「K A R Y Y N」と一致するもの

tofubeats - ele-king

 光陰矢のごとし、最新アルバム『REFLECTION』からもう2年が経つ。このたびアナウンスされたtofubeatsの新作はなんと、全曲ハウスに振り切ったEP「NOBODY」。彼自身のヴォーカルはなく、かわりに全曲でAI歌声合成ソフトが使用されているという(アートワークもかなり気になりますね)。4月26日より配信開始、リード曲 “I CAN FEEL IT(Single Mix)” は本日公開されている。かねてよりハウス愛を表現してきたtofubeatsだ。フロアライクな1枚、楽しみにしておこう。

tofubeats、フロアライクなHOUSEミュージックを全曲AI歌声合成ソフトで制作したEP「NOBODY」を4月26日にデジタル配信! 本日よりリードトラック「I CAN FEEL IT(Single Mix)」を配信開始

tofubeatsがアルバム「REFLECTION」(2022)から約 2 年ぶりとなる新作 EPをリリース。
様々なアーティストとの共演、サウンドトラック制作や楽曲提供などの多岐にわたる活動を経てリリースされるEPは、コロナ禍を経てフロアライクなHOUSE MUSIC をコンセプトに、全曲のボーカルをAI 歌声合成ソフトで制作した意欲作。

前作のアルバムでは、tofubeats本人のボーカルやゲストも迎えた多彩な作品となっていたが新作「NOBODY」は全曲AI歌声合成ソフトのSynthesizer Vを使用したボーカルで制作。タイトルが象徴しているように実像のない歌声がそれぞれのトラック上で発するメッセージが、無機質ながら不思議な熱量とグルーヴを感じさせる作品となっている。

全6曲、8トラック入りのEPのリードトラック「I CAN FEEL IT (Single Mix)」は本日より先行で配信がされているのでぜひチェックしてほしい。

[tofubeatsコメント]
皆様いかがお過ごしでしょうか、tofubeatsです。

特に意識していなかったのですが自分のボーカルが1曲も入っていないEPが完成してしまいました。

オートチューンをそっ閉じしたtofubeatsの「雰囲気」ってやつもぜひ感じていただけると幸いです(結局機械の歌った歌なんですけどね)。ぜひ先行シングルのI CAN FEEL ITからお楽しみください。

[リリース情報]
・「I CAN FEEL IT (Single Mix)」先行配信中
・EP「NOBODY」 4月26日 デジタル配信開始
https://tofubeats.lnk.to/NOBODY

tofubeatsオフィシャルサイト
https://www.tofubeats.com/

Mars89 - ele-king

 東京を拠点にDJからプロテスト・レイヴまで精力的に活動をつづけるMars89が、新たにレーベルを始動する。その名も〈Nocturnal Technology〉。資料によれば、「80年代のインダストリアルやニューウェーヴの姿勢にインスパイアされ、現代のオーディエンス向けにアップデートされた」レーベルだという。レーベル名には、「DJ技術が夜間に活気づく」という意味がこめられているそうで、なるほど、暗闇のなかでも音波でモノを捉えるコウモリがロゴなのはコンセプトにぴったりだ。
 気になる最初のリリースは、Mars89自身と、ダブやサウンドシステム文化から影響を受けたカナダはブリティッシュコロンビア拠点のアート集団──この3月には〈Riddim Chango〉からもリリースしている──シーカーズインターナショナルによるコラボレイション作品。アシッド・ハウスやブリープ・テクノ、初期のレイヴ・ミュージックに触発されつつ、インダストリアルなものもとりいれた内容に仕上がっているようだ。フォーマットはカセットテープとデジタルの2種。ちなみにカセットテープには再生プラスティックを使用しており(レーベルTシャツもオーガニックコットン100%+ハンドプリント仕様)、彼のこだわりがうかがえる。
 Mars89の新たな試みから目が離せない。

artist: Mars89, SeekersInternational
title: DANGEROUS COMBINATION
label: Nocturnal Technology
release: April 18, 2024
format: Cassette, Digital

tracklist:
01. Dangerous Combination
02. Baddest Clash
03. Can't Ovaa
04. Big Up Worldwide
05. New King In The Street
06. Body Break
07. Selektaaa
08. Come Round Ya
09. Helicopter
10. [Jack] Till Morning
11. Untitled ICE

KARAN! & TToten - ele-king

 ブラジル発祥のマッシヴかつハードなダンス・ミュージック、バイレファンキ(ファンキ)の勢いが止まらない。首都リオ・デ・ジャネイロの深部であるスラム街、ファヴェーラにて誕生したゲットー・ミュージックはその熱量と音圧、独特のリズムが00年代に大きな注目を集め、さまざまなアーティストやリスナーに刺激を与えた。その後も2020年代の現在に至るまで、無数のジャンルを飲み込みながら独自の方向性に進化を遂げている。

 そんなバイレファンキは今日の日本でも人気を博していて、たとえばハイパーポップ世代のラウドな音像を得意とするビートメイカー、hirihiriや、その名のとおりバイレファンキを軸としたハイ・エナジーなセレクトで絶大な信頼を誇るDJ、バイレファンキかけ子などが、ブラジリアン・ダンス・ミュージックを主としたDJセットやバイレファンキ由来のトラック・メイキングを通じ、日本各地を盛り上げている。

 そして2024年、ついに最新のブラジリアン・サウンドを手がけるブラジル本国のアーティスト、KARAN!とTTotenの両名を迎えた初のジャパン・ツアーが東名阪3会場にて5月に開催決定。両名ともファンキを土台にベース・ミュージックの柔軟性を吸収した “ファベーラ・ベース” なるジャンルを提唱しており、現地でのリアルな肌感覚をもとに同ジャンルのさらなるアップデートを試みている。

 KARAN!とTTotenのジャパン・ツアーは、全日程をバイレファンキかけ子が帯同しつつ5月22日(水)よりスタート。ポスト・コロナ以降のハイヴリッドな感性を持つアーティスト、cyber milkちゃんとDJ/スタイリストとして活動するALTF4によるイベント〈shampoo〉が手がける大阪COMPASSでのデイ・パーティにはじまり、5月24日(金)には栄のローカル・シーンを支えるヴェニュー、club Good Weatherを舞台に名古屋公演をオールナイト開催、そして5月25日には渋谷、CIRCUS TOKYOでのツアー・ファイナルが開催決定している。
 とくに東京公演にはokadada、坂田律子をはじめとした中南米のダンス・ミュージックにも精通した実力者が名を連ね、ライヴ・アクトとして日本でいち早くバイレファンキ✕サンプリング・ミュージックの可能性をナードな感性とともに探った2danimeghettoのMPCを用いた即興演奏が披露されるなど、現在の日本におけるバイレファンキの受容を総括したようなラインナップとなっている。
 ファンキ・ラヴァーのための特別な一夜を各会場で体感し、バイレファンキの現在形とブラジリアン・ダンス・ミュージックへの深い愛情を存分に楽しんでいこう。

KARAN! + TToten JapanTour!!

大阪公演
会場: CONPASS OSAKA
日時: 5/22(水)
START 18:00 CLOSE 22:30
前売: ¥2000 当日: ¥2500
TICKET : https://forms.gle/4HMPLiA8oNufeJT18

DJ:
KARAN! (from Brazil)
TToten (from Brazil)
バイレファンキかけ子
ALTF4
cyber milkちゃん
Junya Hirano(environment 0g/remodel)

名古屋公演 (To Be Announced)
会場: club GOODWEATHER
日時: 5/24(金) midnight

DJ:
KARAN! (from Brazil)
TToten (from Brazil)
バイレファンキかけ子
and more

東京公演
会場: CIRCUS TOKYO
日時: 5/25(土) START 23:00
前売: ¥2500 当日: ¥3000 学生: ¥2000
TICKET : https://circus.zaiko.io/e/karanttoten

Live:
2danimeghetto

DJ:
KARAN! (from Brazil)
TToten (from Brazil)
AXELERATOR
バイレファンキかけ子
hirihiri
okadada
pìccolo
坂田律子

KRM & KMRU - ele-king

 ザ・バグ名義で知られるケヴィン・リチャード・マーティン(KRM)と、ケニア出身ベルリン拠点のアンビエント作家、〈Editions Mego〉からの作品で注目を集めたジョセフ・カマル(KMRU)とのコラボレイションが実現することになった。アルバム『Disconnect』はブライトンの〈Phantom Limb〉より6月14日にリリース。その後にはおなじセッションから生まれたEP「Otherness」も予定されているとのこと。興味深い組み合わせに注目です。

artist: KRM & KMRU
title: Disconnect
label: Phantom Limb
release: 14th June 2024
tracklist:

01. Differences
02. Arkives
03. Difference
04. Ark
05. Differ
06. Arcs

Tashi Wada - ele-king

 フルクサスとも関わった作曲家ヨシ・ワダの息子にして、ジュリア・ホルターのコラボレイターでもあるLAのタシ・ワダ。自身のレーベル〈Saltern〉や〈RVNG Intl.〉などで実験的な試みをつづけてきた彼のニュー・アルバムが6月7日にリリースされる。題して『What Is Not Strange?』、父の死から娘の誕生までの期間に制作された作品だという。現在、ジュリア・ホルターを迎えた新曲が先行公開中だが、いやこれはアルバムも大いに期待できそうです。収益の一部は国境なき医師団に寄付されるとのこと。

Tashi Wadaのニュー・アルバム『What Is Not Strange?』がRVNG Intl.から6/7にリリース決定。
Julia Holterをフィーチャーした新曲「Grand Trine」をリリース&Dicky Bahtoが手がけたMV公開。

フルクサスの中心人物でもあった故Yoshi Wada氏のご子息でもあるロサンゼルスを拠点とするコンポーザーTashi Wadaのニュー・アルバム『What Is Not Strange?』がRVNG Intl.から6月7日にリリース決定。
先行ファースト・シングルとして長年のコラボレーターでありパートナーでもあるJulia Holter(昨年12月には共に来日)をフィーチャーした「Grand Trine」をリリース。
この曲は当時生まれたばかりだったTashi WadaとJulia Holterの娘の星図に存在する、正三角形を形成する惑星の占星術的な配置にその名前が由来している。Tashi Wadaのきらめくリチューンされたハープシコード・サウンドが、Julia Holterの伸びやかなヴォーカル、Ezra BuchlaとDevin Hoffの流線形のストリングス、Corey Fogelのラウンチングでパワフルなドラムによって高められていく。まるで惑星間の宮廷音楽のようであり、生命のサイクルに対する野心的な賛歌である。

合わせてTashiとJuliaの長年のコラボレーターであるDicky Bahtoが手がけた印象派的な同曲のミュージック・ビデオも公開されました。

Tashi Wada new single “Grand Trine” out now

Artist: Tashi Wada
Title: Grand Trine
Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Format: Digital Single
Listen/Buy: https://orcd.co/glwqb41

Tashi Wada – Grand Trine [Official Video]
YouTube: https://www.youtube.com/watch?v=fIbkbwliaOU

Directed by Dicky Bahto

Tashi Wada new album “What Is Not Strange?” out on June 7

Artist: Tashi Wada
Title: What Is Not Strange?
Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Cat#: ARTPL-216
Format: CD / Digital

※解説付き予定

Release Date: 2024.06.07
Price (CD): 2,200 yen + tax

“ドリーム・ミュージック” ロサンゼルスを拠点に活動する作曲家Tashi Wadaのニュー・アルバムであり、これまでで最も遠大で情熱的な音楽で構成されている作品が完成。父親Yoshi Wadaの死から娘の誕生までを含む期間にわたって書かれ、録音されたこのアルバムでは、ワダが新しい様式の恍惚とした歌をベースにした新しい表現方法を通して、「生きていること」、「死」、「自分の居場所を見つけること」といった広範な物語を探求するため、内面を見つめ直した作品となっている。濃密なフォルム、峻烈なコントラスト、明白な超現実性は、最小限の手段で知覚的効果を引き出した彼の初期の作品とは異なる重みを持っているかもしれないが、『What Is Not Strange?’』の核心は依然として実験と予期せぬ結果にある。

ワダは『What Is Not Strange?』をドリーム・ミュージックと呼び、”特定するのが難しい感情状態”と”瞬間から瞬間への変容”を宿している。自己の体験的知識によって生得的な真理を探求することは、ワダがアメリカのシュルレアリスムの詩人フィリップ・ラマンティアの著作に没頭していたことに影響されている。アルバムのタイトルをラマンティアの詩から取ったことに加え、彼は、私たちはまさに同じ世界の反映であるため、世界の秘密は私たちの中にあるという先見の明のある詩人の信念に触発された。しかし、このアルバムの基本的な前提は、そこに「そこ」は存在しないという感覚である。足元の地面さえ不確かなのだ。この内面性があるように見える『What Is Not Strange?』の理念と音楽は安易なカテゴライズを拒み、過去、現在、未来のビジョンのように展開する。

ミニマリズム音楽と、父Yoshi Wadaが中心人物であったフルクサス芸術運動の不朽の遺産を肌で感じながら育ったワダは、父の偉大な貢献によるインサイダーとして、また2人の移民の息子として、アジア系アメリカ人としてのアウトサイダーとして、アカデミーと90年代以降のアメリカのアンダーグラウンドを渡り歩いてきた。本作で彼は、この系譜を再文脈化し、推定される信条を無視し、より大きく、より複雑なアレンジメントで最大主義的アプローチを主張する。

既知の量の不安定性は、「What Is Not Strange?」の方法論に反映されている。ワダはキーボード演奏を自由にするために独自のパラメータを設定し、フランスの作曲家で音楽理論家のJean-Philippe Rameauが提案した18世紀初頭の音律に基づいたシステムにProphetとOberheimのシンセをチューニングした。「そこから、耳と感触で音楽を浮かび上がらせました」と振り返り、「チューニングの不規則なハーモニーと重なり合うキーボードの馴染みのある感触とその引きが私の演奏を導き、最終的にアルバムのサウンドとハーモニーの世界を形作りました。」と語っている。
『What Is Not Strange?』の参加メンバーは、実験音楽、ポップス、ジャズ、エレクトロニック・ミュージックなど、様々な分野のロサンゼルスのミュージシャンからなる結束の固いコミュニティから集められている。長年のコラボレーターでありパートナーでもあるJulia Holterは、彼女の特徴である高らかなヴォーカルでワダの作曲を高めている。パーカッショニストのCorey Fogelは 、パワフルでありながら繊細なオーケストラ・プレイでアルバム全体に貢献し、ヴィオラ奏者のEzra BuchlaとベーシストのDevin Hoffは 、拡散する弦楽器のテクスチャーとメロディックなインタープレイを提供している。このアルバムは、Chris Cohenが南カリフォルニアの様々なスタジオで録音し、Stephan Mathieuがミキシングとマスタリングを担当した。「この音楽はかなり直感的に書かれたもので、近年、家族や友人とライブ・グループを結成し、ツアーを数多くこなしてきたことに起因しています」とワダは言う。

オープニングのタイトル・トラックでは、立ち上がるシンセのパルスが、不穏でありながら吉兆なムードを醸し出し、バンドをフォーメイションへと誘う。アルバムの目玉である「Grand Trine」は、これまでの作品の中で最も輝かしい音楽である。ワダの重厚なハープシコードとJulia Holterの紛れもない声が組み合わさり、惑星間の宮廷音楽のように感じられる。タイトルは、ワダとホルターの娘の星座図にある正三角形を形成する3つの惑星の配置にちなんでいる。バンドは「Flame of Perfect Form」で原始的なサイケデリアへと融合し、トリオ編成の「Subaru」では、フォークと日本のシンセ・ポップが楽観的にブレンドされ、星に手を伸ばす。最後から2番目のトラック「Plume」では、彼のこれまでの音楽に存在していた哀愁漂うドローンが、楽しげでやんちゃなキーボード・ソロと一気に絡み合う。

ワダは『What Is Not Strange?(何がおかしくないか)』で、野性的な実験の基盤を確立し、決定的な声明を作り上げ、彼の身近な、そして拡大した音楽的ファミリーの助けを借りて、広がりのある新しい音世界を形作った。ルーツは深まり、増殖する。本作は、アーティストがコントロールを放棄し、得体の知れないものに語りかけるサウンドである。ワダが回想する:「まだ泳ぎに自信がない頃、海に入って、足の指先が地面につかなくなり、ゆっくりと浮き上がった幼い頃の記憶がある。恐怖と爽快感でいっぱいだった。底が抜けて、深いところに出て、広々とした開放感の中で、自分と、上空の空と下界の海の底知れなさを感じるんだ」。

Tashi WadaとRVNG Intl.を代表して、このリリースの収益の一部は、紛争、伝染病、災害、または医療から排除された影響を受けている人々に人道的医療支援を提供する非政府組織「国境なき医師団」に寄付されます。

TRACK LIST:

01. What Is Not Strange?
02. Grand Trine
03. Revealed Night
04. Asleep to the World
05. Flame of Perfect Form
06. Under the Earth
07. Subaru
08. Time of Birds
09. Calling
10. Plume
11. This World’s Beauty

Bingo Fury - ele-king

 ブリストルの青年ジャック・オグボーンのプロジェクト、ビンゴ・フューリー。彼は石畳の冷たさと厳かな空気が漂う街を描いた映画のサウンドトラックのような音楽を奏でている。2020年、白黒の画面のなか、小さな教会の前でジャズとノーウェーヴを混ぜた音楽にあわせ歌っていた若者のバンドがあっという間に解散した後、彼は残ったメンバー数人とともにビンゴ・フューリーという50年代、60年代のノワール映画から抜け出たようなペルソナをまとい再び表舞台に帰ってきた。
 ビンゴ・フューリーの名が初めて世に現れたのは同年にリリースされたコロナ禍における音楽ヴェニューを守るためのチャリティー・コンピ・アルバム『Group Therapy Vol. 1』だった。ゴート・ガールのロッティのソロ名義ムッシー・P、ブリストルの年上の盟友ロビー&モナ、ザ・ラウンジ・ソサエティ、ソーリー、ブラック・カントリー・ニュー・ロードのルイス・エヴァンスのグッド・ウィズ・ペアレンツ、果ては 〈Speedy WunderGround〉ダン・キャリーのサヴェージ・ゲイリーまで、そうそうたるメンバーのなかに収められた小さなデモは部屋のなかの空気がそのまま入っているかのような暖かさがあって、いまこうやって聞くとビンゴ・フューリーのコンセプトがこのときすでに完成していたようにも思える。キーボードで弾き語られるそれはまるで映画のなかに挿入されるワン・シーンのように映像的で、そして音楽が作り出す空気を表現しているようだった。

「僕はそれ(ビンゴ・フューリー)を人生よりも大きなものにしたかったんだ……映画みたいになることを僕は求めた」。地元ブリストルのメディア365Bristolのインタヴュー(2022年)にジャック・オグボーンはそんな言葉を残しているが、その言葉通りビンゴ・フューリーの音楽は音楽のためだけのものではないのだろう。ミュージック・ヴィデオや写真がどのような影響を曲に与えるのか? もしくは曲がヴィデオやビンゴ・フューリーというプロジェクトにどんな影響を与えるのか? 彼は考え、このペルソナが生きる世界を構築しようと試みた。それはデヴィッド・ボウイが70年代にジギー・スターダストとしておこなったことと同じようなことなのかもしれないが、ビンゴ・フューリーは違う星ではなく、ブリストルの片隅に存在する現実の隣にあるほんの少しズレた世界を作り出したのだ。冷たい空気と暗闇、窓のなかの明かり、アートワークに描かれた彼の姿は等身大を離れ、想像の世界、物語の確かな美しさを提示する。

 そんな風に作られたこの1stアルバムの世界は暗く柔らかに日常のなかに溶けていく。地元ブリストルの教会で録音されたというジャズともノーウェーヴとも言えないような音楽はギラギラと目を引くような派手なものではなく、不協和音の緊張とそれに反するような安らぎの両方を持ち、ピアノとコルネットが空気を作り感情に静かに波を立てていく。それはまさに日常に寄り添うサウンドトラックのようであって、心のなかの景色をほんの少し特別なものに変えていくのだ。
 いくつものムードが交じり合い同時に存在するという感覚はともすればぼんやりとしたものともとらえられかねないが、しかしこれこそがこの奇妙な心地の良い空間を作り出しているものなのだろう。たとえば何かが起きそうな不穏な空気を作り出すホーンにピアノ、どこかから聞こえる物音、渦巻くような危険な気配を持った “I'll Be Mountains” はしかし、結局は何も起きずに静かにフェードアウトしていく。「パンのように霧をちぎる」。抽象的な歌詞をわずかに抑揚をつけてオグボーンは歌い、それがなにもない日常の空気のなかに溶けて消えていく。ほんの少しのズレにほんの少しの心地よさ、それは壮大なものではなく感情の機微みたいなもので、何かの気配や物音がズレや違和感を作り出し漂う空気を形作っていく。“Power Drill” や “Mr Stark” といったギターやエフェクトが引っ張っていくような曲であっても、裏で鳴るピアノや落ち着いた低い声のヴォーカルがチグハグなムードを作り出し心を極端な方向に持っていかせない。そうしてそれがこの奇妙に落ち着く空間を作り出すのだ。
 ビンゴ・フューリーは空気を描く、28分と少しの短い収録時間とも相まってこのアルバムは日常の小さなサウンドトラックとして素晴らしく機能する。繰り返し聞くたびに心に触る静かな刺激がなんとも心地よくなっていく。

Jlin - ele-king

 フットワークのすごいところは、この音楽がダンスのためにあり、ダンスという行為から自発的に生まれる創造性に対応すべく進化した点にある。踊っている側が、バトルのためにより複雑な動きを必要とし、音楽がそれに応えたのだ。つまり、あの平均値80bpmのハーフタイムのリズムと160bpmのオフビートでのクラップとハットの高速反復、初期のそれにはいかがわしいヴォーカル・サンプルも追加されるという(その点ではヴェイパーウェイヴとの並列関係にあった)、ああしたフットワークのスタイルは、アートを目指して生まれたものではない。踊るために機能するサウンドとして生まれ、磨かれたということだ。RPブーもDJラシャドもDJスピンも、みんな元々はダンサーである。いや、その源流にあたるゲットー・ハウスの王様、DJファンクだってダンスからはじまっている。「ファック・アート、レッツ・ダンス」とは初期レイヴの有名なスローガンだが、シカゴはそれを一時期の流行ではなく、世界がシカゴに注目しなくなった90年代後半においてもずっと継続していたのだった(デトロイトのゲットーテックとともに、ダンス・ミュージックにおけるダーティな側面の追求)。きっと、いまでもそうなんだと思う。

 ジェイリンは、シカゴのフットワークをインターネットを通じて知ったその外部者のひとりで、インディアナ州ゲイリーを拠点としている。現場とは直接関わっていなかったがゆえにダンサーたちの要求に応える必要もなく、自由な発想ができる立場にいた彼女は、それでも最初は現場の手ほどきを受け、そして自分のアイデアを加えてフットワークを拡張した。そのみごとな成果は、すでに『Dark Energy』や『Black Origami』といった作品として知られている。とくに後者はオウテカの領域にも近づいており、その4次元的なリズム宇宙とテックライフ系のフロアとの架け橋をしているようなアルバムだった。もっともジェイリンのシカゴの現場へのリスペクトにはたいへんなものがあって、彼女はフットワークのAFXにはならないし、彼女の音楽から「レッツ・ダンス」の要素はなくならない。それは今回のアルバムにおいてもっとも話題となったフィリップ・グラスとの共作“The Precision Of Infinity”も証明している。
 この曲で驚くべきは彼女のリズム・トラックだ。もちろん、いままでもそうだったように、単純な反復ではない。フットワークにおけるハーフタイムの構造を活かし、曲は複数回にわたって別のリズムへと展開する。複雑な構造だが、複雑には聴こえないし、ゲットー・ハウスに聴こえる瞬間すらある。ダンス・ミュージックにおけるもっともダーティな側面(からの進化形)とグラスが、どんな経緯があろうとも結果、共鳴しあっているかと思うと、ぼくはついつい微笑んでしまうのだが、良い曲だと思う。クロノス・クァルテットとの共作“Sodalite”も、同じように彼らの旋律の変化に合わせてリズムも変わる。ちなみにジェイリンは、バージニア・ウルフの小説を下地にした映画『めぐりあう時間たち』のサウンドトラックでグラスを好きになったという話だ。
 
 ビョークとの共作は、ジェイリンがすでにホーリー・ハーンドンとの共作を出していることを思えば驚くに値しない。その曲“Borealis”も、グラスとの共作同様にシームレスなリズムの変化が魅力で、これまでの作風がどちらかと言えばヴァーティカル(垂直的)な傾向(つまり、いつどこで聴いてもその曲の魅力はわかる構造)にあったことを思えば、今回はそこにリズムの展開を加えること(つまり、最初から通しで聴いた方がその魅力がわかる構造)が大きなコンセプトになっていると言えそうだ。それから、まあこれは以前からもあった要素だが、“Challenge ”や“Eye Am”など、パーカッシヴな響きの多彩な見せ方も今作の特徴になっている。野心作としてはほかにも、ヴァイオリンやチェロなどの弦楽器の音をパーカッシヴに使った、抽象的だがリズミックな“Summon”があるが、この実験においてもフットワークの影響が残っている。そう、だから、シカゴではアートではないからこそアートになりえるという逆説が成り立っていると、ジェイリンはそのことをよく理解していた。フットワークとはリズムの音楽で、その可能性/横断性は限りない。というわけで、さあ、レッツ・アート、レッツ・ダンス!

Ben Frost - ele-king

 アートワークのヴィジュアルは黒き太陽だろうか。その「太陽」(かもしれない惑星らしき円形の影)のまわりに冠のように放出されてる「光」。どこか「コロナ」のようなイメージだ。となればこのベン・フロストの新作アルバムもまたコロナウィルス以降の世界を象徴するようなアルバムなのだろうか。いやそんな安直な思い込みはひとまずは置いておこう。何はともあれこの衝撃的な音世界に心身を浸すべきである。電子ノイズ、エレクトリック・ギター、断続的なリズム。それらの交錯が心身を直撃する。まさしく最強の「尖端音楽」だ。それがベン・フロストの新作『Scope Neglect』である。

 この『Scope Neglect』は、2017年にリリースされた『The Centre Cannot Hold』以来、7年ぶりに、かの〈MUTE〉からリリースされたベン・フロストのアルバムである。エンジニアにニック・ケイヴスワンズなどを手がけた Ingo Kraussを迎え、ベルリンのキャンディ・ボンバー・スタジオで録音された。ちなみに〈MUTE〉からは、2014年に『Aurora』を発表している。どちらのアルバムも炸裂する電子ノイズとエモーショナルな旋律が交錯するアルバムだった。むろんフロストは〈MUTE〉からのみアルバムを出してきたわけではなくて、2003年にリリースした『Steel Wound』は〈Room40〉からだし、2006年の『Theory Of Machines』、2009年の『By The Throat』は、フロストの盟友であるヴァルゲイル・シグルズソンやニコ・ミューリーらと運営していたレーベル〈Bedroom Community〉から発表したアルバムだった。また10年代後半から20年代前半にかけてはドラマ・シリーズ『Dark』や『1899』のサウンドトラックを手がけ、その仕事の幅を広げていった。個人的には2022年に〈The Vinyl Factory〉からリリースされたフィールド・レコーディング作品でありながら神話的な音響空間を構築した『Broken Spectre』と、2023年に〈Room40〉から発表したフランチェスコ・ファブリスとの共作『Vakning』があまりに素晴らしく、フロストはこのままエクスペリメンタル/実験音楽路線を突き進むと思っていたので、インダストリアル・エレクトロとでいうような〈MUTE〉からの2作のようなサウンドはもう聴くことはできないと勝手に思っていた。だからこそ本作はより衝撃だったのだ。単に過去作の反復ではない。もっとスケールの大きい、かつ精巧なノイズ・インダストリアル・エレクトロニカが見事に完成していたからである。

 プログレッシヴ・メタル・バンドのカーボムのギタリスト、グレッグ・クバツキとマイ・ディスコのベーシストであるリアム・アンドリューズが参加していることも話題になっている。特にグレッグ・クバツキの放つギターは筆舌に尽くし難いほど凄まじい。もちろんベン・フロストのサウンドと完全に一体化しているように構築されているが、このアルバムの持っている衝撃度を上げるのに貢献していることには違いない(どうやらこのアルバムはフロストの「メタル」への憧れから生まれたという)。とにかくこのギターの音は脳にくるのだ。アルバムは1曲目 “Lamb Shit” では冒頭からエレクトリック・ギターの音が炸裂している。カミソリのように鋭い音が、独特の間で鳴らされる。アルバムの世界に聴き手を引き込むオープンニング・トラックとして見事に機能しているのだ。2曲目でもギターの音は引き継がれている。まるで恐ろしい爆撃のようにギターの音が響き、そこにアトモスフィアな電子音次第に折り重なっていく。この曲ではビートが鳴り響いていないが、深く地響きのように鳴らされる音が衝撃的である。とはいえアルバム全体がヘヴィロックよりになっているわけではない。3曲目 “The River of Light and Radiation” では、アルヴァ・ノト池田亮司などの電子音響作品を思わせる電子音のリズム/ビートを導入している。続く4曲目 “_1993” は2分50秒の短いトラックだが、不穏、かつ鋭いアンビエンスのサウンドスケープを展開する。アルバムには全8曲が収録されているので、ここがアルバムの折り返し地点だ。5曲目 “Turning the Prism” では、前半で展開していたエレクトリック・ギターによる爆撃のような音、透明・不穏なアンビエンス、不規則なリズムという要素がすべて統合され、アルバム全体を象徴するようなトラックといえよう。インダストリアルであり、サイケデリックですらある。6曲目 “Load up on Guns, Bring your Friends” では “_1993” 的な鋭いノイズによるインダストリアル・アンビエントを展開する。7曲目 “Tritium Bath” は穏やかなトーンのアンビエント的なサウンドとヘヴィロック的なギターが同時に鳴らされ、異なるふたつの状況が同時進行するようなサウンドだ。“Turning the Prism” と同じようにアルバム中の要素を統合したトラックである。音が波のように変化し、ノイズとアンビエントの両極を行き来するこの曲は、まさに本作のクライマックスのようでもある。中盤を過ぎたところで展開するザクザクと刻まれていくエレクトリック・ギターが凄まじい。どこか感情を殺したような不穏な感覚もある。この不穏な静けさはアルバム最終曲である8曲目 “Unreal in the Eyes of the Dead” へと受け継がれる。不穏なトーンが持続するなか、ミニマルに展開するダーク・アンビエント・トラックだ。どこか異様な殺気を感じさせる曲でもある。この曲はアルバム全体に横溢している世界の終わりのようなムードを実によく表現している。まさにアルバムの最後を飾るに相応しい曲といえよう。

 『Scope Neglect』でベン・フロストはどのような「ムード」というか「気配」をわれわれに伝えようとしているのだろうか。アルバムを何回も聴いてもふとこう思った。ベン・フロストは、この世界/地球そのものの「震動」をノイズを通して音響作品にしているのではないか、と。だがそれはかつての彼の作品もそうだったはず。『Scope Neglect』を聴いてると、なぜかクセナキスの『Persepolis』や「Hibiki-Hana-Ma」を思い出した。当然、どこも似ていない。ただ世界そのものを「謎」として、その「謎」を暴発的な音響で軋むように作品化しているというムードが似ているように思えたのだ。むろんこれは単なる妄想なのだが、重要なことは、『Scope Neglect』には異様なまでに吸引力がある点である。そう、本作は真夜中の太陽のごとき電子ノイズによる謎と衝撃のサウンドが結晶しているのだ。
 まさに強烈に爽快。不穏にして明快。攻撃的であり瞑想的でもあるサウンドが矢継ぎ早に襲ってくる圧倒的な音の集合体。いわばヘヴィ・エレクトロニック・ミュージック。その誕生と進化の両極がここにある。そう、まさに赤い光を放つ黒く燃える惑星のように。

Loraine James / Whatever The Weather - ele-king

 歓喜とはこのこと。2022年のすばらしいライヴをおぼえているだろうか。いまもっとも重要なエレクトロニック・ミュージシャンのひとり、ロレイン・ジェイムズの再来日が決定している。嬉しいことに、今回もロレイン・ジェイムズ名義とワットエヴァー・ザ・ウェザー名義の2公演。しかも、ジェイムズが敬愛しているという aus蓮沼執太がそれぞれの公演をサポートする。いやこれ組み合わせもナイスでしょう。
 ワットエヴァー・ザ・ウェザー&ausは5/15に、ロレイン・ジェイムズ&蓮沼執太は5/17に、いずれもCIRCUS Tokyoに登場。なお、ジェイムズはその後STAR FESTIVALにも両名義で出演します。ゴールデンウィーク後はしっかり予定を空けておくべし。

LORAINE JAMES // WHATEVER THE WEATHER JAPAN TOUR 2024
2022年の初来日公演が各所で絶賛され、2023年にLoraine James名義でHyperdubからリリースした最新作『Gentle Confrontation』が様々なメディアの年間ベスト・アルバムにも名を連らね、現代のエレクトロニック・ミュージック・シーンにおける再注目の存在であるLoraine James // Whatever The Weatherの再来日が決定致しました!
Loraine JamesとWhatever The Weatherでそれぞれ東京公演を行い、京都のSTAR FESTIVALにも両名義で出演致します。
また、東京公演のサポート・アクトにはLoraineが敬愛するaus(5/15公演)と蓮沼執太(5/17公演)が出演致します。
ausはハイブリッドなDJ+ライブセットを、蓮沼執太はソロセットを披露致します。

イベント・ページ:
https://www.artuniongroup.co.jp/plancha/top/news/loraine-james-2024/

Loraine James // Whatever The Weather
Japan Tour 2024

Whatever The Weather 東京公演
Ghostly International 25th Anniversary in Japan vol.1

日程:5/15(水)
会場:CIRCUS Tokyo
時間:OPEN 19:00 / START 20:00
料金:ADV ¥4,500 / DOOR ¥5,000 *別途1ドリンク代金700円必要

出演:
Whatever The Weather
aus

チケット:
イープラス https://circus.zaiko.io/e/whatever
ZAIKO https://eplus.jp/sf/detail/4082320001-P0030001

Loraine James 東京公演
日程:5/17(金)
会場:CIRCUS Tokyo
時間:OPEN 18:30 START 19:30
料金:ADV ¥4,500 / DOOR ¥5,000 *別途1ドリンク代金700円必要

出演:
Loraine James
Shuta Hasunuma

チケット:
イープラス https://circus.zaiko.io/e/lorain
ZAIKO https://eplus.jp/sf/detail/4082290001-P0030001

STAR FESTIVAL
日程:2024年5月18日(土)〜19日(日)
会場:府民の森ひよし 京都府南丹市日吉町天若上ノ所25 Google Map forest-hiyoshi.jp
時間:2024年5月18日(土)10:00開場 〜 19日(日)17:00閉場
Loraine James, Whatever The Weatherは両名義とも5/18に出演

料金:
前売入場券(ADV TICKET) ¥13,000
グループ割引入場券(4枚):¥46,000(1枚11,500円)
駐車券(PARKING TICKET) ¥3,000(オートキャンプA ¥20,000 / オートキャンプB ¥16,000 / オートキャンプC ¥6,000)

出演:
Craig Richards
DJ Marky
DJ Masda
Fumiya Tanaka
Loraine James
Whatever The Weather
Zip
and more…

チケット:
イープラス https://eplus.jp/starfestival2024/
ZAIKO https://thestarfestival.zaiko.io/e/2024MAY
楽天チケット http://r-t.jp/tsf

オフィシャルサイト:https://thestarfestival.com/

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主催・企画制作:CIRCUS / PLANCHA
協力:BEATINK


Photo by Ivor Alice

Loraine James // Whatever The Weather:

ロレイン・ジェイムス(Loraine James)はノース・ロンドン出身のエレクトロニッック・ミュージック・プロデューサー。エンフィールドの高層住宅アルマ・エステートで生まれ育ち、母親がヘヴィ・メタルからカリプソまで、あらゆる音楽に夢中になっていたおかげで、エレクトロニカ、UKドリル、ジャズなど幼少期から様々な音楽に触れることとなる。10代でピアノを習い、エモ、ポップ、マス・ロックのライヴに頻繁に通い(彼女は日本のマスロックの大ファンである)、その後MIDIキーボードとラップトップで電子音楽制作を独学で学び始める。自宅のささやかなスタジオで、ロレインは幅広い興味をパーソナルなサウンドに注ぎ込み、やがてそのスタイルは独自なものへと進化していった。
スクエアプッシャーやテレフォン・テル・アヴィヴといった様々なアーティストやバンドに影響を受けながら、エレクトロニカ、マスロック、ジャズをスムースにブレンドし、アンビエントな歪んだビートからヴォーカル・サンプル主導のテクノまで、独自のサウンドを作り上げた。
彼女は2017年にデビュー・アルバム『Detail』をリリースし、DJ/プロデューサーであるobject blueの耳に留まった。彼女はロレインの才能を高く評価し、自身のRinse FMの番組にゲストとして招き、Hyperdubのオーナーであるスティーヴ・グッドマン(別名:Kode 9)にリプライ・ツイートをして、Hyperdubと契約するように促した。それが功を奏し、Hyperdubは2019年に彼女独特のIDMにアヴァンギャルドな美学と感性に自由なアプローチを加えたアルバム『For You and I』をリリースし、各所で絶賛されブレイク作となった。その後『Nothing EP』、リミックス、コラボレーションをコンスタントにリリースし、2021年に同様に誠実で多彩なフルレングス『Reflection』を発表。さらなる評価とリスナーを獲得した。2022年には1990年に惜しくも他界したものの近年再評価が著しい才人、Julius Eastmanの楽曲を独自の感性で再解釈・再創造した『Building Something Beautiful For Me』をPhantom Limbからリリースし、初来日ツアーも行った。そして2023年には自身にとっての新しい章を開く作品『Gentle Confrontation』をHyperdubから発表。これまで以上に多くのゲストを起用しエレクトロニック・ミュージックの新たな地平を開く、彼女にとって現時点での最高傑作として様々なメディアの年間ベスト・アルバムにも名を連ねた。

そしてロレインは本名名義での活動と並行して、別名義プロジェクトWhatever The Weatherを2022年に始動した。パンデミック以降の激動のこの2年間をアートを通じて駆け抜けてきた彼女はNTSラジオでマンスリーのショーを始め、Bandcampでいくつかのプロジェクトを共有し、前述のHyperdubから『Nothing EP』と『Reflection』の2作のリリースした。そして同時に自身が10代の頃に持っていた未知の創造的な領域へと回帰し、この別名義プロジェクトの発足へと至る。Whatever The Weather名義ではクラブ・ミュージックとは対照的に、キーボードの即興演奏とヴォーカルの実験が行われ、パーカッシヴな構造を捨ててアトモスフィアと音色の形成が優先されている。
そしてデビュー作となるセイム・タイトル・アルバム『Whatever The Weather』が自身が長年ファンだったというGhoslty Internationalから2022年4月にリリースされた。ロレインは本アルバムのマスタリングを依頼したテレフォン・テル・アヴィヴをはじめ、HTRK(メンバーのJonnine StandishはロレインのEPに参加)、Lusine(ロレインがリミックスを手がけた)など、アンビエントと親和性の高いGhostly Internationalのアーティスト達のファンである。
「天気がどうであれ」というタイトルにもちなんで、曲名は全て温度数で示されている。周期的、季節的、そして予測不可能に展開されるアンビエント~IDMを横断するサウンドで、20年代エレクトロニカの傑作(ele-king booksの『AMBIENT definitive 増補改訂版』にも掲載)として幅広いリスナーから支持を得ている。


aus:

東京出身のミュージシャン。10代の頃から実験映像作品の音楽を手がける。長らく自身の音楽活動は休止していたが、昨年1月Seb Wildblood主宰All My Thoughtsより久々となるシングル”Until Then”のリリースを皮切りに、4月にはイギリスの老舗レーベルLo Recordingsより15年ぶりのニューアルバム”Everis”をリリース。同作のリミックス・アルバムにはJohn Beltran、Li Yileiらが参加した。Craig Armstrong、Seahawksほかリミックス・ワークも多数。当公演はDJ+ライブセットでの出演となる。


Shuta Hasunuma (蓮沼執太):

1983年、東京都生まれ。蓮沼執太フィルを組織して、国内外での音楽公演をはじめ、多数の音楽制作を行う。また「作曲」という手法を応用し物質的な表現を用いて、彫刻、映像、インスタレーション、パフォーマンスなどを制作する。主な個展に「Compositions」(Pioneer Works 、ニューヨーク/ 2018)、「 ~ ing」(資生堂ギャラリー、東京 / 2018)などがある。また、近年のプロジェクトやグループ展に「Someone’s public and private / Something’s public and private」(Tompkins Square Park 、ニューヨーク/ 2019)、「FACES」(SCAI PIRAMIDE、東京 / 2021)など。最新アルバムに『unpeople』(2023)。第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。

web: https://linktr.ee/shutahasunuma
Instagram: https://www.instagram.com/shuta_hasunuma/

読む人の数だけ物語がある。
人生を揺さぶる「読書という体験」とは。20人の表現者が描く、本にまつわる濃厚なエッセイを収録。

永井玲衣 スズキナオ 川内有緒 牧野伊三夫 島田潤一郎 磯部涼 古賀及子 大平一枝 今井真実 鳥羽和久 五所純子 後藤護 岡崎武志 浅生ハルミン 森岡督行 嵯峨景子 野中モモ 前田エマ かげはら史帆 星野概念

哲学者、画家、ノンフィクション作家、モデル、翻訳者、精神科医、書店主など20人が選んだ本

「日常が変わるほど刺激的な本」
「この本があるから今の自分がある」
「きっとこれから大事になる本」

目次

はじめに

カツ丼の秘密を解くのに三〇年もかかってしまった 川内有緒
絵が一片の詩であると知る 牧野伊三夫
解釈や理解をすり抜けるものの話 星野概念
小さな物語などありえない 五所純子
残された文章を読めば、いつでも「植草さん」が立ち現れる 岡崎武志
読書の敵、読書のよろこび 島田潤一郎
わくわくしないはずがない 浅生ハルミン
代表作を、あえて 大平一枝
どこを読んでも面白いのです 森岡督行
“何も起こらない小説” ではなく スズキナオ
自分のままで生きていくために 今井真実
衝撃を受けてなお、私は読書に目覚めなかった 古賀及子
それが絶望だったとしても 前田エマ
そして新しい扉は開かれた 嵯峨景子
本嫌い(ビブリオフォーブ)を本狂い(ビブリオマニア)に変えた一冊 後藤護
私の “昨日” の世界 かげはら史帆
意味などぶっ飛ばす爆音の先に 磯部涼
誰もが、深く傷ついていた 永井玲衣
人生最大の読解力を使い切った 鳥羽和久
モモのいる世界で半世紀 野中モモ

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