「K A R Y Y N」と一致するもの

Alva Noto + Ryuichi Sakamoto - ele-king

 『Vrioon』(2002)を皮切りに、先日は『Insen』(2005)もリマスター再発された、アルヴァ・ノトと坂本龍一のコラボレーション、〈V.I.R.U.S.〉シリーズ、9月9日にはその第三弾として2006年にリリースされた『revep』が登場。前2作よりも坂本龍一のピアノがフィーチャーされた本作には、“Merry Christmas Mr.Lawrence”のリミックス・ヴァージョンとも言えそうな“ Ax Mr.L.”も収録。
 なお、今回はオリジナル盤にボーナストラック3曲を追加してのリリース。


◆ボーナストラックとして収録された「City Radieuse」が使用されているカールステン・ニコライ(アルヴァ・ノト)の2012年の映像作品『future past perfect pt.02 -cité radieuse』 



Alva Noto + Ryuichi Sakamoto
Revep (reMASTER)

NOTON
流通:p*dis / Inpartmaint Inc.

Prison Religion - ele-king

 なははは、愛の夏ならぬ怒りの夏だった。やかましい。なんてやかましいことか。これでは眠れないぞ。たたでさえ眠りが浅いというのに、本当に止めて欲しい。が、しかし彼らは手加減などしなかった。この夏、耳を塞ぎたくなるノイズを高々と鳴らしていたのは、ヴァージニア州リッチモンドのパーカー・ブラック(Poozy)とウォーレン・ジョーンズ(False Prpht)のふたり、UKのリー・ギャンブルのレーベル〈UIQ〉からリリースされた、牢獄宗教(プリズン・レリジョン)という名の彼らのプロジェクトによる最新アルバムだった。
 「プリズン・レリジョンを聴くことは、体制を転覆させるために必要な素早い反射神経を身につけるために神経系を鍛えるようなものだ」と書いたのは『Wire』誌だが、こやつらは、ディストピアであることがもはや当たり前になってしまっている現状から目をそらさず、それをよしとしている体制に本気で怒っているのだ。現実社会で人びとが強いられている制度的な苦しみに共鳴し、戦闘的なマシンガン・ビートを打ち鳴らす。超アグレッシヴな周波数を発信し、ノイズまみれのラップ……いや、もはやラップではない、ほとんど原始的な叫びに近い声で訴える。(しかも、複数の評者が指摘していることだが、クラブ・サウンドともリンクするこのサウンドは決してマッチョではないのだ)

 悪酔いしそうなこの圧倒的な音楽を、本人たちはアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの1957年のアルバム、『ハード・バップ』に重ねている。同じように、プリズン・レリジョンの『ハード・インダストリアル・バップ』も時代への挑発であると。あるいはまた、彼らはこの激ハードなエレクトロニック・ノイズ・アルバムを、避けては通れない、作らなければならなかった作品としても見ているようだ。まあ、なんとかなるでしょ、などと彼らはのんきなことを考えていないという、それを音で表現したらこうなったと。当たり前の話だが、怒りはとは愛と裏表の関係にある。ノイズ音楽を聴いて涙した経験がある人にはわかるだろう。だからこれは感動的な作品でもあって、いや、しかしそれにしてもやかましいんだが。

J Jazz Masterclass Series - ele-king

 これまで、松風鉱一トリオ、相澤徹カルテット、森山威男、寺下誠、宮坂高志、峰厚介などなど、和ジャズの発掘シリーズ(J Jazz Masterclass Series)を続けているイギリスの〈BBE〉レーベル、9月に2枚のリイシュー盤をリリースする。

 1枚は、ピアニスト、中島政雄のデビュー・アルバム『Kemo-Sabe』 。1979年に〈ユピテル・レコード〉からリリースされた本作は、繊細で洗練された演奏とパワーに満ちた、勢いのある演奏のバランスが絶妙にとれた、和ジャズの分野では捉えどころのない名盤。エレクトリック・フュージョン全盛の時代に発表された本作は、アコースティック色に満ちている。ハービー・ハンコック作で、クィンシー・ ジョーンズや笠井喜美子などがカヴァーした“Tell Me A Bedtime Story”も収録。解説には、中島政雄本人の最新独占インタヴューが掲載。彼のキャリアや本作の制作の背景について語られている。ジャケットも最高だ。

 もう1枚は、鈴木勲が手がけた女性シンガー、宮本典子の、1978年に発表した、ソウル/ジャズの逸品であるデビュー作『Push』。中古市場でオリジナル盤の価格が高騰しているなかの、待望のリイシューになる。笠井紀美子、阿川泰子をはじめとする女性ジャズ・シンガーのブームの真っ只中に録音された名作、この機会にぜひどうぞ。


Masao Nakajima Quartet
Kemo-Sabe‏/キモサベ』

BBE Music


Noriko Miyamoto with Isao Suzuki
Push/プッシュ

BBE Music


Nwando Ebizie - ele-king

 先日……といってももうかれこれ2ヶ月以上前の話だが、坂本慎太郎のライヴに行って、ぼくがもっとも感動したのはベースだった。OOIOOのAYAのベースは、録音物にはない迫力で身体に響いてくる。それは宇宙的であり、瞑想的でもあったが、あの躍動感は傑出していた。
 女性には男性にはないグルーヴ感覚があるとぼくが確信したのは、テクノやハウス・ミュージックを好きになり、クラブで踊るようになってからだ。クラブに通いだすと、フロアで、ちゃんとリズムに乗って踊りたくなるもので、ロックのライヴのように頭の上下運動や手を振り回したりとか、そんな単純な動きしかできない自分も、それこそいつぞや三田格も書いていたように、腰で踊ることを会得したいと思ったのだ。まあ、壁に張り付いてビールを片手に頭をぐらぐらさせているような男性などまずいなかった時代だったし、踊りたいからそこに通っているわけで、おのずとダンスという行為に自覚的になるわけだが、はっきり言って、ダンスフロアで滑らかにリズムに乗れている多くは女性だった。だからぼくは、女性の動きを教師として踊り方を学んだ。ハウスはもちろんのことドラムンベースのパーティでも、プロのダンサーでもないのにちゃんとリズムに乗れているのは女性で、そこには男性にはない柔軟な身体感覚があるとしかぼくには思えない。フロアでつね女性が目立っていたのは、踊りがうまいからだった(いまでも、そうなのかな?)。
 
 Nwando Ebizie——「ンワンド・エビジ」のカタカナ表記で合っているのだろうか、わかる方がいたら教えてください。とりあえずここはンワンド・エビジで進めます。
 ナイジェリア系で、UKのウェスト・ヨークシャー州トッドモーデンを拠点にしている彼女は、音楽家であり、研究者でもある。2007年頃からアフリカの哲学や宇宙論、神話、〈Black Atlantic〉における儀式の文化を研究しているという。しかも彼女はダンサーでもある。
 エビジは最近、マシュー・ハーバートの〈アクシデンタル〉から『The Swan』なるアルバムを出したばかりで、これがじつになんというか、シャバカ・ハッチングとビョークとOOIOOをナイジェリアのひとつのスタジオに詰め込んだような、衝撃的で、ユニークな音楽だった。因習打破的で、リズムが魅力的で、そしてその音楽はジャンルの壁を越えている。母系社会の可能性を追求し、現在必要とされているものを増幅させるために古代を参照していると〈アクシデンタル〉は解説している。

 アルバムは、それこそサンズ・オブ・ケメットの扇情的な旋律と歩を合わせるかのようにはじまる。そして、ハイパー・ファンク・パンクの“I Seduce”へと展開。この曲は、その次の“The Swan”へと繋がる、共同体的な雰囲気をもったダンス・サウンドだ。先行シングルとして発表された“Myrrha”はアート・アンサンブル・オブ・シカゴを彷彿させるアヴァン・ポップといった趣で、“Liturgy”はムーア・マザーの『Sonic Black Holes』の隣に置きたい曲かもしれない。アリ・アップを思い出さずにはいられないコズミックなダブ空間“True Believer”のような曲もあれば、シャンガーンをやったレインコーツのような“No!”とか、どの曲にも面白いアイデアが詰まっている。最後の2曲、催眠的なリズムの“Renewal”、そしてアフロ版ビョークと形容できそうなクローサー“ Something Like Empathy ”もかなり良い。
 
 歌詞には、(反資本主義、インターネット文化の腐敗など)いろいろな意味が込められてるらしいが、ぼくにはわからないので割愛する。「この宇宙には、現在、未来、過去に存在する女性たちの社会があり、このアルバムはそのメタ・ストーリーのいち部です。彼女たちが見つけたもの、話しているもの、祝っているものを通して語られています」と彼女は『クワイエタス』の取材で話しているが、そのなかで、エビジは人種という概念は西欧の植民地主義が作ったものであることを強く説いている。黒人は白人から黒人と呼ばれたことで自分が黒人であることを認識するというこれは、学者ポール・ギルロイの「反人種(against race)」という考え方と同じで、彼女は植民地化される前のアフリカの音を収集し、作品のなかに注入にしている。これが彼女のいう「過去」から「未来」へという意味だ。
 ちなみに人種とはフィクションだとするギルロイの「反人種」なるコンセプトは、黒人性に特別な執着をもたなかったデトロイト・テクノ第一世代ともリンクしているのだが、アメリカでは受けなかったそうな。黒人社会学者W.E.B.デュボイスがいう「二重意識」、つまり他人の目を通して自己を見る感覚を内包しながら生きること、白人からの蔑称「ニガ」を逆手に取ってひとつの立派な芸(ラップ)にさえしているアメリカでは、それはたしかに夢見るユートピアも良いところ、理想主義的すぎる話だったのかもしれない。だが、いまここにその理想主義に準じるアート作品が生まれたという事実に、ぼくは密かに期待を寄せている。

Takuma Watanabe - ele-king

 渡邊琢磨が10月1日、河口湖円形ホールにてライヴ公演をおこなう。
 昨年イギリスのレーベル〈Constructive〉よりリリースされた渡邊琢磨のアルバム『ラストアフタヌーン』と新作初演を、弦楽アンサンブルにドラマー山本達久を迎えた編成で演奏。またスペシャル・ゲストとして、ベルリンから次世代ECMを担う英国のピアニスト、オルガニスト、Kit Downes(キット・ダウンズ)と、ニューヨークからキップ・ハンラハンのディープルンバへの参加ほかで著名なキューバ出身ドラマー、Daphnis Prieto(ダフニス・プリエト)がリモートで参加する。

【日時】
2022年10月1日(土)
11:00〜21:00(予定)

【出演】
■12:00-13:15
地行美穂(vn1)波多野敦子(vn2)角谷奈緒子(va)橋本歩(vc)千葉広樹(cb)山本達久(dr) 渡邊琢磨(cond)Guest:Daphnis Prieto(drum)from New York ※海外オンライン出演

■19:00-20:15
渡邊琢磨アンサンブル
地行美穂(vn1)波多野敦子(vn2)角谷奈緒子(va)橋本歩(vc)千葉広樹(cb)山本達久(dr)渡邊琢磨(cond)Guest:Kit Downes(Charch organ)from Berlin ※海外オンライン出演

【会場】
河口湖円形ホール:https://stellartheater.jp/halls/enkei/
〒401-0304 山梨県南都留郡富士河口湖町河口3030
TEL:0555-76-8822
駐車場について:https://stellartheater.jp/halls/stellar/parking/

【料金】
1プログラム:¥5,000(前売)¥6,000(当日)
1日通し券 :¥10,000(前売)¥12,000(当日)
※チケット販売は2022年8月19日より

詳細:https://www.jjazz.net/jjazznet_blog/2021/08/post-89.php

Natalie Beridze - ele-king

 90年代に野田努が「トランスは享楽的で、テクノは快楽的」と評した時、なるほどな~と思った。それは当たってるな~と。享楽的な音楽も快楽的な音楽もどっちも好きだった僕は、そして、もう少しそのことについて考えた。享楽的な音楽はその瞬間だけが面白く、長持ちしない音楽で、快楽的な音楽は繰り返し何度も聴ける音楽。だけど、初めから快楽的なものしか選ばないと決めてかかるとそれも堅苦しい。10年か20年ぐらい経ってから享楽的な音楽をもう一度聴くと独特の身体性がよみがえり、それはそれで別種の面白さがあるとも。要はどれだけ夢中になったかということで、その経験があれば享楽的でも快楽的でもどっちでもいいかなというのが最終的な結論である。快楽的だと感じた音楽にも時間の経過の中でますます強度を増していくものもあれば価値が薄れていくものもある。逆に享楽的でも快楽的でもなく、ただ自分がその良さを分かりたくて何度でもトライする音楽も「課題」として抱えていると、その音楽が理解できた時の喜びはまた別次元のものだし、わかったつもりでいた音楽がまったく違うものに聞こえた瞬間はさらにたまらないものがある。音楽を聴いていて、いつも思うことは、だから、時間がいくらあっても足りないということ。地球をしばらく止めてくれ、僕はゆっくり音楽を聴きたい(寺谷修司のパクリでした)。

 デヴィッド・ムーアによるビング&ルース名義『Tomorrow Was The Golden Age』を初めて聴いた時、これはモダン・クラシカルを享楽的なモードで聴かせる試みだと僕は思った。それなりに話題になった作品だけれど、僕はそれこそ1~2回は面白いけれど、何度もは聴かないなと。あれから8年が経っているので、久しぶりに聴いてみたところ、記憶と同じ音楽がそこにはあり、これを1時間近くも聴き続けるのは面倒くさいなという身体性もぶり返した。2003年にトーマス・ブリンクマンのレーベルからTba名義でデビューしたナタリー・ベリツェも本名だけを使い始めた頃からモダン・クラシカルに作風を寄せ始め、多種多様なアプローチを試みてきた人なのでどことなく捉えどころがなかったのだけれど、〈ルーム40〉からは初となる『Of Which One Knows』で、実に快楽的なモードと絡ませることとなった。モダン・クラシカルはインダストリアル・ミュージックが変成したものだという認識が僕にはあるので、そういう意味ではビング&ルースもナタリー・ベルツェも苦行モードから大いなる価値観の転換を図っているという意味で同じ方向性を示すものであり、ベリツェだけに快楽性を感じるというのはどういうことなのか、にわかには自分でもよくわからない。

 ベリツェにとって12作目となる『Of Which One Knows』は、実際には2007~12年にかけて録音されていたトラックにレーベル・ボスのローレンス・イングリッシュがポスト・プロダクションを加えたものである。没トラックだったということなのだろうか。それとも彼女のメイン・レーベルであるグトルン・グートの〈モニカ・エンタープライジズ〉とは価値観が合わなかった曲を集めたということなのだろうか。昨年リリースされた『Mapping Debris』には似たようなタイプの曲もあったので、それを聴いたイングリッシュが独自に方向性をオファーしたということも考えられる。オープニングがT・S・エリオットの詩をつぶやくように歌う“Ash Wednesday”。オーケストラを丸ごとスクリュードさせたような曲調は、続く“Sio”にも引き継がれ、そのままスモーカーズ・デライトなモダン・クラシカルという異形のサウンドスケープが一貫して最後まで響き渡る。これまでのアルバムのように急に目先を変えるような曲が差し挟まることはなく、“Forensic Of The Thread”で少しばかり棘のある雰囲気を醸し出す以外、全体としては延々と快楽的なヴィジョンがリヴァーブの海を漂い続ける。甘ったるくもあり、虚心になったり、感傷的になるなど、表現にグラデーションが備わっていてとても素敵なアルバムである。

 どうやらこのアルバムに描かれたイメージは彼女の幼少期の記憶と結びついているらしく、このところアレキサンドラ・スペンスやマドレーヌ・ココラスなど個人の記憶とアンビエント・ミュージックを結びつけたアルバムを多発する〈ルーム40〉としては同傾向のプレゼンテーションになっているのではないかと(意識的かどうかはわからない)。そういった等身大のサンプリングなどからアンビエント・ミュージックを構築した最初の例は、僕は、コージー・ファニ・トゥッティがスロッビン・グリッスル『D.o.A. 』に寄せた“Hometime(下校時間)”が最初だったのではないかと思うのだけれど、どうだろう? ジャン~クロード・エロワやエリアル・カルマ、あるいはブライアン・イーノやポーリン・オリヴェロスが壮大なテーマに取りんでいた一方で、パンク以降のDIY精神がアンビエント・ミュージックに反映された例として“Hometime”は稀有な例であり、意外とその系譜は途切れていたのではないかと。

THE PIANO ERA 2022 - ele-king

 ジャズでもクラシックでもアンビエントでもブルースでもラテンでもポップスでも、とにかくピアノが好きだという人は多い。どんなジャンルであれ、ピアノの音色はいまもなお、独自の魅力を放っているのだ。
 「ピアノ音楽の現在」 にフォーカスした異色のフェスティヴァル、〈THE PIANO ERA(ザ・ピアノエラ)〉が11月19日から20日の2日間にわたって開催される。ピアノから放たれる、弾く者の音から染み出る音楽性や個性、生まれ育った文化までも感じ取ろう、というコンセプトで 2013 年にスタートした同フェスティヴァルは過去4回開催されているが、コロナによってしばらく休止、3年ぶりの開催となる。
 通算5回目となる今回は、アメリカ・ブラジル・アルゼンチン・台湾・日本から個性的で創造性溢れる音楽家が集う。主催者は、“ピアノ・ファン、音楽ファン、クリエイターへ刺激を与えるだけでなく、ピアノに親しんでいる子供たちにも感じ取ってもらい「世界にはこんなにスゴイ音楽があるのか!こんなすごいピアニストがいるのか! 僕も私も音楽を作りたい!」と思ってもらえる、創造意欲の背中を押す体験となることも目的”としている。
 以下、概要をチェックしよう。

おかえりなさい、ピアノの世紀へ。
世界から日本から、ピアノ音楽の現在と未来に出会う二日間。
隔年開催しているピアノ世紀の到来を告げるフェスティバル、
コロナ禍の影響で3年ぶり5回目の開催決定。

 誰もが親しみのあるもっともポピュラーな楽器のひとつ、『ピアノ』をキーワードに、ジャンルでくくらずにオリジナリティ溢れるピアノ音楽を創造し演奏するピアニストたちを国内外から招聘し一挙に紹介する “THE PIANO ERA(ザ・ピアノエラ)”。近年メキメキと拡張し躍動を続ける ” 今聴くべき世界の 「ピアノ音楽の現在」” にフォーカスし、世界で多様に発展しているピアノ音楽の ” 今 ” を体感できるともに、ピアノから放たれる、弾く者の音から染み出る音楽性や個性、生まれ育った文化や地域性までも感じ取ろうという画期的なフェスティバル。

 5回目を迎える今回は、アメリカ、アルゼンチン、ブラジル、台湾、日本から、ジャンルを超越した独自のピアノ音楽を創造するアーティスト6組が出演します。
 いま誰もが体感すべきピアノ音楽、ピアニストの魅力に出会える二日間です。

【公演名】THE PIANO ERA 2022 / ザ・ピアノエラ 2022

【日程】2022年11月19日(土)・11月20日(日)

【会場】めぐろパーシモンホール 大ホール

【時間】
11月19日(土)16:15開場/17:00開演
11月20日(日)15:45開場/16:30開演

【チケット】
単日券:7,800 円 / 2 日通し券:14,800 円
※学生(高校生以上)は 1,000 円、子供(中学生以下)は3,000 円を当日会場にてキャッシュバックします。要学生証提示。単日券のみ対象。
※未就学児入場不可

【出演者】
11月19日(土)
タチアナ・パーハ&アンドレス・ベエウサエルト(ブラジル、アルゼンチン)
Cicada(台湾)
haruka nakamura (日本)

11月20日(日)
テリー・ライリー(USA)
ダン・テファー “Natural Machines”(USA)
高木正勝(日本)

【チケット販売】
オフィシャル先行抽選販売受付:8月13日(土)12:00 - 8月21日(日)23:59
一般発売日:9月3日(土) ※めぐろパーシモンチケットセンターは9月7日10時から販売開始

【プレイガイド】
イープラス(eplus.jp)
ローソンチケット(l-tike.com / 0570-084-003 / Lコード)
チケットぴあ (t.pia.jp / 0570-02-9999 / Pコード)
めぐろパーシモンホール (www.persimmon.or.jp / 03-5701-2904 (10:00-19:00))

オフィシャル先行はディスクガレージチケットサイト『GET TICKET』にて取り扱い。
※めぐろパーシモンホールは単日券のみ取扱

【問合せ】
ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00-19:00)
ノーヴァスアクシス 03-6310-9553

【THE PIANO ERA オフィシャルHP】 https://www.thepianoera.com

【主催・企画・制作】ザ・ピアノエラ・アソシエーション [novus axis / NRT / SHIKIORI]
【共催】公益財団法人目黒区芸術文化振興財団
【制作協力】ディスクガレージ/エピファニーワークス/一般社団法人スキヤキ・オフィス
【招聘・制作協力】株式会社ハーモニーフィールズ
【協力】RYU / Kentec / Edith Grove / flau / frue / 株式会社ヤマハミュージックジャパン
【メインビジュアルイラスト】山口洋佑
【ウェブサイト製作】 Azusa Yamada Design

Associates - ele-king

 今年もアナ・ウィンターは名前を呼ばれなかった。NHKのアナウンサーはトム・クルーズやウイリアムズ王子の姿をウインブルドンの客席に見つけるとすぐに名前を呼んだのに、同大会に毎年姿を見せるアナ・ウィンターは名前を呼ばれたことがない。ラミ・マレックやレベル・ウィルソンまで呼ばれたのに、映画『プラダを着た悪魔』のモデルとなった『ヴォーク』の編集長は一度も名前を呼ばれたことがない。ロンドン・オリンピックで『モンティ・パイソン』もわからなかったNHKとはいえ、それにしてもウィンターは日本で知名度がない。もしかするとウィンター本人よりも彼女が毎年、NYで主催するファッションの祭典、メット・ガラの方が最近は認知度が高いのかもしれない。今年もグッチのドレスを着たビリー・アイリッシュ、ほとんど裸だったカーラ・デルヴィーニュ あるいはキム・カーダシアンとピート・デヴィッドソンのツーショットや赤い芋虫と化したジジ・ハディッドの画像が次々とスマホの画面に流れてきた。ウィンターが今年のテーマとして掲げたのは「金ピカのグラマー」だったにもかかわらず、白い魔女と黒い魔女に扮したジェンナー姉妹も僕には楽しかった。金持ちが力の限り見栄を張る世界を僕は否定しない。ポップ・カルチャーからゴージャスという価値観をなくすことに僕は賛成できない。明るくて華やかなヴィジュアルはそれだけで心躍るものがある。しかし、3年前のメット・ガラはさすがに悲惨だった。ウィンターが提示したテーマは「キャンプ」。メット・ガラのレッド・カーペットを埋め尽くしたセレブの誰1人として「キャンプ」を理解していなかった。シャンデリアに扮したケイティ・ペリーは論外としても、ほぼ全員が「キャンプ」を「わざとらしい」という意味でしか捉えられず、都会的な生活様式に対するアイロニーやダンディズムを演じるという文脈でファッションが具現化されることはなかった。並みいるファッション・デザイナーたちも70年代のコピーがようやくといったところで、シャネルやマーク・ジェイコブスもひどければ、お題を出した当のアナ・ウィンターまで酷評されることとなった。そう、現代のセレブたちに「キャンプ」はいささか高尚過ぎた。「キャンプ」というのは70年代初頭に現れたゲイ・ファッションや映画『ピンク・フラミンゴ』を論じる際にスーザン・ソンタグらが用いた美術用語。ポップ・ミュージックでいえばデヴィッド・ボウイやルー・リードが牽引したグラム・ロックのタームと大体のところは重なっている。「グラマラス」が語源とされるグラム・ロックには音楽的な共通性はないとされるのが普通で、マーク・ボランのT・レックスやブライアン・イーノが在籍していたロキシー・ミュージックがポップ・ミュージックをアートの領域へと推し進め、ダニエル・J・ブーアスティンが『幻影の時代』で指摘したマスメディアによる情報操作や「スペクタクル」といった概念を「スターを演じるスター」というメタ表現によってリプレゼンテーションしたもの。いわば熱狂の戯画化である。


 グラム・ロックは1975年には下火になり、時代はパンク・ロックへと移り変わる。「スペクタクル」という概念をそのまま引き継ぎ、「グラマラス」を(ヴィヴィアン・ウエストウッドがパンク・ファッションを指して名付けた)「コンフロンテイション(敵対)」に置き換えればパンク・ロックはグラム・ロックのヴァリエーションだったとも考えられ、ハード・グラム・ロックという呼称でも通用したように思える(ダムドなどはまさにそれだった)。しかし、「パンク」や「コンフロンテイション」はあまりに時宜を得過ぎていたために社会的な仕草としてアートの領域にとどまるにしてはポテンシャルが高過ぎた。その影響について多くを書く余裕はないけれど、ポップ・ミュージックだけを見ても、その余波は多岐に及び、2年間の混沌が過ぎた後もなお混乱は続くことになる。スロッビン・グリッスルによるインダストリアル・ミュージックは「コンフロンテイション」を純粋培養し、政治用語だったオルタナティヴがアンダーグラウンドのロックを形容するジャンル用語として採用される。個人的な雑感をひとまとめにいえば、70年代末に「衝動」として存在した気運が「破壊」や「反動」を経て80年代には全体が解きほぐれることなくそのまま異なるステージまで移動したという印象。同じものがメジャーとアンダーグラウンドの両方から同じ力で引っ張られ、どちらも譲らない状態が長く続いたというか。アラン・ランキンとビリー・マッケンジーによるアソシエイツがブライアン・イーノの隠れた名曲でもあるデヴィッド・ボウイ“Boys Keep Swinging”をカヴァーしてデビューした1979年はまさにそうした時期にあたり、翌年に入ってリリースされたデビュー・アルバム『The Affectionate Punch』もメジャーとアンダーグラウンドの両方に向かうヴェクトルが錯綜し、彼らが何をしたいのかすぐに理解できるようなアルバムではなかった。実際、このアルバムは彼らが進むべき道を明確にした2年後に丸ごとリミックスされ、驚くほど引き締まった内容に改められ、ミックスだけでこんなに変わってしまうのかと、けっこうな感動を覚えたものである。だいぶ後になってアソシエイツのライヴ音源を聞くことができるようになると、その当時の演奏があまりにもパンクだったことに驚かされ、そのありあまる衝動が『The Affectionate Punch』には滲みでていたということも理解できるようになったけれど、“Transport To Central”のような曲はスロッビン・グリッスルとも近しく聞こえてしまうギターのアレンジだったり、現在に至ってもまだ素直に楽しめる内容ではない。そう、彼らのライヴ・テイクを聞くことができたのは89年にリリースされた『The Peel Sessions』が初めてで、『The Affectionate Punch』ではミドル・テンポのディスコ・ナンバーとしてアレンジされていた“A Matter Of Gender”が81年のそれではスラッシュ・ヴァージョンとでも言いたくなるような早さで演奏され、エフェクトをかけたギターが鳴りっぱなしだったり、セッション全体がほとんどノイズのようなパフォーマンスだったことにはほんとに驚かされた。数合わせのようにしてニューロマンティクスに分類されがちだったアソシエイツが、現在はポスト・パンクに数えられるようになったのも当然というか("Club Country" はニューロマンティクスの気をひくためにつくられたらしいけれど)。

 『The Affectionate Punch』がキュアーの成功で勢いを得ていた〈フィクション・レコーズ〉にライセンスされたランキン&マッケンジーは続いて〈ベガーズ・バンケット〉傘下の〈シチュエーション・トゥー〉と契約。81年に5枚のシングルをリリースし、それをコンピレーション・アルバム『Fourth Drawer Down』にまとめると、それらが格別大きなヒットとなったわけでもないのに〈ベガーズ・バンケット〉傘下に〈アソシエイツ〉レーベルを新設するという高待遇を受け、セカンド・アルバムのために1000万円近いアドヴァンスを受け取る。このことが彼らの方向性を決定的にする。大金を手にした彼らはまず500万円を投じて倉庫を改造したスタジオをつくり、残りも派手に使いまくった。「バカげたお金の使い方をした」と、キュアーと掛け持ちだったベースのマイケル・デンプシーは後のインタヴューで答えている。主には洋服代とドラッグに消え、マッケンジーは愛犬のためにホテルのルームサーヴィスでスモーク・サーモンを取り寄せるなど「それこそ狂気だったと言っても過言ではない」とランキンも回想している。「自分たちは自信満々だったし、あれだけの浪費がなければあんなアルバムはできなかった」と。そう、『Sulk』というアルバムはとにかくゴージャスで、贅沢を音楽にしたらこうなるだろうという作品である。音楽的な連続性はもちろんあるものの、『The Affectionate Punch』や『Fourth Drawer Down』に残っていたしみったれムードは粉微塵に消し飛んでいた。時期的にもポスト・パンクの大半が闇に向かい、PILやザ・フォールなどアンダーグラウンドも手法的に充実していたので、余計にその差は際立った。ジョージ・マイケルがジョイ・ディヴィジョンの作品を愛していたことはイギリスでは周知のエピソードだけれども、ジョイ・ディヴィジョンがワム!の曲を演奏し、カルチャー・クラブが“Love Will Tear Us Apart”をカヴァーしてもアソシエイツのようにはならなかっただろう。アソシエイツが表現したグラマラスで華やかな世界観はとても独特で、プリンスでさえ地味に思えるほどである。アソシエイツというグループがデヴィッド・ボウイのカヴァーでデビューしたことを思い出すと、おそらく彼らの本質はグラム・ロックにあり、パンク・ロックからグラム・ロックへと揺り戻しを図りながら、その過程でパンク・ロックから得た過剰さを光り輝くような世界観に転化させた。それが『Sulk』というアルバムだったのではないだろうか。パンク・ロックのパワーを持ったグラム・ロック。『Sulk(不機嫌)』というタイトルにはそれこそ当時、パンク的なものを感じたものである。ABCを指してブライアン・フェリーが「僕より僕みたいだ」というコメントを残しているので、グラム・ロック的なスペクタクルはパンク以降も衰える気配はなかったとは思うけれど、その多くはニューロマンティクスのような反動ではあってもアソシエイツのようなかたちでモディフィケーションを表現できた例は少なかったのだと思う。

 ビリー・マッケンジーというシンガーはどこか名曲歌手のような風情があり、実際、イエロやホルガー・ヒラーなど客演の幅は広く、ビリーと名乗っているのもビリー・ホリデイにあやかっているからだといっていたのにもかかわらず『Sulk』は軽快なインストゥルメンタルで幕を開ける。いつかオリンピックの開会式で聴きたい“Arrogance Gave Him Up”は勇壮として、流線型という形容詞はこの曲のためにあるとしか思えない。『Sulk』は全編を通してドラムがかなり派手で、それはスネアをメタル仕様に、タムを銅性の素材に変えたことに由来するらしく、“Arrogance Gave Him Up”でもスネアを叩き込む箇所の激しさは容赦なく、これが流れるようなシンセサイザーとの対比でくっきりとした輪郭が浮かび上がる。かと思うと続く“No”ではまさに名曲歌手が思う存分に歌い上げるモードへと一変し、”Bap De La Bap”では再び金属音の乱舞に舞い戻る。ギターもヴォーカルも、あるいは複数のシンセサイザーも一歩も引かないと言った鬩ぎ合いを続け、それこそ「デヴィッド・ボウイよりデヴィッド・ボウイみたい」なサウンドになっていく。スピードを出しては落とし、上げてはまた落とすといった感じで”Gloomy Sunday”のカヴァーへ。ヨーロッパでは自殺の歌として知られる30年代のクラシックで、その成立過程を追った映画までつくられた曲をビリー・ホリディが戦後すぐにアメリカでヒットさせたスタンダード・ナンバー。これをアソシエイツはラバーズ・ロック調のシンセポップにアレンジし、悲しみに沈んだ曲調からその情緒をナルシシスティックな感情へと反転させてしまう(ビョークはこの曲をアソシエイツのオリジナルだと思い込んでいて、オーケストラが演奏し始めた時に驚いたという話をしている)。アナログ盤ではAサイドのラストを飾るのが“Nude Spoons”。ノイ!を思わせるメトロノミック・ビートを強調したパンク風ディスコ・ナンバーで、ビリー・マッケンジーが15歳の頃に体験したLSDによるトリップが歌詞の元になっているらしい。彼の書く歌詞は曖昧で意味が取れず、日本語には訳しづらいし、当時から大した意味はないとも言われていたので、あまり気にしたことはなかったけれど、10年ほど前に昭和女子大で英語を教えている清水みちさんに“Arrogance Gave Him Up”や“Party Fears Two”の訳し方を訊いてみたところ、非常に興味深い英語の使い方だということで、彼女が参加しているシェイクスピア研究会で議題に取り上げてくれたりして、とてもユニークだということは教えてもらったものの、どう訳したらいいかはやはりよくわからなかった。彼らの最大のヒットとなった“Party Fears Two”などはPartyを政党として解釈すると共産党と保守党の意味にも取れるらしく、とてもスキゾフレニックな感覚を表現しているなどイギリスでの解釈も多岐にわたっている(これ以上はもっと英語に詳しい人に委ねたい。そして、意味がわかったらぜひ教えて下さい。清水みちはちなみに保坂和志の奥さんです)。

 Bサイドに移って“Skipping”。個人的には洋楽でベスト3に入るフェイヴァリット・ナンバー。ミステリアスなスキャットで始まり、ランキンの弾くギターの循環コードとデンプシーによるソリッドなベースが入ってくるだけで昇天しかけてしまう。調子にのってスキップし続けていくうちにだんだんと意識がかすれていくような情感に襲われる曲で、宙を泳ぐようなキーボードはここでも効果的。とはいえ、彼らの曲はサイケデリックではなく、ドラッグの影響がダイレクトに出たものはない。そこはやはりパンク・スピリットが色濃いというか。続く“It's Better This Way”もノイ!とデヴィッド・ボウイが手を組んだような曲で、メトロノミック・ビートとスコットランドらしい燻んだ叙情が見事に溶け合った傑作。スタイリッシュで、実にかっこいい。そして、最大のヒット・シングルとなった“Party Fears Two”。完成に3年をかけたという大作で、他の曲よりも少しテンポを落とし、ノイジーな要素も後退。全編でヴォーカルが引き立てられ、圧倒的にセクシーで、これでもかと艶やかさを増している。きらびやかな音が背景で鳴り続け、これまでになくソウルを感じさせ、実際、パンク色は薄れ、ランキン&マッケンジーによる最後のシングルとなった「18 Carat Love Affair」への導線となった曲である。『Sulk』がリリースされた4ヶ月後にアラン・ランキンが脱退してアソシエイツは実質的に解散したも同然となり、それはツアーに対する2人の考えが違ったからだということになっているけれど、“Party Fears Two”で疾走感とは異なる価値観に足を踏み入れたことが分裂の遠因となったのではないかと僕には思えて仕方がない。それだけこの曲は他の曲とは異なるフォーマットを有しているし、新しいものをつくりたいと願った2人の到達点だったのではないかと。達成されてしまうと、目的はなくなってしまうのである。続いて“Club Country”。『Sulk』では最も大袈裟な曲で、明らかに大団円という位置に置かれている。手法的にも彼らの集大成になっている。エンディングは“Nothinginsomethingparticula”。前述した”18 Carat Love Affair”のイントロが2分だけ収録され、続いてリリースされた”18 Carat Love Affair”のフル・ヴァージョンにはカップリングとしてダイアナ・ロス“Love Hangover”のカヴァーも収録。『Sulk』の40周年記念盤はここまでの10曲がアナログ化されたものと、さらに同内容のCDと「Outtakes, Monitor Mixes & Rarities」、「The Peel Sessions」及び「Gigant, Apeldoorn 10/01/81」でのライヴを収めた計46曲がプラスされたエディションに加えて“Party Fears Two”のヴァージョンを集めたCDシングルか、”18 Carat Love Affair”の7インチ・シングルがおまけに付いているデラックス・エディションと4パターンがリリースされている。2016年にリリースされたエディションで13曲追加されていた曲も再度リマスターされているなど「The Peel Sessions」以外は重複していない模様。マニア泣かせです。でっぷり太ったアラン・ランキンが3年前から各曲の解説動画をユーチューブにアップしているので、興味のある方はそちらもどうぞ。

 『Sulk』というアルバムはとても幸福なアルバムで、リリース当初に理解されなかったという経験はしなかった。ヒット・チャートも駆け上がり、批評家の絶賛も同時に手に入れた。ただし、モノマネやフォロワーというものがまったくなく、時代のなかにポツンと取り残された作品となっていく。ニュー・オーダー、ザ・スミス、ジーザス&メリー・チェインと続いたブリティッシュ・ロック・シーンに彼らの陰が落ちることはなく、アシッド・ハウス期にはグラム・ロックよりもサイケデリック・ロックが復活したことは歴史に刻まれている通り。ザ・スミス“William, It Was Really Nothing”のWilliamはビリー・マッケンジーのことを指していて、どうやらモリッシーとマッケンジーは恋人関係にあったということが後々にはわかってくるのだけれど、そのことと音楽シーンはまったく関係がない。ビリー・マッケンジーもアラン・ランキンもソロ活動は細々としたもので、2人とも『Sulk』に迫るような作品はつくれず、何が原因かはわからないけれど再結成もうまくはいかなかったらしい。そして、1997年にはビリー・マッケンジーの訃報が流れる。当時のエレキングで追悼文を書いた時はガンを苦にして自殺という報道だったので、それをそのまま引き写してしまったのだけれど、その後、BBCがマッケンジーの姉と父親に取材した追悼番組を製作し、そこでは母親の死に耐えきれず、実際には後追い自殺だったということが明らかにされていた。イギリスでは珍しく労働階級出身のファッション・デザイナー、アレキサンダー・マックイーンと同じである。アソシエイツのファッショナブルなジャケット・デザインはすべてマッケンジーのアイディアで、レザー・ファッションでプールに浸かるというハード・ゲイまがいの『Fourth Drawer Down』はDAF『Gold Und Liebe』と同じ時期であり、両者はまさに都会的な生活様式に対するアイロニーやダンディズムを体現するものだった。プロモーション・ヴィデオやシングルのジャケットを飾るマッケンジーはいつもファッショナブルで、自分たちの音楽性を見事にヴィジュアル化した『Sulk』が見事だったことは繰り返すまでもない。アレキサンダー・マックイーンはデヴィッド・ボウイ『Earthling』やビョーク『Homogenic』のジャケット・デザインも手掛けていて、ボウイの影響を隠さないマッケンジーにビョークが影響を受けているなど、マッケンジーとマックイーンがどうも重なって見えてしまう僕はマッケンジーとマックイーンが2019年のメット・ガラでコラボレーションしていたら、どんなスタイリングを見せてくれただろうかなどとつい考えてしまう。

恋愛映画が苦手だった──

社会の中で変化し、多様化してきた恋愛という営み、それをつねに反映してきた数々の恋愛映画
無声映画時代の名作から最新の話題作まで縦横無尽に語り合う、一風変わった恋愛/映画論!

目次

反=恋愛映画宣言(佐々木敦)
「映画の恋」と「映画への恋」(児玉美月)
第一章 リアリティと作為性――二〇一〇年代の日本映画
 花束みたいな恋をした/寝ても覚めても/愛がなんだ/本気のしるし/宮本から君へ/きみの鳥はうたえる/そこのみにて光輝く/彼女がその名を知らない鳥たち/溺れるナイフ/永い言い訳
第二章 多様化する恋愛像――二〇一〇年代の外国映画
 キャロル/ハーフ・オブ・イット/はちどり/マリッジ・ストーリー/テイク・ディス・ワルツ/ロブスター/ラブストーリーズ/君の名前で僕を呼んで/ブルーバレンタイン/お嬢さん/ムーンライト
第三章 恋愛映画の巨匠?――ホン・サンス
 逃げた女/それから/あなた自身とあなたのこと/川沿いのホテル/カンウォンドのチカラ/次の朝は他人
第四章 クリシェとそれを超えるもの――キラキラ青春映画
 君の膵臓をたべたい/四月は君の嘘/恋と嘘/好きっていいなよ。/今日、恋をはじめます/オオカミ少女と黒王子/orange-オレンジ-/殺さない彼と死なない彼女/私がモテてどうすんだ/かぐや様は告らせたい
第五章 肉体と精神/リアルとフィクション――ドロドロ性愛映画
 (秘)色情めす市場/愛のコリーダ/火口のふたり/愛の渦/性の劇薬/ニンフォマニアック/トーク・トゥ・ハー/倦怠/ラブバトル/アイズ ワイド シャット
第六章 「恋愛/映画」に惹かれるもの――オールタイム・ベスト恋愛映画・日本編
 乱れ雲/悶絶!!どんでん返し/ドレミファ娘の血は騒ぐ/トカレフ/あなたがすきです、だいすきです/2/デュオ/unloved/ともしび/ある優しき殺人者の記録/れいこいるか/カルメン純情す/美しさと哀しみと/風たちの午後/戦場のメリークリスマス/undo/渚のシンドバット/贅沢な骨/blue/Dolls/NANA
第七章 「恋愛/映画」に惹かれるもの――オールタイム・ベスト恋愛映画・海外編
 天国は待ってくれる/忘れじの面影/心のともしび/突然炎のごとく/白夜/ママと娼婦/カルメンという名の女/牯嶺街少年殺人事件/トロピカル・マラディ/アンナと過ごした4日間/都会の女/13回の新月のある年に/ポンヌフの恋人/ブエノスアイレス/ピアニスト/ドリーマーズ/恍惚/スプリング・フィーバー/詩人の恋/燃ゆる女の肖像
第八章 恋愛映画の現在――二〇二二年の新作
 アネット/イントロダクション/あなたの顔の前に/チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい/愛なのに/猫は逃げた/TITANE チタン/リコリス・ピザ
恋愛映画崩壊前夜(児玉美月)
恋愛映画から遠く離れて(佐々木敦)

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Ryoji Ikeda - ele-king

 現在、青森で大規模な個展を開催中の池田亮司だが、12月に新作『ultratoronics』が発売されることになった。オリジナル・アルバムとしては2013年の『supercodex』以来、9年ぶりの作品となる。リリースに先がけ、10月15日(土)には渋谷WWW Xで最新ライヴも決定。新作ともども楽しみです。

池田亮司、『supercodex』以来約10年ぶりとなるオリジナルアルバム『ultratoronics』を2022年12月にリリース予定。
新作発表に先駆けた最新ライブセットを10月15日(土)WWW Xにて世界初演。

視覚メディアとサウンドメディアの領域を横断して活動する数少ないアーティストとして、国際的に活躍する池田亮司。
体験する者の知覚を揺さぶるライブパフォーマンスとインスタレーション作品は、唯一無二の圧倒的強度で常に世界から注目されている。
本公演は、知覚の極地を開拓し続ける池田亮司の、約10年ぶりとなるオリジナルアルバム『ultratoronics』リリースに先立って行われる最新ライブセット世界初演となる。

なお、池田は2009年以来となる国内美術館での大規模な個展を青森「弘前れんが倉庫美術館」にて現在開催中(8月28日まで)。
国内初展示となる《data-verse 3》や、約100年前に酒造工場として建造され2020年に美術館へと生まれ変わった建築空間にあわせて構成された作品など、貴重な作品が展示されている。

ultratronics [live set]のチケットは、8月10日18:00より先行予約受付を開始。
25歳以下のオーディエンスが購入可能な「U25チケット」も枚数限定で販売する。

Ryoji Ikeda
ultratronics [live set]

出演:池田亮司 / Ryoji Ikeda
日程:2022年10月15日(土)
会場:WWW X
開場/開演:19:30 / 20:30
料金:
・一般:¥5,000(ドリンク代別)
・U25:¥3,500(ドリンク代別) *枚数限定

チケット情報:
・先行予約 8月10日(水)18:00 〜 8月14日(日)23:59 ※先着受付
・一般発売 8月20日(土)10:00
・受付URL:https://eplus.jp/ultratronics1015/

※U25チケットは25歳以下のお客様がご購入可能なチケットです。ご入場時に年齢確認のため顔写真付き身分証明書の提示が必要となります。ご持参がない場合、一般チケットとの差額をお支払いいただきます。

公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/014756.php
問い合わせ:WWW X 03-5458-7688

[バイオグラフィー]

池田亮司 / Ryoji Ikeda
1966年岐阜生まれ、パリ、京都を拠点に活動。
国際的に活躍する作曲家/アーティストとして、電子音楽の作曲を起点としながら体験としてのアートを提示する。音やイメージ、物質、物理現象、数学的概念などの様々な要素の精緻な構成を用いて、見る者/聞く者の存在を包みこむライブ・パフォーマンス、インスタレーションを発表している。2018年に自身のレーベル「codex | edition」を立ち上げた。2022年には弘前れんが倉庫美術館にて大規模な個展を開催。アルスエレクトロニカがCERN(欧州原子核研究機構)と共同創設したCollide@CERN Award受賞(2014年)、第70回芸術選奨文部科学大臣賞(メディア芸術部門)受賞(2020年)。
www.ryojiikeda.com
www.codexedition.com

[リリース情報]

作品タイトル:ultratoronics
アーティスト名:Ryoji Ikeda
レーベル:codex | edition(国内盤) / NOTON(海外盤)
発売予定日:2022年12月

※詳細後日発表

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