「K A R Y Y N」と一致するもの

寺尾紗穂 - ele-king

 寺尾紗穂からは、どこからしら不機嫌さを感じる。僕には、そこが良い。彼女の気高い音楽の背後には、この社会に対するやり切れない思い、憤りが隠れているのだろう。音楽的に言えばピアノ弾き語りの、目新しさのない、オーソドックスな、真っ当なSSWだ。この人の内面にある言葉は、荒れ狂う波のように思えるときがある。わかりやすい音楽スタイルによってある種の制約でも与えない限り、放っておいたら何を言い出すかわからない、だからなんじゃないだろうか。理性的でいるためにも。
 この夜、東京はどしゃぶりの雨だった。靴下が濡れているのもよくわかる。クアトロに到着すると、テニス・コーツがライヴをやっていた。ライヴの最後に寺尾紗穂も加わって、セッションがあった。
 寺尾紗穂のライヴは、新曲が中心だった。吉田美奈子のカヴァーをテニス・コーツと一緒にやった。ステージの上の彼女は堂々としたもので、何かもう風格すら感じられた。曲間の喋りで、ケプラーの楕円宇宙について話した。そして、楕円を美しいと言った、花田清輝についても触れた。ライヴ中の、自己言及的なMCは、たいていは、息抜きかかけ声か、ファンの気持ちを満足させるためのリップ・サーヴィスみたいなものだが、彼女は、大きな謎かけをする。それにしてもこんなところで花田の名前が......と嬉しい驚きだ。
 そればかりではなかった。ライヴの最後には、彼女は、ホームレス支援の『ビッグイシュー』を応援している「りんりんふぇす」なるイヴェントをやっているそうで、『ビッグイシュー』を通じて知り合った4人のおじさんによるダンサー・チーム、ソケリッサを紹介した。80年代のエルヴィス・コステロのように、生活保護のおじさんについて歌い、生活保護のおじさんたちはステージや客席で踊った。フェリーニの映画のようだった。甘く優しい歌声のコンサートの夜は唐突に、大転換される。テニス・コーツのふたりも出てきて、サーカス団のようになった。ホワット・ザ・ファック・イズ・ゴーイング・オオオオオオーン? 
 昨年、クアトロでのライヴを見たときも、寺尾紗穂は井の頭公園で歌っているおじさんを舞台に上げていたが、彼女が何を訴えたいのかは言わずもがなだろう。人はそこにいるのだ、あなたと同じように。日中の渋谷の大通りの交差点でバイクが横転した。人が倒れて動けないでいる。が、信号が変われば何台もの車はその人を通過する。道路のど真ん中だが、目に入ってこない。

 数日後、写真家の小原泰広と会った。「そういえば、寺尾さんのライヴに行ったんですけど......」「え、小原君、いたの!?」「いや、素晴らしかったですね」「いや、ホントにね」、本当に素晴らしかった。寺尾紗穂は次作でどんな楕円を見せるのだろうね。しかし僕はただ、彼女がいままでのように作品を作り、不機嫌さを秘めながら、孤独なピアノの、甘く切ない歌を歌ってくれれば良いのだ。

「ギリシア人は単純な調和を愛したから、円をうつくしいと感じたでもあろうが、矛盾しているにも拘わらず調和している、楕円の複雑な調和のほうが、我々にとっては、いっそう、うつくしい筈ではなかろうか」花田清輝

The Knife - ele-king

 レオス・カラックス監督の13年ぶりとなる長編作品『ホーリー・モーターズ』(2012)で、主人公のオスカー(ドニ・ラヴァン)は厳密な時間管理のもと、リムジンの車内で衣装やメイクによって自身を作り変え、異なる人生を次々と演じていく。この映画の始点には、「自分自身でいることの疲労、自分自身であり続けることの疲れ」と「新たに自分を作り出す必要」というふたつの感情があったことを、カラックスは明らかにしている(https://www.outsideintokyo.jp/j/interview/leoscarax/index.html)。そしてまた、映画監督としての自分、あるいは夫や父としての自分など、相手や置かれた立場によって役割を演じ変えることについても語っている。「それらは人生の演技の一部なのだと思います。しかしそうした演技を止めたとき、いちばん疲労感を持つのではないかと思うのです。映画なのか恋愛なのか分かりませんが、どこかそこに行けば、自分自身が何なのかを見つけることができるとされている場所があるはずです。ですからすべての人々がこのように演技をしているときと、そして自分自身が誰なのかを知ろうと努力をしているときとの間を、旅しつづけているのではないでしょうか」。オスカーが思春期の娘を持つ父を演じるシーンにおいて、彼が娘に言い放つ「お前の罰は、お前がお前自身として生きることだ」という台詞は、カラックスのアイデンティティに対するそういった複雑な感情が書かせたものだろう。そしてこの台詞は、『ホーリー・モーターズ』の核心のひとつに迫っている、非常に重要な言葉でもある。

 スウェーデン、ストックホルム出身のカリン・ドレイヤーとオラフ・ドレイヤーの姉弟からなるエレクトロ・デュオ、ザ・ナイフも、「アイデンティティ」というアイディアに対して慎重な距離を保っている。それが極端に表れているのは、彼/彼女たち自身のヴィジュアル・イメージの扱い方だろう。ザ・ナイフは自分たちのイメージを慎重に取り扱っているようにも、巧妙に取り繕っているようにも、あるいは弄んでいるようにも見える。前作『サイレント・シャウト』(2006)のリリースに伴う取材に際して、2人は真っ黒い仮面(長いくちばしを持った鳥のような形状をしている)を決して外さなかったという。そして、7年ぶりとなるフル・アルバム『シェイキング・ザ・ハビチュアル』のリリースに際しては、対面での取材をまったく行なっていない。代わりにメディアにばらまかれたのは、ふたりの顔が判然としない写真や、体操選手とそのコーチのようなコスプレをしたイメージ、パーカーのフードを被り、京劇の化粧を簡素にしたような白塗りの上に黒いマスクをした写真など、てんでバラバラなイメージばかりである。スカイプを介して行われたガーディアン紙のインタビューで、カリンは「異なる役柄を試してみることは常に楽しいことよ」と語っている。彼女はジュディス・バトラーの「わたしたちは常に女装している」という言葉を引用しながら問いかけている。「それは"真正性"に関係しているわ。自分が本当の自分自身である時間なんて本当にあるのかしら? 私たちはつねにすでに、何かしらの役割を演じているの。ギターを持って自分の感情について歌っている男たちだって、"そういうことをする"人間の役柄を演じているんだわ」。

 ザ・ナイフの試みてきたことは、オロフによればクィア理論の実践であり、人々が「真正」だと感じる音と正反対の音――すなわち、どこから来たのかわからない、出自を知りえないような音の探求であった。そして、その音とはシンセサイズドされた音や声なのではないか、と。ジェンダーやセクシュアリティの問題へと直截に切り込んでいる、多分に政治的なこの『シェイキング・ザ・ハビチュアル』というダブル・アルバムは、彼らの作品のなかでももっともとっちらかった作品であるとともに、ザ・ナイフが試みてきたそういった音の実験のひとつの到達点であるように思える。"ア・トゥース・フォー・アン・アイ"や"ウィズアウト・ユー・マイ・ライフ・ウッド・ビー・ボアリング"、"レイジング・ラング"では、どこのものとも知れぬトライバルなパーカッションが鳴り響く一方で、19分にも及ぶ"オールド・ドリームズ・ウェイティング・フォー・リアライズド"や約10分の"フラッキング・フルーイド・インジェクション"においては、声や電子音による長大でおどろおどろしいドローンが展開される。8分以上の曲が6曲もある一方で、1分にも満たない曲もある。全編にわたってカリンのヴォーカルは奇妙に捻じ曲げられ、ピッチは激しく上下にシフトさせられ、ビートを構成するキックやパーカッション、ベースの音は気味悪く歪んでいる。まるで、『サイレント・シャウト』のゴシックでインダストリアルな感覚が増幅されすぎたために引き起こされたフィードバック・ノイズが通奏低音として鳴っているかのようだ。『シェイキング・ザ・ハビチュアル』の不快とも言えるおどろおどろしく歪んだ電子音に95分間どっぷりと浸かっていると、次第に感覚が麻痺しだし、快い忘我と陶酔に襲われる。そこでは、この音楽が"真性"かどうか、ザ・ナイフのふたりがいったいどんな容姿をしているのかは問題ではなくなってくる。快と不快、美醜、真贋といった価値づけは混乱し、転倒をきたす。

 先のインタヴューでオロフは「音楽の歴史は特権的な白人男性が書いてきた」とまで言っている。ザ・ナイフはそうした音楽の「正史」に対し、はっきりと反旗を翻している(ちなみに、オロフは出演者のうち、男性が半数以上を占める夜間のイヴェントやフェスには出演しない)。男装する老女や緊縛されるクィアが登場するヴィデオが衝撃的な"フル・オブ・ファイア"で、つんのめるようなビートがループするなか、カリンは歪んだ声で問いかける。「ときどき、わたしは解決が困難な問題(problem)を抱える/あなたのストーリーはどんなもの?/それが私の意見/問題(question)と回答には長大な時間がかかりうる/ストーリーはここに/あなたの意見はなに?」「全ての男たちと、男のお偉方は誤ったストーリーを語っている」「さあ、ジェンダーについて話そう、ベイビー/私とあなたについて話そう」と。
 "慣習を揺さぶること"と題されたこの作品においてザ・ナイフは、シンセイサイズドされたダークなエレクトロニック・サウンドによって、"自分が自分自身として生きる罰"を科す運命論者たちに果敢に挑戦し、旧弊な慣習を切り裂いている。それはじつに痛烈な一撃である。

ele-king presents
PARAKEET Japan Tour 2013
- ele-king

【PARAKEET】

 2011 年にリリースされたデビュー・アルバムがここ日本でも大きなヒットを記録した、UK のロック・バンド、ヤックのメンバーである日本人ベーシスト、マリコ・ドイが、同じくUK で活動し、今年リリースのデビュー・アルバムが絶賛を浴びる若手注目バンドザ・ヒストリー・オブ・アップル・パイのジェームス・トーマスと結成した新バンド、パラキートが待望の初来日ツアーを敢行! 両バンドの持つ音楽性を受け継ぎならも、ピクシーズやスパークルホース、ポルヴォなどを彷彿とさせるような、ポップかつユニークなギター・バンド・サウンド! 日本語歌詞も織り交ぜたヴォーカル、印象的なベース・リフとタイトなドラムが疾走するそのサウンドは、インディー・ロック・ファン感涙必至!  これまで、UK本国で7ich シングルと、EP(デジタルと限定カセットのみ) をリリースし、ここ日本でもその活動が大きな話題となるなか、そのEP収録曲やシングル収録曲、ハスカー・ドゥやガムボールなどの要注目カヴァー・トラックを収めたCDも遂に7/3にリリース!


【THE GIRL】

 日暮愛葉(ex Seagull screaming kiss her kiss her etc...)とその友人のベーシスト林束紗(scarlet / hinto)とドラマーおかもとなおこ(つばき)からなる三人組ガールズ・ロックバンドとして2010年より活動開始。Seagull screaming kiss her kiss herを思わせるシンプルでキッチュなガレージ・ロックンロールが全開。スリー・ピース編成ならではの必要最小限に削ぎ落とされた音数、エッジの効いた音像に愛葉節とも言えるニューウェイヴな風情は健在。またメンバー全員コーラスを取れるのがこのバンドのチャームポイントで、シャープなサウンドにポップで華やかな彩りを添えます。今年2月リリース・パーティーを最後にベーシスト林束紗が脱退。THE GIRLは新体制、日暮愛葉(Vo,G)とおかもとなおこ(Dr.cho)ふたりでリスタート!


【toddle】

 2002年に田渕ひさ子(NUMBER GIRL、bloodthirsty butchers)がバンドを作ろうと考え出す。日々のイメージトレーニングが始まり、高知出身の荒くれ者、安岡秀樹に思い詰めて参加のお願い電話をする。そしてtoddleの原型完成。是非かわいこちゃんの女子をメンバーにしたいと思い詰めた田渕が、友達であり好みのタイプ、小林愛(swarm's arm)を誘う。そして3人に。「ベース入れてやってみようか?」と、話が盛り上がり、福岡県筑後市出身の江崎典利(RUMTAG、AMON)に「ちょっとベース弾いてよ。」と電話。そして4人でライブを行う。「ちょっと、今日、良かったよー。また弾いてよー。」3人は味をしめメンバーへと引きずり込む。安岡が高知への引越に伴い脱退し、いつの間にか内野正登(moools)が加入。現在に至る。最新アルバムは2011年リリースの『The Shimmer』。

【TADZIO】

 リーダー(g, vo)と部長(ds, vo)から成る爆音ハードコア・ポップ・バンド、TADZIO(タッジオ)。 2010 年に活動を開始。2011年、1stアルバム発売。ロック、メタル、ハードコア、ガレージ等々、さまざまな要素が入り混じった独創的なオリジナル全11曲をすべて一発録り。ゆらゆら帝国やギターウルフなどを手掛けてきた中村宗一郎(ピースミュージック)のマスタリングにより、凶暴であ りながらも小気味よく、繰り返し聴きたくなるサウンドに仕上がっている。UKのSPINE TVでの特集や、イタリアのFAR EAST FILM FESTIVALに出演など、海外のフォロワーも急増中。現在、2ndアルバムを制作中。



【uri gagarn】

 威文橋(イブンキョウ)が中心となり結成。2004年に1st『(無題)』を初恋の嵐やSPARTA LOCALSなどを輩出したMule Recordsよりリリース。翌年2nd『no.1 oracle』を自主レーベルaLPs(アルプス)よりリリース後、メンバーが脱退。2009年にex-nhhmbaseの英(ba)、カワムラ(dr)が加入し活動を再開。2013年1月、実に8年ぶりとなる3rd『my favorite skin』をaLPsよりリリース。エンジニアに君島結(Tsubame Studio)を迎え、オープンリールテープを用いてダイナミズム溢れるバンドサウンドを録音。マスタリングはSonic Youth、Jawbreaker、Primus、Superchunk等との仕事で知られるJohn Goldenが担当し、さらに爆発力の増した一枚に仕上がっている。現在、次の作品に向け制作準備中。



ele-king presents
PARAKEET Japan Tour 2013
special guest : THE GIRL

9/5 (木) 渋谷O-nest (03-3462-4420)
PARAKEET / THE GIRL
special guest : uri gagarn
adv ¥3,800 door ¥4,300 (+1drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:205-168)
ローソンチケット(Lコード:74729)
e+

9/6 (金) 名古屋APOLLO THEATER (052-261-5308)
PARAKEET / THE GIRL
adv ¥3,800 door ¥4,300 (+1drink)
open 19:00 start 19:30
チケットぴあ(Pコード:205-387)
ローソンチケット(Lコード:42027)
e+

9/7 (土) 心斎橋CONPASS (06-6243-1666)
PARAKEET / THE GIRL
adv ¥3,800 door ¥4,300 (+1drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:205-168)
ローソンチケット(Lコード:56704)
e+

9/8 (日)「BON VOYAGE ! 〜渡る渡船は音楽ばかり〜」
尾道JOHN burger & cafe(0848-25-2688)、 福本渡船渡場沖船上
PARAKEET / THE GIRL / NAGAN SERVER with 韻シスト BAND / ウサギバニーボーイ他
adv ¥3,500 door ¥4,000 (渡船1day pass付 / +1drink)
open / start 12:00
ローソンチケット(Lコード:66873)*7/6よりチケット発売
主催:二◯一四(にせんじゅうよん)
共催:Buono!Musica!実行委員会
後援:尾道市、世羅町、尾道観光協会、世羅町観光協会、ひろしまジン大学、三原テレビ放送、中国放送
協力:福本渡船、ユニオン音楽事務所
INFO : 二◯一四(にせんじゅうよん)080-4559-6880
www.bon-voyage.jp


new! 【追加公演】
9/10 (火) 渋谷O-nest (03-3462-4420)
PARAKEET / toddle / TADZIO (この日のTHE GIRLの出演はございません)
adv ¥3,800 door ¥4,300 (+1drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:209-089)
ローソンチケット(Lコード:71161)
e+


*尾道公演を除く各公演のチケット予約は希望公演前日までevent@ele-king.netでも受け付けております。お名前・電話番号・希望枚数をメールにてお知らせください。当日、会場受付にて予約(前売り)料金でのご精算/ご入場とさせていただきます。


主催・制作:ele-king / P-VINE RECORDS
協力:シブヤテレビジョン ジェイルハウス 二◯一四(にせんじゅうよん)
TOTAL INFO:ele-king 03-5766-1335
event@ele-king.net
www.ele-king.net

PARAKEET / PARAKEET

PCD-18746
定価¥1,995
Release:2013.7.3
歌詞・解説付
解説:佐藤一道(Monchicon!)

Amazon

01. Tomorrow
02. Toumono
03. Bananafish
04. Shonen Hearts
05. Paper, Scissors, Stone
06. Hiccups
07. She Wants To Eat Meat
08. Darumasanga
09. Campaign Against Torpidity (No Wings Fins or Fuselage カヴァー)
10. Restless (Gumball カヴァー)
11. Don't Want To Know If You Are Lonely (Hüsker Dü カヴァー)

ele-king book 新刊 - ele-king

  本を読み進むにつれて、彼らのはっきりした物言いにどんどん引き込まれる。日本のラッパーたちは自分の意見を言える。これは意外と、お茶を濁すのが好きな日本文化では珍しい。そして......ページをめくり、OMSBの話を読むながら、この本のポテンシャルに震えた。

 ele-king booksから新刊のお知らせです。これは宣伝文、売らんがための文章だ。ゆえに控えめに言おう。僕は本書のゲラを読みながら、自分の内側から熱いモノが湧きあがって仕方がなかった。
 OMSB、THE OTOGIBANASHI'S、PUNPEE、AKLO、MARIA、田我流、ERAといったテン年代のラッパーたちの言葉(リリック)に焦点を絞りつつ、大先輩である宇多丸とMummy-Dが日本語ラップの現在について語る──それが本書の主旨だった......が、ラッパーたちの言葉が、本書をそれ以上のものにした。
 著者である巻紗葉は黒子に徹して、彼らの言葉を引き出すことに集中している。そして、彼らは「生き方」についての自分たちの考えをはっきりと話すのだ。はっきりモノを言わないのが日本人だったじゃないのか......しかし、アメリカの影響下で生まれ、日本で育ったこのジャンルは、ずけずけと物言う文化へと成長している。

 勇気づけられる話ばかりだ。とくにOMSB、MARIA、田我流の3つは最高だ。彼らの音楽を知らない人、いや、知らない人こそ読むべきだ。たとえば、OMSBとMARIAを読めば、ヘイトがいかにいじめに直結しているのかがわかる。自分たちが経験した差別を正直に語り、それでもひたむきさと寛容さを忘れず、人生に前向きさを見いだしている彼らの言葉を心強く思う。反原発への複雑な思いを正直に話す田我流の思慮深さ、その一方でバカみたいに選挙に行こうと呼びかける態度(残念だが、そのメッセージは広く届いていない)にも僕は好感が持てるし、PUNPEEの「何も背負いたくない」という発言にも「うんうん」とうなずける。彼らには自分たちの足下を見ながら話している感覚があって、そこがすごく良いと思う。
 「ポップ・フィールド」にいるふたりのベテランの志の高さ、その揺るぎのなさも気持ちがよい。お茶の間にも行けるような人たちが『ダーティーサイエンス』のようなアルバムを出せることは、明らかにこのシーンの強さの証明だ。
 わずか9人のラッパーの証言だが、計らずとも日本のラップが、──本書の主旨にはそもそもなかったことなのに──、結果、3.11以後のリアリティを直視している話となった。僕はラップ専門の人間ではないが、本書を読んで彼らのことが好きになった。MARIAの話に涙した。田我流の最後のエピソードは、今日の日本の、とっておきの美しい生き方の一篇である。(野田 努)


■街のものがたり
著者:巻紗葉
判型:四六判/256ページ
価格:税抜き1900円
発売日:2013年6月28日
ISBN:978-4-907276-01-0

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Mac Miller - ele-king

 インディで活動しながらもファースト・アルバム『ブルー・スライド・パーク』でいきなりビルボード200制覇を成し遂げた奇跡の21歳、マック・ミラー。その輝かしい経歴とは裏腹に、ここ日本ではいまいち知名度が低い。そんな彼が先ごろセカンド・アルバム『ウォッチング・ムーヴィーズ・ウィズ・ザ・サウンド・オフ』を発表した。しかしJ・コールの『ボーン・シナー』とカニエ・ウェストの『イーザス』と同週発売ということもあり、前作同様話題にならないような予感......。

 まずマック・ミラーとはどのようなアーティストか? それを知るには彼が18歳のとき、2010年に発表したミックステープ『K.I.D.S』を聴く必要がある。タイトルからもわかるとおり、この作品はラリー・クラーク監督、ハーモニー・コリン脚本による同名映画にインスパイアされて制作されている。ここからわかることは、彼が90年代のスケーター・カルチャーをバックグラウンドに持っているということ。そして同作からのヴィデオ・クリップ"シニア・スキップ・デイ""ノック・ノック""クール・エイド&フローズン・ピッツァ"などを観れば、彼(や取り巻く人々)の尋常ならざるセンスの良さを感じることができるだろう。

 さらにマック・ミラーの強みは、メロディ・センスの高さだ。彼は2012年にラリー・ラヴシュタイン&ザ・ヴェルヴェット・リヴァイヴァル名義でミックステープ『ユー』を発表しているが、この作品ではラップではなくジャズ・ヴォーカルを披露。『ユー』という作品がどこまで本気なのかはさておき、今作でもフライング・ロータスやファレル、クラムス・カジノらが手がける曲でメロディメイカーとしての力量を発揮している。またラリー・フィッシャーマン名義のセルフ・プロデュース曲"リメンバー"では、ジ・XX"スウェプト・アウェイ"をサンプリングしているあたりも非常に興味深いところだ。

 前述のような面々がサウンドをクリエイトしている場合、高い確率でコンシャスな作品に仕上がるものだが、客演のメンツを眺めているとなかなかどうして一筋縄ではいかないラッパーたちが名を連ねており、コンシャスというよりはどうしても『K.I.D.S』を想像してしまう。その『K.I.D.S』つながりでは、OFWGKTAからアール・スエットシャツとタイラー・ザ・クリエイター(ボーナストラックのみ)、さらに米『XXL』誌企画による「フレッシュマン・クラス2013」に選出されたスクールボーイ・Qやアクション・ブロンソン、Ab-ソウルといった注目株も参加している。黒人のプロップスも高いユダヤ教徒の白人ということで、ビースティ・ボーイズの面影を彼にみるのはわたしだけではないはず。

 ここまでつらつらと書いてきたが、つまるところ言いたいのはマック・ミラーの新作は前作同様、非常にイケているということだ。アメリカではJ・コールとカニエ、そしてこのアルバムが同日発売されたそうだが、その事実に「常に供給過多」という異常事態を維持しつづける本場のヒップホップ・ゲームの凄みを感じずにはいられない。しかもマック・ミラーは21歳、THE OTOGIBANASHI'Sの1コ上なのだ。


巻紗葉 編著『街のものがたり』 本日発売!

■2010年代のヒップホップ・アーティスト9人のインタヴュー集。
ルードでも閉鎖的でも教条的でもない、自由で新しいフィーリングを持ったラッパーたちが、いまのびのびとヒップホップの歴史を塗り替えようとしている!

★収録アーティスト
・OMSB
・THE OTOGIBANASHI'S
・PUNPEE
・AKLO
・MARIA
・田我流
・ERA
・宇多丸
・Mummy-D
3.11以降、若いラッパーたちは何を思い、何を感じたのか......。

生活のこと、これまでのこと、未来のこと、じっくりと語りおろした珠玉のインタヴュー9編。街のリアリティから生まれる力強いメッセージがここにある。

■街のものがたり
著者:巻紗葉
判型:四六判/256ページ
価格:税抜き1900円
発売日:2013年6月28日
ISBN:978-4-907276-01-0

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interview with These New Puritans - ele-king


These New Puritans
Field of Reeds

Infectious Music / ホステス

Amazon iTunes

 「ゴスなニュー・ウェーヴ」。これまでジーズ・ニュー・ピューリタンズを表面的なイメージだけでそんなふうに簡単に切り捨ててしまっていた方がいたら、約3年ぶりに届けられた彼らの3枚めのニュー・アルバム、『フィールド・オブ・リーズ』を聴いてもういちどその考えを改めてもらえたらと思っている。なぜなら、この最新作はこれまでの彼らの作品を超える最高傑作であり、彼らの自信作だからだ。

 これまでは、ザ・フォールやジョイ・ディヴィジョンを手本にし、英国16世紀の錬金術師ジョン・ディーを崇拝するというようなコンセプチュアルなアプローチをあざとく感じてしまう部分もあったが、そうしたやや自意識過剰なバンドの自己陶酔の深さは今作において影を潜めたと言える。なぜなら、このアルバムにはそうしたイメージに勝る、息をのむほど繊細でセンシティヴな音響感覚と、絶妙なサウンド構築があるからだ。

 生楽器とさまざまなサンプリングを巧みに組み合わせ、静寂と喧噪とをダイナミックに行き来する狭間には、これまでの彼らの作品には見えなかったドリーミーな美しさがある。とくに“フラグメント・トゥー”や、“オルガン・エターナル”はどこか優しげで、ミニマルな持続音とメロディーはあたたかく心地よい。しかし、全体を通して張りつめる緊張感があるのもこのアルバムの素晴らしいところだ。そして、インダストリアル、ドローン、ミニマル・ハウス、アンビエントなどの影響を感じるが、このアルバムにあるのは、ただ既存の音楽スタイルをなぞってこと足れりとする安直な姿勢ではなく、ジーズ・ニュー・ピューリタンズとしての表現世界を貫徹するためにありとあらゆるものを利用し、妥協なく追い込んでいく“貪欲さ”だ。そうした姿勢に僕は素直に感動したし、彼らがこのアルバムで示したモチヴェーションは、新作をレコーディング中のクラクソンズやザ・ホラーズなどの同期バンドたちや、UKの新人若手に少なからずの影響を与えることだろう。少なくともいま、イギリスの若手バンドにおいて、これほどまでに刺激的で冒険的なサウンドを鳴らすグループを僕は知らない。

 ゲスト・ヴォーカルにsalyuを招いた〈ホステス・クラブ・ウィークエンダー〉でのライヴも、ギターを除外するなどバンドとしての新しいスタイルが反映されていて素晴らしかった。 以下は、イヴェントの2日後に行われた、ジーズ・ニュー・ピューリタンズのジャックとジョージ(双子)によるインタヴューです。それではどうぞ。

「新しさ」を求めると、やったことが時代遅れになる危険性があるよね。だから変わることに動機を求めているわけではなくて、自分たちのなかで自然に変わっていくことがベストだと思う。(ジャック)

今作『フィールド・オブ・リーズ』を聴いて、ジーズ・ニュー・ピューリタンズがいったいどんなコンセプトを持ったバンドなのか、あらためてお訊きしたいと思いました。

ジャック:バンドをはじめた頃は、僕たちとしては音楽だけじゃなくて、バンドとして、例えばアートワークや映像っていうもので音楽にさらに付加価値をつけることをコンセプトに活動してた。だから音楽以上の作品を作ってるっていう自覚を持ってやってきたんだ。ただ、今作に関しては、そういったコンセプトはほとんどないと言えるね。でも、映像やアートワークが音楽にひとつの層を加えてるっていう気持ちはいまでも強いし、なにより、ジーズ・ニュー・ピューリタンズっていうバンドは、僕ら兄弟ふたりが本能的に感じ合ったものを表現しているバンドなんだ。だから今作『フィールド・オブ・リーズ』も、曲を作るうえでそういったものを核に据えて、音を次から次へと加えて、それがどこに導いてくれるかっていうことに身を任せて作ったんだよね。

あなたたちのサウンドの特徴のひとつとして、ミニマリスティックなリズムがありますが、今作はどんな音楽的要素にもっともフォーカスしましたか?

ジョージ:前作『ヒドゥン』がリズムにフォーカスしたアルバムだったのに対して、今作はよりメロディーに焦点を当てたんだ。

ジャック:曲作りをピアノで行ったっていうことが影響してると思う。とはいえ、リズムをまったく無視してるわけじゃなくて、結果的に、スペースが少ないぶん、例えばそこにリズムが入ってくることによって曲が強調されるし、リズムそのものにも大きな意味を持たせることができたとも思う。

例えば、サウンドにおける質感という点で、前作では映画のサウンド・トラックがインスピレーションになったと言っていましたが、今作はどのようなものにインスパイアされましたか?

ジョージ:昔の古いサントラを聴いてたってことを昔インタヴューで答えたのは確かに覚えてるんだけど......、ジャック、実際にそれってサウンドに影響あったんだっけ? 

ジャック:えーと、映画っていう話に関しては、今作のトランペットの音を作る際に『チャイナ・タウン』っていう映画の音楽に影響を受けたことが挙げられるかな。プレート・リヴァーヴっていう、大きい鉄板を使ってリヴァーヴを効かせる手法があるんだけど、それを使ってトランペットの音を作ったんだよね。でも、他にはどうかな、外から影響を受けるっていうより、自分たちのなかから出てくる音楽にフォーカスしたと思う。

前作同様に、ピアノや、幻想的なブラス・セクション、斬新なサンプリングが今作にも導入されていますが、あなたたちが感じるそれらの魅力って何ですか?

ジャック:僕としては、曲を書いているときに、「あっ、ここにこの楽器のこういう音が欲しいな」っていうものを素直に入れるんだ。だから、基本にあるのは、「曲が何を求めてるいるか」なんだよね。

あなたは前作について、「ブリトニー・スピアーズの力強いポップ・サウンドと、金管や木管アンサンブルから得られるメランコリー、そのふたつの形式の間を行き来しているサウンドを表現したかった」とおっしゃっていましたが、そうした比喩に倣えば、本作におけるあなたの興味は、どんなふたつの極の間のスペクトラムに存在していたと思いますか?

ジャック:いい質問だね。

ジョージ:今回のアルバムは、俺たちのすごくパーソナルな世界にみんなを招待している作品なんだ。前作は外からの影響を意識的に自分たちのサウンドと融合するような作品を作るうえでのアプローチがあったけど、今回は自分のなかから湧き出る感情に素直に従って曲作りをしたんだよ。

ジャック:前作は、ひょっとしたら自分の本質と音楽との間に距離があったのかもしれない。でも、今作はそういった距離を縮めて、そのギャップが0になるところまで近づけることができた気がする。それと同時に、すごく説明するのが難しい作品で、人に聴かれても、どこから手をつけて、どこから説明していいのか自分でもわからない作品であるとも思う。

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あまりにも自分たちの住んでる場所と違うし、雰囲気も最高だから、俺は日本に住みたいくらいだね。(ジョージ)

前作よりも、作りたかった作品を作れたと言えますか?

ジャック:(即座に)うん、そう言えるかもしれないね。

自分達の音楽における「新しさ」と「過去」の関係については、どんな風に考えていますか?

ジャック:このバンドはすごく変わりやすいし、その速度が速いと思う。

ジョージ:変わるっていうことが自分たちにとってすごく自然なんだよね。だって、3年ぶりに会った友だちが3年前とまったく同じだったらそれもちょっと不思議でしょ? 変わるっていうことは、誰にだって自然だと言えると俺は思うんだ。

ジャック:僕としても、自分たちの初期の音楽を聴くとすごく古い写真を見ている気がして、違和感とまでは言わないんだけど、やっぱり何か不思議な感じがするんだ。だから変わることは確かに自然と言えるんだけれど、でも、かといって、新しいものを常に求めることも僕は違うと思うんだ。「新しさ」を求めると、やったことが時代遅れになる危険性があるよね。だから変わることに動機を求めているわけではなくて、自分たちのなかで自然に変わっていくことがベストだと思う。

あなたたちが最初に出てきたときは、いわゆるポスト・パンクを含めた、80年代的なものを当時の空気にうまくチューニングしていたと思うんですが、今作はミニマル・ハウスやインダストリアル的な、90年代のムードへとシフトしている気がしました。90年代的なサウンドを鳴らしている意識、みたいなものはありましたか?

ジョージ:実際に若い頃90年代の音楽をたくさん聴いてたよ。でも、だから逆にいまの俺らのサウンドがポスト・パンクって言われることはかなり違和感があるし、ちょっとイラっとするんだよね。

ジャック:確かに90年代のサウンドを参照するムーヴメントがいま起きていると僕も思う。実際に、僕たちも90年代のエレクトロニック・ミュージックがすごい好きで、いちばん最初に曲を作るうえで影響を受けたのはエイフェックス・ツインとかだったんだ。でもサウンドというよりも、サウンドの構築の仕方に影響を受けている気がする。

全体を通して、柔らかいものとか、穏やかなものっていうよりも、硬質で無機質な世界に音を鳴らしたいですか?

ジャック:最近に関しては逆だと思うな。

ジョージ:とくに新作は親密感のあるサウンドだし、逆だと言えるね。でも君が言う、そういった研ぎすまされた音が鳴り響く瞬間はあるし、俺たちは陰と陽の対比を取り入れるのが好きなんだ。

では、あなたが思う、音楽における実験ってなんだと思いますか?

ジョージ:いい質問だけど、それについては俺も知りたいところだな(笑)。ジャックはどう思う?

ジャック:僕が思うに、いろんな人にとって、実験的であるっていうことが音楽を作るうえでの出発点になっていることが多いと思うんだ。でも自分たちの場合は逆で、音楽に導かれた結果、そこに必要なものを得るために実験を行っているんだよね。例えば、今作のアルバムにはガラスが割れる音のサンプリングを入れているけど、さっきも言ったように結局あくまでも音楽が先にあるんだ。曲を書いているときに、ここのクライマックスの部分にこういう音を入れたい、じゃあ、ガラスの割れる音にしよう、じゃあ、それはどういうガラスの割れる音なんだ、どういうふうにそれを録音したらいいんだって、一日かけていろんなガラスを割って録ってみて、考えるんだよ。僕たちはその結果を求めて実験を行っているんだよね。

例えば、ベンジャミン・ブリテンなどは、生活の一部を違う場所に移すことによって、開放的な空間のなかで、新しいアイデアを模索したとも言われています。もしあなたに、好きなだけの時間と場所を選べる権利が与えられたとしたら、あなたはどんな場所に行きたいと思いますか?

ジョージ:それについてはよくみんなで話し合うんだけど、実用的な意味ではLAだね(笑)。

ジャック:個人的には西インド諸島に行きたいな。原住民がいる、いわゆる文明に犯されていない場所がいい。ベンジャミン・ブリテンは日本に来て能なんかに影響を受けてるんだよね。タイトルは忘れちゃったんだけど、日本の舞台に影響を受けている作品があって、その作品で僕は彼が開眼したと思うし、実際、その作品以降の彼の作品が大好きなんだ。

ジョージ:実際に日本についても話し合ったことがあるよ。あまりにも自分たちの住んでる場所と違うし、雰囲気も最高だから、俺は日本に住みたいくらいだね。

赤い花、青い花、白いことば - ele-king

 ゆっくりと落下していく鮮やかな花々は若冲を、あるいはオキーフを思わせ、その滞留するような時間感覚(最初のEP『ライフ・オブ・レジャー』で世界を遠慮がちに揺すぶった――あの感覚だ)のなかに言葉が咲いていく。

 昨日公開された"ドント・ギヴ・アップ"のミュージック・ヴィデオは「リリック・ヴィデオ」と銘打たれたもので、その名のとおり歌詞がカラオケのように歌に合わせて表示される。だが、カラオケというと少しニュアンスがずれる。ニコニコ動画で目にするようなボカロ音楽の動画や、あるいはアニメ『進撃の巨人』のOP部分などをイメージするほうが近いかもしれない。詞とその文字表現による訴求が、曲の展開やアートワークの一部として有効に機能している。同じひとつの潮流だと関連づけるのは早計だが、「文字PV」は国内の感覚に照らしてもあきらかにインである。名作はこのような偶然を引き寄せるものだ。
"ドント・ギヴ・アップ"におけるそれが、システマチックに詞を伝えるための図らいでないことは、表示のされ方が均等ではないことからも自明である。ミニマルでスタイリッシュな画面構成がかえって文字の点滅をエモーショナルに見せている。

 無意識にも偶然にもせよ、ウォッシュト・アウト(・チーム)が視覚的に文字をつかみだし、言葉を切り出してきたことの意味は大きい。かつて彼がヴィジュアリティから――あの「ホルガ風の海ジャケ」によって――シーンを更新したことをまだ誰も忘れていないのだから。       (橋)



"Don't Give Up"リリック・ヴィデオ(2013.8.7発売『Paracosm』収録)

8月7日に日本先行発売されるウォッシュト・アウトのセカンド・アルバム『パラコズム』より、セカンド・シングル「ドント・ギヴ・アップ」のリリック・ヴィデオを公開!

J.R.R.トールキンの「中つ国(ミドル・アース)」やC.S.ルイスの『ナルニア国物語』、ヘンリー・ダーガーの『非現実の王国で』などで描かれる架空の世界と同種の事象を探求する当アルバム『パラコズム』で、アーネスト・グリーン(=ウォッシュト・アウト)はベン・アレン(アニマル・コレクティヴ、ディアハンター、MIA、ナールズ・バークレー他)をプロデュースに再度起用。コンピューターやシンセに加え、メロトロンやチェンバリンといったオールドのキーボードを中心とした50以上もの楽器を導入し、新たな創造性を獲得。美しい自然の中で外にいるようなイメージを持って作られた当アルバムは、結果、ミニマルでモノクロそしてノクターナルな内容だった前作『ウィズイン・アンド・ウィズアウト』(全米26位)とは逆に、オプティミスティックで真昼のアルバムのようなサウンドに仕上がった。

2009年のEP『ライフ・オブ・レジャー』のリリースにより、ウォッシュト・アウトはチルウェイヴのパイオニア的な存在として語られ、瞬く間にアーネスト・グリーンは時代の寵児となってしまった。史上初めてネット上で起きたこの音楽のムーヴメントは様々な議論を呼ぶこととなったが、今ここでそのサウンド等を定義することはナンセンスなのかもしれない。なぜなら『パラコズム』にはチルウェイヴにリスナーが求める全ての要素が詰まっているからだ。言い換えれば、チルウィエイヴは音楽のジャンルではなくウォッシュト・アウトを説明する為に作り出された言葉だった、と思い起こさせてくれるからだ。

このアルバムは間違えなく2013年の夏の一枚となるであろう。そしてタイトルの通り、このアルバムはあなたに一つの約束をする。別の、そしてより良い世界にリスナーをエスケープさせてくれるのだ。

■WASHED OUT "PARACOSM"
■2013.8.7 ON SALE 【日本先行発売】
■2,300円(税込)/2,190円(税抜)
■解説/歌詞/対訳付
★日本先行発売(UK/EU:8月12日、US:8月13日)
★日本盤ボーナス・トラック収録


Unhappybirthday - ele-king

 テープのときには、絶妙にテープなアートワークだった。今回ヴァイナルで出直した『サーアップ』がジャケットを変えているのは、もちろん気分の問題でもあるだろうけれど、もとのデザインが12インチにそぐわないと判断したからではないだろうか。茶目っ気のあるコラージュにはマイ・ミックステープといった趣があって、どれをとっても素晴らしい〈クラッシュ・シンボルズ〉のテープ・アートワークスを象徴している。同じコラージュとはいえ、ヴェイパーウェイヴが虚無的な態度で遠回りに世界を肯定しているのに対し、彼らのほうはずいぶんと素朴なやり方だ。

 アンハッピーバースデーはドイツの3人組。ヴィスマールという小さな町の出身で、そこのレコード屋で「ザ・レインコーツやヤング・マーブル・ジャイアンツやユニッツ」などに触れながら育ったそうだ。素敵にマイペースな話である。東京にジェシー・ルインズがいるように、ドイツにアンハッピーバースデーがいる、というところだろうか。音は驚くほど〈キャプチャード・トラックス〉、というかブランク・ドッグスの系譜で、なぜ彼らが埋もれていたシューゲイザーの発掘作業に余念がないかということにひとつの解答を与えるように、ロマンチックなシューゲイズ・ポップをポストパンクなマナーでフラクチャーしていく。シットゲイズとダークウェイヴがとても品よく出会っているように感じられるのはドイツ語のためだろうか? しかしレーベルの紹介にあるように「文字どおりのニュー・ジャーマン・ウェイヴ」とするのは早計で、かの国でそうした機運があるならともかく、おそらく彼らは〈キャプチャード・トラックス〉等の面々と同じような距離感でニューウェイヴなりシンセ・ポップなりノイエ・ドイチェ・ヴェレなりに向かいあっている。そうでなければこのシットゲイズなガレージ感やマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ジーザス・アンド・メリーチェインのようなUKインディが参照されることはないだろう。参照、というまでもなく、ただ常日頃われわれも彼らも同じような環境下で同じようなものを聴き、愛しているということに過ぎない。曲名がすべて英語なのも同様の理由であるように思われる。"グリマー"の性急なビート、"アノラック"の切なくエモーショナルなメロディは、エレクトロニックなクラウド・ナッシングスとも言えるかもしれない。ふだん「USインディ」と呼んでいるような音を、たまたまドイツのバンドがやっている、そんなところである。

 〈クラッシュ・シンボルズ〉はブラックバード・ブラックバードやミリオン・ヤングなど、チルウェイヴやベッドルーム化されたバレアリックとでも言うべき2010年代のドリーム・ポップの一端をつかまえている。そして今回ヴァイナル盤をリリースした〈レーベンスシュトラーセ〉のカタログには、サン・グリッターズやザ・ベイビーズ、スロウ・マジックなどが並ぶ。さらに今年になって出たカセットEP『クラーケン』は〈ナイト・ピープル〉から。こちらはご存知のとおりダーティ・ビーチズからラクーン、ピーキング・ライツ、ショーン・レザーなど良質なエクスペリメンタルを多数提供している。まさにヒプナゴジック/サイケデリックのエッセンスとガレージ/エレクトロニックをわたる方法とが2010年前後のモードで交差するポイントに浮かび上がった、今日のポップスの最良の成果のひとつだと言えるだろう。
 1曲、といわれれば"モーリー"だろうか、"インヴェイジョン"だろうか。"モーリー"には少しピクシーズの面影もある。人生のうちのこの27分間がとても大切な時間であるように......砂時計のような質量をともなって感じられる。
 ちなみに〈レーベンスシュトラーセ〉盤は2曲多く収録されている。

 最近、ブライトンの街がやけに汚い。
 なんでそんなに汚いのかというと、地方自治体のゴミ回収およびリサイクル回収のスタッフがストライキを決行しておられ、ゴミが街中に溢れているからだ。で、街頭設置のゴミ箱が溢れ、中身が外に漏れ出しているにも拘わらず、「臭いゴミ袋を家の中に置いとくよりはまし」ってんで人びとがさらなるゴミを舗道に放置して行くものだから、野良猫や野良犬、カモメなどがビニール袋を食い破って中身を路上にぶちまき、舗道全体にキャベツの芯とか卵の殻とか新聞紙とかトイレットペーパーの芯とか、ありとあらゆるゴミが転がっており、それを貪り食っては排泄する獣の糞まであちこちにべっとりと落ちている。
 いやー、最後にこんな英国の街を見たのは、1989年のロンドンだっただろうか。トテナム・コートロードとか、キルバーンとか、ジョン・ライドンの出身地として有名なフィンズベリー・パーク界隈も尋常でない散らかりようだったのを記憶している。

 「最近、ロンドンに行ったけど、不況なんて感じさせないほどUKはクールでモダン」
 みたいなことを日本の某ライターの方が書いておられたが、一歩地方まで足を伸ばしていただければ、この窮状はあからさまである。まるで街全体が巨大なゴミ箱と化したようだ。
 商店街の店は何軒も潰れてガラスが打ち割られ、ホームレスの方々が路上に座り込んでビール瓶片手に涎を垂れながら空を仰いでおられる。
 臭い。汚い。暗い。しかも、今年の夏はどんよりと寒い。
 いったい世のなかは、2013年で終わるのだろうか。

            **************

 サッチャーが死んだ日に、意気揚々と無料の成人向け算数教室をスタートさせようとしていたRの計画が、暗礁に乗り上げている。
 講師およびヴォランティア人員は、いつでも開始オッケーの状態でスタンバっているのに、生徒が集まらないというのだ。例えタダでも彼らが来たくないという理由のひとつには、保守党の政策によって失業保険や生活保護を打ち切られた元生徒たちが、どんづまりの必要性から、読み書きや算数の知識がなくてもOKの最低保証賃金ワークに就労しているケースが多く、そういう人びとは、もはや学習の必要性など全く感じていないという。
 また、生活保護を打ち切られて犯罪に手を染め、現在受刑中の生徒も複数いるというし、アル中になってシェルターで暮らすようになっていたり、行方不明になっている人もいるらしい。電話をしてもメールをしても、一向に捕まらない人びとがかなり存在し、それらの生徒たちについて、共通の知人やチャリティー施設のスタッフを通して良からぬ噂ばかり耳にする一方で、連絡が取れた元生徒たちも、「どうせクソみたいな金でクソみたいな仕事をするんだから、いまさらファッキン算数なんて面倒くさいことをやったところで、何が変わるわけでもない」みたいな、明日への展望が全く感じられないネガティヴな発言を返してくるという。
「遅すぎたんだろうか。と思う」
 Rは電話口でぼっそり呟いた。

             *************

 「残業手当や皆勤手当が貰えなくなったら、マジで死活問題だ。どうして奴らは減給されたら生きて行けなくなる人間の給料ばかり減らすんだろう」
 と、うちの息子の同級生の父親は言った。ポーランド人の彼は、ストライキを決行しているゴミ回収車乗務員であり、ブライトンの街の景観を荒ませている当事者の一人だ。が、彼の言うことはよくわかる。ストライキというのは、ふつう賃上げを要求してやるものであり、賃下げ反対などという崖っぷちでの抵抗がそう簡単に終結するわけがない。
 「スーパーで、家族4人分の食料をウィークリー・ショッピングするだろ。3年前なら50ポンドで済んだのが、いまは同じものを買っても80ポンドする。これだけ物の値段が上がっているときに、給料を減らされたら、死ねと言われているようなもんだ」
 と彼は言う。が、それがサッチャーの末裔どもの政治なのだ。
 「俺は勝手にこの国に来た人間だから、ワーカーズ・ライトとか、そういう面倒なことはあんまり言いたくないし、汚れている街を見ると心も痛む。けど、こっちだって子供ふたり抱えて食ってかなきゃいけない。カウンシルの上の奴らは年収が上がってるのに、底辺労働者だけ年収が下がるってのは、おかしいだろ」
 80年代なら英国人の炭鉱労働者が口にしていたような言葉を、現代ではポーランド人の移民労働者が言っている。そういえば、シェーン・メドウズが『Somers Town』という映画を撮ったことがあった。あの映画は、どこにも居場所がなくなった下層のイングリッシュの少年と、ポーリッシュの移民労働者の息子の友情を描いたストーリーだった。
 ポーリッシュのゴミ回収作業員がふたりの子供を連れて校門から出て行く途中で、スキンヘッドの英国人男性とすれ違い、手と手でハイ・ファイヴを交わす。ああ、あのスキンヘッドのお父さんもゴミ回収の仕事をしておられた、と思い出した。このような窮地には、ストライキというアクションを通して、本国人も移民もない「労働者」というグループが生まれるのかもしれない。世のなかがひどくなるとレイシズムが高まる、という説は、そうとばかりも言えないようだ。

               *********

 「保守党政権っていつまで続くの?」
 最近、妙にやつれている隣家の息子が言った。こいつも失業者保険を打ち切られ、やむなく社会復帰した人間のひとりである。
 「あと2年」と連合いが答える。
 「うっそー、そんなに長いの?」
 「首相任期って4年だったけど、あいつら、いつの間にかそれを5年に変えてるし」
 「俺、それまで生きれらるかどうか心配」
 多感な年頃の時代からうちに出入りし、父親がいないせいかうちの連合いの影響を受けすぎている隣家の息子は、ダンプの免許を取得し、長距離ダンプの運ちゃんとして働き始めたが、そのシフトは明らかにEU法に違反する過酷なもので、就寝する時間もないほど運転しまくっているのに、稼ぎは限りなく最低保証賃金に近い。
 「おめー、その会社、いくら何でもひどすぎ。ヒューマン・ライツはどうなってんの」
 「だって、他になかったんだもん、仕事」
 体重が4キロも落ち、めっきり老け込んできた隣家の息子を見ていると、労働党政権の時代に社会保障制度を濫用してふらふらして来たんだから自業自得。と言うことも可能だが、2013年の英国にはこういう若者が無数に存在しているのだろうと思う。仕事があるだけでも有難いと思え。と言わんばかりに雇用主に利用され、経済ピラミッドの下敷きになり、政治に蹂躙されている若者たち。
 「次は、労働党が政権取るよね」
 「たぶん。そう思いたいけどな」
 と連合いが歯切れの悪いことしか言えないのは、トニー・ブレアの時代に労働党が著しく保守党寄りの路線に変わったため(サッチャーなんかは、「私の最大の功績はトニー・ブレアを生み出したこと」と言ったし)、もはや労働党も保守党も大差ない。という「どっちもどっち」みたいな風潮があまりにも長く続いているからで、保守党が嫌われているからと言って、労働党が支持を集めているわけでもないからだ。
 が、この「どっちもどっち」というのはあり得ない思想である。というのも、表面に出ているものが似ていたとしても、コアにある価値観が違う限り、「どっちもどっち」ということはないからだ。ソシオ・エコノミックな階級の真んなかあたりとか上部とかにおられる方にとっては、どっちが政権を握ろうが生活に大差ないかもしれないが、下層民の日常は、目に見えて、こんなにもはっきりと変わる。いつだって保守党政治の皺寄せは、金もなければ地位もなく、明日への希望も薄い人びとの層に来るからだ。
 その皺寄せの方向性を許せるか、見て見ないふりをできるか、あるいは、そんなの全然知らないし、見たことも聞いたこともないわ。と言いきれるのでなければ、「どっちもどっち」というスタンスは取れるはずがない。「どっちも不支持」とか言ってニヒリスティックに首を振ってる"リベラル寄りのインテリ"は、みんな保守党を支持しているのだ。
 もう世のなかは、中庸を志向してスタイリッシュに傍観すれば済む時代ではなくなっている。
 路上の獣の糞やら卵の黄身やらを踏んでしまったスニーカーをじゃーじゃー洗いながら、わたしはそう実感するのである。

           **********

 『NME』が新譜レヴューでトム・オデールの『Long Way Down』に0点をつけた
 トム・オデールの父親が激怒して『NME』に抗議したという記事をタブロイドの『ザ・サン』紙なども書き、ちょっとした話題になっているが、今年のブリット・アワードでアルバム未発表にして批評家賞を受賞した大型新人のデビュー・アルバムを、『NME』はこう評した。
 「昨年アホのように売れまくった催眠性のクソMORの焼き直し」
 このアンガーに満ちたレヴューは、現在のUKのストリートのムードを反映している。
 もはや、催眠術にかかってうっとりとまどろんでいる場合ではない。

DUM-DUM PARTY - ele-king

 今週土曜日の6月29日、渋谷O-WEST BUILDING(O-WEST・O-nest・7th FLOOR 三会場同時開催)、「DUM-DUM PARTY」がいよいよ開催されます。何度も言いますが、3時開場のバーベキューありです。しかも、早割制度もあり!
 追加の出演者の報告もあります。高田馬場のジョイ・ディヴィジョン「トリプルファイヤー」内田万里(Vo.Key.)、石井竜太(Gt.)、安西卓丸(Ba.Vo.)からなるただのJ-POPバンド、ふくろうず。昨年YouTubeにアップされた楽曲"RUFF"、そしてアルバム「Where are you going?」で、シーンから大きな注目を集めてきた若きヒップホップ・グループ、LowPass。公募枠では、狂気の出演が決定しました。最終のメンツはこちらでご確認を。はっきり言って、今後あり得ないほど、かなりすごいメンツです。

 また、中目黒の激ウマチリドッグ「Chillita」も出店。そして、最上階7thFLOORで繰り広げられるBBQをとり仕切る焼き奉行 aka長州ちからも突如焼き肉リハを敢行。 https://www.youtube.com/watch?v=HZqAxn6Ri_0

 以下、「DUM-DUM LLP」からややこしいメールです。
 ややこしいですが、3時から5時までだけ見たい人は、早割制度を使いましょう。帰るときにリストバンドを返せば良いだけです。
 しかも、3時に入場して、最後10時まで見ていった生存者には「お疲れ様」の500円キャッシュバックもあります。
 また、安く見たければ、高円寺の「DUM-DUM LLP」(https://www.dum-dum.tv/)でチケット買うことです。
 それでは、皆様、開場でお会いしましょう!

■HAPPY HOUR! !制度
15時~17時の出演者しか都合で観れないのに~という方に朗報です。
15時~17時でお帰りの方はリストバンドと引き換えに¥4,000キャッシュバックします
(注1※17:00~17:15分まで会場リストバンド交換所でお返しします!)
(注2※ひとまずは¥6,300か¥5,250のチケットをご購入ください!!その後のキャッシュバックになります。)

■最上階7thFLOORで開催のBBQ大会
15時~16時まではBBQ担当:長州ちからくんの振舞いBBQ(無料)します。
16時~18時までは有料制のBBQとなります~!
※振舞いBBQに関しては量を求められても困ります。お裾分けの精神で捉えて頂けたら!

■最初から最後まで観たら¥500キャッシュバックに挑戦したい方へ!
リストバンドは14時から引き換え開始します。15時目安で引き換えお願いします!
何故なら15時~O-WESTは15時開演となりますので、、、。渋家から盛り上がりましょう?





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