「K A R Y Y N」と一致するもの

大森靖子 - ele-king

 大森靖子が大森靖子をやらずとも、あるいは誰かが大森靖子的な何かをやったかもしれない。実際、女子のシンガー/ソングライターはいま、ちょっとしたブームだ。だが、じゃあ、いったい他に誰がいた? いま、大森靖子ほど、女に生まれたことを呪い、またそれを強く受け止めている歌い手もいない。もっと言えば、いま、女子が女子であることを祝福するには、いちど呪わざるを得ないのだろうかとさえ、彼女の歌を聴いていると思えてくる。大森靖子のセカンド・フルレンス『絶対少女』は、女子への祝福と呪いとの屈辱的なせめぎ合いの果てにやっと吐き出されたジュエリーか汚物のように思える。

 たとえば、『女子とニューヨーク』(メディア総合研究所)等の著作で知られる山崎まどかさんのブログ・エントリ「鏡よ鏡――〈わたしは可愛い? それともブス?〉と問いかける少女たち」で紹介された、YouTubeに自撮り動画をアップし、自分のルックス・レベルを世界に向けて問いかける十代の女の子たちは、自らを呪いにかけているのだろうか? それとも、呪いを解くまじないを唱えているのだろうか? いずれにせよ、自分が何をしていたのかを少女たちが自覚するような歳になったときに、彼女らは何か冷たい壁にぶつかるのだろう。ふと顔を上げ、その壁が自分を映した鏡であることを知ったとき、彼女たちはどんな歌を歌えるのだろうか。
 もちろん、そうしたこじれないしは壁のようなものを、ある年齢の地点においてスルーできるようになることこそが、女子の処世であることはほぼ間違いない。だが、『絶対少女』はそうではない。そんな生き辛さへのアジャストなどまっぴら御免だと言わんばかりだ。だから、僕は彼女の言葉を受け取り、正面から眺め、いちど裏返し、また元に戻し、もう一度裏返してみて、迷いながらもやっと受け取ることになる。なにせ、一曲め“絶対彼女”の最初のラインからして「ディズニーランドに住もうとおもうの」なのだから。椎名林檎のジャケをパロディとして仕込まざるを得なかった前作『魔法が使えないなら死にたい』を聴いた人間であればこそ、こうした何気ないセンテンスの裏に何重もの意味を見てしまうハズ。
 そう、マスメディア・レベルで暴力的に欲望される「こんな風にして世間的に/対男性的に欲望されるべきふつうの女性像」をヒリヒリと内面化し、社会人の彼氏の隣を歩ける服とやらに袖を通し、やっぱり脱いでみたりして、それにウンザリしつつも完全には拒否しきれない自分を何歩も引いた場所から冷めるように自覚し、あるいは端的に美しい女子に女子として萌えながら、かつ、そんな自分のような女子に名前を付けてさらに外側から消費の材料にしようとする市場の要請と、それをさらに外側から表現の前提として踏まえざるを得ないという、自意識の奈落をどこまでも再帰させたがんじがらめの場所で……大森靖子はそれでも何かを歌っている。とても力強い声で。ここでは呪いが祝福され、祝福が呪われていく。僕はこんな歌を他に聴いたことがない。

 アルバムは、結婚・出産という女子の「ふつうの幸せ」とされるものを合わせ鏡の迷宮に陥れるシンセ・ポップ“絶対彼女”で幕を開け、結論を急ぐなら、それをオモテの意味で全肯定するタンポポの“I & YOU & I & YOU & I”を弾き語りカバーして終わる。この、〈ハロー! プロジェクト〉の歴史から言ってもヒット曲/有名曲とは言い難いナンバーがアルバムの象徴として選択されていることからも、これが単なるボーナス・トラック的な位置づけでないことは明白だろう(そもそもこの曲はシングルでさえなく、2002年にリリースされたベスト盤のために用意された新録曲である)。さらに言えば、この曲にバトンを渡す“君と映画”という曲は、タンポポに対する大森靖子からのアンサーのような曲になっている。おまけに、奥野真哉(ソウル・フラワー・ユニオン)が軽快に鍵盤をさばくロックンロール・アレンジになっているが、これはまるで……70年代のブルース・スプリングスティーンじゃないか(!)。
 音についてもう少し触れておこう。アレンジのヴァリエーションはおそらく前作以上で、前述の“絶対彼女”はディスコ・ポップだし、前作で“新宿”のトラックを担当したカメダタクは、(((さらうんど)))を意識したようなシンセ・ポップ“ミッドナイト清純異性交遊”を提案しており、導入は非常に煌びやか。あるいは、ソフトなフォーク・タッチの“エンドレスダンス”の印象もあってか、一瞬、ポップ・ポテンシャルと引き換えにエッジを失ってしまったアルバムに思えるほどだ。だが、それも“あまい”のイントロが鳴るまで。アコースティック・ギターの凛とした響き、サビで合流するグランジ風ギターのダウンバースト、そこに漂う大森の歌声は聴き手の緊張を強いるとともに、とても澄み切っている。そして、同様のスタイルを引き継ぎながらも大森の絶唱でそこを破っていく“Over The Party”は序盤のハイライトだろう。

 大事なことなので改めて書いておくが、本作のプロデュースはカーネーションの直枝政広が務めている。ゲストも多彩で、たとえば“展覧会の絵”では梅津和時がカオティックなサックスを吹きこんでいる。だが、玄人たちはいずれも裏方に徹している。アルバムを何度も聴いていくなかで立ち上がってくるのは、やはり中盤の弾き語りを軸にした彼女の表情豊かな歌声であり、選び抜かれた言葉だ(「嫌い」を連呼することで「キラキラ」を浮かび上がらせる遊び心なんかもある)。
 もしかしたらどこかに、「ふつうの幸せ」をいちどは選び取り、その自撮りをアップしたSNSの前で更新ボタンをだらだらと押すなかで、思わず鏡に映った自分に何年かぶりに衝突してしまった女子がいるかもしれない。そこに限りなく近いポイントで生み出された“絶対彼女”の両義性と、“I & YOU & I & YOU & I”が象徴するある種のベタさ。『絶対少女』は、この遠く離れた点と点を繋ぐ、あるいは繋ごうとする、呪いと祝福の連なりである。もちろん、その軌跡は他人にとってはなんの補助線にもならないだろう。いま、大森靖子によってたまたまこういう線が引かれた、というだけのことだ。
 しかし、前作までの彼女には、その未知数ぶりと表面的なイメージにより、勝手な役割意識を押し付けられる隙があったと言えばあっただろう。それがここに来て、それらのノイズをはねのける(ねじれつつも)太い芯を持つに至った本作を前に、ある種の失望を露わにする男の子と、勝手に裏切られて傷つけられたような気になる女の子の、そのどちらの姿をも、僕は勝手に想像してしまう。『絶対少女』は、あなたのサプリメントにはおそらくなり得ないし、あなたが期待した役割のいずれをも担っていない。しかし、だからこそ世に問われる価値があるのだろう。蜷川実花のカメラの前で美しく微笑む彼女を見ていると、少なくともそこに後悔らしきものは感じられない。
 大森靖子、26歳、「Born to Hate」から「Born to Love」へとなりふり構わず駆け抜ける、堂々の代表作だ。

 高畑勲監督のジブリ最新作映画『かぐや姫の物語』、ご覧になりましたか? 人目もはばからずふわわとあくびをし、カエルの真似をしてケロケロ這う無邪気な乳幼児時代のかぐや姫、激萌えでした。少女に成長してからも粗末な衣服を着て泥だらけで野山を駆け回っていた彼女は、翁からプレゼントされたピンクの薄衣を見るや目を輝かせ、衣を羽織って大喜びで家中を飛び回ります。ピンクの服、そしてお姫様として与えられた大きなお屋敷にときめくかぐや姫の気持ちは、きっと純粋なものだったはず。しかしそこからはじまる、欲望の客体「女」としてひたすら自我を殺すことを強要されるかぐや姫の怒りと絶望の描写には、娘を育てる身として大変心が痛んだものです(求婚しにきた浮気男を試すために本妻と入れ替わるという『ロンドンハーツ』みたいなドッキリには笑いましたけど)。

 純粋な気持ちでピンクやプリンセスに憧れているうちに、「客体として生きよ」という世間からのメッセージを刷り込まれる。狭苦しい「女」の領域から抜け出したいと願っても、世間との軋轢は免れ得ず、いつしか自我を手放して価値観を世間に同化させてしまう。最後まで抵抗しながらもすべての記憶と感情を失って月に帰ったかぐや姫は、こうした女性たちのあり方を暗示しているようにも見えます。この問題意識はアメリカの女性たちにはなじみ深いものであるらしく、問題解決のためのさまざまな試みが女性自身の手でなされているようです。

Girls.
You think you know what we want, girls.
Pink and pretty it's girls.
Just like the 50's it's girls.

ガールズ
私たち女の子が欲しがるものが何か、わかってると思ってるでしょ
ピンクにカワイイもの、それが女の子
まるで50年代みたい

You like to buy us pink toys
and everything else is for boys
and you can always get us dolls
and we'll grow up like them... false.

みんなピンクのおもちゃを私たちに買い与えたがる
それ以外のおもちゃはみんな男の子のもの
いつだって女の子には人形を与えておけばいい
そうすればお人形さんみたいに育つだろうってね
……なわけないし

It's time to change.
We deserve to see a range.
'Cause all our toys look just the same
and we would like to use our brains.
We are all more than princess maids.

今こそ変わるとき
女の子も広い選択肢を知る価値がある
女の子用のおもちゃはみんな同じに見えるけど
女の子だって頭を使いたいの
私たちはただのプリンセスのメイドじゃない

Girls to build the spaceship,
Girls to code the new app,
Girls to grow up knowing
they can engineer that.

宇宙船を造る女の子
新しいアプリをコーディングする女の子
女の子にだってそういうものが設計できるって
学びながら成長する女の子

Girls.
That's all we really need is Girls.
To bring us up to speed it's Girls.
Our opportunity is Girls.
Don't underestimate Girls.

ガールズ、それが女の子に本当に必要なこと
私たちにスピードを
女の子であることが、私たちのチャンス
女の子を見くびらないで


 これは女児向けのエンジニアリング玩具「Goldieblox」のプロモーション動画。音楽好きのみなさんならすでにお気づきのとおり、これはビースティ・ボーイズ“ガールズ”のパロディです。「皿を洗う女の子、俺の部屋を掃除する女の子、洗濯する女の子、俺たちが女の子に本当に求めてることはそれだけ」というヤンチャな歌詞が、見事に真逆の意味に入れ替わっています。

「Golodiebox」は大資本の企業が販売している玩具ではありません。スタンフォード大学でエンジニアリングを学んだデビー・スターリング(Debbie Sterling)というひとりの若い女性のアイディアから生まれたもの。小さな女の子にもエンジニアリングの楽しさを伝えるおもちゃが必要だと考えた彼女は、クラウドファンディング・サービス「Kickstarter」で目標額15万ドルをはるかに上回る28万ドルを獲得し、2012年10月に会社を設立。トイザらスと全国流通契約を結んだときに制作された、ピンクまみれの女児玩具コーナーを女児3人組が襲撃するというプロモーション動画がセンセーショナルだったこともあり、一躍ネットの注目を集めたのです。小さな女の子は、女児向けのカラーリングを施された玩具以外はすべて男の子向けだと考える傾向があると言われています。そのため、組み立て系の玩具が置いてあるコーナーに多くの女児は寄りつかないとも。そこで「Goldieblox」はピンク、ラベンダー、水色という定番の女児玩具カラーと、いるかのバレリーナや気の強いネコといったキャラクターを採用し、女児向けであることをわかりやすくアピール。さらにかわいい絵本風のブックレットも付け、物語に没入する感覚で組み立て玩具を楽しめるようになっています。

 上記の“ガールズ”パロディ動画は瞬く間にネットに広がり、700万回以上も再生される人気動画となりました。そして今年11月、「Goldieblox」の知名度をさらに高める出来事が起きました。ビースティ・ボーイズ側が、楽曲の使用許可を得ていないことを問いただすクレームをGoldiebloxに送ったのです。そしてこれを受けたGoldieblox側が、実際に訴えられる前に「著作権侵害ではない」とする先制攻撃的な訴訟を起こすという斜め上の展開に。このユニークな騒動は各メディアで取り上げられ、「Goldieblox」は多くの人の目に触れることとなりました。問題の動画がステレオタイプなジェンダー観を批評するパロディ作品と認められるのか、それともただの著作権侵害と判断されるのか、法律に疎い私はわかりません。ただ、LAタイムスの記事によれば、SNS上の反応は圧倒的にGoldieblox側に好意的だとのこと。だいたいにおいてフェミニスト的な主張は笑いものになって終わることが多いのですが、ひとりの女性の奮闘で世間の空気が変わるという事態に勇気づけられずにはおれません。訴えたわけでもないのに一方的に悪者にされてしまったビースティ・ボーイズはお気の毒ですが……。

※訴訟を起こされた後にビースティ・ボーイズが発表した公開書簡では、Goldiebloxへのリスペクトを表明しつつ、あくまで商品の宣伝に自分たちの楽曲を使わせないという従来からのバンドの方針を強調しています。この方針が昨年亡くなったビースティ・ボーイズのメンバー、アダム・ヤウクの遺志によるものであることを知ったGoldiebloxは著作権侵害を指摘された動画を取り下げ、ビースティ・ボーイズと和解する姿勢を見せました。なお、メンバーのアドロックことアダム・ホロヴィッツの奥さんは、筋金入りのフェミニストバンド「ビキニ・キル」のキャサリン・ハンナ。

「女の子は、“さすが〜”“知らなかった〜”“すご〜い”“センスいい〜”“そうなんだ〜”だけ言っていればいいんだよ」というような言説は、いまでも少なくありません。「ほ〜うまいことあいうえお作文にまとめたもんだね〜」と感心する気持ちもあるのですが、同時に女の子を育てるのが怖くなることがあります。「わたしこんなことできたの!」と報告されるたびに褒めて励まして自尊心を育むこと、これが将来生きていく上で全部裏目に出てしまうのではないかと。でも世間はうつろいやすく、知恵と技術とプレゼン能力さえあればほんの少しずつでも変えることができる、変えるのは、未来を生きる女の子自身。そう考えれば、女の子を育てることに希望がわいてきますし、自分にだって何かできることがあるのではないかと思えてきます。

 もしもかぐや姫に翁が与えたものが、ピンクの衣に大きなお屋敷ではなく、ピンクの大工道具だったら? はたまた自由にアプリをコーディングできる開発環境だったら? 無数に存在する幼いかぐや姫たちの、そのはつらつとした自我を守るためにできることを考えるのが、翁・媼サイドたる私たちの務めなのかもしれません。



ギークマム 21世紀のママと家族のための実験、工作、冒険アイデア
(オライリー・ジャパン)
著者:Natania Barron、Kathy Ceceri、Corrina Lawson、Jenny Wiliams
翻訳:星野 靖子、堀越 英美
定価:2310円(本体2200円+税)
A5 240頁
ISBN 978-4-87311-636-5
発売日:2013/10 Amazon

Bathsの素敵な12月 - ele-king

木津:やってまいりました、ゆうほとつよしのアラサー女子力対決「とびっきり素敵な12月」のコーナー。

橋元:勝てる気がしませんね。

木津:闘いましょうよ(笑)! 年末といえば来年の星占い記事とクリスマスでしょう? 橋元さん、クリスマス・ケーキもう決めました? それと自分へのごほうび♡

橋元:木津さんはあれでしょう? ジャスティン・ヴァーノン(ボン・イヴェール)の痛ケーキ。……あ、ちがうわ。お得意の〈ピエール・エルメ〉ね!

木津:だってこの美しさですよ! 今年の僕のケーキは「エラ」です。あー、ワインも買っちゃおうー。

橋元:「エマ」じゃないんだ。それにしても、いずれ劣らぬご褒美価格。「エラ」の赤い艶はとくにラグジュアリーですね。その点はシャアザク・ケーキもいい勝負なんですがね。

木津:オ、オタクリスマス……。まあ、クリスマスを楽しまないと年越せないですよ。締めくくり、せっかくなんで満喫しましょうね!

橋元:もちろんです。SNSが普及してから、年中行事の果たす役割が急に大きくなったように思いますね。それはいいとして、何か素敵な12月のプランはありますか?

木津:クリスマス・マーケットは行くとして、ライヴや音楽イヴェントも満喫して年を終えたいですねー。

橋元:そう、12月は本当に楽しそうなイヴェントがたくさんあります。今日はそのなかから、13日(金)にスタートするLAのビートメイカー、バス(Baths)くんの来日ツアーについてお話しましょうか。バスのセカンド・フル『オブシディアン』は、木津さん、どうでした?


左・Cerulean(2010)/ 右・Obsidian(2013)

木津:いや、前作(デビュー・フル『セルリアン』)のイメージがけっこうクリーンな感じ、やわらかな感じだったので、今回の陰影にはビックリしました。が、ある意味しっくりもきて。ダークで烈しいモチーフになってますけど、なんていうか、汚くはけっしてないんですよね。思春期的な潔癖性というか。

橋元:そうそう。前作のモチーフが「天上」のイメージなら、今作は「地獄」ですね。実際に『セルリアン』という色には天上のイメージがあったといいますし、『オブシディアン』は黒死病(ペスト)を題材にした中世の絵画からインスピレーションを得たといいます。1枚めから2枚めであまりにあからさまに天から地下へ直滑降しているんですが、その直滑降っぷりが本当に思春期的で潔癖的。
彼自身はハタチを過ぎているんですが(笑)、あのアンファン・テリブルな雰囲気というのはずっと失われないですね。ドリーミーだけれども攻撃的。14才の攻撃性です。それは両作ともそう。

木津:ドリーミーというキーワードは健在ですね。ゴシックなモチーフに惹かれる感覚、っていうのはある種の暗さの夢想ですし。ノイジーなんだけど聴いている感覚としては、すごくふわふわできるというか。

橋元:わかります。暗さがそのままロマンティシズムに結びついていますよね。「闇落ち」のドラマツルギーみたいなものがあって、『オブシディアン』はそういうものが根本に持つロマンチックでドラマチックな感覚があふれていると思います。もちろん無意識なんですけど。

木津:前作がチルウェイヴからの距離で測れた作品だったとすれば、『オブシディアン』はインダストリアルな感触もあって、すごくいまっぽい。天然かもしれないけど、感性もアンテナも鋭いですよね。

橋元:きっと天然ですね。インダストリアルを方法として意識しているとは思えないですし、あるいは今作でちょっと顔を覗かせているブラックメタル的な感覚も、「わりとそういう気分だった」というところだと思います。
でも“アース・デス”とかびっくりしました。そもそもはデイデラスに見初められて、〈ロウ・エンド・セオリー〉でDJを務めたりというキャリアがあるわけですけど、そういう「LAビート・シーン」を引っぱろうというような意識はすでに微塵もなさそうですね。ファーストのあの跳ね回って錯綜するビートが姿を消しつつあります。

木津:たしかに。でも、確実にシーンの重要なキャラクターでもあるのがおもしろいですね。僕がいちばん最近にバスくんの名前を見たのは、気鋭の23歳トラック・メイカー、ライアン・ヘムズワースのアルバムのゲストでです。彼はカナダ人ですけど、やっぱりLAビート・シーンに足を突っ込んでるひとで。僕はその「思春期的なムード」を彼にも感じ取ったんですけど、あの界隈ってそういう叙情性と親和性のあるところなのかも、じつは。ノサッジ・シングなんかもですけど。

橋元:そうですね、ティーブスとかもそう。恐れることなく叙情しますよね。それはやっぱり、彼らの音楽の基本がビートにあるなんだと思います。ドリーミーなモラトリアム感覚はチルウェイヴにも通じるんだけど、チルウェイヴの方がちょっと苦くて、かつぼんやりしていて、方法的にも甘い。適当な言い方だけど20代の甘さみたいなものを感じます(笑)。対するにバス勢の(10代的な)攻撃性は、テクニックとファンタジックな想像力に支えられたものだと思いませんか?

“Lovely Bloodflow”(『Cerulean』収録)

 このMVは『もののけ姫』のイメージだったそうなんですけど、じつに構築的というか、コンセプトの根幹がしっかりしている。ドリーミーというよりもファンタジックというほうがハマると思うんです。ぼんやりしているんじゃなくて、積極的に夢を見にいっている。彼らの複雑でアブストラクトなビート構築というのは、こういう想像力と噛み合って存在しているものだと思います。

木津:なるほど。ファンタジックというのはわかります。『セルリアン』は子どもの空想が元気よく暴れている、無邪気さゆえの危なさ、みたいなものも感じましたね。

橋元:あと、彼らがその意味で大人にならないのかなるのか問題は興味があります。映画は詳しくないんですけど、『テッド』とか? 大人になりきれない成人のグダグダをおもしろく描きつつも、アメリカの映画は、最後は何らかのかたちで彼らが社会的な責任を引き受けるという成長譚になりがちだってききます。
その功罪は措くにしても、「大人になったからつまんなくなった」とか「子どもを突き通しているからおもしろい」とかそういう短絡を拒絶する「なんだかスゴイ展開」をバスの少年性には期待したいです。

木津:成長譚、なりがちですねー。音楽ではアニコレ以降、その境目がどんどんぼやけていったけど、ただ映画でもアメコミ原作ものなんかは、そういう感覚にも抵触してるかもしれないです。その辺りの思春期性の「揺れ」に注目ですね。

橋元:ダイナミックに「揺れ」てますよねー。さて、バスくんのパーソナリティなんですが、先ほどの〈ジブリ〉の影響を指摘するまでもなく、かなり日本のカルチャーには親しみを持っているみたいですね。

木津:おお、OTAKUですか。

橋元:モラトリアム云々という話を置いておくにしても、かなりのポケモン好きらしいですし。

初来日の際に真っ先に向かった〈ポケモンセンター〉前でのもの。

木津:はははは。でもポケモンっていうのがほんと、男の子感あっていいですねー。変にエグい方向ではなくて(笑)。

橋元:そういうところもキュートなんですけど、その表出がけっこうアートっぽかったりするところもミソですね。ツイッターなんかには自分のイラストも投下するし、自身の全身タイツ姿をとってもイマジナティヴに撮ってアップしたりね、多才だと思います。

木津:クリエイションもするんですね。ビョークが好きだというのもなんだか頷ける。

橋元:そうそう、ビョークすごく好きみたいですね。お父さんがテレビ・ドラマとかの脚本家で、お母さんが画家だったかな。お家の環境から受けた影響も少なくないでしょうね。彼に実際に会うと感じるんですけど、すごくタレンテッドなというか、「お隣の兄ちゃん」って感じはさらさらないんですよ。変人でも変態でもないんだけど、天才型な雰囲気をバンバン出してます。


Baths / Pop Music / False B-Side / Tugboat(2011)
Bサイド集。ジャケットの絵はBaths本人のもの

木津:橋元さんはインタヴューされてますもんねー。『イナズマイレブン』のノートを見てすごく喜んでくれたとか……。あと、バスくんが描いたキュートすぎる絵も強烈に覚えてますよ。

橋元:そうですよね。彼のツイッターなんかを見ていると、無邪気にオジサン好きに見えるんですが、あれって無邪気に見えちゃうほど複雑な感覚が隠れていたりするんですかね?

木津:たぶん複雑な回路は彼のなかにあると思うんですけど、アウトプットを無邪気にしている時点で、僕にはひとつの態度表明に思えますね。たしかに僕は、男が好きな男ということを異化できるひとの表現にほうにより興味はありますけど、あの無邪気さっていうのは、知恵なんだと思うんですよね。つまり、社会的なアングルを一切廃した場所で、自分の感情(とリビドー)が正しいんだ、という。やっぱりオタク少年っぽいんですよ。そういう意味では理解はできますよ。でもバスくん、キレイなマッチョが好きなんですねえ……。

橋元:キレイなマッチョ(笑)。彼のまわりのオジサンにはデイデラスがいますけど、木津さんはデイデラスのヒゲはどうです?

木津:僕が好きなヒゲは、順に髭(口ヒゲ)、髯(ほおヒゲ)、鬚(あごヒゲ)なんですけど、口ヒゲがないのは大きくマイナスですよねえ……独自のセンス出しすぎ……。

橋元:はは。わっかんねー……。

木津:でも、奥さんとラブラブなのはいいです。奥さんを大事にしているオーラのある男のセクシーさってありますよね~。ともかく、知的にぶっ飛んだひとですよね。ヒゲはイマイチでも、存在は大好きです。

橋元:なるほど、奥さんのローラ・ダーリントンとは付き合いも古そうな感じが素敵ですね。ジェントルがネタなようでいてとても本気っていうのも好きです。キマってます。

木津:ライヴ、僕は観たことないんですけど、どういう感じですか? 音源を聴く感じだと、歌が重要なんじゃないかなという予想があるんですけど。

橋元:はい。ライヴはとにかくエネルギーに満ちていて。それこそデイデラスが華麗にサンプラーのパッドやツマミをいじるように、ヴィジュアル体験としてもかなり充実したものがあります。京都はseihoさんも出演されますが、彼との競演というのはちょっとすごいと思いますよ。アルバムのヴァージョンの何割増の音数、ノイズ。音圧ももちろん比べ物にならないですし、当然のこと、彼のライヴの本懐は音源の再現・再生にはありませんね。

木津:へえー! ノイズばりばりっていうのはいいですね!

橋元:ご指摘のように歌(メロディ)は重要で、とにかく声量もすごい。あのファルセットは吠えるように出てきます。なんだかそういうことも含めてマンガっぽい存在というか、けっこう規格外ですね。

木津:ああ、エクストリームな感じになっちゃうんですね。それはすごく理に敵ってる感じしますね。

橋元:ただ、今作は音楽的にずいぶんと装いが変わっているので、どんなかたちになるのか楽しみです。カラオケ状態ってことはないと思いますが、さらに歌に重点が移っているとも考えられますよね。

木津:今年は歌の年でもありましたし、声とメロディを聴きたい気分ですよね。バスくんの歌心を発見できたら、まさにドンピシャなんですけどね。

橋元:彼にはビートを跳ねて暴れまわらせる、本当に奔放でやんちゃな天使といった佇まいがあるんですけど、ビートを抑圧する展開があるとすれば、彼はその分のエネルギーをどうやって放出するんだろう……。

木津:抑圧があるってことは抑揚があるってことですから、その分ビートが暴れる展開のカタルシスはあるのかのしれない。あとはやっぱり、何よりも彼のエモーショナルな部分を僕は見たいですね。

橋元:その点はもう、エモーションの塊ですよ! 12月の空からね、バスのエモーションがキラキラ降ってきます。そういうことがやれちゃう個性、やれちゃう音ですね。
 ちなみにバスは4月16日生まれということなので牡羊座ですけれども、牡羊座ってどんな感じなんです? 相性ですとか。

木津:えっ、橋元さんとの相性ですか(笑)? 牡羊座も獅子座も火の星座だからバッチリですよ! ちょっと暑苦しい相性ですね。牡羊座は猪突猛進で、直感を信じるタイプです……バス、そんなところありますね。ちょっと納得しましたよ。

橋元:ははは! わたしとの相性はまあおいといて(笑)。じゃあ獅子座の人は運命の出会いになるツアーかもしれませんね。

 11月といえばホリディ。今回はホリディ前後のイベント・レポートをお届けします。

■11/23 (Sat)
 ホリディ1週間前の週末は、NYから約4時間北のロードアイランド州のプロヴィデンスへ遠征。今までたくさんの伝説を作ってきたロフトビル’ビルディング16’の最後のショーが行われた。昔ライトニング・ボルトが住んでいたフォート・サンダー(コンタクトレコーズからの『u.s. pop life vol.11 トリビュート・トゥ・フォート・サンダーCD』に日本語で詳しく解説)の現在版とも言えるこのビルディング16。このショーを最後に、このビルは(も)立ち退きになる。住所は掲載していないのに、どこから集まったのかプロヴィデンスのキッズたちで大混雑。バスルーム近くに真っ赤な棺桶があり、ビルディング16にメッセージを書いて、カードを棺桶に入れるようになっている。ショーのクライマックスは、ハウス・バンドのワット・チアー・ブリゲイト。ボリウッド、バルカンズ、ニューオリンズ、サンバ等々をミックスした19人(!)のブラス・バンドで、子供から大人までを巻き込むお祭りバンドである。ステージに入りきらないので、フロアやスピーカーの上にもメンバーがいるし、観客が天井によじ上ったりするのは当たり前で、メンバーが観客にダイブし、ドラムごとドラマーを持ち上げたり、観客とバンドの盛り上がりの半端ない事。フィナーレでは、バンドがビルディング16の棺桶を、外に持ち出しマーチング(バンドは、外でもプレイを続ける)、観客はひとりひとり花火を渡され、棺桶に火をつけ燃やしてしまう。火力は相当強いし火事にならないのかと心配したが、勢い良く燃えて形がなくなって行く棺桶を見て、ぐっと心に突き刺さる物があった。長い間お疲れさま。これがプロヴィデンスのパーティ・スタイルのようだ。


ラストショーの写真集
https://everydayilive.com/bands/building16farewell/

Building 16

■11/25 (Mon)
 NYに戻ると、少し前から噂されていたロンドンのレコードショップ、ラフトレードのNY店がウィリアムスバーグ/グリーンポイント・エリアにオープンした(https://www.roughtradenyc.com)。元々HBOの倉庫だった場所(イースト・ロンドンの本店より3倍大きい)は、レコード店兼カフェ(byファイブ・リーヴス)、ギャラリー、音楽会場などの多目的スペース。初日(11/25)は、スカイ・フェレイラ(フリーw/CD購入)、チャールス・ブラッドリー(フリー)のインストアがあった。スカイはきっぱり諦め、チャールス・ブラッドリーを目指して行く。先に行った友だちは、ワンブロック以上の行列ができて入れなかったと言っていたが、タイミングよく前に5人ぐらい待っていただけで5分ぐらいで入れた。遅めに着いて正解。
 新譜100%の店内は、まだ空いている棚が多かったが、1階が新譜レコード/CD、メインドラッグが展開するギア・コーナー。2階には本&雑誌コーナー、ロンドンとNYをつなぐデジタル・ニュース、ガーディアンによるブース、アートギャラリーなどの分かれた小さいセクションがある。店内の作りがタワーレコード的、と思ったのはメガストアだからか。アートギャラリーの最初のキュレーターは、チルディッシュ・ガンビノで、彼は12/8でここでショーも行うのだが、ブライアン・ロッティンガーによるアート作品、ドナルド・グローバーのベッドルームの再現(サイケデリック・レインボウのライト・デザイン)が展示されていた。
 音楽会場は250人を収容、イスも設置されたバルコニーがあり、バワリーボールルームの縮小版のようだった。2階の後ろにはピンポンテーブルが2台設置されていた(チケット制のショーの時にはないとの事)。
 ジェイムス・ブラウンに影響を受けたというチャールス・ブラッドリーは、ステージにいるだけでカリスマ性があり、独特のソウルフルで無敵の動きを惜しげなく披露。彼を見ていると思わず笑顔になるし、バンドもとても楽しそうだ。近くで見れること自体がレアな、64歳の彼をオープニング・ナイトに持ってくるのは、さすがラフトレード。ショーの後も、追い出される事なくバーでハングアウトしたり、レコードを探しに行ったり、2階でピンポンしたり、ここはアミューズメント満載。ダニー・ブラウン、マシュー・E・ホワイトのフリーショー、ソールドアウトのテレヴィジョンのショーが終わり、12/3はジョン・グラント(フリーw/CD購入)、12/6はアンドリュー・バード(ソールドアウト)、12/6はアララス(ソールドアウト)、12/7はダイブ(ソールドアウト)、12/8はニック・ロウ(フリーw/CD購入)、などのフリー&チケット制のショーが続く。ブッキングを担当しているのがバワリー・プレゼンツなので、納得のラインナップである。
 キャプチャード・トラックスの記事でも書いたように、最近グリーンポイントエリアに、レコード店が密集している。
https://www.thelmagazine.com/TheMeasure/archives/2013/07/30/greenpoint-is-becoming-the-best-record-store-hood-in-brooklyn
 2013年にレコード店をオープンするという事自体が大胆だと思うが、それぞれのインディ・ショップは自分たちのカラーを売りにし、それに対抗するラフトレードは、長年の歴史もあり、レコードセレクションの特徴(ラフトレード限定版の物を多数扱う)と、多目的スペースにすることで、レコード店という場所の定義を変えるかもと期待が高まる。

https://www.roughtradenyc.com
https://www.brooklynvegan.com/archives/2013/11/some_very_initi.html
https://www.brooklynvegan.com/archives/2013/11/sky_ferreira_pl_3.html

rough trade nyc

■11/28 (Thu)
 音楽関係の仕事や、自営業をしている限り、ホリディと言っても、いつもと変わらずなのだが、アメリカ人は自分の田舎へと帰って行くため、ホリディNYは静かで、仕事をするには実はもってこい。夜になると、観光客と何処にも行けない移住者が集まりだし、ささやかにパーティをするのである。今年の著者のサンクスギヴィングは、ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンドを主催するアーサーの仕事場兼のロフトでパーティ。来ている仲間はアーサーのアシスタントをはじめ、ファッション、音楽関係者達なので華やか。サンクスギヴィングと言えばターキー(=七面鳥)なのだが、探究心あるアーサーは今年はグース(=ガチョウ)に挑戦。ガチョウの首でスープを取ったり料理はこなれた感じ。付け合わせのスタッフィング、クランベリー・ソース、グレイビー、マッシュ・ポテト、ビーン・キャセロール、温野菜のグリル、特製のフレッシュ・ペストソースはすべてアーサー作。ゲストは、オックステイル・シチュー(絶品!)、ビーツ・サラダ、マック・アンド・チーズ、ポテト・サラダ、更にスナックなど、これでもかというぐらいのごちそうが振る舞われた。5時に集合をかけたが、みんなの料理&集合事情でディナーが始まったのは結局9時過ぎ。サンクス・ギヴィング・ディナーには良くある事で、料理が出来上がる頃には、つまみ食いをしすぎてお腹いっぱい。ディナーが終わると、来ていた別の友だちの家に移動。そこは、お手製チーズケーキ(プレーンw/ラズベリーソース&チョコ)、コーヒー&サイダー、そしてダンス・パーティと、別の天国が待っていた。月に3、4回ショーもホストする場所なので、パーティの用意は完璧。ディスコボールが周り、サウンドシステムも完備。チーズケーキのあまりのおいしさに倒れそうになり(おばあちゃんのレシピらしい)、ホストの自家製フレッシュミントをインフューズしたウィスキーなど、キャラクターのあるドリンク&楽しい仲間で、サンクスギヴィングという名目のパーティは夜な夜な続いた。この場所はワイルド・キングダム。ウエブサイトはないが、NYに来たら、目の前の高架を通る電車に野次をとばしながら、ベランダでハングアウトするには最高の場所である。

https://williamsburgfashionweekend.com
https://www.ele-king.net/columns/regulars/randomaccessny/001412/

thanks giving dinner

■11/29 (Fri)
 11月からはじまっているブルックリン・ナイト・バザーに参加。2011年からはじまったこのイベントは、ウィリアムスバーグのホリディショッピングの強い見方で、ホリディ時期になると、いろんなエリアに出没していた。今までは、毎年場所を移動していたが、今年はグリーンポイントにようやくパーマネントの場所を見つけ、1年を通してオープンする(夏には、アウトドアのビアガーデンがオープン!)。アジアン・マーケットの雑多な感じをモデルにしたというマーケットは、100ものアーティスト&クラフトショップ、20のフードベンダーなどがすらりと並ぶ。一角には、地元の媒体がオーガナイズするライブショーがあり(ベンダーがない時には1800人収容できる、ブルックリンで2番目に大きい会場となる)、ピンポン・テーブル、インドア・ミニゴルフ、WIFIもあり、仕事できるスペースもある。ラフトレと同じ多目的仕様。去年は、著者の大好きなパックマンのイヤリングを発見したのだが、今年は、キャラクター物はあまり見られず、ジュエリー、洋服からiPhoneケース、タオル・ヘアバンド、古本をベースにした時計、アート・レギンスなどアーティなお店が並ぶ。著者のお勧めブランド、RHLSも出店していた。この日のバンドは、ア・プレイス・トゥ・バリー・ストレンジャー、ドーン・オブ・ミディ、ポンティアック、ウッズマン。ショッピングに夢中になり、ア・プレイス・トゥ・バリー・ストレンジャーしか見れなかったが、映像とスモークで、ほとんどバンドが見えなかった(後で聞いたらスタイルのようだが)。毎週のようにバンドが見れ(オウ・レヴォワール・シモーヌ、ティーン、マーク・デマルコなど)、アーティストの作品が随時入れ替わり、アミューズメントもありで、ハングアウトリストがまた増えた。そして、今日はキャサリン・ハンナのパンク・シンガーの上映会へ。Q&Aやライヴもあるらしい。
https://bkbazaar.com

brooklyn night bazzar

Melt-Banana - ele-king

 本作のリリース前からニュースなどでこのバンドに対して使われている「ノイズコア」という形容にどうもひっかるものがあるのは理由がいろいろあるのだが、まず第一には彼らの演奏はノイジーではあるけども、極めてコントローラブルで再現可能なものなので、「ノイズ」という形容が適切とは思えないという点がある。彼らの演奏は初期のころから一貫してインプロヴィゼーションの要素はかなり少ないはずだ。
 もう一点としては、彼らの出自がハードコアではないという点にある。ハードコア系の企画に出演することは多いが、決してハードコアシーンに属しているわけではない(あるんですよ、シーンっていうのは厳然と)。

 もともと、彼らのルーツはポストパンクやニューウェイヴにあり、初期からのトレードマークであるスライド・ギターは『ノー・ニューヨーク』収録のティーンネイジ・ジーザス&ジャークスにヒントを得ているし、前身バンドを見たことのある人によれば当時はセックス・ギャング・チルドレンやバースデー・パーティなどのニューウェイヴ/ポジティヴ・パンクの影響を感じさせるサウンドだったという。
 94年にリリースされたゼニゲバのK.K.Nullのプロデュース、スティーヴ・アルビニの録音によるファースト『Speak Squeak Creak』で聴けるのはたしかにそうしたポストパンクを高速化したようなサウンドで、スライドギターの多用によりグニャグニャなのに金属的、という独特の感触がある(ところで彼らがずっと精力的に海外ツアーをおこなってきたのは、初期の時点でゼニゲバの姿を見ていたことも影響しているのではないかと思う)。
 当時のドラマーの須藤俊明は自身のドラムスタイルについて、ロバート・ワイアットの影響を受けていると発言している。たしかにいま聴いてみると、ハードコアのドラムとはまた違った、手数の多いドラミングである。
 95年のセカンド『Scratch or Stitch』(前作に続きアルビニのプロデュース、録音はジム・オルーク)も前作の延長にあるサウンドである。この時期にMr.Bungleのオープニングアクトとしてアメリカツアーを行ったことで一気に海外での知名度が上がったと思う。あと、須藤が現在ジムのバンドのメンバーになっているのはこの頃からのつながりなんでしょうね。

 90年代中頃のハードコア・シーンではファストコアとかパワーヴァイオレンスと呼ばれる「速さ」を重視したスタイルが盛り上がっており、メルト・バナナも内外でそうしたバンドと共演する機会が増えてくる。そんななか、須藤が脱退し、元サタニック・ヘルスローターのオオシマが加入(現在はWatchman名義のエレクトロニカ・ユニットで活躍している)。サウンド面では一気にハードコアに接近する。ジョン・ゾーンのレーベル〈Tzadik〉からリリースされたライヴ・アルバムは1〜3枚目までのベスト的な選曲になっているので、ノリの違いを聴き比べても面白いと思う。

 そんなオオシマも4枚目のアルバム『Teeny Shiny』を最後に脱退。以後、固定ドラマーを持たないまま彼らは活動を続けることになる。日本国内と海外でドラマーを分けて活動するというスタイルには何らかの苦労がうかがえるというか、「これからのバンドは海外活動に目を向けるべきだ」みたいなことはよく言われてるけども、ツアー中心の生活ってのはなかなか誰にでもできるってもんでもないんだろうな、という気にさせられる。
 2003年の5枚目『Cell-Scape』で急激にサウンドがエレクトロニックな印象になるのは、固定ドラマーがいなくなったことも関係あるのではないかな、という気はする(まあ単純にギターのエフェクターとかが大きいんだけど)。
 その後、サンプラーを使った打ち込み版メルト・バナナともいうべき「Melt-Banana Lite」というユニットでの活動を平行して行うようになり(Liteによるライヴ・アルバムもリリースされている)、ついにはオリジナル・メンバーのベーシスト、Rikaが脱退。以後、ヴォーカルのYakoとギターのAgataのふたりとなったメルト・バナナは、ベースもドラムもすべて打ち込みという形での継続を選択した。

 とまあいろんなことがあって、ふたりとなったメルト・バナナの初めてのアルバムとなった『Fetch』がリリースされるには、実に8年というブランクがあった。そんなブランクにも関わらず、先行無料ダウンロード・トラックが『Tiny Mix Tapes』での配信だったのをはじめ、発売に際しては多くの海外メディアで取り上げられているのは、その間も毎年精力的なツアーを怠らなかったことによるものが大きいだろう。
 打ち込みになったとはいえ急にEDMとかダブステップになったりするわけもなく、基本的にはバンドサウンドを再現することに注力されているのだが、やはりここ数年来のサウンドの延長で極めてエレクトロニックな感触である。冒頭の話題に戻るけども、メルト・バナナがノイズ的と言われるのはおそらくはギター・サウンドが極めてギターっぽくないからなんじゃないかと思うのだが、むしろエレクトロニック・ミュージックの攻撃的な電子音を聴き慣れた耳には普通に「楽音」として捉えることが可能なんじゃないかと思う。エレキギターの可能性を縦横に拡張し続けているAgataの尽きることないアイデアにはいつも感服する。
 あと、ハイトーンのシャウトを基調とした女性ヴォーカルってなんとなくヒステリックな印象を与えがちなのだけど、Yakoのヴォーカルは常にどこか情念みたいなものを排した感じがあるので、(録音のせいもあるけど)わりとプラスティックな印象をあたえる。この辺も、エレクトロニック・ミュージックと近い感触のもとになっていると思う。

 個人的には何より驚いたのはふたりになってからのライヴである。ステージ後方にずらりとアンプが並び、確認したわけではないがおそらくドラムとベースと、それぞれ別系統でスピーカーから音を出している。ステージそでにラップトップが置かれているが単にトラックを流すのではなく、Yakoが片手にコントローラーみたいなのを持って操作している模様。リズムトラックにギターと歌を乗せた演奏って録音はまだしもライヴだと音色面や「ライヴ感」みたいな部分でどうしても不満が残りがちなんだけど、彼らの演奏に限ってはそういったことはほとんどなかった。

 こうして振り返ってみると、中心になるふたりは不動ながらもメンバーチェンジがしっかりサウンドの変化に結びついていることがわかる。今作は『Cell−Scape』以降の集大成のようなアルバムになったと思うが、今後ふたりになったメルト・バナナが今後さらにエレクトロニックになっていくのか、はたまた新たにベーシストやドラマーを迎えるのか。いずれにしてもとても楽しみだし、彼らを見ているとロックにはまだまだできることがあるんだなあと思えて、とても嬉しい。

Baths、オフショット! - ele-king

 いよいよツアーは来週から!
 バスは最初の来日の折からラップトップとサンプラーを駆使するスキルフルなライヴを行っていたが、あのドリーム感の裏側に、デイデラスに見初められ、〈ロウ・エンド・セオリー〉でのDJを務められるスキルがあるということは重要なポイントだ。もしかすると、セカンド・フル『オブシディアン』から聴きはじめたファンは、彼のそうした側面をあまりご存知ないかもしれない。ぜひ、ライヴ映像なども探してみるといいだろう(https://www.tugboatrecords.jp/)。
 そして見応えある彼のショウをさらに楽しむために、彼の愛すべきキャラクターもあわせてご紹介しよう。


初来日の際に真っ先に向かった〈ポケモンセンター〉前でのもの。
バスは日本のアニメが大好き!
来日の際は〈三鷹の森ジブリ美術館〉にも執着するとのこと。
Lovely Bloodflow”は『もののけ姫』の世界のイメージなのだとか。

2度めの来日では、奈良の鹿が見たかった――。
シカ耳は新しかったね。
ご当地キャラ感も出ています。


今回のヨーロッパツアーを終え、休暇中の写真。
温泉にいったようです。
ちょっと痩せたのかな?

来日情報はこちら。
各公演のゲストも注目アクトばかりだ。
SeihoとBaths対決@京都も、編集部はみんな観にいきたかった! Madeggまで観られるんだから、行ける人はぜひこの機を逃さないように! 放射される熱量が強すぎてハコが発火してしまうんじゃないだろうか。

LAが誇る若きビートメーカーBaths来日公演!!
Tugboat Records presents Baths Live in JAPAN 2013

■12/13(金) 名古屋池下CLUB UPSET
OPEN / START 24:00
ADV ¥4,200 / DOOR ¥4,700(共にドリンク代別)
Act:Baths, DE DE MOUSE + his drummer (Akinori Yamamoto from LITE)
DJ: I-NiO, sau(otopost), LOW-SON(しろー + オクソン)
VJ: Clutch
[Buy] : 9/7(土曜)〜
チケットぴあ(P: 211-365)
ローソンチケット(L: 41184)
e+(https://eplus.jp)
※名古屋公演はオールナイト公演ですのでIDをご持参下さい。

■2013.12.15(日) 京都メトロ
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV¥4,000(+1Drink)/DOOR¥4,500(+1Drink)
Act:Baths,Seiho,Madegg
[Buy] : 発売中
チケットぴあ(P: 208-539)
ローソンチケット(L: 59065)
e+(https://eplus.jp)
前売りメール予約→ticket@metro.ne.jpでも受け付けています。
前日までに、公演日、お名前と枚数を明記してメールして下さい。
前売料金で入場頂けます。

■2013.12.16(月) 渋谷WWW
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV¥4,500(+1Drink)/DOOR¥5,000(+1Drink)
Act: Baths,Taquwami,Sodapop (anticon. Label Manager)
[Buy] :発売中
チケットぴあ(P: 208-502)
ローソンチケット(L: 79947)
e+(https://eplus.jp)


MAD PROFESSOR JAPAN TOUR 2013 - ele-king

 UKダブの伝説、マッド・プロフェッサーが12月13日に東京(代官山ユニット)、14日に大阪(心斎橋CONPASS)で公演をやる。東京公演では七尾 "DRY" 茂大(ドラム)と秋本 "HEAVY" 武士(ベース)からなる、日本最強のレゲエ・リズム・チームドライ&ヘビーの生のダブミックスをマッド・プロフェッサーが手掛けることが決定しているほか、8年振りとなる作品『ANOTHER TRIP from SUN』をリリースしたサイレント・ポエツこと下田法晴もDJで出演。また、「踊ってはいけない国EP」で素晴らしいリミックスを見せたDJヨーグルトもレゲエ・セットを披露。地下のSALOONでは、若きダブ・クリエーターJah-Lightが出演する。そして大阪公演ではBAGDAD CAFE THE trench townが出演。日本人のアクトにも注目が集まるでしょう。

〈東京公演〉
12.13 fri @ 代官山 UNIT
Live Acts: MAD PROFESSOR - Dub Show, DRY&HEAVY - Live Dub Mix by Mad Professor
DJs: Michiharu Shimoda (Silent Poets), DJ Yogurt (Upset Recordings) Reggae/ Dub/ Bass Music Set, Jah-Light
Open/ Start 23:00-
¥3,500 (Advance), ¥4,000 (Door)
Information: 03-5459-8630 (UNIT) https://www.unit-tokyo.com

TICKETS: PIA (P: 217-297), LAWSON (L: 72460), e+ (eplus.jp), diskunion Club Music Shop (渋谷/新宿/下北沢/吉祥寺), DISC SHOP ZERO, DUBSTORE RECORDS, UNIT

〈大阪公演〉
12.14 sat @ 心斎橋 CONPASS
Live Acts: MAD PROFESSOR - Dub Show, BAGDAD CAFE THE trench town
DJ: HAV (SOUL FIRE)
¥3,000 (Advance), ¥3,500 (Door) plus Drink Charge @ Door
Open 20:00, Start 20:30
Information: 06-6243-1666 (CONPASS) https://conpass.jp/

TICKETS: LAWSON (L: 53414), e+ (eplus.jp), CONPASS (Mail Reservation: ticket@osaka-conpass.com)


〈出演者プロフィール〉
■MAD PROFESSOR (ARIWA SOUNDS, UK) https://www.ariwa.com

泣く子も黙るダブ・サイエンティスト、マッド・プロフェッサーは1979年にレーベル&スタジオ「アリワ」設立以来、UKレゲエ・ダブ・シーンの第一人者として、四半世紀以上に渡り最前線で活躍を続ける世界屈指のプロデューサー/アーティストである。その影響力は全てのダンス・ミュージックに及んでいると言っても過言ではない。その信者達は音楽ジャンルや国境を問わず、常にマッド教授の手腕を求め続けている。なかでもマッシヴ・アタックのセカンド・アルバムを全編ダブ・ミックスした『No Protection』は余りにも有名である。伝説のリズム・ユニット、スライ&ロビーとホーン・プレイヤー、ディーン・フレーザーをフィーチャーして制作された『The Dub Revolutionaries』は、2005年度グラミー賞にノミネイトされ話題となった。まだまだ快進撃中、止まることを知らないマッド教授である。ここ近年だけでも、伝説的なベテラン・シンガー、マックス・ロメオ、レゲエDJの始祖ユー・ロイ、レゲエ界の生き神様リー・ペリーに見出されたラヴァーズ・ロックの女王スーザン・カドガン、UKダンスホール・レゲエのベテラン・アーティスト、マッカBのニュー・アルバムをプロデュースしている。自身のアルバムも『Bitter Sweet Dub』『Audio Illusions of Dub』『Roots of Dubstep』などをコンスタントにリリース、最新作はリー・ペリー・プロデュースの金字塔アルバム『Heart of The Congos』で知られるThe CongosのCedric Mytonとのコラボ・アルバム『Cedric Congo meets Mad Professor』を2013年にリリースしたばかりである。相変わらずのワーカホリックぶりを発揮している。最新テクノロジーと超絶ミキシング・テクニックを駆使して行われる、超重低音を轟かせる圧巻のダブ・ショーで存分にブッ飛ばされて下さい。

■DRY&HEAVY
https://ja-jp.facebook.com/Dryheavy
https://twitter.com/DRY_and_HEAVY

七尾 "DRY" 茂大(ドラム)と秋本 "HEAVY" 武士(ベース)というふたりからなる、日本最強のレゲ エ・リズム・チーム。90年、VITAL CONNECTIONなるバンド内にてリズム・コンビである〈DRY&HEAVY〉としての活動をスタート。95年にはLIKKLE MAIや井上青らをフィーチャーした編成と なり、97年の『DRY&HEAVY』でアルバム・デビュー。その重量級のルーツ・レゲエ・サウンドと過激なダブワイズが幅広い注目を集める。その後コンスタントにアルバムをリリースする一方、海外での活動も活発に行って各国で話題となる。 だが、日本屈指のレゲエ・ユニットとして活動を続けていた2001年のフジロック・フェスティヴァルにおいて、秋本が衝撃の脱退宣言。七尾は秋本抜きの編成でDRY&HEAVYを継続し、秋本はGOTH- TRADとのREBEL FAMILIAおよび若手と結成したTHE HEAVYMANNERSにて活発な活動を続けた。 そうしたなか、2010年に七尾と秋本によるオリジナルDRY&HEAVYが奇跡のリユニオン。新時代のサウンドを携え、伝説のリズム・チームが新たな一歩を踏み出す。

■Michiharu Shimoda (Silent Poets) https://www.silentpoets.net
1992年 FILE RECORDSより1st アルバム『6 pieces "sense at this moment"』でデビュー。 現在までに通算8 枚のオリジナル・アルバムと多数のリミックス・アルバムやミニ・アルバムなどをリリース。海外からの評価も高く94 年にドイツの99レーベル、Bellisima UKよりヨーロッパでもアルバムがリリースされる。95年に人気コンピシリーズである「Cafe Del Mar Vol. DOS」に日本人として初めて収録されたのをはじめ、現在までアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどで40作品を超えるコンピレーション・アルバムに楽曲が収録される。2000年にはパリのレーベルYellow Productionsよりアルバム『TO COME...』がリリースされ、翌年にはアメリカのアトランティックよりリリースされる。同年より、下田のソロ・ユニットとなる。活動は多方面に渡り、パリ・コレクション等のフアッションショーの音楽の担当や、他アーティストのプロデュース、リミックス、映画等にも楽曲を提供。活動20周年にあたる2012年、トイズ・ファクトリー時代の音源(Potential Meeting ~ To Come)が世界111カ国のiTunes Storeにて配信開始。2013年9月、自身のレーベル ”ANOTHER TRIP" を設立し、New DUBアルバム『ANOTHER TRIP from SUN』、また前作「SUN」の2013年Newエディション『SUN - Alternative Mix Edition -』を11月20にリリース予定。いよいよSilent Poetsの活動を本格的に再開。2014年リリース予定の10thオリジナルアルバムの制作も同時進行中。

■DJ Yogurt (Upset Recordings) https://www.djyogurt.com
いまはなきCISCO テクノ SHOPでバイヤー勤務しながらDJをはじめ、98年には音楽制作ユニットUpsetsと自身のレーベルUpset Recを始動。以後現在に至る15年間に渡ってテクノ~ハウスからDUB、アンビエント等など幅広い作風の楽曲のレコードやCD、MIX CDのリリースを毎年おこなっている他に、曽我部恵一や奇妙礼太郎トラベルスイング楽団等の歌もの楽曲のダンス・リミックスもおこない、リミックスが収録されたレコードは全て完売して中古価格が定価以上に高騰中のものも。2010年にYogurt & Koyasとしてリリースした『Chill Out』 はIdjut BoysのConradやSoft Rocks達から絶賛。2011年にはテクノ・アルバム『Sounds from Dancefloor』をリリースして、テクノをプレイする機会も増加中。2013年12月にはあの故Arthur Russellのバンド・メンバーのユニットArthurs Landingの "Miracle 2" をRemixしたVersionが欧米で流通する12インチとしてリリース。これまでの出演イベントはアンダーグラウンドな小箱でのパーティから、 大会場でのフェスまで多岐に渡り、2010年はエレクトラグライド@幕張メッセに、2011年はSONAR JAPAN等のビッグフェスにも招聘され、2010年から2012年にかけて3年連続でFUJI ROCK FESにも出演。テクノ~ハウスを軸に、レゲエ~Dub、ジャズやアフロ、ブラジリアン、ロック、 サイケデリックやバレアリック、ダブステップ、ワールド・ミュージックそしてアンビエント、数々の最新の流行のリズム・様々なジャンルの音楽性を交錯させた選曲で、毎週のように日本各地の音楽好き、踊り好きが集まるパーティでDJをおこなっている。

■JSH-LIGHT https://www.jah-light.com
"Real Roots Sound" をテーマに2004年からサウンドシステムを開始。2007年、自身のレーベル "LIGHTNING DTUDIO REC" を立ち上げると同時に、1st Singleとなる "Independent Steppers" をリリース。2012年、新レーベル "DUB RECORDS" からリリースされた1st 10" Singleでは、A: Mighty Massa / Warriors March, B: Jah-Light / Diffusion" といったコンビネーション・プレスで純国産ルーツを世界に向けて発信。現在、Youtubeにて自身の楽曲をダブミックスした映像を配信中なので、ホームページ内の "Dublog" をチェック !!!

■BAGDAD CAFE THE trench town https://bagdad-creations.com

進化を続けるCREATE集団! 関西を代表する大所帯REGGAE BAND、BAGDAD CAFE THE trench town。圧倒的なライヴ・パフォーマンスで、FUJI ROCK FESTIVAL, 朝霧JAM, SUNSET LIVE, 頂, WIND BLOW, FESTA DE RAMA, FREEDOMなど、数々のフェスティヴァルを盛り上げる。 2000年結成。1stアルバムで、新人では異例のFM802ヘビーローテーションに選ばれる。その後もアルバムを出すたびに、全国各ラジオ局のパワープレイに選ばれ続ける。タワーレコードのポスターNO MUSIC NO LIFE、テレビやラジオの音楽番組に多数出演。 2013年5月11日、充電期間を終えたVo. maiやコーラスも完全復活! BAND名も、BAGDAD CAFE THE trench townに戻し、最高のメンバーで再始動!! 主な共演者は、 BES, BUN BUN the MC, ET-KING, KURTIS FLY, Keyco, Leyona, Likkle Mai, Metis, Miss Monday, MOOMIN, SHINGO☆西成, Shing02, Spinna B-ILL, RYO the SKYWALKER, RANKIN TAXI, PAPA U-Gee, PUSHIM, 韻シスト, カルカヤマコト, こだま和文, 多和田えみ, プロフェッサーチンネン, 卍LIN……


Le1f - ele-king

 あるいはこれを、ヒップ気取りたちによるクリシェと呼ぶ向きもあるだろう。アフロ・フューチャリズムの最新ヴァージョン……を騙ったフェイクだとかなんとか。そう、ニューヨークのアンダーグラウンド・ヒップホップ、『ピッチフォーク』が言うところの「クィア・ラップ」のシーンは、ミッキー・ブランコとリーフという得難いタレントを輩出しつつも、むしろそのわかりやすいイメージ──ニューヨーク、ゲイ、黒人、ラップ──のキャッチーさゆえにか、いまだに決定的なバズを迎えていない。
 あらためてな話になってしまうが、これは、例えば小林雅明氏が本誌の紙版『vol.8』号で書いているような「高度な作品性を兼ね備えたものも多いミックステープが、フリーダウンロードであることにもありがたみなど感じさせないほど供給過多な状況」の弊害だと思われる。こうした無限供給に近い状況は、ヒップホップの多様化を下支えするとともに、その消費の高速化にも拍車をかけている。高速化どころか、それは空虚化と言ってもいいのかもしれない。クィア・ラップの色さえも、それは軽く呑み込んでしまうのだ。
 もちろん、ミックステープの軟派な利用者のひとりとして、僕も偉そうなことを言える立場ではない。しかしあらためて今年を振り返ったとき、胃袋に縫い付けられた鉛のようにズシリとのしかかってきたのは、<UNO NYC>からリリースされたミッキー・ブランコのEP『Betty Rubble: The Initiation』であり、リーフの二枚のミックステープ、『Fly Zone』と『Tree House』だった。少なくとも「黒人音楽の現在2013」を考える時、ニューヨークのアンダーグラウンドは輝いていた。それも、とても禍々しく。真夜中のための、二重生活者のための、そしてアンダーグラウンドのための音楽が、間違いなくそこにあった。

 ドローント・ラップ。欧米の一部批評筋ではそう呼ばれている。とくに、リーフの2013年2作目となる本作『Tree House』は目立って異質だ。手短に言うなら、ここには宇宙とディストピアが同時に拡がっている。
 いまになって振り返れば、最初のミックステープ『Dark York』は、〈Fade to Mind〉の気鋭・Nguzunguzuらがプロデュースしていることで知られているが、それはディジー・ラスカルやM.I.A.を高校生の頃に聴いたという世代感覚がストレートに発揮されたアグレッシブな内容だった。それがここに来て、ビートはよりテンポ・ダウンし、ラップも含めてムードは終始ダウナー。ビート・プロデュースはほぼ全曲で異なるトラックメイカーが務めているが、雰囲気は共振しており、重厚でありながらドローン風に浮遊するシンセウェイヴ、地底から響いてくるような遠くも重いベース、そしてそこに、キックよりもハットやスネアが強調されたトラップめいたビートが合わせられる。一般にヒップホップと言って想像する音からすれば、これはもはや、アンビエント・ミュージック。が、限られた音のなかにあっても、シンセのうねりまで含めたトラック全体のグルーヴとしては不思議とバウンスさせてしまうのだから、各トラックメイカーたちの手腕はもう見事としか言いようがない。
 少しだけ紹介しておくなら、今年『Contact』という怪物のようなアルバムをリリースしているシカゴのThe-Drum、一作目からの付き合いにして、EP『LIQUID』を共同でリリースしているBoody、ニューヨークの注目株・Shy Guy、アメリカ生まれの日本育ちだというCybergiga、そして、3曲入りのEPのみの形式に限定して作品を配信しているLAのカッティング・エッジなネット・レーベル<TAR>からは、LAのDEに加えてUKのAeirs TVが参加し、コズミックなクローサー・トラックにして本作のベストのひとつ“Cry Bb”にビートを提供している。確かに、二木信の言うとおり、「インターネットの大海原には、Arcaに匹敵する才能はゴロゴロ転がっている」というのは間違いではない。あとは、それを誰がどう編むか、だ。
 そういう意味では、そもそもがArcaとのタッグで知られたミッキー・ブランコの作品に、<Hippos in Tanks>のGatekeeperや、ハイプ・ウィリアムズのライブ・ドラマーでもあるGobbyが参加してきたことには触れておくべきだろう。そしてもう一人、この界隈における重要人物を挙げるなら、ボルチモアのRICK RABがプロデュースした“Blood Oranges”に参加しているシンガー/ソングライター、Ian Isiahだろう。“M1NDFVCK”(https://vimeo.com/64564103#)がとにかくクラシックだが、ミッキー・ブランコともメロウなR&B“Ace Bougie Chick”で共演しているほか、アンダーグラウンドのスーパーグループ、Future Brownのアルバムにも参加予定。本人名義でも、スィートなデビュー・アルバム『The Love Champion』が<UNO NYC>からリリースされている。

 ではそろそろ、本人らのコメントを引用しつつ、冒頭の話に戻ろう。

「ゲイ・コミュニティのラッパーたちが世間の注目を浴びるのは、やはり素晴らしいことだと思う。でも、“ゲイ・ラップ”というのはジャンルではない、ということをよく理解してもらう必要がある。自分が何者であるか、というだけのことで音楽のスタイルを定義されたくないんだ。あくまでも自分が作った音楽で判断してほしい。ミックステープ『Dark York』には21もの楽曲が収められていたけど、同性愛のことをテーマにしたのはたった5曲だよ」──リーフ(『インタビュー』マガジンでの発言から

 あるいはミッキー・ブランコは、「自分の活動が(集客を前提とした)パフォーマンスである、ということをみんなよく考えるべきじゃないかな」とけん制した上で、自らの音楽を「ライオット・ガールとゲットー・ファビュラスの激しい衝突」と切れ味よく説明する。あるいは、「自分としてはただグラム・ロックをやっているつもりなんだけどね」とも(すっかり書きそびれてしまったが、クィア・ラップのシーンはミュージック・ヴィデオがどれもラディカルで、シーパンクとの共振性もたびたび指摘されている)。
 そして、詩の朗読者ないしはパフォーマー上がりのミッキー・ブランコとは対照的に、もともとトラックメイカーとして出発しているリーフは、(本人曰く)すぐにゲイのそれと分かってしまうイントネーションに当時は自信が持てず、これまでにもラッパーとして音源をリリースする機会もあったそうだが、見事に「何も起こらなかった」という。であればこそ、このような発言が出てくるのも頷けるかもしれない。「自分はエイリアンなんだって感じるよ。少なくとも、ゲイ・ラッパーなんだって言われるよりはね」
 これをアフロ・フューチャリズムの最新ヴァージョンと呼ぶのは、あまりにベタだろうか。そうかもしれない。だが、例えばアルカのミックステープ『&&&&&』の評で紹介したディストロイド的な感性、つまりインダストリアルとアンビエントとグライムを激突させてしまうセンス、あるいは本作で展開されている異形のドローントラップにしてもそうだが、それらアンバランスで宇宙的/異次元的な(それこそクィアな)ビートの鳴りを、自らのミュータント的なイメージに引き付けてしまう大胆さが、ここにはある。自分の英語力の無さを開き直るようで申し訳ないが、懇切丁寧な歌詞の翻訳集をとても待ってはいられない。ミュータント・エンジェルたちの美しいトリップに酔ってしまえ。

踊ってばかりの国×快速東京 - ele-king

 紙エレキング10号、「ANTI GREEK HEROES」特集の表紙を飾ってくれたふたり、下津光史率いる踊ってばかりの国、そして福田哲丸が歌っている快速東京のライヴが12月12日恵比寿リキッドルームであります。いやいや、素晴らしい組み合わせですね。もうこの彼らに関しては説明不要でしょう、2013年は全国のライヴハウスやフェスで、がんがんにショーをやって、ファンもどんどん増やしているこのふたつのバンド、ともに年明けに新しいアルバムのリリースを控えているので、きっと新曲もいっぱい聴けると思います。今年最後のロックンロール・ショーです。みんなで楽しく騒ぎましょう。
 ちなみに、来年の2月には、踊ってばかりの国の12インチ・シングル「踊ってはいけない国EP」をele-king レーベル第一弾の完全限定盤としてリリース予定です。風営法にもの申す名曲“踊ってはいけない国”をDJのヨーグルトさんが陶酔的なハウス・ミュージックに再構築してくれました。レコードには、オリジナルとは別ヴァージョン、最近のライヴの1曲目でお馴染みのディープな超大大名曲“ANTHEM”も収録しています。お陰さまで、すでにかなりの予約が入っています。こちらもお楽しみに!

■東京ダンス
快速東京、踊ってばかりの国
12月12日木曜日@恵比寿リキッドルーム

open/start:18:45/19:30
チケット:前売スタンディング¥2,500(税込) D別/当日料金未定

問:エイティーフィールド 03-5712-5227(平日13:00-19:00)
https://www.atfeild.net
チケット発売:11/16(土)
プレイガイド:ぴあ、ローソン、e+

踊ってばかりの国HP
https://odottebakarinokuni.com

快速東京HP
https://kaisokutokyo.com


The Strypes - ele-king

 カヴァン。(現地出身者は「キャーーヴン」と発音する。その発音はダブリン在住者の間では「田舎者」を意味する表現にもなっている)というアイルランドのカウンティは、わたしにとって縁の深い場所である。若い娘だった頃、カヴァン出身の男と一緒に住んでいた。で、その後、ロンドン出身の男と結婚したら、そいつの父方の家族も代々カヴァンの人びとだった。
 で、このザ・ストライプスもカヴァン出身なんだよねー。みたいなことを言っていると、連合いが言った。
 「おめー見てるよ、そのキッズ。何年か前に、カヴァンで」

 どうやら、カヴァンのロック・フェスに出演している姿を見たらしい。ロック・フェスといっても、修道女と羊ぐらいしかストリート(農道)を歩いていないカヴァンのことである。著名バンドなどは出ておらず、近所のパブに集まるおっさんたちのTHEMのコピー・バンド。とか、子育てを終えたお母さんたちの熟女メタル・バンド。とか、巡査さんの弾き語りボブ・ディラン。とか、そういうのどかなメンツに混じって、たしかにやけに上手いちびっ子バンドが出ていたと記憶している。
 が、あの頃のザ・ストライプスは全然いまとは違うファッションをしていた。なんかこう、袖の長い赤いモヘアのセーターやカラフルなチェックのシャツにブルージーンズ。みたいな、ちょっとアメリカンな、それ故いかにもアイルランドの子供。といった外見だった。平均年齢13歳ぐらいだったろう。ローティーンの子供たちが普通に演奏するビートルズの曲とかを普通に演奏していた記憶があるが、たしかに芸達者だった。しかし、それにしたって、「あいつらは俺ら以上に音楽好き」と英国人も一目置くアイルランドのことである。はっきり言って、あの程度の子供はわりといる。
 ということは、ザ・ストライプスって、あれから大化けしたのね。と思って、おばはんも一念発起して彼らのデビュー・アルバムを聴いてみた。ストーンズ、ビートルズ、ザ・フー、キンクス。などのUKバンドを引き合いに出されることの多いザ・ストライプだが、わたしが連想したのは、アラン・パーカー監督の『ザ・コミットメンツ』のサウンドだった。あの、「アイリッシュはヨーロッパの黒人種だ!」と宣言した映画のアイルランドのパブロック、ならぬ、パブR&Bである。

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 彼らに惚れ込み、自分のマネジメント会社と契約させたエルトン・ジョンは、LGBT運動にも熱心だが、労働者階級という自らの出自にも拘り続けている。UKの労働者階級の若者がもっともクールだったのは60年代だそうだから(ツイッギーやマイケル・ケインの時代だ)、その頃に青春を送ったエルトンが、ブライトンのパブでザ・ストライプスを見てぶっ飛んだというのはわかる。イメージ的にブリティッシュ・ビートっぽいパッケージングが施されているのはそのせいかとも思うが、だからと言って彼らをポール・ウェラーやマイルズ・ケインの少年版と整理しても良いのかというと、それは違う。彼らの音はもっと泥臭いというか、随所で『ザ・コミットメンツ』が毀れている。

 彼らのレヴューには、英日を問わず、ルーツ。という言葉が頻用されている。ロックが好きになった子供が、現在のそれのルーツであるところのストーンズやDr フィールグッドを発見し、さらにそのルーツであるところのチャック・ベリーやボ・ディドリーを発見して、夢中になる。その発見をティーンズが演奏しているのが新しい。というような文脈は、しかし果たしてそうだろうか。と思う。
 なぜなら、このルーツ探しの旅は、昔からロック好きの若者が通って来た道であり、とくにアイルランド(の田舎)のような老いも若きも一緒くたになってパブで音楽を奏でているような国では、ロックンブルーズは不変のスタンダードだ。ザ・ストライプスのサウンドには「温故知新の新しさ」というより、脈々とそこに流れて来たものとしての腰がどっしり入っている。彼らが抜きん出ているのは、むしろ彼らを生み出した土壌のせいだろう。

 最後に、そしてたいへん重要なことに、アイルランドは詩人の国としても有名だが、この点におけるザ・ストライプスはどうなのだろう。

 「彼女が僕のドアをノックするときは、いつもティーカップを手にしている 彼女はミルクと砂糖が欲しいだけ でも僕は彼女が欲しいだけ」“Blue Collar Jane”

 「基本的に、『Snapshot』の曲の歌詞を聞いていると、テレタビーズのほうがよっぽど知的なのではと思えてくる」とSputnikmusicのレヴューでアイルランド人寄稿者は嘆いている。
 とは言え、彼らはジェイク・バグのようなストリート詩人ではなく、ロックンブルーズの兄ちゃんたちなのだから、歌詞はバカで良いのだ。が、せめて同じ紅茶ならば、「絞って僕のレモンを あなたの好きなだけ/たっぷり僕のレモンを あなたの紅茶の中に/アーアーアー ふたりで飲みますレモンティー」と書いた柴山俊之ぐらい肉感的なひねりを見せて欲しい。
 そうしてミルクティーを何かもっといやらしいものに転化できたときこそ、ザ・ストライプスはめちゃうま子供バンドを卒業し、次の地平に進むのだろう。

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