「K A R Y Y N」と一致するもの

D.A.N.+VJ AKIKO NAKAYAMA - ele-king

 D.A.N. oneman live Chance。入口の看板にそう書いてあった。昨年末の恵比寿リキッドルームでのライヴを終えて間もなく、東京のみの新たなライヴの告知が発表された時には随分妙なタイミングだとは思ったけれど、どうやら今夜はその日の未明に配信開始が発表された新曲"Chance"のデジタル・リリース日に合わせて企画されたパーティーらしい。しかも今回は「Alive Painting」というパフォーマンスを行う画家の中山晃子をVJに迎えて、コラボレートしたライヴを披露するとのこと。チャンス。それは曲のタイトルではあるけれど、期待が高まる。

 開始時間の直前に到着すると、フロアではSEにWünderの“Lock Out for Yourself"が流され、若くてお洒落な男女が並んで待つスタイリッシュな空間が既に整っていた。ほどなくして照明が落ち、暗闇の中にメンバーが現れる。エピローグのような浮遊感漂うオープニングからゴリッとした原始的なリズムが徐々に加わり、D.A.N.の代表曲といえる"Zidane"が始まる。1stアルバム『D.A.N.』の1曲目にして一番アグレッシブなこの曲はライヴのはじまりに相応しく、一瞬にして身も心も踊らされてしまう。そのままのテンションをキープしながらリズムは反復し続け、後方のスクリーンに映し出された煙のようなグレーは青や白と混じって流れていき、サポート・メンバーの小林うてなが操る印象的なスティールパンの音色に導かれながら、次の“SSWB"にスムーズに繋がる。以前ミニ・アルバム『Tempest』のディスク・レビューの際にも書いたのだけれど、ミニマル且つダンサンブルなこの人力サウンドに、口ずさみたくなるようなメロディアスな歌を乗せてしまうバランス感覚がD.A.N.の持ち味で、よくあるダンス・ロックのように力任せに高揚感を持たせたり、あるいはクラブ寄りなリズムに偏りすぎてメロディを減らしたり、職人的にインストに走ったりというようなことはせずに、驚くほどしっかりと歌を、しかも日本語を柔らかくフラットに乗せているところが何度聴いても新鮮。ダンス・ミュージックとポップスの二面性を持っていて、どちらにも振り切らずゆらゆらと揺れ続けているような不思議な魅力がある。いろんなアーティストの影響を公言しているなかに宇多田ヒカルの名前を挙げているところもとても興味深い。

 その後は1stアルバムの曲順をなぞるように“Native Dancer"から“Curtain"までを続けて披露していく。会場内で同時に行われていた「Alive Painting」という映像パフォーマンスは、絵の具などの液体や固体を様々な質感の紙やアクリルガラスの上で流動的に反応させていく手法で、ひとつひとつの曲に合わせながら(“Navy"では濃紺、“Curtain"では紅に)色が波のようにうねって重なり、マーブル状に動いたり、光る粒子と混ざり合ったり、またはロールシャッハ・テストのように意味深な形をしてみせたり、かと思えば水墨画のように濃淡をつけて滲んだりと非常にサイケデリックで、じわじわと心地よく蝕まれていくような感覚。ひとところにとどまらず絶えず動いている予測のできない生々しさは、バンド・サウンドのズレや隙間に生まれる肉体的なグルーヴにも似ていて、完成された緻密な作品にはないライヴならではの臨場感に目を奪われることが何度もあった。

 初期のEPの曲“Now It's Dark"を置いてから最近のダウンテンポな曲を連続して統一感を持たせた後半は、いつものD.A.N.のイメージの淡いブルーグレーや深黒の空間がピンクや白に幻想的に変化してゆき、音と映像が醸し出す不穏なムードに吸い込まれていくよう。特に楽曲としてもひとつの到達点の“Tempest"は圧巻で、後半の高揚していく音の展開に誘われて膨らんだ赤い球体がパチンと弾けて流れだす瞬間は、他者と融合し同化していくように官能的で、恐ろしいほど美しかった。そして昨年からライヴで既に披露されていた“Chance"は、歌声とシンセを強調してさらにスケールを増したライヴ映えする素晴らしい曲。ラストはもうひとつの新曲“Replica"の穏やかな音に合わせてスクリーンが静かに黄色く染まっていくエンディングで、D.A.N.の見たことのない姿を映し出したように見えた。なんて眩しくて芸術的なんだろう。これらは自然に起こるものではなく、人の手によって動かされているからこそ神秘的で、だからこそこんなにも惹きつけられる。

 本編は終了。アンコールで再び登場し、ヴォーカルの櫻木大悟が「映画のエンドロールを見るような感じで聴いてください」と説明して最後に“Pool"で明るく終わったので、客席も緊張がほぐれ、別世界から戻ったような気分になった。MCはほぼ無し、“Ghana"をやらなかったのも納得の90分、13曲。その日、その瞬間、そこで目撃したもの。もしかするとD.A.N.の一番凄まじい状態を観てしまったかもしれない。そしてそれはきっと、まだ更新され続ける。

 ライヴが終わり会場のドアが開くと、その夜の空気を纏った私たちの体は都会の夜に流れていき、急速に別の方向へと進んだり留まったり交わったりしながら、ゆっくりと世界に馴染んで別の形に姿を変えていくような、そんな気がした。

EP-4 [fn.ψ] - ele-king

 世界の事象すべてをマクロ/ミクロにスキャンするようなアンビエント・サウンドがここにある。EP-4 [fn.ψ] (ファンクション サイ)のファースト・アルバム『OBLIQUES』の1曲め“Panmagic”を耳にしたとき、思わずそんなことを感じてしまった。
 聖性と変化。冷気と熱。柔らかさと硬質さ。時間と空間。重力と無重力。これらの世界の事象の両極を往復する立体的かつ多層的にレイヤーされたサウンドが鳴り響いている。『OBLIQUES』の試聴はこちらのサイトからできる。アルバムの一部だけだが、まずは聴いて頂きたい。

 結論へと先を急ぐ前に本作『OBLIQUES』の概略を簡単に記しておきたい。リリース・レーベルは80年代の伝説的(いや「事件的」とでも称するべきか)アヴァン・ファンク・ユニットEP-4の佐藤薫が新たにスタートしたレーベル〈φonon〉(フォノン)である。〈φonon〉は、80年代にEP-4『Multilevel Holarchy』、佐藤理『OBJECTLESS』などをリリースしていた佐藤薫主宰のレーベル〈SKATING PEARS〉のサブレーベルという位置づけであり、今後もノイズやアンビエントなどエクスペリメンタル音楽のリリースが予定されているという。2010年の佐藤薫復帰以降では、2012年のEP-4再始動に匹敵する大きなアクションではないかとも思う。
 今回のレーベル・ファースト・リリースでは、EP-4 [fn.ψ] と同時にRadio Ensembles Aiidaの新作『From ASIA (Radio Of The Day #2)』も同時に発売された。こちらはBCLラジオを複数台使用して受信した音を用いて聖性と神聖と現実を交錯させるアーティストA.Mizukiによる音響シャーマンとでもいうべき作品である。2017年に『IN A ROOM -Radio of the Day #1-』がリリースされている(このアルバムのライナーは佐藤薫が執筆していた)。独特の霞んだサウンドがもたらす意識感覚は唯一無二だ。『OBLIQUES』と『From ASIA (Radio Of The Day #2)』ともにある種、音響の「儀式性」といった側面では共通するムードがある。ぜひとも聴いて頂きたいアルバムである。

 さて、EP-4 [fn.ψ] に戻ろう。EP-4 [fn.ψ] は、佐藤薫とEP-4の別働隊でPARAの活動でも知られる家口成樹とのユニットである。2015年に結成され、これまでも京都、大阪、東京などでライヴ活動を展開し、その独自の音響空間によって聴き手に静かな衝撃を与えてきた。本作『OBLIQUES』は、待望の初CD作品である。これでわれわれリスナーは「録音芸術作品」としてのEP-4 [fn.ψ] のアンビエント/アンビエンスな音響世界を聴き込むができるというわけだ(ちなみにEP-4関係の新譜としては佐藤薫とBANANA-UGによるEP-4 unit3『À Artaud』から約5年ぶりのCDリリースとなる)。
 収録されている音源は2016年6月11日に大阪で行われたライヴ録音がベースとなっている。アルバムは9トラックに分かれているが、ベーシックはライヴ録音なので基本的にはひとつの演奏/音響として繋がってはいる。「基本的には」というのは、その音響は持続の中にあって複雑な立体性と多層性を獲得し、次第に変化を遂げており、いわゆる単一の音響が生成変化を続けるドローン音楽のライヴ演奏とは一線を画する。ドローンとノイズ、環境音と電子音、それらの音が多層的に組み合わされ、持続と変化が生まれているのだ。
 それはひとつの流れでもあり、複数の時間の結合でもある。音と音はシームレスに繋がっているのだが、しかし音は変化し続ける。いわば地上から空へ、小さな水の結晶から成層圏へ、サウンドはミスト/清流のように生成変化を遂げていく。

 その音に耳を澄ましていると、さまざまな変化が巻き起こっているのも分かってくる。人間と世界の音を媒介にした関係性を考察/感覚するサウンドスケープとでもいうべきか。世界に状況/情報をすべてスキャニングし、記憶を再生成するアンビエント。それは複雑であり、動的であり、しかしスタティックでもある。
 2曲め“Enantiomorphs”では、細やかなミスト・サウンドを発しながらも、その音響空間は次第に壮大になる。3曲め“Sonic Agglomeration”では儀式的な音がレイヤーされ、細やかな音のエレメント/モジュールが滑らかに、胆に大きなウェイヴを描く。4曲め“Pluralism”では音の打撃か鼓動を思わせるキック音が響きもする。だがそれもすぐに消え去り、5曲め“Pogo Beans”では環境音と持続音が波のように曲線を描く。ここまでの流れはまるで儀式のごとき厳粛さがある。
 続く6曲め“Hyperbola”以降は、それまでの粒子的電子音の清流から一変し、不穏なインダストリアル・アンビエントとでも形容したい都市のサウンドへと変化を遂げる。マテリアルな7曲め“Diagonal”、都市空間の監視カメラのような8曲め“Flyby Observations”を経て、最終曲“Plural (outro)”ではインダストリアルな反復音と“Pluralism”でも鳴り響いていたキックの音が再び鳴り響く。なんとも不穏なムードだ。透明な成層圏から再びこの地上へと戻ってきた感覚を聴き手にもたらす。
 マクロとミクロ。ミニマムとマキシム。フィクションとリアル。上昇と落下。この『OBLIQUES』を聴いているあいだは、その両極を往復しながら世界を、生物を、有機体を、無機物を、音を、音楽を、それら全体のアンビエンスを「感覚」で認識することになる。
 「感覚」とは多層的な情報を、高速で処理しながら人の心身に対して作用するように事象を圧縮・変化させるものだ。変化の過程、その受信としての「感覚」。変化の過程を受信し、感覚するとき、それは耳と脳を通して心にも効いてくる。「音楽を聴く」とは、「感覚」を拓き、「感覚」を受け入れ、「感覚」を新たに生成する行為ではないか。それはこの世界そのものを新しい感覚で再認識することも意味する。世界を斜めから見る/聴くこと。
 EP-4 [fn.ψ] の高密度にしてアトモスフィアなノイズとアンビエントは、そんな世界への「感覚」を拓く。感覚の生成によるサウンドスケープの交錯/融合。それこそがEP-4 [fn.ψ] 『OBLIQUES』の音響世界の本質に思えてならない。


サイバースペースからストリートへ - ele-king

 いよいよアルバムをリリースするCVNのリリース・パーティが4月21日(土)、幡ヶ谷Forestlimitにて開催される。彼が主宰するサイバースペース上の仮想広場、「Grey Matter Archives」のショーケースでもあり、CVNのライヴのほか、さまざまなプロデューサーたちが集合する。これはインディではなく、未来に向かうオルタナティヴである。この夜を逃すな!

4/21(土)
Grey Matter Archives Showcase
-X in the Car release party-

at 幡ヶ谷Forestlimit

Open 18:00
Tickets 2000yen(w/1d)

Live
CVN
LSTNGT
Aya Gloomy
refund

DJ
Flora Yin-Wong
pootee
Mari Sakurai
荒井優作
Naohiro Nishikawa


info
https://forestlimit.com/
https://greymatterarchives.club/

Ashley Henry & The RE: Ensemble - ele-king

 先日の『We Out Here』のレヴューで触れたとおり、現在の南ロンドンのジャズ・シーンは活況を帯びている。若くて才能のあるミュージシャンが豊富で、そうした人たちが互いのバンドやセッションで接触し、そこからどんどんとアイデアが生まれているといった状態だ。南ロンドンのジャズはディープ・ハウスやブロークンビーツから、グライムやフットワークに至るクラブ~ストリート・サウンドとも繋がりを持つが、ジャズに限らずこの一帯からはキング・クルール、トム・ミッシュ、コズモ・パイク、ジャークカーブ、プーマ・ブルーなど次々と新しい才能が生まれている。ロックやパンクも盛んで、街そのものに活気があるのだろう。ジャズ・ミュージシャンでは『We Out Here』の音楽監督を務めたシャバカ・ハッチングス、最新作でジャズとジャマイカ音楽を結んだザラ・マクファーレン、アフロからエレクトリック・サウンドなど柔軟に乗りこなす天才ドラマーのモーゼス・ボイド、エズラ・コレクティヴに参加するジョー・アーモン=ジョーンズなどがキー・パーソンだが、ほかにも女性版カマシ・ワシントンとも形容できそうなヌビア・ガルシア、そのヌビアらと女性だけのグループのネリアを結成するギタリストのシャーリー・テテ、ギル・スコット=ヘロンとモス・デフが出会ったようなシンガー・ソングライター&ギタリストのオスカー・ジェローム、南ロンドン・ジャズ・シーンの数多くのセッションに参加する重鎮的ベーシストのダニエル・カシミール、ハイエイタス・カイヨーテばりのフューチャー・ソウル・ユニットのトロープといった具合に、多くのタレントがひしめきあっている。ジャズをやっている大半は黒人で、ジャマイカやドミニカなどのカリビアン系と、アフリカからの移民が交差するクロス・カルチュラルな点が南ロンドンの特徴でもある。UKジャズの歴史を遡れば、1980年代にコートニー・パインやクリーヴランド・ワトキスらジャマイカ系ミュージシャンによってジャズ・ウォリアーズが結成され、その中からゲイリー・クロスビーによるミュージシャン育成機関のトゥモローズ・ウォリアーズが誕生し、シャバカ、ザラ、モーゼスらが輩出されている。このように南ロンドンのジャズ・シーンが活況を呈するのは今に始まったことではなく、歴史の積み重ねの中で前の世代から次の世代へと音楽や技術の橋渡しが行われ、そうしたジャズの強固な土壌があったからということが理解できるだろう。

 こうした南ロンドンのジャズ・シーンにあって、もっとも注目すべきピアニスト及び作曲家がアシュレイ・ヘンリーである。1991年生まれの彼は生粋の南ロンドン子で、2016年にロイヤル・アカデミーを卒業したばかりの音楽エリートだが、ティーンの頃はロックからギャングスタ・ラップ、ヒップホップを聴いてきて、そのあたりは今の若いジャズ・ミュージシャンらしい。ロバート・グラスパーあたりからこういったタイプのジャズ・ミュージシャンが増えてきたのだが、アシュレイもグラスパーとは国際ピアノ・トリオ・フェスティヴァルで共演し、彼から多大な影響を受けている。ほかにピアニストとしてアーマッド・ジャマル、ハービー・ハンコック、バド・パウエルからの影響を述べる一方、現在の好きなミュージシャンにはグラスパーと並んでクリスチャン・スコットの名を挙げ、2017年のベスト・アルバムとしてサンダーキャットの『ドランク』を選んでいる。さまざまなジャズ・フェスティヴァルに出演する一方、ジャズ・カフェの音楽監督としてジャズの偉大な先人たちに捧げた「マイルストーン」というイベントを開催し、エズラ・コレクティヴやクリーヴランド・ワトキスらがステージを踏んでいる。録音作品としては2016年に〈ジャズ・リフレッシュド〉から『アシュレイ・ヘンリーズ・ファイヴ』というEPをリリース。サム・ガードナー、サム・ヴィッカリーと組んだピアノ・トリオで、セロニアス・モンクの“モンクズ・ドリーム”をカヴァーし、“デジャ・ヴ”という素晴らしいモーダル・ジャズを演奏していた。そのほかブルー・ラブ・ビーツというユニットの『Xオーヴァー』というアルバムにも参加しているが、こちらはヒップホップやR&Bからフットワーク調の曲をやるなどクラブ・サウンド色の濃いもので、モーゼス・ボイド、ヌビア・ガルシア、ダニエル・カシミールら南ロンドン・ジャズ勢が大挙参加。クラブ寄りのサウンドをすんなり演奏できるところを見せていた。

 そんなアシュレイの新作は、新ユニットとなるリ・アンサンブルを率いての演奏となる(録音自体は2017年の1月から3月)。このアンサンブルは曲やセッションによって編成が変わるようで、本EPでは“イースター”がクインテット+パーカッションで、残りはピアノ・トリオ。このトリオはダニエル・カシミールとルビー・ラシュトンのドラマーであるエディ・ヒックの組み合わせで、クインテットの方はドラムがシネマティック・オーケストラのルーク・フラワーズに代わり、アシュレイも共演経験があるアメリカのベテラン、ジーン・トゥーサンがテナー・サックスを演奏している。そのほかトロープの女性ヴォーカリストのチェリース・アダムス・バーネット、シャバカ・ハッチングスなどとも共演するトリニダート出身のポエトリー・シンガーのアンソニー・ジョセフが参加。“イースター”でのアシュレイは、瑞々しく気品溢れるピアノと共にワードレスのヴォーカルも披露している。ナズの“ザ・ワールド・イズ・ユアーズ”のカヴァーはヒップホップで育った彼らしい選曲で、元ネタとなったアーマッド・ジャマルに対するリスペクトも示し、演奏はグラスパーからの影響が如実に表れている。“プレッシャー”は人力ブロークンビーツ風のナンバーで、チェリースのヴォーカルがソウルフルなムードを伝える。“バニー”はモーダルな変拍子の作品で、ジャズ・ピアニストとしてのアシュレイの叙情的な側面を伝える。“ムーヴィング・フォワード”はアフロ+ブロークンビーツ的なリズムを持ち、アシュレイのリリカルで美しいタッチのピアノがそれと好対照を見せながらも、うまくマッチするという曲。叙情性の中にシャープさを併せ持ち、美しさと力強さを共存させることができる彼のピアノは、エンリコ・ピエラヌンツィあたりの持ち味にも通じるものだ。『アシュレイ・ヘンリーズ・ファイヴ』収録の“セント・アンズ”は、ラッパーのマティックをフィーチャーしたセルフ・リミックス(再演)で、ロバート・グラスパー・エクスペリメントをイメージさせるものとなった。グラスパーからはちょうどひと回りほど下となるが、彼から影響を受けた新しいジャズの世代が出てきたことを知らせるピアニストだ。

Yoshi Horino(UNKNOWN season / YoshiFumi) - ele-king

House Tree Top10

手前味噌ですが、音でつながるご縁から広がり生まれたコンピ2月26日発売(Traxsource独占販売)をよろしくお願いいたします!

V.A. - House Tree(USDC0077) - UNKNOWN season
https://soundcloud.com/unknown-season/sets/v-a-house-tree-26th-feb-2018
feat. Franck Roger, Korsakow(Tigerskin aka Dub Taylor), Jack Jenson
Alton Miller, Lars Behrenroth, Pete Moss, Nick Holder
Chris Coco, Satoshi Fumi, Crispin J Glover, Iori Wakasa, Luyo and more

DJ schedule:

3.2.(Fri) Deep Monday Final at 頭バー
3.17.(Sat) PYROMANIA at 頭バー
4.20 (Fri) Plus at Suree

shotahirama / former_airline - ele-king

 これまで数々の作品を発表し、国内有数のグリッチ・ノイズの作り手としてその存在感を増しているshotahiramaこと平間翔太。昨年発表されたアルバム『Maybe Baby』も充実の1作だったが、このたび彼の主宰するレーベル〈SIGNALDADA〉がスプリット・シリーズを再始動、その復活第1弾となる7インチが2月28日に発売される。
 今回参加しているのはshotahirama本人と、ele-kingでもお馴染みの久保正樹によるformer_airlineの2組で、公開されているプレヴュー音源から想像するに、両者とも技巧を凝らしたトラックを作り上げているようだ。ダブの断片にリズミカルなビート、きめ細やかなグリッチを繋ぎ合わせるshotahiramaに、ギコギコと心地の良いノイズとシューゲイズ的サイケデリアを同居させるformer_airline。2曲とも聴き応え抜群である。
 いやしかし、こんなわくわくするようなスプリット盤をドロップするということは、ひょっとして〈SIGNALDADA〉、他にもいろいろとおもしろい企画を溜め込んでいるのではないだろうか。同レーベルの今後の動きにも注目である。

shotahirama / former_airline
new split 7" EP 「結論ライツ」

国内のグリッチ・ミュージック・シーンを牽引する shotahirama と
テープ・ミュージック界の新鋭 former_airline のスプリット7インチが
〈SIGNALDADA〉より数量限定で発売!

過去にも DUCEREY ADA NEXINO (aka Yuji Kondo) や miclodiet などといった気鋭アーティストらが参加してきた〈SIGNALDADA〉レーベルの人気企画「スプリットシリーズ」が超少数限定の7インチ・レコードとして復活! 凡そ4 年ぶりのシリーズに登場するのは、世界各国のレーベルからカセット作品をリリースし、ギターやエレクトロニクス、テープを用いたマニア垂涎のニューウェイヴ・スタイルを発表し続ける音楽家 former_airline。相対するはレーベル・オーナーであり、様々なメディアでノイズ・グリッチ・ミュージックの新機軸と評される shotahirama。満を持して発表される至極のスプリット・シングル「結論ライツ」は超少数生産にてレーベル・ウェブショップとディスクユニオンのみで限定発売!

shotahirama / former_airline
「結論ライツ」
side A (shotahirama) / Do The Right Thing (3:25)
side B (former_airline) / Strip away the day's decay (3:58)

品番:SIGNAL013
アーティスト:shotahirama / former_airline
タイトル:結論ライツ
レーベル:SIGNAL DADA
バーコード:なし
フォーマット:7インチEP
定価:1800 円+消費税
発売日:2018 年2 月28 日

■shotahirama プロフィール
ニューヨーク出身の音楽家、shotahirama(平間翔太)。中原昌也、evala、Ametsub といった音楽家がコメントを寄せる。畠中実(ICC 主任学芸員)による記事「デジタルのダダイスト、パンク以後の電子音楽」をはじめ、VICE マガジンや音楽ライターの三田格などによって多くのメディアで紹介される。Oval、Kangding Ray、Mark Fell などのジャパンツアーに出演。代表作にCDアルバム『post punk』や4枚組CDボックス『Surf』などがある。
https://www.signaldada.org

■former_airline プロフィール
久保正樹によるソロ・プロジェクト。いくつかのバンド活動を経て、90 年代後半よりギター、エレクトロニクス、テープなどを使用した音作りを始める。2000年代後半より former_airline 名義で活動開始。J・G・バラードにも例えられる音世界は、ときに「サイファイ・サイコ・エロチシズム」「ディストピアン・スナップショット」などと称されたりもする。カセットテープを中心に、日本、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスほか世界各国のレーベルより7 枚のアルバムをリリースしている。
https://soundcloud.com/former_airline

ボーカロイド音楽の世界 2017 - ele-king

2017年のボーカロイド音楽シーンを大総括!

初音ミク10周年という節目を迎え、大きな盛り上がりを見せた2017年のボーカロイド音楽シーン。はたしてその実態はどのようなものだったのか? 同じく10周年を迎えた鏡音リン・レン、初音ミク中国語版の発売、マジカルミライ5周年、「王の帰還」現象と新世代の擡頭、『♯コンパス』コラボ曲の席巻、「砂の惑星」の大ヒット、加速するアンダーグラウンド……などなど、多くの事象が交錯した2017年のボカロ・シーンを、さまざまな切り口から整理し振り返る!

●巻頭インタヴュー:EHAMIC
●2017年に発表された楽曲/アルバムを精選、エッセンシャルな50曲/20枚を一挙レヴュー!
●さらにテーマ別に近年の動向を俯瞰:「ジャズ」「アンダーグラウンド」「中国」「ニコニ広告」

・執筆:あるか / アンメルツP / キュウ / しま / ヒッキーP / Fe / Man_boo / myrmecoleon
・イラスト:seri / きゃらあい

contents

VOCALOIDはボサノヴァ――an interview with EHAMIC (しま+小林拓音)

The World of Vocaloid Music 2017
ボーカロイドに関する2017年の重要トピック (しま)
初音ミク10周年のトピック (しま)
鏡音リン・レン10周年のトピック (アンメルツP)
まえがき ~みんながよく話す「ボカロ」という言葉~ (ヒッキーP)
2017年は新陳代謝の年 ~初音ミク10周年を祝った旧世代と無視した新世代~ (ヒッキーP)
ぼからんで見る「2017年」という時代 (あるか)

The 50 Essential Songs of 2017 (キュウ+しま)
The 20 Essential Albums of 2017 (キュウ+しま)

Various Aspects of Vocaloid Music
ボカロとジャズ (Man_boo)
ボーカロイド・アンダーグラウンド (ヒッキーP)
中国ボーカロイド・シーンの発展と現状 (Fe+しま)
VOCALOIDタグ動画におけるニコニ広告の拡大とそのランキングへの影響 (myrmecoleon)

interview with Shuichi Mabe - ele-king


集団行動 - 充分未来
CONNECTONE / ビクターエンタテインメント

RockJ-Pop

Amazon Tower HMV iTunes

  相対性理論――この文字列を目にしセックスの理論と勘違いする者はよもやおるまいが、しかしノーベル賞を授かったかの名高き物理学者よりも、2006年に結成されたかの軽妙なるポップ・バンドのほうを思い浮かべる者はそれなりに多くいるだろう。さほど彼らが00年代末期に残した衝撃は大きかったわけだが、それは彼らが意識的に「ポストYouTube」や「ソフトウェア」といった惹句を掲げ、「メタ」や「フラット」といった言葉が盛んに飛び交っていた同時代の潮流とリンクする活動をコンセプチュアルに展開していたこととも無縁ではあるまい。
 その相対性理論を脱退した真部脩一が、同じく相対性理論の一員だったドラマーの西浦謙助と、新たにオーディションで出会ったヴォーカリスト・齋藤里菜とともに起ち上げたプロジェクトが集団行動である。昨年1月より活動を開始し、6月にはファースト・アルバム『集団行動』を発表、年が明けてこの2月には早くもセカンド・アルバム『充分未来』をリリースしている。
 この集団行動なるいささかかぶいたバンド名を耳にすると、くだんの相対の性理論もとい相対性の理論と同じく、その背後には入念に練られたコンセプトが横たわっているのではないかと勘繰ってしまうが、どうやら今回はそういうわけではないらしい。むしろ現在の真部はわかりやすさをこそ索めているという。「どこかで聴いたことのある感じってポップスの条件だと思うんです」――そう語る彼は、「メタ」や「フラット」といったタームによって彩られた今世紀初頭の文化的喧噪を、それこそ相対化しようと目論んでいるのかもしれない。いままっすぐにポップ・ミュージックの王道を歩まんと試みる彼に、その心境の変化やバンドの成り立ち、新作の勘所について伺った。

「こんなのバンドじゃねえ」と言っている感じです。「ただの集団行動だろ」っていう(笑)。

まず何よりバンド名が印象的ですが、これには何かコンセプトがあるのでしょうか?

真部脩一(以下、真部):いや、今回はコンセプトは皆無ですね。とにかく「バンドをやろう」というところから始まっています。相対性理論のときは「曲ができたから人を集めよう」という形でスタートしたんですが、集団行動は「バンドを組むために曲を書こう」というところから始まっているグループなんですよ。

相対性理論脱退後は、ハナエさんやタルトタタンさんをプロデュースされたりVampilliaに加入されたりしていましたが、いままたご自身のバンドをやろうと思ったのはなぜですか?

真部:心境の変化というか、フリーランスになってプロデュースという作業に関わらせてもらうようになって、それはけっこう自分に向いているし得意だと思ったんですけど、でもそれを続けていくうちに、僕はひとりのリスナーとしてはプレイヤーの音楽が好きというか、構築された音楽よりも演奏された音楽のほうが好きだということに気づいたんです。小さい頃からジャズが好きだったというのもあって、このまま音楽にプレイヤーとして参入できなくなるのは心残りだなと。

相対性理論のときはあまりそういう感覚はなかったのでしょうか?

真部:相対性理論に関しては、主体性を持って取り組むようなバンドではなくて、むしろそういうものを排除していこうというか、そう見えないようにしていこうというバンドだったので、主体的に音楽に関わるきっかけがあるとしたらいまかなと思ったんですよね(笑)。

相対性理論はやはり時代性みたいなものを意識していたのでしょうか?

真部:相対性理論ってウェブを利用して仕掛けたバンドだと思われているんですけど、べつにそんなことはなくて、たんにウェブで扱われやすかったバンドだと思うんですよね。「ポストYouTube時代のポップ・マエストロ」と銘打っていたんですが、当時はいろいろなコンテンツがフラットになっていって、事件性やメッセージ性のようなものが暑苦しく感じられるようになっていって、僕もそういう暑苦しいものが好きではなかったので、自分の好みと時代性がちょうど合ったところでやっていたバンドなんです。だからけっこう意識的に当事者性を排除していた部分があって。

当事者性というと?

真部:当時「相対性理論はソフトウェアである」と謳っていたんですけど、要するに相対性理論は「発信者」ではなくて「どこかの第三者が作り上げたソフト」である、というふうに打ち出していたんですよね。

初音ミクのような感じですか?

真部:そうですね。ただそうなるとけっこう寿命が短かったというか。結局そのあとにSNSが出てきて、タイムラインという概念が登場して、また事件性みたいなものがフィーチャーされるようになってきた。それでちょっとバカバカしくなったというか、自分の得意としていたメタな部分に少し飽きちゃったんです。だったらひとりのプレイヤーとして一生懸命音楽を作りたいと思ったんですね。

なるほど。でもやっぱり「集団行動」というネーミングはだいぶコンセプチュアルですよ。

真部:そう見えますよね。でもたんに「バンド」という概念を目指しているだけなんです(笑)。じつはまだぜんぜんバンド的じゃないんですよ。バンドマンが「こんなのロックじゃねえ」って言うのと同じように、「こんなのバンドじゃねえ」と言っている感じです。「ただの集団行動だろ」っていう(笑)。まだバンドになっていない、ということですね。

メンバーもまだぜんぜん足りていないというようなことを仰っていましたよね。

真部:始まった時点でリズム・セクションすら揃っていなかったという(笑)。ギター、ドラム、ヴォーカルの3人でスタートしたので、ほとんどのパートを僕が演奏せざるをえない状態でした。だからこそバンドであることに意識的になったというか。

ベースは真部さんが弾いているのですか?

真部:前作まではそうですね。ファースト・アルバムはギター、ベース、キーボードを僕がやって、そこにドラムとヴォーカルが加わる形でした。ただ今回のセカンド・アルバムではサポート・メンバーに入ってもらっているんです。そうすると自然にバンド感が出てくるんですよね(笑)。ゴダールの『ワン・プラス・ワン』という映画の、ぜんぜんレコーディングがうまくいかなくて、1週間くらい試行錯誤して、ひとりパーカショニストを呼んでみたらなんかうまくいっちゃった、みたいな感じに近くて(笑)。やっぱりロック・バンドはちょっと他力本願だなと(笑)。いまはその状況を楽しんでいますね。

誰にでもできるところまで削ぎ落とされたもののなかに、その人じゃないと成り立たない要素がふと浮き上がってくる音楽がすごく好きなんですよ。

真部さんのリリックは、情景を想起させたり物語を紡いだりすることよりも、韻の踏み方だったり子音と母音の組み合わせだったり、音としての効果のほうに重きを置いているような印象を受けました。

真部:そう言っていただけて本当にありがたいんですが、自分としてはすごく薄味を目指しながらも、結局はドラマ性や意味性みたいなものを捨てられずにいたという感じなんです。以前東浩紀さんにお会いしたときに「君はPerfumeみたいな意味性のないものは書けないのか」と言われて(笑)。そこは自分の未熟な部分でもあって。言葉って並べてしまった時点でどうしてもドラマや意味が発生しちゃうんで、その扱い方に長けていなかった。それにそもそも、単純にドラマティックなものが好きなんですよね。なのでドラマ性や意味性を保ったなかでなるべく軽く軽く洒脱に、ということをやってきたんですが、最近はそれってちょっとわかりにくいのかなと思い始めていて。いまは、ベイ・シティ・ローラーズのようなもっとわかりやすいものを求めていますね。たとえばマドンナのファーストは、感情移入の懐が広くて、言葉もすごく平易なのに奥行があるんですよ。そういうものに挑戦したいと思っていて。

いわゆる「ナンセンス」みたいなものを目指しているのかなとも思ったのですが。

真部:僕は私的なことを歌詞にしているわけではないので、どうしてもストーリーテリングが平坦になってしまう。それを異化するための工夫として、ナンセンスが必要だったんです。でも、いまとなってはちょっと回りくどいかなと。今作は単純に、作詞家としてもう少し自分を軽量化する必要があるんじゃないかと思っていたんですよね。

ちなみに水曜日のカンパネラについてはどう見ていますか?

真部:ケンモチ(ヒデフミ)さんとは仲が良いんですよ。相対性理論を抜けて2、3年した頃かな、Vampilliaのメンバーとして知り合ったんですよね。(水カンの)“一休さん”という曲が出たときに、ケンモチさんから「真部くんさあ!」って電話がかかってきて(笑)。「YouTubeのコメント欄で相対性理論のパクリだってすごい叩かれてるんだけど、聴いてみたらたしかにそう思わせる部分あったわ!」って(笑)。

そう言われて実際に似ている部分はあると思いました?

真部:「そうですかねえ?」という感じです(笑)。そもそも僕だったらコムアイちゃんみたいなポップ・アイコンをきちんとコントロールできないと思いますし。ただ楽曲のクオリティとか、ケンモチさんはひとりの職人としてすごく達者な方なので、素直にリスペクトしていますね。

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集団行動をやるうえでよく聴いているのはN.E.R.D.ですね。


集団行動 - 充分未来
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真部さんと組むヴォーカリストは女性が多いと思うのですが、真部さんの理想のヴォーカル像はどういうものでしょう?

真部:すごくフラットなヴォーカルというか、無味無臭に近いヴォーカルですね。背景づくりでコントロールできる幅が大きいヴォーカルというか、僕が楽曲制作で試行錯誤をするなかで、その方法論的なものに対する効果が目に見えやすいようなヴォーカルはやっていて楽しいです。『リアル・ブック』に載っているリードシート1枚で足りちゃうような音楽、つまりすごく削ぎ落とされた形の音楽に情感が乗ってくる瞬間が好きで。誰にでもできるところまで削ぎ落とされたもののなかに、その人じゃないと成り立たない要素がふと浮き上がってくる音楽がすごく好きなんですよ。

ちなみに、昨年はV6にも楽曲を提供されていましたよね。

真部:しました。そこまで聴いていただいてありがとうございます(笑)。

僕はけっこうジャニーズが好きなんですが、彼らって歌い方やコーラスが独特ですよね。これまで組んできた女性ヴォーカリストたちとはまたちょっと違う感触だったのではないでしょうか。

真部:そうですね。僕はディレクションにはぜんぜんタッチしていなくて、だからこそできた部分もあります。女性ヴォーカルに慣れてしまっていたので、すごく勉強になりました。ジャニーズさんはキャラクターがはっきりしているというか、ユニゾンで歌っているときもそれぞれの声質がわかるのがおもしろいなと思って。

あれはおもしろいですよね。

真部:僕はマイケル・ジャクソンがすごく好きなんですけど、彼は暑苦しくないペンタトニックを使うんですよ。涼しいというか(笑)。でもそれは、その5音以外の部分こそが勘所で、そのはっきりした音以外の部分をどうやって埋めるかというところが難しいんですね。ベンドの具合だったり、上からしゃくるか下からしゃくるかとか、ロング・トーンにしてもちょっと上がるか下がるかというところで大きく変わってくる。そこにキャラクターが反映されるわけですが、ジャニーズのとくにV6さんはそれがピカイチなんですよ。自分の音にしちゃう技術が本当に職業的に優れている。そこはびっくりしましたし、その後の自分のディレクションやプロデュースに反映されていると思いますね。そういう意味ですごく勉強になりました。

集団行動のヴォーカルの齋藤里菜さんとはオーディションの場でお会いしたそうですね。彼女のどういうところにピンときたのでしょう?

真部:齋藤はよくわからない大物感があるんですよ(笑)。彼女は《ミスiD》というオーディションにエントリーしていた女の子だったんですが、たまたまその《ミスiD》の主催側の方と知り合うきっかけがあって、オーディションに同席させていただいたことがあったんです。《ミスiD》って自分を発信することに意欲的な人たちが集まっているんですが、そのなかに明らかに馴染めていない人がいて。まったくクリエイションの匂いがしないというか。それも新鮮だったんですが、齋藤はわりと対応力もあったんですね。試しに歌ってもらったときに、さきほど話したようなペンタトニックの、正確な部分とその他のノイズになっちゃう部分とがはっきり分かれていて。合っている音は合って聴こえるんだけれども、合っていない部分がぜんぶノイズに聴こえちゃう。それがすごかったんです。

ノイズというのはつまり、歌や人の声ではないものとして聴こえるということですよね。

真部:そうです。表現がまるでないというか(笑)。それを見て、「本当にピュアなヴォーカリスト」みたいなものの成長過程に立ち会えるのではないかと思ったのと、あと齋藤は度胸があって一生懸命やってくれそうな人だったので、僕が理想とするフロントマン像に近かったんです。

なるほど。今回の『充分未来』で齋藤さんのいちばん良いところが出ている曲はどれですか?

真部:2曲目の“充分未来”ですね。今回目指した方向性のひとつに、自分からすごく遠いところにあるものに歩み寄ろうというのがあって、齋藤は僕と出会ったときにはCDを2枚しか持っていなかったんですよ。

それは、ストリーミングで聴いているということではなく?

真部:ということでもなく、ストリーミング・サイトすら知らないという状況で(笑)。「何持っているの?」と訊いたら「西内まりやとテイラー・スウィフト」って返ってきたんですよ。

すごい組み合わせですね(笑)。

真部:そうなんですよ(笑)。今回のアルバムの曲が出揃い始めたときも、“春”とか“オシャカ”とか、わりとJポップのクリシェに近いものを聴いて「真部さん、やっと私の知ってる感じの曲が!」って(笑)。自分としては、今回の収録曲のなかで“充分未来”がいちばん既聴感が強いというか、「なんでいままでこれを書いていなかったんだろう」というくらい手癖に近い曲なんですよ。そういう自分の楽曲に、CDを2枚しか持っていなかった人がフィットしているのがおもしろくて。だから“充分未来”は僕と齋藤の共同作業をいちばん感じる曲でしたね。あと、齋藤がヴォーカリストとしての自意識みたいなものを獲得していく過程がいちばんいい形で表れているのが“フロンティア”ですね。齋藤は経歴が特殊で、キャリアのスタートからずっと抑圧されていたというか、「そういうの止めろ」ばかり言われてきたヴォーカリストなんです(笑)。だからすごく自意識を獲得するのが難しい環境にいるんですよ。でもヴォーカリストと自意識って切っても切り離せないものなので。

なるほど。それで“充分未来”がアルバム・タイトルになっているんですね。

真部:そうです。前作(『集団行動』)に関しては自分の作風にフィットしないものを楽しむというか、ちょっとした違和感みたいなものを残したまま作品として仕上げるという部分があったんですが、今回は“充分未来”のように自分らしさがはっきり出ている曲と、“オシャカ”のようなクリシェの曲が並んでいるアルバムにしたいと思って。なので既聴感みたいなものを基準に選曲していきました。どこかで聴いたことのある感じってポップスの条件だと思うんです。自分の作風に対する既聴感と、Jポップ一般に対する既聴感と、その両方が感じられるようなアルバムになるといいなと思ったんですね。

共同作業って一緒にやる人を好きになっていく過程なんです。

今回の新作は全体的に、前作よりも音楽的な幅が広がったように感じました。たとえばさきほど話に出た“フロンティア”にはラテンの要素が入っていますよね。

真部:それに関しては、たんに僕に時間ができたというか(笑)。メンバーが増えたおかげで、プレイヤーとして複数パートを弾くことから解放されて、アレンジの自由度が高まったんです。前作のときは、とにかくバンド感を打ち出そうとするあまりギター・ロックに終始してしまいましたけど、自然とバンド感が出てくるようになったので、今回はもっと幅広くやってみてもいいかなと思ったんです。

これは西浦(謙助)さんに尋ねたほうがいいのかもしれませんが、5曲目の“絶対零度”のドラムにはちょっとドラムン的なブレイクビーツが入っています。

真部:そのアイデア自体はファーストのときからあったんですが、正直言って僕はこういう生ドラムのブレイクビーツがあまり好きじゃないんですよね(笑)。デモを一度ブレイクビーツで組んでから「これはリアレンジしなきゃな」とずっと思っていたんですけど、サポート・メンバーが入った状況でやってみたら意外と行けたというか。時間が経ったことで自分の曲が自分の手から離れたような感じですね。僕自身の好き嫌いとはべつにアンサンブルが成り立った曲です。

今回のアルバムの制作中によく聴いていたものはありますか?

真部:集団行動をやるうえでよく聴いているのはN.E.R.D.ですね。プロデューサーだった人たちがバンドをやってみました、というところにシンパシーを感じるんです。

最近復活して新作を出しましたよね。そのアルバムですか? それともファースト?

真部:ファーストとセカンドですね。僕は学生時代にティンバランドとネプチューンズがど真ん中だった世代なんで、そういう自分の好きなものだと整合性を取りやすいというか、憧れを形にしやすいというか。

そのあとはカニエ・ウェスト一色みたいになりましたよね。

真部:カニエはべつの意味でもショックでしたね。僕はずっとプリンスが好きなんですけど、ロック・スターってちょっと殿上人のようなところがありますよね。プリンスにしてもデヴィッド・ボウイにしても、手の届かないところにいるというか。むかし鮎川誠さんが「レイ・チャールズなんて雲の上の人で、ロックなんて自分にはおこがましいと思っていたけど、ビートルズが出てきたときに先輩の兄ちゃんが自分の憧れの音楽をいとも簡単にやっている感じがして、それが自分もやる動機になった」と言っていたんですが、カニエが出てきたときも、そういう大学の先輩みたいな人がめちゃめちゃクールなことをやっているって感じたんですよ(笑)。「自分たちの世代のロック・スターだ!」と思ったんです(笑)。

たしかにどんどん登り詰めていきましたね。

真部:登り詰めて、いまはちょっと大変なことになっていますけど(笑)。

いまや音楽活動以外のことでしょっちゅう物議を醸していますからね(笑)。

真部:もう大統領選出てくれって話ですよ(笑)。

そういうロック・スターへの憧れみたいなものは、集団行動をやるうえでも出していきたい?

真部:そうですね。そのチャンスがあるならやりたいなとは思います。ただそれを「ロック・スター」という既存のフォーマットに当てはめるのではなくて、自分の作風だったり得意分野だったりを駆使して近づけないかなとは思いますね。

ものすごくコントロールしたいのに自分がコントロールして出てきたものに対してはストレートに良いと思えないという。

Vampilliaでは戸川純さんとも一緒に活動されていますが、ヴォーカリストとしての彼女についてはどう見ていますか?

真部:僕からしてみるとお師匠というか。僕はただのいちファンなんですよ。中学生のときに『Dadada ism』を聴いていたので、Vampilliaで一緒にいること自体違和感があるというか(笑)。こういうことを言うと戸川さんは嫌がるんですけど、本当に天才なんです。

もし仮に集団行動で戸川さんをヴォーカリストとして立てなければならないとしたら、どうします?

真部:はははは。戸川さんは日本の音楽の作詞のフォーマットを刷新した人でもあるので、その影響からは完全に逃れられないというか、やっぱり呑み込まれちゃうだろうなとは思います。でも、Vampilliaのときも最初はそんなふうに「戸川さんのペースのなかでしかできないだろうな」と思っていたんですが、蓋を開けてみたらそれとはぜんぜん違う次元の、思わぬ友情みたいなところからスタートしたんですよね(笑)。まず戸川さんと仲良くなるという(笑)。同じバンに乗って移動して、仲間みたいな感じでしたね。だから戸川さんとまた何かをやることになったら、同じようにまず友だちとしての仲を深めるところからですね(笑)。でも、共同作業ってそういうことだと思うんですよ。共同作業って一緒にやる人を好きになっていく過程なんです。だからそれは戸川さんに限らず、いまのメンバーに対してもそういった意識でやっているつもりです。

ではそろそろ最後の質問です。集団行動として新たにバンドを始めてみたうえで、「バンドでしかできないこと」ってなんだと思いますか?

真部:僕はそもそもひとりでものを完結させられないというか、そもそも締め切りがないと曲が書けないタイプなんです(笑)。だから締め切りを作ってくれる人が必要なんですね。あと僕は、自分という素材だけで煮詰めたものにはあんまり興味がないんですよ。だからそれを薄めてくれる誰かがほしいというか。でもそれと同時に、性格的にはすごくコントロール・フリークなので、矛盾もあって。ものすごくコントロールしたいのに自分がコントロールして出てきたものに対してはストレートに良いと思えないという。その折り合いをつけるために協力してくれる人がどうしても必要なんですよね。

自分では思いもつかない、予想外のものが入ってきてほしいと。

真部:入ってきてほしいですね。ものを作っている人は絶対にそうだと思うんですけど、自分の好き嫌いみたいなものがひっくり返される瞬間っていちばん感動すると思うんですよ。そうして自分の好き嫌いを超えたところで良いものに出会えることこそ幸せというか、それはクリエイターとしてはすごく純粋な部分だなと思いますね。じつは僕は作曲を始めたのが20歳を超えてからで、音楽を始めるのが遅かったんです。だから、それまでの自分が音楽を作ることを必要としていなかったという引け目があって、なるべくアーティスティックに振る舞わないようにしているというか、できるだけアーティスト性みたいなものから遠ざかることを考えてやってきたんですが、10年もやっているとそれがどうしようもなく滲み出てきてしまうし、凝り固まってしまうし、そこから逃れられなくなってしまう。それを中和してくれるのはやっぱりべつの人というか、自分に協力的に関わってくれる人なんだなということを改めて認識しましたね。

まだメンバーも最終型ではないですし、これからもそういう出会いを求めているということですね。

真部:お見合い大会みたいになっても困りますけどね(笑)。


集団行動の単独公演「充分未来ツアー」

2018年3月16日(金)大阪Music Club JANUS
OPEN 18:45 / START 19:30
チケット:¥3,500(D代別)
[お問い合わせ] 清水音泉:06-6357-3666

2018年3月22日(木)渋谷WWW X
OPEN 18:45 / START 19:30
チケット:¥3,500(D代別))
[お問い合わせ] HOT STUFF PROMOTION:03-5720-9999

IMAIKE GO NOW 2018

2018年3月24日(土)&25日(日)
※集団行動の出演日は3月24日(土)になります。
OPEN 13:00 / START 13:30(会場による)
前売り:1日券¥5,000(税込) / 2日通し券¥8,000(税込)
当日:¥5,500(税込)
ドリンク代:各日別途¥500必要
OFFICIAL HP:imaikegonow.com
[お問い合わせ] JAILHOUSE:052-936-6041 / www.jailhouse.jp

Various Artists - ele-king

 ロンドンのテクノ系レーベル〈Houndstooth〉(Call SuperやSpecial Requestの作品で知られる)の最新コンピレーションをここに挙げたのは、T.S.エリオットの詩、「The Hollow Men(空ろな人間たち)」の一節=『死せる夢の王国』をアルバム・タイトルにしているからではない。Lanark Artefax(ラナーク・アートファックス)の新曲“Styx”が聴けるからである。とくにエイフェックス・ツインのファンには聴いて欲しい。彼はここでドリルンベースとBurialを繋いでいる、いわば“Girl/Boy Song”のダークコア・ヴァージョンを披露する。昨年リリースされたペシミストのアルバムとも通底しているジャングルの変型。“Styx”は彼の前作にあたる「Whities 011」ほどではないが、悪くない。

 ラナーク・アートファックス、本名Calum MacRae(キャラン・マクレー)について簡単に紹介しておこう。グラスゴー出身の彼は、地元のDJ、ハドソン・モホークやラスティー、地元のレーベル〈LuckyMe〉や〈Numbers〉を聴きながら15歳で音楽をつくりはじめている。もっと大きな影響はエイフェックス・ツインとオウテカ、90年代のIDM、90年代の〈Warp〉。まあ、なかなかのオタクである(つーか、編集部小林じゃん)。初めて聴いたAFXは『ドラックス』だったそうで、たしかにあれもジャングルだが、個人的にはいまµ-Ziqの『Bluff Limbo』を聴くとすごくハマる。

 『死せる夢の王国』は、総勢25人のアーティストが参加している。そのなかには、コージー・ファニ・トゥッティと三田格推しのガゼル・ツイン、都会の下水のごとくこうした荒涼たる世界とは縁のないように見える伊達伯欣先生が絶賛のトモコ・ソヴァージュ、ほかに名が知れたところでは、Batuであるとか、Hodgeであるとか……の曲がある。とはいえ、全編通しての暗黒郷はひどく疲れるので、掻い摘んで聴くのがいいだろう。これはフィジカル無しの配信のみで、曲数も25。長いし、T.S.エリオットの「The Hollow Men」とは「こんな風に世界は終わる/こんな風に世界は終わる」というリフレインが最後にある長編詩で、そんな言葉がしっくるきてしまうのがいまのロンドンということだろう。

 ニューウェイヴの時代にもゴスはあったが、おおよそグラムの延長だった。不動産を買ってイングランドの土地の一部を所有するところから『ドラキュラ』がはじまることの意味とは関係なかったし、T.S.エリオットへの言及もなかった。が、ここ何年も続いているゴシックは、本当の意味でヴィクリア朝時代から第一次大戦後までのあいだ、長きにわたって続いたあの頃のゴシックに通じている。
 いま人は黒い服を好んでいる。黒い服は喪服だ。ヴィクトリア朝女王は早くに夫を亡くした未亡人であり、夫の死に執着する彼女は40年ものあいだ喪服を着続けた。いろんな喪服(黒服)がデザインされ、黒は大衆的にも流行った。そしてヴィクトリア朝女王は、未来よりも懐かしい過去、家族が幸福だった過去にしがみつくかのように、(19世紀なんで当たり前だが)モノクロの家族写真を飾った。
 また、ちょうどこの時代はテクノロジーの時代でもあった。電信機、カメラ、タイプライターに蓄音機、そして映画。先にぼくは伊達伯欣先生とは無縁に見えると書いたが、いや、科学が人間から奪ったものを意識しているという点では、漢方医の彼もまた充分にゴシックなのだ(!)。ゴシックは、小説にしろ絵画にしろ、やがて映画にしろ、社会で湧き上がる不安や不吉なざわめきを反映し、本能的なレベルで訴えるものが多い。……誰もがカラフルだった90年代初頭のような夏は本当にまた来るのかね。

01. Billie Holiday And Her Orchestra ‎– “Strange Fruit” (1939)
02. John Coltrane - “Alabam” (1963)
03. Bob Dylan - “A Hard Rain's A-Gonna Fall” (1963)
04. Nina Simone - “Mississippi. Goddamn” (1964)
05. Sam Cooke ‎– “A Change Is Gonna Come” (1964)
06. Aretha Franklin - "Respect" (1967)
07. James Brown - “Say it Loud - I'm Black and I'm Proud” (1968)
08. The Beatles‎– “I'm so tired” (1968)
09. ジャックス - “ラブ・ジェネレーション” (1968)
10. Sly & The Family Stone ‎– “Stand!” (1969)
11. The Plastic Ono Band ‎– “Give Peace A Chance” (1969)
12. Curtis Mayfield - "Move On Up" (1970)
13. Gil Scott-Heron - “The Revolution Will Not Be Televised” (1970)
14. Jimi Hendrix - “Machine Gun” (1971)
15. The Last Poets ‎– “This Is Madness” (1971)
16. Timmy Thomas ‎– “Why Can't We Live Together ” (1972)
17. Funkadelic ‎– “America Eats Its Young” (1972)
18. 友部正人 - “乾杯” (1972)
19. Sun Ra ‎– “Space Is The Place” (1973)
20. Bob Marley & The Wailers ‎– “Rat Race” (1976)
21. Fẹla And Afrika 70 ‎– “Sorrow Tears And Blood” (1977)
22. Sex Pistols ‎– “God Save The Queen” (1977)
23. Steel Pulse ‎– Ku Klux Klan (1978)
24. The Slits ‎– “Newtown” (1979)
25. Joy Division ‎– “Love Will Tear Us Apart” (1980)
26. The Pop Group ‎– “How Much Longer” (1980)
27. The Specials - “Ghost Town” (1981)
28. Grandmaster Flash & The Furious Five ‎– “The Message” (1982)
29. Time Zone Featuring John Lydon & Afrika Bambaataa ‎– “World Destruction” (1984)
30. The Smiths ‎– “Meat Is Murder ” (1985)
31. Public Enemy ‎– “Rebel Without A Pause” (1987)
32. じゃがたら - “ゴーグル、それをしろ” (1987)
33. N.W.A _ “Fuck Tha Police” (1989)
34. Mute Beat - “ダブ・イン・ザ・フォグ” (1988)
35. RCサクセション - 『カバーズ』 (1988)
36. Fingers Inc. ‎– “Can You Feel It (Spoken Word: Dr. Martin Luther King Jr.) ” (1988)
37. Underground Resistance ‎– “Riot” (1991)
38. Sonic Youth- “Youth Against Fascism” (1992)
39. Bikini Kill ‎– “Rebel Girl” (1993)
40. Goldie ‎– “Inner City Life” (1994)
41. Autechre ‎– 「Anti EP」 (1994)
42. Radio Boy ‎– 『The Mechanics Of Destruction』 (2001)
43. Wilco - “Ashes of American Flags” (2002)
44. Outkast - "War" (2003)
45. Radiohead - "2 + 2 = 5” (2003)
46. ECD - “言うこと聴くよな奴らじゃないぞ” (2003)
47. ゆらゆら帝国 - “ソフトに死んでいる” (2005)
48. Digital Mystikz ‎– “Anti War Dub” (2006)
49. 七尾旅人 - airplane (2007)
50. Kendrick Lamar ‎–Alright (2015)
次. Beyoncé ‎– Formation (2016)

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