「K A R Y Y N」と一致するもの

Andrew Weatherall - ele-king

 ロンドンのレーベル〈Heavenly〉が、ウェザオールのリミックスを集めたコンピレイションをリリースする。『Heavenly Remixes Volumes 3 & 4 (Andrew Weatherall Remixes)』と題されたそれは2022年1月28日にリリース、16曲が収められている。
 セイント・エティエンヌやベス・オートン、ダヴズなどのリリースで知られる同レーベルだが、創設者のジェフ・バレットがウェザオールのマネージャーを務めていたこともあり、両者の関係は長くつづいた。今回の編集盤はウェザオールが〈Heavenly〉のために提供してきたリミックス音源を集めたもので、必聴のセイント・エティエンヌ “Only Love Can Break Your Heart (A Mix of Two Halves)” をはじめ、マーク・ラネガンやグウェノー、コンフィデンス・マンなどが収録されている。フォーマットはLP、CD、配信の3種類。ウェザオールの魂に触れよう。

https://ffm.to/heavenlyremixes3-4

Heavenly Remixes 3: Andrew Weatherall volume 1

1. Sly & Lovechild - The World According to Sly & Lovechild (Soul of Europe Mix)
2. Mark Lanegan Band - Beehive (Andrew Weatherall Dub)
3. Flowered Up - Weekender (Audrey Is A Little Bit More Partial Remix)
4. Gwenno - Chwyldro (Andrew Weatherall Remix)
5. Saint Etienne - Only Love Can Break Your Heart (A Mix of Two Halves)
6. Confidence Man - Bubblegum (Andrew Weatherall Remix) 08:19
7. Espiritu - Conquistador (Sabres Of Paradise No.3 Mix)
8. The Orielles - Sugar Tastes Like Salt (Andrew Weatherall Tastes Like Dub Mix Pt.1 - Live Bass)

Heavenly Remixes 4: Andrew Weatherall volume 2

1. audiobooks - Dance Your Life Away (Andrew Weatherall Remix)
2. Saint Etienne - Heart Failed (In The Back Of A Taxi) (Two Lone Swordsmen Dub)
3. Doves - Compulsion (Andrew Weatherall Remix)
4. TOY - Dead an Gone (Andrew Weatherall Remix)
5. Confidence Man - Out The Window (Andrew Weatherall Remix)
6. LCMDF - Gandhi (Andrew Weatherall Remix II)
7. Espiritu - Bonita Mañana (Sabres Of Paradise Remix)
8. Unloved - Devils Angels (Andrew Weatherall Remix)

Placebo - ele-king

 今年2021年は〈Mute〉がテレックスのリイシュー企画をスタート、編集盤『This Is Telex』がリリースされている。同バンドの音楽的頭脳だったマーク・ムーランは、じつはテレックス以前にもあるグループを率いていた。それがプラシーボである。
 プラシーボは、ブラジルのアジムスと並んでカーク・ディジョージオに霊感を与えた70年代ベルギーのジャズ・ファンク・バンドで(ディジョージオはムーランの『Placebo Sessions 1971-1974』のライナーノーツを執筆)、つまりテクノの文脈にも影響を及ぼしている。
 今回Pヴァインの「VINYL GOES AROUND」が手掛けるのは、そんなプラシーボの7インチ・ボックスセット。彼らが残した3枚のアルバムから1枚ずつ7インチを切り、それらをひとつにまとめたという次第。J・ディラの元ネタとしても知られる “Humpty Dumpty” をはじめ、珠玉のグルーヴが詰め込まれている。限定400セットとのことなので、お早めに。

天才キーボーディスト、マーク・ムーラン率いるプログレッシヴ・ジャズ・バンド、PLACEBO の7インチ・カラー盤3枚入りボックス・セットが VINYL GOES AROUND よりリリース!

ヨーロピアン・ジャズ~レア・グルーヴ派までに絶大な人気を誇る、天才キーボーディスト、マーク・ムーラン率いるプログレッシヴ・ジャズ・バンド、 PLACEBO の7インチ・カラー盤3枚入りボックス・セットを、株式会社Pヴァインが運営するアナログ・レコードにまつわる新しい試みを中心としたプロジェクト、"VINYL GOES AROUND" よりリリースします。

1枚目は J.Dilla など、ヒップホップ・クラシックの元ネタとして多数の楽曲でサンプリングされた代表曲 “ハンプティ・ダンプティ”。ディガー待望のシングルカットをクリア・イエローヴァイナルで。

2枚目はドープなシンセ・ベースと重いビートがグルーヴィーで Hip Hop のサンプリング・ソースとしても有名な Balek の1973年当時にリリースされたオリジナル7インチ・シングルをクリアー・レッド・ヴァイナルで世界初リイシュー。

そして3枚目はモーダルなハーモニーとファンキーなビート、ホーンセクションが重なり合うレイジーなサウンドと巧みなシンセ・リードが心地よい “ダグ・マダム・メルシー” に、トランペットのワウ・ソロや、漂うローズの上にホーン・リフが絡み合う “S.U.S” をカップリング。こちらはブルー・ヴァイナルとなります。

箱のデザインは1st、2nd、3rdアルバムのジャケットを使用し3種類作成。計400セットの限定仕様となりますのでお早めにお買い求めください。

・PLACEBO 7inch BOX 購入ページ
https://vga.p-vine.jp/exclusive/
* 12/8(水)午前10:00より掲載、予約開始となります

[リリース情報]
PLACEBO『7inch Box』
収録タイトル:
「Humpty Dumpty / You Got Me Hummin'」(クリア・イエローヴァイナル)
「Balek / Phalene II」(クリアー・レッド・ヴァイナル)
「Dag Madam Merci / S.U.S.」(ブルー・ヴァイナル)
品番:VGA-7002A, VGA-7002B, VGA-7002C
フォーマット:7inch vinyl×3
価格:¥7,260(税込)(税抜:¥6,600)
※BOXのデザインは3種類の中よりお選び頂けます。
※限定品につき無くなり次第終了となります。
※商品の発送は2022年1月初旬ごろを予定しています。

Alva Noto - ele-king

 グリッチとパルス。ノイズとリズム。グリッドとドローン。厳密な建築と設計。それらの組み合わせによるミニマルな電子音響音楽。そのむこうにある濃厚なノスタルジア。未来。カールステン・ニコライが20年以上にわたって生み出してきたミニマルなエレクトロニック・サウンドは、電子音響におけるパイアニアのひとつとして現在進行形で君臨している。
 しかしそのサウンドはけっして固定化していない。常に変化を遂げている。90年代のノト名義のノイズとパルスによるウルトラ・ミニマルなサウンドスケープ、00年代以降のアルヴァ・ノト名義で展開されたグリッチと電子音とリズムの交錯によるネクスト・テクノといった趣のトラック、そして透明なカーテンのような電子音響以降のドローン/アンビエント作品、坂本龍一とのコラボレーション作品で展開するピアニズムと電子音響が交錯し、高貴な響きすら発している楽曲、言葉が電子音響のなかで分解され、リズミックな音響ポエトリー・リーディングにまで昇華したフランスの詩人アン=ジェームス・シャトンとの共作アルバムまで、どの音楽も電子音楽・電子音響の領域を拡張するものである。

 そして本年リリースされた新作アルバム『HYbr:ID Vol.1』は、カールステン・ニコライ=アルヴァ・ノトのアルバムの中でも一、二を争う傑作ではないかと思う。もちろん、カールステン・ニコライ=アルヴァ・ノトのアルバムはどの作品もクオリティが高い。だが本作では彼がこれまでおこなってきた実験の数々が、極めて高密度で融合しているように感じられたのだ。ちなみにリリースはカールステン自身が主宰する〈noton〉からである。

 このアルバムの楽曲は、もともとは19年にベルリン国立歌劇場で上演されたリチャード・シーガルの振付/演出のベルリン国立バレエ団によるコンテンポラリー・バレエ作品「Oval」のためにカールステン・ニコライがアルヴァ・ノト名義で作曲した音源である。
 「コンテンポラリー・バレエのための音楽」という制約の多いなかで、彼は自身がこれまで培ってきた技法のすべてを投入しているような音響空間を生成していく。00年代以降に展開された「uni」シリーズのリズム/ビート、「Xerrox」シリーズのアンビエント/ドローンが、まさにハイブリッドな音楽技法によって見事に統合されているのだ。まさに00年代~10年代のカールステン・ニコライ=アルヴァ・ノトの総括にしてネクストを指し示すようなアルバムなのである。

 透明な電子音、パルスのようなリズム、微かなノイズが空間的に配置され、重力と無重量を超えるようなサウンドスケープを展開している。加えて本作ではコンテンポラリー・バレエのための電子音響という面もあるからか、反復の感覚(コンポション)がこれまでのカールステン・ニコライのトラックとはやや異なり、反復と非反復を往復するような構成になっているのだ(どこか故ミカ・ヴァイニオの音響を思わせるトラックに仕上がっているのも興味深い)。いままで聴いたカールステンのサウンドを超えるような音にも思えた。ミニマルと反ミニマル。反復と非反復。人間と機械などの相反するもの、まさに「ハイブリッド」なサウンドスケープが展開されていたのである。

 レーベルのインフォメーションによると、「映画のような映像技術とハドロン、ブラックホール、コライダーなど、トラックタイトルにもなっている科学的事象が描かれた静止画像にインスパイアされたという作品で、天体の物理現象やフィクションをダンスの動きを結びつける形を模索しながら制作が行われた」という(https://noton.info/product/n-056/)。
 いわば自然現象とテクノロジカルな技術と20世紀以降のアートフォームを援用しつつサウンドを生成し、それを人間の肉体の運動に落とし込むというようなことがおこなわれているのだろうか。それは先にあげた反復(機械)と非反復(人間)の交錯に結晶しているのかもしれない。

 アルバムには全9トラックが収録されている。いかにも10年代のアルヴァ・ノト的な2曲目 “HYbr:ID oval hadron II” もまるで魅力的だが、「Xerrox」シリーズ的なアンビエンス感覚に非反復的なサウンドが交錯し、透明でありながら不穏なムードを放つ3曲目 “HYbr:ID oval blackhole” が何より本アルバムのサウンドを象徴しているように思えた。いわば不安定、非反復の美学とでもいうべきか。
 この曲を経た4曲目 “HYbr:ID oval random” では自動生成するような細やかなリズムがクリスタルな電子音響とミックスされていく。5曲目 “HYbr:ID oval spin” では “HYbr:ID oval blackhole” のようなサウンドをより緻密にしたような音響空間を展開する。不定形に放たれる音の粒といささかダークなトーンの電子が交錯し、まるで映画のサウンドトラックのように聴こえてくる。
 以降、アルバムはまるで仮説と証明を繰り返すように、もしくは演算をおこなうかのように、リズムとアンビエントが交錯し、緻密に、そして大胆に音響世界を展開していくだろう。どこまでも澄み切ったクリアでクリスタルな音は、聴く側の知覚を明晰に磨き上げてくれるような感覚を発していた。聴いているととにかく「世界」が明晰に感じられるのだ。

 そしてアルバムはクールネスな温度を保ったまま、しかし次第にテンションを上げつつクライマックスといえる9曲目 “HYbr:ID oval p-dance” に至る。ここでカールステンは惜しげもなく近年のアルヴァ・ノト的な(つまり「uni」シリーズ的な)ミニマルにしてマシニックなリズム/ビートを展開している。もちろん、これまでアルバムを通して培ってきた不穏な電子音響ノイズも、しっかりとトラックに仕込まれている点も聴き逃せない。まさに20年以上に渡る彼の技量が圧縮したようなトラックといえよう。ラストの10曲目 “HYbr:ID oval noise” では、規則的に打たれる低音に、まるで人口の雨や風のような電子音響が重なり、透明な夜とでも形容したいほどの音響空間を構築する。圧倒的なサウンドスケープだ。

 “HYbr:ID oval noise” に限らず本作はどこか天候や宇宙などの超自然現象を電子音響でシミュレートしているような雰囲気がある。それがカールステンのミニマム/マシニックな音世界をよりいっそう深く、大きなものに変化させたたのではないか。未来の電子音響世界など誰にもわからないが、しかし、このアルバムの音に未知と既知が交錯しているのは違いない。音楽はまだまだ進化する。そんな「可能性」を感じさせてくれる稀有なアルバムといえよう。

 「ハイブリッド」シリーズのVol.1と名付けられていることからも想像できるように、このシリーズもまた続くのだろう。期待が高まる。

ロックの男性中心の物語に対しての気迫のこもった反論、
それぞれの自由を追い求めた女パンクの信念と実践を報告する、
フェミニスト音楽史の決定版 !

『女パンクの逆襲(原題:Revenge of The She-Punks)』は、イギリスで最初の女性音楽ジャーナリストとしてパンクをレポートし、現在はNY大学で「パンク」と「レゲエ」の講義を持つ通称「パンク教授」による、女性パンクについての目を見張る調査によるレポートです。

本書は単なる時系列に沿った史実を述べているだけのものではありません。著者は、「アイデンティティ」、「金」、「愛」、「プロテスト」という4つのテーマに分けながら、パンクが女性にとっていかに解放的な芸術形態であるのかという理由を探り、歴史をひとつひとつ解き明かしていきます。
70年代のロンドンとNYにはじまりながら、英米優位主義/白人至上主義に陥ることなく、コロンビアやインドネシア、日本や中国、ドイツやスペイン、メキシコやジャマイカ、東欧やインド、ロシアへと、女パンクの世界ツアーとして繰り広げられていきます。

2019年に刊行された本書は、米『ローリング・ストーン』誌のブック・オブ・ジ・イヤーに選ばれ、英『ガーディアン』をはじめとする世界の有力紙において絶賛されました。フェミニスト音楽を知る上で、今後も参照されること必至の決定版です。

登場するアーティスト:
ポリー・スタイリン、ブロンディ、ビキニ・キル、ザ・レインコーツ、デルタ5、パティ・スミス、マラリア!、ESG、少年ナイフ、ザ・スリッツ、プッシー・ライオット、メイド・オブ・エース、CRASS、ポイズン・ガールズ、挂在盒子上、クリッシー・ハインド、グレイス・ジョーンズ、オー・ペアーズ、ザ・モ‐デッツ、ネナ・チェリー、スリーター・キニー、ザ・セレクター、ジェイン・コルテス、タンヤ・スティーヴンス……ほか多数

著者:ヴィヴィエン・ゴールドマン/Vivien Goldman
『サウンズ』紙の編集を経てフリーに。ジョン・ライドンが初めてジャマイカを訪れたときに同行したジャーナリストとしても知られる。ボブ・マーリーの伝記など著書多数。NY在住。

訳者:野中モモ
東京生まれ。翻訳(英日)およびライター業に従事。訳書にレイチェル・イグノトフスキー『世界を変えた50人の女性科学者たち』(創元社)、キム・ゴードン『GIRL IN A BAND キム・ゴードン自伝』(DU BOOKS)、アリスン・ピープマイヤー『ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア』(太田出版)などがある。著書に『デヴィッド・ボウイ 変幻するカルト・スター』(筑摩書房)、『野中モモの「ZINE」 小さなわたしのメディアを作る』(晶文社)。

目次

ウーマニフェスト─女宣言─ はじめにひとつ
1 ガーリー・アイデンティティ わたしはだれ?
2 マネー わたしたちはわたしたちの金?
3 ラヴ/アンラヴ 二元制を打倒する
4 プロテスト 女というバリケード
アウトロ わたしたちのコーダ
謝辞
索引

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STONES FROM THE INSIDE - ele-king

ローリング・ストーンズの貴重なプライベート写真が満載
ビル・ワイマン撮影による写真集刊行!

初期からストーンズのベーシストとして活躍したビル・ワイマンは音楽活動のかたわら写真撮影を趣味としており、折に触れメンバーを撮影してきました。本書では66年のツアーから90年アーバン・ジャングル・ツアーまでの写真を収録。

メンバーだからこその親密な素顔や、デヴィッド・ボウイ、ジョン・レノン、リンゴ・スター、セルジュ・ゲンズブールといった綺羅星のようなスターたちとの交流が至近距離で捉えられています。

ビル自身による解説の翻訳もつき、全ストーンズファン必携の一冊です!



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Shonen Knife - ele-king

 メルケル元ドイツ首相が退任式の曲に選んだニナ・ハーゲン、いろいろ波紋を呼んでおりますが、やはり時代は「女パンク」なのでしょうか。
 このタイミングで少年ナイフのインタヴューが英『ガーディアン』紙に掲載されています。活動40周年記念とのことで、ニルヴァーナとのツアーのエピソードやイギリスでのブレイク、その後のバンド活動、現在準備中の新作などについて語られています。

https://www.theguardian.com/music/2021/dec/03/40-years-of-japanese-rockers-shonen-knife-nirvana-looked-wild-i-was-so-scared

 ちなみに、便乗して恐縮ですが、12月23日に刊行するヴィヴィエン・ゴールドマン(著)野中モモ(訳)『女パンクの逆襲──フェミニスト音楽史』でも、日本のアーティストとしては唯一、少年ナイフが紹介されています。
 いわく、彼女たちのサウンドは世界でも唯一無二であり、経済的に危機的な状況に陥ったとしても、そこから脱する助けになるような茶目っ気がある、と。ぜひそちらもご注目ください。


https://www.amazon.co.jp/dp/4910511032/

250(イオゴン) - ele-king

 90年代に電気グルーヴが日本に紹介したと言ってもいいだろう、いわば韓国演歌・ミーツ・テクノのミュータント・ディスコ、その名はポンチャック。このスタイルはしかし時代を重ねるなかで風化し、若者たちからは「オヤジの音楽」と切り捨てられて、いつしか忘却へと向かった。そんな現状のなか、ひとりの電子音楽プロデューサー‏‏/DJ 、250(イオゴン)が立ち上がった。K-POPから韓国ヒップホップまでと幅広く音楽制作に携わっているこの実力者は、韓国大衆文化の金字塔=ポンチャックの火を消すまいと、その現代再解釈に向き合うことにした。そして完成したアルバムが『ポン』である。これがまた、実験と大衆性(ユーモア)が両立した素晴らしい内容になっているのだ。ぜひチェックして欲しい。
 
 こちらは先行公開曲の“Bang Bus (ベンバス)”の衝撃的なMV。主演のペク・ヒョンジンは俳優としても有名で、是枝裕和監督が手がけ る初の韓国映画『ブローカー(仮題)』にも出演予定だとか。

250 - Bang Bus (Official MV) from BANATV on Vimeo.
韓国ではMVの無修正版がYouTubeで公開されるや否や大きな話題になったが、YouTubeのコンテンツ規制によって削除されたため、Vimeoにて再公開された。一方、YouTubeでは新たに公開された検閲版を見ることができる。

 というわけで、ポンチャックの逆襲がはじまります。2022年2月発売予定のデビュー・アルバム『ポン (Ppong)』を楽しみに待とう!

https://orcd.co/250_bangbus

Klein - ele-king

 その音楽のリスナーが、作り手の好む音楽を共有している確率は高い。いや、もちろんロレイン・ジェイムズのリスナーがマスロックを聴いている率は低いのかもしれない。が、しかしスクエアプッシャーやエイフェックス・ツインを聴いている率は高いだろうし、ボーズ・オブ・カナダのリスナーがMBVを聴くことになんの違和感はない。かつてはレディオヘッドのリスナーもがんばってオウテカを理解しようとしたものだった。しかしながら、クラインを熱狂的に支持した実験的な電子音楽を好むオタクたち(まあ、ぼくもそのひとりであろう)がジェイ・Zやブランディ、マライヤやブリトニーを聴く可能性は極めて低いのではないかと推測される。彼女が好きなオペラ歌手のルチアーノ・パヴァロッティなどもってのほかだ。クラインほど、自分が好きな音楽と自分が作っている音楽のリスナーとが乖離しているアーティストも珍しい。いったい、ラジオから流れるポップR&Bばかりを聴いている人が、どこをどうしたら『Only』『Lifetime』のような作品を作れてしまうのだろうか。いや、まだその2枚ならわかる気がする。まだその2枚なら……彼女はその後、活動場所をクラブやライヴ会場のほか、ICAやテートブリテン、MOMAのような美術館にまで広げ、英国の社会福祉制度をテーマにしたミュージカル(本人いわくディズニー風であり、『ナルニア国物語』風だという)にも出演した。アーティストとしての道を順当に歩んでいると言えるのだが、先々月の『Wire』のインタヴューでは、「ジェイ・Zのレーベルとサインするためのラップのレコードを作る準備もできている」と語っている。「それを冗談で言うこともできるけど」と付け加えて、「でも、私はマジだ」と。

 本作は2021年に自主リリースされた『Frozen』に続くアルバムで、オランダのクラシック音楽専門のレーベルからの、クラシック音楽を習ったことのないアーティストによる、決してクラシカルとは言えないが多少そんな響きをもった作風になっている。作品のテーマは、南ロンドン育ちの彼女が7歳から5年のあいだナイジェリアのラゴスで祖母といっしょ暮らした日々にあるという話で、タイトルの『ハルマッタン』とは西アフリカで吹く貿易風のことだ。
 でまあ、ナイジェリアといって日本の音楽ファンが頭に浮かべるのは、とにもかくにもアフロビートだろう。アフリカ大陸のなかでも大国のもっとも栄えた都市として知られるラゴスにはポップスもあれば消費文化もある。ところが、『ハルマッタン』はこうしたナイジェリアの音楽のどれとも似ていないと察する。ぼくなりに喩えるなら、R&Bと出会ったクラスター(クラウトロックにおける電子音楽のリジェンド)とでもいったところだろうか。
 アルバムは、クラインによるピアノにはじまる。自由奔放な独奏で、フリーキーかつ機敏、ジャジーかつ溌剌としている。本人の説明によれば「20年代からR&Bスタイルまでのピアノ史」ということだが、ピアノ一本でここまで表現してしまうのかと感嘆する。2曲目はその続きのごとくピアノから入ってすぐさま一転、熱気をはらんだカオスの世界──ホルン、サックス、ノイズ・エレクトロニカ、サウンド・コラージュ──に突入する。それから“ハ長調のトラッピング(Trapping In C Major)”における壮大なシンフォニー。コズミックなシンセサイザーと管楽器が交錯する“未知のオプス(Unknown Opps )”、ハーモニカ(?)による重厚なドローンを響かせる“優雅さの憑依(The Haunting Of Grace )”……、ヴォーカル無しの、彼女のシュールな音響世界が次から次へと繰り広げられる。“イバダンのために作られた(Made For Ibadan)”は歪んだエンリオ・モリコーネか、さもなければ蒸留されたエリック・サティというかなんというか。クラインはこのアルバムで、ピアノ、サックス、ハーモニカ、エレクトロニクス、ドラム、ギターを演奏しているというが、もちろんすべてが独学だ
 歌モノは1曲だけ。グライムMCのJawninoを擁した“スカイフォール”だが、これは過去作で見せたダブで水浸しのR&Bではない。たとえばPhewがゴスペルをやったらこうなるのかもしれないと。蜃気楼のような曲“ギャングスタではないが、それでも終わりから(Not A Gangster But Still From Endz)”を挟んではじまる“希望のディーラー(Hope Dealer)” はシンセサイザーとピアノが曲を盛り立てる美しいアンビエントで、この曲は後半のハイライトと言っていいだろう。

 かように『ハルマッタン』は強烈なアルバムであるが、もうおわかりのように、お決まりの“ブラック”ではない。彼女はひょっとしたら、ファンや音楽メディアがもとめる“ブラック”に反発しているのかもしれない。が、これはアフリカの乾いた貿易風の名を冠した彼女のアフリカ体験から生まれた作品なのだ。クラインはいつものように想像力を全開にし、魔法のようなサウンドスケープを創出した。おそらく感覚的に。彼女は、1週間に100曲作ることもあれば公園に行って遊んだりしてばかりの月もあるといい、1週間前には弾けなかった楽器を演奏して録音するともいう。次はまったく違うことをやるかもしれないというし、ドリルのレコードだって準備中だとうそぶく。ま、なんにせよ、彼女が本当にロック・ネイションから作品をリリースすることがあったら、ぼくもジェイ・Zを……(略)。

RP Boo - ele-king

 ご存じのかたは多いかもしれないが、2021年はフットワークのビッグ・タイトルが立て続けにリリースされた。いずれもジューク/フットワークを世に紹介した、マイク・パラディナスの〈Planet Mu〉からのリリース。まずは、DJマニーによるロマンティックな『Signals In My Head』から、次にヤナ・ラッシュによるダークでエクスペリメンタルな『Painful Enlightenment』。そのどちらも、シカゴ発のアンダーグラウンドなダンス・ミュージックを背景に、ときに前進を試み、ときにそのサウンドから逸脱しながら、僕らリスナーに素晴らしいエレクトロニック・ミュージックを提供してくれた。そして、その真打ちと言うべきか、今年度の「フットワーク三部作」と形容したくなる一連のリリースにトリとしてドロップされたのが、同ジャンルで最も名高いDJのひとり、RPブーによる『Established!』だ。リリースから随分と時間が経ってしまったが、紹介しよう。

 個人的に、DJマニーやヤナ・ラッシュにしても「これがフットワークなのか?」と思わせる、良い意味でフォーマットに縛られない作風だと感じた。続く『Established!』をその観点から比較すると、どちらかと言えばより正統的な音だというのがおおよその印象。DJマニーの “Havin’ Fun”、あるいはヤナ・ラッシュの “Suicidal Ideation” を初めて聴いたときの、あの「ガツン」としたサプライズ感は正直なところなかった。しかしそれでも、やはりそこはRPブーと言うべきか、いまだにシカゴのローカルなシーンの旗振りをしつつ、フットワークという物語を前進させるDJのひとりなだけあり、そこから繰り出される音は相変わらず最小限で最大限を生み出す類の逸品。まるで何十年もひとつの道を歩み続けてきた職人の、その熟練した技法をまざまざと見せつけられている気分になった。

 RPブー本人によれば、「ハウス・ミュージックの未来がフットワークで、その次に来るものもまたつながっている」と。例えば、“All My Life” のピアノはまさにハウス的であるし、実際、“All Over” や “Beauty Speak Of Sounds” などは「ハウスのコミュニティに捧げた」と語るように、どれもフットワークという短い歴史のスパンだけでなく、シカゴに受け継がれるダンス・ミュージックの長い歴史のスパンを想起させる音だ。つまり細かく言えば、それはシカゴにおいて連綿と続くゲットー・ハウスからの流れを汲むジューク/フットワークの歴史であり、彼はそれを『Established!』のサウンドにおいてひとつの重要なアングルとして提示している。ただむやみに未来を渇望するのではない、むしろ良い未来を作るためにはまず過去を見定める必要があるということだろう。彼はそのアングルを才能あるシーンの後進たちに向けていると語るが、それをフットワークという音の枠組みで完璧に示してしまうところがすごい。無論、それはRPブーというひとの技がすでにヴェテランの域であることを証左している。

 また、僕がフットワークを気に入っている理由のひとつとして、その過激なサウンドの反面、サンプリングされる素材は定番の大ネタも多く、わかりやすいという点がある。DJラシャドがスティーヴィー・ワンダーをズタズタにカットアップしたようにね。その点、『Established!』もサンプリングの側面において素晴らしいフットワーク作品と言える。クラス・アクションの “Weekend” を拝借した “Another Night To Party” は、ほぼひとつのフレーズから最後の奇妙なビッチダウンまで、全てが完璧のクローザーだし、フィル・コリンズのヴォーカルを効果的に利用した “All Over” も独特のミニマルな音のアレンジメントと完璧にマッチしている。そしてなにより、スヌープ・ドッグの “Nuthin But a G Thang” をサンプリングした “How 2 Get It Done!” は、もうそのままあのスモーキーなヒップホップ・トラックがフットワーク・ヴァージョンとして提供される間違いのない曲だ。大ネタをいかにドープに仕上げるか、フットワークにあるそんな精神性においても、彼は職人的な高みへと上り詰めていると感じさせられた。

 結論を言ってしまえば、『Established!』は見逃すべきではない作品。たしかに、これといった目新しさや衝撃はないかもしれない。しかし、今作をそういう視点から語るのはナンセンスだと僕は思う。このシカゴのフットワークの職人が紡ぎ出す音は、熟練された技巧が凝らされており、そこには僕らが耳を傾けるべき意味がある。

MAZEUM × BLACK SMOKER × Goethe-Institut - ele-king

 さまざまな分野の鬼才たちが集まり、展示とパフォーマンスを繰り広げる3日間。12月21日から23日にかけ、赤坂の東京ドイツ文化センターに、アートと音楽の空間〈MAZEUM〉が出現する。
 〈BLACK SMOKER〉とGoethe-Institutの協力により、会期中は多彩なアーティストが参加するエキシビションが開催(入場無料)、夕方からはDJ、機材ワークショップ、ライヴ・パフォーマンスなどがおこなわれる。出展アーティストはIMAONE、KILLER-BONG、KLEPTOMANIAC、TENTENKO、VELTZ、伊東篤宏、カイライバンチ、河村康輔、メチクロ。詳細は下記より。

[12月16日追記]
 同イベントの予告動画が公開されました。また、一部ラインナップの変更がアナウンスされています。日本国の水際措置の強化に伴い、残念ながら Sayaka Botanic および DJ Scotch Egg の出演がキャンセル。かわりに、食中毒センター(HairStylistics × Foodman)および Ill Japonica a.k.a Taigen Kawabe (Bo Ningen) の出演が決定しています。
 なお、ワークショップは定員到達につき予約終了とのことです。

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