「K A R Y Y N」と一致するもの

interview with Emma-Jean Thackray - ele-king

 このたびデビュー・アルバムの『イエロー』をリリースしたエマ・ジーン・サックレイは、現在のサウス・ロンドンのジャズ・シーンにもリンクするアーティストではあるが、たとえばシャバカ・ハッチングス、ジョー・アーモン・ジョーンズ、モーゼス・ボイドなどのように、世間一般で言われるサウス・ロンドンのジャズ・シーンの文脈から登場してきたわけではない。そもそも彼女はヨークシャー出身で、ロンドンの音楽文化とは異なる環境で育ってきたし、サウス・ロンドン・ジャズ勢を多く輩出したトゥモローズ・ウォリアーズの外にいて、シャバカやモーゼスたちとはまた違う経路を辿ってロンドンへやってきた。
 サウス・ロンドンのグリニッジにはトリニティ・ラバン・コンセルヴァトワール(旧トリニティ音楽院)があり、エマはその大学院に通うためにロンドンにやってきたのだが、ペッカムあたりを拠点とするサウス・ロンドンのミュージシャンたちもこのトリニティ音楽院出身者が多く、エマはその方面で繋がっている。いずれにしても、サウス・ロンドンのカルチャーに属しつつも、その一方でアウトサイダー的な感覚も持つのがエマで、そうしたさまざまな多様性を持つミュージシャンが活動するのがまたロンドンらしいのである。

 トランペット奏者であり、ほかにもキーボードをはじめとしたさまざまな楽器を演奏するマルチ・ミュージシャン/プロデューサーでもあるエマは、これまで「レイ・ラインズ」(2018年)、「ウム・ヤン」(2020年)、「レイン・ダンス」(2020年)などのEPリリースで注目を集めてきた。また、マカヤ・マクレイヴンのミックステープの『ホエア・ウィ・カム・フロム』(2018年)やニュー・グラフィック・アンサンブルの『フォールデン・ロード』(2019年)、〈ブルーノート〉のカヴァー・プロジェクトである『ブルーノート・リ・イマジンド 2020』(2020年)への参加など、精力的に活動を行なっている。
 そんな彼女が満を持して発表した『イエロー』は、ドゥーガル・テイラー(ドラムス)、ライル・バートン(ピアノ、キーボード)、ベン・ケリー(チューバ、スーザホーン)たちとのライヴ・セッションを軸に録音を行ない、そこへエマの自宅スタジオで録音された演奏素材をミックス・編集したもの。演奏家としてのみならず歌も歌い、多重録音も含めたエマのマルチ・プロデューサーぶりが遺憾なく発揮された作品である。ジャズ、ファンク、アフロ、ゴスペル、ブロークンビーツのようなダンサブルなサウンドが融合され、宇宙や神秘世界をイメージさせるタイトルがつけられた楽曲群は、サン・ラーやファンカデリックなどのアフロ・フューチャリズム派の音楽性にも通じている。そんな『イエロー』の世界観と、そこに至るエマ・ジーン・サックレイの音楽人生について話を訊いた。

彼も独学で音楽を学んだミュージシャンだから、基本から外れた「間違った」演奏の仕方をするときもある。でも、だからこそ彼の音楽は面白い。自分の直感を信じていいんだと思わせてくれたのがギル・エヴァンス。

現在はロンドン南東部のキャットフォードに住んでいるあなたですが、もともとヨークシャーの出身ですね。この町はどんなところですか? 音楽ではブラスバンドの活動が有名と聞きますが。

EJT:文化的にはとても保守的な町で、あまりアート系の経験ができる場所じゃない。だから、アーティスト気質でちょっと変わっている私は、結構孤独を感じていた。いつも逃げ出したくて、町の外にでることを夢見ていたの。でも、あの町にいたから音楽の基盤が築けたのも事実。あなたの言うとおり、ヨークシャーではブラスバンドが有名だから、私もブラスバンドで演奏することで音楽の経験を積むことができた。あの経験があったから、ギターやドラムやほかの楽器にも興味を持つようになったんだと思う。ブラスバンド以外の音楽活動はひとりでやっていたから孤独だったけど、それが悪いことだとも限らないしね。自分自身の世界に浸ることもできたから。

小学校でコルネットを吹きはじめ、13歳の頃に地元のブラスバンドでリード・コルネット奏者となったそうですね。コルネットという楽器のどんなところに魅かれたのですか? また、ブラスバンドではどんなことを学びましたか?

EJT:キラキラしていたから(笑)。音も大きかったし、あとは単に学校にその楽器があったから。子供ってピカピカしたものや大きな音を出すものに興奮するでしょ(笑)?
ブラスバンドで学んだことはほかの人びとと一緒に上手く演奏すること。特に管楽器はひとりでも合ってないと耳障りなサウンドになってしまう。でも逆に全員が通じ合ってピッタリ合致して演奏すると、ものすごく美しくて優しいサウンドを生み出すことができる。自分自身のサウンドをほかの人たちと一緒に作り、演奏するということを学べたのはブラスバンドにいたおかげだと思う。

ブラスバンドの音源をいろいろダウンロードしている最中に、ギル・エヴァンスがアレンジしたマイルス・デイヴィスの “アランフェス協奏曲”(原作はホアキン・ロドリーゴ)を聴いて衝撃を受けたそうですね。この演奏が収録された『スケッチ・オブ・スペイン』(1960年)はスパニッシュ・モードによる歴史的作品で、マイルスとエヴァンスのコンビはほかにも数多くの名作を生み出すわけですが、彼らの音楽のどんなところに衝撃を受けたのでしょうか?

EJT:初めて聴いたときはほんとうに衝撃だった。私の人生を変えたと言ってもいい。私の音楽の世界の扉を開いてくれた。いま振り返ると、あのときこそが私の人生の方向性が大きく変わった瞬間だったと思う。それまで、ああいう音楽を聴いたことがなかったのよね。私の家族はメインストリームのポップスやロックを聴いていたし。あの音楽を聴いたときは、ものすごくイマジネーションが湧いた。そこからもっとそういった音楽を知りたいと思って、自分で探求していったの。お小遣いを持ってCDショップに行って、マイルスのアルバムを探したり、そのアルバムで演奏する別のアーティストの作品を見つけたら、それも聴いてみたり。すごく自然にジャズの世界が広がっていった。人にオススメを訊いたりはせずに、自分だけでジャズとの繋がりを深めていった。

皆と繋がってもいるんだけど、同時にまったく離れた場所に自分がいるとも感じる。私はサウス・ロンドンやその近辺で育った人とは同じ音楽システムを経験していないから。私はロンドン出身でないし、トゥモローズ・ウォリアーズにも行っていないのよ。だから自分がアウトサイダーとも感じる。

そうしたジャズの体験は自身の音楽へも深い影響を与えていったのですか?

EJT:最初は違った。最初はMIDIキーボードで制作をするようなもっとポップな音楽をやっていたから。あとはギターでニルヴァーナっぽいグランジ調の音楽を作ったり演奏したりしていた。だから、当時ジャズは全く作っていなかった。自分の中で結構区別化されていた。演奏だとトランペットでクラシックをやっていて、聴くのはジャズやプログレッシヴ・ロック、作るのはインディなポップスやギター・サウンド。ジャズっぽいものを作るようになったのはもっと後の話ね。

コルネットにはじまってほかにもいろいろな楽器をマスターし、また作曲や編曲も行なうようになるのですが、これらはどこか学校で学んだのですか? それとも独学でマスターしたのですか?

EJT:他の楽器は全て独学で学んだ。家や学校で音楽室が空いてたらそこを使ったりして。あとはとにかく音楽を聴いていたね。その音楽のドラム・ビートを聴いて覚えて、曲と一緒に叩いてみたり。ギターもそれと同じ。コード・チェンジも何にも知らなかったんだけど、まずは聴いて、その音が出せるようになるまでギターを弾いてみて、それにほかの楽器を合わせて弾いてみたりと。その過程はすごく楽しかったし、その方法だったからこそいろいろな楽器を演奏できるようになったんだと思う。一度コツを掴むと、どの楽器でもそれができるようになるから。

作曲や編曲、特にホーン・アレンジにおいてはやはりギル・エヴァンスの影響は大きいのでしょうか?

EJT:そう思う。彼も独学で音楽を学んだミュージシャンだから、基本から外れた「間違った」演奏の仕方をするときもある。でも、だからこそ彼の音楽は面白いわけよね。トランペットにトロンボーンを乗せようなんて、技術的にはやるべきじゃない。でも彼の音楽を聴いて、自分がやりたいことは何でも試してみていいんだということを学んだ。そのサウンドが素晴らしければ、そのまま残していいんだと。そういう意味で彼は、私自身の音楽を作っていいんだという自信をくれたと思う。自分の直感を信じていいんだと思わせてくれたのがギル・エヴァンス。

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今回意識的に参照しているのは、アリス・コルトレーンやPファンク、ジョージ・デュークなんかの1970年代のサウンドね。

ロンドンにはいつ頃出てきましたか? 進学か、またはプロ・ミュージシャンとして仕事をしていくなかでロンドンに住むようになったのですか?

EJT:ロンドンに来る前に、まずウェールズのカーディフに引っ越したの。18歳になった1週間後にヨークシャーを出た。その後2007年から2011年まで4年間カーディフに住んで、2011年からずっとロンドンに住んでいる。カーディフに引っ越したのはロイヤル・ウェールズ音楽演劇大学へ通うため。その後、ロンドンへはトリニティ・ラバン・コンセルヴァトワール(旧トリニティ音楽院)の大学院に通うために引っ越した。でも、16歳のときから既にセミ・プロとして音楽を演奏してはいたから、ロンドンに引っ越してからもすぐ音楽の仕事をはじめた。自分が住む場所でミュージシャンとして働くのは、私にとっては自然の流れなのよね。

最初のレコーディングはウォルラスというグループによる2016年リリースのEPですね。これはあなたのグループですが、どのようなバンドですか?

EJT:ウォルラスはそのころ私が一緒にトリニティ音楽院で学んでいた人たちや、音楽活動で知り合った音楽ファミリーのなかの人たちで作ったグループなの。音楽仲間ってお互い必要なときに演奏で参加したり、皆で声を掛け合って演奏したりするものよね。ウォルラスもメンバーも私のことをよく理解してくれる人たちで、音楽の趣味を理解し合える人たちだった。
 でも、もうウォルラスというバンドとしては活動していないの。いまは私の音楽は全て自分の名前でリリースして演奏している。バンドのショーでも、自分ひとりで作ったレコードも、オーケストラと一緒にやるショーも、内容は全て違うけれど私の頭のなかから生まれたもの。だから、区別化しないで全部私の名前にすることにした。分けたほうがマーケティングしやすいのにって言う人もいるんだけど、自分にとっては私が作ったものは全て繋がっているし、将来皆もそれらをひとつのものとして受け止めてくれたらいいなと思ってる。

そうしてソロ名義となってから、2018年にリリースした「レイ・ラインズEP」の表題曲がジャイルス・ピーターソンのコンピに収録され、あなたの名前はいろいろ知られるようになりました。ちょうどサウス・ロンドンのジャズ・シーンが注目を集めるようになった頃と重なるのですが、こうしたシーンにあなたも結びついているのですか? サウス・ロンドンのジャズにも関係しますが、ニュー・グラフィック・アンサンブルのレコーディングにも参加していたことがありますし、マカヤ・マクレイヴンのミックステープにヌバイア・ガルシアやジョー・アーモン・ジョーンズらと共にあなたの作品がフィーチャーされたこともあります。また、サウス・ロンドン勢が中心となった〈ブルーノート〉のカヴァー・プロジェクトで、あなたはウェイン・ショーターの “スピーク・ノー・イーヴル” をやっていたので、あなたとサウス・ロンドン・シーンの関係を聞ければと思った次第です。

EJT:たくさん関わっているとも言えるし、全く属してないとも言えるかな。トリニティ音楽院はサウス・ロンドンのグリニッジに校舎があって、サウス・ロンドンのペッカムあたりにいるミュージシャンたちのなかにはトリニティ音楽院に通っていた人たちも大勢いる。だから同じ時期に一緒に勉強していた人たちもいるのよ。学校で共通して学んだのはジャズだけど、皆アフロビートやダンス・ミュージックとかも好きで、そういった音楽への愛もシェアしてきた仲間たち。だから皆と繋がってもいるんだけど、同時にまったく離れた場所に自分がいるとも感じる。私はサウス・ロンドンやその近辺で育った人とは同じ音楽システムを経験していないから。私はロンドン出身でないし、ロンドンのアーティスト開発システムのトゥモローズ・ウォリアーズにも行っていないのよ。だから自分がアウトサイダーとも感じる。これはロンドンに限ったことではなく、子供の頃から何かに属していると感じたことはなかった。どのグループもしっくりこなくて、つねに輪の外にいた。前はそれに対して孤独も感じていたけど、いまではそれが良いことだと思えるようになってきた。

なるほど、そうした孤独感があったからこそ、あなたの音楽におけるアイデンティティの確立へと繋がっていったわけですね。昨年は「ウム・ヤン」と「レイン・ダンス」というEPをリリースします。「ウム・ヤン」ではラッパーでもあるサックス奏者のソウェト・キンチと共演していますが、演奏の軸となるのはドゥーガル・テイラー、ライル・バートン、ベン・ケリーですね。ベン・ケリーはウォルラスにも参加していましたし、ドゥーガルはあなたと一緒にニュー・グラフィック・アンサンブルのレコーディングにも参加していましたが、彼らは今回あなたがリリースするデビュー・アルバム『イエロー』の中心メンバーでもあります。彼らはどんなミュージシャンで、どのように交流を深めていったのですか?

EJT:ベンは私と同じヨークシャー出身なの。彼はまるで私の兄弟みたいな存在。ふたりともロンドンに越してくるまでは一緒には演奏したことはなかったんだけど、同じカルチャー・セミナー会社で音楽を教えていたから偶然顔を合わせる機会があって、「地元が同じだよね?」って意気投合して仲良くなった。
 ドゥーガルとはロンドンのトータル・リフレッシュメント・センターで出会ったの。トータル・リフレッシュメント・センターはレコーディング・スタジオやリハーサル・スタジオもあるミュージック・カルチャー・センターで、ドゥーガルはそこを拠点にヴェルズ・トリオっていうバンドで活動していたの。私はそのファンでもあったし、そのまま友達になった。私たちは好きな音楽も似ていて、もちろんジャズは好きだけど、「ジャズ・ノット・ジャズ」というか「ジャズじゃないジャズ」みたいな精神を持っていて、ダンス・ミュージックやロックも聴く。私たちの目標も同じだったから、テイストが似ているお互いの存在はとても重要だった。
 ライルについては、まずエリオット・ガルヴィンっていうトリニティ音楽院で知り合ったミュージシャンの話からはじめないといけないね。エリオットはダイナソーっていうジャズ・ロック・バンドのメンバーでもあったけど、ウォルラスや『レイン・ダンス』にも参加してくれていて、そうしていろいろと一緒に演奏していた。エリオットとのギグにライルも参加していたんだけど、エリオットが自分のプロジェクトやダイナソーの活動で忙しくてあまりセッションができなくなってきた。エリオットとはじめたプロジェクトだけど、エリオットが参加できないときにも継続して続けたいと考えて、そこでライルと一緒の演奏を増やすようになっていったの。そこからは段々とライルがセッションの中心になっていった。彼はすごく良い耳をもっていて、私が何をしようとしているかをつねに理解してくれる。私が考えていることがお見通しで、文字どおり何でもできるの。頼まれた音全てを演奏できる。彼は本当にオープンで、人としてもすごく良い人。つねにベストな音楽を作ることを心がけていて、様々な可能性を試し、良いものは何でも受け入れる。
 3人とも本当に素晴らしい。この3人に加えて、ライヴではパーカッショニストが加わる。クリスピン・ロビンソンっていうんだけど、このアルバムでも演奏してくれていて、ツアーでは彼がメインのパーカッショニストになる予定。彼ともトータル・リフレッシュメント・センターで出会ったんだけど、話しているうちにお互い近所に住んでるって気づいたの。

ベン・ケリーはチューバやスーザホーンを演奏するので、あなたの作品にはチューバ奏者のテオン・クロスが参加するサンズ・オブ・ケメットにも通じるところを感じます。テオン・クロスやシャバカ・ハッチングスたちとは交流はありますか?

EJT:知り合いではあるわよ。テオンは近所に住んでるし、シャバカとも顔を合わせることはある。ロンドンに住んでいるミュージシャンたちは、いろんな場で一緒になるから。でもいまはパンデミックだから、最近はあまりほかのミュージシャンに会ってないのよね。またギグがはじまったらもっと会うようになると思う。

ホーン・アンサンブルという点ではシーラ・モーリス・グレイやヌバイア・ガルシアらのネリヤにもあなたのサウンドとの共通項を感じさせます。ネリヤのドラマーのリジー・エクセルはウォルラスにも参加していたのですが、シーラやヌバイアたちとは何か交流はありますか?

EJT:シーラのことは直接的にはあまり知らない。同じ楽器を演奏するミュージシャンたちほど、逆に現場で一緒になる機会が少ないから。でも数回だけ会ったことがあって、すごく良い人だったのは覚えてる。ヌバイアはトリニティ音楽院で一緒だった。フェラ・クティの作品を演奏するプロジェクトで初めて出会った。彼女も私の近所に住んでるし。

トランペットや同系のコルネット、フリューゲルホーンを演奏するミュージシャンに限ると、ロンドンにはいま話したシーラ・モーリス・グレイやヤズ・アーメッドなど才能溢れる女性たちがいます。同じ楽器を演奏するプレーヤーとして彼女たちを意識するところはありますか?

EJT:ヤズと同じギグに出たことはないけど、数回会ったことはある。彼女も良い人だったし、話していてすごく面白かった。考え方が面白いのよね。でも、彼女たちを意識することはあまりない。皆演奏の仕方は違うし、それぞれが作る音楽も同じじゃない。トランペットとジャズという共通点以外は、皆それぞれ違う特徴を持っているから、同じフィールドと考えることがあまりないの。しかも正直なところ、私はいまとなっては自分自身をトランペット・プレイヤーだとさえ思っていない。今回のアルバムもヴォーカル曲が多いし、いろいろな活動をしているから「自分が何なのか?」と訊かれると答えるのは難しいけど、一言でと言われたらプロデューサーと答えると思う。

『イエロー』にはタマラ・オズボーンも参加しています。現在のロンドンのジャズ・シーンにおけるリード演奏の第一人者で、フリー・ジャズやアヴァンギャルドな表現をする一方でアフロ・バンドのカラクターも率いる彼女ですが、彼女とはどんな繋がりがあるのですか?

EJT:彼女は最高。いろんな場で一緒に演奏する機会があって、お互いを知るようになった。彼女って本当に素晴らしくて、どんな楽器のリクエストにも答えてくれる。そこに彼女の素敵な色を加えてくれるのがタマラ。今回のレコードではフルート、バリトン・サックス、バス・クラリネットなんかを演奏してくれている。私が彼女と一緒にやったギグでは、彼女はテナー・サックスやオーボエも吹いていた。本当に何でもできちゃうの。

次のレコードがテクノになる可能性も、アンビエントとかドローン・ミュージックになる可能性もあるというわけ(笑)。私はいつも、そのときに作りたいと思う音楽を作っているから。

『イエロー』には何か全体のテーマやコンセプトはありますか? “サン”、“マーキュリー”、“ヴィーナス” など宇宙や惑星をテーマにした作品があり、全体的には神秘的で抽象的なメッセージを持つ作品が並んでいます。宇宙というテーマもそうですが、“メイ・ゼア・ビー・ピース” のようなメッセージはサン・ラーの音楽観や哲学に通じるとこともありますが。

EJT:テーマは普遍的な一体感。私たちと宇宙の繋がりであったり、ちょっと1970年代のヒッピーっぽい世界観ね。「存在するもの全てはひとつ」みたいなヒッピーの考え方(笑)。それは私自身が感じていることだから、そうしたイメージが曲に出てくる。占星術とか、宇宙観とか。あとは人も動物も木も皆同じ存在物であるという考え方。私たちの間に違いはなく、私たちは大きなひとつの塊。それも私が表現したかったアイデアのひとつ。全ての存在がそれぞれの個性を持つけれど、元を辿れば私たち全ては皆同じもので作られている。だからその繋がりを皆で共有して祝福するべきだと思うし、その愛を感じるべきだということがこのアルバムのコンセプト。私は左派寄りで、前は右派寄りの意見にすぐ怒りを感じたりしていた。でもいまは怒り合い、反発し合うばかりでは何も解決しないことがわかった。お互い共通のものを見つけて、それに対する愛を共有しあうべきだと思うようになったの。

アフロやファンクを取り入れた “グリーン・ファンク” や “ラーフ&ケートゥ” はファンカデリックに通じるような部分を感じさせます。サン・ラーや彼らのようなアフロ・フューチャリズムの影響があるのかなと感じますが、いかがですか?

EJT:もちろん。特にPファンクなんかは大好きだし、ファンカデリックやアフロ・フューチャリズムの方法論も音の世界も大好きだから、絶対に影響を受けていると思う。特に “グリーン・ファンク” はそう。あのトラックは大麻について歌っているんだけど、プロモーターがその言葉を使って欲しくなかったから、タイトルを「グリーン・ファンク」にしたの(笑)。私はもう吸わないし、お酒も飲まないけど、私の人生の中で起こっていたことの一部だから曲にした。吸う人を批判もしないし、それに関しての私の考え方はオープンよ。

“アバウト・ザット” は1970年代前半のマイルス・デイヴィスのようなエレクトリック・ジャズで、ジャズ・ファンクの “マーキュリー” やメロウな “ゴールデン・グリーン” でのスペイシーなキーボードやシンセの使い方はハービー・ハンコック的でもあります。『イエロー』では彼らの音楽や演奏を参照したりしているところはありますか?

EJT:直接的にはしていない。そういうサウンドにしたいと意識していたわけではないから。でも、彼らの音楽は本当にたくさん聴いているから、私のなかに流れているんだと思う。だから自然に出てくるんでしょうね。マイルスは私にとっていちばん大きなインスピレーションの源だし、そこから完全に離れるなんてきっと無理なんだと思う。彼の影響があっての私だから。逆に今回意識的に参照しているのは、アリス・コルトレーンやPファンク、ジョージ・デュークなんかの1970年代のサウンドね。

“セイ・サムシング” はディープ・ハウス的なビートを持つ作風で、“ヴィーナス”、“サード・アイ”、“サン”、“アワ・ピープル” などはブロークンビーツとジャズの融合といった具合に、ダンサブルなリズムの作品が多いのも『イエロー』の特徴かなと思います。あなたの作品においてダンス・ビートはどのような意味を持っているのでしょうか?

EJT:そうなったのは自然の流れ。私が作りたいように音楽を作っていたらそうなったんだと思う。私自身がグルーヴィーな音楽を作るのが好きだから。たとえダンスに向いてない曲であっても、そこには必ずグルーヴがあるのが私の音楽なの。いちリスナーとしても、私はそういう音楽が好きだし。人を踊らせようと意識して曲を作ったことは一度もないけど、体が思わず動きたくなるような音楽は作りたいと思ってる。でも、それはクラブで踊れるような音楽である必要はなくて、踊らせることが目的になってしまうと、その意識からリミットができてしまうのよね。四つ打ちや決まったテンポを意識しないといけなくなるから。どんな種類にせよ、制限がかかると私は爆発しちゃう(笑)。誰かに指示されるのが好きじゃない性格だから、何かをしろと言われると敢えてその逆のことをしたくなる。例えば “ヴィーナス” や “セイ・サムシング” のテンポは、ダンスをするにはちょっと気持ちが悪いテンポだけど、それでもグルーヴィーなトラックであることには変わらない。だから曲に合わせて体は動くんだけど、クラブ向けではないのよね。

オルガンとコーラスとハンド・クラップをフィーチャーした “イエロー” はゴスペル的ですが、白人のあなたにとってブラック・アメリカンの音楽であるゴスペルはどのようなものですか?

EJT:大好きな音楽。素晴らしい音楽だと思うし、“イエロー” を聴いたら私がゴスペル音楽を聴くってことがきっとわかると思う。でも、ゴスペルっぽい曲を作ろうとして作ったわけではないの。私は人びとが同じ目的のために一緒に歌うというアイデアが好きだから、あのトラックではその要素を取り入れたというだけ。私はキリスト教信者ではないから、宗教への熱意は表現できない。それでも音楽への愛は皆とシェアできるし、大勢で共に表現できる。そういう意味で皆が一緒に歌を歌うというアイデアが大好きなの。この宇宙で私たちは皆同じでひとつだという一体感は、ゴスペルに通じるものがあると思うのよね。大勢で一緒に歌い、音楽への愛をシェアするというのは、このアルバムのテーマにとっても重要な要素だし。

なるほど、普遍的な一体感というテーマがゴスペル音楽と通底しているわけですね。では最後に、今後の活動予定やプロジェクトがあれば教えてください。

EJT:私はあまり予定を立てないタイプなのよ(笑)。できるだけ頭や体はオープンにしておいて、何かをやることにしっくりきたと感じたときにそれを実行できるようにしている。だから次のレコードがテクノになる可能性も、アンビエントとかドローン・ミュージックになる可能性もあるというわけ(笑)。私はいつも、そのときに作りたいと思う音楽を作っているから。次は何をしようとか、誰に向かって作ろうとか、あまりそういうことは考えない。つねに自分に正直でいて、自分に降りてくるものをインスピレーションに音楽を作るのが私の活動なの。

ツアーの予定はないですか?

EJT:ライヴは計画を立てるのが難しいのよね。このご時世だから、予定してもキャンセルになることもあるし。今年はいくつかフェスへの出演が決まっているから、それが無事に開催されることを祈っている。あと、ヨーロッパを周るショーもできたらいいな。来年になったらUKツアーはもちろんだし、アメリカや日本でもショーをやりたい。いまはとりあえず様子見。いきなりノーマルな世界に戻るのは無理だと思うから、ショーの数は少なくても、そのひとつひとつの内容を濃いものにしたいと思ってる。

VINYL GOES AROUND - ele-king

 〈Pヴァイン〉が、アナログ・レコードを軸にした新たなプロジェクトを展開する。中古レコードの売買をスタートするとともにエクスクルーシヴな商品も開発、将来的にはいろんなひとの集まるフォーマットの確立を目指すとのこと。
 エクスクルーシヴ商品の第一弾として、スピリチュアル・ジャズを牽引したデトロイトのレーベル〈Tribe〉をピックアップ。ウェンデル・ハリスンとフィリップ・ラネリンによる「Message From The Tribe」をモティーフとしたTシャツを販売する。これにはなんと、ウェンデル・ハリスン&ザ・トライブ「Farewell To The Welfare」のリイシュー7インチ(限定190枚、シリアル・ナンバー入り)が付属するヴァージョンもあるとのこと。 
 〈Pヴァイン〉の新たな一歩に注目だ。

Pヴァインが新たに始めるアナログ・レコードにまつわる新しい試みを中心としたプロジェクト、"VINYL GOES AROUND" のお知らせ。

超限定190枚 シリアルナンバー付き シルクスクリーン エクスクルーシズ

https://vga.p-vine.jp/exclusive

アナログ・レコードにまつわる新しい試みを中心としたプロジェクト、"VINYL GOES AROUND"。新サイトを立ち上げ、ここでしか買えないエクスクルーシヴ商品の販売を開始します。 第一弾として取り上げるのは70年代デトロイトに存在していた伝説のレーベル、Tribe Records。

中でも最重要アルバム、Wendell Harrison & Phillip Ranelin "Message From The Tribe" の柄違いのジャケットをモチーフに制作したオフィシャル・Tシャツを販売します。また、190枚限定で当時7インチのみで発売されていた Wendell Harrison And The Tribe - Farewell To The Welfare のリイシュー7インチ付き(シルクスクリーン・ジャケット、シリアルナンバー付き)も販売致します。

VINYL GOES AROUND 始動

私たちは世界中のヴァイナル・レコードの価値を高めることに貢献していきます。まずは、中古レコードの買取りと販売をスタートさせると同時にエクスクルーシヴ商品の開発をし、ここでしか買えないレアなアイテムを販売していきます。そして徐々にここに人が集まり、将来的には小さなコミュニティーが生まれ、世界中のコレクター同士が繋がる場へと発展し、レコードを手に入れやすいマーケットプレイスが形成されることを目指します。
たくさんのレコードが世界中の皆様に届くように~VINYL GOES AROUND~

株式会社Pヴァイン 代表取締役 水谷聡男
Vinyl Goes Around 事業担当 山崎真央

〒150-0031
東京都渋谷区桜丘町 21-2 池田ビル 2F
Tel : 03-5784-1250 Fax : 03-5784-1251
VINYL GOES AROUND お問い合わせ先
vinylgoesaround@p-vine.jp

VINYL GOES AROUND オフィシャルサイト
https://vga.p-vine.jp/exclusive


TRIBE RECORDS
ブラック・カルチャーを常に紹介してきたPヴァインのカタログでも重要な、フィル・ラネリンとウェンデル・ハリスンによって設立されたブラック・スピリチュアル・ジャズのレーベル、TRIBE RECORDS。1972年のデトロイトで産声を上げ、洗練されたジャズをベースにしたファンクネスなサウンドや、自主で制作されたマガジンの出版など、5年間に渡ったその活動は現代においても影響力が強く全く色あせない。音、言葉、ビジュアルを通して彼らが発信してきた、「黒人が尊重される社会」を願ったそのメッセージは差別が様々な形で取り上げられる今こそ、目を向けるべきである。

アイテムはTRIBE RECORDSの中でも最重要アルバム、Wendell Harrison & Phillip Ranelin "Message From The Tribe" の柄違いのジャケットをモチーフに製作したオフィシャル・Tシャツ(S〜XXL 全9種類)。
※限定で Wendell Harrison And The Tribe – Farewell To The Welfare のリイシュー7インチ付き(シルクスクリーン・ジャケット、シリアルナンバー付き)も販売いたします。

期間限定受注精算(~7月19日まで)となります。
※受注期間が終了しましたら各デザイン一色のみの販売となります。
※発売日は8月中旬頃を予定しております。

A Message From The Tribe T-SHIRTS 01 【SEA】with 7inch VGA-1004
COLOR : WHITE / BLACK / OLIVE
6380 YEN

A Message From The Tribe T-SHIRTS 02 【EARTH】with 7inch VGA-1005
COLOR : BLACK / BLUE / PURPLE
6380 YEN

A Message From The Tribe T-SHIRTS 03 【Phil&Wendell】with 7inch VGA-1006
COLOR : WHITE / BLACK / GRAY
6380 YEN

A Message From The Tribe T-SHIRTS 01 【SEA】 VGA-1001
COLOR : WHITE / BLACK / OLIVE
4180 YEN

A Message From The Tribe T-SHIRTS 02 【EARTH】 VGA-1002
COLOR : BLACK / BLUE / PURPLE
4180 YEN

A Message From The Tribe T-SHIRTS 03 【Phil&Wendell】 VGA-1003
COLOR : WHITE / BLACK / GRAY
4180 YEN

VINYL GOES AROUND オフィシャルサイト
https://vga.p-vine.jp/exclusive

株式会社P-VINE:https://p-vine.jp/

ralph - ele-king

 ついに、だ。2017年の “斜に構える” 以降、ハードなラップで着々とその名を広めてきた ralph。昨年の彼は “Selfish” のヒットやEP「BLACK BANDANA」のリリース、「ラップスタア誕生!」での圧倒的なパフォーマンスなど、一気にステージを上げた感がある。
 そして本日6月30日、初のミックステープ『24oz』がリリースされた。おなじみの Double Clapperz や EGL に加え、〈TREKKIE TRAX〉の Carpainter もプロデューサーとして参加。ゲストもこれまで以上にスケールアップしており、AJAH、C.O.S.A.、SEEDA が招かれている。
 なお、7月6日発売の『ele-king vol.27』には、ralph と Double Clapperz の対談が掲載。新作『24oz』の話も出てきます。あわせてチェックを。

ralph が客演に SEEDA、C.O.S.A.、AJAH を迎えたミックステープ 『24oz』をリリース
全国ツアーも開催

昨年リリースしたシングル「Selfish」が Youtube で100万回再生を突破し、確かなスキルと独特の存在感でヒップホップシーンで圧倒的な支持を得るラッパー ralph (ラルフ)。ファッションブランド〈Children of the Discordance〉とのコラボレーションなどシーンの内外にも認知を広げてきた。

昨年から幅広い客演参加でシーンの話題を集めてきた ralph が、自身の作品としては1年ぶりとなる1st ミックステープ「24oz」をリリースする。2部構成となっている本作。前半では、ドリル・グライムのトラックで彼自身の持ち味でもあるハードなラップを披露。後半では自身の体験を反映した内省的な一面を覗かせる。ralph のパーソナルな世界観が作品全体で表現された意欲作となった。客演には、過去にもコラボレーションで話題を呼んだ SEEDA、名古屋知立から C.O.S.A.、さらに若手実力派シンガー AJAH が参加している。プロデューサーとしては Double Clapperz、Carpainter、EGL が参加している。

更には、名古屋を皮切りに全国7箇所を回る「24oz Tour」を開催。
圧倒的なライブ力を是非体感していただきたい。

『24oz Tour』
2021年7月17日(土) at 名古屋 JB’S (NIGHT)
2021年7月24日(土) at 仙台 SHAFT (NIGHT)
2021年8月9日(月) at 横浜 THE BRIDGE (DAY)
2021年8月13日(金) at 京都 Chambers (NIGHT)
2021年8月22日(日) at 福岡 STAND-BOP (DAY)
2021年9月19日(日) at 大阪 JOULE (DAY)
2021年10月3日(日) at 東京 Contact (DAY)

*詳細は各会場まで

Release Information

Artist : ralph
Title : 24oz
リリース日 : 2021年6月30日

各種配信サービスにてリリース
https://linkco.re/bp1CzPvv

Tracklist :
01. Intro
02. Zone
03. Roll Up
04. WIP feat. SEEDA
05. skit
06. Window Shopping
07. D.N.R feat. AJAH
08. RUDEBOY NEEDS
09. Villains feat. C.O.S.A.
10. Outro

参加アーティスト: AJAH、C.O.S.A.、SEEDA


Artist bio


ralph/ラッパー

2017年に SoundCloud で発表された「斜に構える」が注目を集めたことをきっかけに、アーティスト活動を開始。2020年6月にリリースされた2nd EP「BLACK BANDANA」のリリースでその地位を確固たるものにし、同EP収録の「Selfish」は Youtube で100万再生を超えた。さらに Abema TV から配信された「ラップスタア誕生」(RAPSTAR2020)で優勝し、ヒップホップシーンからの期待を一身に担う存在となった。2021年6月にキャリア初のミックステープ「24oz」をリリース、夏には全国ツアーを予定しており、今後の活動にも注目が集まる。

Twitter:https://twitter.com/ralph_ganesh
Instagram:https://www.instagram.com/ralph_ganesh/

追加訂正 - ele-king

interview with Midori Takada - ele-king

 前世紀、西洋音楽ひいては音楽そのもののあり方をとらえなおすにあたって打楽器が重要な役割をはたしたのは楽音をになうのに五線譜の外の世界と響き合う特性をもつからであろう。ヴァレーズ、クセナキス、シュトックハウゼンら欧州生まれの前衛音楽家たちはむろんのこと、カウエル、ケージ、ハリソンら米国実験音楽の先駆者たちにも打楽器は幾多の霊感をもたらし、本邦の戦後音楽史も基本的にはその後追いだが、思考と方法と実践の蓄積により、やがて模倣や援用にとどまらない表現がしだいにあらわれはじめる、その全体像はおりをみて考察したいが、そこでは高田みどりという打楽器奏者の存在は欠かせないものになるであろう。複雑な現代曲をこなす打楽器演奏の呼び声を皮切りに、ライヒらが端緒をひらいたミニマル・ミュージックの探求をすすめる他方で、ジャズやワールドミュージックにも活動の場をひろげる、高田みどりの軽々とした身のこなしは現代音楽の言い換えとしての「コンテンポラリー」の範疇にもとよりおさまるものではなかった。というよりむしろ、83年のソロ作『鏡の向こう側』が動画共有サイトで口コミ的な評判を呼び、いまもなお再評価の声が止まないながれをみれば、彼女のあり方こそことばの真の意味での「contemporary(同時代的)」といわねばならない。


ボッテガ・ヴェネタ 表参道フラッグシップ
東京都渋谷区神宮前5-1-5
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 高田みどりとの対話もやはりこの作品の話題からスタートする。取材したのは表参道のボッテガ・ヴェネタ旗艦店の上階、高田みどりはその前日、おなじ建物の一角でショーケース的な演奏をおこなっていた。そこでは方形の空間の対角線上に、響きの異なるシンバル類を列状に配置し、動線上にウォーターフォン、ドラムセットとタムタム、壁沿いを移動した上手側にはマリンバを配置し、それらの楽器間を移動しながら、最後にホラ貝の音具を手にその場を去るまで、おそらく30分にもみたなかったはずだが、音楽は演奏者の身体の現前と観衆の存在もふくめて、その場その時間のなかにあるという、強烈な一回性を喚起するものだった。

変化がないと音楽として成立しない、というときの変化はコードや様式や音色や音量における変化をさしています。それよりも同じ音を延々とくりかえすことのほうがどれほどむずかしいか。

ele-kingの読者には高田さんの作品の熱心なリスナーも多いと思います。

高田:私はリスナーの方といってもどのような方が聴かれているかよくわかっていないのですよ。音楽業界にうといものですから。

ここ数年で高田さんの音楽を聴く若いリスナーも増えたと思います。『鏡の向こう側』の再評価はお耳に入っているとは思いますが。

高田:まあそれはおどろくべきことでした。というのはね、『鏡の向こう側』は83年に出ましたよね。その当時は、むしろ私よりご存じかもしれませんが、評価というのも入ってこないし、すこししかプレスしていないものですから。当時の日本はバブルの初期段階で景気がよくて、私のような実験音楽的なものにもレコードをつくってくださるというようなところがありました。ジャズやロックの世界でも前衛的な音楽をつくっている方がたくさんいた時代で、なにかを壊しつつなにかをつくるというような、世の中にも文化全体にもそういう風潮がありました。活気があってあたらしいものにも挑戦的な時代でしたよね。また企業もそういうものにお金を出してくれるところも多かったですよね。セゾン財団ですとか、毎年のように大きな現代音楽のフェスティヴァルを開催したり、東京だけじゃなくて軽井沢のセゾンがもっている美術館などでも文化的なイベントを行っていました。

開館イベントではデュシャンやケージが来日しました。

高田:美術界でも、キース・ヘリングやバスキアが世に出た時代ですよ。それがまた再評価されているじゃないですか。

キース・ヘリングやバスキアはここ数年で大規模展が相次ぎましたね。

高田:ええ。(『鏡の向こう側』の再評価にもつながる)動きがなにかあるのかな、とは思います。ただそういう美術の再評価のような動きが目立つ前に『鏡の向こう側』がなにか海外でたくさん若いひとたちに聴かれ出しているというのを耳にしたので、それにたいしては「へー」って、ぜんぜんピンとこなかったです。創ったときにはまったく反応がなくて、いってみれば売れない。でも実験的なものだから売れるかどうかということはレコード会社もあまり気にしていなかったと思いますよ。売れたほうがいいにきまってますけど。私の音楽はジャンルがわからなくて、私自身もジャンルを自分でいっていないんですね。じっさいに盤ができてお店に並べるとき、どこに並べるか、みんなとても困ったと思うんですね。ジャズでもロックでも、フュージョンでもない。結果的に現代音楽、クラシカル・コンテンポラリーの棚になってしまう。でもクラシカル・コンテンポラリーというと、作曲家としての評価がある方たちが音楽の古典からのながれのなかで、ヨーロッパを中心にして、あたらしい「前衛」という時代を切り拓いたその先にあるものです。だから実験音楽とはちがうんですね。コンテンポラリーといったときは「前衛」というものがはっきりと意識されていて前衛はヨーロッパのクラシカルなラインとつながったものだったわけです。私はキャリアの初期にそういうこともやっていたものですから、レコード・ショップでどこに入れるかわからないときに現代音楽に入ってしまった。そうしたらまったく反応ながなかったんです(笑)。

時代をさきどりしていたのかもしれませんね。

高田:前後してミニマルというものが米国で出てきはじめたころでした。(ミニマルは)日本でも認識されていましたが、当時日本ではあくまで現代音楽のあたらしい潮流のひとつで、同じことをくりかえすことの重要性やそれがもたらすものについて根本的な検証はなかったと思います。もちろん何人かの先鋭的な意識をもっていたひとたちは真面目にうけとっていましたが、演奏家にそういう例はほとんどなかったですね。なぜかというと、演奏家にはクラシカル・コンテンポラリーのように技術を披露する、ひじょうにむずかしい譜面を再現することに価値を置いていた時代だったんです。クセナキスやシュトックハウゼンのような人間の身体能力の限界をいく前衛の作品に、ひとびとが意識を向けていた時代だったと思うんですね。ミニマリズムはもともと美術のことばですが、音楽ではみずからミニマル・ミュージックを称した作品はないんですね。ジャンルに分類するさい、美術のミニマリズムと同じような構成や価値観という共通項のなかで、しだいにミニマル音楽という呼称が定着していったのだと思います。そういう時代の流れのなかで、私はミニマル・ミュージックとしてやっていたわけでも環境音楽やアンビエントをみずから謳ったこともありません。研究してはいましたが。

具体的な研究対象はどのようなものだったんですか。

高田:ブレインウェーヴ・ミュージックなどです。身体の変化、生体内における変化、脳の変化とマインドの結びつきにとても興味があったものですから。カナダのデヴィッド・ローゼンブームやアルヴィン・ルシェ等、ブレインウェーヴ・ミュージックをやっていらっしゃる方がひとりふたりいらっしゃって、ミニマルというならあれらこそ究極のミニマルであって、脳と生態系の変化という観点からは複雑系でも視野に入ってきますね。結局ミニマル・ミュージックと呼ばれている音楽はひとつのことを延々とつづけていきますよね。そうすると生体内にある変化が起きてきます。いうなれば「無意識化」してくるのです。演奏家の脳では身体には音の動きを把握するためベータ波が働いていますが、私はその対極にある精神状態、アルファ波を出しながら音楽ができないか、半瞑想的な状態のなかで音楽ができないかと考えていました。

訓練(ディシプリン)でそのような状態に到達するのですか。

高田:どのような訓練をすべきか、まず考えます。私はそれまで、クラシカル・コンテンポラリーの作品で、たくさんの楽器をつかったり図形譜を読み解いたり、点描的な演奏で非拍節、非旋律的な演奏をおこなっていました。そのような作品を演奏するには何度となく練習をくりかえさなければなりません。また非拍節、非旋律的な作品には、当時は「インプロヴィゼーション」ではなく「偶然性」といっていましたが、偶然性をもちいるものもあります。ところが偶然性といいながら、同じことを何度も練習しなくちゃならない(笑)。あまりにもむずかしい譜面を何度も訓練する——そこにはすごく大きな矛盾があります。音楽がひとつの哲学であるときにそれで成立すると思うんだけど、音になるとき、演奏するときにはものすごく大きな矛盾をはらんでくる。そこを、私は離れたい、と(笑)。それまでコンテンポラリーのなかでやっていましたが、もっとちがう身体とマインド、音にする段階で身体内の変化に着目しなければならない、と思いました。のちにミニマル・ミュージックになっていくものにたいしては(コンテンポラリーに限定できない)大きな可能性を秘めていると感じていました。だけど日本では技術的に、簡単なんでしょ、と思われてしまったんです。

単純なフレーズをくりかえしているだけだ、と。

高田:ええ。変化がないと音楽として成立しない、というときの変化はコードや様式や音色や音量における変化をさしています。それよりも同じ音を延々とくりかえすことのほうがどれほどむずかしいか。変化、変化、変わらなきゃ、変わらなきゃで、音楽も日本の社会もずっときていますよね。変化を止めた途端に怠惰になるのではないかという強迫観念があるのかもしれません。だけど変化をしないことによってなにがゆたかになるかというと、身体の内部なんですね。そういう状態を受動する身体の変化がものすごく大きいんですけど、そこにいたる前にミニマル・ミュージックの時代は終わってしまった。ポスト・ミニマリズムというような時代がありましたけど(すこし間をおいて)……みんな苦しいんだと思いますよ。日本の音楽家も西洋の影響をどうやったら抜けられるんだろう、西洋から学ぶことと日本古来のもの、雅楽や邦楽の語法を一所懸命追究して西洋音楽の(脈絡の)なかに位置づけよう、と先達の方たちが途方もない努力をされてきた時代でもありました。一方でミニマル・ミュージックというものがポンとアメリカから入ってきた。アメリカのひとたちもアフリカ、インド、インドネシアなど、芸術音楽という位置づけではなかった場からいろいろなフレームをかりうけています。

西洋音楽の限界を感じて、高田さんもアフリカや、非西欧圏のリズムの探究に入っていかれた?

高田:私自身はその流れでした。

名人芸的な方向はすでに頭打ちであるという認識があったということでしょうか。

高田:現在もヴィルトォーゾを求める風潮はありますよね。それをもとめるのは一種のスポーツに似た、アスリートにも似た快感ではあるとは思いますよ。それはだれもが一度は通過することではあると思います。

高田さんのおっしゃる身体性はスポーツとはちがう身体性ですよね。

高田:ええ。私はまず技術の改革としてやりはじめたのは、動かずに同じ音を出しつづけるということでしたが、それをはじめた80年代は音楽にもデジタル化の波がおとずれて、苦労して身体をつかうなんてことをしなくとも、スイッチひとつでずっと同じことをやっていてくれる時代になってしまった(笑)。身体というものがなくなれば、それ(デジタル的なミニマリズム)は原理的には可能だけれども、文化というものと身体というものはきりはなせないとも思うのです。それを忘れて、便利だとか早いということでデジタル音源にはしってしまうと、こんどは脳に返ってくるわけです。脳が前頭前野でうけとめる音楽と、思考としてしっかりととらえる音楽はまったくちがう脳の働きですから。デジタル音は刺激であって、興奮させることはできますが、しかしそれは材料を与えてもらって脳が興奮しているだけです。音楽はもっと瞑想にちかい深い感動であるとか記憶であるとか、身体を治していくものとか、そういうものに役立ったはずだと思うんですけどね。そこがいま、不経済なものとみなされている。

私はいろいろな文化をイコールにみていかなければならないと思っています。どこかによりそうというよりも、まったく同等にみていく、そこが私は大事だと思いますし、ひとつの音楽をつくる原動力にもなっています。

昨日演奏を拝見しまして、生の演奏にふれること自体パンデミック下ではひさしぶりだったんですが、演奏者と同じ空間に身を置き、響きを感じることも高田さんのおっしゃるデジタルではない音のあり方だと感じました。

高田:ありがとうございます。つまりね、音というのはヴァイブレーション、空気振動なんですね。空気振動というのは皮膚を動かすものですから、たとえば19ヘルツぐらいの低い音は遠くで聞こえる祭の太鼓の振動周波数がそれぐらいなんですけど、それっていうのは皮膚をやさしく撫でられるのと同じ振動周波数だともいわれています。遠くから聞こえてくる音と人間の身体はかつてひじょうに密接にかかわっていました。位置を確認する道具でもあったんです。

アフリカの太鼓によるコミュニケーションみたいですね。

高田:もっといえば350万年前のアウストラロピテクスもそうですよね。あのひとたち、あのひとたちって知り合いじゃないんですけど(笑)。

(笑)そうだと思います。

高田:彼らも楽器をもっていました。鳥の骨に穴を開けただけの原始的なものですが、それを吹いていたのはわかっています。そこから、楽器を手にすることがどういう意味をもつのかということを考えます。森のなかで骨の笛を吹くとどういう精神状態の変化が起こるかと想像するんですね。そうするとまず、音というのはそのひとが安全であるということ、生命を維持するために必要だということ、つまり自分が居る場所を仲間に教えることにつながります。これはまず生命の維持には不可欠です。そういう音を聴くことで空間というものを測ることもできます。響きの返りですね。響きを聴きとる能力というのが生命の維持に役立つはずなんです。生命の維持装置としてまず音があったにちがいない。それがデジタルになってしまうとイヤホンのなかで鳴るものになり、外界を遮断するものになってしまった。
 私は今回はミラノのファッションブランドBottega Venetaのお仕事でこういう場所で、ほんとうにひさしぶりに生演奏をしたんですけど、服も同じ効果をもっていると思っているんですね。服というのは人間の皮膚の次に得られる、身体にたいする空間だと思うんです。その役割は身体を保護すること、命を守ることです。ネアンデルタール人も毛皮を着るという点で服飾文化をもっていましたが、服というのは着飾るものであると同時に命を守るものでもあります。皮膚の次の空間、いちばん心地よい、命を守るための部屋として服があり、その外に屋根のある部屋のような空間があり、町や国がある。それもまた安全でなければならないと思うんです。音楽もまた、人間が服を着るのと同じように、空間をつくることで安全で命を守る、命を守るというのは原初的な感覚ですが、そういうものでなければならないと思うんです。

きのうの演奏で印象にのこったのも、高田さんの空間の捉え方でした。空間の特性を考慮し、響きを重視されている印象がありました。

高田:響きもそうですし、お客さんの耳にどのようにとどくかを意識します。音が移動してちかづいてくるという距離感は生でないとできないんですよ。会場にスピーカーを置いてLRから出すだけでは空間がこわれてしまいます。空間を音の響きでとらえることはアウストラロピテクスの命の音と同じ意味をもつと思います。

場が決まってはじめて楽器の配置などが決まってくるんですね。

高田:はい。

コンサートホールのような会場ならまだしも、高田さんはふつうの演奏に適さない空間も数多く経験されてきた気がします。

高田:もちろんです。それはたいへんですよ。どのような場所であっても、そこで精一杯という場合は尊重して演奏しますよ。そこにみんな集まって、サウンドを聴くことで、マインドを守ることができる。特定の空間における人間に、最適の音の状態を考え、原理や原則に基づいた音楽を提供するのが私の仕事だと思っています。場所という点では、訪れたなかにはコンサートという概念がない国や地域もありました。西アフリカでは演奏中に電源が落ちて会場が真っ暗になったこともあります。しばらくして、ようやく私の周囲だけ、発電機もってきて電灯で照らし出して演奏したこともあります(笑)。

アフリカのどちらですか。

高田:ガーナやコートジボワールです。コートジボワールはフランス領だったこともあるので、西洋化されたスペースもありますが、そういうところに行きますと、現地のひとたちが駐留しているひとたちのサービスのために雇われている現状がありまして、そういう西洋社会がつくってきたアフリカとのかかわりなどを如実に感じることもありました。

そのような状況にアンビバレンスを感じることはありますか。

高田:つねに感じていますよ。そこが歴史であり経済の格差でもあります。だからこそ私はいろいろな文化をイコールにみていかなければならないと思っています。どこかによりそうというよりも、まったく同等にみていく、そこが私は大事だと思いますし、ひとつの音楽をつくる原動力にもなっています。

西洋と非西洋を対立的に考えるのではないということですね。

高田:西洋は西洋でネアンデルタールのひとたちが毛皮を着ていたところにはじまる歴史をもっています。その足音のようなものをつねに共有していたいと思うんです。アンチ=ヨーロッパということはまったくなくて共有していたい。さいきんは西洋の象徴ともいえる美術館とか教会などの場所での演奏の依頼を受けることも多くなりました。いまハンブルクの教会の鐘の音をつくるプロジェクトにとりかかっているんですよ。37ヵ国から移民が集まっている、ハンブルクのなかでもとくに貧しい地域で、プロテスタントの教会なんだけれども、イスラムのひとたちも集ってイベントをやることもあるそうです。移民の癒しの場になっている教会の鐘の音をつくって一ヶ月間ながすというプロジェクトなんですね。お金は出ないんだけれども、といわれて、いいですよって(笑)。

〈参考作品〉

高田みどり - 鏡の向こう側 RCA Red Seal / 1983


全曲多重録音によるファースト・ソロ。4曲入りで、10分を超える長尺曲2曲で全体を挟み込むアーチ構造をとっている。冒頭の「Mr. Henri Rousseau's Dream(アンリ・ルソー氏の夢)」にいうアンリ・ルソーとはジャケットにもみえるフランスの素朴派の画家で、その奇妙に均衡を欠いた作風と、熱帯的なアンビエントのとりあわせが、夢幻的なひろがりをもたらし、2曲目の「Crossing」はライヒ風のマリンバをもちいたクロスリズム、「騙し絵」の意の仏語のタイトルを冠した「Trompe-l'œil」ではアウストラロピテクスが吹くリコーダーを思わせる音を奏でたかと思えば、ドラムスが登場する「Catastrophe Σ」でゆっくりと上昇線を描き幕を引く、端的だがきわめて高度な構想と内実をもつ傑作。

ムクワジュ・アンサンブル - Mkwaju Better Days / 1981


作曲家久石譲のグループを起点にした打楽器アンサンブルで、高田のほか定成庸司、荒瀬順子からなる。2作あるうちのこちらはファーストで、すべての曲を久石が作曲し、キーボードで演奏にも加わっている。グループ名にもなった冒頭の「Mkwaju(スワヒリ語でタマリンドの樹の意)」はじめ、基調はミニマル・ミュージックだが、ニューウェイヴやポップスにも通じる、サバンナのようなみはらしのよさをおぼえるのは作曲者の資質によるものか。間をおかず発表した2作目の『Ki-Motion』では久石は離脱し、ワハハの千野秀一がプロデュースを担当。高田の手になる「Wood Dance」「Ki-Motion」をふくめ、前作よりも陰影の増した空間性を展開している。

Kakraba Robi & Midori Takada - African Percussion Meeting CBS/Sony / 1990


一柳慧の招きで83年にはじめて日本の地を踏んだガーナの至宝との共演作。87年のサントリーホールでのライヴ録音で、幾多の打楽器を即興的にあやつりリズムの交感をこころみるが、聴きどころは現地でコギリと呼ぶアフリカ・マリンバを使用したパートとなろうか。はげしく交錯する音列がポリリズムなる穏当な言い方ではおいつかない酩酊的をもたらす音の波と化している。

高田みどり、佐藤允彦 - Lunar Cruise Epic / 1990


やはり再評価の対象となった90年作。佐藤と高田は韓国のサックス奏者姜泰煥をふくむトリオ「トン・クラミ」でも継続的な活動をおこなうなど、即興音楽の分野でも重要な足跡をのこすが、初期の協働の記録となる本作ではフュージョン〜クロスオーヴァーを換骨奪胎したかのような方向性で、映像喚起的な作品世界をかたちづくっている。細野晴臣がフレトレスベースを手にする「Madorone」など、小品だがピリリとした楽曲多し。

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Dry Echoes (田中光 × FKD) - ele-king

 独特のスタンスで良質なヒップホップを追求してきた、OLIVE OILPopy Oil 率いる〈OILWORKS〉。同レーベルに新たなラインナップが加わることになった。
 千葉出身のふたり、LAシーンに影響を受けたビートメイカーの FKD と、テクニカルなフロウで魅せるラッパーの田中光が、Dry Echoes として初のアルバムをリリースする。発売は7月28日。チェックしておきましょう。

2018年末、中目黒Solfaでの邂逅直後からセッションを重ねてきた田中光×FKD。
これまで数々の楽曲を発表してきたが、2021年 共作名義 “Dry Echoes” を掲げついに初のアルバム『Narratge』を〈OILWORKS Rec.〉よりリリース!

クリエイティブ集団「VIBEPAK」の主宰でもあり、〈OILWORKS Rec.〉からもアルバムのリリースを残すビートメーカー FKD と、ポエトリー・リーディングやMCバトルでも戦歴を残している田中光によるフル・アルバム!
『Narratge』で描かれているのは雑踏とネオン、夢と泡沫、エゴと資本主義。
断片的に切り貼りした都市生活者の詩集であると同時に約40分間を映画的に魅せるハイクオリティなビート集でもある。言葉の情景が耳と心にも響く、秀逸な楽曲が収められた1枚です。
アートワークは Popy Oil が担当し、初回盤はスリーブ仕様&歌詞ブックレット付き!

artist : Dry Echoes (田中光 × FKD)
title : Narratage
label : OILWORKS Rec.
cat : OILRECCD027
price : 2,500yen (IN TAX 2,750yen)
release : 7/28 (水)
バーコード : 4988044864917

Track List
01. Story
02. Kogarashi
03. a night
04. Journey
05. Ressurection feat Kzyboost
06. nakameguro
07. rumble fish
08. taxi driver
09. NOTFORSALE
10. Leaving
11. Ward
12. endless
13. feel (freestyle)
14. ainiku
15. chiba
Bonus Track
16. Riyuu (RAW-Remix)

Words by 田中光
Beats & Mixed by FKD
Album Mastered by Hiroshi Shiota
Design & Layout by POPY OIL
Featuring by Kzyboost

■プロフィール

▼FKD
千葉県千葉市出身、beatmaker/DJ。幼少期よりストリートダンスを始め、USの00年代のHipHopやR&Bに影響を受け16歳からDJをスタート。 その後 J Dilla や LOW END THEORY を初めとしたLAの音楽シーンに出会い大きな影響を受け、制作活動を開始。HipHop、Jazz、Bass Music を筆頭に様々な音楽要素を踏襲したグルーブと感性、そして「踊れる音楽」を強みに beatmaker として活躍の幅を広げる。2019年の〈OILWORKS Rec.〉からのアルバム『EGO TRIP』のリリースを皮切りに、自身のレーベル〈PubRec〉でのプロデュース活動や様々なアーティストへの Remix 提供、また、楽曲制作だけでなくイベントプロデュースやアートディレクション等多岐にわたった活動を続けている。東京を中心に活動するゆとり世代クリエイティブ集団「VIBEPAK」の主宰者。

▼田中光
千葉県館山市出身のラッパー。叙情的なリリックとチョップスタイルを駆使したテクニカルなフローを持ち味とする。2000年代中期から活動を開始し、UMBや戦極MC BATTLEといった大会での優勝によって、シーンにその名を知らしめた。2011年リリースのアルバム『PROOF』に続き、2016年には、LIBRO、BUGSEED、Meiso らを迎えたソロ・アルバム『ECHO CHAMBER』を発表。その後もEP「Round About Midnight」のカセットテープ・リリース、showmore や FKD をはじめとする多様なアーティストとの共演も話題に。ステージ上では、サンプラーとエフェクターを用いて、自らの曲を分解・再構築。楽曲とフリースタイルを織り交ぜた唯一無二のスタイルがオーディエンスの心を掴んで離さない。

R.I.P. The Gift Of Gab (Blackalicious) - ele-king

 ベイエリアを拠点に活動するヒップホップ・デュオ、Blackalicious のメンバーであるラッパーの Gift Of Gab (本名:Timothy J Parker)が6月18日に自宅にて亡くなった。享年50歳であった。死因は明らかになっていないが、Blackalicious の代理人は “自然死” と説明。ここ10年ほど深刻な健康問題を抱えていた Gift Of Gab だが、2014年に腎不全と診断され、人工透析を続けながら、昨年1月には腎臓移植の手術を受けていたという。

 突然の訃報を受けて、Gift Of Gab とも繋がりの強い DJ Shadow や Lyrics Born を筆頭に、様々なアーティストがSNSにて追悼コメントを発表。Blackalicious の相方であるDJ/プロデューサーの Chief Xcel も Blackalicious の Instagram アカウントを通じてメッセージを発表しており、そのなかで1987年9月にサクラメントの高校で Gift Of Gab と出会い、その後、ふたりがグループを組むまでのストーリーを丁寧に綴っている。

 カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)内のラジオ局、KDVSのヒップホップ番組を通じて出会った DJ Shadow、Chief Xcel、Lyrics Born らが中心となって設立したレーベル、〈SoleSides〉から1993年にリリースされたEP「Melodica」によってデビューした Blackalicious。その後、〈SoleSides〉は一旦解散した後に、〈Quannum Projects〉として生まれ変わり、Blackalicious は同レーベルから1999年に 2nd EP「A2G EP」と 1st アルバム『NIA』をリリースする。特に「A2G EP」に収録された彼らの初期の代表曲 “Alphabet Aerobics” は Cut Chemist が手がけたBPMが徐々に上がっていくトラックに加えて、ラッパーである Gift Of Gab の優れたライミングのセンス、深い語彙力、多彩なフロウが高い評価を受け、Blackalicious は当時のアンダーグラウンド・シーンのなかで絶大な人気を誇るグループとなった。

 2002年にリリースされた 3rd アルバム『Blazing Arrow』ではメジャー・デビューも果たし、その後、『The Craft』(2005年)、『Imani Vol.1』(2015年)と Blackalicious は通算4枚のアルバムをリリース。さらに Gift Of Gab はソロ活動も活発に行なっており、これまで『4th Dimensional Rocketships Going Up』(2004年)、『Escape 2 Mars』(2009年)、『The Next Logical Progression』(2012年)と3枚のソロ・アルバムをリリースし、さらにラッパーの Lateef the Truth Speaker、プロデューサーの Headnodic と組んだユニット、Mighty Underdogs 名義でもアルバム『Droppin' Science Fiction』(2008年)を発表している。

 コロナ禍におけるパンデミックによってライヴやツアーなどが中止となるなか、Gift Of Gab は『Imani Vol.1』の続編となる Blackalicious のニュー・アルバムと自身のソロ・アルバムの制作を行なっていたという。特に Blackalicious に関しては100曲近くの新作音源があるとも報じられており、今後のリリースが待たれる。

Sound Patrol - ele-king

ロボ宙 - TODAY
Last Moments - Last Moments NOW (edit)
Search of MANY

EL-QUANGO(元キング・オブ・オーパス)が立ち上げた新レーベルより、Sigh Society(90年代から活動しているベテランのテクノ・プロデューサー、ハゼモト キヨシ)の曲をネタにしたという、2曲を収録した7インチ。1曲はベテラン・ラッパーのロボ宙をフィーチャーしたグルーヴィーな“TODAY”、もう1曲はLast Moments名義でのインスト。90年代初頭の明るいフィーリングのベースとビートがたっぷりで、とくにLast Moments名義の“last moments NOW (edit)”は夏にぴったりのトロピカル・サウンド。オススメです。


DJ Yoda featuring Nubya Garcia and Edo G - Roxbury
Lewis Recordings


https://djyoda.bandcamp.com/album/roxbury-instrumental

ロンドンのスクラッチDJのヨーダとUKジャズを代表するサックス奏者ヌバイア・ガルシアによるコラボ作で、これまた90年代初頭のグールーあたりを彷彿させるジャジー・ヒップホップ・スタイル。ガルシアのソロ演奏もハマってて格好いいです。


TSVI - Sogno
Nervous Horizon


https://nervoushorizon.bandcamp.com/album/tsvi-sogno-ep

ダンスホール・テクノの話題盤。ロンドンのレーベルからイタリア出身の主宰者による5曲入り。削ぎ落とされた音数とリズムで、かなりのところまで連れていってくれる。NYのパイソンに似ているかもしれないけれど、こちらにはグライムが入ってますね。


PYTKO - Save My Day
Phantasy Sound


https://pytko.bandcamp.com/album/save-my-day

ポーランド生まれロンドン在住のPYTKOのデビューEPは、パイソンのリミックスを収録。とはいえこのヴァージョンは、レゲトンでもダンスホールでもない、無重力のダビー・ドリーム・ポップ。これが後期フィッシュマンズを蒸留したかのようなサウンドで、日常に戻るのが嫌になります。オリジナル曲からして徹底してドリーミー。


Kodama And The Dub Station Band -
もうがまんできない / STRAIGHT TO DUB (DUB VERSION)
Pヴァイン

夏だ、レゲエだ。怒りの夏だ。ライヴでお馴染みの名カヴァーがついにスタジオ録音されてヴァイナルでリリース。みごとな録音と演奏です。それにしても、世論調査で小池支持が半数以上とはなんたることか。がまんできないと思っている人がこの事態においても少数派だとしたら、日本の未来は明るくはないね。

 ファッション・ブランド〈C.E〉からまた新たなカセットテープの登場だ。
 今回はゴースト・リーマズ・オブ・マダガスカル(Ghost Lemurs Of Madagascar)なる2人組による昨年10月のライヴ音源を収録した「Blue Moon (Cav Empt Tape)」。このグループを構成するひとりは、これまでズリジェシー・オズボーン=ランティエなどをリリースしてきたレーベル〈Haunter〉を主宰し、自身もハイス(Heith)として活動するダニエル・グェリーニ (Daniele Guerrini)。もうひとりは、カリーム・ロフティ(Kareem Lofty)。ちなみに、名前が似ているがカリーム・ロトフィ(Kareem Lotfy)とは別人だそう。
 今回も〈C.E〉のウェブサイト(www.cavempt.com/)にて試聴可能です(右上の再生ボタンをクリック後、カセットを選択)。ぜひチェックをば。

アーティスト:Ghost Lemurs Of Madagascar
タイトル:Blue Moon (Cav Empt Tape)
フォーマット:カセットテープ
収録音源時間:約83分(片面約40分)
価格:1,100円(税込)
発売日:発売中
販売場所:C.E
〒107-0062 東京都港区南青山5-3-10 From 1st 201
#201 From 1st Building, 5-3-10 Minami-Aoyama, Minato-ku, Tokyo, Japan 107-0062
問合せ先:C.E www.cavempt.com/

SAULT - ele-king

 昨年ブラック・ミュージックの大絵巻、『Untitled (Black Is)』と『Untitled (Rise)』の2枚のアルバムを送り出し大いに話題を呼んだUKの匿名のグループ、SAULT が早くも新作をリリースしている。『NINE』と題されたそれは、99日間に限り、ストリーミングまたはダウンロードすることができる。ときが経つのはあっと言う間なので、お早めに。


https://saultglobal.bandcamp.com/album/nine

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