「K A R Y Y N」と一致するもの

NHK yx Koyxen - ele-king

 これまで〈Diagonal〉〈DFA〉〈Pan〉〈L.I.E.S〉〈Mille Plateaux〉〈WordSound〉〈Scam〉といった一癖も二癖もあるレーベルから作品を出しているNHK yx Koyxenこと松永コーヘイが、久しぶりにアルバムを出す。やった。ベルリンの〈Bruk〉から5月26日リリース予定の『Climb Downhill 2』は未発表音源集で、コーヘイのムズムズしたシュールなエレクトロニカ・ダンスの魅力がコンパクトに詰まったショーケースだ。聴こう。
 このアルバムを機に、完全なる新作もリリースされるかもしれない。わからないけど。

NHK yx Koyxen
Climb Downhill 2

Bruk
BRUKLP1
Release Date: May 26th
 

 素晴らしいことに、韓国から250(イオゴン)の来日が決まった。以下、詳細です。

 すごい面子が揃ったものだ。ロンドン発のイヴェント「MODE」が5/25から6/2にかけ東京で開催されることになったのだが、エクスペリメンタルな実力者たちのオールスターといった気配のラインナップとなっている。5/25はイーライ・ケスラーカフカ鼾ジム・オルーク石橋英子山本達久)、パク・ジハ。5/28は伶楽舎。5/30はベアトリス・ディロンルーシー・レイルトンYPY(日野浩志郎)。6/1はメルツバウスティーヴン・オマリー。6/2はFUJI|||||||||||TAと、初来日のカリ・マローン+オマリー+レイルトン。貴重な機会のアーティストも多いので、下記詳細を確認してぜひとも足を運びましょう。

[5月23日追記]
 上記イヴェントにふたつのプログラムが追加されることが決まりました。ひとつは、エイドリアン・コーカー&渡邊琢磨、アキヒラ・サノによるサウンド・インスタレーション(「MODE」の初回プログラム・ディレクターを務めた故・坂本龍一と、デイヴィッド・トゥープによる作品も同時上映されます)。もうひとつは、ポスポス大谷、リキ・ヒダカ、エイドリアン・コーカー&渡邊琢磨ほかが出演する下北沢SPREADでの公演。強力なランナップがさらに堅牢なものとなりました。実験音楽に浸る初夏!

[5/23追加情報]

MODE LISTENING ROOM & POP-UP at DOMICILE TOKYO

Adrian Corker & Takuma Watanabe、Akhira Sanoによるサウンドインスタレーションがドミサイル東京・ギャラリースペースにて発表。

また同会場にて、MODE 初回プログラムディレクターを務めた坂本龍一氏への追悼企画として、Ryuichi Sakamoto & David Toop のパフォーマンス映像(2018)が、NTSとの共同企画により放映される。

詳細:
実験音楽、オーディオビジュアル、パフォーミングアーツを紹介するイベントシリーズ『MODE』 のプログラムの一部として、5月29日~6月3日の期間、原宿のコンセプトストア「DOMICILE」(渋谷区神宮前4-28-9)に併設するギャラリースペースにて「MODE LISTENING ROOM」と題し、Adrian Corker & Takuma Watanabeによる新作インスタレーション『The Impossible Balance』、Akhira Sanoによるサウンドインスタレーション『Magnify Cyte』が発表されます。またストアでは、先行して5月26日より、MODE関連アーティストの音源やTシャツなど限定アイテムを集めたPOP-UPが開催されることが決定しました。

さらには、MODEの初回プログラムディレクターを務めた坂本龍一と、David Toopによる当時のパフォーマンス映像『Ryuichi Sakamoto & David Toop (2018)』をロンドン拠点のラジオプラットフォーム「NTS」との共同企画により放映することが決定いたしました。同企画は先日 逝去された坂本龍一の意志を引き継いだ、氏の所属事務所や家族によって立ち上げられた植樹のためのドネーションプラットフォーム「Trees for Sakamoto」への寄付プロジェクトの一環として開催されます。

【開催日程詳細】

MODE LISTENING ROOM
会期:5月29日(月)- 6月3日(土)12:00‒20:00
会場:DOMICILE TOKYO 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-28-9 チケット料金:入場無料

参加アーティスト:Adrian Corker & Takuma Watanabe (エイドリアン・コーカー & 渡邊琢磨/UK,JP)
Akhira Sano(アキヒラ・サノ/JP)(
上映作品:Ryuichi Sakamoto & David Toop (2018)

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実験音楽、オーディオビジュアル、パフォーミングアーツを紹介するイベントシリーズ 『MODE』の追加プログラムが、
5月31日に下北沢SPREADにて開催決定。 Posuposu Otani、Riki Hidaka、Takuma Watanabe & Adrian Corkerが出演。

Posuposu Otani/ Riki Hidaka/
Takuma Watanabe & Adrian Corker ‒ The Impossible Balance
feat. Atsuko Hatano (vn), Naoko Kakutani (va), Ayumi Hashimoto (vc), Tatsuhisa Yamamoto (ds), Takuma Watanabe (cond)

スロートシンガーソングライターで口琴演奏家、倍音印象派のPosuposu Otani(ポスポス大 谷)をはじめ、ギタリストのRiki Hidaka(リキ・ヒダカ)、映画音楽を数 多く手掛け、デイヴィッド・シルヴィアン、フェリシア・アトキンソンらなど海外アーティストと の協業でも知られるTakuma Watanabe(渡邊琢磨)と、音楽家であり、レーベルSN Variations、Constructiveを運営するAdrian Corker(エイドリアン・コーカー)の新プロジェ クトThe Impossible Balanceが発表されます。ライブには、波多野敦子(バイオリン)、角谷奈緒子(ヴィオラ)、橋本歩(チェロ)、山本達久(ドラム)、渡邊琢磨(コンダクト)が出演。

【開催日程詳細】
公演日時:5月31日(水)19:00開場/19:30開演 22:00終演
会場:SPREAD 〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-12-6 リバーストーンビルB1F
チケット料金:前売3,000円 当日3,500円 U23 前売・当日 2,000円[全自由・スタンディング] ※ZAIKOにて販売中

出演者:
Posuposu Otani(ポスポス大谷/JP)
Riki Hidaka(リキ・ヒダカ/JP)
Takuma Watanabe & Adrian Corker (渡邊琢磨&エイドリアン・コーカー/JP, UK)
波多野敦子(バイオリン)、角谷奈緒子(ヴィオラ)、橋本歩(チェロ)、 山本達久(ドラム)、渡邊琢磨(コンダクト)

33-33 x BLISS present MODE TOKYO 2023
2023年5月25日 - 2023年6月2日

実験音楽、オーディオビジュアル、パフォーミングアーツをフィーチャーする
ロンドン拠点のイベントシリーズ「MODE」が東京にて開催。初の来日公演となるカリ・マローンはじめ、スティーブン・オマリー、イーライ・ケスラー、ベアトリス・ディロン、カフカ鼾、伶楽舎、FUJI|||||||||||TAなど、全5公演、11組のラインナップを発表。

ロンドンを拠点とする音楽レーベル兼イベントプロダクションの33-33(サーティースリー・サーティースリー)が贈る、実験音楽、オーディオビジュアル、パフォーミングアーツを紹介するイベントシリーズ『MODE』が復活。
2019年ロンドンでの開催以来となる2023年のエディションが、日本を拠点として実験的なアート、音楽のプロジェクトを展開するキュレトリアル・コレクティブBLISSとの共同企画により、東京都内複数の会場にて開催します。世界のアート、音楽シーンで評価を受けているアーティストたちが集結し、9日間にわたって国際的なアートプログラムを実施します。
今回の東京開催の背景には、主宰の33-33と日本の芸術や音楽との長年にわたるコラボレーションがあります。2018年にロンドンで発表された第一回のMODEでは、日本の作曲家、ピアニスト、電子音楽のパイオニアであり、先日3月28日に惜しまれつつ逝去された坂本龍一氏がプログラムキュレーターを担当しました。敬意と追悼の意を込め、MODEは今回のシリーズを氏に捧げます。

※公演チケットは各プログラム限定数での先着販売となっております、追加販売予定はございませんのでお早めにお買い求めください。


【開催日程詳細】

@The Jewels of Aoyama *Co-presented with Bar Nightingale
公演日時:5月25日(木)18:00開場/19:00開演 22:00終演 
チケット料金:前売6,000円[スタンディング]※ZAIKOにて販売中
出演者:Eli Keszler(イーライ・ケスラー/US)、カフカ鼾(Kafka's Ibiki/US, JP)、Park Jiha(パク・ジハ/KR)
会場:The Jewels of Aoyama 〒107-0062 東京都港区南青山5丁目3-2

一連のイベントシリーズの幕を開けるのは、NY拠点のエクスペリメンタル・パーカッショニストEli Keszler。Jim O’Rourke(ジム・オルーク)、石橋英子、山本達久によるトリオ、カフカ鼾。そして初の来日公演となる、韓国の伝統音楽を主軸とした現代音楽家 Park Jihaが出演するプログラム。また、このプログラムは世界中のアーティストらに支持される会員制の実験音楽バー「Bar Nightinegale」との共同企画で開催される。

@四谷区民ホール ※関連プログラム
公演日時:5月28日(日)15:30開場/16:00開演
チケット料金:前売3,000円・当日3,500円[全席自由]
https://reigakusha.com/home/sponsorship/4403 参照
出演者:伶楽舎(Reigakusha/JP)伶楽舎雅楽コンサートno.40 〜芝祐靖作品演奏会その4〜
会場:四谷区民ホール 〒160-8581 新宿区内藤町87番地

1985年に発足した雅楽グループ伶楽舎による『伶楽舎雅楽コンサートno.40 〜芝 祐靖作品演奏会その4〜』をMODE 関連プログラムとして紹介する。伶楽舎は現行の雅楽古典曲だけでなく、現代作品の演奏にも積極的に取り組み、これまでに湯浅譲二、一柳慧、池辺晋一郎、猿谷紀郎、伊左治直、桑原ゆうなど多くの作曲家に新作を委嘱。日本を代表する現代音楽家、武満徹作曲の雅楽作品『秋庭歌一具』の演奏でも複数の賞を受賞。長らく音楽監督を務めた芝祐靖は雅楽の世界に新風を送り続けた人物で、MODEで紹介される現代音楽表現のルーツの一部を体験できるプログラムとなっている。

@WALL & WALL
公演日時:5月30日(火)19:00開場/19:30開演 22:00終演
チケット料金:前売4,000円[スタンディング] ※ZAIKOにて販売中
出演者:Beatrice Dillon(ベアトリス・ディロン/UK)、Lucy Railton(ルーシー・レイルトン/UK)、YPY(ワイ・ピー・ワイ/JP)
会場:WALL & WALL 〒107-0062 東京都港区南青山3丁目18−19フェスタ表参道ビルB1

実験的電子音楽に焦点を当てたこの日のプログラムは、前作『Workaround' (PAN, 2020)』が、The Wire紙によって’Album of the Year’に選ばれた、ロンドン拠点の作曲家・サウンドアーティストのBeatrice Dillonと電子音楽レーベル「NAKID」主宰し、バンド「goat」の中心人物で作曲家・音楽家の日野浩志郎によるソロプロジェクトYPYが共演。イベントのオープニングを飾るのは、先日オランダのフェスティバルRewireにて世界初公開され反響を呼んだ アーティスト・詩人のパティ・スミスによるプロジェクト『Soundwalk Collective & Patti Smith』や、今回初の来日公演となるKali Maloneの作品にも参加する、イギリス人チェリスト・作曲家であるLucy Railtonの日本初公演。

@Shibuya WWW
公演日時:6月1日(木)19:00開場/19:30開演 22:00終演(予定)
チケット料金:前売4,500円[スタンディング] ※ZAIKOにて販売中
出演者:Merzbow(メルツバウ/JP)、Stephen O’Malley(スティーブン・オマリー/US, FR)
会場:WWW 〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町13−17 ライズビルB1F

20年以上にわたり、SUNN O)))、 KTL、 Khanateなど数々のドローン/実験的プロジェクトの構想や実行に携わってきたStephen O'Malleyと、説明不要の世界的ノイズ・レジェンドであるMerzbow a.k.a. 秋田昌美によるダブルヘッドライナーショー。

@淀橋教会
公演日時:6月2日(金)18:00開場/19:00開演 21:00終演 
チケット料金:前売6,000円[全席自由] ※ZAIKOにて販売中
出演者:FUJI|||||||||||TA (フジタ/JP)、Kali Malone(カリ・マローン/US, SE) presents: 『Does Spring Hide Its Joy』 feat. Stephen O’Malley(スティーヴン・オマリー/US, FR)& Lucy Railton(ルーシー・レイルトン/UK)
会場:淀橋教会 〒169-0073 東京都新宿区百人町1-17-8

今シリーズのフィナーレは、新宿区大久保の多国籍な街中に位置する淀橋教会にて開催される。パイプオルガンによる作品で知られる作曲家・サウンドアーティストのKali MaloneがStephen O'Malley、Lucy Railtonとともに、国際的に高評価を得て、Billboard Classical Crossover 4位を獲得した最新作品『Does Spring Hide Its Joy (2023)』を日本初公演にて披露する。ダブルヘッドライナーとして、近年日本を拠点にヨーロッパ、アメリカで高い評価を得ている自作のパイプオルガン奏者でサウンドアーティストFUJI|||||||||||TAが登場。

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About 33-33:
33−33(サーティースリー・サーティースリー)は、ロンドン拠点のレコードレーベル兼イベントプロダクション。年間を通してイベントプログラムを企画制作するだけでなく、33−33レーベルからのレコードのリリースや、アーティストとともに個別のプロジェクトを制作するなどしている。
33−33は、イースト・ロンドンの教会にて2014年以来開催されているイベント『St John Sessions』を機に発足。過去にはガーナ、東京、ベイルート、カイロでイベントを開催している。2018年には音楽、アート、パフォーマンスを紹介するフェスティバル『MODE』を設立。2018年には坂本龍一氏がキュレーションを行い、2019年にはLaurel Halo(ローレル・ヘイロー)がプログラムを構成した。

About BLISS:
BLISS(ブリス)は、2019年に日本を拠点として設立されたキュレトリアル・コレクティブ。アートと音楽の分野において、実験的な展覧会、イベントなど行う。抽象性が高く、実験的な表現を社会に発表、共有し続けることが可能な環境をつくることを目的としている。主なプロジェクトに、Kelsey Lu at Enoura Observatory (2019)、INTERDIFFUSION A Tribute to Yoshi Wada (2021)など。

Works of BLISS:
Kelsey Lu at Enoura Observatory
INTERDIFFUSION A tribute to Yoshi Wada

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SUPPORTED BY
アーツカウンシル東京
グレイトブリテン・ササカワ財団
大和日英基金

PARTNER
EDSTRÖM OFFICE

Debby Friday - ele-king

 音楽におけるジャンルというものは考えてみるとイメージを共有するために必要になるものなのかもしれない。新しい音楽を聞く足がかりとなる情報、あるいは他の誰かに伝えるときに必要になる道具、SNSが発展してそこで興味をかきたてられることも多くなった時代においてその情報はひとつのフックとして重要な働きを果たしているように思える。
 だが最近ではジャンルの枠を超えるアーティストや既存のジャンルではしっくりこないような活動をしているアーティストも多く出てきた。たとえばUKのラッパー、スロウタイの最新作『Ugly』は〈Speedy Wunderground〉のダン・キャリーのプロデュースで、ジョックストラップのテイラー・スカイやイーサン・P・フリン、フォンテインズD.Cが参加するなどサウス・ロンドンのインディ・シーンのツボを突くような陣容で、実際にインディ・ロック・リスナーからも高い評価を得た。この傾向はレーベル側にもあって、大きな注目を集めていたインディ・ロック・バンド、ブラック・カントリー・ニュー・ロードと契約した老舗〈Ninja Tune〉、あるいは〈Warp Records〉に所属していたジョックストラップが素晴らしいクラブ・チューンである “50/50” をひっさげて〈Rough Trade〉に移籍するなど、レーベルの既存のイメージとは離れた印象のアーティストと契約するというのも珍しくなくなった。これはアーティスト側がリスナーとして様々な音楽を聞き、そのアウトプットとして音楽を作るというアクションが反映された結果なのか、シーンというものに定まった服装や音楽的共通項を必ずしも求めない現代の感覚が出たものなのかはわからないが(彼らはみんなアティチュードで結びつく)、いずれにしてもSNS上のプロモーションとしてのわかりやすさが求められる一方で制作側のジャンルの意識は薄れ、その音楽はどんどん形容するが難しいものなっていっているように思える。

 〈Sub Pop〉から1stアルバム『GOOD LUCK』をリリースしたデビー・フライデーはまさにこの流れの中に存在するアーティストだ。「ナイジェリアに生まれ、モントリオール、ヴァンクーヴァー、トロント、カナダのあちこちに移り住んだデビー・フライデーの時空を巡る放浪は、太陽が沈んだときから始まった」と心が躍るようなプレス・リリースの文言があるように彼女の音楽はクラブ・ミュージックがベースにある。クラブで育ち、DJとして活動を始めそうしてすぐに自らの音楽を作ることを志したという彼女はジェイペグマフィアデス・グリップスをリリースするロサンゼルスのレーベル〈Deathbomb Arc〉から2枚のEPを出し、インディ・ロックの名門レーベル〈Sub Pop〉と契約しアルバムをリリースすることになる。

 そうしてリリースされたこのデビュー・アルバムは彼女の特徴であった暗く呪詛的な硬質なビートに加え、これまでの2枚のEPと比べてよりインダストリアル・ロックの要素やポップな側面が強く出ている。アルバムのオープニング・トラックでありタイトル・トラックである “GOOD LUCK” は漆黒のビートの重さを保ったまま、より軽やかに解放されたかのような彼女の声が響く。ヒップホップの要素とインダストリアルの要素が混じりあい、エレクトロニクスの痛みがやがて突き抜けた快感に辿り着くかのごとく変質していく。続く “SO HARD TO TELL” はこれまでのデビー・フライデーとはまったく違う甘いファルセット・ヴォイスが聞こえてくるユーフォリックなトラックだ。その声は甘く、決意を固めたかのように芯があり、挑みかかるようだったいままでの彼女の声とは違う魅力を見せる。孤独を抱えたメランコリックなエレクトロ・インディ・ポップとも呼べそうなこの曲はアルバムの中で異彩を放っているが、しかしこの曲こそがこのアルバムのデビー・フライデーを特別な存在にしているのかもしれない。かつて “BITCHPUNK” を標榜し牙を剥いていた彼女の違う側面、彼女の内に潜んでいたものが少しずつ溶け出して、それがより一層硬質なビートを輝かせている(それは漆黒の闇の中で輝く光がそれぞれをより引き立たせているようなこのアルバムのアートワークにも現れているようにも思える)。
 デビー・フライデーはそんな風にしていくつものジャンルを並列に並べ、異質を本質に変えていく。邪悪なポストパンクのような “WHAT A MAN” で電子音の世界からギター・ロックにアプローチするスケールの大きいロック・スター然とした雰囲気を見せかと思えば、“SAFE” では再び狭くて暗い地下室に潜り硬く小さいビートの中で自問自答を繰り返すといった具合に。

 このデビュー・アルバムにはデビー・フライデーが影響されてきた音楽の影がそこらかしこに潜んでいるのだ。そこにマッシヴ・アタックを感じデス・グリップスの影を見て、違う世界のイヴ・トゥモアの形を思い浮かべる。自分のようなインディ・ロック・リスナーの耳にも馴染みやすいのはこの音楽の中に様々な影を見ているからなのかもしれない。このハイブリッドな音楽はどの方向からも接続可能なアクセス・ポイントを持っていて、ジャンルの境界を意識させることなく越えていくのだ。ジャンルとは受け手が感じ取るもので、そこに隔たりなどなく、ただフックがその音楽の中に存在するだけなのかもしれない。デビー・フライデーのこのアルバムはそんなゆるやかに変わる世界の流れを感じさせる。そのうちにもっと感覚が変わって、ジャンルの枠を越えたなんて誰も言わなくなるかもしれない。

interview with Overmono - ele-king

 なんだかんだと今年もまた、いや、今年になってようやく(と言うべきか)、ま、なんにせよ、ダンス・ミュージックの季節到来である。良かった良かった。
 UKはセカンド・サマー・オブ・ラヴを契機として、アメリカのブラック・コミュニティと同じように、ダンスフロアのための音楽のもうひとつの産地となって、この30年のあいだ、大量かつ多彩なダンス・ミュージックを生産し続けている。1969年のUSのR&B曲、ザ・ウィンストンズの “アーメン・ブラザー” におけるドラムブレイクが1990年代のUKに渡ってルーピングされたときには、もう、すでに準備オッケー。DJ、クラブ、レイヴ、レーベル、12インチ、ラジオに音楽メディア——それ以来、UKからは絶えることなくこの音楽はアンダーグラウンドにおいてもオーヴァーグラウンドにおいても動き続け、まったく飽きられることもなく、世代から世代へと、多くの人たちに享受され続けているのである。で、最近の成果が、日本で知られたところで言えばジョイ・オービソンディスクロージャーバイセップであって、いまオーヴァーモノがその最前線に躍り出るというわけだ。

 オーヴァーモノとはトム・ラッセル&エド・ラッセル兄弟によるユニットで、彼らにはすでにアンダーグラウンドでのキャリアがあり、多くの賞賛がある。たとえば初期の代表作、10年前にエドがテスラ名義でリリースした「Hackney Parrot」と「Nancy’s Pantry」のような12インチは、「踊らせたるぜ」という気迫が生んだみごとな創造物の一例で、ぼくのような元クラバーにもそのヴァイナルを買わせるほどパワフルで、若々しいグルーヴを有している。
 オーヴァーモノは、ジョイ・オービソンやディスクロジャーのように、USの影響を受けながらもじつにUKらしいハイブリッド性、つまりなんでもアリ感があるのだが、そのまとめ方がいかにもUKらしくスタイリッシュだ。また、この10年のあいだに登場してきたプロデューサーの多くにUKガラージからの影響が色濃くあることも、クールだと思う。シングル・カットされた “So U Kno” はその典型だ。ピッチを速めにループさせたヴォーカル・サンプルとブレイクビートの組み合わせは、初期ジャングルから続いているUKのお家芸なのだが、ラッセル兄弟にはその魅力を最高にモダンなものとして際立たせる特別なスキルがあるようだ。要するに、明らかにこれはいまイケているダンス・ミュージックで、それが好きなら聴け、である。

もちろんUKガラージからの影響もあるけれど、それ以前のスタイルの影響もある。それがUKガラージと融合して、どう発展していまのスタイルになったのかはよくわからないけど、俺たちはとにかく永遠とヴォーカルを切り刻んでいるんだよ(笑)。

オーヴァーモノはどのようにはじまって、制作に入ったのでしょうか?

トム(写真の右):とくに考えというものはなかった。オーヴァーモノは俺たちにとって長期的なプロジェクトとして捉えていた。俺たちだけのやり方で進めていたら、もっと早いタイミングでアルバムをリリースしていたと思う。
 オーヴァーモノのプロジェクトをはじめたとき、俺たちはふたりとも自分たちのソロ・プロジェクトに窮屈さを感じていたんだ。エドも自分のプロジェクトをやっていたし、俺もやっていたんだけど、各自がやっていることの境界線が狭いと感じていた。そこで、俺たちが育ったウェールズの近くにある、田舎のコテージを借りて、機材をたくさん持って行って、5日間くらいそこに篭って、ふたりでたくさんの音楽を作った。14曲くらいできたと思う。その楽曲ができた時点で、これらの音楽には一貫性があり、自分たちでも一緒に制作をしていてすごく楽しかったと気づいた。そこでオーヴァーモノというプロジェクトをやろうということになり、〈XL Recordings〉と契約を結んだ。
 当初はアルバムをすぐにリリースしようと俺たちは考えていたんだけど、いろんな人たちと話し合った結果、まずはシングルとして出していく方がいいということになった。いま、振り返ってみるとそういうリリースの仕方をして本当に良かったと思う。ある一定の期間を経て、楽曲を発表していったことで、オーヴァーモノのサウンドの枠組みがどんなものかというイメージが受け取る側のなかで形成されていったと思うからね。そしてオーヴァーモノのサウンドがどういうものかというブループリント(設計図)を人びとに対して提示できたと感じられた時点でアルバムを発表した。だが、俺たちは「よし、いまからアルバム制作に入ろう」と言って作りはじめたわけではなかった。アルバムの核となる曲が1、2曲ができてから、そのまわりが肉付けされてアルバムという形になっていった。

通訳:そのとき、おふたりともソロ・プロジェクトをやっていたと思うのですが?

エド(写真の左):もうソロ・プロジェクトはやっていないよ。すべてはオーヴァーモノとしてやっている。最初もオーヴァーモノとして作曲しようと決めたわけではないけれど、俺もトムもソロとして表現したいことはやり切ったと感じていた。だからそれ以降はすべてがオーヴァーモノとしての楽曲になっている。俺はオーヴァーモノをはじめて以来、1曲もテスラ名義の曲を作っていない。自然にそうなったんだ。だから(ソロ作品は)無理して作る必要はないと思っている。トムも同じように感じていると思うよ。

トム:そうだな。

エド:だからアルバムの楽曲はすべ、自然な流れで、無理なく出来たものばかりなんだ。

アルバムは、ここ最近のUKのアンダーグラウンド・シーンで起きていることからの影響が反映されたものなのでしょうか? それとも完全に自分たちのなかから生まれたものなのでしょうか? 

トム:どうだろうな。俺たちの音楽は、自分たちがUKで育ち、いままで聴いてきた音楽などの影響が大きな基盤となっているのは当然のことだからね。アルバムはここ2年間くらいかけて書かれたものなんだけど、その期間中、俺たちはあまり最近の音楽——とくに俺たちの背景にあるシーンの音楽——をあまり聴いていなかったんだ。最近聴いている音楽と言えばアメリカの音楽で、R&Bやポップを聴いている。だからアルバム制作中は、俺たちがいままでいた世界(UKのアンダーグラウンド・シーン)から自分たちを大きく切り離していたという自覚はあるね。

エド:UKのアンダーグラウンド・シーンの影響はもちろん昔からあったし、いまでもあるよ。

トム:もちろんある。

エド:俺たちのなかに刻まれているようなものだから。

トム:俺たちは、例えば、アメリカの音楽などを聴いて新鮮な刺激を取り入れたいと思っている。でもそれを俺たちの音楽に反映させるとき、それは俺たちの基盤にあるUKのダンス・ミュージックやエレクトロニック・ミュージックという俺たち特有のプリズムを通してアウトプットされる。

ちなみに、今日のUKのアンダーグラウンド・ダンス・シーンで、おふたりが注目しているのは何でしょうか? ジャングルが面白いという話は耳にしているのですが。

エド:面白いものはたくさんあるよ。俺たちはアルバム制作プロセスというトンネルの終盤をようやく通り抜けて、浮上しはじめてきている状態なんだ。2年間、自分たちをそういったシーンから遮断して、再びシーンに目を向けた時、面白いことが起きていると気づいた。とても良い感触だよ。俺が住んでいるブリストルでは、多くの若手が出てきていて、面白いことがたくさんあるけど、具体的なことはあまり知らない。でもUKは常にエキサイティングなことが起こっているし、新しいシーンが生まれていると思う。

去年のハイライトのひとつはジョイ・オービソンの『still slipping vol.1』だと個人的に思っています。しかし、これはアルバムと呼ばれることを忌避し、ミックステープと呼びました。それに対して、オーヴァーモノの『Good Lies』は思い切りアルバムになっていると思います。

エド:ピート(ジョイ・オービソン)も『still slipping vol.1』をアルバムと呼んでも全然良かったと思うよ(笑)!

トム:ハハハハ!

エド:でもそれがピートなんだよなぁ。あのアルバムは最高だよ。

トム:(頷いている)

エド:あれはアルバムと呼んでもおかしくない作品だった。だが俺たちはアルバムを作ろうという姿勢で制作をしていたね。ミックステープを作るときは、アルバムを作るほど焦点が定まっていないことが多いと思う。ピートのミックステープだけはこのルールが適応されないけど。彼のアルバムは、すごく焦点が定まっているし、「ピート」としての表現が完璧になされている。

トム:ひとつの作品としてまとまっているよね。

エド:そう、一貫性があるんだ。俺たちも一貫性のある音楽を作りたいと思っていて、すべての楽曲に同じプロセスに通すから、すべての楽曲が俺たちが表現したいようなサウンドの特質を持った楽曲に仕上がる。そういうことを俺たちは重視していて、アルバムを作るときも、(個々の楽曲の集まりではなく)ひとつの大きなものとして成り立つようにしたいと思っている。

バイセップもディスクロージャーもブリアルも俺たちが大好きなアーティストたちだから、比較対象にされるのは嬉しいよ。UKからはいい音楽がたくさん出てきているし、俺たちはそういうアーティストたちからいろいろな影響を受けて自分たちの音楽に取り入れている。

作っていて、いちばん難しかったところと、作っていていちばん嬉しかったことは何だったのでしょう?

エド:終わりのタイミングがわからないところ(笑)。

トム:(笑)

エド:いちばん難しいのはそれだな。いちばん嬉しかったのは曲を書いているときだった。本当にいろいろな場所で曲を書いていた。昨年、俺たちはツアーをかなりたくさんやっていて、楽曲の多くは、ヴァンの後部座席やホテルの客室などで書かれたものなんだ。よくあったパターンとしては、ギグが終わると、こうやっていまみたいに、ホテルのベッドにもたれながら、明け方になって、次の公演の出発時間になるまで、ふたりでずっと音楽を作っている。それがいちばん楽しかった。いつでも、どこでも、作曲できる時に作曲する。楽しかったし、楽な作業だったよね。

トム:ああ。スタジオでの時間はいつも楽しい。スタジオというのは、実際のスタジオの場合もあるし、ホテルの部屋でヘッドフォンをお互いにパスしながら曲作りをしている場合もある。作曲が面倒な作業のように感じてしまったら、やる価値はないと思うよ。

常にUKにおける土着のダンス・ミュージックに根差した音楽。映像的で、ときにメランコリックであることなど……。こうした視点でみるとオーヴァーモノは、バイセップやディスクロージャーよりもブリアルに繋がっているように感じます。

トム&エド:ハハハハ。

エド:それはジャーナリストに決めてもらうのがいいと思う(笑)。どちらの側もすごいと思うから、何と答えていいのかわからないよ。

トム:バイセップもディスクロージャーもブリアルも俺たちが大好きなアーティストだから、比較対象にされるのは嬉しいよ。UKからはいい音楽がたくさん出てきているし、俺たちはそういうアーティストたちからいろいろな影響を受けて自分たちの音楽に取り入れているよ。

エド:(トムに向かって)じつに外交的な答え方をしたね(笑)。

トム:ダハハハ。

では、ダンス・ミュージックのプロデューサーの作ったアルバムでとくに好きなのがあったら教えてください。

トム:(笑って考えている)

エド:ピートのアルバム……あ、失礼「ミックステープ」だったね、あれは俺たちがふたりとも好きだった。最近聴いたエレクトロニック音楽のアルバムはなんだったけなぁ……?

トム:(考えている)

エド:昔のUKからの音楽の方が黄金時代だったような気もする。エイフェックス・ツインとか。

トム:ソロウ(Sorrow)( https://sorrowgarage.bandcamp.com/)のアルバム が最近聴いたなかで素晴らしいと思った作品かな。つい先日も自宅で聴いていたんだけど、圧倒されたよ。アルバムの中には彼のキャリア史上最高な楽曲がいくつかあった。同じような時期だと、サージョンの『Breaking the Frame』も最高だった。

エド:クラインというプロデューサーがいて、とても素晴らしいレコードを出している。エレクトロニック・ミュージックのようなフリー・ジャズとでも言えばいいのかな、変な説明だけど、すっごくいいんだ。テクスチャーがすごく豊かな音楽で、音楽にルールがまったくない感じに、すごく刺激を受ける。

トム:Skee Maskの『Compro』も大好きなアルバムだな。その前のアルバム『Shred』もよく聴いていたんだ。

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ダンス・ミュージックがどのようなものかまだわかっていなかったから、「レイヴってきっとこういう感じなんだろうな」というイメージだけがあった。おそらく自分のイメージと実際のものとは、まったく違っていたんだろうけどね。

Instagramのポストでは、今作について「これまでの旅へのラヴ・レター」とあります。「これまでの旅」とはこれまでの「人生」ということでしょうか?

エド:俺たちがふたりで一緒に音楽を作ってきた、ここ5年間と言う意味だよ。俺たちがいままでやってきた活動のロジカルな結論というか。アルバムが完成したとき、ひとつの章が終わるのだと思っていた。でも、それは新たな何かのはじまりだったということがわかったんだ。だから俺たちはもうすでに新曲を書きはじめている。アルバム制作が終わった時点から、さらにアイデアが生まれているというのは良い流れだと思う。

というわけで、あなたたちの「これまでの旅」、つまりあなたがたの簡単なプロファイルを教えて欲しいと思います。エド(テスラ)とトム(トラス)、あなた方は兄弟で、レコード店がないほどの田舎町で育ったと。そもそもダンス・ミュージックにハマった契機を教えてください。

トム:俺はエドより少し年上だから、ダンス・ミュージックに先にハマったのは俺だった。友だちのお兄さんからテープをもらったんだけど、元のテープがダビングされた、さらにそのダビングみたいなものでひどい音質だった。80年代の初期のハードコアなレイヴの音楽が入っていた。そこからは(不思議の国のアリスの)ウサギの穴に落ちて行くように、その音楽についてもっと詳しく知りたくて深く掘っていった。いままでそんな音楽は聴いたことがなかったからすごく異質なものに聴こえたよ。これほどまでに反復が続く音楽は聴いたことがなかった……初めて聴いたテクノが、結構ハードなテクノだったんだけど、すごく不快で気に障る(obnoxious)感じが最高だと思った。「ダン!ダン!ダン!ダン!」っていうのがね。それからエドも俺が聴いているものに気づいて……

エド:昔、住んでいた家の部屋の壁越しに聴こえてきたからね。「ドン、ドン、ドン、ドン」という音が聴こえてきて「トムはいったい何を聴いてるんだ?」と思ったね。ちょうどその頃にライムワイヤーやカザー(ファイル共有サービス)が登場して、それを漁って、あらゆる音楽をダウンロードしまくっていたんだ。トムの部屋からレコードを盗んだりもした。だから、ダンス・ミュージックのほぼすべてのことはトムから学んだんだよ。

どんな子供だったんですか?

トム:どうだろう、けっこう普通の子供だったと思うよ(笑)。ダンス・ミュージックにハマる前からふたりとも音楽が大好きだった。物事の仕組みを理解するのが好きだったから、父親のレコード・プレイヤーにレコードをかけて、面白がっていた。母が、プラスチックの盤面に息を吹いてホコリを取り、それをプレイヤーに置いて、針を乗せるとそれが回って音が出る。それに魅了された。テープレコーダーも家にあったから、いろいろな音楽をテープに録音していて、BBCのEssential Mixもそうやってテープに録音していた。ラジオから流れる曲で気に入ったものをテープに録音していだんだ。すると、自分のお気に入りばかりが入ったアルバムのようなミックステープができあがる。
 当時は、ラジオの曲をどうやって手に入れたらいいのかがわからなかった。どの店に行けばいいのかもわからなかったし、そもそも俺たちの住んでいる街にはそんな店もなかった。近くの大きな街にはそういう店があったけれど、どういうふうに店員さんに曲を説明して、自分が欲しい曲を買うのかなどもよくわかっていなかった。ダンス・ミュージックを知ったばかりで、それについて学んでいたというとても素敵な時期だった。摩訶不思議な感じがしたな。ダンス・ミュージックがどのようなものかまだわかっていなかったから、「レイヴってきっとこういう感じなんだろうな」というイメージだけがあった。おそらく自分のイメージと実際のものとは、まったく違っていたんだろうけどね。でも自分の頭のなかには独自の世界観ができていた。だから摩訶不思議な感じだったよ。

なぜ自分たちはダンス・ミュージックにのめり込んだんだと思いますか?

エド:俺たちが若い頃は、まわりのみんながダンス・ミュージックにハマっていたよ。だからなぜかはわからない。俺は若い頃からいろいろな音楽にハマっていたんだ。ダンス・ミュージックはそのひとつだけど、他にもニルヴァーナなどのグランジ・ロックにもハマっていたし、奇妙な実験音楽にもハマっていた。若いときは、いろいろな音楽に一度にハマるってことが可能だった。サウスウェールズの小さな街ではダンス・ミュージックの影響は大きかったんじゃないかな。トムは当時、近隣のひらけた場所でレイヴをやっていたんだけど、それまでこの辺りではそういうイベントはやっていなかった。でも野外でそういうイベントをやりたいという気持ちはあった。その欲求とダンス・ミュージックは相性が良かったんだと思う。だから自然とダンス・ミュージックにハマっていった。つねに俺たちのまわりにあったからね。

レイヴをやるときも、ジャングルからトランスからハード・ハウスまで、なんでもかけていて、それが受け入れられていた。ロンドンに移ってから初めて、シーンによってはトライブ的要素が非常に強いということを知ったよ。

エドは学校でお手製のミックステープを売り、かたやトムは仲間と地元でフリーパーティ、レイヴをしていたと。ある種制限された状態で音楽と出会いつつも、こうして自分たちなりに音楽を追求しはじめたことは、あなたたちのいまのサウンドに何か特別な影響を及ぼしていると思いますか?

トム:もちろんあると思う。最近、別のインタヴューで同じような質問をされて、あらためて、自分たちの育った環境に感謝したいと思ったよ。俺たちが当時、ダンス・ミュージックにハマりはじめていたころ、ある特定のシーンという概念が俺たちのなかになかったんだ。つまり「このジャンルが好きな人は、別のジャンルを好きになってはいけない」みたいなスノッブな精神——そういうのがいっさいなかった。俺たちはなんでも好きだった。もちろん人によって多少の好みはあったけれど、他人の好みに対して批判的な考えはなかった。だから音楽に対して、ものすごく自由奔放でいられた。レイヴをやるときも、ジャングルからトランスからハード・ハウスまで、なんでもかけていて、それが受け入れられていた。ロンドンに移ってから初めて、シーンによってはトライブ的要素が非常に強いということを知ったよ。人によってはある特定のジャンルやサブジャンル、そしてそれらの関連要素にしかハマっていなかったりして、シーンが分断されているという印象を受けた。俺たちが育ってきた環境とはまったく違ったんだ。だから自分たちが作る音楽では、当時感じていた自由な精神を捉えたいという思いがある。

90年代に活躍したDJやプロデューサーで、とくに好きな人がいたら教えてください。

トム:エイフェックス・ツインはすごく尊敬しているね。サージョン、リージス……

エド:ジェフ・ミルズ

トム:ジェフ・ミルズ。あとは……

エド:ビッグネームの人たちすべて(笑)!

トム:そうだな(笑)。あとは誰がいたかな……DJとしてのカール・コックス! 彼の初期の、というか93年、94年くらいのミックスにはすごく引き込まれた。だからカール・コックス(*80年代末から第一線で活躍する超ベテランDJ)は超リスペクトしてる!

overmonoというユニット名はどこから来たんですか?

トム:俺たちが育った地域の名前なんだ。

通訳:そうでしたか!

トム:オーヴァーモノ小学校に通っていたんだよ。

エド:「オーヴァーモノ」って書いてある学校のジャンパーがあったから、あれを見つけたいんだよな(笑)。

トム:実際の綴りは少し違うんだけどね(笑)。綴りは少し違うけど発音は全く同じ。

今回のアルバム・リリースにあたって、フロアとの距離感、バランスなどは意識されましたか?

エド:俺たちが作っているのは、実は「車のための音楽(music for the car)」なんだ。

通訳:車ですか?

エド:そう、車のなかで聴いたときに良い音楽かどうかってこと(笑)。

トム:俺たちにとって、それが究極の審査法なんだよ。

通訳:それは面白いですね!

エド:車のための音楽を書く方がずっと自由度があるんだ(笑)。深夜、車を運転しながら、自分たちが作った音楽を車のなかで聴いてみて良い感じだったら、それは良い音楽だと納得がいって満足する。オーヴァーモノのダンスフロア寄りのトラックもやはり車で聴くことを想定して作られているんだよ。自分たちの領域を狭めたくないし、毎回ダンスフロア受けするクラブ・チューンを書かないといけないと思いたくないからね。俺たちは、この車でこのスピードで進んでいる限り、どんな音楽を発表してもいいような感じがするから、その感覚を大切にしていきたいんだ。

トム:俺も同感だ。エドも俺も、クラブにフォーカスされたダンス・ミュージック・アルバムというものがあまり好きではないんだ。ガンガンのクラブ・チューンを12曲も聴きたくはないと思ってしまう。

エド:(いやだいやだ、と頭を振っている)それは嫌だね。近年はアルバムというフォーマットを宣伝目的に使っている人たちもいて、アルバムというひとつの作品になっていないものも多い。なかには良いものもあるけれど。でも、俺たちのアルバムに関しては、そういうものにはしないように意識した。

プロダクションについても少しだけ。あなたのアイコニックな、あの繰り返すヴォーカル・カットはどう培われましたか? UKダンス・ミュージックのメソッドに倣うならば、R&Bのヴォーカルをサンプリングしたくなるところ、「Is U」ではティルザの声を使ってみたり、そんなところもちょっと奇妙で面白いと思います。このセンスはどこからきているのでしょうか。

エド:昔のUKハードコアから元々は来ているんだと思う。ヴォーカルが切り刻まれて、リピートされているからね。UKハードコアの方がリピートの仕方がより激しくて不快かもしれない。UKハードコアの多くがそうであるようにね。ヴォーカルを、もっとリズミカルにしたいというのか、何と説明すれば良いのかな……もちろんUKガラージからの影響もあるけれど、それ以前のスタイルの影響もあると思う。それがUKガラージと融合して、どう発展していまのスタイルになったのかはよくわからないけど、俺たちはとにかく永遠とヴォーカルを切り刻んでいるんだよ(笑)。

トム:ハハハハ。

エド:「ヴォーカルの刻み方を教えてくれませんか?」と人に訊かれることがあるんだけど、俺たちはただ、ずっとその場で、ヴォーカルを切り刻んでいって、自分が求めるサウンドや、良いと思うサウンドができるまで、とにかく切り刻んでるだけなんだよ。特殊なデヴァイスに素材を録音して……みたいな特別なトリックがあればいいんたけど、そうではなくて、とにかく、いいサウンドになるまで切り刻み続けるんだよ。

アートワークやヴィデオに多用されるドーベルマンとBMWについて。これらのモチーフはなにかを現しているのでしょうか? それともただ好きなだけ?

エド:どちらもかな。

トム:ただ好きなだけ(笑)。俺たちは犬が大好きでBMWが大好きだから! ドーベルマンに関しては一応昔のネタがあるんだけど、まあ要するにドーベルマンが大好きってこと。

通訳:あなたたちが飼っているんですか?

トム:いや、友人のだよ。

あなたたちはこれからどういう道を歩むつもりですか。今後の展開について言えることがあればお願いします!

エド:今後はどうなるんだろう? ここ1〜2年は本当に目まぐるしかったから、この先の1〜2年がどうなるのかわからない。でも俺たちはいままで以上に刺激を受けているし、今年もたくさんツアーをする予定があって楽しみにしている。ライヴではアルバムからの新曲を披露する機会もあって、ライヴをやるたびにどんどん新曲を取り入れている感じがあってとても良い感じだよ。今後はもっと音楽をリリースしていきたい。いまも、企画中のものがいくつかあるんだ。だから、今後もオーヴァーモノとして続けていくよ。

通訳:フジ・ロックが待ち遠しいです。今回はDJセット? それともライヴ・セットですか?

トム:ライヴだ。

エド:そう、待ち遠しい。すごいことになるよ!

トム:そうだな。

DUB INVASION - ele-king

 現行のDub、サウンドシステム・カルチャーを東⻄から盛り上げるDub Meeting Osaka、Tokyo Dub Attack、newdubhallそして eastaudio soundsystemの4者が大阪に集結!

DUB INVASION
Undefined (live) / Bim One Production / Element / Dub kazman / Sak-Dub-I

Sound System by eastaudio
shop by grassroots food by mr.samosa
VENUE : 心斎橋SUNHALL
OPEN/START : 16:00
CHARGE : 超早割 2,500yen / 前売 3,500yen / 当日 4,500yen / under 23 1,000yen
※ 全てD代別
※ 小学生以上チケット必要/未就学児童無料(保護者同伴に限る、ドリンク代不要)
※『under 23 1,000yen』23歳以下は公演当日に身分証をご提示いただければ1000yenでご入場頂けます。
超早割 >> 5/8 (MON) 21:00 on sale (枚数限定、特典付き)
Tokyo Dub Attack Ticket (ZAIKO)
ーーーhttps://tokyodubattack.zaiko.io/e/DUBINVASION

*特典
Dub meeting Osaka監修Zine 「HEAVYWEIGHT」
Tokyo Dub Attack Zaikoチケットページにて、超早割または前売券を購入した先着50名様限定でプレゼント(当日受け渡し)

チケット一般発売 5/15 (MON) 12:00 onsale
チケットぴあ : https://w.pia.jp/t/dubinvasion-o/
ローソンチケット : https://l-tike.com/order/?gLcode=52766 (L-code:52766)
e + : https://eplus.jp/sf/detail/3870130001-P0030001
Tokyo Dub Attack Ticket (ZAIKO) : https://tokyodubattack.zaiko.io/e/DUBINVASION

INFO :
心斎橋SUNHALL 06-6213-7077 https://sunhall.jp/
Tokyo Dub Attack Ticket (ZAIKO) https://tokyodubattack.zaiko.io/e/DUBINVASION

1昨年のStudio Patitta(名村造船所跡地)、昨年の神戶ハーバースタジオにて、脳天まで慄わす完膚なき超低音を轟かしその名を知らしめた eastaudioのサウンドシステムを難波サンホールに導入し、そのシステムを操るセレクターは国内外でのリリースや活動を続ける
Bim One Production (1TA & e-mura)、Sak-Dub-I、Dub Kazman、Element、さらに実験的でミニマルな視点を取り入れ、 先鋭的なDubを表現する2ピース・バンド、Undefinedが盟友のChequeをダブミキサーに迎えてライヴを行う。サウンドシステム・カルチャーを起源とするジャングル等のベース・ミュージックと現行のダンス・ミュージック・シーンの交わりが 盛り上がりを見せるなか、そのルーツから最新鋭まで新旧のDubを体感しよう。

ご好評につき重版出来!

ワールド・チャンピオン・サウンド=マイティー・クラウン。
その中心メンバー、サミー・Tの「俺のストーリー」

横浜から世界へ。
何者でもなかった少年がジャマイカ発祥のサウンド・システム・カルチャー、その最もハードでディープなエンターテイメント「サウンド・クラッシュ」の世界王者に立つまでの軌跡と葛藤。
ニューヨーク、ジャマイカ、日本。
「今までに話してこなかったストーリー」

「俺はビビリかもしれねぇけどナメられたくねぇんだ。バカにされたくないんだ。ずーっと奴等にナメられていたからさ、ずーっとふざけんなって思ってたからさ」
(サミー・T)

装丁:茂呂千里(Morrow)
表紙写真:五十嵐一晴
協力:有限会社マイティー・クラウン・エンターテイメント

四六判/並製/ソフトカバー/288ページ

CONTENTS

CHAPTER ZERO TOKYO 2020
マイティー・クラウン/サミー/俺のストーリー/「どんな感じ?」/「後はヨロシク」

CHAPTER 1 YOKOHAMA KID
横浜中華街/センジョとサッカーとスケート/ムロちゃんとゼマとバナナ・サイズ/ターン・テーブルとボブ・マーリーとアルバイト/カセットとサウンド/マイティー・クラウン結成/サミー・T

CHAPTER 2 NEW YORK 1992
ニューヨーク留学と「引いてはいけない」とタカ/フラッシュ・バック・ジャパン/草とロウワー・イースト・サイド・レコードとレヴレン・バドゥ/初めてのブルックリンとニコデマスと初めてのダブ録り/バドゥズ・レストランとパトワと「チン」/聖地ビルトモアと覚醒/90s ダンスホール/恩人キムさん/濃密過ぎた最初の三ヶ月

CHAPTER 3 BROOKLYN / STRUGGLE
ドロップ・アウトと田中ヒロと草/ナイジェルと「ウェルカム・トゥ・アウトロー」と「ニガー」/ニューヨークの日本人達と「みんなの館」/コージ君/ジャマイカ初渡航と「クソみてぇな国」/ジャマイカ・ジャマイカ/ジェネラルとスターライト・ボールルーム/スランプ/帰国と地元と「ふざけんな」

CHAPTER 4 YOKOHAMA / PROGRESS
辻堂とブレイン・バスターと全部パー/チューパとサウンド・クラッシュ/「ヨコハマ・レゲエ・バッシュ」/フラッシュ・バック・ジャパン/日本のサウンド/ボストンとレガシーとボコボコ/「火と拳」と希望/フラッシュ・バック・ジャパン/イエローとタクシー・ハイ・ファイ/ベイサイド・ジェニーと「頂点」

CHAPTER 5 ROAD TO WORLD CLASH ’99
ワシントンと「ワールド・ウォー」/ボストンと「ヴィンテージ・ウォー」/「来たー!!」とジェネラルとの別れ/決戦前夜

CHAPTER 6 WORLD CLASH ’99
「ワールド・クラッシュ」と「燃えよドラゴン」/シミュレーションと「チェイス・ヴァンパイア」/チューパとチューン・フィ・チューン/「わからせてやった」/「俺の人生が変わった」

CHAPTER 7 YOKOHAMA 2023

Reaching out to the Readers!!

監修
SAMI-T/サミー・ティー

1991年に横浜で結成したサウンド・システム・クルー、マイティー・クラウンのオーナーの一人でありメイン・セレクター。8つの世界主要サウンド・クラッシュのタイトルを持つチャンピオン・サウンド。20年以上世界各国をツアー、イヴェントに出演。日本を代表するサウンドの中心人物であると同時に世界的に活躍するレゲエ・アンバサダー、カルチャー・アイコン。国内最大級の野外レゲエ・フェス「横浜レゲエ祭」主催、「サマー・ソニック」「エアー・ジャム」他の大型ロック・フェスからサウンドとして日本で初めて首相官邸でプレーする等幅広く活動。プロデューサー、トラック・メイカーとして数多く楽曲も手掛け、アーティストとしても活動中。

著者
八幡浩司/やわたこうじ

レコード会社勤務を経て2000年に24×7レコード(有限会社トゥエンティー・フォー・セヴン・レコード)設立。ジャマイカ、ニューヨーク他海外のレゲエ・レーベルの作品・楽曲、アーティストとカルチャーを国内に発信する活動を展開中。

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
●Mighty Crown Official Site
https://www.mightycrown.com/
●書籍予約サイト(予約限定版2冊セット:メンバーのサイン+特典ステッカーつき)
https://mcepremiumshop.stores.jp/ *販売終了

24×7 RECORDS

●版元直接販売
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★イースト・プレスより同時発売
世界サウンドクラッシュ紀行
MIGHTY CROWN(著)
2023年6月2日発売
定価(本体1,800円+税)
四六判 ソフトカバー 320ページ(カラー32ページ)
イースト・プレス
https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781622170

本邦初訳となる
「ヒップホップ・ジャーナリズムのゴッドファーザー」
と呼ばれた黒人批評家による博覧強記の代表作!

ジョージ・クリントンの “メタなバカさ” が
アミリ・バラカの “変わっていく同じもの” へと放り込まれ
フリー・ジャズもマイケル・ジャクソンもギャングスタ・ラップもジェイムズ・ブラウンもトニ・モリスンも、すべては同一線上で語られる

ヒップホップは、逆さまの資本主義
ヒップホップは、植民地主義の逆再生
ヒップホップは、黒人化された衝撃の未来に送り込まれた、
奴隷主たちが作り出した世界
ヒップホップは、地下からの略奪品、
喜んで他のすべてを弄ぶ
ヒップホップは我らが文化の消費と商品化、
潜在意識の誘惑とアメリカン・ドリーム機械の
黒い美的副産物 ──本書所収「ヒップホップとは何か?」より


著者紹介:押野素子

翻訳協力:Kinnara : Desi La、江口理恵、宇野瑠海、Neil Ollivierra、魚住洋子、高橋勇人、五井健太郎、dream hampton

目次

イントロダクション――欲望、あらゆる物事(ブラック)

第一部 黒人男性の展示会

追悼:アミリ・バラカ/ウェイン・ショーター/ジミ・ヘンドリックス/ジョン・コルトレーン/釣りに行く──レスター・ボウイを偲んで/ザ・ブラック・アーティスツ・グループ/ブッチ・モリス/チャールズ・エドワード・アンダーソン・ベリーと私たちの未来史/独学の砂男、ロニー・ホーリー/マリオン・ブラウンとジンジ・ブラウン/塵埃のダークな天使──デイヴィッド・ハモンズとストリートの超絶主義/ビル・T・ジョーンズ──舞踏における戦闘的振り付け/ゲイリー・シモンズ──コンセプトの爆撃者/ヴィジョンの持続性──ストーリーボード・P/アイス・キューブ/ウィントン・マルサリス──ジャズの改革者/ソーントン・ダイアル──自由、ブラック、そして世界の暗闇を照らすこと/ケヒンデ・ワイリー──黒人の男らしさをめぐって/ラメルジー──地下鉄のグラフィティ、そして偶像破壊のサムライ/リチャード・プライヤー──プライヤー健在/追悼:リチャード・プライヤー/追悼:ギル・スコット=ヘロン/鏡のなかの男──追悼:マイケル・ジャクソン/マイルス・デイヴィス

第二部 笑う彼女は意地悪だけど、魅力的

ボーン・トゥ・ダイク──笑うシスターへの我が愛、意地悪そうでクィアで印象的なシスター再び/ジョニ・ミッチェル──ブラック&ブロンド/アジーリア・バンクス──『ファンタシー』/シャーデー──ブラック・マジック・ウーマン/もしジェイムズ・ブラウンがフェミニストだったら/イタバリ・ニジェリ著『最後の農園』について/カラ・ウォーカーについて話そう/空間、時間、芸術の境界線にいる女性たち──カンディダ・ロメロ『リトル・ガールズ』をめぐる考察/アート界のホープ、エレン・ギャラガー/黒と抽象の詩人に贈る/“ギクユ神話と宇宙から来た有色のライオット・ガールの戦い”──ワンゲチ・ムトゥ特集/象形文字のゾンビ・パレードに参加しよう──デボラ・グラント/第二幕のビョーク/キュレーター、セルマ・ゴールデンの挑戦

第三部 やあ暗闇、私の懐かしいミーム

ウォール街占拠に黒人女性が少なかった理由トップ10+4/ヒップホップとは何か? ドリーム・ハンプトン、対話的インスピレーション、そしてミシェル・ンデゲオチェロがミシェル・ンデゲオチェロであるために/諜報データ──ボブ・ディラン『ラヴ・アンド・セフト』/三〇歳になったヒップホップ/愛とクランク──アウトキャスト『スピーカーボックス/ザ・ラヴ・ビロウ』/白い自由──エミネム/ウー・ダニット──ウータン・クラン『ウータン フォーエヴァー』/アンロック・ザ・トゥルースvsジョン・ケージ

第四部 スクリーニングス

スパイク・リー『バンブーズルド』/『ザ・マック』的なるもの──ブラックスプロイテーション映画の語法/セックスとニグロシティー──ジョン・シングルトン監督の映画『サウスセントラルLA』/白塗りのリンカーン──スーザン・ロリ・パークス作『トップドッグ/アンダードッグ』におけるジェフリー・ライトとドン・チードル/ドキュメンタリー『ブラックパワー・ミックステープ』(二〇一一)──ふたたび語られる闘争の時代

第五部 人種、性、政治トリック、文芸

巨匠、クラレンス・メイジャー/大西洋の音──キャリル・フィリップス著『アトランティック・サウンド』/アポカリプス・ナウ──パトリシア・ヒル・コリンズ著『ブラック・セクシャル・ポリティクス』、トーマス・シェヴォリー著『ノートリアスHIV』、ジェイコブ・レヴェンソン著『秘密の伝染病』/血と橋──一九九九年、ニューヨーク市警とジュリアーニの抗議運動/“ニガ” チュード/脅威の三人──ジェリー・ガフィオ・ワッツ著『アミリ・バラカ』、ヘイゼル・ローリー著『リチャード・ライト』、デヴィッド・メイシー著『フランツ・ファノン』/底辺のえさ箱──桐野夏生著『アウト』/高台を登る──マリーズ・コンデ著『風の巻く丘』/雑種惑星の憂鬱──ゼイディー・スミス著『ホワイト・ティース』/スキン・トレードの冒険──リサ・ティースリー著『グロー・イン・ザ・ダーク』/ジェネレーション・ヘックス──ジェフリー・レナード・アレン著『背中の下のレイル(Rails under My Back)』/地下に潜る──ゲイル・ジョーンズ著『モスキート』/審判の日──トニ・モリソン著『ラヴ』とエドワード・P・ジョーンズ著『地図になかった世界』について/ブラック・モダニティと笑い、あるいは “N*g*a” はいかにしてジョークを手に入れたか?/カラハリのけんけん遊び、あるいは二〇巻におよぶアフロ・セントリックなフューチャリストのマニフェストのためのノート

『フライボーイ2』日本語刊行に寄せて 押野素子

索引

著者
グレッグ・テイト(Greg Tate)
1957年10月14日、アメリカはオハイオ州デイトン市に生まれる。本名はGregory Stephen Tate。ハワード大学でジャーナリズムを映画について学ぶと、『ヴィレッジ・ヴォイス』への寄稿をきっかけに、ニューヨークを拠点とし、批評家としての活動をはじめる。白人至上主義の世界に抗う、その先鋭的な批評はたちまち評判となって、80年代半ばには、主に黒人文化に関する批評家としては第一人者となる。そして、『ニューヨークタイムズ』、『ワシントンポスト』、『ダウンビート』、『ローリング・ストーン』、『ヴァイブ』など複数の雑誌や新聞にも寄稿、有名なヒップホップ専門誌『ソース』は、テイトを「ヒップホップ・ジャーナリズムのゴッドファーザー」と呼んだ。1992年には初の評論集『Flyboy in the Buttermilk』を上梓する。その2作目が本作『Flyboy 2』となる。テイトは執筆活動の傍ら、いくつかのバンドでフリー・ジャズ、ファンク、サイケデリック・ロックなどの音楽活動も続けた。他方では、白人優遇のアメリカの音楽産業への異議申し立てとして、〈Black Rock Coalition〉という連合を組織した。また、2003年にテイトが編集した『Everything But the Burden』は、黒人芸術の白人による流用をテーマにしている。2009年にはコロンビア大学ジャズ研究センターの客員教授、2012年にはブラウン大学のアフリカーナ研究客員教授を務めている。2021年12月7日、64歳で永眠すると、その夜、ハーレムのアポロシアターは追悼の意を込めて彼の名前を表示した。

訳者
山本昭宏(Akihiro Yamamoto)
神戸市外国語大学准教授。1984年、奈良県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。専門は文化史、歴史社会学。著書に『残されたものたちの戦後日本表現史』(青土社、2023年)、『戦後民主主義:現代日本を創った思想と文化』(中央公論新社、2021年)、『大江健三郎とその時代:戦後に選ばれた小説家』(人文書院、2019年)など。

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interview with Kid Koala - ele-king

 90年代末から2000年代前半にかけて、ターンテーブリストと呼ばれ始めた人たちに惹かれていた。特に魅了されたのは、D・スタイルズ、ロブ・スウィフト、ミスター・ディブス、リッキー・ラッカー、そしてキッド・コアラだった。ヒップホップのコラージュ・アートとジャズのインプロヴィゼーションの未来がそこにあるように感じたからだ。しかし、それは勝手な解釈の投影だとも思っていた。ターンテーブリズムがどこに向かうのかは一向にわからなかった。ただ、彼らがやっていることに魅了されたのは事実だった。
 あれから20年以上が経過したいまも、どこに至るかわからないターンテーブリズムの未来にキッド・コアラは関わり続けているように思える。シンガーソングライターのエミリアナ・トリーニやトリクシー・ウィートリーと作った、「アンビエント」とラベリングされた『Music to Draw To』シリーズでは、シンセサイザーやキーボード、ギター、ベースを自ら演奏し、歌詞も書いた。ターンテーブルはあまり使っていない。それでも、繊細なサウンドを形成するディテイルには、ターンテーブリストとしての彼が確かに存在していた。
 〈Ninja Tune〉からリリースされた初期のアルバムである『Some Of My Best Friends Are DJs』や『Nufonia Must Fall』は、キッド・コアラが描いたコミック/グラフィック・ノヴェルと共にあった。そして、いまもそこに描かれた孤独で奇妙な世界の住人であり続けているようだ。2010年代以降は、ヴィデオ・ゲームやアニメーション、インタラクティヴなライヴ・ショーなどのプロジェクトに積極的に関わってきたが、それらにありがちな派手なスペクタクルとは無縁だった。都会の喧噪の中で自分の声を見つけようと奮闘するエンターテイナーを演じていたと言うべきだろう。
 『Creatures Of The Late Afternoon』は、キッド・コアラのターンテーブルが音楽の中心に戻ってきたアルバムだ。自分が演奏した音源をレコードでカットし、スクラッチをして再構築するプロセスを経てでき上がった。とても手が込んでいるが、慣れ親しんだ手法で作られていて、ビートとスクラッチの世界にいまも自分が存在することを彼一流のユーモアを持って証している。このリリースを機に、これまでの活動についても振り返って話をしてもらった。

コールドカット、デ・ラ・ソウル、パブリック・エネミー、その3枚のアルバムは、僕がスクラッチを始めるにあたって最もインスピレーションを得た作品だと思う。

ターンテーブル・オーケストラなるものの情報をあなたのサイトで見ました。とても興味深く感じましたが、まずはこのプロジェクトの詳細から訊かせてください。

KK:これは、僕がやっている「Music to Draw to」というアンビエント・レコードのシリーズを中心にデザインしたインタラクティヴなショーなんだ。最初の作品は「Satellite」なんだけど、あの作品を使って、観客が退屈しないようなアンビエント・コンサートができないかと考えていたんだよ。そして、観客にハーモニーやクレッシェンド、ダイナミクスを作り出してもらうショーができたら面白いんじゃないかと思った。僕がオーケストラを指揮し、観客は皆、それぞれ自分のターンテーブルに座っている。で、ワイヤレスで異なるステーションを異なる色で照らすことができるという仕組みなんだ。皆異なる音符を持つレコードのセットを持っていて、ステッカーで色分けがされている。だから、例えば、ある曲では自分のターンテーブルがリードをとり、紫のレコードを見つけてそれを取り付け、実際に最後のコーラスで音をならしたりするんだよ。50台のターンテーブルで音を奏でるってすごくクレイジーなことだと思うかもしれないけど、実は、ものすごく素敵な音色が生まれるんだ。

すごいですね。ひとりでそのアイディアを思いついたんですか?

KK:そう。これは僕のアイディア。どうにか観客にレコードで遊ぶ機会を与えることができないかとずっと考えていたんだよね。観客がコンサートの一部になるようなショーをやりたいとずっと思っていたんだ。

〈Ninja Tune〉からデビューした当時から、あなたは他のターンテーブリストとは明らかに異なる音楽を作っていました。ターンテーブリストというより、ターンテーブルを使って自由なアートを作っているという印象でした。当時のことを少し思い出してもらえますか。あの頃、あなたが表現において大切にしていたことは何だったのでしょうか?

KK:何がきっかけで僕が楽器に惹かれるようになったかというと、実は、クラシック・ピアノだった。4歳のときにピアノを弾き始めて、それが僕にとっての初めての楽器だったんだ。そして、小学校の中学年くらいでクラリネットや木管楽器を始めた。そして、12歳のときにターンテーブルと出会い、その “楽器” に心を奪われたんだ。想像力豊かな、カメレオンのような楽器に思えて。当時もいまも、ターンテーブルの魅力、そして可能性は、ヘヴィーでコアなファンキートラックを作って皆を踊らせることができると同時に、すごく繊細で、サウンドデザイン的な使い方や細かいテクスチャーを作ることができること。だから、映画のスコアやゲームのスコア、ターンテーブル・オーケストラのようなライヴ・イヴェントもそうだし、ターンテブルを色々な新しい場所に持っていけるかどうか試したいと思った。ターンテーブルで何ができるか、様々な角度や方法を学び、異なるアプローチをしてみたいってね。可能性というアイディアを提供してくれるターンテーブルというアイテムは、昔もいまも変わらず大好きな存在なんだ。

〈Ninja Tune〉からデビューした当時、いまと比べて特に大切にしていたことはありますか?

KK:〈Ninja Tune〉からデビューした頃は、コールドカットの『What’s That Noise?』に大きくインスパイアされていた。デ・ラ・ソウルの『3 Feet High and Rising』やパブリック・エネミーの『It Takes a Nation of Millions to Hold Us Back』にもかなり影響を受けたし、その3枚のアルバムは、僕がスクラッチを始めるにあたって最もインスピレーションを得た作品だと思う。当時の僕は、短期間でその3つのレコードに出会い、世界を違う角度から見たり聞いたりするようになったんだ。だからデビューしたときは、彼らのレコードのように、新しいサウンドと昔のサウンドを両方見せることが重要だった。そういうわけで、『Carpal Tunnel Syndrome』なんかはかなり実験的な作品になっているんだよ。あのレコードで僕がやってみたかったのは、作品を完全にターンテーブルで作るという制限を設けながら、ブルースやジャズ、コメディや語りの要素まで全て取り込んで、一体何が起こるかを見てみることだったんだ」

パンデミックの最中に、僕はいろんな楽器を演奏する生き物の絵を描いていた。彼らに声を与えようとしてでき上がったのが今回のレコードのサウンドだったんだ。自分のマペット・ショーみたいな、そんな感じのイメージだね。

いまコールドカットの名前も出ましたが、音楽面において、あなたにとって師というべき存在を教えてください。具体的にどのような影響を受けたかも教えてください。

KK:たくさんいすぎて回答に困るけど、僕が日常生活でいちばん聴いていたミュージシャンは誰かと聞かれたら、それは確実にビリー・ホリデイだと思う。ルイ・アームストロングやエラ・フィッツジェラルド、セロニアス・モンクもそうだけど、僕はジャズ・アーティストに関心を持っているから。彼らの音楽からは、彼らの物語を感じることができる。それが例え彼らによって作曲されていない曲でも、彼らは自分なりのヴァージョンを生み出すことができていると思うんだよね。そして、年齢を重ねるほどそれを明確に表現できるようになっている。それってすごくカッコイイと思うんだ。ルイ・アームストロングのソロやセロニアス・モンクのコンサートを聴くと、たった一小節の中にたくさんの表現があって、それを聴いただけで彼らだとわかる。ターンテーブルを使って作る音楽でも、僕はそういう面で彼らから影響を受けているんだ。僕はまだ、彼らの域には達していないけどね。

ビリー・ホリデイからはどのような影響を受けていますか?

KK:彼女の素晴らしいところは、ときどきわざと狭い音域を選んで歌うところ。僕の場合、何オクターヴも使ってしまいがちなんだけど、彼女の場合、少しのオクターヴだったり4音符くらいの音域だったりで全てのフィーリングを表現することができる。それは、僕にとっていまだに魔法のように感じられるんだ。

映画音楽やアートなど多方面で活動していくヴィジョンは、デビュー当時から持っていたのでしょうか? そうしたヴィジョンは、どのように自分の中で芽生えていったのでしょうか?

KK:そのヴィジョンは、子どもの頃から持っていたと思う。子どもの頃、僕がいちばん最初に聴いたレコードは7インチの本のレコードだった。本の中に挿絵が描かれていて、針を落とすと音楽が聴こえる。その本のサウンドトラックや効果音、声優の声が聴こえてきて、その物語やストーリーに、まるで逃避行のようにより没頭できるんだ。それが僕の初めてのレコード体験だったから、僕の脳内では、音楽と視覚がつながっているんだと思う。絵を描けば、そのための音楽がつねに聴こえてくるんだ。
 今回の新しいレコードを制作しているとき、パンデミックの最中に、僕はいろんな楽器を演奏する生き物の絵を描いていたんだ。カマキリがSP-1200を演奏していたり、エビがクラヴィネットを演奏していたり。僕は生き物も楽器も両方好きだから、好きな物がぶつかり合っているような絵を描き始めたんだけど、描いているうちに、それが単なる空想だけではなくなってきて、「このキャラクターはこういう性格なんだ」と思えるようになってきた。そして、彼らに声を与えようとしてでき上がったのが今回のレコードのサウンドだったんだ。自分のマペット・ショーみたいな、そんな感じのイメージだね。昔からもっていたそのヴィジョンをさらに大きくしたのがターンテーブルだと思う。ターンテーブルはカメレオンのように適応力のある楽器で、サウンド的にも様々な使い方ができるから。僕は30年間ターンテーブル・レコードを作り続けているけど、活動をしていく中でもっと探求するようになったのは、感情的な側面なんだ。音を作るだけではなく、感情的な重みを持ったものを作ることができるか、ターンテーブルでセンチメンタルなバラードを作れるか、それをもっと考えるようになった。ファンキーなものやハード・ロックなものが作れるのはわかっているけど、ブルースっぽかったり、ビーチ・ボーイズみたいなサウンドを作ることはできるんだろうか?というのを段々と意識するようになったと思う。

映画音楽やアートなど、さまざま分野にチャレンジする理由は何でしょう?

KK:もしも、「残りの人生の食事は一生同じものを食べないといけないよ」と言われたらどう思う? それか、残りの人生、ひとつのスタイルの音楽しか聴けないとか、ひとつのスタイルの音楽しか演奏できないとか。そういう状況に自分を置いてしまったら、学習というのはストップしてしまうと思う。僕にとっては、学ぶということは自分の全てであり、核となるものなんだ。僕は、新しいことに挑戦したり、新しいことを探求しているときに最も生き生きした気分になれる。それが、僕にとっての一番の原動力なんだよ。だから、僕はつねに自分が行ける場所がもっと存在していると思っているし、それを発見すべきだ、それを創造すべきだと思っている。その思いが、僕をいろいろな分野に導いているんじゃないかな。例えば、子どもにとって、自転車の乗り方を習得しようとしている瞬間って、きっと人生で最もエキサイティングな瞬間に感じられると思うんだよね。その感覚って、一度覚えたら忘れられない。僕にとって音楽は、終わりのない旅のようなものなんだ。たくさんの楽器や演奏スタイルが存在しているし、その全てを知るには、一生かかっても足りないと思ってる。

この10〜15年くらいのあなたの活動は、特に幅広く、多岐に渡っているように思います。それだけに、レコーディング作品を追っているだけの音楽ファンには知らないことがありそうです。この間で、あなたにとって特に印象深いプロジェクト、作品をいくつか紹介してください。

KK:最近だと、映像音楽の仕事が多いかな。例えば、Nintendo Switchで出た『Floor Kids』っていうヴィデオ・ゲームのプロジェクトに参加したんだ。子どもの頃から任天堂は大好きだったから、スイッチの発売と同時にそのプロジェクトに参加できるのはすごく光栄だった。子ども向けの、ブレイクダンスのフリースタイルのヴィデオ・ゲームで、僕はそのゲームの音楽と効果音を全て担当したんだ。アニメーションを担当したのは友人のジョン・ジョン。彼の画風はすごくかわいいんだけど、彼はBボーイでもあるから、キャラクターのダンスの動きはどの動きも全て本物のブレイクダンスの動きなんだ。2Dの手描きでブレイクダンス・バトルのゲームを作ることができるのは、彼以外いないんじゃないかと思う。だから、彼と一緒に仕事ができたのは本当に素晴らしい経験だったね。

 あとは、ライヴ・ショーのプロジェクトで、まるでライヴ映像のようなショーのプロジェクトに取り組んでいるんだ。東京と大阪でも、いくつかのシアターで新しい映像のショーをやったんだよ。演劇みたいなんだけどステージにはスクリーンと20のミニチュアセットがあって、70のマペットと弦楽四十奏団がいて、僕がピアノを弾き、ターンテーブルを操り、それを8つのカメラで撮影している。そうやって、オーディエンスの目の前でライヴ動画を作るっていう内容。あのツアーはめちゃくちゃ楽しいんだ。そのスタイルでおこなう、『Storyville Mosquito』っていう新しいショーにも取り組んでいるんだけど、そのショーでは、実は今回のニュー・アルバムもサウンドトラックの一部になっている。でもそれは、少なくとも2、3年は初演が公開されることはないかな。いまは、とにかくアルバムのリリースをエンジョイしているところ。

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Nintendo Switchで出た『Floor Kids』っていうヴィデオ・ゲームのプロジェクトに参加したんだ。子ども向けのブレイクダンスのフリースタイルのゲームで、僕はそのゲームの音楽と効果音を全て担当したんだ。

『Nufonia Must Fall』のペーパーバックをいまも大切に持っています。あのイラストレーション、物語、世界観というのは、その後のあなたの様々な作品の根底に流れているもののように感じますが、いかがでしょうか?

KK:そうだね。ストーリーテリングという考え方が、僕の作品作りの原動力になっていると思う。実際、ニュー・アルバムを作っているときも、頭の中でストーリーは描かれていたんだ。そのストーリーにどんな曲が必要なのかを考えることは、曲作りのときにとても役に立った。このショーやストーリーを実現するためには、どんなタイプの曲が必要なのかってね。だから、『Creatures of the late Afternoon』はまるでアクション映画のような仕上がりになっているんだ。制作中にそれが見えてきたから、第3幕の最後には大きな対決バトルが必要だと思ったし、イントロ・トラックがいるな、とか、クリーチャーたちがバンドとして皆で集まって自然史博物館を救うトラックを作ろう、なんて考えるようになった。バイクの追いかけあいのシーンとかもね。物語という観点は、新作でも基本になっているんだよ。

その新作アルバム『Creatures Of The Late Afternoon』のコンセプトについてもう少し詳しく教えてください。「ボードゲーム機能付きのアルバム」とありますね。

KK:アルバムは、ダブルパックみたいな感じになっていて、ボードゲームがついてくるんだ。さっきも話したけど、パンデミックの間、僕は全てのクリーチャーのキャストを作っていた。ゲームに登場するクリーチャーのキャストたちは、全員楽器を演奏するクリーチャーで、プレイヤーはゲームの中を回ってカードを集め、様々なクリーチャーと出会い、バンドを結成して、いろいろなスタイルを作り上げる。ラヴ・ソングから、アクション・ビートのソングまでね。コンセプトは、絶滅危惧種に指定されている生き物のグループがいて、彼らが自分たちの生息地と自然史博物館を守るために団結するんだ。でも、テクノロジー系で頭の固い大手の会社が現れ、音楽をひとつのスタイルだけにすることを強要し始める。そこで、多様な音楽スタイルのクリーチャーたちがバンドを結成しひとつとなり、異なるスタイルが存在することを祝福する。そしてある意味、音楽におけるアルゴリズムというアイディアをからかっているんだ。人気だからといって、全ての人が突然それだけを聴くようになり、それが全てだと思い込んでしまう考え方をね。

音楽的には、ストレートなビートやスクラッチが聴けるアルバムに仕上がっています。これにはどのような意図があるのでしょうか?

KK:たしかにそうだね。『Nufonia Must Fall』では、音楽はもっとチャップリン風だったと思うんだ。だから、ピアノとストリングスがすごくロマンティックなサウンドを作っていたりする。でも今回のアルバムのイメージは、もっとアクション映画のようなスタイルの作品だった。だから、アルバム全体を通して、ヘヴィーなドライヴ感や推進力のあるグルーヴが必要だったんだ。例えば、“High, Lows & Highways” のような曲は、さっき話した数年後に公開されるショーのバイクのチェイス・シーンに必要なトラックだった。ドラムが多めになっているこのトラックは、その瞬間に最適なグルーヴを与えてくれる曲。そういうトラックが、この作品のストーリーを表現するのに役立ってくれると思ったんだよ。

(新作の)コンセプトは、絶滅危惧種に指定されている生き物のグループがいて、彼らが自分たちの生息地と自然史博物館を守るために団結するんだ。でも、テクノロジー系で頭の固い大手の会社が現れ、音楽をひとつのスタイルだけにすることを強要し始める。

Lealaniをはじめ、フィーチャーしたゲストについて詳しく教えてください。

KK:シンガーであり、ソングライターであり、プロデューサーでもあるLealaniは本当に素晴らしい。彼女は、自分のガール・パンク・バンドも持っているんだ。Lealaniはギターとキーボードも演奏できるし、ドラムパッドも演奏できるし、歌えるし、信じられないくらいの才能を持っている。彼女の声を聴いたときに、「この人ならら大丈夫だ」と思った。“Things Are Gonna Change” を書いたとき、歌詞はできていて、ライオット・ガールのような声を持つ人を探していたんだけど、彼女の声ならピッタリだと思ってさ。僕の友人があるプロジェクトで彼女と一緒に仕事があったから繋いでもらって、僕から連絡をとったんだ。「いまこのトラックを作っているんだけど、君ならこのトラックで素晴らしいサウンドを奏でられると思うんだ。どう思う?」と聞いたら、嬉しいことに彼女は僕のLAでの『Nufonia Must Fall』のショーを見たことがあって僕の作品を知ってくれていて、それが楽しかったらしく、オーケーしてくれた。それでコラボが実現したんだ。彼女は本当に素晴らしいと思う。
 それから、“When U Say Love” という曲でヴォーカルを担当しているのは、実は僕の妻(笑)。いま同じ部屋にいて、「言わないで!」ってジェスチャーをしてるけど(笑)、どうせバレるから言っちゃおう(笑)。楽器に関しては、今回は、パンデミックでスタジオに人がいなかったから、ドラム、ベース、キーボード、サックス、ヴィブラフォン、クラヴィネットなどアルバムに収録されている全ての楽器を僕が演奏しないといけなかったんだ。

『Music to Draw To: Satellite』や『Music to Draw To: Io』のようなシンガーとのコレボレーション作品は、あなたにどんなことをもたらしましたか?

KK:『Satellite』のとき、初めて歌詞を書いたんだ。ニュー・アルバムでも全曲の歌詞を書いたけど、初めて書いたのは『Satellite』。エミリアナ(Emilíana)はアイスランド出身のシンガーで、僕は彼女のファンだったから、曲がほとんどでき上がっていた状態のときにモントリオールに招待したんだ。で、5日間しか時間がなかったんだけど、彼女は時間をかけて歌詞を書くタイプのアーティストだったから、僕自身が歌詞を書かないといけなくなってしまって。書いた歌詞を見せたら、「すごく美しいと思う。ぜひ歌ってみたい」と言ってくれて、うまくいったんだ。大好きなシンガーに僕が書いた歌詞を理解してもらえたなんて、本当に嬉しかったね。『Io』のときも同じ。トリクシー・ウィートリーが僕に歌詞を書いて欲しいと言ってきたから、また歌詞を書くことになった。そして、彼女がヴォーカルのメロディを考えて、見事にそれを表現してくれたんだ。シンガーたちとコラボしたことで、またビリー・ホリデイの話に戻るけど、彼女たちの音楽のように、正しいことを正しい言葉で表現することができたと思う。自分の声を美しくコントロールできる人がいるような感覚だったね。彼女たちの声は、まるで自分から発せられた声のような心地よさがあったんだ。

音楽家としてレコーディング作品をリリースすることは、あなたの中で、どの程度のプライオリティを置いているのでしょうか? いまもレコーディング作品を残すことは活動のメインになりますか?

KK:レコードを作りたいのは、まず、自分自身がそれを聴きたいから。そしてその次に、それを演奏してある方法で見せたい、あるいは、一緒に仕事をしたい人たちとコラボレーションしたい、という気持ちが出てくる。音楽は、いつも扉を開き、橋渡しをして、僕と人びとを繋いでくれる存在なんだ。僕にとっては、全ての音楽制作がつながっているんだよね。全て同じスピリットでやってる。僕にとっての活動の違いは、わかりやすく言うと、季節の違いに近いと思う。初夏のような気持ちのいい時期はドライヴに行くときの音楽が作りたくなったり、パーティー・ミュージックを作りたくなる。で、雪が降り始めると、ピアノ音楽でメランコリーなコードを弾くようになったり。カナダの冬は長いからね。そのときの気分に合わせて音楽を作っていく感じ。僕が住んでいる街のエネルギーや天気にも左右されるし。

ターンテーブルは、あなたにとって音楽的な楽器でしょうか? あるいは慣れ親しんできた道具でしょうか? どういう存在なのでしょう?

KK:その両方だと思う。気分を表現できる楽器でもあり、その音を作るのに役立つツールでもあるから。僕は、人と出会ったりオーディエンスとつながるためにターンテーブルを使い演奏することに多くの時間を費やしてきた。だから、ある意味ターンテーブルは僕のDNAの一部になっているんだ。スクラッチを始めると、全てが溶けていくような感じ。禅の世界に入り込むとでも言うかな(笑)。スクラッチしていると、心が安らぐんだよね。すっと一緒に時間を過ごしてきたからなのか、ターンテーブルと一緒にいると、家にいるような感覚になるんだ。


新作に参加したシンガーのLealaniと

スクラッチしていると、心が安らぐんだよね。すっと一緒に時間を過ごしてきたからなのか、ターンテーブルと一緒にいると、家にいるような感覚になるんだ。

現在のターンテーブリストたちの活動に関心はありますか?

KK:最近、ブラジルで日本のDJ KOCOを見たんだ。僕とLealaniでブラジルでショーをやってたんだけど、プロモーターが、その日の夜にDJ KOCOがクラブでプレイしていると教えてくれて、彼を見にいったんだんだよ。彼がやっていたことはかなりすごかった。まるでヒップホップを使って素晴らしい冒険を繰り広げているかのような感じだった。地元のオーディエンスのためにブラジルの音楽もたくさんプレイしていたし、彼のプレイはすごく楽しかったし、本当に素晴らしかったね。

あなたにとって、インスパイアされる音楽というのはどのような音楽でしょうか? また、あなたが最近よく聴いている音楽を教えてください。

KK:D・スタイルズはかっこいいと思う。彼の545っていうプロジェクトがあるんだけど、そのプロジェクトではマイク・ブーやエクセス、Pryvet PeepshoといったDJが集まるんだけど、5日間かけて一枚のアルバムを作るんだ。僕が好きなのは、本当に才能のあるプレイヤーが集まって、リアルアイムでライヴのように演奏して何かを作り上げるってジャズっぽくてすごくいいと思う。だから、僕はこのスタイルのグルーヴが大好きなんだ。スクラッチのフェロニアス・モンクみたいな存在。たった数日間しかないという制約の中で何か一貫性のあるものを考え出すというのは、本当に深いと思うね。
 ポップの世界でいうと、ベンジー・ヒューズっていうシンガーがいる。彼は本当に素晴らしくて、僕はジョン・レノンに近いものがあると思っているんだ。曲にヴァラエティがあるんだよね。風変わりで面白いことをやっていると思う。そしてもちろんLealaniの音楽もよく聴いてる。彼女のパンク・プロジェクトもすごく気に入っているんだ。あと、Walliceっていうシンガーの音楽は聴いたことある? LA出身で、多分日本とアメリカのハーフなんじゃないかな。最近発見したんだけど、彼女の音楽もエンジョイしてる。あと、ラプソディーは好きでいまだに聴いてるね。2年前のアルバム『Eve』はまだ聴いてる。あの作品は、時代を超越した素晴らしい作品だと思う。

現在取り組んでいるプロジェクトや今後の予定を教えてください。

KK:いまは、長編アニメのプロジェクトに取り組んでいるんだ。長編アニメの監督をするのは初めて。原作は『Space Cadet』で、僕の2作目のグラフィック・ノヴェルなんだ。昼間の時間はほとんどそのプロジェクトに使ってる。あと、Lealaniと一緒にショーもやっているんだけど、それもすごく楽しい。2人組の新しいバンドのような感覚でライヴをしてるんだ。

Gina Birch - ele-king

 先週、アフリカ系アメリカ人の友人のひとりと、渋谷のカフェで会った。多忙な弁護士であり、60年代の日本のアンダーグラウンド文化を研究しているこの男は、最近読んだ本では谷崎潤一郎の『痴人の愛』が面白かったそうで、「ナオミの話は、アフロ・アメリカン史のメタファーとしても読めるからね」と言った。批評家グレッグ・テイトは桐野夏生の『OUT』の書評で、「日本という国はアメリカの文化ならなんでも受け入れると聞いているが、その日本でなぜフェミニズムが流行らなかったのかがよくわかった」と書いている。

 ぼくがこのアルバムについて書くうえでの問題点はまさにそこにある。間違ってもフェミニストではないし、これまでの人生でフェミニズムに反する行為をしてきたという自覚がある人間がフェミニズムの音楽について語るというのは、普通に考えて偽善者めいているし、自分でも後ろめたさを感じる。本来であればこういう音楽は、野中モモ氏や水越真紀氏のようなフェミニストが書くべきなのだろう。ただ、もしぼくに、少しでも入り込む余地があるとしたら、自分が10代のときに、ザ・レインコーツの大ファンだったということはあるかもしれない。

 ザ・レインコーツやザ・スリッツのようなバンド、もしくはデルタ5やヤング・マーブル・ジャイアンツのようなヴォーカリゼーションは、ぼくにとって〈ポスト・パンク〉という言葉から想起されるイメージの多くを占めている。彼女たちは、たとえばアニメや広告などで表象化される必要以上にエロい女の対極にいて、色気を武器にパフォーマンスするシンガーとも100万光年離れていた。まずはその佇まいが、ぼくにはものすごくクールに思えたのだ。

 なかでもザ・レインコーツは、圧倒的だった。彼女たちの音楽がもし実験的だったと言えるなら、あの歌いっぷり、あのガチャガチャした演奏は、彼女たちの人生ないしは世界に臨む思想から来ている。それを知ったのは、『ザ・レインコーツ』という本の編集を担当した、けっこう最近のことだったりするのだが、10代だった自分が感じていたのは、同時代のほかの〈ポスト・パンク〉にはない、言うなればオルタナティヴな喜びの感覚だった。男社会とは別のところで彼女たちは楽しんでいる、その感じが、男社会にどっぷりのぼくには最高にクールに思えたのだった。

 ザ・レインコーツのベーシスト、ジーナ・バーチは、「私は窓辺でベースを弾いている年老いた白人女」と、資料のなかで言っている。67歳になって初のソロ・アルバムをリリースする彼女はこう続ける。「頭を突き出して、ただでっかく叫びたいだけ。私はベースをでっかく弾く」——これだけで充分にメッセージである。

 ジーナのベースは、ダブから大きな影響を受けている。音空間の一要素として、床を這ってグルーヴを創出する。アルバム冒頭の表題曲からまさにそれで、いかにもレインコーツなダブ空間が広がっている。 “Big Mouth” や“Pussy Riot”、 “Digging Down” といった曲においても低音宇宙はストーンと発展し、アナ・ダ・シルヴァの抽象的な電子音が花を添える。その“Pussy Riot” では、「私を黙らせたいのか」と挑発し、「私たちが鎖に繋がれた人たちのために日々闘うことは義務だ」とまで言い切っている。続く、ラジオから流れるオールディーズ風のポップな曲調の、しかし“私は憤怒(I Am Rage)” という曲名の曲では、自分は「憤怒が泡立ち怒りに燃える釜」であると、柔らかくメロディアスに歌っている。

 もちろんこのアルバムには、彼女のソロ活動のはじまりを告げた曲、 あの“Feminist Song” が収録されている。

 フェミニストかと訊かれたら
 私はこう言う
 無力なんてクソくらえ
 孤独なんてクソくらえ
 女を貶める奴らはクソだと

 権力の座にいる女がいる
 しかし多くの女たちは鎖に繋がれ苦役に耐えている

 過小評価され過小評価され
 レイプされ虐待され歴史からはじかれる
 だからフェミニストかと訊かれたら
 私はこう言う
 なぜそうではないのかと
 私は都会の女
 私は戦士

 ザ・レインコーツにあった「喜び」はここにもじゅうぶんにある。が、ジーナ・バーチのソロ・アルバムには、抑えきれない怒りがそこら中にある。ダブの深度がもっとも深い“Digging Down”においても、彼女は怒っている自分を隠さない。そして、アルバムを締める “Let’s Go Crazy” のなかで彼女はより直接的に女たちに呼びかけている。「この狂った時代のために/女の仲間が欲しい/私たちの時代がもうすぐやってくる/私たちの時代がもうすぐやってくる/私たちの時代がもうすぐやってくる/私たちの時代がもうすぐやってくる……」

 あらためて、そして謙虚な気持ちで言えば、このアルバムのレヴューの書き手にぼくが相応しくないことはあきらである。が、ここは、偉大なるベル・フックスが言うように「フェミニズムはみんなのもの」ということでお許しいただきたい。確実なところとしては、いちリスナーとして、言うべき言葉をもった音楽特有の力強いものを感じるし、日本がグレッグ・テイトの言う通りなのだとしたら、音楽メディアに関わる人間としてこの作品を紹介するのは、それこそ義務なのだ。

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