「K A R Y Y N」と一致するもの

Mika Vainio - ele-king

 パンソニックはノイズ=音響を変えた。テクノや電子音楽とノイズを結びつけたのだ。ノイズとテクノの拡張でもあった。90年代末期はテクノイズ系、グリッチもしくは接触不良音楽などと呼ばれたが、それらの音響的な交錯の果てに現在の「エクスペリメンタル・ミュージック」があると私は考える。つまり10年代以降のエクスペリメンタル・ミュージックは、パンソニック、そしてアルヴァ・ノト、ピタ、ファマーズ・マニュアル、池田亮司などのグリッチ・電子音響派第一世代を継承しているのだ。
 たとえばノイズとエレクトロニック・ミュージックを交錯させて、10年代以降のエクスペリメンタル・ミュージックの立役者になったベルリンのレーベル〈PAN〉のような存在は、かつてパンソニックらグリッチ・電子音響派第一世代が切り開いた領域の延長線上にあると考えてみるとどうだろうか。
 じっさい、現行エクスペリメンタル・ミュージックの世界において「電子音響派第一世代」の影響は世代を超えて今なお健在に思える。だからこそパンソニックのひとりであるミカ・ヴァイニオが2017年に亡くなったとき、多くのアーティストやレーベルが深い哀しみと敬意と追悼の念を示したのだろう。そう今や「ミカ・ヴァイニオ」の名はエクスペリメンタル・ミュージックの世界において神話的ともいえる響きを放っている。じじつ彼の未発表音源は死後もなお多くリリースされた。

 2021年、故ミカ・ヴァイニオの「新作」アルバム『Last Live』がリリースされた。没後4年。今なお電子音響音楽の世界に多大な影響を与え続ける巨星の知られざる音源が聴ける。それだけでも僥倖といえる。
 同時にこの『Last Live』は没後にリリースされた『Lydspor One & Two』(2018)、『Psychopomp For Mika Tapio Vainio (M.T.V. 15.05.63 ~ 12.04.2017)』(2020)、Mika Vainio + Ryoji Ikeda + Alva Noto『 Live 2002』(2018)、Mika Vainio & Franck Vigroux『Ignis』(2018)、Joséphine Michel/Mika Vainio『The Heat Equation』(2019)、Charlemagne Palestine, Mika Vainio, Eric Thielemans『P V T』(2020)などいくつもの作品がリリースされているが、そのどれとも趣が違っている。まず共作でもないし、そしてアーカイヴ音源でもない。 このアルバムには2017年2月2日にスイスのジュネーブにある「Cave12」において披露されたミカ・ヴァイニオの最後のライヴ演奏が収録されているのだ。ミカは2017年4月12日に亡くなったので、まさに彼がこの世を去る直前の演奏の記録である。つまり亡くなる2カ月前のミカのサウンドを聴くことができるわけである。
 この事実をもって本作を彼の「遺作」ということは可能だろうか?元はライヴ演奏でもあるので、そう断言して良いのかは分からない面もある。はたしてミカが存命ならばこの演奏をリリースしたのだろうか。
 だがである。『Last Live』を虚心に聴いてみるとミカ・ヴァイニオが至った音響的な境地がはっきりと分かってくることも事実だ。まるで透明な電子音=ノイズが、それらを超えた新しい音響体に結晶していくようなノイズ・サウンドが展開されているのだ。この美しいノイズの奔流には本当にため息すら出てしまいそうなほどだ。
 死後にリリースされた音楽ののなかでも『Last Live』は群を抜いて素晴らしいサウンドを展開している。なぜか。ここには「2017年2月」における彼の現在進行形のサウンドが横溢しているからだ。逆にいえばこのアルバムが「ライヴ録音」である事実は、彼の音響=音楽=ノイズが、このような領域にまで至っていたことの証左になる。

 リリースは〈Edition Mego〉と〈Cave12〉だ。リリース・レーベルは2020年6月にミカとコラボレ-ターでもあったダンサーのシンディ・コラボレーションと本公演の音源を聴き、そのリリースの必要性を確信したという。残された音源を編集しアルバムに仕上げたのは、スティーブン・オマリーとカール・マイケル・ハウスヴォルフの二人の音響巨人だ。そして彼らが編集を行ったのはストックホルムの名門EMSスタジオ。しかもマスタリングを描けたのはベテランのデニス・ブラックハムなのである。まさに最良かつ最強の布陣で制作されたアルバムといえよう。私見では本作こそ〈Editions Mego〉からミカ・ヴァイニオへの「追悼」でないかと思ってしまった。そのリリースに足掛け4年の歳月が必要だったことに強く心を揺さぶられてしまう。いずれにせよ『Last Live』は、間違いなく特別なアルバムだ。

 アルバムは“Movement 1”から“Movement 4”まで全4トラックに分かれている。ノン・コンピュータでミニマムなモジュラー・シンセのシステムで演奏されたサウンドにはどこか崇高ともいえるノイズ・サウンドスケープが横溢していた。激しいノイズと細やかなミニマリズムが、どこか秘めやかな音響的持続の中で交錯し、まるで一筆書きの文字のように自然に、しかし大胆に変化を遂げているのだ。思わずパンソニックからソロまで含めて彼の最良の音響がここに結晶していると言いたくもなってくるほどである。
 まず“Movement 1”は無色透明な電子音がノイジーなサウンドへと変化していくさまが鳴らされる。繊細かつ大胆なサウンド・コントロールは「圧巻」のひとこと。続く“Movement 2”は細やかなリズムと持続音によるインダストリアルなサウンドで幕を開ける。それもすぐにノンビートのノイズへと変化し、やがて暴発するような強烈な電子音が炸裂する。
 アルバム後半の“Movement 3”と“Movement 4”では電子ノイズ・サウンドが断続的に接続し安易な反復を拒むようなノイズの奔流が生まれている。特に“Movement 4”の終わり近くに放たれる咆哮のようなノイズには、どこか徹底的な孤独さを感じもした。
 これら4トラックを聴くと強烈なノイズ、リズム/ビートと静謐な持続音が交錯する構成になっていたことに気が付くだろう。持続と接続の断片的なコンポジションは、まさにミカ・ヴァイニオのサウンドだ。同時にかつての彼のソロ作品と比べて非反復的な断片性が希薄になり(特に前半2曲にその傾向がある)、永遠に続くかのような持続性が増していた。そのせいかどこかミカのもうひとつの名義「Ø」と共通するような「静謐さの気配」をサウンドの隅々から感じ取れたのだ。本作で展開されるノイズ/サウンドは孤独と隣り合わせの音響のように鳴っているのである。Øの透明かつ静謐な音響と同じく、たったひとりでフィンランドの満天の星空を見上げるような感覚があるとでもいうべきか。

 2017年2月の段階でミカ・ヴァイニオの音響は、そのような境地へと至っていた。孤独の、孤高の、個のノイズ音響。その生成と炸裂と消失は、まるで星空のノイズのようである。私は『Last Live』とØ『Konstellaatio』をこれからもずっと聴き続けるだろう。不安定と永遠。持続と断片。永遠と有限。音響と瞬き。ここには電子音響音楽の過去と未来が内包されている。私にはそう思えてならないのだ。

TECHNO definitive 増補改造版 - ele-king

今日もテクノを聴くんだぜ。
その歴史を体系的にとらえた厳選ディスクガイドのロングセラー

テクノ・ディスク・カタログの決定版が加筆・修正を施し、増ページにて復活!

表紙イラストは今回もアブカディム・ハックの描き下ろし

Contents

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Space Age
Krautrock
Synth-Pop
Electro
Rave Culture
Detroit Techno
Hard Minimal / Dub Techno
Artificial Intelligence
Glitch / Drone
Electroclash
Dubstep / L.A.Beat
Juke / Bass Music

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interview with KANDYTOWN (Neetz & KEIJU) - ele-king


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 東京・世田谷を拠点にするヒップホップ・コレクティヴ=KANDYTOWN。グループとしてはメジャーからこれまで2枚のアルバム(2016年『KANDYTOWN』、2019年『ADIVISORY』)をリリースし、さらにほとんどのメンバーがソロ作品をリリースする一方で、音楽のみならずファッションの分野でも様々なブランドとコラボレーションを行なうなど、実に多方面に活躍する彼ら。コロナ禍において、ほぼ全てのアーティストが活動を自粛せざるをえない状況であった2020年、彼らは『Stay Home Edition』と題したシリーズを自らの YouTube チャンネルにて開始して新曲を立て続けに発表し、多くのヒップホップ・ファン、音楽ファンへ勇気と活力を与えた。

 この『Stay Home Edition』で公開された3曲をブラッシュアップし、さらに3つの新曲を加えて2月14日にリリースされたEP「LOCAL SERVICE 2」。タイトルの通り、このEPは2年前の同日にリリースされた「LOCAL SERVICE」の続編であり、この2月14日という日付が KANDYTOWN のメンバーである YUSHI の命日ということを知っているファンも多いだろう。今回のインタヴューでは KANDYTOWN のメイン・プロデューサーである Neetz と昨年、アルバム『T.A.T.O.』にてメジャー・デビューを果たした KEIJU のふたりに参加してもらい、彼らにとって非常に大きな意味を持つ 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」がどのような過程で作られていったのかを訊いてみた。

注:これまで配信のみでリリースされていたEP「LOCAL SERVICE」と「LOCAL SERVICE 2」だが、今年4月に初めてCD化され、2枚組のCD『LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION』として〈ワーナー〉からリリースされる予定。

スタジオができたタイミングで緊急事態宣言が出て。こういう時期だから音楽を出してステイホームしている人に聴いてもらえたり、少しでも勇気づけられたらっていう感じで。それでみんなで集まって曲を作ったのがまず初めですね。(Neetz)

あの頃は人に全然会っていなかったので。みんなに会って「うわぁ楽しい!」ってなって〔……〕。浮かれちゃう自分に釘を刺すようなリリックをあそこで書いて、自分を引き留めたじゃないけど、いまだけを見て何か言ってもいいことないときもあるし。(KEIJU)

前回インタヴューさせていただいたのがアルバム『ADVISORY』のリリースのタイミングで。その後、コロナで大変なことになってしまったわけですが、やはり KANDYTOWN の活動への影響は大きかったですか?

KEIJU:NIKE AIR MAX 2090 にインスパイアされた楽曲の “PROGRESS” (2020年3月リリース)を作っていたときが、世の中が「やばい、やばい」ってなっていた時期で。自分たちも世間の皆様と同じように困ることもあったんですけど、人数が多いグループなので集まりづらいっていうのがいちばん大きくて。どうしても目立つ集団でもあるので、人目を気にして、外では会えなくなりました。けど、一昨年から、自分たち用のスタジオや事務所を用意するっていう動きをしていたのもあって。ちょうど去年の4月くらいに事務所とスタジオを借りて。それで音楽を作ろうってはじまったのが、今回出た「LOCAL SERVICE 2」にも繋がる『Stay Home Edition』で。

『Stay Home Edition』はどういったアイディアから来たものでしょうか?

Neetz:スタジオができたタイミングで緊急事態宣言が出て。こういう時期だから音楽を出してステイホームしている人に聴いてもらえたり、少しでも勇気づけられたらっていう感じで。それでみんなで集まって曲を作ったのがまず初めですね。

『Stay Home Edition』では結果的に3曲発表しましたが、あの順番で作られたんですか?

Neetz:そうですね。最初が “One More Dance” で、次が “Faithful”、“Dripsoul” という順で。

KEIJU:1ヵ月半とかのうちに全部曲を出し切って、それをEPとして完成させちゃおうって話になっていたところを〈ワーナー〉とも話をして。ちゃんと段取りをして、しっかりやろうっていうふうになったので(『Stay Home Edition』を)一旦止めて。

Neetz:どうせならちゃんとオリジナル・トラックで作って、まとめてEPとしてリリースにしようっていう話になって。

KEIJU:だから、ほんとは8月とかには曲もほぼできている状態だったんですよ。でも、〈ワーナー〉の人にも会えなくて、話し合いができなかったりもして。それにそのタイミングで出してもライヴもできないし。

では、リリースまでのタイミングまでにけっこう温めていた感じなんですね?

Neetz:そうですね。3月から5月にかけてレコーディングを全部終えて、そこから既に出ている3曲のトラックを差し替える作業をやって。ミキシングも自分のなかで時間がかかっちゃって。それで全部が終わったのが9月くらい。それなら「LOCAL SERVICE 2」として2・14に出そうっていうことになって。

いまおっしゃった通り、『Stay Home Edition』と今回のEPでは全く違うトラックになっていますが、『Stay Home Edition』のほうは Neetz くんのトラックだったのですか?

Neetz:ではなかった。だから、どうせなら全部変えてやろうっていう意気込みで俺独自の感じで作ったので、その色が強くなったのかなと思います。

改めて “One More Dance” がどのように作られていったのかを教えてください。

Neetz:IO が最初にオリジナルのトラックを持ってきて、フックを最初に入れて。Gottz と柊平(上杉柊平=Holly Q)がそのとき、スタジオにいたので、IO のフックを聴いて柊平と Gottz がそのフックのコンセプトに当てはめてリリックを書いていった感じですね。

KEIJU:自分が聞いた話では、IO くんと柊平が中目黒に新しい事務所の家具を買いに行った帰りにスタジオに寄って。「このまま曲を作ろうか?」って流れで作ったら Gottz が来て、それで3人で作ってったそうです。

完全にノリで作ったわけですね。

KEIJU:今回の『Stay Home Edition』はいちばん昔のノリに近かったかなってちょっと思ってて。突発的に「会って遊ぼうよ」から、なにかを残そうじゃないけど、ノリで「曲やろう!」ってなってできた感じだった。自分は結構「コロナ大変なことになってるな」と思っていましたし、自分のソロ・アルバムのこともあって、その時期はあんまりみんなに会わないようにしていたんですよ。だから、自分は客観的にみんなの動きを見てたんですけど、さっき LINE が飛び交っていたと思ったら、その5、6時間後には曲ができていたりして。そういうのが、すごく昔の感じだなって思いましたね。

Neetz:そうだね。KEIJU はみんなの動きを客観的に見てた側だったのかもしれない。

そういうこともあって、今回は KEIJU くんの参加曲が1曲なわけですね?

KEIJU:そうですね、参加曲が少ないのはそれが理由っすね。兄に子供ができたりもして、みんなとは会わないほうがいいと思って。

Neetz:KEIJU は KEIJU のスタンスを貫いてましたね。

KEIJU:みんなが新しい事務所に溜まっていて、自分は「いいなぁ、楽しそうだな」って感じで見てて。でもさすがに(EPを)出すっていうから、「参加したいです!」って言って参加させてもらった感じです。

ちなみに最初の3曲には IO くんと Holly Q が3曲とも参加していて、それってなかなか珍しいですよね? 特に IO くんは前回の「LOCAL SERVICE」には1曲も入ってなかったと思いますし。

KEIJU:最初の “One More Dance” を作った流れで自然と、その感じで2、3曲目も動けたんじゃないですかね。コロナのこのタイミングで出そうっていうイメージまでもって。

Neetz:それがみんなにも伝わったのがデカかった。

ちなみに『Stay Home Edition』で “One More Dance” の説明の欄にヘレン・ケラーの言葉が引用されていましたけど、あれは誰が考えたんでしょうか?

Neetz:あれも IO くんのチョイスですね。

曲自体はノリで作られたのかもしれないけど、そういう部分も含めてすごくメッセージ性がある曲だなと思いました。

KEIJU:作る過程で「こういう人に向けて、こういう曲を書いてみよう」みたいな話は若干あったんだと思います。

Neetz:“One More Dance” に関しては統一性がしっかり取れていて。より統一性を出すために、リリックを書き直してもらったりもしました。

たしかに『Stay Home Edition』とEPでは、若干リリックが違いましたよね。

Neetz:曖昧になっている部分を、曖昧にしないで具体的にしようかなって感じで柊平に直してもらって。

KEIJU:Neetz から言ったんだ? 柊平ってけっこう、自分の作ったものに対してのクオリティが保たれているかすごい気にするじゃん。「これで良いのかな?」って訊いてくるもんね。

Neetz:そういう人には言ってあげたほうが良いかなって。

『Stay Home Edition』のコメントを見ると Holly Q 人気が高いというか。あの3曲で改めて彼の評価が上がっていますよね。

KEIJU:“One More Dance” のラップも初めて聴いたとき、1個違うレベルというか、柊平の新しい面が見えたなって。いままでは全部出し切るっていう感じだったけど、ちょっと手前で止めるみたいな歌い方であったり。そういう新しさをすごく感じて。

俳優としてもすごく活躍されていて、テレビドラマとかにも出ていますけど、ちなみにメンバーはどういうふうに見ているんですか?

KEIJU:俺は率直にすごいと思うし、みんなそう思っていると思う。ポッと出ではないですし、19歳とかそのくらいからバイトをしながらモデルをやったり、事務所を変えたりっていう過程を見ているので。ただ、柊平が出ていると客観的に観れなくて、内容が入ってこなくなっちゃう(笑)。だから、あんまりがっつりは観ないんですけど、普通にできないことだなと思います。

Neetz:すごいなと思いますね。

その中で今回みたいにちゃんと曲にも参加しているのが凄いですね。

KEIJU:前回の『ADVISORY』のときも、柊平の撮影が忙しくて1ヵ月間いられなくなるってなって。けど、柊平が「入れないのは嫌だから」って言って、誰もまだリリックを書き出していない頃にひとりで書いて、3、4曲とか録って撮影に行ったんですよ。意欲が本当に凄くて。柊平のあのヴァイブスにみんなも感化されて、負けていられないから、自分もやろうってなったのは感じましたね。

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いつでも俺らは変わらないぜっていうのを示した曲になったと思います。KANDYTOWN のソウルフルで渋い感じの良さとか、昔ながらの感じを受け継いでいる、今回のEPの中でも唯一の曲だと思います。(Neetz)

「こうなりたい」とか「絶対こうあるべき」っていうのが自分たちにはなくて。とにかく自分たちが良いと思ったものとか、それに対する理由とかを、もっと深いところで話し合うことができたらなって思います。(KEIJU)


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EPの後半3曲は完全な新曲となるわけですけど、まず “Sunday Drive” は Ryohu くんがトラックを担当で。以前のインタヴューのときに KANDYTOWN の曲は基本 Neetz くんが作って、さらに Neetz くんが出していない部分を Ryohu くんが埋めるみたいなことは仰ってましたが、今回も同様に?

Neetz:そういう感じで作っていました。このEPの中の俺にはないような曲(“Sunday Drive”)を入れてきてくれたので、すごくバランスが良くなって。結果、Ryohu のビートがスパイスになっていますね。

“Sunday Drive” はおふたりともラップで参加していますが、トラックを聴いてどういう感じでリリックを書いたのでしょうか?

KEIJU:最初はもっとブーンバップというか、ベースが効いてるヒップホップなビートだったけど、最終的には最新っぽさも足されたものが返ってきて。ビートを聴かせてもらったときに、「これだったらいますぐリリックを書こうかな」って。そのとき、一緒にいたっけ?

Neetz:一緒にいたな。

KEIJU:リリックを一緒に書いて、「どうしようか?」ってなって。

Neetz:それで、KEIJU が伝説の2小節を入れて。

KEIJU:伝説の2小節からはじまったけど、タイトルが “Sunday Drive” になって「アレ?」ってなった(笑)。「俺の伝説の2小節は?」って。それでその2小節はやめて、新たにフックを書いて。

Neetz:まとまっていないようでまとまってる。いつもの俺らですね。

(笑)

KEIJU:俺はとにかく、あの頃は人に全然会っていなかったので。みんなに会って「うわぁ楽しい!」ってなって、その思いが全部出ているような恥ずかしい感じのリリックになっちゃって。サビも書いてって言われていたから、メロディーとかも考えながら、「ああじゃない、こうじゃない」を繰り返していて。高揚している自分と地に足付けるバランスの中で、あのリリックとフロウが出てきて。浮かれちゃう自分に釘を刺すようなリリックをあそこで書いて、自分を引き留めたじゃないけど、いまだけを見て何か言ってもいいことないときもあるし。でも、サビはすぐできたよね?

Neetz:そうだね。

KEIJU:4小節自分で書いたものを Dony(Joint)と Neetz、MASATO に歌ってもらって。

Neetz:結果、みんな自分に向かって書くようなリリックになって。

KEIJU:渋い曲になったよね。

ビートへのラップの乗せ方もすごく気持ち良いです。

Neetz:そうですね。EPのなかでいちばんリズミカルな感じになっていて。4曲目でそれが出てくることによって、すごく映えるようになってる。

あと曲の最後のほうに「届けるぜローカルなサービス」ってラインがありますが、この時点でタイトルを「LOCAL SERVICE 2」にするっていうのはあったんですか?

Neetz:まだですね。MASATO がたまたまそのワードを入れて。EPのタイトルは完全に後付けです。

次の “Coming Home” ですけど、これは Gottz&MUD のコンビを指名したんですか?

Neetz:本当は Gottz&MUD のアルバム用に作ったビートで、それに入る感じだったんだけど。コンセプト的にも今回のEPに入れたほうが良いかなってなって。MUD にワンヴァース目をやってもらって、Gottz も書いてくれたけども。(今回のEPに) KEIJU のヴァースが少なすぎるってなって、KEIJU も入れようと思ったけど……。

KEIJU:まあ、そういうことがあったんですけど、良い曲だなって。

あのふたり用に作った曲っていうのは伝わってくるようなトラックですよね。

KEIJU:それに、なんかあのふたりのセットを(ファンが)求めている流れもありますから。そういうこともあって自分は身を引こうと思って。

最後の曲の “Sky” ですが、リリックもトラックも KANDYTOWN そのものを表している感じがしますね。

Neetz:いつでも俺らは変わらないぜっていうのを示した曲になったと思います。KANDYTOWN のソウルフルで渋い感じの良さとか、昔ながらの感じを受け継いでいる、今回のEPの中でも唯一の曲だと思います。

この曲で言っていることがまさにいまの KANDYTOWN のスタンスにも感じますね。

Neetz:そうですね。変わらずあり続けるのもそうだし、この仲間とやっていくことがすごく大事だと思うし。そういうスタンスでこれからもやっていけたらなって思いますね。

ちなみに、客観的に見てどの曲が好きですか?

Neetz:トラック的に上手くできたのは3曲目(“Dripsoul”)。

KEIJU:俺はやっぱ、最初に聴いたときの “One More Dance” のインパクトが強くて。IO くんがああいうメロディーをつけるときのモードがあるじゃない?

Neetz:たしかに、たしかに。

KEIJU:そのメロディーが聴こえたからすごく印象に残っている。

覚悟みたいなものですかね?

KEIJU:そう、覚悟があるなって感じて。あと、好きな曲というと、自分が入っている曲(“Sunday Drive”)は制作現場にいて、みんなの雰囲気とかも含めてすごく良かったと思うし。それに対して自分はスムースで昔っぽさもある感じにできたので、“Sunday Drive” は良いなと思う。サビの掛け合いとかもしばらくはやっていなかったので、「一緒にリリックを書くのも良いよね」って話をしながらやったのも憶えているし、結構楽しかったよね。

Neetz:久々に楽しかった。

久々にみんなが会うというのは、やなり何か違うものがありますか?

KEIJU:それはもう、だいぶ違いましたね。あのときってみんな寂しくてとかじゃないけど、「うわぁ、浮足立つなぁ」って。言わなくてもいいことを言っちゃいそうだなみたいな。しかもそれをリリックに書いちゃいそうなくらい、普段は言わないことを言おうとしちゃう。それが嫌だなって部分もあったんですけど。

Neetz:若干どんよりしたというか。そういう雰囲気だった気もするけど。違う?

KEIJU:それもあったかもね。この先どうなるか分からないし。俺とか本当にコロナを気にしていたので、みんなに「手洗った?」ってすぐ訊くような勢いだったんで。

それだけ人数いれば、人によって考え方も全然違いますしね。

KEIJU:あの活動(『Stay Home Editon』)がはじまったときに、「はじまったそばから、すげぇやってるな?!」とか思いながら。俺は羨ましくもあり、みんなに会いてぇなっていうのもあったし。置いてけぼり感もすごくあった。いま思うとそんなに(以前と)変わりないと思うんだけど、久しぶりに会ったときは違ったね。

KANDYTOWN の次の作品に向けてもすでに始動していると思いますが、現時点でどのような感じになりそうでしょうか?

Neetz:とりあえず、ビート作りははじまっていて。このEPの音作りは俺独自で進めたので、次の作品に関してはもっとみんなの意見を取り入れたものを作れたらいいなと思ってます。あと、「KANDYTOWN に合うサウンドとは?」っていうのをめちゃくちゃ考えていて。「それって何だろう?」って考えてたときに、昔のソウルフルな感じであったり、1枚目(『KANDYTOWN』)の感じの音なのかなって思ったりもするし。まだ答えは分かってないんですけど。

KEIJU:さっきふたりで車の中で話をしていて。もっと幅を広げたり、Neetz の言うように昔のソウルフルなスタイルで続けていくのも良いよねって。やれる範囲で幅を広げていこうって話をしてはいて。ビートのチョイスもいままでやっていなかったこともやってみようって。

Neetz:結果的にそれが KANDYTOWN のサウンドになるので。

KEIJU:そう。自分たちのこれまでの活動の中でも、それまでやらなかったビートをチョイスしてやってきて、それでちょっとずつ進化している。昔、YouTube にもアップした “IT'z REVL” って曲とか、当時は自分たちの中ではすごく新しいチョイスで、新しい感覚だと思ってやってたし。少しずつ、そういう変化を上手く出せていけたらいいなって思う。あと、「こうなりたい」とか「絶対こうあるべき」っていうのが自分たちにはなくて。とにかく自分たちが良いと思ったものとか、それに対する理由とかを、もっと深いところで話し合うことができたらなって思います。そうやって、深い部分で切磋琢磨していけたら、新しいものが生まれるなって思っているので。

メンバー間のコミュニケーションの部分などで何か以前と変化はあったりしますか?

KEIJU:最近はコミュニケーションを高めていて。自分らは最近野球をやっているんですけど。(インタヴューに同行していた)DJの Minnesotah はバスケをやっていて。KANDYTOWN の中でもバスケと野球とサッカーってチームが分かれているんですけど、そういう感じで集まれる時間を増やしていこうよって話をしていて。それが音楽に直結するわけではないですけど、日々の言葉のキャッチボール的なことができればなと思ってて。そうすることで、これからの KANDYTOWN の作品が、もっと密なものになればいいなって思いますね。

KANDYTOWN
2nd EP「LOCAL SERVICE 2」より
“One More Dance” の MUSIC VIDEO 公開

国内屈指のヒップホップクルー KANDYTOWN が本日2月14日配信の 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」より、
先行配信トラック “One More Dance” の MUSIC VIDEO を公開。この映像は前作 “PROGRESS” に引き続き盟友:山田健人が手掛ける。楽曲に参加している IO、Gottz、Holly Q、Neetz に加えクルーから Ryohu、Minnesotah、KEIJU、Dony Joint、Weelow がカメオ出演。

2月14日より配信となった 2nd EP は2020年の4月・5月の Stay Home 期間中に公開された楽曲3曲を再度レコーディングしリアレンジしたものに新曲3曲を収録。楽曲のレコーディングやプロデュースをメンバーの Neetz が担当。海外作家との共作やアレンジャー起用して作られたトラックなど意欲作が並ぶ。

そして、4月21日には、配信リリースされていた2019年2月14日発売の 1st EP「LOCAL SERVICE」と2021年2月14日発売の 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」の両作品を2000枚限定で初CD化し1枚にコンパイル。
DISC 1 の「LOCAL SERVICE」は過去に限定でレコードのリリースはあったがCD化は初となる。

“One More Dance” MUSIC VIDEO
https://youtu.be/iY340Z3BTdA

2nd EP「LOCAL SERVICE 2」& 限定生産2CD EP『LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION』
https://kandytown.lnk.to/localsevice2

[MJSIC VIDEO CREDIT]
KANDYTOWN LIFE PRESENTS
FROM""LOCAL SERVICE 2""
『One More Dance』

Director : Kento Yamada
Director of Photography : Tomoyuki Kawakami
Camera Assistant : Kohei Shimazu
Steadicam Operator : Takuma Iwata

Lighting Director : Takuma Saeki
Light Assistant : Hajime Ogura

Production Design : Chihiro Matsumoto

Animal Production : SHONAN-ANIMAL

Editor & Title Design : Monaco

Colorlist : Masahiro Ishiyama

Producer : Taro Mikami, Keisuke Homan
Production Manager : Miki SaKurai、Rei Sakai、Shosuke Mori
Production Support: Wataru Watanabe, Yohei Fujii

Production: CEKAI / OVERA

STARRING
IO
Gottz
Holly Q

Ryohu
Minnesotah
KEIJU
Dony Joint
Neetz
Weelow
Kaz

[KANDYTOWN 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」作品情報]
title:「LOCAL SERVICE 2」
release date:2021.02.14
price:¥1,400 (without tax)

track list
1. Faithful (Lyric:IO, Ryohu, Neetz, Holly Q, DIAN Music : Neetz)
2. One More Dance (Lyric:IO, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
3. Dripsoul (Lyric :IO, Ryohu, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
4. Sunday Drive (Lyric : Dony Joint, KEIJU, Neetz, MASATO Music : Ryohu)
5. Coming Home (Lyric : MUD, Gottz Music : Neetz)
6. Sky (Lyric: BSC, Ryohu, MUD, DIAN Music : Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by Neetz at Studio 991
Masterd by Joe LaPorta at Sterling Sound 
Sound Produce: Neetz (M-1,2,3,5,6), Ryohu (M-4)
Additional Arrange: Yaffle (M-2)
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

[限定生産2CD EP「LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION」作品情報]
title:「LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION」
release date:2021.04.21
price:¥2,500 (without tax)

track list (DISC1)

「LOCAL SERVICE」
1. Prove (Lyric: Gottz, KEIJU, MUD Music: Neetz)
2. Till I Die (Lyric: Ryohu, MASATO, BSC Music: Neetz)
3. Explore (Lyric: Gottz, MUD, Holly Q Music: Neetz)
4. Regency (Lyric: MASATO, Ryohu, KIKUMARU Music: Neetz)
5. Fluxus (Lyric: Neetz, DIAN, Dony Joint Music: Neetz)
6. Kapital (Lyric: BSC, KIKUMARU, Dony Joint, DIAN, Ryohu Music: Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by The Anticipation Illicit Tsuboi at RDS Toritsudai
Masterd by Rick Essig at REM Sound
Sound Produce: Neetz
Additional Arrange: KEM
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

track list (DISC2)
「LOCAL SERVICE 2」
1. Faithful (Lyric:IO, Ryohu, Neetz, Holly Q, DIAN Music : Neetz)
2. One More Dance (Lyric:IO, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
3. Dripsoul (Lyric :IO, Ryohu, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
4. Sunday Drive (Lyric : Dony Joint, KEIJU, Neetz, MASATO Music : Ryohu)
5. Coming Home (Lyric : MUD, Gottz Music : Neetz)
6. Sky (Lyric: BSC, Ryohu, MUD, DIAN Music : Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by Neetz at Studio 991
Masterd by Joe LaPorta at Stearing Sound
Sound Produce: Neetz (M-1,2,3,5,6), Ryohu (M-4)
Additional Arrange: Yaffle (M-2)
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

Glenn Astro - ele-king

 「3ヶ月以内にアルバムを完成させるという「最後通告」を自分に設けてたんだ。上手くいかなかったら自分のキャリアを考え直して、音楽を趣味で続けていこうと思ったんだ」アルバムのイントロにこう綴られたグレン・アストロの想い。5年ぶりにリリースされたソロ・アルバムにはそれを言うだけの彼の熱意と進化を見ることができる。
 彼のデビュー当時、2013年頃まで遡ろう。当時のハウス・シーンの状況を振り返るといわゆるサンプリング・ハウスがある種のムーヴメントになっており、日本では「ビートダウン」というキーワードがひとり歩きしていた。オリジネーターでもあるムーディーマンやセオパリッシュ以降のモータウンではカイル・ホールやジェイ・ダニエルが新世代として台頭し、ヨーロッパではMCDE(モーター・シティ・ドラム・アンサンブル)やダム・スウィンドル(旧名:デトロイト・スウィンドル)、そしてアストロの盟友でもあるマックス・グリーフなどが頭角を現す。音が悪いのも「味」と捉えたスモーキーなキックやハイハットにソウルやジャズのフレーズをサンプリングして作るある種ヒップホップ的な制作スタイルは当時のクラブ・フリークを虜にし、時代のアナログ志向なマインドも追い風になってレコード・リリース・オンリーのレーベルや謎のエディット・レーベルが次々出ては消えていく、そんな時代だった。
 その後〈22a〉や〈Rhythm Section International〉がクラブ・サウンドとジャズを隣接させながらUKジャズ・シーンの火種になり、かたやロー・ハウスという括りでモール・グラブやDJボーリングなどが登場してくる。
 そのなかでもマックス・グリーフとグレン・アストロはライヴァルに差を付けるようなアイデアとスキルが光っており、2016年には〈Ninja Tune〉から2人のコラボレーションアルバム「The Yard Work Simulator」をリリース(同年には来日ツアーも果たしている)。このアルバムではサンプリングで使われる素材や実際のサンプリングをできる限り避け、ローなサウンドは残しつつイチから音作りと編集をしていくというテーマが存在しており、当時のシーンの状況から見るととてつもなく実験的かつ過激な内容に仕上がっている。いまではサンプリング・ハウス~生音回帰のような流れはスタンダードのように思えるが、DTM、ベッドルーム・ミュージック全盛期の時代を振り返ると2人の取り組みはかなり前衛的だった。同胞のデルフォリクそしてグリーフとともにレコード・レーベル〈Money $ex Records〉もユニークなサウンドが多く、どこか旧態依然のサウンドから脱却しようとトライし続けたようにも感じられる。

 今作にもフィーチャリングで参加しているアジナセントとは17年にミニ・アルバム『Even』をリリースし、サイケデリック/バレアリックなフュージョン・サウンドを展開、翌年には〈Money $ex Records〉で発掘したホディニとともに「Turquoise Tortoise」を発表、ヒップホップやベース・ミュージックを絶妙に混ぜ込んだ作風を披露している。
 振り返ると7年という短いキャリアのなかでここまで数多くのジャンルを跨いだプロデューサーは非常にレアな存在と言えるし、彼の多様なセンスとハードワークが成せる業に違いない。それを踏まえた最新作の『Homespun』、レーベルはデビュー・アルバム『Throwback』をリリースしたデンマークの〈Tartelet Records〉から。原点回帰と進化を同時に行ったアストロのサウンドが様々なジャンルを通過して美しくひとつに集約されている。

 メランコリックな雰囲気でスタートするアジナセントとのコラボ曲“Homespun”をはじめ、J・ディラのオマージュトラックという“The Yancey”など、過去の作品と比較すると十八番だったスモーキーなムードは若干の影を潜め、エレクトロニックでハイファイなサウンドも目立つ。全曲違ったテイストの曲を披露しながらも、アンビエント、ディスコ、ジャズ、テクノ、ベースミュージックとどれもひとつのジャンルで括れないような絶妙な塩梅でフュージョンされている。終盤の“Viktor's Meditation”では和のテイストを取り入れたような楽曲で思わぬサプライまで起こしてくれた。
 DJ的な目線で見ればこのアルバムをキッカケにどんなジャンルにも移動できるポテンシャルを感じるし、改めてこのアルバムを3ヶ月で組み立てた彼の才能が今後どんな方向に行くか非常に楽しみではある。結果どこに向かっても素晴らしい作品ができ上がるのは間違いないだろう。こんな卓逸した才能を持ちながら音楽を趣味でやろうか真剣に考えてしまうのはデビュー当時から「鬼才」と言われる所以なのだろうか。


Floating Points × Pharoah Sanders - ele-king

 驚くなかれ。いや、むしろ大いに驚きたまえ。フローティング・ポインツファラオ・サンダースによる共作が3月26日にリリースされる。
 かたや2010年代エレクトロニック・ミュージックのキイパーソンのひとり、かたやスピリチュアル・ジャズの生ける伝説──レーベルがデヴィッド・バーン主宰の〈Luaka Bop〉というのもさらなる驚きで、演奏にはイギリスを代表するオーケストラ、ロンドン交響楽団も参加。いったいどんな音楽が生み出されているのやら……。2020年前半の目玉となりそうな大型コラボ、心して待とう。

驚愕としか言いようがない最高の顔合わせ!! エレクトロニック・ミュージック・シーンのトップに君臨する FLOATING POINTS とスピリチュアル・ジャズ界の生ける伝説 PHAROAH SANDERS が相見えた注目のアルバム『Promises』が3/26(金)にリリース決定!

自ら立ち上げた〈Eglo Records〉、〈Pluto〉や〈Ninja Tune〉、〈Planet Mu〉といった名門レーベルからのリリースでもその名を轟かせるプロデューサーのフローティング・ポインツことサム・シェパード。前作『Crush』が英誌ピッチフォークで Best New Music を獲得、さらに神経科学の博士号までをも持つエレクトロニック・ミュージック・シーンにおける天才アーティストが、なんとジョン・コルトレーンの後継者にしてスピリチュアル・ジャズ界を代表するサックス奏者ファラオ・サンダースと共に作り上げた噂のニュー・アルバムが、トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンが主宰する〈Luaka Bop〉から遂に登場! ロンドン交響楽団による美しい演奏に、フローティング・ポインツによる繊細な電子音、そしてファラオ・サンダースによる深いサックスの音色が交錯する、全9曲、46分にも及ぶ壮大な組曲が展開された圧巻の内容! さらにアートワークは米タイム誌による「世界で最も影響力のある100人」にも2020年に選出されたエチオピア出身の現代アーティスト、ジュリー・メレツが手掛けた全てにおいてこだわり抜かれた芸術的極上盤!

Floating Points, Pharoah Sanders & The London Symphony Orchestra – Promises (Album Teaser)
https://youtu.be/iqFwIxkhT4s

【アルバム詳細】
FLOATING POINTS, PHAROAH SANDERS & THE LONDON SYMPHONY ORCHESTRA
『Promises』

フローティング・ポインツ、ファラオ・サンダース&ザ・ロンドン・シンフォニー・オーケストラ
『プロミセス』

発売日:3月26日(金)
価格:¥2,400+税
品番:PCD-94026

【Track List】
1. Movement 1
2. Movement 2
3. Movement 3
4. Movement 4
5. Movement 5
6. Movement 6
7. Movement 7
8. Movement 8
9. Movement 9

IR::Indigenous Resistance Sankara Future Dub Resurgence - ele-king

 自分はつくづくアナキストじゃないなよなと思うのは自転車に乗っているときである。サイクリストにとって日本の道路は極めてアナーキーだ。いや、もう、左を走っていれば対向からがしがし来るし、歩道を電動自転車がひゅーっと走っていく。こうしたことは、しかも子供を乗せながら日常化しているし、警察だって複数で歩道を走っている。アナキストになれない自分は、秩序を守らない自転車と遭遇する度に苛ついてしまうのだ。休日の、車両一方通行の商店街とかとんでもないことになっている。ま、かくいうぼくも臨機応変にズルはしますがね。ただ、踏切で待っているあいだ、自信満々に右側で待機するのは止めて欲しいよなぁ。
 
 “アナキスト・アフリカ”とは、最新のダブ・ポエトリーであり、ダブとアフロ・エレクトロニカの結合であり、アフリカ史には反王族/反中央集権的な人びとも存在したことを説き、アフリカを再定義しようとするウガンダのアンダーグラウンドから届いたメッセージだ。サンカラ・フューチャー・ダブ・リソージェンスなる当地のミュージシャンによる録音で、『Anarchist Africa』は昨年10月、そして最新作の『Rising Up For The Dub World Within』はこの2月にリリースされたばかり。
 アフリカ大陸の中央にどかっとAマークの入ったヴィジュアルの『Anarchist Africa』は、Bandcampの説明を読むと、昼間は整備士や溶接工が仕事で使っている防音などないガレージにて、午前4時から録音したという。マイクはなく、ドラムループとヴォーカルの録音には携帯電話が使用されている(だが、音の空間は素晴らしく、決してローファイではない)。そして、冷たいウガンダの夜の空気の音や日常生活の気配もそこには含まれているという。うん、たしかにそんなヴァイブレーションを感じる。

 じつを言うとこの“アナキスト・アフリカ”は、remix編集長時代に同じ釜のメシを食った春日正信なる男から教えてもらったばかりで、ぼくもすべて把握しているわけではないのだが、とりあえず、いまわかっていることを記しておこう。
 アーティスト名の最初に記されている〈IR〉とは「indigenous resistance(先住民レジスタンス)」のことで、エレキングの別冊『ブラック・パワーに捧ぐ』に掲載したURのマイク・バンクスとコーネリアス・ハリスの取材のなかで、今日のポジティヴな動きのひとつとしてふたりが話している。事実として、URとIRとの繋がりはいまにはじまった話ではなく、その関係は10年以上前に遡ることができる。とはいえ、IRの音楽のキーワードはテクノではなく“ダブ”で、IRはそれを「アフリカと先住民の連合創造への美的および音楽的感性、哲学的志向、活動家の参加を指す包括的で拡大された言葉」として解釈し、用いている。
 〈Dub Reality〉なるレーベルはジャマイカ生まれでカナダに住んでいたPatrick Andradeなる人物が主宰している。彼は90年代から音楽活動をしているようだが、IRとしての活動は00年代後半からはじまっている。2010年に『Dubversive』というアルバムを出しており、ここにはマイク・バンクスほか、なんとエイドリアン・シャーウッド、Fun-Da-Mental、エイジアン・ダブ・ファウンデーションらも参加している。音楽的にみてIRのユニークなところはアフロ・パーカッションとダブとテクノを混合させている点にあるが、それは彼らのネットワークにも表れていると言えよう。

 今回取り上げている2枚のアルバムは、IRクルーのなかのウガンダのサンカラ・フューチャー・ダブ・リソージェンス(SFDR)による作品になる。ぼくはSFDRが何者で、何人から成るプロジェクトなのかまったく知らない。ぼくには彼らの素性に関する情報らしい情報がない。だが、こんなにも狂った情報時代だ、これはこれで有り難い話かもしれない。それよりも音とメッセージを受け取ってくれと、そういうことなのだろう。ちなみに2枚のアルバムの冒頭は、同じ曲“アナキスト・アフリカ”である(そう、2回聴けと!)。
 手がかりはある。ぼくにはまず、デトロイトのURが30年前からやってきたことが、いまこうしてアフリカと繫がっていることが嬉しい驚きだった。しかもダブという音楽/スタイル/発想が、こんな形で更新されたことにも興味をそそられる。先住民レジスタンスは、ADFやON-Uともリンクしているぐらいだ、マイノリティの反乱ということがそのすべてではないだろう。BLMと同じように、この世界の根底にあるものを覆そうとしているのかもしれない。まあ、とにかく、ノイズやドローンでさえグルーヴィーにうねる、テクノ譲りのフリーケンシー、そして凄まじい低音を有したベーシック・チャンネルのアフロ・ヴァージョンのごとき彼らの音をまずは聴いてみてください。いまウガンダのアンダーグラウンドでは何かがはじまっている。

Carpainter - ele-king

 精力的にリリースをつづけるレーベル〈TREKKIE TRAX〉から新情報。カーペインターが新作EP「Yamanote Disko Klub」を2月12日にリリースしている。最高に気持ちの上がる表題曲を筆頭に、とにかくダンサブルなトラックがずらり。ラッパーのなかむらみなみをフィーチャーした “YATAI” では、なんと、彼女が幼少のころから慣れ親しんできたという和太鼓をプレイしている。なかなか外で踊れないこのご時勢、このEPを鳴らしながら部屋をクラブにしてしまおう。

Carpainter が90年代の東京発ファンキーテクノを昇華したニューEP「Yamanote Disko Klub」をリリース!

日本を代表するダンスミュージックレーベル〈TREKKIE TRAX〉を主宰し、数々のレーベルからリリースを行う Carpainter が自身にこれまで多大なる影響を与えてきた90年代〜00年代のファンキーテクノに懐古し、更に現代風にアップデートを重ねたEP「Carpainter - Yamanote Disko Klub」が2021年2月12日にリリースされる。

ハードハウスやジャパニーズテクノなどを基にした東京の喧騒感を思わせる表題曲 “Yamanote Disko Klub” を筆頭に、パーカッションが特徴的なハードテクノ、トライバルテクノ計6曲を収録。
祭り囃子が持つグルーヴをテクノに昇華したダンストラック “YATAI” では〈TREKKIE TRAX〉とも関係の深いラッパー「なかむらみなみ」が幼少期から慣れ親しんで居た和太鼓を実際に演奏し、Carpainter がそれらのサウンドを録音・編集し制作した一曲となっている。

また本作のリリースパーティーをデイタイムで2月27日に渋谷Dimensionで開催されるので、気になる方は是非足を運んで頂きたい。

リリース情報

アーティスト名:Carpainter (カーペインター)
作品タイトル:Yamanote Disko Klub (ヤマノテ ディスコ クラブ)
発売日:2021年2月12日(金)
フォーマット:デジタル販売 / ストリーミング
レーベル:TREKKIE TRAX

曲目:
1. Yamanote Disko Klub
2. Route 246
3. Coyote Time
4. YATAI
5. Do Not Clatter
6. Golazoooo

https://smarturl.it/Carpainter-YDC

 UKのレーベル、〈BBE〉がプロデューサー/DJを主役にして立ち上げたアルバム・シリーズ「The Beat Generation」。Madlib による『WLIB AM: King Of The Wigflip』まで通算11作がリリースされたこの人気シリーズの第一弾を飾ったのが、2001年に Jay Dee aka J Dilla 名義で発表された『Welcome 2 Detroit』であり、数々のヒップホップ・クラシックを残してきた故 J Dilla にとって初のソロ・アルバムとなった作品だ。そんな歴史的アルバムである『Welcome 2 Detroit』の20周年を祝ってリリースされたのが、本作『Welcome 2 Detroit - The 20th Anniversary Edition』である。

 90年代半ばから2000年前後にかけて Jay Dee 時代の彼は実に様々なプロジェクトに参加していた。Pharcyde や De La Soul など様々なアーティストのプロデュースを手がけ、その後、Q-Tip、Ali Shaheed と結成したプロダクション・チーム「The Ummah」や、The Roots の Questlove を中心としたヒップホップ/ソウル・コレクティヴ「Soulquarians」の一員としても活動。さらに自らのグループである Slum Village としてもアルバムをリリースしている。そんな多忙な状況の中、〈BBE〉の指名を受けて制作したのがこの『Welcome 2 Detroit』だ。タイトルが示している通り、彼の地元であるデトロイトのヒップホップ・シーンおよびデトロイト・サウンドのショウケースであり、J Dilla 自身のルーツを辿る作品でもある。


J-Dilla exclusive pictures by Paul Hampartsoumian

 Slum Village ではプロデューサー兼MCとして活動していた J Dilla だが、本作では自身のラップに加えて仲間であるデトロイトのラッパーを多数フィーチャー。J Dilla の脱退と同タイミングで Slum Village のメンバーとなる Elzhi など、世間的にはまだまだ知名度の低かった彼らの存在をヒップホップ・シーンに知らしめた。バウンシーなトラックに乗った Frank-N-Dank によるデトロイト賛歌 “Pause” や、シンプルなビートの質感が最高に気持ち良い “It's Like That” での Hodge Podge (Big Tone)と Lacks (のちの Ta'Raah)によるマイクリレーなど、J Dilla とデトロイトMCたちとの相性の良さは本当に素晴らしく、様々なタイプのトラックとラップの掛け算を堪能できる。タイトル通り Phat Kat の紹介曲である “Feat. Phat Kat” の印象的なサンプル・フレーズは、のちに Q-Tip が “Renaissance Rap” で再利用したり、本作にも参加している Karriem Riggins が自らの曲 “J Dilla the Greatest” で引用するなど、このアルバムの裏クラシック的な一曲と言えよう。

 本作には非ラップ曲やインスト曲もいくつか含まれており、それらが前述した「J Dilla 自身のルーツを辿る」曲だ。中でも至極の一曲と言えるのが、Donald Byrd の同名曲をカヴァーした “Think Twice” だろう。幼い頃からジャズを聞いて育ったという J Dilla だが、ここでは Mizell ブラザーズがプロデュースしたダンサブルなジャズ・チューンの原曲をジャズ+R&Bのテイストでアレンジし、ヴォーカルも自ら担当している。驚くのは、この曲がほぼ生楽器による演奏でレコーディングされているということだ。キーボードとトランペットを担当した Dwele と共に、この曲で J Dilla はドラム、ベース、ピアノ、パーカッションなどを演奏している。サンプリングの達人というイメージの強い J Dilla が、一方で楽器も使って曲作りをしていたことはいまでは広く知られているが、おそらく本作でもサンプリングに生楽器を重ねる手法が多数用いられている。そういった手法でトラックを作っていたヒップホップ・プロデューサーは、このアルバムがリリースされた2001年の時点では非常に稀だったはずで、そういう意味で本作は非常に前衛的な作品であった。『The 20th Anniversary Edition』収録の “Think Twice (DJ Muro’s KG Mix)” は、そんな J Dilla に対するリスペクト溢れるリミックスで、聞き手の心に深く染み込んでくる素晴らしい仕上がりだ。

 “Brazilian Groove (EWF)”も同様に生楽器を主体に作られているが、タイトルが示す通り Earth, Wind & Fire からインスパイアされ、名曲 “Brazilian Rhyme” のコーラスが引用されている。これは、J Dilla のルーツのひとつに70年代のソウル/R&Bがあることの証だ。そして、生楽器の使用と言う意味ではジャズボッサ曲 “Rico Suave Bossa Nova” も “Think Twice” と並ぶ最重要曲のひとつ。この曲は一部、既存の曲からフレーズの引用はあるものの、ほぼ J Dilla のオリジナル曲と言って差し支えないだろう。Pharcyde “Runnnin'” を筆頭に、早くからブラジル音楽をサンプリング・ネタとして取り入れてきたことでも知られる J Dilla であるが、自らの演奏でこれほど完成度の高い曲を作り上げることには恐れ入る。さらに、今回の『The 20th Anniversary Edition』には、ブラジル音楽の本家 Azymuth によるこの曲のカヴァーが収録されており、ブラジル音楽とヒップホップを強く結びつける非常に意義深い一曲だ。ちなみにこのカヴァー・ヴァージョンには、ドキュメンタリー映画『Brasilintime』を手がけたフォトグラファーの B+ と Eric Coleman がプロデューサーとしてクレジットされており、彼らがカヴァーを企画したと思われる。

 もうひとつ、最後に取り上げたいのが、Kraftwerk “Trans Europe Express” の J Dilla 流カヴァーとも言える “B.B.E. (Big Booty Express)” で、様々なシンセサイザーの電子音が飛び交う曲調は本作の中でも非常に異色である。ここで表現されているのはデトロイト・テクノからの影響だ。タイトルはストリップ・クラブの常連であった J Dilla らしいノリで付けられているが、遅めのBPMで、デトロイト・テクノにヒップホップのフレイヴァを加えたハイブリッドな仕上がりは実に中毒性が高い。非常に特殊な一曲ではあるものの、これもまたこの時代の J Dilla だからこそ作り上げることのできた一曲だろう。

 J Dilla は本作がリリースされた5年後に亡くなっている。その後も『Donuts』をはじめ様々な作品がリリースされているが、本作のように様々な要素が入り混じった作品はひとつも作られていない。もし、いまも彼が生きていて『Welcome 2 Detroit』の第二弾を作ったらどんな作品になっていただろうか? そんなことを想像しながら、この『The 20th Anniversary Edition』をさらに聴き込んでみたい。

文:大前至

アーティスト名: J DILLA
タイトル: WELCOME 2 DETROIT - THE 20TH ANNIVERSARY EDITION [7INCH × 12枚組 BOXSET]

バスタ・ライムスが名付けたという J・ディラ名義でリリースされた本作、彼の出身地デトロイトをリプリゼントすべくゲスト・ラッパー陣は全て地元のアーティストで固めており、フランクンダンクからエルジー、ファット・キャットが参加し、J・ディラがデトロイトで聴いて育ったクラフトワーク、アフリカン、ジャズ・ファンク/ボサノヴァ、そしてもちろんブーム・バップに至るあらゆる音楽をディラ流に仕上げたクラシックがズラリ……! 全てデジタル・リマスタリングを施し、さらにこのアルバムのセッション中にJ・ディラのプライベート・テープに残された未発表音源やアウト・テイクを追加収録、そして日本が誇るキング・オブ・ディギン、Muro による “Think Twice” のリミックス、クラシック “Rico Suave Bossa Nova” のアジムスによるカヴァーなどを収めた全46曲の脅威のヴォリュームで送るボックスセット! アンプ・フィドラーやマ・デュークスなど参加アーティストのインタビューなどを収録したブックレット(英語)も付属。

label: BBE
genre: HIPHOP
format: 7INCH × 12枚組 BOXSET
cat no.: BBEBG001SLP
barcode: 0195497389094
発売日: 2021.2.5
税抜卸価格: (オープン価格)

Tracklist:

Disc 01
A1. Y’all Ain’t Ready
A2. Think Twice (faded)
B1. Y’all Ain’t Ready (Instrumental)
B2. Think Twice (Instrumental ? faded)

Disc 02
C1. The Clapper feat. Blu
C2. Shake It Down
D1. The Clapper (Instrumental)
D2. Shake It Down (Instrumental)

Disc 03
E1. Come Get It feat. Elzhi (edit)
F1. Come Get It (Instrumental ? edit)

Disc 04
G1. Pause feat Frank ‘n’ Dank
G2. B.B.E. ? Big Booty Express
H1. Pause (Instrumental)
H2. B.B.E. ? Big Booty Express (Instrumental)

Disc 05
I1. Beej-N-Dem Pt.2 feat. Beej
J1. Beej-N-Dem Pt.2 (Instrumental)

Disc 06
K1. Brazilian Groove
K2. It’s Like That (Edit) feat. Hodge Podge, Lacks
L1. Brazilian Groove EWF (Instrumental)
L2. It’s Like That (Instrumental)

Disc 07
M1. Give It Up
N1. Give It Up (Instrumental)

Disc 08
O1. Rico Suave Bossa Nova
P1. Azymuth ? Rico Suave Bossa Nova (Vinyl Edit) ? Azymuth

Disc 09
Q1. Feat. Phat Kat
R1. Feat. Phat Kat (Instrumental)

Disc 10
S1. African Rhythms
S2. One
T1. African Rhythms (Instrumental)
T2. One (Instrumental)

Disc 11
U1. It’s Like That (Alternate Version)
U2. Beej-N-Dem (og) feat. Beej

Disc 12
V1. African Rhythms (No Drums)
V2. Brazilian Groove EWF (No Drums, No Vocal)
V3. Give It Up (Acapella)
W1. Think Twice (DJ Muro’s KG Mix)
X1. Think Twice (DJ Muro’s KG Mix Instrumental)

R.I.P. Milford Graves - ele-king

 ジャズ・ドラマーのミルフォード・グレイヴスが去る2月12日、難病の心疾患のために亡くなった。没年79歳。
 グレイヴスは、フリー・ジャズにおいてもっとも際立ったドラマーだったのだろう。ぼくよりもひと世代上の、音楽(ことジャズ)に特別な思いを馳せている人たちはほとんどみんなグレイヴスが好きだった。間章や竹田賢一のような人たちの文章を読んでいたし、ぼくは松岡正剛さんからも話をされたことがあった。そう、だから1993年のたしか初夏だったと記憶している。土取利行が企画したライヴ公演に行かない理由はなかった。
 もうひとつぼくには特別な理由があった。その年、ぼくは20代最後の1年を、大袈裟に言えば24時間テクノを聴いているような生活を送っていた。隔月で海外に行くような生活だったし、雨だろうが雪だろうが毎週末をクラブで過ごし、文字通り、寝る間も惜しんで聴いていたのではないだろうか。石野卓球との『テクノボン』もこの年に上梓している。そんな時期に、メトロノーミックなリズムでなくてもグルーヴを創出できるドラマーの生演奏(しかも日本におけるその深い共鳴者、土取利行と共演)を体験することは、極めて重要なことのように思えたし、その勘は大いに当たった。
 踊っているのか踊らされているのかという、たあいもない話である。だが、当時のぼくにはゆゆしき問題だった。ぼくは踊りたかったが、踊らされたくはなかった。しかし踊らされることは、実は気持ち良かったりもするから困るのだ。4/4のキックドラムは楽に乗れる。ぼくはどう考えてもその楽なほうが好きな人間だが、そればかりでも不安になるという面倒くさい人間だったりもする。
 心臓の鼓動は3拍子だと言ったのはグレイヴスだったと記憶しているのだけれど、いやしかし彼のドラミングは、数値で記述されるとは思えない。が、それはたしかに鼓動=生命の根源的なエネルギーの噴出に違いなかった。彼の全身から醸成されるあまりにもあまりに多彩なリズム(アフリカ、インド、ラテンなど世界中のリズムの複合体)と音色、そしてその超越的な演奏にはただただ圧倒されたが、ぼくは彼の演奏から聴こえる喜びの律動にひどく感銘を覚えたのだった。ライヴの最後には客席にいた子供をステージに上げて、いっしょに演奏し、ともすれば見せ物的になりかねない超絶テクニックなど使わずとも表現できるうる領域を見せつつの、なかばワークショップめいた微笑ましい幕引きだったと記憶している。ライヴが終わって外に出ると、ぼくのなかにも堪らない嬉しさがこみ上げてきたものだった。
 
 ジャズ・ドラマーとしては、アルバート・アイラーの『Love Cry』をはじめポール・ブレイのカルテットでの演奏、日本では初来日時の演奏(高木元輝、阿部薫、近藤等則、土方利行との共演)を収めた『Meditation Among Us』もよく知られるところだ。ソニー・モーガンとの共演でもっとも評価の高い初期の記録『Percussion Ensemble』、中古が高騰しなかなか聴けなかった『Bäbi』といったアルバムもいまでは手頃な価格のCDで聴けるので、他に類をみない彼の演奏をいつかぜひ体験してほしい。
 また、ブラック・ミュージックについの名誉教授でもあり、ハーブ学者、鍼灸師でもあったグレイヴスは、音楽の医学的な効果に関する研究者、こと心臓の研究者でもあった。不整脈治療のための音楽の有効性を提唱し、奨学金を獲得すると実験装置を購入、自宅の地下室で心拍研究を続けていたという。また、ここ10年ほどは、アーケストラのマーシャル・アレン、ジョン・ゾーン、ビル・ラズウェル、ルー・リードなどとも共演している。

野田努



 せんだってDOMMUNEのアルバート・アイラーにまつわる番組で細田成嗣さんがESPレーベルを代表する音楽家をあげよ、と怜悧な声音で問うものでとっさにアイラーだとかえしたが、ESPはむろんアイラーだけではなかった。1960年代、ことに64年のジャズの十月革命以降のフリージャズの隆盛期を側面からささえたレーベル「ESP Disks」にはオーネットもサン・ラーもいれば、ポール・ブレイもファラオ・サンダースも、ファッグスやゴッズなどジャズならざるをものももぐりこんでいたし、パティ・ウォーターズやジュゼッピ・ローガンら、モーダルからフリーへいたるジャズ史観そのものをチャラにしそうな面々も名をつらねており、その総体が放つ多様で多元的、どこかナゾめいてときに神秘的なムードこそかのレーベルの持ち味だった。
 フリーとは演奏における形式の自由であるばかりか、それを陶冶した歴史のとらえなおしでもあったが、他方には拘束を解かれた身体や感性がもたらす実存の重みがあり、換言すれば前衛の命題ともいえる複数の要素のつなひきが1960年代なかごろのジャズの、ひいてはこの時期のESPのテンションの正体だった。なかでも1941年にニューヨークはクイーンズのジャマイカ地区に生まれ、ラテンをふりだしにジャズにたどりついき、アイラー(『Love Cry』)やポール・ブレイ(65年の『Barrage』にはマーシャル・アレンも参加)のグループからマイケル・マントラーとカーラ・ブレイのジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ、ここしばらくではジョン・ゾーンやビル・ラズウェルらダウンタウン派との仕事も記憶にあたらしいミルフォード・グレイヴスのドラミングは属人的な身体性を競い合った往時にあって、その微分的な律動と流麗な語法で異彩をはなっていた。
 注目をあつめたのは1964~65年だから20代なかば。60年代初頭にジョン・チカイとラズウェル・ラッド、ルイス・ウォレルと組んだニューヨーク・アート・カルテットがESPから同名作を出した。グループのアンサンブルの中心はチカイとラッドの2管の絡みだったが、グレイヴスのプレイはともすればもったりしがちなESPの仲間たちの諸作ともちがうシャープな印象を本作にもたらしている。リロイ・ジョーンズも自作詩「Black Dada Nihilismus」の朗誦で客演した64年の『New York Art Quartet』はその名のとおりアートの前衛としてのフリーを志向していたはずだが、グレイヴスはやはり64年に参加したジュゼッピ・ローガンの五重奏団ではアート・カルテットと真逆の呪術的な音響空間を種々雑多なリズムと音色でかもしだしてもいる。ESPに2作をのこしたのち、行方をくらまし2000年代後半に復帰するまでながらく消息をたっていたローガンの異教的な存在感が説得力をもちえたのもグレイヴスのリズムに負うところ大だった。なんとなればアイラーらフリージャズ第2世代にあって汎アフリカニズムとも異なる非西欧的なリズム志向はサン・ラーをのぞけばほとんど類例がなかった。アフロフューチャーリズムを転倒させるかのごときグレイヴスの古代主義こそ、シカゴ派をさきがけ即興の領野を拡張するものであり、その萌芽は60年代前半に芽吹き70年代に実をむすびはじめる。間章の半夏舎の招きで1977年夏に来日したおり、高木元輝、阿部薫、近藤等則と土取利行らと吹き込んだ『Meditation Among Us』はその記録であり、どちらかといえば舞台のひとだったグレイヴスの脂ののりきった時機をとらえた録音物としても貴重である。レコードのライナーノーツで間章はグレイヴスの弁をひきながらスポンティニティないしスポンティニアスなる語を鍵概念風にもちいているが、それすなわち演奏という関係のポリティクスにおける非主導性を意味し、間の視線はすでにジャズからインプロヴィゼーションに移行していたのはライナーノーツの前半で注目する音楽家としてグレイヴスとともにスティーヴ・レイシーとデレク・ベイリーをあげているのでもわかる。77年の東京でグレイヴスは欧米の新潮流の伝導役を担うとともに演奏の場では関係を励起する触媒でありつづけた、そのあり方は間が指摘するとおり、マックス・ローチともエルヴィン・ジョーンズともサニー・マレイともちがうドラマー像を提起する。
 幾多のドラマーとグレイヴスを分かつポイントこそ、間にとってのスポンティニティだが、その具体像を私なりに敷衍すると、グレイヴスのスタイルにはアイラーの諸作で耳にするサニー・マレイのパルスビートの定量的で水平的なあり方と対照的な志向性をもつといえばいいだろうか。リズムキープでもノンビートの即興でも、グレイヴスの演奏には線的で垂直的な傾向があり、自在にグルーヴをつむぐ場面であっても、腐心するのはリズムの連なりよりも一音としての一打である。一打への深い洞察が一音ごとの差異となり、一打ごとの微細な、しかし根源的な落差は時間軸に沿った演奏行為においてかぎりない抑揚(ダイナミズム)に転化する。グレイヴスにかかれば、スネアもタブラもティンバレスもパンディロもトーキングドラムも、ピアノのような楽器であっても、すべてからく打面にふれ音が鳴る構造物にすぎず、そのような探求と実践のはてに、時々刻々鼓動を刻みつづける身体が浮かび上がるのはなかば必然であった。
 2018年グレイヴスは心アミロイドーシスの診断とともに余命半年の宣告を受けたという。その2年後の2020年、闘病の模様を伝える記事を執筆した「New York Times」の記者は心臓の鼓動を研究してきた彼の身にふりかかった運命を、皮肉とみるひともいるかもしれないとひかえめな筆致で記している。それにたいしてグレイヴスは「挑むべきものは私の裡にある」と述べている、私はその声を耳にしたわけでないが、おそらく悲壮感とはちがう響きだっただろう。そのかいあってミルフォード・グレイヴスの不屈のハートはさらに半年ものあいだビートを刻みつづけたのである。(了)

松村正人

Chihei Hatakeyama - ele-king

 日本のアンビエント界を牽引するひとり、畠山地平が4月7日に新作『Late Spring』をリリースする。レーベルはUKの〈Gearbox〉で、これまでビンカー・ゴールディング&モーゼス・ボイドサラシー・コルワルドゥワイト・トリブルチミニョなど、ジャズ寄りの作品を多く手がけてきたところだ。同レーベルが初めて送り出す日本人アーティストが畠山というのはじつに興味深い。ふだんは仕事の早い畠山が今回はだいぶ時間をかけたそうで、その面でも注目すべき1枚といえよう。来たれ、春。

●日本のアンビエント/ドローン・ミュージック・シーンを牽引する畠山地平、英〈Gearbox Records〉からの第一弾作品をリリース!

●ファースト・シングル「Sound of Air」のアニメーション・ビデオも公開中!

国内外のレーベルから現在にいたるまで多数の作品を発表し、日本を代表するアンビエント/ドローン・ミュージック・シーンを牽引する存在となったChihei Hatakeyamaこと畠山地平。 Spotifyの2017年「海外で最も再生された国内アーティスト」ではトップ10にランクインするなど、これまでも海外での人気が高かった彼が、4月7日(水)にイギリスの〈Gearbox Records〉からの第一弾作品となるアルバム『Late Spring』を日本先行発売する。

〈Gearbox Records〉初の日本人アーティストとなったChihei Hatakeyamaの新作は、一連の豊かで傑出した出会いを通して、共有された旅の経験を穏やかに展開していく。大聖堂のオルガンを思わせる1曲目 “Breaking Dawn” の鳴り響く水中の反響から、アルバムを締めくくる “Twilight Sea” の巧妙なドリフトに至るまで、レコードは緻密で美しいメロディが詰まった傑作に仕上がっている。広がっていくシンセサイザーのサウンド、そして光り輝くスローモーションのギターに引き寄せられ、それが時折現れる音響要素と結びつく。その様は、まるで人工血液のように機械の脈を流れるコンピューター・コードを想起させる。

1949年の映画でタイトルを共有している日本の映画監督小津安二郎の作品に示されている通り、 風景の循環運動の美しさと日常生活の下に横たわる季節の変化に触発されて、『Late Spring』は古い映画の印象を投影している。円運動のコンセプトは、畠山がデイヴィッド・リンチ監督の『ツイン・ピークス The Return』を観ていた時に思いついたという。

通常は仕事が早い方だというが、今回の作品は自身のキャリアの中で最も時間のかかった作品の 一枚だったとか。2018年に始まった制作作業は、作品が完成した2020年まで続いた。彼は、ギターとシンセの再生と録音に新しいアンプとマイクのセットアップを使用して、自身の演奏へのア プローチを再検討した。メロディとトーンを単純化するために、彼はトラックごとに1種類の楽器 のみを使用し、1つはシンセのみ、もう1つはエレキ・ギターのみを使用したという。

早速本日配信開始となったファースト・シングル「Sound of Air」のアニメーション・ビデオが公開された。

「Sound of Air」のアニメーション・ビデオはこちら

畠山いわく、“Sound of Air” は、ストラトキャスターの音色を活かした楽曲で、フェンダーのギター・アンプを使って収録。4月に録音した曲で、ギター演奏のインプロヴィゼーションでループを作り、編集したもの。Mel9という特殊なギター・エフェクトを使ってメインのギターの背後にあるストリングスのような音色を作った。爽やかな春の空気をイメージしているという。

世界に先駆けて日本先行発売されるアルバム 『レイト・スプリング』に期待が高まる。

[リリース情報]
アーティスト名: Chihei Hatakeyama (畠山地平)
タイトル名: Late Spring (レイト・スプリング)
発売日: 2021年4月7日(金)
レーベル: Gearbox Records
品番: GB1565CDOBI (CD) / GB1565OBI (LP)

※特別仕様盤特典:日本先行発売、ライナーノーツ付き

[トラックリスト]
01. Breaking Dawn
02. Rain Funeral
03. Butterfly's Dream
04. Sound of Air
05. Sound of Air II
06. Spica
07. Thunder Ringing in the Distance
08. Memory in the Screen
09. Butterfly's Dream II
10. Long Shadows
11. Twilight Sea

アルバム『Late Spring』予約受付中!
https://orcd.co/latespring

シングル「Sound of Air」配信中!
https://orcd.co/soundofair


【バイオグラフィー】

Chihei Hatakeyamaとして2006年に前衛音楽専門レーベルとして定評のあるアメリカの〈Kranky〉より、ファースト・アルバムをリリース。以後、オーストラリア〈Room40〉、ルクセンブルク〈Own Records〉、イギリス〈Under The Spire〉、〈hibernate〉、日本〈Home Normal〉など、国内外のレーベルから現在にいたるまで多数の作品を発表し、ライヴ・ツアーも行なっている。デジタルとアナログの機材を駆使したサウンドが構築する、美しいアンビエント・ドローン作品を特徴としており、主に海外での人気が高く、Spotifyの2017年「海外で最も再生された国内アーティスト」ではトップ10にランクインした。独自の楽曲制作の他、映画などにも楽曲を提供している。ソロ以外では伊達伯欣とのエレクトロ・アコースティック・デュオOpitope、ヴォーカリスト佐立努とのユニットLuis Nanookでとしてアルバムをリリースしている。加えて、世界的に支持される日本の電子音楽家ASUNAやアンビエント・アーティストHakobune等ともコラボレーション・アルバムを発表している。2021年4月、イギリス〈Gearbox Records〉からの第一弾リリースとなるアルバム『Late Spring』を発売。

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