「K A R Y Y N」と一致するもの

Nick Edwards - ele-king

 六本木通りを渋谷方向に、つまり、ドミューンのスタジオやエレキングの編集部やC↑Pのエリイちゃんが住んでいるマンションや渋谷警察や一風堂やショーゲートが並んでいる方向に歩いていくと、途中に料亭がある。ひらがなで「かねい……」という文字が見えたところで、僕は必ず「かねいと」ではないかという連想が働いてしまう。ドゥーム・メタルのカネイトを名乗る料亭があるとは、さすが六本木だと感心していると、さらに4~5歩進んだところで「かねいし」だということが判明する。やはり、ドゥーム・メタルを店の名前に掲げる勇気はないらしい。ましてや「あーす」とか「さん O)))」といった料亭も僕は見たことがない。「けいてぃえる」だと、けんちん汁みたいなので、あってもいいような気がするけれど、「なじゃ」もないし、「あいしす」もないし、僕が生きている間に「あんくる・あしっど・あんど・ざ・でっどびーつ」という料亭が六本木にオープンすることはまずないだろう。エリイちゃんはこんな街で毎晩、遊んでいて面白いんだろうか。エリイちゃんの卒業論文はちなみに「憲法九条について」である。「ピカッ」に至るまでの基礎はできていたのである。

 メタル・ドローンのグループとしてカネイトがどれだけ凄いグループだったかということは、絶賛編集中のエレキング7号で倉本諒が力説していることだろう。大体、倉本くんがエレキングに興味を持ったのは創刊号にジェイムズ・プロトキンがフィーチャーされていたからだそうで、同じカネイトでも、スティーヴン・オモーリーのインタヴューが掲載されていたら、もっと理知的な……いや、違うタイプの若者がエレキングに吸い寄せられてきたのだろうか。わからない。すべては煙のなかである。ドゥームというものは、そもそもそういうものである。ジェイムズ・プロトキンが新たにジョン・ミューラーと組んだ『ターミナル・ヴェロシティ』もスクリュードされたマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのように完全に視界は真っ白で、そう簡単には煙を掻き分けることはできない。これはとんでもない大作である。そして、3ヵ月ほど前にリリースされたスティーヴン・オモーリーとスティーヴ・ノーブルのジョイント・ライヴ『セイント・フランシス・デュオ』もとんでもなかった。これはとくにドラムスが圧巻で、視界はいたって良好なハードコア・ジャズを聴くことができる。現在はオモーリーと共にアーセノアーのメンバーであるノーブルは、ちなみにリップ、リグ&パニックの初代ドラムスとして知られる大ヴェテランである。リップ、リグ&パニックといえば……

 ……ブリストルのダブが、そして、ここのところドローンの侵食を受けている。もっともノイズ色が強いエンプティセットやヴェクスドのローリー・ポーター、そして、もっとも派手に動いているのがエコープレックス(Ekoplekz)ことニック・エドワーズで、2010年に自主制作盤を連発したエコープレックスは翌年に入るとペヴァーリストが運営するダブステップの〈パンチ・ドランク〉と、ドナート・ドツィーやイアン・マーティンなどアンビエント系テクノのヒットで知られるシアトルの〈ファーサー〉と、まったく毛色の違うレーベルから話題作を放ったあげく、なんと、新作は本人名義で〈エディションズ・メゴ〉からとなった。同じくエレキング7号のために話を聞かせてもらったジム・オルークも、話の締めくくりはやっぱり〈メゴ〉がスゴいということになっていたのだけれど、その感慨はここでも繰り返さざるを得ない。スティーヴン・オモーリーもエメラルズのジョン・エリオットも、そして、マーク・フェルも現在は〈メゴ〉の傘下にそれぞれがA&Rを務めるレーベルを持っているほど、〈メゴ〉はかつてのハプスブルク家を準えるように版図を拡張している最中で、これにブリストル・コネクションまで加わってしまったのである。いやいや。

 『プレックゼイションズ』は名義を変えた意味をまったく感じさせない。これまでとやっていることは同じである。強いて言えば従来のドローン・ダブにクラウトロックが垣間見えるようになったことで、1曲が長いということもあるけれど、いってみればアカデミック色を欠いたインプロヴァイゼイションであり、使いにくいトリップ・ミュージックであることをやめようとはしない。とはいえ、これまでの〈メゴ〉のラインナップからすればOPNと並んで快楽係数は格段に高く、ビートが入らないカンのように聴こえる場面も少なくない。不穏なムードを鍋の底でかき回しているようなタッチが続いたかと思えば、過剰なエコー・チェンバーに打ちのめされ、ブリストルにしては金属的な響きを強調しつつ(マーク・スチュワートがいたか)、それらがすべて抽象化されたベース・ミュージックとしての役割をまっとうしていく。“(ノー)エスケープ・フロム・79”のエンディング部分などはほとんどスーサイドのダブ・ヴァージョンにしか聴こえない。アップ・トゥ・デートされたスロッビン・グリッスルとも(https://soundcloud.com/experimedia/nick-edwards-plekzationz-album)。どこもかしこもグワングワンですがな。

 ダブとドローンという組み合わせは意外と少なくて、シーフィール、チャプターハウス(猫ジャケ!)、ステファン・マシュウ、ポカホーンテッド、フェニン、デイル・クーパー・カルテット……ぐらいのものらしい(あと、聴いたことないけれど、日本のオハナミという人たち?)。ダブが他のジャンルに応用されはじめたときのことはいまでもよく覚えていて、最初はXTC(アンディ・パートリッヂ)やジェネレイションXがダントツで、そのうち、ポップ・グループやフライング・リザーズが出てきてスゲーなーと思っていたら、あっという間にダブ・ヴァージョンが入ってないシングルはないというほど広まっていくという。カルチャー・クラブ“ドゥ・ユー・リアリー・ウォント・ミー”というカーク・ブランドンへの訣別の歌とかw。ジ・オーブやマッシヴ・アタックが、そして、次の時代を切り開いたといえ、サン・アロウやハイプ・ウイリアムスに受け継がれていくと。しつこいようですが、ターミナル・チーズケーキもお忘れなく。

 ここにもうひとつ加えたいのがシーカーズインターナショナルのデビュー作で、これがDJスプーキーや〈ワード・サウンド〉周辺ではじまったイルビエント・ダブをノイズ・ドローン以降の価値観でブラッシュ・アップさせた内容となっている(https://soundcloud.com/experimedia/seekersinternational-the-call)。ズブズブズブ……と、どこをとっても完全に悪魔の沼にはまったコンピューマ全身ドロドロ状態で、ベーシック・チャンネルをスクリュードさせたような「ラージ・イット・アップ2」や「オールウェイズ・ダブ」など、実に素敵なトロトロができあがっています。夏が終わらないうちに……

 ……巻いてください。

DJ KEN (Mic Jack Production, Ill Dance Music.) - ele-king

毎月第2火曜日に北海道から全世界へ!"ALTERNA.tv"配信中!
www.ustream.tv/channel/alterna-tv2
www.micjack.com

最近ヘビープレイベスト10 2012.08.22


1
Mic Jack Production x Yukiguni - 防人ノ唄 - Ill Dance Music.

2
Cypress X Rusko - Cypress X Rusko EP 01 - Cooperative Music

3
Eligh & Amplive - Therapy At 3 - Legendary Music

4
Cut Chemist - Outro - A Stable Sound

5
Shadow Shogun - ゲリラ - Toride Records

6
Snoop Lion - La La La - Berhane Sound System

7
6 blocc & Bungalo Dub - Pressure Dub - Moonshine Recordings

8
Alias - Fever Dream - Anticon

9
V.A - Heavysick Zero 10th Anniversary - Heavysick Zero

10
Brain Pump - Black Diamond - White

P.I.L. - ele-king

「詩人は、クールなどというものを志向しない。
志向した瞬間に、彼が発した言葉は詩とは正反対の場所に落ちて行く」

 というのは、別に偉人や著名人の言葉ではない。
 わたしが80年代にダブリンに住んでいた頃、路上で詩のバスキングをしながら日銭を稼いでいたおっさんが言った言葉である。
 いまでもそれを覚えているのは、その言葉を聞いたシチュエーションというのがちょっとシュールだったからで、要するにそんなことを言われて他人に金をたかられたことは後にも先にもないからだが、あの路上生活者は絵に描いたようなアイルランドのアル中親父であった。現代のように、AAだのリハビリだのが横行していなかった時代である。アル中はアル中としてそこら辺に放置され、公園のベンチやパブの入り口に打ち倒れて失禁したり寝たりしていた。あの時代のアイルランドはひたすら汚らしく、貧しい国であったのだ。
 だのに、尿とアルコール臭漂うダブリンの路上からは、なぜか常に詩が聞こえていた。

 なにしろ吟遊詩人が王侯貴族よりもリスペクトされたという歴史を持つ国である。
 しかし、アイルランドの吟遊詩人というのは、やたらと高尚で難解だったり、美しい韻を踏み続ける詩を朗読するだけの文学者ではなかったらしい。やはりそこはライヴ活動を中心とするパフォーマーなので、聴衆を飽きさせないユーモアや諧謔性も求められ、芸術家である一面と、道化としての一面を同時に併せ持つエンターテイナーだったという。

   *************

 This is PiL
 とは、まるで新進バンドの1stアルバムみたいなタイトルだな。と思った。
 This is John Lydon
 に聞こえそうな内容だから、いやいや、これはあくまでもPiLなんだよ。という意味合いを込めて、往年のファンに向けて発信したタイトルだったのかもしれない。
 というか、本当は、This is my PiLにしたかったのではないか。キース・レヴィンとジャー・ウォブルのtheir PiLがあるからだ。

 『This is PiL』の特筆すべき点は、意味のない気取りや気負いをそこら辺のパブの便器にうち捨てて来たかのような、ダサあたたかいほどのラフなサウンドだろう。これは往年のPiLには無かったものだ。
 PiLを聴いてこんなことを想像したことは一度もなかったが、アイルランドの薄暗いパブに仁王立ちしたライドンが、パイントグラスを抱えたおっさんたちを前に「This is PiL!」と野太い声で怒鳴りかける姿や、“Terra Gate”で畳み掛けるような韻を踏んで聞かせて、やんやの喝采を浴びる姿、“One Drop”に至っては、泥酔したおっさんたちとライドンがだみ声で合唱している様子まで脳裏に浮かぶ。
 それ故、音楽的に先鋭的でありクールであることを志向していた頃のPiLが好きだったき人びとには、このアルバムはPiLではないかもしれない。そう考えると、『This is PiL』は、わりとケンカ腰のタイトルだったのかとも思えてくる。

   *************

 「詩人は、クールなどというものを志向しない。
志向した瞬間に、彼が発した言葉は詩とは正反対の場所に落ちて行く」

 そんな訳のわからないことを言って金をたかってきたダブリンの酔っ払いに金を渡したかどうかは覚えていない。が、あの路上の詩人は何処かで見たことのあるような強烈な目つきをしていた。
 どうしたってジョン・ライドンは、アイルランドの吟遊詩人の系譜を引いているのだ。
 それはセックス・ピストルズの頃から燦然と突出していたファクトだった。
 聴衆を夢中にさせ、何よりその精神を鼓舞し、アンセムとしての詩を歌わせることのできる芸術家にして道化。
 長い歳月と紆余曲折を経てライドンは一巡し、そこに戻ろうとしている。

 「誰もお前のためになんかやってはくれない。自分でやれ」
 BBCの「PUNK BRITANNIA」で、「パンクとは何か」と訊かれたライドンはそう言った。
 This is PiL もとい、This is his PiLで、いいではないか。彼はやはり自分でやっているのだ。
 個人的には、彼がやろうとしているのは、PiLとピストルズを融合させるという大仕事だろうと睨んでいるが。

LOW END THEORY JAPAN [Fall 2012 Edition] - ele-king

 ちょうどフライング・ロータスの新作『アンティル・ザ・クワイエット・カムス』(素晴らしいアルバム!)がリリースされる頃、今年3度目のローエンド・セオリーが代官山ユニットで開催される。イヴェントの看板DJのひとり、ザ・ガスランプ・キラーをはじめジョンウェイン(注目株のひとり、ストーンズ・スロー所属)、そして豪華絢爛なDJたち。DJ Ductと鎮座ドープネスとMABANUAが一緒に並んでいるっていうのもいいです。人気企画BeatInvitationalも同時開催する。

 とにかく、以下のメンツを見て欲しい。ビート好きは集合!

2012.9.28(金)
at UNIT
www.unit-tokyo.com
OPEN / START : 23:00
CHARGE : ADV.3,500yen / DOOR 4,000yen
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。
(要写真付き身分証)

Live&DJ:
The Gaslamp Killer
Nocando
Jonwayne

Beat Invitational:
grooveman Spot
三浦康嗣(□□□)
鎮座ドープネス
daisuke tanabe
mabanua (laptop set)
DJ Duct
sauce 81
みみみ
Notuv
Submerse

The Gaslamp Killer
Jonwayne

DJ:
DJ Kensei
grooveman Spot
Hair Stylistics
DJ Sagaraxx
RLP
Submerse

VJ:
DBKN
浮舌大輔


The Gaslamp Killer ザ・ガスランプ・キラー
カリフォルニア州サンディエゴ出身。レイヴに通いつつ、インヴィジブル・スクラッチ・ピクルズやビート・ジャンキーズなどのスクラッチDJの影響も受け、17歳の時にサンディエゴの有名なダウンタウン、ガスランプ・クォーター(ガスランプの街灯が連なる通りがある)でDJをはじめる。2006年にロサンゼルスに移り住むと、すぐにはじまったばかりのパーティ「LOW END THEORY」に関わり、レジデントDJの座を掴む。LAの最新のビーツ系から、アンディ・ヴォーテルの〈FindersKeepers〉音源やジミ・ヘンドリックスまでプレイできるDJスタイルは、すでに世界的な人気を得ている。2012年9月、10年におよぶDJキャリアの集大成である待望のファースト・フル・アルバム『Breakthrough』をリリース。

Nocando ノーキャンドゥ 
LAアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンの中核Project Blowedから頭角を表し、「LOW END THEORY」のレジデントMCを務め、多方面から注目を集めているラッパー。自由自在にウィットに富んだ天才的なライムを吐き出し、07年には全米最大級 のヒップホップ・イヴェントであるスクリブル・ジャムのMCバトルでチャンプに輝いた。フライング・ロータスやバスドライヴァー、デイデラスらをはじめとしたそうそうたるメンツが参加したアルバム『Jimmy The Rock』もリリース。今年10月にはセカンド・アルバムのリリースを控えている。

Jonwayne ジョンウェイン
14歳からエイフェックス・ツインやスクェアプッシャー、ヒップホップ、ゲーム音楽に触発され音作りを始め、高校時代には演劇やスポークン・ ワードをやり、ヒップホップの虜になってからラップとビート作りに没頭。LOW END THEORYに足繁く通い、ダディ・ケヴにその才能を認められて、Alpha Pupからインスト・ アルバム『Bowser』『The Death Of Andrew』をリリース。またStonesThrowからも初期の作品をまとめた限定盤『Oodles of Doodles』をリリース。20歳そこそこで独自のビート・スタイルを確立した彼は、ラッパーとしても既に引っ張りだこで、ポーティスヘッドのジェフ・ バーロウによるQuakersのアルバムなどに参加している。

- Beat Invitational出演者

GROOVEMAN SPOT
世界が注目する新鋭ビートメイカー/プロデューサー。MC U-Zipplain とのユニット Enbull のDJ & トラックメイカーであり、JazzySportの最重要選手。これまでに4枚のソロアルバムをリリースし国内外のDJ達にも高く評価されており海外での DJingもここ数年増え続けている。待望の4thアルバム「PARADOX」を完成させ、10/17にリリースする。

三浦康嗣(□□□)
□□□(クチロロ)主宰。スカイツリー合唱団主宰。作詞、作曲、編曲、プロデュース、演奏、歌唱、プログラミング、エディット、音響エンジニ アリング、舞台演出......等々をひとりでこなし、多角的に創作に関わる総合作家。

鎮座ドープネス
1981年生まれ。東京・調布生まれ国立育ち。KOCHITOLA HAGURETICEMCEE`S&GROUND RIDDIM所属ヒップホップ、ブルース、レゲエなど様々な音楽がミックスされたカメレオンのような音楽性と、フロウや韻における際立った独創性、ブルー ジーかつフリーキーな唄心をあわせ持つ異才MC/ヴォーカリスト。圧倒的なスキルと表現力によるフリースタイル・パフォーマンスが、16万回を超えるYou tube clipなどを通じて話題を呼び、熱烈なコアファンを増殖させているみたいです。あれもshimasuこれもshimasu。

DAISUKE TANABE
様々な音を独自の視点で解釈/分解/再構築し作り上げられるその世界観は国内外の音楽ファンやクリエーター達に熱く支持されている。リミック ス/コラボレーション、 自身の音源リリースやSonar Sound Tokyo, Sonar Barcelona,Tauron Nowa Muzyka (Poland)等国内外でのライブ活動の他、ファッションショウやパフォーマンスアートへの楽曲提供等、積極的に活動の場を広げ、今後も更なる活躍が期待される。

MABANUA (laptop set)
ドラマー/ビートメーカー/シンガーという他に類を見ないスタイルが話題の日本人クリエイター。すべての楽器を自ら演奏し、それらの音をドラ マーならではのフィジカルなビートセンスでサンプリングし再構築、Hip-Hopのフィルターを通しながらもジャンルに捉われない音創りが世 界中から絶賛される。バンドOvallとしても活動、Budamunkと共にGREEN BUTTER、U-zhaanと共にU-zhaan×mabanua、さらにGAGLE×Ovall名義でアルバムを制作するなど積極的なコラボワークも 展開。

DJ DUCT
一台のターンテーブルとフットペダル、サンプラー、エフェクターに攻撃的なスクラッチを駆使し展開する、そのまったくユニークなライヴ・スタイルでトーキョー・アンダーグラウンドを席巻する孤高の無頼派。閃きと経験によって矢継ぎ早に再構築される音像群、そして、それらを自在に操る圧倒的な構成力で魅せる 「ワン・ターンテーブリスト」こと、DJ DUCTの世界をご堪能あれ。

SAUCE 81
Red Bull Music Academy 2008に招待され、Metamorphose や Sonar Sound Tokyoなどの国内フェスにも出演。世界中にリスナーを持つポッドキャスト、cosmopolyphonic radio を主催し、同番組から派生したコンピ"COSMOPOLYPHONIC" を監修。日・米・英・独のコンピに楽曲提供し、TOKiMONSTA、Julien Dyne、LOGIC SYSTEM などのリミックスも行ってきた。ファンクネスに基づく、グルーヴのモダニズムに挑戦し続けている。

みみみ
とっても横好き下手えもんは、うんこ3個分の推進力では、あんな夢もこんな夢も、とってもかなえられないものだ。

NOTUV
1989生まれ。2004年からサンプリングを主体とした製作を開始し、Low EndTheoryなどLAを中心としたミュージック・シーンに影響を受けて経年変化。現在はジャンルに拘らず時代や文化毎の空気感を咀嚼し、自分に合った表現方法 で昇華している。昨年3月には日本のオンライン・レーベル「分解系records」よりアルバム「oO0o8o」をフリーで配布。

SUBMERSE
イギリス、チェシャー出身のSubmerseは超個人的な影響を独自のセンスで消化し2step、ビートミュージック、アンビエント、ヒップホップそしてドラムンベースを縦横無尽に横断するユニークなスタイルを持つDJ/プロデューサーとして知られている。過去にはR&Sの姉妹レーベル、 Apollo RecordsやMed Schoolから作品がリリースされており7月にはProject Mooncircleから"Tears EP"をリリースしたばかりである。

+THE GASLAMP KILLERとJONWAYNEも参加!

 「LIQUIDROOM 8th ANNIVERSARY 蓮沼執太フィル/ジム・オルークとレッドゼツリン」のことはご存知だろうか?

 その名のとおりLIQUIDROOMの8周年記念イヴェントの一環で、すでに公演は9月10日(月)に迫っている。しかし見逃すにはあまりにもったいない企画であるため、ご存じなかった方はぜひともチェックされることをおすすめする! また来場者特典として音源の配布が決定した模様。LIQUIDROOM2Fにリニューアルオープンした「KATA」というギャラリーでは蓮沼執太参加の展覧会も行われる。幸いチケットもまだ残っているようだ。

●ジム・オルークとレッドゼツリン

 「石橋英子ともう死んだ人たち」として石橋英子『イミテーション・オブ・ライフ』制作に集い、ジム・オルークのプロデュース下に「プログレ・エピック」を志向したという5人(ジム・オルーク、山本達久、須藤俊明、波多野敦子、石橋英子)が、「レッドゼツリン」として活動中! 今回は新曲も披露されるとのことで、要注目だ。とはいえ毎度メンバーすら何を演奏するのかわからないのだというから、緊張感とゆるさの入り混じるジムならではのステージングを終演まで未知のものとして楽しみたい。

●蓮沼執太フィル

 蓮沼執太、石塚周太、イトケン、大谷能生、葛西敏彦、小林うてな、木下美紗都、権藤知彦、斉藤亮輔、Jimanica、千葉広樹、手島絵里子、K-TA、三浦千明というそれぞれに活動歴やファンを有するアーティストたちが集ったこの楽団は、音楽と呼ぶにとどまらず、ひろくアートの文脈でとらえられるべき活動を行い、国内外から注目を集める存在だ。ジャンルや年齢を問わないやさしい音を、高い演奏技術で支える点にもインパクトがある。今回のトピックは環ROYを加えた点だろう。新しい演奏が展開されることに期待が集まる。

そして本誌(紙ele-king)編集長、松村正人より応援コメントをお届け!

 レッドゼツリンはもちろん、レッド・ツェッペリンの英語読みを文字ったものだが、日本人はゼッペリンとはあまりいわないから、一瞬わからない。それが絶倫のゼツリンたるゆえんだろうか。そしてまた「レッド」が「Led」ではなく「Red」だとすると、すなわちこれは「赤い絶倫」、往年の大映ドラマを彷彿させもする。
 ちなみに、私の古い知り合いにゼンリンの社員がいて、彼はピーター・ハミルの来日公演をすべて観てまわるプログレ野郎だった。ハミルはプログレではないかもしれないが。だからどうしたといわれると困るが。

 蓮沼執太は小から大まで複数の編成を使い分け、そのいずれにもカラフルなおおらかなやわらかな色彩と意匠を施すひとだ。私はしばらく前、娘の見る「おかあさんといっしょ」の「ショキ ショキ チョン」で目をさましていたことがあった。最初は渋谷毅さんの曲かと思ったが、蓮沼さんだった。実験でありながらポップ。というかポップが兼ねる実験性をたゆまず実践するひとなのだから、豪華メンバーで挑む今回のライヴでは全体から細部まで見逃すわけにはいかない。

 いや、この二組をじっくり堪能するまたとない機会なのだから、すべて見逃すわけにはいかない。
(松村正人)

LIQUIDROOM 8th ANNIVERSARY
蓮沼執太フィル/ジム・オルークとレッドゼツリン

2012.09.10 @恵比寿 LIQUIDROOM

OPEN / START
18:30 / 19:30
ADV / DOOR
¥3,000(税込・ドリンクチャージ別) / -
TICKET
チケットぴあ [177-007] ローソンチケット [76120] e+ LIQUIDROOM DISK UNION(新宿本館/渋谷中古センター/下北沢店/吉祥寺店/お茶の水駅前店/立川店/中野店/池袋店/町田店/横浜関内店/横浜西口店),8/1 ON SALE

INFO : LIQUIDROOM 03(5464)0800


蓮沼執太参加のエキシヴィジョン

展覧会名:「 I I I 」(さん)
@KATA(LIQUIDROOM 2F)
2012.09.07(金)~28(金)
12:00-22:00
*土曜日/日曜日/祝日:13:00-22:00
最終日9月28日(金曜日)18:00までとなります。

参加アーティスト: 大原大次郎(グラフィックデザイナー)/Noritake(イラストレーター)/蓮沼執太(音楽家)
入場料金:無料
主催・制作・運営:KATA
協賛:株式会社グラフィック

DJ Yogurt (Upsets) - ele-king

今回は日本人による曲のみで10曲選んでみました。
2012年前半によく聴いたり、DJプレイしたり、心に残る歌詞と感じたりした曲揃いです。
https://twitter.com/YOGURTFROMUPSET
https://www.djyogurt.com/
https://www.myspace.com/djyogurtfromupsets
https://ja.wikipedia.org/wiki/Dj_yogurt
https://www.facebook.com/djyogurtofficial

9/22 SUNSET LOUNGE@江の島展望台下サンセットテラス
9/26 WWW x Doobie presents “レイトショー vol.1@渋谷WWW
9/26 DJ YOGURT@SHIBUYA Lounge neo
9/28 DJ YOGURT IN RETROMETRO@CAVE246
10/5 DJ YOGURT VS DJ KURI @青山・蜂
10/6 DJ光Presents Lifestyle@Time out cafe

最近好きな日本人の曲


1
踊ってばかりの国 - !!! - Minimuff Records

2
奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 - スイートソウルミュージック - P-Vine

3
七尾旅人 - 圏内の歌 - Felicity

4
曽我部BAND - サーカス - Rose Records

5
L.E.D. - One (Yogurt&Koyas Remix) - Penguinmarket

6
The Backwoods - Frying Bugz (Kaoru Inoue Remix) - Ene

7
Punpee - Movie On The Sunday - 板橋録音クラブ

8
ミステルズ - ライトで照らせ - Combine

9
Cos/Mes - He Is Rain Man (Seahawks Smooth and Spacey Disco Mix) - Funiki Ene

10
Yogurt&Koyas - Eternal Dawn pt2(Dorian Remix) - Upset rec/Horizon

新ジャンル用語解説 - ele-king

問題:以下のアーティストをジャンル別に分けよ。ジュリア・ホルター、アイコニカ、アクトレス、ハイプ・ウィリアムス、ダニエル・ロパティン、ジェームス、フェラーロ、ジャム・シティ、ワイルド・ナッシング。
答え:無理。理由としては、ジュリア・ホルターをひとり見ても、シンセ・ポップ、アンビエント、ノイズ、いろいろある。ダブステップ系に括られるアイコニカにしても、フットワーク、エレクトロ......。ハイプ・ウィリアムスやダニエル・ロパティンにいたっては、スクリュー、ニューエイジ、ダブ、シンセ・ポップ、ジャム・シティはUKガラージ、サイケデリック、ドローン、ワイルド・ナッシングはシューゲイズ、ドリーム・ポップ......(以下、略)。

 1980年代後半から1990年代にかけてのジャンル用語を振り返ってみる。シカゴ・ハウス、デトロイト・テクノ、ガラージ、アシッド・ハウス......このあたりからジャンル用語は噴出する。アンビエント・ハウス、ガバ・ハウス、ハード・ハウス(NYのコマーシャル・ハウス)、ヒップ・ハウス(ラップ入りのハウス)、そして舞台をUKに移すと、バレアリック・ハウス、アシッド・ジャズ、プログレッシヴ・ハウス(トランスとほぼ同義)、テクノ、ハード・テクノ、ジャーマン・トランス、ゴア・トランス、インテリジェント・テクノ(大いなる失敗作)、ハード・ミニマル、ミニマル・ダブ、トライバル・ハウス、ディープ・ハウス、そして1994年当時もっとも問題視されたトリップ・ホップ(多くのアーティストがこう呼ばれることを嫌悪した)、そして、さらに多くの批判を促した用語としてIDM(レイヴで踊っている奴はバカという視点に基づく)がある。
 さらにまた、ハンドバッグ・ハウス(その名の通り、ちゃらいハウス)、ジャングル、ドラムンベース、ダークステップ、2ステップ、ビッグビート、ドリルンベース(駄洒落のきいたネーミングだった)、ブレイクコア、ポスト・ロック、グリッチ、アブストラクト・ヒップホップ、ブロークンビーツ......、当時はこうした用語解説を依頼されたものだった。
 ゼロ年代のダブステップ以降もまた、こうしたジャンル用語シーンが活性化している。ことインターネット・ユーザーにとっては、これらは知識というよりもある種のシニカルな情報との戯れでもある。

 たとえば、「hypnagogic(ヒプナゴジック)」、これは2009年の『Wire』誌が言い出しっぺのタームで、ポカホーンティッド、エメラルズ、マーク・マッガイア、ダックテイル、ジェームス・フェラーロなどがその例として挙げられている。おわかりのように、ほぼ同じときを同じくして出てきたある世代の共通的な感覚を『Wire』なりに言い表したタームだ(要するに、正確に言えば、感覚を指す用語で、ジャンル名ではない)。

 ちなみに『Wire』は、「ポスト・ロック」というタームを1990年代後半に生んでいる。これが日本では長いあいだ誤用されている。
 そもそも「ポスト・ロック」とは、トータス周辺に象徴される音で、つまり主義主張を訴えていたロック文化とはまったく別の(まさにポストな)方向性を持つ音楽を意味する。さらに言えばジャズやクラウトロック、さもなければ現代音楽にその源泉を求めている。ゆえにモグワイやシガー・ロス、65デイズ・オブ・スタティックスのような、歌手がいないインストというだけで、基本やってる音はロックな連中にまで「ポスト」を冠するのは間違っている。
 フリー・フォークも同じように、かなり曖昧に日本の音楽ライター界では使われている。これも『Wire』が出自で、この場合の「フリー」とは、フリー・ジャズの「フリー(即興)」に近いニュアンスだった。ゆえにサン・バーンド・ハンド・オブ・ザ・マンのような即興性の高い音楽はフリー・フォークと呼べるが、デヴェンドラ・ヴァンハートは昔ながらのフォークであり、フリー・フォークではない。
 こうした誤用はときには「ま、どうでもいいか」で済ませるが、ときには済ませられないこともある。音楽としての「フリー」を目指しているバンドにとってフォーク(アコースティックな響き程度の理由から)と呼ばれることは、ひとつの解釈という話しではなく、誤謬そのものだ。旧来のフォーク・スタイルに「フリー」が冠せられるのもあんまりである。

 music is music........あったり前だが、音楽を楽しんでいるときにジャンル用語を気にしているリスナーがいると思ってはいない。それでも僕がこうしたジャンル用語をわりと面白がるのは、それら情報のカオスから生まれたタームが、音楽を語る言語の停滞を阻止する役目を果たし、新しい問題提起へと連続させるからだろう。単純な話、これは人の好奇心を煽る。昔はよく、商売熱心なレコード会社やレコー店もジャンル用語をでっちあげたものだったが......(デス・テクノとか、サイバー・トランスとか、あるいはレイヴという言葉さえもジュリアナ東京に差し替えたりもしたが、ことの善し悪しはともかく、それによって売り上げが伸びたのは事実)。

 たしかに新ジャンル用語はときにリスナーを困惑させる。IDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)というジャンル名が出てきたとき、「何がインテリジェントだ」と、最初は抵抗があった。が、もうどうでもいいやと思って使っている。IDMという用語の普及とともに、その音楽性も急速に拡大したという事実を前に、「それで通じるなら、ま、いいか」と、「便宜上」使うことにした。IDMをやっていれば知的だとは決して思っていない。 
 最近では、「chillwave」もやっかいなタームだった。「chillwave」はブロガー発の新ジャンル用語として定着した最初の例となったわけだが、その契機となったウォッシュト・アウトやトロ・イ・モアの初期音源(つまり、ネタありきの音楽)からはずいぶん離れたところでも使われている。
 「chillwave」とは、いわば素人の作ったタームだ。それはデジタル文化における情報発信の自由がもたらした最初の結実だ。音楽を楽しんでいる素人の作ったブログから生まれた造語と、レーベルから送られてくる情報のコピー&ペーストで構成される音楽情報サイトと、どちらが文化的に有益だろうか。いずれにせよ、それがどんなに陳腐に見えようが、今日の新ジャンル用語の氾濫は、アンダーグラウンド・シーンの活況を反映しているのである。

 以下、興味がある人のみ参考にしてください。そして、間違い/追加項目があったら教えてください。

screw:わかりやすく言えば、ウルトラマンに出てくるゼットン星人の声だが......音楽の世界では、いまは亡きヒューストンのDJスクリューの編み出した技から来ている。ゆえにジャンル用語ではなく、グリッチと同じように、テクニック用語である。ピッチを落としてミキシングするだけだが、独特の幻覚性が得られることから、ゼロ年代半ば以降から現在にかけて、いろんなシーンで流行っている。オリジナル・チルウェイヴとクラウド・ラップがスクリュー・リヴァイヴァルをうながしている。



footwork(juke):シカゴの速くてくどい、ハードなダンス。チョップとドラムマシン。強いコミュニティ意識から生まれたジャンル用語。DJネイト、DJロック、DJダイヤモンド、DJラシャド等々。彼らの汗は、欧州や日本へも飛び火している。また、こうした固有の地域から生まれたジャンルには、他にもメンフィスの「crunk」、南アフリカの「shangaan electro」、ディプロが見つけた「new orleans bounce」などがある。



UK funky:グライムのハウス化。ソカのセンスが混じっている。ロンドン在住の友人によれば、ほぼ20歳以下限定のノリだとか。

brostep(filthstep):レイヴ仕様のダブステップ。もともとはダブステップもブローステップも同じ場所にいたはずで、こうした識別こそジャンル用語のネガティヴな作用だと言える。ハンドバッグ・ハウスよりはマシだが......。

dream pop:ドリーミーな宅録音楽。チルウェイヴ、クラウドラップ、ヴェイパーウェイヴと違って、盗用すなわちサンプリング主体ではない。ビーチハウス、ピュリティ・リングス、ナイト・ジュウェル、ツイン・シスターほか多数。

cloud rap:ドリーミーかつヒプナゴジックなラップとトラックで、クラウド・ストレージのような共有ファイルからがんがんに音源をダウンロードして作っている、サウンド的にもクラウド(雲のよう)なラップ。リル・B(本人は自分の音楽を「based」と呼んでいる)、メイン・アトラキオンズ、クラムス・カジノ、エイサップ・ロッキー、オッド・フューチャーなどなど。また、「trill wave」という言い方もあって、クラウド・ラップのラップがあるかないかという説明がされている。ストーナー・ラップとも親和性が高いが、別に大麻を主題としているわけではない。



dark wave:コールド・ケイヴのような、ゴシック調のシンセ・ポップ・リヴァイヴァル。ちなみにコクトー・ツインズ系のような気体のような音、マジー・スターのようなウィスパー系を、欧米では、エーテル系(ether、英語読みではイーサ)と呼んでいる。

witch house:冗談めいた、ちょっと痛いジャンル名のひとつ。簡単に言えばゴシックなハウス。ブリアルの影響下で生まれ、スクリューを取り入れている。oOoOOが有名で、ほかにもセーラムとか、†‡†とか、恐怖モノですな。



vaporwave:クラウド・ラップのように、ネットからダウンロードした音源の再利用によって作られているモダン・サンプリング・ミュージックの第三の波。グローバル資本主義への批評性、もしくは抵抗とも解釈されている。ひとつの文化現象としても興味深い。情報デスクVIRTUAL 、インターネット・クラブ、マッキントッシュ・プラス等々。



Burial follower:これは筆者が勝手に言っている。ジャンル名ではなく、ひとつの傾向。悲しく、ダークで、ヴォーカルを加工するところに特徴を持っている。ホーリー・アザー、バラム・アカブ、マウント・キンビー、ダークスターなどなど。クラムス・カジノも、共通の感覚を有している。

drone folk:ギターでドローンしながら歌うことだが、なんとなく雰囲気を指し示す、曖昧なターム。そもそもフォークとは、ポップスと比較して言葉表現が自由なことから、詩的な言語を使えるジャンルとして発展している。ドローン・フォークは、必ずしも一音で構成されているわけではないし、言葉の詩学ももたない。ときにポポル・ヴーといったドイツのコズミックの系譜とも関連づけられる。グルーパー、モーション・シックネス・オブ・タイム・トラヴェルなどなど。



haunted R&B:ハウ・トゥ・ドレス・ウェルをはじめ......ジャンル名というよりは今日顕在化している感覚。ウィッチ・ハウスと同じようなものか。サッド・コアとかね。



dark minimalism:シャックルトンの絶大な影響力によって拡大している。雨後の竹の子のようにこれからも出てきそうな気配。

dark industrial:デムダイク・ステアやレイミ、ブラッケスト・エヴァー・ブラックのようなインダストリアル・リヴァイヴァル。





 一時期は「post dubstep」とはなんだったのかとよく訊かれたが、僕なりに説明すれば、ブリアル以降のハウスのBPMに合わせたベース・ミュージックで、ピアソン・サウンドやジョイ・オービソンなどその一部はテクノやハウスに回帰しているから、その過程だったともいまなら言えるか。
 また、〈ワープ〉の若手としてはダントツに才能がありそうなハドソン・モホークは、少し前は「wonky」などと呼ばれていたが、いまでは死語となりつつある。

2年半ぶりのオリジナル・アルバム『イン・フォーカス?』のリリースに先立ち、先行シングル『デコレイト』が発表された。躍動的なリズムに高い音楽性を優しくほぐしこんだ“デコレイト”は、“ラム・ヒー”にも比較されるキャリア屈指のポップ・ソングだが、ほかの2曲も見逃せない内容になっている。

 2曲めに収録されているバグルスの名曲“ヴィデオ・キルド・ザ・レディオ・スター(ラジオ・スターの悲劇)”カヴァーは、トレヴァー・ホーンのファンであるという彼がすでに幾度もライヴで披露し、UKのラジオでも演奏されたお馴染みのトラックである。CD収録についてファンからの要望がとくに高かったということだが、アルバムには未収録となる。

 “ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ(恋に落ちた時)”は、映画『零号作戦』などに使用され、ナット・キング・コールによる録音で知られるヴィクター・ヤングのスタンダード・ナンバー。この曲のカヴァーである3曲めも、トクマルシューゴ自身の音楽的嗜好が随所にひらめく愛聴ナンバーである。

 ソノシートも同時にリリースされ、こちらは2曲のみ(“デコレイト”“ヴィデオ・キルド・ザ・レディオ・スター”)の収録となるが、いまではプレスできる工場が希少となったポストカード一体型のめずらしい形式。ダウンロード・クーポンがついているため、音とはべつに「かたち」として愛でたい。撮影当日は高熱をおして水に入ったというドラマもこめられたジャケット写真を、より大きく手にすることができる。

 さらに特設サイトでは“デコレイト”のミュージック・ヴィデオが公開されている。これもターンテーブルのイメージにゾートロープ(回転のぞき絵)の手法が重ねられ、どこか懐かしい感触に仕上げられている。手がけたのはアジア・デジタル・アート大賞2011への入賞も果たしたという注目の制作チーム、ONIONSKIN。楽曲、リリース・フォーマット、ヴィジュアルがリニアに「アナログ」の存在論を浮かび上がらせていて、これもトクマルシューゴのメッセージであるかのように思われ、興味深い。

[CD]
トクマルシューゴ 「デコレイト」
SHUGO TOKUMARU 「Decorate」
発売日:2012.9.5 Amazon <TRACK LIST>
1. Decorate
2. Video Killed The Radio Star
3. When I Fall In Love

[ソノシート]
トクマルシューゴ 「デコレイト」 / SHUGO TOKUMARU 「Decorate」
発売日:2012.9.5 Amazon <TRACK LIST>
1. Decorate
2. Video Killed The Radio Star
※収録分数の関係で、CD盤より1曲少ない計2曲の収録となります。
ソノシート特性上、CDや通常のレコードに比較してノイズ・音飛び等が多く聞かれる場合がありますので、予めご了承下さい。
※収録曲のフリー・ダウンロード・コード付き
※再生にはレコード・プレイヤーが必要となります。


【関連商品情報】
new album “In Focus?”
2012.11.7 ON SALE Amazon 商品詳細:https://p-vine.jp/news/3607

<限定盤>
PCD-18688/9 ¥2,900 (tax incl.)
★スペシャル・スリーブケース仕様
★トクマルシューゴ自身の演奏による、著作権フリーの99種/99トラックの楽器フレーズを収録したボーナスCD付き2CD仕様

<通常盤>
PCD-18690 ¥2,500(tax incl.)
★ジュエル・ケース1CD仕様

01. Circle
02. Katachi
03. Gamma
04. Decorate
05. Call
06. Mubyo
07. Poker
08. Ord Gate
09. Pah-Paka
10. Shirase
11. Tightrope
12. Helictite (LeSeMoDe)
13. Micro Guitar Music
14. Down Down
15. Balloon

The XX - ele-king

憂鬱という悦楽 文:木津 毅

E王 The XX - Coexist
Young Turks/ホステス

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 デビュー作『XX』の最良の部分、それは"VCR(ヴィデオ・カセット・レコーダー)"のヴィデオに凝縮して封じ込められている。廃墟のような隠れ家で戯れる若い恋人たち、モノクロから不意にカラーへと色づく淡い映像。「VCRでヴィデオを見ながら ふたりで大きな愛を語る/たぶん わたしたちはスーパースターで/最高の存在だってあなたは言う」。そこには優れた少女漫画のようなリリカルさと瑞々しさがあり、僕はふと大島弓子の短編を思い出す......そうたとえば、少年少女が最小の革命へと真っ直ぐに向かっていく『ローズティーセレモニー』を。ザ・XXは、その音とそこにこめられたフィーリングがどれほどメランコリックであろうとも??いやだからこそ、拭いきれない若さとロマンティシズムを抱えていて、その純度の高さにわたしたちは溜息をつく。彼らが優れていたのは、何度となく繰り返し表現されてきた10代の憂鬱をダブステップ以降のポップスとして鳴らした直感的な鋭さであると思う。音数の少なさによって生じる隙間は、聴き手を思春期の揺らぐ感情に放り込むスペースである。そうしてザ・XXは、ポップスの......ラヴ・ソングの、もっともプライヴェートな愉しみ方を刺激する。

 『共存』と題されたセカンド・アルバムでは、さらに音数を減らした"エンジェルス"を見事な導入としながら、基本的には前作の方法論を進めている。ミニマルなビートと、その隙間ですれ違う非常にインティメットなツイン・ヴォーカル。はじめに聴いたときは全体的なトーンが一定すぎるようにも思えたが、よく聞けばジェイミーが打つビートが細かく曲によって分けられており、そのディテールに耳を澄ましたいアルバムだということが繰り返し聴いていると理解できる。たとえば中盤の"トライ"から"サンセット"へと続くフォー・テットの近作のようなダンス・トラックは基本的にキックが4/4を刻みながらも、時折訪れるブレイクで入ってくる裏拍のヴァリエーションが多彩だ。そういったところによく表れているが、ザ・XXの音は非常に耳と身体の快楽を意識して作られている。クラブ・ミュージックの要素が強くなったためにその印象が強くなったこともあるが、基本的な構造としては変わらない。それはつまり、ここでオリヴァーとロミーが囁く陰影の深い愛の詩、その歌が快楽的なものであるということをジェイミーが誰よりも理解しているということで、3人のその緊密な関係性のあり方がバンドの不可侵な佇まいを生み出している。

「隠れよう/共に隠れよう/世界が静かに立ち去るのを許可して/ふたりぼっちになろう"スウェプト・アウェイ"」、「隠れる必要などない/ここにはあなたしかいないのだから"リユニオン"」??まったく逆のことを言っているようでありながら、その実同じことが繰り返し歌われている......社会の喧騒、もしくは「世界」と呼ばれるものに背を向けて、人目のつかない場所で愛を交わすこと。誰も知らない愛を。"VCR"のヴィデオの若いふたりがフラッシュバックする。しかしながら、本作ではアルバム・タイトルにしてもそうだが、"トライ(挑む)"、"リユニオン(再結合)"、"アワ・ソング(わたしたちの歌)"という曲タイトルに、恋愛を歌いながらもどこかそこに留まらない強い結束を感じさせるものがある。そこでは、デビュー作以上に自分たちの音楽とリスナーとの関係性のあり方が非常に意識されているように思える。さらに密室的な聴き方を強く要請する音であり、そこでこそ歌の感情がさらけ出される。「鼓動が変わってしまった/こんなこととてつもなく久しぶりで"ミッシング"」、「展開しよう/秘密のままにはしておかない/どこまでもどこまでも続く感情"アンフォルド"」......ビートが鳴り止んだときに不意に歌い上げられるそれらの言葉が、今度は聴く側の最も内側に侵食しようとする。

 若さは去る。そしてイノセンスは必ず失われる----ことを描いていたのは、萩尾望都の『トーマの心臓』だったかクリント・イーストウッドの『ミスティック・リバー』だったか......。『コエグジスト』でもまた、宿命として愛が去っていくことが主題となっている。だが、彼らはそのロマンティシズムを手放そうとしない。その潔癖さ、清冽さは明るい光の下ではなくて、薄暗い部屋の片隅でひっそりと、しかし隠さずに手渡される。ザ・XXを聴くことの快楽とは、自分のなかにもまだ存在していた純粋な何かを再発見する悦びにとてもよく似ている。そして"わたしたちの歌"では、こんな風に歌われる。「わたしのすべて あなたにあげよう/暗黒の日々に 誰も手を差し伸べなくても/わたしをあげよう/そうすれば わたしたちになれる」

文:木津 毅

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素晴らしき第二章 文:竹内正太郎

E王 The XX - Coexist
Young Turks/ホステス

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 ポップ・ミュージックのアーカイヴにおいて、スペース・ロックの起源がどこであるかを知らずとも、最新の形がそれであることはわかる。あるいは......これがベストなのかもしれない。『The XX』(2009)は、端的に言ってそういう飛躍を許し得る作品だった。それは特段、ドリーミーでも、トリッピーでも、サイケデリックでもなかった。楽器を演奏しない筆者でも容易に判断できるくらい、別に高度な技術性があったわけでもない(少なくとも、そうは聴こえなかったという意味でもいい)。密やかなマシン・ビートに、つま弾く程度のエレクトリック・ギター、そこに薄く重なるムーディなアンビエンス。もし、そこに「何があったのか」という位相での議論になれば、むしろ「何もなかった」と答えるのが相応しかったとも言える。果てしなく広がる無音の空間に、真夜中の空中遊泳へと出かけるための、一睡の浮遊感。ただそれだけがあった。それが2009年の新たなルールだった。

 普段、それほどインディ・ロックを聴かない人からすれば、「インディなんて遠くから見れば全部一緒じゃん!」くらいのことを言いたくなるかもしれないが、無批評的な言い方をすれば、The XXに関しては格が違ったとしか言いようがない。それはインディ・ロックのフェティシズム(相互浸食する類似の音楽を比較し、小数点第一位までレイティングするような細部へのこだわり)などでは絶対になかった。コクトー・ツインズでさえ華美なセルアウト・ポップに思えた、あるいはヤング・マーブル・ジャイアンツでさえ古臭いロックに思えた、あの静謐なポップ・ミュージックは、そのアンチ・ポップ的態度とビート感覚において、ダブステップ以降のUKインディを定義したと言える(目立ったフォロワーは現れなかったと記憶しているが、そのことが逆説的に彼らの大きさを浮き彫りにした)。ロミーの恍惚とした吐息のようなヴォーカル・スタイル(そしてオリヴァーのアンチ・エモーショナルなそれ)を媒介に、あるいは、アンビエント・R&Bと同期するようなジェイミーのサウンド・プロダクションを足掛かりに、ドレイクらネオ・アンビエント・ポップの感性とも共振し、実際にその音は交わった。そしてThe XXの艶やかな無音性はいま、さらなる洗練を見せている。

昨日の夜 世界はふたりの真下にあった
"Fiction"

隠れよう
あなたと共に隠れよう
世界が過ぎ去るのをただ見送って
あなたとふたりぼっちになろう
"Swept Away"

 待望のセカンド・フルレンス、『コエグジスト』。前作から白黒が反転しただけのアートワークに、うっすらと油膜のようなものが光の干渉を描いている。これが、本作の概要をほぼ完全に代弁する視覚イメージである。確かに変わっているが、何も変わっていないようでもある、そんな作品だ。その点からすれば、『The XX』を初めて聴いたときほどのショックはないかもしれない。

 だが、振り返って前作を聴き直したときに、"VCR"や"Island"といった代えがたいインディ・ポップの輝きでさえも、ポップスのセオリーに従った形式的な音楽だったと言えてしまうほどの距離を、『コエグジスト』とのあいだに確認することはできるだろう。驚くべきことに、メロディの煌びやかさはさらに取り払われ、メンバーの脱退という意味以上に、音の装飾的な余剰部はほとんど撤去されている。起伏という点では、前作を上回って抑制されている。広い空間によぎるビターな後味だけが、甘い余韻を醸し、メロディは断片としてのみ、ある。そして、それゆえに、ファースト・リスニングでは1曲たりとも、具体的には記憶できないだろう。彼らはアンチ・ポップの方向性を明確に打ち出している(一瞬だけ、本作にチャーミングな時間が訪れる、"Reunion"に聴こえるスティール・パンの音色は、ジェイミーのシングル"Far Nearer"(2011)からの残響だろうか)。

 しかし、その早熟な音作りとは相反して、詩作という点ではやや紋切型のナイーヴな感性を見せるのがThe XXというバンドでもある(『The XX』のトラック・リストを改めて眺めてみて欲しい)。それは本作においても継続しており、「世界」という巨大な概念を、個人が対峙できるサイズ(ゼロ年代に「セカイ」と呼ばれたもの)にまで圧縮し、対象化しながら、そこに含まれつつも世界を拒絶し、また世界の方からも拒絶さるという、デフォルメして言うのならばそのような世界観を通底させている。そして気の毒なことに、The XXが描く「あなたとわたし」が生きる世界では、常に「あなた」の不在が先行する。「あなた」の存在で無限の承認を得ようというほどの図太さは、彼らにはなく、その圧縮された空間内において、「わたし(僕)」の個人的充足は永遠に先延ばしされている。そして彼らは、その不満足性にこそ、ラブ・ソングの美しさを見出しているようだ。

 ヤング・マーブル・ジャイアンツを必要としない世代のための、アンチ・ポップ・ポップ。一方の世界では、これをこの年のベストな作品だとするのだろうし、また一方の世界では、これをインディ・ロックのフェティシズムと呼ぶのだろう。それを議論するときに聴くべきベスト・トラックは......誰がなんと言おうが、ラストの"Our Song"だ。感傷的なミニマル・バラードをキックとベースが細かくアタックする、この慎ましいクライマックスにおいて、「あなたとわたし」、そして複数形の主語を用いていったい何が歌われ、何が願われているのか。それはあなた自身の手と目と耳で確認してみて欲しい。単に私がセンチメンタル過剰なのだろうか、ベタなことを言えば、『海辺のカフカ』(村上春樹、2002)のクライマックスを彷彿するものが、そこにある。遠のいていく光を、破滅への予感を抱えながらも追いかける(追いかけずにはいられない)、アンビエント・トリップの素晴らしき第二章だ。


文:竹内正太郎

interview with The XX - ele-king

都市には秩序も空間も
そして場所もない
真実も信頼もない
インガ・コープランド“BMW”

 なぜか日本の若い世代では昔ながらのシティ・ポップスが流行っているけれど、英国で流行っているシティ(都市)の音楽は、死刑台のように、ばっさりと冷たい。その象徴が僕にはディーン・ブラント&インガ・コープランド(ハイプ・ウィリアムス)だと思える。ブリアルを見いだし、自らもコード9+ザ・スペースエイプ名義の作品によって、都市になんざぁこれっぽっちの陶酔もないことを訴えていた人物が契約しただけのことはある。僕も彼らの感覚に多いに共感しているわけだが、ダブステップを好きになった理由もそこだった。

 ザ・XXは、ここ数年のロンドンの音楽が感じ取っている冷酷な都市感覚をより甘美なメロドラマに見立て、そしてスタイリッシュにブラッシュアップしている。デビュー時に何かと比較されたエヴリシング・バット・ザ・ガールのトレイシー・ソーンが自分のほうからザ・XXの曲“ナイト・タイム”をカヴァーしたほど、その洒落たセンスは認められている。特別何か強い主張があるわけではないが、ザ・XXには格別なムードがあるのだ。メランコリーをとらえるのが抜群にうまい。
 3人それぞれの個性がこのバンドを構成しているのはたしかだろう。が、ことジェイミー・スミス(ジェーミー・XX)という音作り担当の存在は大きい。リチャード・ラッセル(XLレコーディングスの社長)がギル・スコット・ヘロンの遺作のリミキサーに大抜擢したことはある。だいたいレディオヘッドとリアーナから仕事を依頼されるという文武両道ぶりはすごい。

E王
The XX
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 そういえばマッシヴ・アタックのセカンド・アルバム『プロテクション』の1曲目はトレイシー・ソーンが歌っていたなと、『コエグジスト』をホステスで試聴する前に思い出していた。満足度で言えば、ジェイミー・スミスのトラックに関してはほぼ満足している。思ったよりもダブステップ色は薄く、代わりにハウス(ディスコ)が注がれているが、R&Bやバラードなど、前作以上に幅をもたせているばかりか、品質はいっきに向上している。そして、どう考えてもジェイミーのクラブ・ミュージック愛が前作以上に滲み出ている。

 ザ・XXは深夜の音楽であるから必然的な展開だったと言えるが、あらためてそうなった。いわばトドラ・T(いや、ここはホット・チップと言うべきなのかな、斎藤君)の裏側、音数は少なく、密室的で、薄暗いその内省的なスペースは心地よく広がっている。あとは静かにして、音に集中するだけだ。


DJをして世界を回って肌で感じたのは、結局みんな行き着くところはハウスでありテクノであり、っていうところで。イギリスもいま、そういう風になってきてる。

いきなりですが、あなたがたがいまUKでベストだと思うレーベル/DJ/プロデューサーを教えてください。

オリヴァー・シム(以下、オリヴァー):僕たちがすごく恵まれてるなと思うのは、自分たちが所属するレーベル(Young Turks)は僕たちが好きな音楽をかなりのパーセンテージで出しているレーベルなんだよね。それにアーティストとしてすごく自由をくれていて、いい関係を築けているからこれ以上のレーベルはないと心から思っているよ。それから、ジェイミーがこの1年でやってきたソロ活動をいちファンとしてすごく楽しんできた。自分は関わっていないけど本当に素晴らしいと思うし、彼のことを心から誇りに思うよ。

今回のアルバムは、より今日のUKのクラブ・カルチャーを反映していますよね?

ジェイミー・スミス(以下、ジェイミー):自分たちのレーベルはいまでもインディではあるけれど、しっかりメインストリームのものも扱いつつしっかり限定されたいいものをすごくいいバランスでやってるっていう意味ですごくいいレーベルだと思う。DJやプロデューサーに関しては、みんなすごく注目されてまたすぐ消えて、っていう。ダンス・ミュージックっていうものはそういうことを繰り返して、進化と発展を遂げてきたんだと思うんだよね。だからいますごく気に入ってるっていうのはないけれど、フォー・テットに関してはすごく安定して活動を続けているし、何か作品を出す度に進歩的な音楽を作っているなと思うよ。

ロミーは現在のクラブ・カルチャーにどのような見解を持っていますか? あなたは歌っている立場ですけれども、今回はサウンド・プロダクション的にはクラブ・カルチャーの側面が強く出ていますよね。

ロミー・マドリー・クロフト(以下、ロミー):わたしは基本的に、ジェイミーやオリヴァーが「こういうのが面白いよ」って教えてくれるものを通してクラブ・ミュージックを聴いているの。イギリスだけじゃなくいろいろなものを聴いていて、ハウスやディスコもすごく好きだし、R&Bもすごく好きだったりする。自分からUKのクラブ・シーンに特別注目するっていうことはあまりないかな。

3人にとってUKのクラブ・カルチャーは誇れる文化だっていう意識はあるんでしょうか?

ジェイミー:うん。イギリスに根づいたものがいまのイギリスで盛り上がってるっていうことはあまりないけど、いろいろ出てきたものが世界的に大きなものになっているとは思うんだ。DJをして世界を回って肌で感じたのは、結局みんな行き着くところはハウスでありテクノであり、っていうところで。イギリスもいま、そういう風になってきてる。UKのサウンドだけじゃなくて、そこから出てもう少し広い意味での音楽で評価されるようになったっていうのは、逆にいいことなんじゃないかな。

なるほど。

ジェイミー:まあ、これは僕個人の見解なのかもしれないし、あらゆる音楽を聴いて考えてきた結果――まあ、考えすぎなところはあるんだけど――、結局「何がひとを踊らせるんだ?」と考えたときに、根本的な要素を追求したら、さっき言ったようにハウスやテクノなんだなって思ったんだ。

さっきからサウンド面についてばかり質問してしまっているんだけど、バンド自身では今回のセカンド・アルバムでもっとも重要なポイントっていうのはそれぞれどこだと思っていますか?

オリヴァー:事前にこういう作品にしようって打ち合わせをしたわけでもないし、ただひたすら曲単位で、みんなでまた一緒に曲を作る喜び、それを世のなかに発信する喜びを感じながら作っていたんだ。そのなかで、こういう作品を作ろうって目標を決めたわけでもない。僕としては、自分の抱えている気持ちや感情をしっかり出してそこに込めるておいうことだったんだけど。それ以外は、前もって決めたものではないんだよね。

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どんどんすごく悲しい歌になりそうなものは、正反対の対照的なものと組み合わせることで、また新しいムードを作り上げるっていう意味でだね。そのアイデアは気に入ってるんだ。

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前回のインタヴューで、「マッシヴ・アタックのアルバムで何がいちばん好きですか」って聞いたら、「自分たちはiTunes世代だから曲単位でしか曲を聞いてなくて、アルバムって言われてもアルバム名が浮かばないんだ」っていうようなことを言ってたんですけれども。その後時間が経ちましたけど、アルバムというものへの捉え方はどのように変わったでしょうか?

ロミー:ええ、変わったと思う。今回のアルバムを作って、やっぱり曲順とか全体の流れを――とくにDJなんかを聴いた影響もあると思うけど、すごく考えるようになった。どの曲とどの曲を繋げたら合うかってことをとても意識するようになったわ。1枚のアルバムを通して聴くっていうこともすごく意識するようになったわね。たしかにそれはわたしたちは子どもの頃音楽を聴いてきた環境とは違ってて。iPodでシャッフルで音楽を聴くってことをずっとやってきたんだけど、今回アルバムを作って通して聴くってことをすごく考えるようになった。アナログでも出すんだけど、とくにアナログとなると曲を飛ばしたりできないから、曲順もすごく気を遣ったの。いまの時代に、リスナーにアルバムとして聴いてくれっていうのは大きい要求かもしれないけれど、少しでも多くのひとがそういう風に楽しんでくれたらいいと思うわ。

アルバムとして意識しはじめたときに、他のアーティストでアルバム作品としていいなと思ったものはありますか?

ロミー:ポーティスヘッドね。最初から最後まで本当に素晴らしい作品で、1曲1曲も大好きなんだけど、全体を通して聴いても素晴らしいと思うわ。

ポーティスヘッドはサウンド面だけでなく、コンセプト的にも素晴らしいアーティストだと思うんですけれども、今回のあなたたちのアルバムにもコンセプトがあると聞きました。それが「失われし愛」という言葉を聞いたんですけれども、そのテーマについて説明していただけますか?

ロミー:コンセプトを持って作ったってわけではないんだけど、結果的にすべてラヴ・ソングになったの。それもラヴ・ソングにするって決めてたわけじゃないんだけど、純粋に書いてて楽しかったのがそれだったのね。

必ずしもハッピーではないラヴ・ソングばかりを書くのはなぜですか?

ロミー:もともと悲しい曲が好きだっていうのはあるわね。自分が幸せなときも悲しい曲を聴いて、それに浸るっていうのが。結局悲しい想いのほうが、歌で表現したときに説得力があると思う。幸せなものっていうのは得てして陳腐なものになりかねないし。ただ今回のアルバムでは、ただ悲しい曲ばかりじゃなくて、なるべく感情の幅を持たせようという気持ちはあったから、2、3曲ただ悲しいだけじゃないラヴ・ソングも書いたつもりなんだけどね。

なるほど。ジェイミーが作る音にふたりが言葉を合わせているわけではないんですよね?

ジェイミー:3人の個性の融合だね。自分のサウンドを押しつけるのではなくて、ロミーとオリヴァーが書いてきたことに合うもの、その世界観を引き出すものを意識してるんだ。それらを衝突させるよりも、ふたりが作ったものを生かすっていうことを僕は意識してる。

ちなみにダンス・ミュージックってことで言うと、レイヴ・カルチャーではブローステップみたいなものが大きくなってますけど。当然あなたたちはブローステップみたいなシーンとは距離を置いてるわけですよね。

ジェイミー:ブローステップ? (力なく)ああ……。

はははは。

ジェイミー:ダブステップがアメリカに行ってブローステップになってしまったっていうのは、ある意味悲しいよね。好きじゃないんだけど。ただ、去年1年はレイヴとかパーティとかには行ってないし、今回のアルバムの要素としてもクラブ・ミュージックやダンス・ミュージックが大きい位置を占めているわけではなくて、いろんな要素がたくさんあるから。これがダンス・アルバムだと捉えられては困るかな。

とはいえ、6曲目の“サンセット”は典型的なハウス・トラックで、4つ打ちというのはファーストにはなかったわけで。全体的にファーストよりはクラブ寄りに感じましたが。

ジェイミー:それはどんどんすごく悲しい歌になりそうなものは、正反対の対照的なものと組み合わせることで、また新しいムードを作り上げるっていう意味でだね。そのアイデアは気に入ってるんだ。踊ることもできるし、クラブじゃない環境で聴きこむこともできるっていうことをこの曲では目指したんだ。

ギル・スコット・ヘロンのリミックスをはじめ、昨年ジェイミーが〈ナンバーズ〉レーベルから出したシングルも良かったし、ファルティDLのリミックスも良かったし、UKベース・ミュージックの最新型として印象的に思ったんですよね。だから、あなたが次どんなトラックを作るのかっていうところに注目していて。4つ打ちをやったっていうのが、正直自分のなかでは驚きだったので。

ジェイミー:まずはダンス・ミュージックを聴いていたっていうのと、曲に合った一番いいものを作ろうっていう思いでプロデュースした結果なんだけど。XXの曲をプロデュースしたときっていうのは、プロデュースっていうのはひとつの要素でしかなくて、それがすべてではないんだ。自分の作品と比べるとね。4つ打ちっていうのはシンプルな8ビートのなかでいろいろなことができるっていう意味で実はすごく面白いんだよ。

なるほどね。じゃあ最後の質問にしますね。2回目の来日ですけど、それぞれ楽しみにしていることを教えてください。

オリヴァー:3回目だね。フジロックで来たから。

あ、そうか。

オリヴァー:やっぱりライヴだよね。新曲のリアクションがすごく楽しみなんだ。あとは、今回はけっこうたっぷり滞在期間があるから、東京の街中を味わうのをすごく楽しみにしてるんだ。

ジェイミー:買い物だね。

ロミー:田舎のほうを見てみたいわ。歴史的なものを感じたい。その時間があるかだけど。

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