊たちの沈黙』などのモデルになった元FBI捜査官のサインと共に、彼の座右の銘であるらしいこの言葉が書かれ、四人がけのボックス席の横のほんの少し黄色くなった壁に飾られていた。私は小ぶりなガラス製のボウルに入った仙草ゼリーを食べながらそれを読み、数々のサイコパスやシリアルキラーに面会してプロファイリングという手法を作り上げたときの彼の精神状態を思った。
 良心や共感の欠如、慢性的な虚言癖、無責任、罪悪感のなさ、自己中心的などがサイコパスの特長らしい。パンデミック以降特に、この国の政治や社会、そして資本主義や新自由主義のサイコパス性を嫌というほど見せつけられてきた。その怪物の中で生きている限り、それにただ身を任せているだけでは自身も怪物へと成り果ててしまうだろう。では、その怪物と闘う者は……。
「サイコパスから自分自身を守ろうと思うなら、一切の関係性を絶つしかない」と解説する文献は多い。政治的無関心やある種の忌避は、そのための生理学的防衛手段なのかもしれないが、それそのものがサイコパス的な行動だ。忌避や無関心を決め込んだ人びとは極度に政治性を恐れるあまり、あらゆるものから政治性を引き剥がそうと必死になる。「音楽に政治を持ち込むな」「スポーツに政治を持ち込むな」「映画に政治を持ち込むな」いろいろなところで何度も聞かされた。そうやって身の回りのあらゆるものから政治性を引き剥がし、全ての問題を「自己責任」という言葉で個人の中に押し込める。音楽を、映画を、スポーツをただのエンターテイメントとして消費し続けるために。

 先日、疲れが溜まっていた私は、カロリーの高い食事を求めて自宅から15分ほどの距離にある小さな店へと向かった。案内されたテーブルの後ろには『AKIRA』が全巻置いてあり、トイレの中にも巨大なポスターが飾られていた。食事をはじめてしばらく経ったころ、不意に店内が騒がしくなり、店内にいた他の客たちが外へ出て空に向かってスマートフォンを掲げはじめた。飛行機が空に五つの輪を描いているらしい。そのまま食事を続けていると、店員のひとりが私のテーブルへとやってきて「お客さん、ブルーインパルスとか興味ないんですか?」と、あたかもそうあるべきだとでも言いたげに聞いてきた。この店内にある『AKIRA』はなんなのだろうか。金田のバイクが登場する予定だった開会式案を支持する声が多いことにも驚かされたが、世間の自称ファン達はこんな程度のものなのだろうか。開会式でゲーム音楽が流れ、漫画的演出があったことに沸き上がっている人たちが多数いるらしい。そのゲームや漫画から何を学んできたのか。いや、ただただ消費しただけか。そして彼らは、それらを消費したのと同じように、多様性や平等という言葉もただのアイコンとして利用して消費した。
 私はこの開会式を見ていない。どうやって見るのかも知らなかったし、意地でも見てやるものかとも思っていた。しかし、周りの友人があまりにも口を揃えて「あれは酷かった」と言うので、ほんの少しの興味(尻を拭いた後の紙に対して持つのと同程度)が湧いてきてしまっているのが正直なところだ。

 私は五つの輪を崇めるこの儀式への抵抗について新聞社からの取材を受けた。記者はどうしても感染症対策の観点からの意見が欲しかったようだが(もちろんその観点からの意見も、親戚一同にお裾分けしてまわりたいほど大量にある!)、もしこの儀式が完璧な感染症対策の下におこなわれていたとしても、ウソやクソにまみれたこの状態ではハンカチを吊るして大歓迎というわけにはいかない。そしてもちろんこれが中止されたとしても、それで全ての問題が解決するわけではなく、この国に積層する問題のひとつが片付いたに過ぎない。
「はじまったからには応援しよう」
アリやジョンやヨーコにも同じ言葉が投げかけられたのだろうか。“Imagine” が例の開会式で使われたらしい。この曲をかけた人や聞いた人は何を Imagine したのだろうか。これを聞いて何も行動を起こさなかったのなら、それはやはりアイコンとしてただ利用し消費しただけだ。
「現実を見ろ」と反対派を嘲笑するような声も多く聞いた。その現実とはなんなのだろうか。強行突破で作り出された現状に盲目的に隷従するのが自称リアリストたちの言う現実を見るということなのだろうか。
 Silence is violence という言葉がある。いまさら説明するまでもないが、不正義がおこなわれている現実から目を背け、黙ったまま放置することは、積極的にその行為に加担しているのと同じであるという意味だ。「はじまったからには応援しよう」も「政治を持ち込むな」も「現実を見ろ」も「やり方が気に食わない」のようなトーンポリシングも、声をあげた人に Silence を強要するもので、お前も積極的に不正義をなせと言っているのと同義だ。
「選手の気持ちを考えろ」のような都合の良い Imagine には、これまでに何度も遭遇した。自分がやっているスポーツが種目にない私の気持ちは Imagine してくれたのだろうか(なんとも思っていないどころかなくてよかったとすら思っている)。以前には総理の気持ちバージョンや大臣の気持ちバージョンもあった。そういえば、人の気持ちが分かるとか汲み取れるとか自称している奴に何度か出会ったことがあるが、その中にろくな奴はいなかった。
 パンとサーカスによる隷従を誓った者たちは、それが取り上げられないためにあらゆる手を尽くす。文化芸術から意味を剥奪して消費し、積極的に不正義をなし、沈黙を強要する。
 このサーカスは未曾有の被害をもたらした311からの復興の象徴という大義の下に誘致された。そしてこのサーカスそのものが新たな未曾有の被害を東京にもたらそうとしている。この被害の跡でまた復興という大義のもと新たな搾取がおこなわれるのだろうか。マーク・フィッシャーは『資本主義リアリズム』の中で、アポカリプスは「これから起こるもの」でも「すでに起こったもの」でもなく、むしろ私たちがいままさにその中を生き抜こうとしているのだと説いたが、私はいまそれを『資本主義リアリズム』を読んだ当時とは比較にならないぐらい痛感している。資本主義の終わりよりも世界の終わりを想像する方が容易いと彼は語った。確かに、このアポカリプスを餌に巨大資本はさらに肥え太っている。ビリオネアたちが宇宙へ行くニュースを見るたびに加速主義者の Exit が頭をよぎる(せっかく脱出したのなら帰ってこなくて良いのに)。しばしば引用されるウィリアム・ギブスンの言葉に「未来は既にそこにある。均等に分配されていないだけだ」というものがある。富の偏りは未来の偏りであり、縁故資本主義によって格差が拡大し続けているこの状況は、私たちの未来が奪われ続けていることを意味している。未来を奪われた私たちは、ただただいまを生き抜くことに精一杯だ。
 ここまで書いて私は、半ば道義的な理由からこの文章の締めくくりをなんとか少しでもオプティミスティックなものにしなければと、無意識のうちに軌道修正を図ろうとしていることに気がついた。例えば、いまというこの瞬間に全てのエネルギーを注ぐからこそ生まれる新しい未来云々というような感じだ。しかし、いまだけを考えて生きることの代償はとてつもなく大きく、構造的な搾取を孕む可能性も非常に高い。現在進行形のアポカリプス、いまを生き抜くことに精一杯な現状、オプティミスティックになれない精神状態、これらは確実に政治的課題であり、未来の再分配を強く求めていくことでしか解決されない。
 私たちには、自称リアリストたちには想像もつかないようないくつもの未来を創造する力があることは確かだ。いまはなんとかそのためのエネルギーを取り戻したい。

https://thebugmusic.bandcamp.com/track/pressure-feat-flowdan

Kelly Ruth - ele-king

 本作『Persistence Beyond All Truth』は、エクスペリメンタルなドローン/コラージュ作品だが、織りあげられていく音たちの持続、変化、質感、接続など、そのコンポジションの手腕は独創性に満ちていて、まるで短編映画を「聴く」かのように鑑賞できたアルバムだった。音の向こうに世界が「ある」感覚とでもいうべきだろうか。全1曲39分の長尺のなかに展開される音世界に、私はただ、ただ呆然として聴き入ってしまった。

 まさに傑作というほかない『Persistence Beyond All Truth』を生みだしたサウンド・アーティストが、カナダ出身のケリー・ルースである。彼女は織り機や紡ぎ車にコンタクト・マイクやエフェクターを付けて、その音を丁寧に録音し、電子的に加工・編集を施し、デジタルとアナログ音の境界線を溶かしていく様な音響を生みだしているサウンド・アーティストである(サウンドのみならずヴィジュアル・アートも制作している)。
 ケリー・ルースは、2019年にカナダはエドモントンのレーベル〈Pseudo Laboratories〉からカセット・アルバム『Forms』をリリースしすでにマニアたちの耳に静かな衝撃を与えていたが、本年になってシドニーを拠点とする〈Longform Editions〉からアルバム『Persistence Beyond All Truth』をリリースしたことで、その存在は決定的なものとなった。このレーベルに名を連ねることは、そういう意味だ。

 〈Longform Editions〉(https://longformeditions.bandcamp.com/)はその名のとおり長尺のトラックのみを収録したアルバムを延々と送り出し続けている実験音楽レーベルである。何はともあれリリース・アーティストが凄いのだ。リチャード・ヤングス、カテリーナ・バルビエリサン・アロウ、パン・アメリカン、リサ・ラーケンフェルド、グレッグ・フォックス、ジャスミン・ガフォンド、セラー、畠山地平、グリーン・ハウス、テイラー・デュプリー、クレア・ラウジー、ロバート・クルゲンベン、サム・プレコップ
ブルット・ナウケ石橋英子などなど、若手からベテランまで国籍も音楽性も異なるさまざまなアーティスト/音楽たちが名を連ねているのである。そんな彼ら/彼女たちの貴重な長尺曲を、とにかく休むことなく(?)われわれの耳を潤すかのように、送り届けくれる貴重なレーベルなのだ。
 なかでもこの『Persistence Beyond All Truth』は本当に素晴らしいアルバムだった。緻密にして優雅、精密にして情景的。聴き込むほどにサウンドスケープが聴覚をとおして聴き手の脳内に、知覚に、感覚に生成するようなアルバムに仕上がっていたからだ。今年にリリースされたエクスペリメンタル・ドローン作品の中でも頭一抜けた見事な完成度である。

 ケリー・ルースが作り出す音にはデジタルのなかにアナログな手触りがある。木や布地などの質感やテクスチャーが音の隅々まで感じることができる。しかもここが重要なのだが、そうした個々の音が折り重なって、一つ(複数の)の大きな持続と層になったとき、それらの音は、その音の正体からそっと離れて、まるで環境音のように、サウンドを構成していくエレメントになるのである。そう、ピエール・シェフェールが提唱した「アクースマティック 」サウンドの継承者ともいえよう。
 そして、その音の層をずっと聴き込んでいくと、まるで仮想世界の中に紛れ込んで、その世界に満ちている環境音を全身で浴びているような感覚になってくるから不思議だ。まるでデヴィッド・チュードアの「レインフォレスト」のようだ、とは言い過ぎだろうか。チュードアの「レインフォレスト」がさまざまなオブジェ(モノ)の発する音によって、まるで森の中の音のような音響を生成したように、ケリー・ルースはさまざまな音素材を用いながら架空の環境音を生成してみせる。

 サウンドのコンポジションが実に見事で、聴き手をひっそりと見知らぬ世界の音の旅へと連れ出してくれるのである。どうやらこのアルバムは、コロナ禍でライヴに行ったり、外出をしたりすることができなくなったことで生まれたサウンドのようである。ケリー・ルースは、部屋の中で仮想世界を夢想し、その音の世界に没入していったらしい。
 となれば、この『Persistence Beyond All Truth』を聴くということは、「仮想世界の旅」のごとき音響体験なのだろう。私がこのアルバムのサウンドスケープに惹かれた理由もそこにあるのかもしれない。いわば「音をめぐる旅」のごときリスニング体験だったのだ。言い方を変えれば音によって仮想世界の音響を「演出」するような感覚かあったのである。まるで一本の音だけの短編映画を「編む」ように、サウンドが演出すれ、編集されていく。

 このアルバムの横に並べるべき作品は、タイプはまるで違うが、イーライ・ケスラーの最新作にして、傑作『アイコンズ』ではないか。『アイコンズ』もまたロックダウン下の都市の音を集め、織るようにしてでき上がったエクスペリメンタル・アンビエントの傑作である。本作『Persistence Beyond All Truth』もまた自宅隔離を余儀なくされたコロナ禍だから生まれえた仮想空間的なアンビエント・サウンドだ。それぞれ作品の色合いや個性、質感は違うが、コロナ禍の世界だからこそ生まれた現代的なエクスペリメンタル・ミュージックという点では共通している。
 この不自由な時代において、先端の実験音楽/エクスペリメンタル・ミュージックは、仮想空間に中に「新しい自由」を手に入れたのではないか。どんなに不自由な時代であっても、人の尽きることのないイマジネーションこそ創作と鑑賞の源泉に思えてならない。

Shintaro Sakamoto - ele-king

 昨年7インチとしてリリースされた坂本慎太郎 “ツバメの季節に” のMVが公開されている。スーパー8mmフィルムで撮影された映像が独特の雰囲気を醸し出しているが、監督はなんと、昨年『エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト』という野心的なアルバムを送り出した井手健介。マスク=仮面をかぶった坂本が都内をうろつく様は、コロナ時代へのリアクションのようだ。味わい深いヴィデオです。

 なお、同じく7インチとして昨年リリースされていた「好きっていう気持ち」のB面、“おぼろげナイトクラブ” のMVも2週間前に公開されたばかり。こちらも必見です。

坂本慎太郎、2曲連続MV公開! 第2弾は「ツバメの季節に」MV公開!

昨年7inch×2枚とデジタルでリリースし、先日海外のRSDで12inchとして再リリースしたEPより、第一弾の「おぼろげナイトクラブ」に続いて、「ツバメの季節に」のミュージック・ビデオが完成致しました。

監督・撮影・編集は自身もミュージシャンとして活動する井手健介。今回のMVもスーパー8mmフィルムで撮影されました。

第一弾MVは、マスクをした坂本が失われたナイトライフの幻影を眺めているような「おぼろげナイトクラブ」、
そして、今回の第二弾MVは、マスクをした坂本が昼間の東京をひたすら徘徊する「ツバメの季節に」。

どちらもコロナ禍で製作された楽曲のイメージを、井手監督が昼と夜の対比と8ミリフィルムの質感で見事に表現しました。

第2弾MV
- ツバメの季節に / 坂本慎太郎 (Official Music Video)-
https://youtu.be/zaSwGfCouMM

第1弾MV
- おぼろげナイトクラブ / 坂本慎太郎 (Official Music Video)-
https://youtu.be/83jO9Ocho2c


[リリース情報]

The Feeling Of Love / Shintaro Sakamoto

M-1: The Feeling Of Love (好きっていう気持ち)
M-2: Obscure Nightclub (おぼろげナイトクラブ)
M-3: By Swallow Season (ツバメの季節に)
M-4: Don't Tinker With History (歴史をいじらないで)

Written & Produced by Shintaro Sakamoto
Recorded, Mixed & Mastered by Soichiro Nakamura @ Peace Music, Tokyo Japan 2020

Vocals, Electric, Lap Steel. Keyboard & vocoder: Shintaro Sakamoto
Bass & Chorus: AYA
Drums, Percussion & Chorus: Yuta Suganuma
Flute & Soprano Saxophone: Tetsu Nishiuchi

Digital Links (now available):
https://virginmusic.lnk.to/TheFeelingOfLove

* 国内では2020年に7inch×2枚、海外では12inch vinylで2021年7月17日にフィジカルリリース。デジタルでは4曲とも配信中。

●坂本慎太郎プロフィール 

1989年、ロックバンド、ゆらゆら帝国のボーカル&ギターとして活動を始める。
2010年ゆらゆら帝国解散後、2011年に自身のレーベル、”zelone records”にてソロ活動をスタート。
今までに3枚のソロ・アルバム、1枚のシングル、9枚の7inch vinylを発表。
2017年、ドイツのケルンでライブ活動を再開し、国内だけに留まらず、2018年には4カ国でライヴ、そして2019年にはUSツアーを成功させる。 
今までにMayer Hawthorne、Devendra Banhartとのスプリットシングル、2019年には、ブラジルのバンド、O Ternoの新作に1曲参加。
2020年、最新シングル『好きっていう気持ち』『ツバメの季節に』を7inch / デジタルで2か月連続リリース。
2021年、Allen Ginsberg Estate (NY)より公式リリースされる、「Allen Ginsberg’s The Fall of America: A 50th Anniversary Musical Tribute」に参加。
様々なアーティストへの楽曲提供、アートワーク提供他、活動は多岐に渡る。 

official HP: www.zelonerecords.com

●井手健介プロフィール

音楽家。東京・吉祥寺バウスシアターの館員として爆音映画祭等の運営に関わる傍ら、2012年より「井手健介と母船」のライヴ活動を開始。様々なミュージシャンと演奏を共にする。
バウスシアター解体後、アルバムレコーディングを開始。2015年夏、1stアルバム『井手健介と母船』を発表する。2017年には12inch『おてもやん・イサーン』をリリース。
その他、映像作品の監督、楽曲提供、執筆など多岐に渡り活動を続ける中、2020年4月、石原洋サウンドプロデュース、中村宗一郎レコーディングエンジニアのタッグにより制作された、「Exne Kedy And The Poltergeists」という架空の人物をコンセプトとした2ndアルバム『Contact From Exne Kedy And The Poltergeists(エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト)』をリリース。連作として12inch『エクスネ・ケディの並行世界』、ライヴアルバム『Strolling Planet ’74』を発表する。

official HP: https://www.idekensuke.com

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