「K A R Y Y N」と一致するもの

Courtney Barnett - ele-king

 これは嬉しいお知らせだー。春の来日公演やフジでのパフォーマンスも話題を呼んだオーストラリアの宝、コートニー・バーネットが初めてのライヴ盤をリリースする。しかも、『MTV アンプラグド』である。本人コメントも到着しているが、どうやら「アンプラグド」には深い思い入れがあるようで……彼女の珠玉の楽曲たちがアコースティックではどのような表情を見せるのか。レナード・コーエンのカヴァー曲や新曲もあります。これは楽しみだー。

tiny pop - ele-king

 ネット世代によるDIY歌謡──それが「tiny pop」である。詳しくはこちらの山田光の記事や、先日上野公園でおこなわれたフェスのレポートを参照されたいが、いまじわじわとその名を広めつつあるこの「小さなポップ」の、初となるコンピレイションがリリースされる。5曲入りのデジタル版は本日12月20日に、11曲入りのCD盤は1月8日に発売。小さな、けれども大いに魅力あふれる音楽たちの、ささやかなる息吹に耳を傾けよう。

ネット世代のDIY歌謡曲! 20年代の幕開けに相応しい新たなる音楽シーン(?!) “tiny pop” 初のコンピレーション!

「tiny popとは、インターネット世代によるDIY歌謡曲システム(作詞・作曲・編曲)である」(hikaru yamada)。

巷で「“tiny pop”とはなんぞや?」と騒がれつつある20年代の幕開けに相応しい音楽的キーワード“tiny pop”。ジャンルやカテゴリ、それともシーンやムーブメントとも言うべきか、まだ固まり切らない“空気”や“匂い”のようなものを自らその片隅に身を置き東京インディシーンにて異彩を放つ hikaru yamada が“tiny pop”なアーティスト達を紹介するコンピレーションを監修! アレンジや音色の再現のみにとどまっていたシティポップリバイバルから、その次の一歩を踏み出したリアルタイムなサウンドはまさに“ネット世代のDIY歌謡曲”!

【収録アーティスト】

-mukuchi-
マリによる一人ユニット。西日本の漁村にて無気力生活中。インターネット上に公開されている宅録家の音源に影響を受け、2015年頃から曲作りをはじめる。以来、主にネット上で活動を続けている。mukuchi のほか、hikaru yamada (hikaru yamada and the librarians)と共に feather shuttles forever としても活動している。

-SNJO-
広島出身、京都在住のプロデューサー。 クラブミュージックから影響を受けたサウンドと普遍的なノスタルジーを併せ持ったメロディを軸に楽曲を制作しており、多 数の楽曲提供や客演も積極的に行う。2018年10月にネットレー ベル〈Local Visions〉よりアルバム『未開の惑星』2019年11月に2ndアルバム『Diamond』をリリース。

-wai wai music resort-
大阪出身・在住のエブリデと Lisa で関西を中心に活動する兄妹ポップユニット。ジャズやワールドミュージック、ゲームミュージックに影響を受けたインターネット時代のリゾート音楽を展開する。2019年4月にはインターネットレーベル〈Local Visions〉より1st EP「WWMR 1」をリリース。同月に開催され大きな話題となった〈Local Visions〉と lightmellow部との共同イベント Yu-Koh α版にも出演。

-ゆめであいましょう-
2009年から活動し、1973年ごろから1985年ごろまでの間に作られた想像上のロックや歌謡曲を作り続けている音楽ユニット。2019年4月に“んミィバンド”とのスプリット7インチ・シングル「ひかりのうた/おだやかにひそやかに」をリリースした。

-feather shuttles forever-
hikaru yamada and the librarians としても活動し、サックス/マルチ奏者であり前野健太の『サクラ』に参加するなどさまざまな場で活躍している“hikaru yamada”と、漁村在住のシンガー・ソングライター/宅録音楽家でありソロ・ユニット“mukuchi”として多数の作品を発表しているマリこと西海マリによるユニット。2017年にファースト・アルバム『feather shuttles forever』をリリース、2018年5月に発表したシングル「提案」には Tenma Tenma、kyooo、入江陽、SNJO という4人が客演、2019年1月には〈Local Visions〉から2ndアルバム『図上のシーサイドタウン』を発表している。

【監修:hikaru yamada】
1988年生まれ。アルトサックス・トラックメイクなど。循環呼吸や各種プリペアドを駆使したサックス演奏の他、サンプリングによるトラックメイクを行う。自身のユニット hikaru yamada and the librarians と feather shuttles forever の他、入江陽・毛玉・前野健太・SNJO・VOLOJZA・South Penguin・んミィバンドなどのアルバム、映画『ディアー・ディアー』(2015)『馬の骨』(2018)サウンドトラック(いずれも岡田拓郎が音楽を担当)に参加。2019年からは雑誌『ele-king』『ミュージックマガジン』に記事を寄稿。普段はゲームの制作会社で音響効果と作曲の仕事をしている。

【リリース情報】

CD版/デジタル版 2形態でリリース!

【DIGITAL】

タイトル: tiny pop – the tiny side of life / タイニー・ポップ - ザ・タイニー・サイド・オブ・ライフ
アーティスト:V.A. / V.A.
レーベル:P-VINE
発売日:2019年12月20日(金)

《収録曲》
01. feather shuttles forever 「ウェルウィッチア」
02. ゆめであいましょう 「見えるわ」
03. wai wai music resort 「Blue Fish」
04. SNJO 「Ghost」
05. mukuchi 「午前十時の映画祭」

【CD】

タイトル:tiny pop - here’s that tiny days / タイニー・ポップ – ヒアズ・ザット・タイニー・デイズ
アーティスト:V.A. / V.A.
レーベル:P-VINE
品番:PCD-4644
定価:¥1,000+税
発売日:2020年1月8日(水)
*CD版には封入ブックレットに監修 hikaru yamada によるシーンの詳細な解説と参加アーティスト各々による曲解説コメントを掲載!

《収録曲》
01. mukuchi 「午前十時の映画祭」
02. mukuchi 「食卓」
03. mukuchi 「オアシスの一部分」
04. SNJO 「Ghost」
05. SNJOとゆnovation 「Days」
06. wai wai music resort 「Blue Fish」
07. エブリデ 「牛の記憶」
08. ゆめであいましょう 「見えるわ」
09. ゆめであいましょう 「シャンマオムーン」
10. ゆめであいましょう 「誰もが誰かに」
11. feather shuttles forever 「ウェルウィッチア」

https://smarturl.it/tinypop_heres

WaqWaq Kingdom - ele-king

 先日、新たに強力な12インチがリリースされたばかりの Mars89 だけれど(紙エレ年末号にインタヴュー掲載)、彼が suimin とともに主催する《南蛮渡来》(名前の由来はじゃがたら!)が5周年を迎える。というわけで、年明け1月18日にアニヴァーサリー・パーティが開催されることとなった(WWW / WWWβ)。目玉は、キング・ミダス・サウンドへの参加でも知られるキキ・ヒトミと、新生シーフィールのメンバーでありDJスコッチ・エッグ名義でも活躍しているシゲル・イシハラからなるユニット、ワクワク・キングダムの出演だろう。2017年のファースト『Shinsekai』も良かったし、最近セカンド『Essaka Hoisa』も出たばかりということで、すばらしいパフォーマンスを披露してくれることだろう。詳しくは下記をば。

[2020年1月9日追記]
 昨日、フルラインナップが発表されました。新たにローカルから欧州帰りの MEW、「ストレンジ・ダブ・セット」を披露する TOREI、そして Double Clapperz から UKD の計3組の出演が決定。楽しみです。

南蛮渡来 5th Anniversary

Mars89 と suimin 主宰のミューテーション・パーティ《南蛮渡来》5周年記念! “演歌ダブ”でも話題となった Kiki Hitomi とブレイクコアのレジェンド DJ Scotch Egg によるヘビー・バイブスな重低音デュオ WaqWaq Kingdom を初来日で迎えた、ベース&トライバルな阿弗利加、亜細亜、神、祭、未来、タイムワープな新世界へ。ワクワクなフルラインナップは後日発表!

南蛮渡来 5th Anniversary
2020/01/18 sat at WWW / WWWβ
OPEN / START 23:30
ADV ¥1,800@RA | DOOR ¥2,500 | U23 ¥1,500

WaqWaq Kingdom (Kiki Hitomi & Shigeru Ishihara) [Phantom Limb / Jahtari / JP/DE]
MEW [*1/9追記]
TOREI - Strange Dub set - [*1/9追記]
UKD (Double Clapperz) [*1/9追記]
Mars89 [南蛮渡来]
suimin [南蛮渡来]

Tarot: AWAI [*1/9追記]

※ You must be 20 or over with Photo ID to enter.

詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/012125.php
前売:https://www.residentadvisor.net/events/1363782

■WaqWaq Kingdom (Kiki Hitomi & Shigeru Ishihara) [Phantom Limb / Jahtari / JP/DE]

Seefeel のメンバーでもある Shigeru Ishihara (別名 DJ Scotch Egg) と、The Bug との King Midas Sound でも活動するシンガー/プロデューサー Kiki Hitomi による“トライバル”にインスパイアされたキラーな重低音デュオ WaqWaq Kingdom。“ヘビー・バイブス”なデュオとして知られ、ヨーロッパ、中国での評判を皮切りに、〈Phantom Limb Records〉からのセカンド・アルバム『Essaka Hoisa』のリリース以来、USからの関心も高めている。

WaqWaq Kingdom は古代神道の神話や、地元の神々を称える日本の“祭り”をテーマとし、催眠的でシャーマニックなライブ・パフォーマンスは、「アニミスティックなルーツとフーチャリスティックな都市のネオン・カラーを再接続する強烈なタイムワープの体験」と言われている。

デュオの最初の2枚のレコード、および〈Jahtari〉からのEPとLPで着実な評価を得ながらワールドワイドへ進出。Quietus や Resident Advisor からの熱烈な記事や、The Wire でもフィーチャーされる。また Shigeru Ishihara はウガンダの新興フェスティバル〈Nyege Nyege〉に出演し、ナントとロッテルダムでもギグを行っている。

https://open.spotify.com/album/4HbqiCPMjB8WP1vIegQ6Br


■Mars89 [南蛮渡来]

Mars89 は現在東京を拠点に活動している DJ / Composer である。 2016年にEP「East End Chaos」をリリース。 そして、それを足がかりに2017年に「Lucid Dream EP」を Bristol を拠点とするレーベル〈Bokeh Versions〉からダブプレートとカセットテープというフォーマットでリリース。2018年にはアジアツアーや大型フェスへの出演を経て、〈Bokeh Versions〉から12インチ「End Of The Death」をリリース。主要メディアで高く評価され、あらゆるラジオで繰り返しプレイされた。UNDERCOVER 2019A/W の Show や田名網敬一のドキュメンタリーフィルム、Louis Vuitton 2019A/W Mens の広告映像の楽曲などを担当。Bristol の Noods Radio ではレジデントをつとめている。

https://www.mars89.com/
https://www.youtube.com/watch?v=gjw1UGL14yE


■suimin [南蛮渡来]

『覚醒、瞑想、殺人。』

https://soundcloud.com/min-ing

MOODYMANN JAPAN TOUR 2020 - ele-king

 正月明け早々にムーディーマンが来日する。最高のデトロイト・ハウス、ソウル・ミュージックおよびファンクの魔術師。ちなみに、1ヶ月前にアップされたばかりの、モータウン60周年を祝した最新のミックス音源はこちらです。https://m.soundcloud.com/carharttwip/carhartt-wip-radio-november-2019

MOODYMANN JAPAN TOUR 2020

2020.1.11(土) 東京 @Contact

Studio:
Moodymann
DJ KOCO a.k.a. SHIMOKITA
YOSA
U-T

Contact:
sauce81 - Live
Kaji (WITT | xXx) - Prince set
Pocho in the house
and more

Open: 22:00

Under 23 1000yen | Before 23:00 2500yen | Early Bird 2500yen | Advance 3000yen
With Flyer 3300yen | Door 3800yen

Info: Contact https://www.contacttokyo.com
東京都渋谷区道玄坂2-10-12 新大宗ビル4号館B2F TEL 03-6427-8107
You must be 20 and over with ID.


2020.1.12(日) 大阪 @Club Joule

2F:
Moodymann
DJ Fulltono (EXIT Records / Tekk DJz)
AKIHIRO (NIAGARA)
QUESTA (HOOFIT / BMS)

4F:
DJ AGEISHI (AHB Pro.)
SHINDO (hypnotic inc.)
Akemi Hino
Izumi Kimura (FLOW)
TeLL (C£apHaиds)

Open 22:00

Advance 3000yen + 1Drink fee (700yen)
RA, e+, iFLYER, Newtone, Root Down, Disk Union Osaka

Door 3500yen + 1Drink fee (700yen)

Info: Club Joule www.club-joule.com
大阪市中央区西心斎橋2-11-7 南炭屋町ビル2F TEL 06-6214-1223
AHB Production www.ahbproduction.com


Moodymann (KDJ, Mahogani Music / From Detroit)

ミシガン州デトロイトを拠点に活動するアーティスト、MoodymannことKenny Dixon Jrは、レーベル〈KDJ〉と〈Mahogani Music〉を主宰し、現代そして今後のインディペンデント・シーンやブラック・ミュージックを語る上で決して無視出来ない存在である。デトロイト・テクノ名門、Planet Eよりファースト・アルバム『Silent Introduction』をリリースし、その後〈Peace Frog〉よりアルバム『Mahogany Brown』、『Forevernevermore』、『Silence In The Secret Garden』、『Black Mahogani』をリリース。
『Black Mahogani』の続編『Black Mahogani Ⅱ ~ the Pitch Black City Collection ~』では、もはや〈Strata〉や〈Tribe〉、〈Strata East〉といったブラック・ジャズ~スピリチュアル・ジャズをも想わす作品を発表し、その限りない才能を発揮している。2014年、アルバム『MOODYMANN』をリリース。2015年、DJミックスシリーズ 『DJ Kicks』よりオフィシャルMIXをリリース。2019年には最新アルバム『Sinner』をリリース、New Eraとのコラボレーションなど常に話題が尽きない。2020年5月21〜25日デトロイトにてSoul Skate Detroitを開催する。

www.mahoganimusic.com
www.facebook.com/moodymann313
www.facebook.com/blackmahogani313

Jagatara - ele-king

 日本のロック/ポップ史においてもっとも重要なバンドのひとつ、じゃがたらの代表作ほぼすべてがようやくサブスクで聴けるようになった。1982年の大傑作『南蛮渡来』をはじめ、1987年の人気作3枚『裸の王様』『ロビンソンの庭』『ニセ予言者ども』、1989年の問題作『それから』に『ごくつぶし』、江戸アケミ最後の作品となった1990年の『そらそれ』。また、フランク・ザッパの影響が滲み出た異色作1983年の『家族百景』、OTOの音楽的野心がクラブ世代との溝を埋める1990年の『おあそび』、それからデビュー・シングル「LAST TANGO IN JUKU/HEY SAY!」を収録したベスト盤『BEST OF JAGATARA~西暦2000年分の反省~』。

https://www.110107.com/s/oto/news/detail/TP01649?ima=2803

 じゃがたらは、80年代のシティポップからは見えない日本を描写し、RCサクセションでさえも歌わなかった痛みを歌い、バブル経済時代の居心地の悪さをスケールの大きな痛快かつ雑食的なファンクをもって表現した稀なバンド。耳から体内に注入し、生きる力を蓄え、さてと今日もまたガッツで乗り切ろう。
 なお、今回リイシューされるアナログ盤2枚(『南蛮渡来』および『裸の王様』)、Sony Music Shop限定で買うと先着でメッセージの籠もった特典ステッカーも付いている。

 すでにご存じの方も多いだろう。石原洋のソロ・アルバムが来年の2月12日に坂本慎太郎の〈zelone〉レーベルからリリースされる。タイトルは『formula』、アナログ盤ではA面1曲/B面1曲という構成だ。(CDでは普通に全2曲)
 石原洋といえばゆらゆら帝国のプロデューサーであり、一時期はOgre You Assholeのプロデュースも手掛けていたことで広く知られるが、元々はWhite Heavenという東京のアンダーグラウンドにおいて玄人受けしていたサイケデリック・ロック・バンドで活動していた前歴を持つ。バンド解散後もソロないしはThe Starsとしての活動をしていた石原だが、作品を発表するのはじつに23年ぶり。
 その新作には、予想だにしなかった音響が展開されているに違いない。ジョン・ケージ的なメタ・ミュージックであり、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド的なロックの解体かもしれない、おそらくは。アートワークも凝っている。まだ2ヶ月も先の話だが楽しみでならない。

formula / you ishihara

M-1 / Side A: formula
M-2 / Side B: formula reverse

All songs written, concrete conducted and produced by You Ishihara
Recorded, mixed & mastered by Soichiro Nakamura at Peace Music, Tokyo 2019

石原洋 / you ishihara: vocal, guitar, synthesizer, keyboard, effects

栗原ミチオ / michio kurihara: guitar
北田智裕 / tomohiro kitada: bass
山本達久 / tatsuhisa yamamoto: drums
中村宗一郎 / soichiro nakamura: keyborad


https://reststayrelationship.com

Kano - ele-king

 UKのラッパー、ケイノ(Kano)のキャリア6枚目となるアルバム『Hoodies All Summer』がリリースされた。ケイノは2000年代のグライム・シーンの立役者のひとりとして知られるラッパーだ。海賊ラジオ「Deja Vu FM」でワイリースケプタとともに評判をあげ、“Ps & Qs”で大ヒットを飛ばした。また、前作『Made In the Monor』(2014)はUKの批評家賞にあたるマーキュリー賞にノミネートされるなど、時代の声となる作品をリリースしてきた。Netflix で公開中の大人気ドラマ・シリーズ『Top Boy』でのめざましい演技に常に注目が集まってる。そんな幅広い活動の中でリリースされた本作は、コミュニティの宣教師かのように、若者の言葉を用いて彼らを導く。そんな彼が背負っている責任を感じさせるアルバムとなった。

 前半はいまのロンドンの厳しいストリートで稼ぐキッズの現実に寄り添う意識が背景となっているように感じられ、曲調も厳かだ。ヴァイオリンで幕を開ける 1. “Free Years Later”で時折自身の過去のいざこざに言及しつつ、いまの不良を諫める言葉を紡ぎながら「D・ダブル・Eがしてきたことをいま俺が若者にやるんだ」という最後のラインには多くのラッパーの見本となってきたD・ダブル・E(D Double E)の功績を称えながら、ケイノも別の「ストリートの理想像」を体現するという決意が聞こえる。2. “Good Youtes Walk Around Evils”ではタイトなグライム・トラックに、ラフなストリートでラッパーとして「まっとうにやること」、つまりラッパー・リリシストとして「稼ぐ」という姿勢を誇っている。つづく 3. “Trouble”はブラックパンサーの活動家であり、70年代〜80年代にノッティングヒルのデモを率いたことで知られるダーカス・ハウ(Darcus Howe)のインタヴューのサンプリングで始まる。現在の警察の黒人に対する暴力を歴史と結びつけながら、ストリートにい続けることの難しさをストリートにいる若者にも届くような言葉で語っている。例えば、UKのラッパー、アブラ・カダブラ(Abra Cadabra)の大ヒット曲“Dun Talkin'”のラインを引用するところにはウィットを感じさせる。

 中盤はレゲエのエッセンスをミックスした曲が並ぶ。ジャマイカのアクセントを感じさせるシンガーのコージョ・ファンズを客演に迎えた 4. “Pan-Fried”はこれまで彼自身が成し遂げてきたことを祝うような1曲で、東ロンドンのローカルな仲間の話や、ジャマイカ由来のファッション文化が散りばめられていて興味深い。続く 5. “Can't Hold We Down”でもジャマイカの人気ラッパー、ポップカーン(Popcaan)を迎え、ケイノのラップにイギリスとジャマイカの距離が生み出す憧れと、それに対する「俺たちのやり方」への誇りが入り混じったアンビヴァレントな感覚が聴こえて面白い。

 6. “Teardrops”では一転して、栄光の裏側に依然としてあるハードな現実に引き戻される。イギリスにおける黒人の置かれた立ち位置についてハードなビートに乗せて糾弾するようにラップするヴァースと弱気に呟くようなサビは、鮮やかなコントラストを引き出す。また 8. “Got My Brandy, Got My Beats”はある女性との別れの辛さを乗り越えようとする彼自身が描かれ、ガラージのビートとリル・シルヴァ(Lil Silva)のコーラスはその哀しさに寄り添う。

「愛と戦争は、すべて公正か」それが俺の生まれたところ
弱きは続かない、俺らみたいなシューズを履いて1週間
降ればいつも土砂降り、フードでひと夏を過ごす
君と僕にだけに、空から涙がこぼれる

In love and war All is fair where I'm from
The weak won't last a week in shoes like our ones
When it rains it pours Hoodies all summer
'Cause teardrops from the sky only seem to fall on you and I

“Teardrops”

 “Class of Deja”では、Deja Vu FM で凌ぎを削った盟友のD・ダブル・Eとジェッツ(Ghetts)を迎えた正統グライム・チューンで、ケイノとジェッツが交互にヴァースを蹴るスタイルで彼らの絆の強さも感じられる1曲だ。ラストの10. “SYM”では「Suck Your Mum」(意訳:くそくらえ)をコーラスするファニーなイントロが耳を引く。しかし、第二次世界大戦後にイギリスに移り住んだカリブ海移民の「ウィンドラッシュ世代」に触れるなど歴史を振り返りながら、現在のイギリスの黒人が置かれた状況までを見渡すように展開していく。そこから2000年代のダンスや海賊ラジオの存在にもスポットライトを当てるというドラマチックな展開には、イギリスの若者に歴史を伝えようとするケイノの姿が浮かんだ。

 ケイノが現実につながる歴史をラップするのは、それがストリートを生き抜くキッズに必要であると感じたからに違いない。それはマイノリティである「イギリスの黒人」というアイデンティティにとって、事実に基づいたストーリーを伝え、彼らを勇気づけ、良い方向に導きたいからであろう。ドリル・ミュージックがいまのストリート・キッズの現実を象徴しているならば、ケイノはこのアルバムを通して彼らの未来を描き出そうとしているのだ。

Minyo Crusaders - ele-king

 いまどんどんその存在感を増していっている民謡クルセイダーズ、日本の民謡をクンビアやブーガルーなどのリズムとかけあわせるこの至高のグループ(紙エレ24号にインタヴュー掲載)が、なんと初めて地上波に、というか初めてテレビに出演する。12月19日(明日!)の早朝、NHK総合『NHKニュース おはよう日本』内での特集というかたちで、先日の東京キネマ倶楽部でのすばらしいライヴの模様も一部放送されるとのこと。また、12月28日(土)には NHK-FM のピーター・バラカンの番組『ウィークエンドサンシャイン ウィンター・スペシャル』にも出演。どちらも要チェックです。

民謡クルセイダーズ《メディア情報》12/19(木)NHK総合『NHKニュース おはよう日本』、12/28(土)NHK-FM『ウィークエンドサンシャイン ウィンター・スペシャル』

なんと! 民謡クルセイダーズがNHK総合『NHKニュース おはよう日本』で紹介されます! メンバーへのインタビューや、先日の東京キネマ倶楽部でのライブ映像も織り交ぜた特集になります。12月19日(木)放送です。民クルは7時台に登場する予定です。お見逃しなく!

《番組詳細》
NHK総合『NHKニュース おはよう日本』
2019年12月19日(木)4:30~7:45
https://www4.nhk.or.jp/ohayou/

そして! いつも大変お世話になっております。NHK-FM のピーター・バラカンさんの番組『ウィークエンドサンシャイン』の特番『ウィークエンドサンシャイン ウィンター・スペシャル』に民謡クルセイダーズの田中克海と meg が出演します! 先日の東京キネマ倶楽部でのライブ録音なども織り交ぜ、たっぷり80分、出演する予定です。12月28日(土)放送です。お聞き逃しなく!

《番組詳細》
NHK-FM『ウィークエンドサンシャイン ウィンター・スペシャル』
2019年12月28日(土)7:20~11:50
DJ:ピーター・バラカン
https://www4.nhk.or.jp/sunshine/

※らじる★らじるでもお聞きいただけます。

Klein - ele-king

 圧倒的だ。「個性」ということばは彼女の才能を言いあらわすためにこそ存在しているのではないかとさえ思ってしまう。混沌をそのまま秩序にしてしまったとでもいえばいいだろうか。計画性や構成力の類は2018年のEP「cc」でもある程度発揮されていたわけだけれど、ミュージカル『Care』のスコアを手がけた経験が反映されているのか、新たにみずからレーベルまで起ち上げてリリースすることになったこのアルバムで、クラインはかつてない洗練の域に達している。なんでも18ヶ月かけて制作されたそうなので、「いま作っているアルバムで、ほんとうの意味で“音楽”を作っている」という昨年の彼女の発言は、もしかしたら「cc」ではなく『Lifetime』のことを指していたのかもしれない。

 全体的にヴォーカルやピアノ、ドローンの使い方が格段に向上している。リスナーはまず、不穏なノイズが歌ならぬ歌を多層的に引き連れてくる冒頭“Lifetime”で息を呑むことになるだろう。これはある種の降霊術である。比較的ストレートなビートとミニマルなパーカッションが、やはり謎めいたヴォーカルを引きずりまわす先行シングル曲“Claim It”も、具体音のすばらしい活用を聴かせるノイズ・アンビエント調の“Listen And See As They Take”も、曲名とは裏腹にロウファイなパーカッションの乱打にはじまり、突如ピアノを挟みながら、まるで焚き火のごとき(あるいはクラックル・ノイズのような)具体音でおわる“Silent”も、はっきり言って非のうちどころがない。どこでどう知り合ったのか、ニューヨークの前衛派ジャズ・サキソフォニスト、マタナ・ロバーツを招いた“For What Worth”も、反復する声とピアノとサックスをじつに有機的に結びつけており、サウンド面で必然性のあるコラボに仕上がっている。ハーモニカでシンセを再現しているかのような“Enough Is Enough”も新鮮だし、“We Are Almost There”における揺りかごのような声の波は、夢のなかで過去の人びとと遭遇しているかのような不思議な感覚をもたらしてくれる。これはやはり、降霊術だろう。コラージュのしかたにわざとらしさがないのもポイントで、このアルバムでは実験がそのままポップ・ミュージックとして成立している。
 彼女がもともとクラシック音楽やゴスペルを聴いて育ってきたことは知っている。USのメジャーなR&Bを好んでいることも知っている。ムーア・マザーチーノ・アモービといった地下の友人たちから刺戟を受けていることも知っている。けれどもクラインの音楽は、たんなるそれらのミックスと解釈するにはあまりにも独創的にすぎ、しかもそれがこれほどの洗練を獲得してしまったのだから、もはや向かうところ敵なしというか、つくづく「個性」ということばは彼女の才能を言いあらわすためにこそ存在しているのではないかと、そう唸らずにはいられない。最終曲“Protect My Blood”で波打つオルガンの、なんとまあ美しいこと!

 この『Lifetime』は「日記を誰かにあげる」ような、きわめてパーソナルな作品だという。他方で本作はゴスペル歌手のジェイムズ・クリーヴランドや、かつてブラックの観客向けに制作されていた「人種映画(race film)」の先駆たるスペンサー・ウィリアムズに触発されてもおり(同名の作曲家もいるが、たぶんこっち)、「ブラックのディアスポリックな経験」がテーマになっている。彼女固有のものでありながら、彼女だけのものではない何かの召喚──やはり、降霊術である。ムーア・マザーの影響だろうか? 私的なことと社会的・歴史的なことが表裏一体になっている点においてはヤッタとも共振しているわけだけど、クラインの鳴らす音はもっと快楽の成分を多く含んでいて、いうなれば大衆への扉が開かれている。だからこそわたしたちは、それがなんなのかよくわからないまま、しかしどうしようもなく彼女の音楽に惹きつけられてしまうのだろう。

 おまけ。音楽のスタイルはまったく異なるけれど、パーソナルであるはずの本作に唯一参加を許されたゲスト、マタナ・ロバーツの新作『Coin Coin Chapter Four: Memphis』もすばらしいアルバムなので、ぜひそちらも聴いていただきたい(余力があればレヴューします)。

TOKYO DUB ATTACK 2019 - ele-king

 紙エレキング最新号、DUB特集やってます。特集のなかでfeatureした1人、1TA(Bim One Production)がシーンの重鎮たちと開催する〈TOKYO DUB ATTACK 2019〉を紹介します。サウンドシステム──という言葉をご存じかと思いますが、これほど「音楽ってカラダで聴くもんだよな~」と思わせる“場”もありません。サウンドシステムとは、元々はジャマイカの移動式ディスコのことですが、いまではその低音を最高に鳴らすための“場”であり、レゲエ/dubに酔いしれる贅沢な“場”として認知されています。音好きにはたまらない“場”です。気さくな連中による最高のサウンドシステムです。大推薦します!! ぜひ震えて下さい。

 2019年を締めくくる、国内サウンドシステム・ダンス大一番! 同じフロアのなかに3つのサウンドシステムを入れて交互に鳴らしあう、ゴマカシ効かないガチンコ・セッションが今年も開催!

 レゲエ(Reggae)において、もっともタフでハードコアな要素にサウンドシステムがある。DIYに設計された独自のスピーカーの山、規格外の低音、1ターンテーブルに置かれる破壊力抜群のダブプレート、シャワーのように降り注ぐダブワイズ……あくまでもオリジナルな音を追求し、その場でしか生まれ得ない究極のサウンド体験。それがサウンドシステムにおける“Dub”である。

 今回は、サウンドシステムダンスSteppars' delightでおなじみScorcher Hi Fi (STICKO & COJIE of Mighty Crown)と同じく東京ダブアタック・レジデントであるBim One Production + eastaudio Soundsystemに加え、日本ダブ、サウンドシステムカルチャーのパイオニアの1人、MIGHTY MASSAと東京が誇るリアル・ルーツ・サウンドのJah Light Soundsystemが一堂に会する。
 ピュアでタフ、そしてハートフルなスピーカーの鳴らし合い、日本におけるサウンドシステム・カルチャーのひとつの頂ここにあり!

2019年12月30日(月)

TOKYO DUB ATTACK 2019

3 Soundsystem Sessions by :
Mighty Massa meets Jah Light Soundsystem
SCORCHER Hi Fi with Sound System
Bim One Production feat. MC JA-GE, HAYAMI (ORESKABAND / Trombone) & ADD (ORESKABAND / T.Sax) with eastaudio Soundsystem

Vinyl Shops by
Disc Shop Zero

Food by
新宿ドゥースラー
Yaad Food

Coffee Stand by
KAWANO COFFEE STAND


OPEN : 16:00
START : 16:00
CHARGE :
Adv 2,900yen / Door 3,400yen
(共にドリンク代別)
※再入場不可
※小学生以上有料/未就学児童無料(保護者同伴の場合に限る)

前売りチケット>>一般販売 : 10/19 (SAT) on sale
ぴあ : 0570-02-9999 / P : 166-781
ローソン : 0570-084-003 / L : 72089
e+ : https://eplus.jp
Unit Web Ticket : https://unit-tokyo.zaiko.io
clubberia : https://clubberia.com/ja
Resident Advisor : https://jp.residentadvisor.net/

>>STORE
代官山UNIT 03-5459-8630
RAGGA CHINA 045-651-9018
diskunion 渋谷クラブミュージックショップ 03-3476-2627
diskunion 新宿クラブミュージックショップ 03-5919-2422
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*東京ダブアタックYoutubeチャンネルにて、インタビュー・シリーズ「TDA TALKS」公開中!
https://www.youtube.com/channel/UCgrS2GgP_lzdBFdk3wDJb1w/videos?view_as=subscriber


主催: Tokyo Dub Attack 協力: Bim One Production / Mighty Crown Entertainment / 代官山 UNIT

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