「K A R Y Y N」と一致するもの

Prins Thomas - ele-king

 今年に入ってアルバム『プリンシペ・デル・ノルテ』を発表してファンを喜ばさせた北欧ノルウェーのコズミック・ディスコの代表格、プリンス・トーマスが来日する。というか、北欧ノルウェーのコズミック・ディスコって何ですか? というあなたはここに行けば良い。
 ある意味何でもアリだ。サン・アロウもアクトレスもウォーリー・バドロウ。そしてそこには、上品な、エレガントな、紛うことなきトリップがある! 
 また、9月にはくだんの『プリンシペ・デル・ノルテ』のリミックス盤もリリースされる。リカルド・ヴィラロボス、ジ・オーブ、サン・アロウなど、とんでもない豪華リミキサー陣。こちらもチェックしよう。

PRINS THOMAS
Principe Del Norte Remixed

calentito
CD2枚組
2016.9月発売

リミックス収録楽曲:
CD 1
1. H (The Orb Orbient Mix)
2. B (Sun Araw Saddle Soap Remix)
3. D (Dungen Version)
4. J (Original Version)*
5. C (I:Cube Remix)
6. D (Hieroglyphic Being Remix)
7. C (Young Marco Remix)

CD 2
1. I (Original Version)*
2. A1 (Gerd Janson Prinspersonation Mix)
3. C (Ricardo Villalobos King Crab Remix)
4. C (Ricardo Villalobos Knödel Prince Dub)
5. H (The Orb Heaven Or Hell Remix)
6. K (Original Version)*
7. C (Prins Thomas Diskomiks)
8. D (Hieroglyphic Being Beat Rework)

Susumu Yokota - ele-king

 昨年病の末に亡くなられた横田進の名作が2枚、リイシューされた。どちらも未発表音源のCD付きだ。
 PRISM名義の1995年作『Metronome Melody』、同名義の1997年作『Fallen Angel』。広くはテクノ・プロデューサーとして知られる横田だが、彼の魅力はなんといってもそのメロディにあった。シンプルだが透明で、印象的な旋律。PRISM名義の作品は、テクノ・ビートに乗った彼のメロディがもっとも煌めいた時期のもので、どちらも横田の代表作だ。もし1枚選ぶなら『Metronome Melody』だが、『Fallen Angel』のほうが曲のヴァリエーションは豊かだ。それでも僕は、ダンス・カルチャーのはかなさ/刹那性/ある種の孤独を見事に捉えた『Metronome Melody』を選ぶけどね。まあ、どちらも500枚限定プレスだし、未発表トラックも多く、聴いて好きになった人/とくに思い入れがある人はこの機会を逃さない手はない。


PRISM
METRONOME MELODY (SPECIAL REMASTERED EDITION)

SUBLIME
Amazon


PRISM
FALLEN ANGEL (SPECIAL REMASTERED EDITION)

SUBLIME
Amazon

石野卓球 - ele-king

 そう、いよいよ90年代が始まる。1993年のYMO再生(実質上、テクノポップの終焉)から、そして『テクノボン』を経由して1995年までのおよそ2年間は、「90年代」というディケイドにおける重要なモード・チェンジの時期だったと思う。その象徴のひとつが、1995年の『Dove Loves Dub』だった。「電気グルーヴの石野卓球」ではなく「テクノ・プロデューサー、石野卓球」としての最初の作品である。
 大友克洋のアートワークがもたらす相乗効果も大きかった。これは、同年リリースのケンイシイ『Jelly Tones』(当然、森本晃司監督による「EXTRA」MVのCD-ROM付きの初回盤)とともに、アンダーグラウンドなテクノがいままさにポップ・カルチャーの最先端にまで勢いをのばしているのだという、あの頃の高揚感へと繫がった。ジャンルが現在のように細分化される以前の、混沌としているがゆえのテクノの魅力とでもいうべきものがあった。電気のボックスセットからバラ売りするというカタチ(そうでもしなければ、テクノのソロ作品をメジャーで出すことは不可能だった)で同時リリースされた『Dove Loves Dub』と砂原良徳『Crossover』は、ある種の時代精神(!)のなか、聴き狂ったものだった。私は、電気と同じくらい熱心に卓球とまりんのソロを聴いた。
 インダストリアルな魅力も兼ね備えたほど多彩な内容の『Dove Loves Dub』以降では、それとは対照的に渋いハード・ミニマル・テクノを打ち鳴らす1998年の『Berlin Trax』が好きだったけれど、それを言ったら2004年の「Title」シリーズ、2010年の『CRUISE』などゼロ年代の諸作品も忘れるわけにはいかなくなる。基本的にポップなイメージで見られる石野卓球だが、しかしソロで見せる音楽性はまったくのアンダーグラウンドで、ある意味ディープで、しかも素晴らしく洗練されているのだ。

 そして、『CRUISE』から約6年ぶりに新作『LUNATIQUE』は、たしかな経験とスキルに裏打ちされた、まさに大人のテクノ/ダンス・ミュージックと呼ぶに相応しい仕上がりだ。何回も聴けば聴くほど新たな発見がある。心地良く、ビートも音色もメロディもシーケンスもベースも、すべてのパートがそれぞれ自然と体内に染み入ってくるようだ。あるトーンが持続し、反復し、展開し、グルーヴの低熱のようなものが入ってくる。まさに身体に「効く」音楽!
 エロティシズムが主題だと言うが、全編にうごめく柔らかい音色は、たしかに官能的だ。ニュー・オーダーも影響を受けているイタロ・ディスコ的なセンスも伺える。たとえば“Fana-Tekk“や“Crescent Moon”など、かなり中毒性が高いトラックだが、しかし、それにしても、なぜこんなに気持ち良いのだろうか……。
 冒頭の“Rapt In Fantasy”からしてそうだが、シーケンス・フレーズとビート、パーカッションとベースなど、ジャスト一歩手前の微妙なズレを伴っている。そのズレが独特のグルーヴを生み、さらにアルバム全編を通して伸縮するような大きなグルーヴを生んでいる。電子音なのにウネウネとして生っぽいのである。
 “Fetish”も最高だ。水のような持続音、シルキーなシンセ、断続的に散らばるビートと、伸縮するベースなど、まさに官能と快楽だ。また、“Die Boten Vom Mond”や“Selene”などのアンビエントなシンセとミニマルなリズムとの重なりを聴いていると、ふと90年代のレーベル〈クリア〉の諸作品(モーガン・ガイストなど)を思い出してしまった。要するに、聴く場所を選ばない、ダンスとリスニングとのバランスがじつに良いのだ。

 もっとも本作は、マニアだけを相手にするアルバムではない。『LUNATIQUE』はポップでもある。YMOのファーストやセカンドにあったポップ・センスをも彷彿させる。何と言ってもメロディが残る。宇川直宏による官能テクノ雑誌のようなアートワークも、本作のポップ感を見事に象徴している。ぜひ特殊仕様の初回盤を手にとってほしい(完売してしまったかもしれないが……)。『Throbbing Disco Cat』(1999)に匹敵する名ジャケだ。
 そう、彼はいつどんなときだってユーモアを込める。つまり6年ぶりのこのアルバムは、粋なのだ。大人テクノの粋! 90年代の自分に教えてあげたいほどの力作である。

Gonjasufi - ele-king

 ゴンジャスフィが帰ってきた。フラング・ロータスの名作『ロスアンジェルス』で脚光を浴びて、〈WARP〉とソロ契約を交わし、すでに3枚のアルバムをリリースしている。中東文化も混在するサイケデリック・LAビート・ロックとでも言おうか、10年先の世界を歩いていると言おうか、とにかく彼にしか作れない独自の魅力をもった作品でファンを魅了してきている。巷では奇人などとも噂されているが、ヨガのインストラクターでもあり、またヴォーカリストでもありトラックメイカーでもあるという、いまだミステリアスだが多才な人物であることは間違いない。
 さて、そんなゴンジャスフィの新作『Callus(カルス)』が8月26日にリリースされる。新作は、まるでトム・ウェイツがスーフィーの寺院で宇宙を語りはじめたかのような作品らしい。ここに彼の最新PVも発表された。期待しよう。

Gonjasufi - Vinaigrette (Official Video)

NO RIO (CAT BOYS) - ele-king

今聴きたいソウルミュージック10選

コザの表と裏側 with 宮島真一 - ele-king

 7月10日の参院選投票日を前に、私はイハ陣営からもアイコ陣営からもプチ逃亡を決め込んだ。都合よくコザでロックフェスがある。トリまで観たら夜9時だし、投票は無理だった、というテイで。が、常日頃もっと世の中を勉強しろと私にガミガミ言われているオタクのノンポリダンナが嬉々として、「高速入る手前で期日前投票が出来る」とほざいてきた。
 コザ弾丸ツアー。那覇の自宅を出発し、期日前投票所に寄り、“いない”の3文字を、書き殴った。

*  *  *

 コザは、かつて沖縄本島中部にあった日本で唯一のカタカナ表記の市で、今は統合され沖縄市となっている
 初めて沖縄を訪れた8年前、美しい海を堪能した後真っ先に訪れた街だ。10年間のロンドン滞在を切り上げようやく戻れた東京で日本のロックシーンを軽く嘆いていた私にとって、ORANGE RANGEやモンゴル800等異彩を放ちながら次々に出てきたバンドがコザの出身だったりコザで活躍していたからだ。
 そこは広大なシャッター商店街であって、なにかしないとならないという空気は漂っていたものの、平日の昼間は退廃感しかなかった。

 まだ1歳だった小さな娘は、沖縄の海に投げ入れられ、母親がゲラゲラ笑っているものだからそのまま魚のように泳ぐようになり、
 ガジュマルの木の下では延々と、大人には見えないなにかと語り合っていた。翌年また訪れ、次は半年後、3ヶ月後と、すっかり沖縄病。こんなところで暮らせたら夢のようだと思ったけど、夢は夢のままがいいはずと、沖縄戦やいまだ続いている基地問題を知れば知るほど、住む場所ではなく訪れる場所だと、沖縄とはそういうところだった。しかし、311によって、それは現実となる。簡単に言えば放射能避難移住だが、決行するまで1年半、その間は血を吐くような葛藤があり、子どもなんて生まなきゃ良かったとさえ思った。仕事への執着が強く東京を離れる気は一切なかったからだ。

 放射能汚染に関しては情報収集の努力はするものの、それらの正誤について判断出来ると思っていない。ただ我が家は、居住拠点の位置を変える条件が揃ったから、東京を離れただけのことだ。脚本家としての仕事は、311以降テレビドラマを観なくなったことに気付いてからは、多少吹っ切れた。と思い込むようにして。
 沖縄の海にしばし癒されようと、ロング・ヴァケーションが始まるのだと。

 ある程度は覚悟していたことだが、沖縄移住は易しいものではない。毎年多くが沖縄に引っ越し、8~9割が1年未満で引き上げるという。主な理由として賃金の安さが上げられるが、それだけではない。私たちはまず見た目、そして名字で、「ヤマト」もしくは「ナイチャー」として区別(差別)される。「いちゃりばちょーでー(会えば皆兄弟)」とうちなんちゅ(定義は人それぞれだが、ざっと、琉球民族の血筋ということだと思う)にもてなされ、その優しさに感激していた客人だったときとは変わって、気を使うことも求められる。70年前の沖縄戦終盤、日本兵によって自害を促された辛い過去は今も深く人々の心に刻まれている。
 沖縄問題のひとつに、基地云々の抗議活動にナイチャーが躍起に成り過ぎる、というのがある。先日辺野古でのもめ事の際に、海上保安官が抗議市民に「腐れナイチャーや」と言い放ち、問題になった。他所から来てガタガタウルサいのはナイチャーばっかりだと真剣に言ううちなんちゅも少なくない。まあ、移住者は大抵沖縄の自然が好きなわけで、離島に橋をかけるなとかコンビニ作るなとか思うんだけど、うちなんちゅからしたら開発の何が悪い? と。そんなこんなはあるが辺野古での新基地反対についてはうちなんちゅも多くが反対している。ここで沖縄県民として、ナイチャーも含めて仲良く抗議活動が出来るかとハチマキ締めなおすも、ことはそう単純ではない。
 ここのところの安倍政権のやり口によって、ヤマト全批判の論調が生まれた。時の施政者を糾弾するのであれば個々人が手が組めるのだが、全批判、である。
「あんたたちヤマトは、お上の言うこと聞くだけが能で、自分で考える頭がない」と親しくしていた年配の女性。
「でも多くの移住者が辺野古に対する抗議をがんばっていますよ」と返すと、
「迎合しないとここには住めないからね」
 最初の1年は辺野古も県民大会にも足を運んでいたが、もう行かなくなってしまった。
 全国紙と比べてなんと気概があることかと賞賛していた沖縄2紙については、やはり偏重が過ぎる。それは別に悪いことではない。ただ一般市民がその論調に引きずられることに気付かないのが問題なのだ。
 日本のソメイヨシノを、接ぎ木で増えるクローンであり軍国主義の象徴としたコラムが一面に掲載され、私は沖縄タイムスの購読を止めた。

 4月にうるま市で米軍属による暴行・殺人事件が起き、2紙とSNSでは一斉に米軍と日本叩きが始まる。シールズ琉球の女子大生は、「安倍首相と本土に住む日本国民は第二の加害者だ」と涙ながらに訴えた。
 そこで多くの心優しき移住者たちは沖縄に迎合するのだが、私はしなかった。することで問題が解決するとは思わないからだ。
 直後県議選があり、当選した革新系の新人議員が、「うるま市の事件で、風がこちらに吹きました」と、笑顔で取材に答えていた。
「私たちも悲しんでいます」というカードを持ち米軍勤務者が路上に立つムーヴメントが起きたが、「幸福実現党がやらせている」と、一蹴された。
 日本国民、米軍等、ひとまとめにする想像力の欠如とも取れる糾弾の仕方は、怒りや憎しみが高じたことによるものなのかと、沖縄紙とSNSを閉じて、溜息をついた。
「怒りは限界を越した」とする人々の代表、イハ氏と、安倍内閣の大臣であるアイコ氏、その一騎打ちの参院選だった。

* * *

 コザはたまに行くが、交通手段が車しかないので、夜までいることは滅多にない。この日は友人が運営するゲストハウス「羊屋」にチェックインした。素泊まり2000円。沖縄はこういう安宿が多くて県内旅行が気軽に出来るのが楽しい。

 誰をも踊らせてしまう沖縄民謡。
 アメリカ統治下時代の影響を色濃く持つ骨太なオキナワンロック。
 チャンプルーでユニークな琉球ポップス。
 安室奈美恵、SPEEDなど存在感ハンパなかった沖縄アイドル。

 沖縄に惚れた理由のひとつは間違いなく音楽だ。しかしここ数年、それが生まれて来る場所が空気が、気配はあるのだけど、見付けられてなかった。それにどっぷり浸かりたかった。

「最近言われることだけど、沖縄のロックを観光用にって予算がついてタダでライヴが観られるようになって、エンターテイメントにお金を出す人が少なくなってしまった。価値には対価を払わないと、育たない。そういう側面もあるかもしれない」

 コザのことはこの人に聞こうと、宮島真一に会った。メインMCを張る『コザの裏側』は、ディープなタウンガイドを緩い笑いで紡いで人気がある深夜番組だ。ラジオの帯からテレビ、全島エイサー祭りの司会から観光大使と、すっかりコザの顔として名前を知らない人の方が沖縄では少ない。



宮島真一

「別にコザにこだわっているわけじゃなくてどこにでも出てくぜって強く思ってるけど(笑)、色々やらせてもらっているのと、場所を作ったので」

 昨年シアタードーナツという映画館をコザの中心地に立ち上げた。  
 このミニシアター受難の時代に。
 映画制作者でもある彼は、『ハルサーエイカー』、『ハイサイゾンビ』など、全国展開可能な良い映画をコンスタントに制作している。が、現代沖縄もやはりシネコン中心。

シアタードーナツ https://theater-donut.okinawa

「上映をお願いするよりも、もう映画館作ってしまおうと(笑)、必然的に。まず僕がこのあたりに映画館欲しかったし。昔はあったから入り浸ってたんですよ、ラジオとか懸賞にまめに応募して。映画、しかも映画館が好きでね。だから今は楽しくてしょうがないですよ。いろんな人が来てくれるし。映画って全てを巻き込む力があるでしょ」

 彼が力強く語るのを聞いていると、好きなことを仕事にしては嫌いになるという悪い癖のある私はしばらく日本映画が嫌いだったのだけど、純粋に映画を映画館を好きだった気持ちが甦ってきて嬉しくなった。

「僕もその繰り返しですよ。嫌いにもなるし。でも好きっていうのが根本であって、いちいちそれを思い出す作業。ライヴハウス立ち上げたりラジオやったり、難儀しながらものを作るんだけど、行く先々に必ず映画がある。それに映画には音楽が必ず付いてくる」

 コザは音楽が生まれる土地だと思っていたのだけど一体どこに?との私の問いに対する答えが、冒頭の彼の台詞だった。

* * *

 シアタードーナツの周りを歩いてみる。コザ/現・沖縄市の中心街、その昔はさぞかし栄えていたであろう商店街が整然と広がっている。
 アメリカ統治下時代、軍人らが遊ぶ場所として栄えた。明日戦場に行って生きて戻る可能性はほぼないことを知る彼らは、湯水のように金を使った。民謡バーなど一晩で家が建つほどの、ドラム缶一杯のドル札を稼ぎ、殺気立った軍人らを満足させるライブで、毎晩賑わった。
 その後沖縄は日本に復帰し、基地の規律も厳しくなり基地外での飲食も規制されるようになってからは、街は一気に活力を失う。シャッター商店街となり、地元の青年会を中心にもう10年も前から空き店舗貸し出し等町おこし事業が精力的にされてはいるのだが。那覇市から高速に乗れば30分と言えども、タクシーや代行で那覇に帰るには遠い。

 先月名護市(辺野古を有する、かつての大都市)のあまりの荒廃ぶりにすっかり落ち込んでしまった私は、暗澹たる気持ちで街を眺めていたのだが、気をつけて歩いているとそこには明確に確実に、変化があった。何かを生み出す荒廃の匂いがあった。

 車を捨てよ、町を歩こう。

 雑貨屋やレコード店、派手な色柄が並ぶ洋品店などを冷やかし、ライヴハウスの点在するパークアヴェニューまで出ると、路上ライブにBBQブースが出ていた。
 一番街まで行き、今宵の宿泊先のゲストハウス『羊屋』おすすめの『りんりん』という飲食店を、手書きの地図を手に探すも見つからない。このあたりに人を呼び戻したと言われている人気焼き鳥店『鶏五郎』の前で途方に暮れていると、店員さんが『りんりん』まで連れていってくれる。なんという親切! 『鶏五郎』、飲み放題1時間770円。大にぎわいである。えっと、さっき、ミュージックタウン音市場あたりで60分飲み放題380円という看板も見ました。酒好きにはたまらない町、コザ。

 『りんりん』に着いたはいいが、看板が『パナマ原人』……。表を貸してるということらしく、中に入っていくと一応店らしきものが。暗いし生活感溢れたスナック的趣きと営業気なさげな空気感。が、ここ沖縄で私たちやまとんちゅが満足出来る魚介類を出す店は少ない。隠れた名店であった。

 話をそれとなく、先日起きた軍属の暴行殺人事件に持っていく。
「このあたりで飲んでいた米軍勤務の子たちは皆、礼儀正しくて優しい人ばかり。一部の犯罪者のせいで外出禁止まで出されるのはどうかと思うねぇ。金払いも良く本当にいいお客さんたちなのに」
 そうなのだ、メディアで報道されるような反基地感情を強く露に出す沖縄県民は、一体どのくらいの割合なのだろうと、沖縄で生活していると常に意識させられる。オール沖縄とは一体何なのだろう。オールに属していない沖縄県民は非難の対象になるのだろうか。避難をする側は果たしていつも正しいのだろうか。闘うことが目的になっていないだろうか。

 何軒かハシゴ酒をして、ゲート通りの『オーシャン』に入る。その昔Aサイン(本土復帰前の沖縄で米軍公認の飲食/風俗店に与えられた営業許可証)バーとして名を馳せた老舗だが、この夜は地元客らしき男性のみがマスターと参院選の話に終始していた。

 すっかり夜も更けてゲート通りに出ると、この通りだけは軍勤務者で盛り上がっているようだった。
 コザの空気が混沌としていることに、少し安心した。


*  *  *

「だからさー、みんなでETを観ればいいと思ったわけ。小学生の自分は。違う者たちの友情とか普遍的なものが全部織り込まれていて、絶対観た方がいいって言うに決まってる! だから学校にETのレコードとスピーカー付きのプレイヤー持って行ってみんなに聴いてもらった(笑)。こういう、吸収するという作業を子どもの時にした方がいい。楽して生きたいから公務員になります、って子ばっかりになっちゃう。
 戦争がすぐになくならないのであれば、子どもの教育をちゃんとやっていくこと。その点コザはいろんな人種がいて盛り上がることがあって、極端に何かを言うよりは、この空気に触れてもらうとこういう沖縄もあるんだと考えてもらえる。そういう街。若い子たちの価値観にもちゃんと寄り添える。地道にこういう活動もやってるので、もっと評価してもらいたいんだけど(笑)」



ピースフルラブロックフェスティバル https://peaceful-love-rock.com

 『コザの裏側』収録終わりの宮島真一と、プレイヤーズ・カフェで合流した。この週末は沖縄市野外ステージで、ピースフル・ロック・フェスティバルが開催されていた。1983年から続いているロックフェスの草分けで、沖縄ロックの登竜門。
 沖縄ロックの中心メンバーの一人であるかっちゃん(川満勝弘)はコンディション・グリーンのヴォーカル時代、ヘビを喰いちぎったりヒヨコをステージにバラまいて踏みつぶしていったり過激なパフォーマンスで知られる。米兵相手に育った沖縄ロックは、生半可なコピー・ロックであるわけがない。イギリスでようやく出会えたロックは、沖縄でも出会えるのだ。
 マンドリルを纏いステージで座っていた宮島は、客席から現れた
 かっちゃんから何かを受け取り、仮面を外し、バックステージへ消えた。確かに、何かを、託されていた。

 音楽が生まれてくる渦は確かにあった。ただ客が少なかった。「PRするのが得意でない」とは宮島の言葉だが、演る側としては外にアピールすることよりも、コザのこの空気の中で生かされるものに向き合っているだけなのかもしれない。沖縄の地の力は強く、それ故に癒されたり傷ついたり、魔性の魅力があるのだ。

interview with MARQUEE BEACH CLUB - ele-king


MARQUEE BEACH CLUB - Flavor
Pヴァイン

Electro PopIndie Rock

Tower HMV Amazon

 ぶっ壊すとかNOを突きつけるとか背くとか、あるいは無言を通すとかのかわりに、ここ10年くらいのインディ・ミュージックにおいては、なにかと建設的で、計画的で、コミューナルなヴィジョンを感じることが増えた。破壊よりも設計がクールだというのは、音楽にかぎらずこの間の時代性を反映する志向だったとも言える。水戸の6人組バンドMARQUEE BEACH CLUBも、その名を構成する3語がすべて「人の集まる場所」を暗示するように、ひとつの「設計」を試みるバンドのようだ。マーキーのような、ビーチのような、クラブのような──バンドではあるけれども、そんな場所性をもった何かとして、音楽以外のものも巻き込みながら発展していきたいという発想。それはユートピア的でありながらもわりと切実な希望を含み、酷薄な時代を裏返しに見せてもいる。

 2008年から2010年あたりのインディ・ポップ──シンセ・ポップ・リヴァイヴァルに彩られ、パッション・ピットやフレンドリー・ファイアーズの対向にチルウェイヴが並走していた時期の影響を素直ににじませる彼らは、ロックとダンスの狭間で空想のダンスフロアを呼び寄せ、リヴァイヴァルでしか触れたことのないポストパンクやシューゲイズと戯れ、イーノを知らずしてシンセの輝きに目を細める。どこか冷めた視点も持ちながら、正直に自分たちのちいさな時代を呼吸し、控えめに楽園を夢見ている。
そもそもはコイブチマサヒロのベッドルーム・プロジェクトとしてはじまったこの音楽が、無邪気さと素直さを失わないままメンバーという個々のヴィジョンを得て肉付けられ、バンドとしてひとつの場所を開き、とりどりの花を咲かせていることを肯定したい。

 それでは、水戸からやってきた移動式ユートピアにしばし瞳を凝らしてみよう。

■MARQUEE BEACH CLUB / マーキー・ビーチ・クラブ
東京を拠点に活動するエレクトロ・ロック・バンド。2015年4月から都内で活動を始め、正式な音源リリース前でありながら、下北沢インディーファンクラブやGFB'15(つくばロックフェス)等のフェスに出演。2016年4月には自主リリースにこだわった初音源『wonder ep』を一部のタワーレコードやレコード店で限定販売。同年6月22日には7インチシングル「eye」をリリース、Apple Music「今週のNEW ARTIST」に選出される。8月、ファースト・アルバム『Flavor』を発表する。

メンバー:コイブチマサヒロ(Vo.Gt.Syn.)、シマダアスカ(Vo.Per.) 、ミヤケマサノリ(Gt.Syn.Per.Cho.)、カワマタカズヤ(Gt.Cho.)、マコトニシザワ(Ba.Syn.)、イシカワヒロヒサ(Dr.Cho)


曲をつくるならずっと残るものにしたい、っていう思いが根本にあったんですよ。それには、みんなが歌える曲──たとえば合唱とか、男女が歌えるものじゃないといけないなと。(コイブチマサヒロ)

男女ヴォーカルでいこう、っていうのは最初から決まっていたコンセプトなんですか? バンドを大きく特徴づける部分ですよね。

コイブチマサヒロ(以下、コイブチ):そうですね。曲をつくるならずっと残るものにしたい、っていう思いが根本にあったんですよ。それには、みんなが歌える曲──たとえば合唱とか、男女が歌えるものじゃないといけないなと。前提として男女が歌えるようなバンドをつくって、それからリリースしなきゃなって思いました。

それはおもしろい考え方ですね。「男女が歌える」というのは、キー的な意味で?

コイブチ:キー的な意味ですね。僕ら二人が歌えれば、基本的には男性も女性も歌えるなって思って。

なるほど、口ずさめるようにする取っ掛かりですね。コイブチさんの自我を薄めたいというようなことではなくて?

コイブチ:そういうことではないんですけどね(笑)。憧れている海外のバンドが女性ヴォーカルを入れていたりするので、そういう影響はあるかもしれません。

なるほど。声なんかも、ある程度「こういう人がいいな」って思い描いていたわけですか?

コイブチ:いえ、あまりそこはなかったんですけど、ふたを開けてみたらすごく声の性質とかが合っていて……すごくいい感じに声が乗ったし、彼女は僕に無い部分を持っているなって感じたりしました。何より、僕らは茨城の水戸の人間が集まっているバンドなんですけど、水戸の中でいちばん僕の曲を解釈してくれるのが(シマダ)アスカちゃんなんじゃないかなって思えたところがあったんですよね。

へえ。すでにシマダさんは活動されてたんですね。

コイブチ:シンガーソングライターとして活動されていて、そのライヴはよく観に行ったりしてたんです。

シマダアスカ(以下シマダ):コイブチさんはお世話になっている先輩、という感じでした。コイブチさんの前のバンド(STELEOGRAM)も観に行ったりしていて、とても好きだったので、誘ってもらえてうれしかったです。

コイブチ:なんか、改まった感じになって恥ずかしいですね(笑)。

あはは。しかし、ハモる部分もありつつも、かなりびっしりユニゾンでいきますよね。

コイブチ:そうですね、あえてユニゾンにしていて。やっぱり「みんなが歌えるように」っていうところを意識してるんです。二人あわせて一つのヴォーカルみたいなイメージで曲はつくってますね。レコーディングしたものをどのテイク、どの段階でOKにするかっていうのも二人で決めてます。

「コーラス」って言われちゃうと、違うなって思います。ヴォーカルだと思って歌ってて。(シマダアスカ)

たしかに二つで一つですね。そうなると、シマダさんの歌い手としてのエゴってどんなふうに出てくるんですか?

シマダ:そうですね……「コーラス」って言われちゃうと、違うなって思います。ヴォーカルだと思って歌ってて。コイブチさんがメイン・ヴォーカルとして前に立っていますけど、私はそれを食うぞ! って思ってます。

(一同笑)

シマダ:コイブチさんがいないとマーキーじゃないんですけど、私も、私の声がないとマーキーじゃないって思ってますね。

そうですね。それはすごくわかります。詞だったりメロディみたいな部分にシマダさんが浸食していくことはないんですか?

シマダ:コーラス……ですかね。コイブチさんがメロを出してくださるんですけど、ハモりどうしようかねって話になると「こういうのどうですか!」って提案します。それが、コイブチさんにとっては新しいものだったりすることはあるみたいですね。

コイブチ:やっぱりシンガーソングライターとして活動してきたから、「曲をどう解釈して(コーラスを)付けていこう?」ってふうに考えてくれるんですよね。だからコーラスについてはおまかせしている感じです。いいメロをつけてくれますから。そういうところにエゴみたいなものは出してもらえているのかなと思います。

バンドだからこそ出せるエゴですね。そのあたり他のメンバーの方にもお訊きしたいんですが、まず前提として、このバンドのそもそもの出発点は、コイブチさんのベッドルーム・プロジェクトみたいなものだったんですかね?

コイブチ:そうですね。

それを肉付ける存在が5人集まってくれたという。それはコイブチさんからのお声掛けですか?

コイブチ:みんな、「この人だったら」ってところで声をかけさせてもらって。ドラムのイシカワくんとかは前のバンドからいっしょにやってたんですけどね。前のバンドではヴォーカルもやったことがなくて、ギターしか弾いてなかったんです。で、新しくバンドをはじめるにあたっては、やっぱりずっといっしょにやってきたドラムじゃなきゃ歌えないなって思ったんですよね。あとは、家でいっしょに音楽の話をしながら飲んだりした間柄というか(笑)、音について共有できる仲間を集めた感じですね。

新しくバンドをはじめるにあたっては、やっぱりずっといっしょにやってきたドラムじゃなきゃ歌えないなって思ったんですよね。(コイブチ)

ドラムが大事というのは、やっぱりリズム・コンシャスなバンドなわけですしね。特に重要だというのはわかります。カワマタ(カズヤ)さんはどんな感じで入られたんですか?

コイブチ:カワマタさんは大学の先輩で、同じ研究室の一コ上の人なんです。いつもいっしょにご飯を食べたりしながら音楽の話をしてた、僕の大学時代でいちばん近かった人です。

学部はどちらなんですか?

コイブチ:工学部なんですよ。

シマダ:ははは。

コイブチ:なんで笑うの?

(一同笑)

そっちの選択肢はなかったんですか?

カワマタカズヤ(以下カワマタ):そっちはぜんぜんで。ふらふらしてたんです(笑)。

コイブチ:だから、これは声を掛けるしかないなと思って。突然連絡して、新しいプロジェクトをやろうと思うんですけど、ギター弾いてもらえませんかって誘いました。学生時代から活動していて、オリジナルをやっていたわけではないんですけど、いろんなバンドでギターを弾いて、どこでも一つ抜きんでるというか、目立っていたんですよね。

へえ。印象ですけど、カワマタさんにはちょっとポスト・パンク的な根っこがあったりします?

カワマタ:僕は、何ですかね、ポスト・パンクとか。でも基本的にはオルタナですね。アメリカの方の、うるさそうなバンドが好きですね。

グランジ的な。

カワマタ:グランジ的な。

髪型とかそうですよね。

カワマタ:けっこう最近なんですけどね、これは(笑)。どこまで(伸ばしっぱなしで)許されるのかなって。

(一同笑)

いざ入ってみたら「ミヤケ、シンセサイザー弾いてみようか」って言われて。「僕、弾いたことないんですけど」って言ったら、「こうやれば音が鳴るから!」って(笑)。(ミヤケマサノリ)

ははは、いいですね。ミヤケさんは?

ミヤケマサノリ(以下ミヤケ):僕はギターにシンセに……いろいろやっている人です(笑)。

シンセの果たす役割も大きいですよね。アナログな機材をつかったりもしているんですか?

ミヤケ:完全にそうですね。

シンセ体験はどのあたりからなんでしょう。イーノが好きで……って感じでもないじゃないですか。

ミヤケ:シンセ体験っていうことでは、このバンドからですね。「バンドやろう!」「OK!」ってなって、いざ入ってみたら「ミヤケ、シンセサイザー弾いてみようか」って言われて。「僕、弾いたことないんですけど」って言ったら、「こうやれば音が鳴るから!」って(笑)。

ははは、その時点でピアノの嗜みもなく?

ミヤケ:そうですね。いままで鍵盤というものをやったことがなく。

コイブチ:彼は音楽を広く聴いている人なんですよね。海外のバンドって、メンバーがいろんな楽器をやっていたりするじゃないですか? 楽器経験のあるなしに関わらず、表現の手段として。そういう役割というか、場所になる人が一人いなくちゃなと思って、それなら彼しかいないとお願いをしました。なんでも任せたみたいなところがありますけれども(笑)。

へえ。ミヤケさんは「どんな音楽が好きなんですか?」って訊かれたらなんて答えます?

ミヤケ:邦楽ならスーパーカーですね。あと、ベースの(マコト・)ニシザワとかカワマタとかと共通して好きなのはシューゲイザーですね。

なるほど、それは若干反映されていますよね、シューゲイジンな雰囲気が。

ミヤケ:3人がほんと、めちゃくちゃ好きなんですよ。

カワマタさんなんて、めちゃめちゃ歪ませてやりたい、みたいな欲求とかないんですか?

カワマタ:もうずっとリヴァーブかけてますよ。そういう曲も何曲かあるんですけど、元気になっちゃいますね(笑)。

(一同笑)

もうずっとリヴァーブかけてますよ。そういう曲も何曲かあるんですけど、元気になっちゃいますね(笑)。(カワマタカズヤ)

そういえば歌詞で「slow dive」(“dive”)って出てきませんでした? あれはスロウ・ダイヴなんだ。

ミヤケ:そう……ですね(笑)。

コイブチ:まあ、別々の単語のイメージなんですけどね。

あれ、そうでもなかった(笑)。わかりました。ではベースのニシザワさん。ニシザワさんはどんなふうな経緯で?

マコト・ニシザワ(以下ニシザワ):僕はコイブチさんの後輩なんですけど、4歳くらい下で。だから自分は3人よりはコイブチさんと関わる機会がなかったんですけど、前のバンドのSTELEOGRAMのライヴを観に行って、初めて話したんです。その後ツイッターとかでもやりとりしたり、お互いに機材が好きなのでそんな話をしたりもして。そんな中でバンドやろうというメールが来たんです。最初は誰が何をやるというのもぜんぜんなかったんですけど、「ベースやる?」みたいなことになり(笑)。ギターもやったことはあったんですけど、ベースからはじめたこともあって、ベースに決まったときには「よかった!」って思いました。

ダンス寄りのバンドであればあるほど、ベースの役割もすごく重要になりますよね。プロダクションもとてもクリアにベースを出しておられますけど、これはどなたかのディレクションなんですか?

コイブチ:ベースとドラムについてはすごくこだわってて、クラブ・ミュージックとの融合というか、普通のポップ・ミュージックの歌メロとクラブ・ミュージックのよさを混ぜ合わせたい──そう思うとベースとリズムに焦点が当たりますね。僕自身がベースの音が好きで、曲の中で全体を支えてまとめる存在だと思っていることも反映されていると思います。あとは、彼に与えた最初の試練でもありました。彼はピッキングしかやったことがなかったんですけど、「マーキーっていうのは指弾きの音楽だから」って(笑)、指弾きだけしかやっちゃダメって言ったんです。

ニシザワ:大学時代にコピーをやっていたときは、ナンバー・ガールとか、パワー重視の演奏をやっていたんですけど、指弾きはやったことがなかったんですよね。

じゃ、指弾きのコンセプトには惹かれるものがありました?

ニシザワ:ブロック・パーティとかMGMTとかも好きなので、そうですね。

初めて海外のいろんなサウンドに触れた感じ──「こういうものがあるんだ!」って驚いた感覚をマーキーにも出していきたいんです。(コイブチ)

なるほど、パッと聴いたときに思い浮かべるのはパッション・ピットとか、あとフレンドリー・ファイアーズとかなんですけど──

コイブチ:ああ、そうですねえ。

あるいはチルウェイヴとか、男女で大所帯ってところだとロス・キャンペシーノスとかね。なにか、2008年前後の音楽に感じていたときめきがいっぱい詰まっている感じがするんですよね。そのあたりの時期って、やっぱりリスナーとしても濃い体験があったんでしょうか?

コイブチ:そうですね、僕がほとんどの曲のディレクションとかをやっているんですけど、僕は2008年から2010年にかけての音楽シーンっていうのがすごく好きで、ちょうどその頃はロックとエレクトロニックなものが混ざっているんですよね。僕自身、それは大学に入って音楽を広く聴きはじめた時期でもあって、初めて海外のいろんなサウンドに触れた感じ──「こういうものがあるんだ!」って驚いた感覚をマーキーにも出していきたいんです。それがそういうあたりが音に出ているとすれば、狙いでもあり、自然で必然的なことでもあるんですよね。

なるほど。単純にマネしてできるものというよりは、いまおっしゃったような憧れみたいなものの手触りが生々しく感じられますね。一方で、たとえばフレンドリー・ファイアーズなんかはその後もうちょっとハウスっぽい方向に行きますけど、みなさんは少しファンクっぽいところでやってますよね。このあたりは何なんでしょうね、時代性?

コイブチ:それはあるんじゃないですかね。あとは、コンセプトをあんまり曲げたくないというか、変化していくことは大事ですけど、あれもこれもやるような急激な変化はできないなと思っていて、僕はやっぱり最初のときめきを大切にして突き詰めていきたいですね。あとは、6人の共通項もそこで、自然に音をならすとこうなるんです。それがブレないところですかね。

みなさんの嗜好なんですね。

MARQUEE BEACH CLUB 『Flavor』 / Album Trailer

「マーキー」も「ビーチ」も「クラブ」も、全部人が集まるところを指す単語なんですよね。結果的には僕らのバンドの展望というか、僕ら自体がひとつの場所になればいいかなってイメージかもしれないです。(コイブチ)

ところでバンドの名前なんですけど、他誌さんのインタヴューで由来をちらっと見かけまして。「マーキー」っていうのは〈フジロック〉のステージ名から、「ビーチ」っていうのは、なんかバカみたいから(笑)。

ミヤケ:そうですね(笑)。

はは。で、「クラブ」っていうのはどうしてもつけたかった、と。

コイブチ:親しみやすいし、その頃のバンドに「クラブ」ってつくものがいくつもあったし……ただ、そういう風潮がありすぎてちょっとどうしよう、みたいな感じになっちゃいましたけれども。

まあまあ(笑)。でも、クラブにどんな思いがあったのかなって思って。だって、みなさんはクラブ遊びをするって感じでもないじゃないですか。

(一同笑)

イシカワ:わりと静かな人たちです。

わりと静かな人たちですよね? だから、「クラブ」って言葉にどんな思いとかイメージを乗せてたのかなと思って。

コイブチ:そういう言葉への憧れがあった部分はあると思うんですけど、なにかしっくりきたんですよね。けっこうめぐりめぐって落ち着いた名前ではあって。「マーキー・ビーチ」は決まっていたんですよ。それで最後の言葉を探していたんです。最初の候補に「クラブ」があったものの一回ボツになって、また戻ってきた名前なんですね。

へえ。「部活」とかに近いニュアンスでもなく?

コイブチ:ははは。後付けではありますけど、「マーキー」も「ビーチ」も「クラブ」も、全部人が集まるところを指す単語なんですよね。結果的には僕らのバンドの展望というか、僕ら自体がひとつの場所になればいいかなってイメージかもしれないです。僕らはマーキー・ビーチ・クラブっていう名前を通して音楽を演奏する。そこに映像作家とか写真家とかが来て、僕らという場所を通して何かを発信していく。そういう感じになっていけばいいなって思っているので、結果として「クラブ」でぴったりきましたね。

歌詞の世界観としては、どこに脱出するわけでもなく、かといってここにいるわけでもなくっていう、不安定なものを歌っているでしょうか。アップ・ダウンの中間あたり──日常みたいな部分を地道に行くことで、いつかいい景色が見れるだろう、というか。(コイブチ)

なるほど、ひとつの社会の単位なんですね、きっと。一方で、詞を見たりすると、「クラブ」にこだわるわけじゃないんですけど、やっぱりナイトライフ的なものへの言及が出てくる。朝まで踊ろう、みたいなことが歌われるでしょう? フレンドリー・ファイアーズの「パリス」じゃないですけれども、そういう夜のクラブと音楽の高揚感みたいなモチーフが出てくるのはなぜなのかなと。

コイブチ:音像とかにはやっぱり憧れる部分はありますね。クラブでは遊ばないんですけど、僕らのフィルターを通したダンス・ミュージックへの憧れはあって、そういうものが詞にも反映されるのかもしれないですね。

歌詞っていうところではもうひとつ、「ユートピア」ってコンセプトも何度も出てきますよね。これは……なにか脱出願望があるんですか?

(一同笑)

いやマジに(笑)。かと思えば、まさに“utopia”って曲では、べつにユートピアも信じてないみたいなことが歌われるじゃないですか(「I do not believe in utopia」)。

コイブチ:そうですね……。歌詞の世界観としては、どこに脱出するわけでもなく、かといってここにいるわけでもなくっていう、不安定なものを歌っているでしょうか。アップ・ダウンの中間あたり──日常みたいな部分を地道に行くことで、いつかいい景色が見れるだろう、というか。僕は日常に寄り添った曲を書きたいので、歌詞によってばらつきがあるのもそのせいなんですよね。そこにいたい、変わらない生活をつづけていきたい、みたいな気持ちの中で書いているので、どっちにも振れないのはそのせいかもしれないです。

へえ。まんま“escape”って曲もありますけど、そう逃避願望があるわけでもないと。

コイブチ:そういう気持ちも抱いている、その瞬間も切り取っているという感じでしょうか。

そうか、何かどこに行っても何もないみたいな、クールな現実認識の下に書かれているのかなと想像させる部分があるんですけどね。

イシカワ:そういう部分もあると思います。その中で自分がどうやっていくか、動いていくか、ということなんですよね。もちろん聴き手によって解釈が変わっていいように話しかけてはいるんですけどね。

めちゃくちゃざっくり言えば、大変なこともたくさんあるけど、なんとかなるさって。そこで楽しいことを見つけていこうって……。(イシカワヒロヒサ)

では、個人的な展望としてはどうですか? この世界は。

イシカワ:めちゃくちゃざっくり言えば、大変なこともたくさんあるけど、なんとかなるさって。そこで楽しいことを見つけていこうって……前向きかと言われればけっして前向きというわけでもないんですけどね。けど、後ろ向きというのも個人的にはあんまり好む考え方ではなくて。そういう意味で本当に中間なんですよね。

コイブチ:レット・イット・ビーなんだよね(笑)。

イシカワ:そうだね(笑)。聴き手の中で、それぞれはっとしてもらえる歌詞ならいいなって思います。解釈はちがっていてもいいけど。そういうものを提示できたらうれしいですね。

そういう感覚はみなさんで共有されているものなんですか? 歌われる内容については何か協議があったりします?

コイブチ:僕が歌詞をつくっているんですけど、メンバーにはそんなに多くは説明しないんですよね。説明しちゃうと僕の曲になっちゃう。僕はみんなにそれを強要するわけじゃないし、みんなの曲にしたいので……。たぶんそこを説明しないことでバラバラな詞になっているのかもしれないですね(笑)。

なるほど、逆にみなさんからフィードバックがあったりします?

コイブチ:「こういう曲ですか?」って、妄想をふくらませて訊いてくるひともいますけどね(シマダさんを見ながら)。

(一同笑)

[[SplitPage]]

世界観を強要してしまうと、音がオープンではなくなるのかなって。音楽に関して言えば、オープンでいたほうがよりよいものができると感じます。コンセプトに向かっていくよりも。(コイブチ)


MARQUEE BEACH CLUB - Flavor
Pヴァイン

Electro PopIndie Rock

Tower HMV Amazon

妄想って、ストーリーみたいな部分で?

コイブチ:ストーリー的な部分ですね(笑)。あとは、みんなから返ってくる音の感じで、ああ、こんなふうに解釈しているのかなって思ったりします。僕個人としてはそれがすごくおもしろいし、それがMARQUEE BEACH CLUBかなって思いますね。たぶん、ここで世界観を強要してしまうと、音がオープンではなくなるのかなって。音楽に関して言えば、オープンでいたほうがよりよいものができると感じます。コンセプトに向かっていくよりも。

なるほど、それはひとつの真理ですね。オープンなことが、むしろみなさんの音が構築される条件だと。

コイブチ:そうですね。マーキーの曲は、ライヴでどんどん変わっていくみたいなところもあって。それはお客さんから返ってくるものに対してどう投げていくかということでもあります。そうやって曲がみんなの求めるかたちになっていくというか。
でも、リズムには本当に意識を置いているので、曲はまずイシカワに投げるんですよね。そしたら、渡したものと180度違うものが返ってくる(笑)。

イシカワ:こういうリズムはどうですか? っていう問いかけですね(笑)。

コイブチ:やっぱり僕はドラムじゃないんで、わからないことも多いし、新しいフィードバックがうれしいですね。

それは楽しそうですね。ニューオーダーなんかだと、ドラマーのスティーヴン・モリスはそのうち叩くのをやめて打ち込みはじめるわけですけれども、そういう方向はとくに見えてないんですか(笑)?

イシカワ:いや、打ち込みは憧れはありますけどね。ツマミをいじってみたい。僕はシガー・ロスとかも好きなので、ドラムを叩きながら鍵盤とかもできたらいいなと思いつつ、でもまあ、まずは僕のMARQUEE BEACH CLUBでの役割──ドラム・セットでのリズムなのかなと思って。生でのリズムなのかなと。そこはいちばん根底にあるものとして考えたいですね。

歌い方もずいぶん変わったと思います。自分を残しておきながらも、マーキーに……コイブチさんに寄せていくにはどうやって歌えばいいんだろうって。(シマダ)

妄想型のシマダさんは(笑)、でも萌えヴォーカルとかアイドル・ヴォーカルが主流の中、まっすぐ伸びる声ですよね。たとえばダーティ・プロジェクターズのエンジェル・デラドゥーリアンとかみたいに。

シマダ:そういう、息がいっぱい入ったような声のヴォーカルもすごく好きなんですけど、自分が歌うとなるとちょっと違うというか。

なるほど。声楽をやっていたとか?

シマダ:いえ、単に歌うのが好きで、年中歌ってたんです。

ソロでのご活動ではどんな形態だったんですか?

シマダ:ギターと声で……弾き語りですね。

へえ、ソングライティングもされるんですね。じゃあ、MARQUEE BEACH CLUBの音楽って、ずいぶん文法がちがうんじゃないですか?

シマダ:新鮮でした(笑)。歌い方もずいぶん変わったと思います。自分を残しておきながらも、マーキーに……コイブチさんに寄せていくにはどうやって歌えばいいんだろうって。だからクセも減ったと思いますね。

クセをなくした?

シマダ:いや、クセを突き詰めていってなくす、みたいな感じですかね。尖ったものをまるくするというか。

コイブチ:コントロールできるようになったってことだよね。

シマダ:シンガーソングライターとして活動しているときはぜんぜんそんなことはなくて、いつもどおりなんですけどね。

コイブチ:本当に、二つの声で一つのヴォーカルという感じなので、デモの段階ではアスカちゃんだけが歌っているところもあるんですけど、なんかそれだとマーキーじゃないねって感じになって。僕だけでもやっぱりマーキーではなくて、二つがハマったときなんですよね、あくまで。

どことなく合成されているような感じすらしますからね。それこそシンセサイズということですが。

コイブチ:そうですね、合わさらないとダメですね。

MARQUEE BEACH CLUBのいまの音を詰め込みつつ、いろんな色や匂いを出せればと思って……。(コイブチ)

ところで、ジャケットのアートワークについてもおうかがいしたいところですね。それこそトゥー・ドア・シネマ・クラブとか、ヴァンパイア・ウィークエンドとか、あるいはシーヴズ・ライク・アスとかを連想させます。

コイブチ:やっぱりそのあたりのバンドへの憧れも反映されていると思うんですけど、ソロ・プロジェクトではじめたときから、自分の日常を切り取ったものとか、好きなものをアートワークにしたいと考えていたんですよね。僕はわりと山とかへ写真を撮りに行ったりするのが好きで、花や自然を出すのがいいかなって感じたんです。そういう自分を取りまくものと撮りたいものの中心にいたのが花だったというか。

へえ。でも、けっして道端の花ではないじゃないですか? このジャケをして日常だと言われると、ちょっとすごい日常ですよ。

コイブチ:ははは。

完成された世界観があるじゃないですか。これはある種のユートピア観なのかなと……まあ、ユートピアの不可能性なのかもしれないけど(笑)。

コイブチ:そうですね、それはあるかもしれません。今回のアルバムは、いつも僕らを撮ってくれているカメラマンの瀬能啓太くんといっしょにイメージをふくらませたもので、その粋がこの世界観になったのかなと。ジャケットでもリスナーに語りかけられるようなものにしたいなと思っていたら、こういうかたちにまとまりました。

いろんな種類の花が溢れてますからね、これも「クラブ」っていうイメージに重なるようにも思いますね。

コイブチ:今回のアルバム名が『フレーバー』なんですけど、MARQUEE BEACH CLUBのいまの音を詰め込みつつ、いろんな色や匂いを出せればと思って……そんなこともあっていろんな花を散りばめましたね。

なるほど、いろんなものがあるけど統制がとれてる感じとか、細部が考えられていてつじつまが合ってる感じとか、いまらしいのかなとも思うんですが。バンド自体にもトラブルやケンカもなく?

コイブチ:そうですね……(笑)。

これが社会だったらいいのにね。

ミヤケ:ユートピア……。

いい意味で遊びの延長になればいいなっていう感じかな。ジャケットの写真家の瀬能くんとかも、音楽の話だけしているわけじゃなくて、展示もできたらいいですよねっていうこととか、あるいはこういうものを僕らのバンドに入れられたらいいよねとか。(コイブチ)

ははは! ほんとにね。6人いたらすでに社会ですけども。

コイブチ:僕らは〈utopia〉っていうイヴェントをやっているんですけども、それは僕らの中にあるものとか、好きなものをその空間で表現するというものなんです。呼ぶバンドにしても、「こういうイヴェントでこういうセットでやりたいな」っていうところで選んでお願いしているという感じで。そうやって、好きなものをきゅっと集めてやっていると、意外と闘わないというか。「いいよね」っていうのが重なった延長でやっているんですよね。ひとつのゴールに向かってやっていると、ああでもない、こうでもないってなって摩擦が生まれると思うんですけど、わりと自然な流れの上で出会って、音楽をつくっているので、まとまるんでしょうね(笑)。

へえ、そんなふうに音楽をつくっていく上で、5年後、10年後の姿って想像できたりします?

カワマタ:MARQUEE BEACH CLUBっていう根底にあるものは、基本的には変わらずに、でも進歩はしていて、楽しく新しいことをいろいろ巻きこんでやれたらいいなって思ってます。

すごくポジティヴでいいですね。

コイブチ:いい意味で遊びの延長になればいいなっていう感じかな。ジャケットの写真家の瀬能くんとかも、音楽の話だけしているわけじゃなくて、展示もできたらいいですよねっていうこととか。あるいはこういうものを僕らのバンドに入れられたらいいよねとか。そのへんは遊びの延長で考えている部分もあるので、そんなことを考えていける輪が広がればいいのかなって思います。フィルターの中心になれればと。

その輪が、MARQUEE BEACH CLUBっていうコンセプトでもあるのかもしれないですね。自然にそういう場所になっていければ、ということなのかな。──マーケットみたいな部分は意識しますか?

コイブチ:残るものをつくるには、そういうところとの絡みは課題でもあるかもしれませんね。でも、僕らは表現者としてひとつ突き詰めていけばいいだけだと思うんです。その道のプロになれれば。あとはエンジニアとかがそういう地平へ寄せてくれたりするものだと思うんですね。もちろん、広い人たちに聴いてもらうという意味では、考えぬいていこうとは思いますけどね。音楽をつづけていく上で。……でも、答えを出すのが難しいな。

僕らは表現者としてひとつ突き詰めていけばいいだけだと思うんです。その道のプロになれれば。あとはエンジニアとかがそういう地平へ寄せてくれたりするものだと思うんですね。(コイブチ)

メーカーのインフォメーションとかには、わりと明確なメッセージとして「消費されたくない」ってことが謳われてますね(「音楽を消費される商品でなく、愛される作品に」)。

コイブチ:いまはネットですごく簡単に音楽が聴けてしまうので、もうちょっと重いものというか大事なものにしたいと思ってますね。商品としてではなくて、作品としてのクオリティをつくっていきたいなと。アートワークもしかりで、誰かにCDを貸すとか、盤を買ったときの感動とか、そういうものを僕らと同じ若い人に広げたいなと思っているんです。僕自身が、CDとかレコードで音楽を聴くことのほうが多いんで……。だからそういうところの文化を残さなきゃって思ってます。そこにマーキーが入っていけたらいいですね。

「残る」っていう部分でアナログ志向を語られる方は多いですけれども、みなさんがおもしろいと思ったのは、そうやって「残す」ために、男女で歌うとかメロディを強くするってふうに思考されるところですね。それって、つまり記憶というメディアが最強だというか、みんなの耳に残すことが一番だろっていう考え方なのかなと思いまして。                                              
コイブチ:メロディはやっぱりすごく大事なものだと思っていて、覚えやすいものにしたいというのは意識していますね。鍵盤を見ながら、わざわざ音の数を減らしたりもしていて。ルールを設けてつくってはいるんですよね。オクターブに上下するのはいいんですけど、オクターブの中で音の数を減らしていったりとか。

リフレインも多いですよね。憶えちゃう理由はそのあたりも大きいというか。

コイブチ:1番と2番の歌詞が同じだったりしますしね。最低限のことしか言わないようにしているという部分はあると思います。曲のメッセージ性というところでは、大事なことは何回も言ったほうがいいということもあるかなと(笑)。海外のアーティストとかもそうだと思うんですよね。日本のアーティストだと、歌詞がいろんな方向に流れて、ストーリー性に重点が置かれる感じがするんですけど、それよりはもっと強い一単語で何回でも言ってもいいと思うんです。けっこうそこはオープンな感じで考えていて、伝われば何でもいいかなと。そういうところを大事にしていますね。

そこのことがリズムも生み出していますしね。

コイブチ:それも大きいですね。

僕自身がリスナーとして海外の音楽を聴くときに、それぞれのルーツをたどって新しい発見をしたりするように、マーキーの今後のアルバムも世界の音楽を取り入れていって、リスナーの視野を広げていっていきたいというか。(コイブチ)

あと、脱出の呪文みたいにも聞こえますよ(笑)。2008年頃を特徴づけたトレンドとして、チルウェイヴみたいな音には逃避のモチーフもあったわけなんですけど、世界の中で、マーキーの音楽はどんなふうに鳴っていてほしいですか?

コイブチ:イメージとしては、僕らのアルバムを聴けば世界の音楽がわかるというか。MARQUEE BEACH CLUBの音楽を通して、リスナーの方々に世界のいろんな音楽が伝わるようなものを目指したいですね。貪欲な感じになっちゃうんですけど、そんなふうにしたいです。僕自身がリスナーとして海外の音楽を聴くときに、それぞれのルーツをたどって新しい発見をしたりするように、マーキーの今後のアルバムも世界の音楽を取り入れていって、リスナーの視野を広げていっていきたいというか。……上から目線な発言になっちゃいましたけど(笑)。

その「世界」というのは、ワールド・ミュージックという意味ですか?

コイブチ:そうですね。いいと思ったものはどんどん取り入れていきたいと思っていて、今回のアルバムもそうなっているので、その輪をもっと広げたいですね。僕ら自身ももっと勉強していきたいですし。

へえ、ワールド的な興味がどんなふうに吸収されていくのか楽しみです。ちなみに水戸には地元のシーンみたいなものがあるんですか?

コイブチ:ギター・ロックみたいなあたりが根強いシーンですけどね。「水戸ロック」っていう言葉があったりもして。だから、その中ではマーキーってわりと突然変異というか……。でも最近は、僕たちの後輩とか、わりとシンセを使ったりするバンドも出てきました。

へえ。それはきっとみなさんの影響なんでしょうね。最初に活動をはじめられたときは、まずは地元で、っていうスタンスだったんでしょうか? 東京でいつか活動する前提で?

コイブチ:ゆくゆくは東京でやりたいっていう気持ちからはじまってはいますね。もともとは僕のソロ・プロジェクトだったわけですけど、その時点で頭の中では「メンバーはこの人たち」って決まっていたんで、このバンドがバンドとして固まったら、音源もリリースして東京に出ていこうと思っていたんです。だからイメージとしてはこのバンドが正式なかたちというか。で、早耳……と言ったらちょっと思いあがった感じに聞こえますけど(笑)、僕たちを見つけてくださった方がいて、東京に出てきたんです。出てきてみたら、すごくレスポンスが早かったので、じゃあ東京でやっていこうと。だから、思ってたより早くこっちに来れた感じですね。

では音源が話題を集めたというよりも、現場での演奏がアピールになった?

コイブチ:同時ですかね。ユーチューブに上げた音源を聴いてくれた人が誘ってくれたんですよ。聴いてくれる人たちに届いたなって感触があったのがライヴですね。ライヴに来てくれたお客さんたちが、「いいね」って広げていってくれた感じです。

それは理想的ですね。しかし、あんまり地域性を意識して出てきたバンドというわけではないんですねぇ。音もそうですけど。

コイブチ:そうですね……ただ、水戸に住んでいて水戸から発信しているバンドだっていうことは大切にしたいんですよ。自然体でいたいので。東京のバンドだよってふうにはできないですね。そこは捨てたくないとこでしょうか。

なるほど。そこも自然なスタンスを感じますね。

僕は“escape”ですかね。超簡単にまとめると、いま夏なんで(笑)。(ミヤケマサノリ)

僕は“white”です。これまでとはちょっと違った感じのベースを弾いてて、レコーディングに苦労したこともあったり──ライヴでもキメたいですね。(マコトニシザワ)

それでは、最後にこのアルバムの中から、みなさんの好きな曲/それぞれの役割として思い入れのある曲を教えていただけますか?

カワマタ:僕は……“dive”ですね。

おお! 私も“dive”が好きです。ご自身の役割として何か思い入れが?

カワマタ:音源だとそこまででもないんですけど、最後の単音のトレモロピッキングのところはライヴだと爆音なんで(笑)。そこはライヴ補正というか。あとは曲としてもけっこうダウナーな感じで好きというか。

そうですね、ローファイな手触りもあったりして。なるほど。イシカワさんは?

イシカワ:“wonder”ですかね。ミドル・テンポの四つ打ちが好きで。中でもこの曲は、歌詞だったりメロディだったり、ギターのリフだったりも僕の中でとても噛み合っているんですよ。自分が曲になっている気分になるというか……ドラムを叩いていることを忘れるんですよね。どの曲もそうなんですけど、この曲はとくにそうなんです。本当に楽しくて、気持ちよくて。

へえ、その感じ方はいいですね。これもリフレインが印象的で、聴いた後も粘っこく耳に残ってくる曲ですよね。ミヤケさんはどうですか?

ミヤケ:僕は“escape”ですかね。超簡単にまとめると、いま夏なんで(笑)。

(一同笑)

ミヤケ:この清涼感というか、爽やかな感じが気持ちいいなと……超アタマ悪いですよね。

あはは! でもこれは、このアルバムのいくつかの要素の中で、「踊り明かそう、朝までいっしょにいよう」ってサイドの曲の代表ですね。アタマじゃない。ニシザワさんは?

ニシザワ:僕は“white”です。まだライヴでやったことないんですけどね。これまでとはちょっと違った感じのベースを弾いてて、レコーディングに苦労したこともあったり、個人的にも思い出のある曲です。ライヴでもキメたいですね。



“eye”ですね。僕らをここまで連れてきてくれた曲です。

なるほど、CDで表現できなかったことがまだやれそうですね。シマダさんは?

シマダ:決められなくて……。

自分の仕事として思い出深いものを教えていただければ。

シマダ:あ、それなら、歌ってて最高だと思うのが“pattern”。

それは、最高でしょうね(笑)。

シマダ:はい。コイブチさんとの掛け合いというかバランスというか、歌っていてすごくハマるんですよね。わたし、この曲ではパーカッションをやってるんですけど、チャカチャカってやってるだけでとっても楽しいんです。“city”も同じく、カウベルとかいろんな打楽器を叩くんです。でもとにかく曲が好きで、好みで。映画っぽいんですよね。初めて聴いたときになんてかっこいいんだって思って、それからずっと好きなんです。

なるほど。ここで出てくる海とかネオンなんかも、たしかに映像的ですね。ストーリーも感じさせる。どこにもない、一種の憧れのイメージとしての海、という感じがします。では、コイブチさんにもおうかがいしましょう。

コイブチ:“eye”ですね。僕らをここまで連れてきてくれた曲です。バンドがはじまって2~3ヵ月くらいの頃につくったもので、マーキーの方向性を提示できた曲でもあるかなって思います。最初はちょっと尖っちゃってた部分もあって、チルウェイヴっぽい感じでいきたいなという発想もあったんですけどね。でも“eye”が仕上がったときに、バンドが大きくなるなって感じました。

なるほど、バンドのステージを上げる曲だったと。

コイブチ:だと思います。あとは、全員のキャラがぎゅっと詰まってる曲なんですよね。ひとりひとりの持ち味が出てる。だから僕が挙げるのは、やっぱり“eye”ですね(笑)。

MARQUEE BEACH CLUB 1st Album『Flavor』発売記念アウトストアLIVE

日程:9月3日(土)
OPEN 14:30 START 15:00
会場:KATA[LIQUIDROOM 2F] https://kata-gallery.net/
〒150-0011 東京都渋谷区東3-16-6 LIQUIDROOM 2F

参加方法:アウトストアチケット(入場券)をお持ちのお客様に限り、イベント当日、会場にご入場頂けます。イベント参加費用は無料です。

お問合せ先: P-VINE RECORDS 03-5784-1250

MARQUEE BEACH CLUB 1st ALBUM「Flavor」
WONDERVER 1st ALBUM「FLASH」
ダブルレコ発 2マン

日付:2016年09月23日(金)
場所:下北沢GARAGE
時間:open 19:00/ start 19:30
料金:adv¥2,500/day ¥3,000
LIVE: WONDERVER / MARQUEE BEACH CLUB

チケット:
・プレイガイド 8/4~発売
イープラス https://sort.eplus.jp/sys/...
・各バンド予約
・ライブハウス店頭

WALL & WALL - ele-king

 渋谷のコンタクトみたいなキャパのヴェニューって良いよね。あのぐらいの大きさが、うちらみたいな音楽が好きな連中にはちょうどいいい。で、来たるべく9月、表参道にWALL & WALL”(ウォールアンドウォール)が誕生する。最高峰の音響を味わえる、多目的スペースだ。
 表参道駅から徒歩1分という好立地にオープンするWALL&WALLは、総面積70坪、収容人数400名の、2フロアで構成されるイベントスペース。
 メインフロアには、世界初となるアルミハニカム平面駆動ユニットを採用した新機構スピーカーが設置され、サブフロアにはDJイベント、物販スペース等、様々な要望に対応できるよう設計されているとのこと。
 最新鋭・最高峰の音響ではどんなイベントが企画されているのだろうか、注目しよう。

正式名称:WALL&WALL
読み:ウォール アンド ウォール
総面積:233.5m² / メインフロア:89.6m² / サブフロア:33.9m²
所在地:〒107-0062 東京都港区南青山3-18-19 フェスタ表参道ビルB1F
TEL:03-6438-9240
OFFICIAL HP:wallwall.tokyo
お問い合わせ:info@wallwall.tokyo


ANDERSON .PAAK - ele-king

 西海岸の才人が日本にやって来ます。昨年8月に発売されたドクター・ドレーの復帰作『Compton』に6曲参加し、大きく注目を集めたアンダーソン・パークが、渋谷WWWXのオープニング・シリーズに登場、まさに待望の初来日公演だ!
 アンダーソン・パークといえば、今年1月には、シンガー、ラッパー、プロデューサー、ドラマーとして、その才能をいかんなく発揮した『Malibu』を発表。さらに、トラックメイカー/プロデューサーであるノレッジとのスウィート・イルネスなユニット、ノーウォーリーズのアルバムを完成させたということで、今回の来日公演は脂の乗ったパフォーマンスが期待される。
 今回は自身のバンド、ザ・フリー・ナショナルズを引き連れての公演ということで、ゴスペル・ミュージックを通過した、アンダーソン・パークのドラミングにも注目したい。最先端の生のビートを聴かせてくれるはずだ。

KOHH - ele-king

 プレイボタンをクリックすると、聞こえてくるのはナチュラルに歪んだエレクトリックギターのアルペジオ。あなたはニヤリとするだろうか。それとも、狐に摘まれたような表情を浮かべる? KOHHはブルー・ハーツやカート・コベインからの影響を公言している。そして前作『DIRT』の“Living Legend”などで披露していたのは、喉が裂けんばかりのシャウト。繰り返される自分はヒップホップアーティストだと思っていないとの発言。遂にサウンド面でもロックに舵を切るのか。そのように連想するのが自然かもしれない。しかしわずか4小節、16秒ばかりで、そのアルペジオは残響音を残しながら呆気なく途切れる。そして聞こえてくるのは鐘の音だ。半音ずつ高くなったり低くなったり。一体誰のためにこの鐘は鳴らされる?

 かつてないレベルでディストーションがかったKOHHのヴォイスは、同じくらい歪んだギターサウンドを呼び寄せる。トラップ・サウンドとディストーション・ギターのミックスに、彼の歪んだヴォイスはいつになくフィットする。しかし渾身の「ダーイッヤァァーーーーーーンッッ」という叫びのテンションが頂点に達すると同時に、ビートまでもがドラムマシンのTR-808ライクなハットが乱打されまくるトラップサウンドから生ドラムに取って代わられる。そして再び鳴り響く鐘の音。歪んだギターサウンドにラップに鐘の音。この風景には既視感がある。1983年リリースされた映画『ジャッジメント・ナイト』のサントラの1曲目、ヘルメットとハウス・オブ・ペインが共演した“Just Another Victim”に、僕たちはミクスチャーと呼ばれるヒップホップとハードコア/メタルの融合体の原風景を見なかったか。

 イントロの冒頭からわずか1分半のこの間にさえ、僕たちは何度も予想外の展開に裏切られ続ける。そして僕たちは気付かされる。このサウンドは「ミクスチャー」という呼称がいつの間にか纏ってしまった「どっちつかずで中途半端である=ヤワである」ことを言外で示すようなものではなく、ガチであると。『ジャッジメント・ナイト』やアイス-T率いるボディ・カウント以来悲願であった、ラップとハードコア/メタル両者の単なるミックスではなく、ガチな境界の無効化を、彼は軽々とやってのけるのだ。

 そしてKOHHは自身の言葉をも、故意にせよ過失にせよ、簡単に裏切って/乗り越えてみせる。“Business & Art”で「ラッパーなんかじゃない」と歌いながら“I Don't Get It”では変則的な譜割りのラップ・スキルを見せつけ、「I'm not a rockstar」と高レベルでヴォイスコントロールされた地声で呟きながらも“Die Young”のMVでは誰よりもロックスター然とした輝き方をしてしまう。そう、KOHHはかつて降神が「ロックスターの悲劇」で歌った「もう誰も喋れない」状況を見事に裏切ってくれる。才気溢れるアーティストたちは僕らを何度でも裏切る。ラストの「Hate Me」では不敵にもコインの裏表の関係にあるファン/ヘイターの裏切りを称揚している。KOHHの言葉もまたコインの表裏を行き来するが、それが嫌なら「殺せるもんなら二度殺せ」と呼びかける。一度目はコインの表面のKOHHを、そして二度目はコインの裏面の彼を殺せと言わんばかりに。

 イントロ込みで全9曲、32分弱で駆け抜けるディスク1は、生死を歌った楽曲が13曲中で約半数を占めた前作『DIRT』の続編であり、今作でも“Die Young”“Born to Die”といった楽曲群では同様に死がモチーフとなる。“Die Young”は1980年にロニー・ジェイムス・ディオ時代のブラックサバスが残した名曲のタイトルでもある。メタルの持つ様式美を象徴するような同曲。KOHHは自らのスタイルがそのような様式美に陥ることを、徹底的に回避しようとしているようにも見える。自らの露悪的な屈折したリリック群は「ドブネズミの美しさ」のように存在感を誇示し、様式美には回収されない。

 それは、本作で抒情的な旋律やコード進行を捨てていることからも明らかだ。かつての“Real Love”や“I'm Dreamin”のようなメロディアスなビートに乗せたラブソングや身近な生活に見出すある種の抒情を綴る歌はここにはない。不穏な旋律をメインに据えること。不協和音のワンコード/ループで突き進むとは、言葉の自立性を誇示しているに等しい。誰にも媚を売らず、自らをも裏切りかねない言葉の自立性を。ここにはかつて彼が描いていたような生活感はない。彼は音楽に対して、自らを尽くしている。

 さらに、本作を象徴する裏切りの発露は「暗い夜」に顕著だ。この曲を聴いていると、数年前、バンコクのスワンナプーム空港まで向かうタクシーの中、深夜の街並みを背景にローカルラジオ局から流れて来た楽曲群を思い出してしまう。ここにあるのは如何にもオリエンタルな旋律なのだが、それはアジアのどこかの国のカラオケで、現地語で歌われるところが想像されるような、ローカル感溢れるオリエンタリズムだ。もちろん共演のジャマイカン、Tommy Lee Spartaからインスパイアされた部分も大きいだろうが、このメロディの音符を選んだのは確かにKOHHなのだ。彼にとって異国のメロディ、アウェイの音符を拾い上げるのは難しいことではないのだろう。本来アウェイであるはずのハードコアトラックにヴォーカルを乗せるのも「ラッパーなんかじゃない」彼にとっては簡単なことであるように。

 この曲で僕たちに提示される情報量は少ない。“静かな暗い夜”と“お腹にナイフ”の二つのフレーズが先導する文字数の少な いKOHHのヴァース。これはロックなどに比較して言葉数が極めて多いラップ曲のフォーミュラを裏切るものであることは自明だ。しかしKOHHは言葉少なげに朗々と歌い上げ、静かな暗い夜”と不気味に光る“お腹にナイフ”の対のイメージを立ち上げている。あるいは、言語の国境やジャンルのボーダーを軽々超え、アウェイな環境の腹部に突きつける彼の才覚こそが、この「ナイフ」なのではないか。

 締めの1曲“Hate Me”で彼は「俺のこと好きになるなよ/まずあんたに興味ない/好かれるより嫌われたいから綺麗事は嫌い」と歌う。このKOHHのラインから遡ること17年前、Nasは彼のサードアルバム『I Am...』収録曲の“Hate Me Now”で「俺を憎むな/俺の視線先にある金を憎め/俺の買う服を憎め」と歌った。Nasはこの曲において、Puff Daddyをフューチャリングすることで自身の商業的な成功を示しつつ、その成功を齎した彼のリリックと音楽が如何に偉大なものかであるかを誇示したのだ。ポップになった/金の匂いがするといった批判に対して、Nasはある種の開き直りをもって対抗した。

 KOHHの立ち位置はこの延長であると同時に、それが行き着く隘路をも軽々と越えてみせる。Nasのリリックにおいて問題視されていた、成功したMCがどのような現実を歌い得るかという従来の問題設定は、KOHHにおいては「地獄までサイフは持ってけない」というステートメントと共に、無効化される。目の前で、富はひたすらに消費される。もっと言えば、消尽される。古代の部族の長が、自身の力を見せつけるために、敵対する部族に見えるように財産を焼き尽くしたように。

 僕らの目の前で、彼の富は消尽される。僕らの目の前で、彼の才能は消尽される。その危うさを、僕らは見ている。しかしこれも、僕らの期待が僕ら自身に見せている幻影に過ぎないのかもしれない。KOHHはこの後、彼の音楽によって、彼のリリックによって、彼の立ち振る舞いによって、僕らに一体、どんな裏切りを見せてくれるのだろうか。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727