「K A R Y Y N」と一致するもの

Allysha Joy - ele-king

 ハイエイタス・カイヨーテの登場を機に、ジャズやソウルなどとクラブ・サウンドのミクスチャー・バンドが注目を集めることが増えてきた。USのムーンチャイルドやスペース・キャプテン、UKのノヤ・ラオやトロープ、シンガポールのスティーヴ・マックイーンズ、ノルウェーのローヘイなどがそうしたバンドで、ジョーダン・ラカイキングなども同じような傾向を持つアーティストと言える。同時にハイエイタス・カイヨーテの地元であるオーストラリアの音楽シーンにもスポットが集まるようになった。特にハイエイタス・カイヨーテを輩出したメルボルンはいろいろな音楽が盛んで、かつてはランス・ファーガソンが率いるバンブーズやカイリー・オールディストなどから、近年は30/70、レジャー・センター、エレクトリック・エンパイア、ミッドライフ、カクタス・チャンネル、ハーヴィー・サザーランド、アンドラス・フォックスなど注目のアーティストが続々と登場している。

 この中でも30/70はポスト・ハイエイタス・カイヨーテの筆頭と呼ばれる10人組のグループで、2017年にファースト・アルバムの『エレヴェイト』をリリースしている。彼らはハイエイタス・カイヨーテに通じるオーガニックなバンド・サウンドを持つが、面白いのはリリース元がUKのサウス・ロンドンの〈リズム・セクション・インターナショナル〉だったことで、ロンドンの音楽シーンとメルボルンの音楽シーンの結びつきを示していたことだ。オーストラリアからロンドンに移住したジョーダン・ラカイも〈リズム・セクション・インターナショナル〉から作品を出したし、昨年末もハーヴィー・サザーランドの作品にヌビア・ガルシアやマンスール・ブラウンがフィーチャーされるなど、いろいろとアーティストたちの交流があるようだ。〈リズム・セクション・インターナショナル〉からのリリースということもあり、30/70はハイエイタス・カイヨーテに比べてさらにエレクトリックなクラブ・サウンドの側面も強かったのだが、その中心人物であるドラマーのジギー・ツァイトガイストは2018年初頭に『ツァイトガイスト・フリーダム・エナジー・エクスチェンジ』というソロ・アルバムもリリースした。こちらはエレクトリック・ジャズ/フュージョンにブロークンビーツなどのエッセンスを交えたもので、ディーゴ&カイディからフローティング・ポインツあたりへ繋がる作品だった。同じころに〈リズム・セクション・インターナショナル〉のコンピで『コンピレーション・フォー・ドミニカ』が出たのだが、そこに収録された“セルフィッシュ”という曲を歌っていたのがAJことアリーシャ・ジョイで、彼女もまた30/70の看板シンガーである。ちょうどハイエイタス・カイヨーテにおけるネイ・パームのような存在で、歌声やヴォーカル・スタイルにも似通ったところが見いだせるし、ファッション・センスもネイ同様になかなかのものだ。

 そのアリーシャ・ジョイのソロ・アルバム『アケィディ:ロウ』がリリースされたが、今度のリリース元はマンチェスターの〈ゴンドワナ〉。〈ゴンドワナ〉と30/70及びアリーシャ・ジョイとの間にどのような関係があるのか不明だが、これもUKがメルボルンの音楽シーンを注視していることの表われのひとつだろう。また〈ゴンドワナ〉にとってはノヤ・ラオと並ぶようなアーティストという位置づけで、こうしたネオ・ソウル~フューチャー・ソウル方面をより強化していこうという意向がくみ取れる。『アケィディ:ロウ』は前述の“セルフィッシュ”のほか、2017年にシングルでリリースされた“FNFL”と“アカラ”という曲も収録する。演奏メンバーはドラムのジギー・ツァイトガイスト、ベースのヘンリー・ヒックス、サックスのジョシュ・ケリー、バック・コーラスのダニカ・スミスと、ほぼ30/70のメンバーがバックを務めている。従ってアリーシャ・ジョイのソウルフルな側面にスポットを当てた、30/70のもうひとつ別のアルバムと見ることもできる。アリーシャ自体はヴォーカルのほかに作詞・作曲とキーボード演奏をおこなっており、特にエレピの演奏が歌声とともに本作の重要なポイントとなっている。

 エレピにワードレス・ヴォイスを交えて始まる“FNFL”は、コズミックな質感を持つジャズ・ファンク~フュージョン系のトラックに、自在に動き回るヴォーカルという30/70直系のナンバー。リズム・チェンジを繰り返しながら最後はヒップホップ調のトラックへと変調する様はハイエイタス・カイヨーテと同様で、こうした先の読めない展開や即興性を有したパフォーマンスが彼らの魅力でもある。“セルフィッシュ”や“オネスティ”はメロウネスとブラック・フィーリングに満ちたナンバーで、陰影に満ちたエレピとソウルフルな歌声のコンビネーションはロイ・エアーズの諸作を彷彿とさせる。“スワロウ・ミー”もメロウでジャジーなソウル・ナンバーだが、バックのトラックはアフリカ色が強くて土着性に富む。アリーシャの作品にはスピリチュアル・ジャズとの近似性が感じられることもあるが、それの顕著な一曲だろう。“ノウ・ユア・パワー”はアルバムの中でもっともジャズ色が強く、前半の変拍子から後半のジャズ・ファンクへと変調するが、この展開はエディ・ラスの“シー・ザ・ライト”を思い起こさせるようだ。“アカラ”はスロー・バラードで、幻想的で浮遊感たっぷりのエレピが存分にフィーチャーされる。ダンサブルな曲だけでなく、こうした美しいナンバーをじっくりと聴かせるあたりはムーンチャイルドにも匹敵するものだ。楽器のアンサンブルという点では、サックスとドラム、ベースのコンビネーションで徐々に形を作っていく“ドゥーム”は、30/70のジャズ・バンドとしての力量が見事に反映されている。“イーグル”は歌というよりもポエトリー・リーディングのようなパフォーマンスで、“オネスティ”にもスポークン・ワード的なパートが登場する。実際のところアリーシャはシンガー/ポエットという立ち位置のようだ。ジャズとソウルのブレンド具合、ポエトリー・リーディングを駆使したヴォーカル・スタイル、そしてロイ・エアーズやエディ・ラスなどに通じる音像を見ていると、アリーシャはフューチャー・ソウルとかネオ・ソウル、またはブロークンビーツなどよりも、むしろ知らず知らずのうちにアシッド・ジャズ的なところを受け継いで、それをいまの時代のサウンドとして変換しているアーティストと言えるのかもしれない。

BOOMBOX&TAPES - ele-king

 時代の速度は速い。20年前は可能性のかたまりみたいに賞揚されてきたデジタル・メディア、いまみなさんが見ているインターネットも、いまではフェイクだ宣伝だバイトニュース(アクセス数稼ぎの扇情的な見出し)だ、とか、眼精疲労にもなるし精神的にも中毒性が高いなどなど、むしろバッドな側面のほうが露呈している始末。そんななかでアナログに脚光が当たるのも無理もないというか。カセットテープ愛好家のための同人誌が刊行されました。同人誌といっても、『BOOMBOX&TAPES』(へのへのもへじPRESS刊)。はA4判型/40ページフルカラーのゴージャスな作り。カセット・テープおよびカセットデッキの紹介があり素敵な写真があり、愛好家たちのインタヴュー記事があります。文字も詰まっているし、ヴィジュアルも豊富で、読ませて見せますよ! 限定500部で、すでにけっこう売れているそうなので、うかうかしていると売り切れてしまうかも。
 ele-kingがカセットに着目したのはちょうどいまから10年ほどまえのUSのインディ・シーンがきっかでした。〈Not Not Fun〉のようなレーベルががしがしカセット作品を出してたし、で、しばらくするとヴェイパーウェイヴが出てきてカセット作品&フリー配信というリリース形態を確立しましたよね。まだまだカセットが衝撃だった時代だけど、いまじゃすっかり普及したというか、アナログ盤ほどじゃないにせよ、少なくともVHSビデオカセットや2HDフロッピーよりは(笑)、ほぼ選択肢のひとつとして定着している感はある。じつはあの当時、カセット作品を聴くためにTAEACのカセットデッキを中古で買ったんですけど、数年まえに壊れてしまったしまったんですよね。買い換えようと思っているうちに、中古のカセットデッキも値上がってしまったみたいで、ぼくはもう1台小さいのを持っているからいいんですけど、カセットの良さってやっぱ音質ですよね。あの音質は、ギガバイトの世界にはないので、音好きのひとはカセット聴いて下さい。新しい世界が広がりますよ~。

へのへのもへじ同人誌
猟奇偏愛同人誌(FUNZINE ABOUT SUPER STRANGE LOVE)
創刊号:BOOMBOX&TAPES
価格 : ¥1,500YEN+TAX(500部限定)


【Featuring】松崎 順一(Design Underground代表)/MAMMOTH(日本シンセサイザーノイズHOPグループ)/Geoff Johnson(ラジカセDr.)/五十嵐 慎太郎(MASTERED HISSNOISE代表)/角田 太郎(waltzオーナー)/赤石 悠(toosmell records代表)/糸矢 禅(LIBRARY RECORDS代表)/草野 象(ON SUNDAYSマネージャー)
【2018年11月12日発売/500部限定/日英バイリンガル原稿】
【体裁】A4オールカラー44ページ(オフセット印刷、無線綴じ)

西暦2018年XXX日本。
マーケティングビジネス、ファストファッション、コンビニ、巨大モールが疫病のように蔓延。かっての拘りのある個性ある店や、その良し悪しを教えてくれたちょっと怖い憧れの店員さんは絶滅し、当たり障りの無いお決まりの接客の顔なしのような店員が大量増殖。その結果、我々の審美眼、美意識、パッションは失われ、優秀な人材は海外に流出する始末...。
その一方で。
入手困難、高額、かさばる、不便、手間がかる無用の長物に価値を見出し、その魅力に憑かれてしまった偏愛家と呼ばれる方々がいる。
我々へのへのもへじPRESSは、
憂いを持って、
現状の日本に対するアンチテーゼとして、
御意見無用!の偏愛家たちのパッションとアティチュード、その物の価値体系を記録する同人誌を創刊する事にした。
記念すべき創刊号はカセットテープとラジカセの偏愛について。
カセットデッキにお気に入りのミックステープを突っ込んで、のんびりとご覧下さい。
その心意気はスペインの諺よろしく
「優雅な生活が最高の復讐である」
でどうぞ夜露死苦。

2018 A.D. XXX JAPAN.
Manual marketing business, fast fashion, convenience stores and giant shopping malls plague the landscape.
Shops with originality have all disappeared with knowledgeable enthusiastic sales staff. They are all replaced by faceless robots who just repeat their routine work.
With them, sense of beauty and passion for good taste are all lost. Gone are the talents who can tell what is good and beautiful.
On the other hand…we know there are ‘’maniacs’’ who cannot help seeing charm and beauty in useless, hard to find, rare and pricey, bulky and inconvenient stuff.
We are launching a fanzine titled HENOHENOMOHEJI-PRESS for those maniacs who don’t give a damn to the mainstream rubbish culture. It is an antithesis to the dominant depressing cultural landscape. Our zine is aimed to record the passion, attitudes and values of the fringe maniacs, just like you.
Our first issue features quirky love for cassette tapes and boom box. Play your favorite compilation tape on your boom box to get the max out of the zine!
As they say in Spain, our motto is ‘’an elegant life is the best revenge’’.
Enjoy your elegant life.


■現在の全国販売協力店 14店舗
@museumshop_onsundays (東京/外苑前)
@hmvrecordshop_shibuya (東京/渋谷)
@giftlabgarage (東京/清澄白河)
@toosmellrecords (東京/吉祥寺)
@eadrecord (東京/高円寺)
@newport054 (静岡)
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@liverary_extra (名古屋)
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The Book of Drexciya - ele-king

 いっこうに熱がさめる気配がない。RAによるドキュメンタリー映像エレクトロイズのリイシューときて、今度は本である。
 タイトルは『The Book of Drexciya Vol.1』。かつてドレクシアが紡ぎ出した神話に焦点を当てるグラフィック・ノヴェル、その刊行プロジェクトが昨年末より動き出している。故ジェイムズ・スティンソンが50歳の誕生日を迎える9月14日までの完成を目指しているとのことで、監修はデトロイト・テクノのファンにはおなじみのアブドゥル・カディム・ハック。ドレクシアのもう片方であるジェラルド・ドナルドと、スティンソンの家族も全面的に協力しているそうだ。題に「Vol.1」とあるように、同書は今後も続いていくシリーズの最初の作品に位置づけられており、おそらく『The Quest』や数々のシングルで断片的に展開されていた物語が、具体的な場面を伴って再現されることになるのだろう。
 オフィシャル・サイト(Indiegogo)ではドネイションが募られていて、集まったお金は制作費としてだけでなく、スティンソンの遺族を支援するためにも活用される。目標額の1万ドルはすでに達成済みだが、寄付者には完成した本のデジタル・コピーやポスターなど、額に応じた還元が用意されている。詳細はこちらから。

Mira Calix - ele-king

 ミラ・カリックス――紙エレ23号でも少しだけ触れたけれど、彼女はとてもおもしろいアーティストだ。90年代半ばにエレクトロニカの文脈から浮上してきた彼女は、2000年に『One On One』という良作を残し、その後ゼロ年代には現代音楽をおもなレパートリーとするロンドン・シンフォニエッタや、昨年アルバムをリリースしたオリヴァー・コーツ、そしてなんと虫たち(文字どおり虫です)と共演。以降も映画や演劇のスコア、インスタレイションなどをつうじて精力的に活動を続けてきた。
 そんな彼女が久しぶりにフィジカル作品を発表する。〈Warp〉からのリリースは2008年の『The Elephant In The Room』以来じつに10年ぶりだが、公開された新曲“rightclick”は予想以上に低音が効いていて、初期ともゼロ年代とも異なる趣を携えている。これは早くほかの曲も聴きたいですね。ミラ・カリックスの新作EP「utopia」は1月25日、10インチ・ヴァイナルとデジタルにて発売。

mira calix

〈WARP〉初期より活躍する才女、ミラ・カリックスが〈WARP〉からは10年ぶりとなるEPのリリースが決定! 新曲“rightclick”のMVが解禁!

レディオヘッドのサポートアクトへの抜擢やボーズ・オブ・カナダのリミックスなどで話題を呼び、初期より〈WARP〉の屋台骨的な活躍をしてきたミラ・カリックス。〈WARP〉からは10年ぶりとなるEP、「utopia」が1月25日に発売されることが決定し、同時にEPに収録される楽曲“rightclick”のMVが公開された。

mira calix - rightclick
https://www.youtube.com/watch?v=w1mZWs1Neis

このEP制作のように、自分にタイム・リミットや厳しいルール、幅の狭い音の種類を与えること、ライター、プロデューサー、ミュージシャンとして完全に自主的に取り組むことはとても新鮮だった。それはある意味で自分のルーツ、〈WARP〉から初めて10インチのヴァイナルをリリースした時に戻ってくるような感じだけれど、全く新しいもののような遊び心があるようにも感じたわ。 - Mira Calix

彼女の最近のプロジェクトは、野心的な合唱音楽作品やパフォーマンス・アーティスト、独特なスピーカー拡散システムなどを取り入れたサウンド・インスタレーションといった活動が中心になっており、10年ぶりとなる〈WARP〉からのリリースに関しては自身が「全く新しいもののような遊び心があるようにも感じた」と語るように、フレッシュさを感じさせる内容となっている。

待望の10年ぶりとなるEPは1月25日にアナログとデジタル配信でのリリースを予定しており、iTunes Store でアルバムを予約すると公開中の“rightclick”がいち早くダウンロードできる。

label: Warp Records
artist: mira calix
title: utopia
release date: 2019/01/25 FRI ON SALE

[tracklist]
1. rightclick
2. just go along
3. upper ups
4. bite me

more info:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10043

Mike - ele-king

 クラインに対するブルックリンからのアンサー……といってしまおうか。19歳でニューヨークの新たな前衛とされているDJブラックパワーことマイケル・ジョーダン・ボニーマは昨年5月に『Black Soap』がリリースされた時はどうしてこんなに騒がれるのかと不思議だったのだけれど、基本的にはリリックに対する評価が大きかったようで音楽だけで判断できるものではなかった。マイクはクラウド・ラップとは「別種のインターネット・スター」とまで持て囃されていたものの、僕は1〜2回聴いて、それきりだった。しかし、その後に〈レックス〉からリリースされた『Renaissance Man』と年末に放たれた『War in My Pen』というミックステープで、今度は音楽的に耳が止まり、しばらくして、ああ、『Black Soap』の人かと気づいた次第である。改めて『Black Soap』のレビューを探してみると、彼の親はナイジェリア移民で、彼自身はニュージャージーで生まれ育ち、母親に連れられて5歳でロンドンに渡り、それまで聴いていたラップにはなんの興味もなかったものがロンドンでグライムと出会ったことから始めてラップに興味を持ったのだという。その時の「自分探し」の過程をそのままアルバムのテーマとしたものが『Black Soap』で、これがどうやら大きな共感を得たということらしい。ニール・ゲイマンの『アメリカン・ゴッズ』にアメリカ人は自分探しをせず、「わかったフリをしているだけ」というセリフがあったけれど、彼はむしろそれを大々的にやったということになる。そして彼の思いはナイジェリアヘと飛び、歌詞も一部はヨルバ語で歌われ、西アフリカで普通に見かける石鹸=ブラック・ソープのパッケージをジャケット・デザインに流用したことも「自分探し」のヴィジュアル展開だと。『Black Soap』に続く『Renaissance Man』ではあからさまに「Why I’m Here」「Rebirth」と言った曲名が並び、そして、後半で畳み掛けるように続くのがクラインを思わせるドローンじみたトラックの連打。これはどう考えてもロンドン滞在中に同じナイジェリア系のクラインと接触があったか、少なくとも音源に感化される機会があったとしか思えない。NHK「たぶんそうだったんじゃないか劇場」なら、そう結論づけるだろう。

 そして『Renaissance Man』ではまだ借り物という感じでしかなかったサウンド・プロダクションが『War in My Pen』では確実に自分のものとなっているプロセスを確認することができる。あからさまにクラインの影響がそのまま出ているトラックは姿を消し、冒頭の「Choco」や「Nothin’ to Me」ではドローンがループされ、シンプルに仕上げられているにもかかわらず、どこにも隙間のない濃密な音の洪水が耳に注ぎ込まれる。「なんでトリップしてるんだい 自分の楽しみを見つけなよ 賢いニガーはガキの言うことなんか聞かない」と歌い出しながら、「grabba」、「October Baby」とサイプレス・ヒルよりもむせ返えるスモーカーズ・トラックで攻め立て、「オレは肺がつぶれるほど吸ってる」とか「害を及ぼすことと吸うことは別なこと」などと続けていく。ずばり「smoke」と題された曲では「Listening to smoke」と感覚的な歌詞を繰り返し、ラップにありがちな虚勢よりも自分がどこにいるかと言うことを繰り返し言葉にしているのだろう。規模は小さいけれどノーネームに近い心象風景を題材にしているのかなと思ったり(そこまで英語やスラングのニュアンスは僕にはわからない。「We was」とかどう訳すねん?)。「NeverKnocked」や「Rottweiler」で使われている強烈なグリッチ・サウンドはおそらく2年前にグリッチ・シャンソンのネヴェー・ゲット・ユースド・トゥ・ピープルの影響で流行ったティック・トックのグリッチ・チャレンジをヒップホップ的に展開したものなのだろう。これらはあまりにもサイケデリック。そして、クラインよりもどこか陽気な感じがとてもいい。

 ロンドンでグライムに感化されたマイクは、アメリカに戻ってからスラム(sLUms)というポッシを結成している。ゼロ年代のヒップホップはグループが成り立たず、50セントやエミネムと行ったソロMCの時代だと言われていたけれど、この10年はそういったソロMCがゆるくつながっていたという印象があり、ロサンゼルスのオッド・フューチャー、ニューヨークのエイサップ・モブ、そして、エイサップ・モブとは抗争の相手と化してしまうフロリダのレイダー・クラン(スペースゴーストパープ)が個性的な若手を続々と送り出してきた。ヒップホップに興味を持ったマイクも10歳を過ぎた頃にはオッド・フューチャー(のとくにアール・スウェットシャツ)に強く影響を受けたと語っており、シックスプレスやキング・カーター、メイソン、ジャズ・ジョーディといった6人の迷子が一緒にいることで死が身近にある環境でも音楽によって自由をつくりだすことができるのだという。彼らは政治的な見解が一致し、初期には社会的な不安を、最近では希望をラップし始めている。そう、「Like My Mama」はドン、ドンというドラムの音だけで別世界に連れて行かれる。これに変調された声が蚊のようにクルクルと宙を舞い、「PRAYERS」ではスクリュードされたゴスペルのコーラス、「UCR」はまさにクラインへのアンサーとしか思えないドレムレスの展開に突入し、「Red Sox;babylon」に橋渡しされる流れは鳥肌もの。リル・Bとはかなり仲がいいという噂もなるほどという感じでしょうか。リー・ペリーやマッド・プロフェッサーのファンもこれは唸るんじゃないかな。峠を越えて後半4曲は少し落ち着いた展開に戻り、歌詞も真実だとか歴史といった社会派のニュアンスを醸し出すものに。最後にそして、人生に対して妙に弱気な「For You」ですべては閉じられていく。嫌な終わり方というほどではないけれど、それこそ煙がどこかにかき消えてしまうような感触が残り、夢でも見ていたような気分に。

vol.109:NYのたこ焼きパーティ - ele-king

 明けましておめでとうございます。NYはお正月もほとんどなく、私は1/1から普通に働いていましたが、ようやくホリディムードも終わり、平常に戻ってきました。
 私は、ブシュウィックのミードバー(ハニーズ)で、毎月たこ焼きイベントを開催しています。バンドやDJ、ダンサーなどのゲストを招待し、ドリンクやフードを提供し、ミードを飲みながら、たこ焼きを焼いています。場所が場所なのでバンドやアーティストが多く、元ラプチャー、アヴァルナ、ピルなどのメンバーもよく来ます。
 ツアーから戻ってきたばかりだったり、レコーディングの最中だったり、仕事の合間だったり、みんな忙しくしていますが、息抜きは必要。とくにこの辺りは音楽会場も多いし(エルスホエアなど)、サクッと一杯にちょうど良いみたいです。NYはたくさんのバーがあり過ぎますが、働いている人や誰とハングアウトするかによって行く場所が変わります。
 さて、ハニーズでは今回は、Data securityというユニットが登場。音と映像がシンクロするライヴを生でするという試み。あまりの機材の多さに卒倒しそうになりました。スーツケースふたつ分ぐらいの機材だったので。金曜の大会場でダフト・パンクを見ているような、ダンスフロアになりました(火曜日でしたが)。で、そこにNha Mihnというベトナムレストランを経営していた、Fredが来ていました。
https://www.insideelsewhere.com/new-blog-1/nha-minh-healthy-vietnamese-bowls-brooklyn




たこ焼きイベント(ハニーズチューズデー)!

 彼は、ベッドフォードでレストランを経営した後、しばらくケータリングをし、そしてNha Mihnをオープン。彼のNY1美味しいベトナム料理とアートショー、音楽ショー、フリーマーケットなど楽しいイベントをどんどん開催。その間にも彼は別の店でポップアップをしたり、イベントに出店したり、いろんな場所に出没。彼に出演をお願いするとすぐに「良いよ」と返事をもらい、話が決まりました。


Japanese new year bowl
(チキンとごぼうの肉巻き、サツマイモご飯、なます、野菜のゼリー寄せ、レンコン煮)

 NYではたくさんの場所が閉鎖し、たくさんの場所がオープンしています。失敗は当たり前、これがダメなら次はこれと直ぐに立ち直り、模索し、良いものだけが淘汰されていきます。あの会場と彼が手を組んで、こうなるのか、なるほどなど、フットワークが軽い人と話をすると、こんな人がブルックリンを作ってるんだなと感じます。最近ブルックリンでは、ファンドレイザーショーも盛んで、ミュージックショーをしたり、絵を描いたり、タロット占いをしたり、ジュエリーを売ったり、スタンダップ・コメディをしたり、自分ができるなにかで、参加し貢献しています。
 音楽だけのショーは少なくなり、マルチなショーが増えている、と思いますが、いろんなものが合わさって、たくさんのオーディエンスにも届くのが現在的なのでしょう。


Data security


DJ SIM Card

Anderson .Paak - ele-king

 〈ストーンズ・スロウ〉の所属アーティストでもあるナレッジ(Knxwledge)とのユニット、ノーウォーリーズ(NxWorries)のシングル曲“Suede”のスマッシュヒットをきっかけに、ドクター・ドレーの16年ぶりの新作となったアルバム『Compton』に大抜擢され、その後、ドクター・ドレーのレーベルである〈アフターマス〉との正式契約を経て、ついにリリースされたアンダーソン・パークのニュー・アルバム『Oxnard』。『Venice』、『Malibu』に続く、通称「ビーチ・シリーズ」の最後を飾る作品であるが、今回はあえて彼自身の出身地をタイトルに冠しているだけに、過去2作とはまた違った特別な意味合いを持つ。
 ドクター・ドレーがエグゼクティヴ・プロデューサーおよびミックス担当として全面的に関わっている本作であるが、表面的には参加プロデューサーの構成であったり、ゲスト勢がこれまで以上に豪華なメンツであったりといった違いはあるものの、歌とラップを巧みにミックスさせるアンダーソン・パークのヴォーカルを、ウェストコースト・スタイルなヒップホップやファンク・サウンドで彩るという、従来の音楽的な方向性は変化していない。しかし、そこはやはり、これまで様々なアーティストと共にヒット作を生み出してきた、手練れのドクター・ドレーが参加したことによる影響は、このアルバムの至る所に確実に現れている。
 ブラックスプロイテーション・フィルムを彷彿させるジャケット・カヴァーのイメージの通り、70年代テイストなサウンドに乗ってアンダーソン・パークのラップとヴォーカルがスリリングに交差する“The Chase”で幕を開け、そこから先行カットともなった3曲目の“Tints”まで一気にアルバムは進行する。プロデューサーとしてアンダーソン・パーク本人に加えてサーラーのオマス・キースも参加した“Tints”は、『Compton』以来の共演となるケンドリック・ラマーをフィーチャーし、さらにサウンドも生楽器をふんだんに使用したブギー・サウンドということもあり、皆が思い描いていたであろう期待通りのダンス・チューンとなっている。しかし、この曲に続くドクター・ドレーがプロデューサーを務める“Who R U?”では、変則的なビートの上で濃厚なファンクが全面に開花し、一気にサウンドのスタイルが変化。ちなみにドクター・ドレーがプロデューサーとしてクレジットされているのは、この曲に加え、自らラップも披露している“Mansa Musa”、Q・ティップもプロデューサーとしている名を連ねている“Cheers”、さらにボーナス・トラックの“Left To Right”の4曲のみだが、どの曲も実にキャラが立っており、アルバムの流れの中で重要なポジションを占めている。もちろんどのトラックもドクター・ドレーが一から作ったものではないであろうが、トラックの最終的な決定権を彼自身が持つという意味では、その耳は常に一貫している。ちなみに“Left To Right”ではベースにサンダーキャット、コーラスとしてバスタ・ライムスがひっそりと参加しているのだが、こんな組み合わせを実現できるのもやはりドクター・ドレーならではだろう。
 前述のケンドリック・ラマーを筆頭にプッシャ・T、J・コール、Q・ティップ、BJ・ザ・シカゴ・キッドなどそうそうたるメンツがフィーチャリングされているが、アンダーソン・パークとの組み合わせの妙という部分も含めて、いずれもクオリティは高い。なかでもケンドリック・ラマーなど〈TDE〉作品にも多数参加してきたジェイソン・パウンズがプロデュースを手がける“Anywhere”は、ゲストのスヌープ・ドッグが見事なハマりっぷりで、ウェストコースト色の濃い最高のメローチューンに仕上がっている。また、“Anywhere”では女性コーラスによるワン・ウェイ“Cutie Pie”のフレーズもひとつの聞き所であるが、女性ヴォーカルの使い方が非常に秀逸なのも本作の特徴だ。特に1曲目の“The Chase”でもクレジットされているシンガーのカディア・ボネイと、“Mansa Musa”にてドクター・ドレーと共に参加しているココア・サライのふたりに関しては、ほとんどの曲でいずれか片方がコーラスでも参加しており、このふたりの存在が作品に豊かな彩りを与えているのは間違いない。
 と、ここまで書いておきながら、本作の評価は前作『Malibu』と比べて、残念ながらそれほど高くはない。傑作と評された『Malibu』に続く作品であり、さらにドクター・ドレーがエグゼクティヴ・プロデューサーを務めたことで期待値が非常に高まっていたがゆえに、その反動とも思えるが、個人的には十分に期待の水準を超えた作品である。もちろん、前作における“Come Down”や“Am I Wrong”のようなパンチ力のある曲がもっとあればこの作品の評価もまた変わったであろうが、しかし、アルバム全体の構成力なども含めて、完成度は非常に高い。今後もドクター・ドレーのもとで、アンダーソン・パークがアーティストとしてどのように成長していくかが楽しみだ。

Sarathy Korwar and Upaj Collective - ele-king

 かつてのインドはイギリスの事実上の植民地だったこともあり、イギリスにはインド系の移民やその子孫が多い。そして、インドの食や生活文化はイギリスの中にも大きく入り込み、音楽においてもその影響は強く表われている。ジャズの世界でも1960年代よりインド音楽のスタイルや楽器を取り入れた作品が出はじめ、いまもそうしたジャズとインド音楽の融合は続いている。2018年なら春先にリリースされたユナイティング・オブ・オポジッツの『アンシエント・ライツ』がその好例で、またこの年末にはサラシー・コルワルの『マイ・イースト・イズ・ユア・ウェスト』という素晴らしいリリースがあった。タイトルどおり東洋と西洋が音楽を介して交わったアルバムである。

 サラシー・コルワルはアメリカ生まれのインド系ミュージシャンで、子供の頃にインドへ移り住み、その後大学への進学でロンドンへ移住し、それ以降はイギリスを拠点に活動をおこなっている。インドの古典楽器のタブラを、シュリ・ラジーフ・デヴァスシャリとパンディット・サンジュ・サハイというインドのその道の専門奏者に学び、ドラム・キットにタブラを組み込んで演奏する手法を確立する。ロンドンの大学では東洋とアフリカ音楽の楽理と研究を専攻し、卒業後はプロのドラマー/パーカッション奏者としていろいろなセッションに参加する。カール・ベルガーなどのヴェテランからさまざまなインドの古典音楽の演奏家たちとセッションし、カマシ・ワシントンのツアー・サポートを務め、シャバカ・ハッチングスビンカー&モーゼスなどロンドンの新しい世代のミュージシャンと共演する中、2016年にファースト・ソロ・アルバムの『デイ・トゥ・デイ』をリリース。スティーヴ・リード基金の援助を得てレコーディングしたこのアルバムには、シャバカ・ハッチングスやメルト・ユアセルフ・ダウンのベーシストのルース・ゴラーのほか、数多くのインド人ミュージシャンやシンガーが参加した。現代的なジャズ演奏にインド音楽特有のラーガという旋法や古典楽器演奏を取り入れ、ジャズと第3世界の民族音楽の融合という側面を見せると同時に、それはテクノやミニマル、アンビエントの要素にも繋がるもので、〈ニンジャ・チューン〉からのリリースということもなるほどと思わせる作品だった。このアルバムからはテンダーロニアスやエマネイティヴなどによるリミックス集も発表され、その後リリースされたテクノDJのハイエログラフィック・ビーイング(ジャマル・モス)、シャバカ・ハッチングスとの共作となるEP「A.R.Eプロジェクト」(2017年)は、『デイ・トゥ・デイ』の実験性をさらにテクノ~エレクトロニック方面へと拡張させたものだった。

 今回リリースした『マイ・イースト・イズ・ユア・ウェスト』は『デイ・トゥ・デイ』から2年ぶりのアルバムで、2018年2月に北東ロンドンのジャズ系の人気イベント「チャーチ・オブ・サウンド」でのライヴ録音となる。このライヴはサラシーとウパジ・コレクティヴというインド系ミュージシャンが主となるグループの共演で、打楽器奏者のBCマンジュナスやフルート奏者のアラヴィンダン・バヒーラサン、シンガーのアディチャ・プラカシュなどに混じり、アフロ・ジャズ・バンドのカラクターのリーダーとして知られるサックス奏者のタマル・オズボーンも参加している。なお、リリース元の〈ギアボックス〉はビンカー&モーゼスやブッチャー・ブラウンなどの作品をリリースし、モーゼス・ボイドアシュレイ・ヘンリーなどもサブ・レーベルからリリースするなど、いまの新しいジャズを牽引すると同時に、マイケル・ガーリックやニュークリアスなど古い英国ジャズやジャズ・ロックの未発表音源を発掘したり、サン・ラーやユゼフ・ラティーフなどのリリースまでおこなっている。1960年代にジャズとインド音楽の融合に貢献したジョー・ハリオットの音源から、ドラムンベースやUKソウルにインド音楽の要素を取り入れたニティン・ソウニーの作品も出しているので、今回のサラシーのリリースも非常に的確なものと言える。

 演奏曲目は全てカヴァーとなり、ファラオ・サンダースとレオン・トーマスの“ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン”、アリス・コルトレーンの“ジャーニー・イン・サッチダーナンダ”、ドン・チェリーの“ユートピア・アンド・ヴィジョンズ”、ジョン・マクラフリンとシャクティの“マインド・エコロジー”、アマンシオ・デシルヴァの“ア・ストリート・イン・ボンベイ”、ジョー・ヘンダーソンの“アース”など。インドの民謡やラヴィ・シャンカルの曲もやっているが、大半は1960年代末から1970年代にかけてのインド音楽を取り入れた欧米のジャズ、およびジャズとインド音楽の融合を図ったフュージョンなどで、いわゆるスピリチュアル・ジャズに属する曲も多い。この中では南インドのゴア出身で、イギリスに渡ってジャズ~ジャズ・ロック~サイケの分野で活動したギタリストのアマンシオ・デシルヴァが、サラシーにとってそのキャリアや音楽性の形成の上で重なるところがあるかもしれない。シタールの神秘的な音色に始まる“ア・ストリート・イン・ボンベイ”から、原曲から大きく変化した大胆なアレンジによる“ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン”と、単なるカヴァー演奏にとどまらない非常にクリエイティヴな即興演奏が繰り広げられる。観客の歓声を交えたライヴならではのテンションやエモーションの高さは、スタジオ録音の『デイ・トゥ・デイ』とは比較にならない。“マインド・エコロジー”や“ミシュランク”でのトライバルでトランス感を伴ったドラムとパーカッション群および弦楽器のアンサンブル、“ハジ”でのケチャのような怒涛のヴォイス・パフォーマンス、重厚でスピリチュアルな演奏が宇宙へと誘うような“アース”と、全体で2時間近くに及ぶパフォーマンスだが一時も気を抜くことができない濃密な時間が流れる。そして、最後の“ユートピア・アンド・ヴィジョンズ”に象徴されるピースフルで牧歌的な空気。ドン・チェリーが描いた天上の楽園世界を現代に継承する作品である。

Mark Stewart - ele-king

 1982年にリリースされたマーク・スチュワート&ザ・マフィアの最初の12インチがどれほどの衝撃だったことか──ひとつにはダブの音響実験がある。プロデューサーのエイドリアン・シャーウッドは、ジャマイカ生まれのダブの技法をこの作品において極限まで拡大して、カット・アップによるサウンド・コーラジュとの境界線を消失させている。演奏しているのはレゲエ・バンドのクリエイション・レベルのメンバーであったり、やがてアフリカン・ヘッド・チャージとして活動するメンバーだったりするのだが、ザ・マフィアの演奏は、シャーウッドのダブ処理において伝統的なレゲエとは切り離され、都市の寒々しい灰色の風景に地響きを与えるものとなった。泣きわめいているマーク・スチュワートの声が、その破壊的なサウンドと一体化したとき、虚飾に満ちた都市の化けの皮は剥がされて、力強いダンス・ミュージックが現出する。これがふたつ目の襲撃だった。
 続いて1983年にリリースされたのが、マーク・スチュワート&ザ・マフィアのデビュー・アルバム『ラーニング・トゥ・コープ・ウィズ・カワディス』だった。ザ・マフィア名義で録音された唯一のアルバム。12インチにも収録された“リヴァティ・シティ”は、2019年の現在聴いても名曲であり続ける。それは不吉な未来に向かっている東京にお似合いの、滅びゆく都市の鎮魂歌のようだ。

 『ラーニング・トゥ・コープ・ウィズ・カワディス』は新たに発掘された10曲(!)の未発表曲集を加えた2枚組として2019年1月25日に発売される。未発表曲もあなどれない。なにしろこの黄金のメンバーで録音された音源であり、マーク・スチュワートもエイドリアン・シャーウッドももっとも過激な実験に取り組んでいた時代の記録なのだから。

 マーク・スチュワート&ザ・マフィアの三つ目の衝撃をいうならそのアートワークである。当時の彼らがCRASSなどのアナルコ・パンクとリンクしていたという事実がうかがえるだろう。日本盤はトラフィック・レーベルから。お楽しみに。

Binkbeats - ele-king

 これは興味深い。まずはこのエイフェックス“Windowlicker”のカヴァー動画を視聴してみてほしい。あの楽曲を人力で、しかもたったひとりで再構築してしまうこの人物、ビンクビーツ(Binkbeats)というオランダのプロデューサーである。他にもフライング・ロータスラパラックスアモン・トビンなどのエレクトロニック・ミュージックをがしがしひとりでカヴァーしているからすごい。アンダーグラウンドの最尖端に敏感なDJクラッシュの最新作『Cosmic Yard』にもフィーチャーされていたので、それで気になっていた方も少なくないだろう。そんなアナタに朗報です。ちょうど本日1月9日、彼がこれまで発表してきた2枚の12インチを独自にまとめたCDがリリースされます。昨年ソニックマニアで来日した〈Brainfeeder〉のジェイムスズーも参加しているとのことで、おもしろい音楽を探している方は要チェックですぞ。

BINKBEATS

〈Brainfeeder〉総帥 Flying Lotus、Thom Yorke (Radiohead) 率いる Atoms For Peace、そして Aphex Twin や、さらには J. Dilla まで数々のアンセムを人力且つたった一人で再現したライヴ映像で世界中に衝撃を与えたオランダのビート・サイエンティスト BINKBEATS ついに日本デビュー!

LAビート・シーンを牽引する〈Brainfeeder〉総帥 Flying Lotus “Getting There”、Thom Yorke (Radiohead) 率いる Atoms For Peace “Default”、そして Aphex Twin “Windowlicker”といった数々のアンセムやさらには J. Dilla の“Mixtape”を人力且つたった一人で再現したライヴ映像で世界に衝撃を与えたオランダのマルチ・インストゥルメンタリスト BINKBEATS。ROCK、POSTROCK、ELECTRONICA、HIPHOP、JAZZ など幅広い音楽要素を融合し多種多様な楽器/機材を駆使しながら構築する先鋭的なビートや美しくもエモーショナルなメロディ、それらを独創的なサウンド・スタイルで展開した本作は各500枚限定でプレスされた連作EP「Private Matter Previously Unavailable」 PART1 と PART2 の全曲を収録したオリジナル楽曲としては初のCD化!

既に YOUTUBE で公開されているライヴ映像が100万再生を超えているM1 “Little Nerves”は Daedelus や Jameszoo の作品にも参加しLAビート・シーンの重要レーベル〈Alpha Pup〉からも自身の名義でリリースしている注目の若手鍵盤奏者 Niels Broos をフィーチャー、そしてM3 “In Dust / In Us”には〈Brainfeeder〉から発表された 1st『Fool』が高い評価を受けた Jameszoo もプロデュースに加わるなど次世代の注目アーティストが多数参加! 現在ワールドワイドにツアーを行っており、また DJ KRUSH の最新アルバム『Cosmic yard』(2018年3月)にも参加するなど日本国内でも徐々に活動の幅を広げるなど、その唯一無二なパフォーマンスで世界各地に衝撃を与えている今後の活躍が期待されているアーティストである。

タイトル:Private Matter Previously Unavailable / プライヴェート・マター・プリヴィアスリィ・アンアヴェイラブル
アーティスト:BINKBEATS / ビンクビーツ
発売日:2019.1.9
定価:¥2,400+税
PCD-24796 / 4995879-24796-9
日本語解説:原雅明
p-vine.jp/music/pcd-24796

Additional Synths On All Tracks By Niels Broos
Additional Production On In Dust / In Us By Jameszoo
Additional Vocals On Heartbreaks From The Black Of The Abyss By Luwten, The Humming / The Ghost By Maxime Barlag

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