「K A R Y Y N」と一致するもの

HYPERDUB EPISODE 1 - ele-king

 歴史は繰り返す......ではないけれど、90年代後半のブロークン・ビーツが出てきた頃に似てきているのが現状。ダブステップがメインストリームになって、ブローステップが出てきた途端にアンダーグラウンド回帰がはじまっている。〈ハイパーダブ〉からキング・ブリットの作品が出ていることはその象徴のように思える。かつて、ブロークン・ビーツを先導した4ヒーローのふたりも復活している。
 しかし、そのいっぽうで、ハイプ・ウィリアムスとロレール・ヘイローといった、おそらくこれまでの多くの〈ハイパーダブ〉のファンが聴いてこなかったであろう、(インディ・ダンス/チルウェイヴ系のリスナーが追っていた)〈ヒッポス・イン・タンクス〉のアーティストを引っ張ってきているのが、最近のこのレーベルの興味深い動向だと言える。
 マンネリズムに陥っているダブステップにおいて、コード9はどんな手を打ってくるのだろう。ハウスとグライムをたくさんかけるのだろうか......。そしてジュークとか......。ハイプ・ウィリアムスはいったいどんなライヴをやるのだろう......、しかしサブウーファーを追加するくらいだから、とくにキング・ミダス・サウンドあたりは、相当な低音を出すつもりなんでしょう、いずれにしても、興味は尽きないですね!

 

東京 2012/6/8(FRI) 代官山UNIT
HYPERDUB EPISODE 1
featuring
KODE9 | KING MIDAS SOUND
DVA | HYPE WILLIAMS(Dean Blunt and Inga Copeland)
QUARTA 330 | AO INOUE | DJ KENSEI and much more

OPEN/START 23:00 前売TICKET¥3,800
※20歳未満入場不可。入場時にIDチェック有り。
必ず写真付き身分証をご持参ください。
You must be 20 and over with photo ID.

INFO: BEATINK 03 5768 1277

大阪 2012/6/9(SAT) CONPASS
OPEN/START tbc 前売TICKET¥tbc
INFO: tbc 協力: ZETTAI-MU (https://www.zettai-mu.net)

企画制作:BEATINK
INFO: BEATINK:03-5768-1277[www.beatink.com]

田我流 - ele-king

枯死していく風景のなかで 文:竹内正太郎

田我流
B級映画のように2

Mary Joy Recordings

AmazoniTunes

 序盤からオーヴァー・ペース気味のライヴ・パフォーマンス、だが一向に止まらないラップ、次から次へと吐き出される言葉、語られる思い、求めてやまないオーディエンス、 DJが落とす雷か発破音のようなビート......5月4日27時、私は渋谷〈Glad〉にいた。終盤、バースが丸ごと吹っ飛ぶほどの充実した消耗の中で、ますます発熱していくフロアをふと見渡すと、前列の方にいた、メガネをかけた同世代くらいの女性が目を引いた。凡庸な観察をすれば......彼女は、およそヒップホップを聴くタイプの女性には見えなかった(客観的に言って、筆者もそうだろう)。しかし、男性陣のフィジカルなモッシュのすぐ後ろで自由に、口元に微笑みを浮かべながら、いかにも伸び伸びと踊る彼女は、ヒップホップのビートと、パワフルなラップを切実に欲していたように見えた。言わば彼女は、会場全体のノリや、ラッパーの意図的な煽りとは無関係のレベルで、ただ自分自身のために、自らの人生のために踊っていたのだと思う。本人が喜ぶ形容ではないかもしれないが、その踊りはとても......そう、とても美しかった(誰が彼女からダンスを奪うのか?)。

 インディペンデント・ヒップホップ・イヴェント、〈INNOVATION)〉のオーガナイズ。無料での入場条件が事前に告知・ツイートされ、実質フリー・パーティのようになったイヴェントだ、何が彼女をあの会場に呼んだのかはわからない。だがやはり、田我流その人が呼んだのだと思う。「いま日本語ラップでこんなに盛り上がるライヴってねーんじゃねえの?」――ヤング・Gがそう煽るように、会場内は強固な空気が支配していた。だがそれは、映画『サウダーヂ』(富田克也監督)で田我流らが演じたアーミー・ヴィレッジが少しずつ巻き込まれたような、誰かを排除するための強固さではない。「ここにいる全員が原発反対ってことはないと思うし、それでいいと思う」――彼は震災後のディスコミュニケーションに、言わばより大きな寛容さをもって対峙しようとしていた。「未来なんかねえ(No-Future)」というパンク・ロックの逆説的な態度があるが、田我流は未来の変化を切望し、そのために言葉の最短距離を選ぶ。 SNSが包囲する諸縁に尽くすことで、個人的な幸福をある程度は堅守できるような時代にあっても、放置した未来がいまより悪くなるというのなら、彼はただまっすぐに声を上げるのだ。

下らねーシーンより目の前の危機
国は民を守らねー悪魔は無慈悲
今なら見える何を成すべきか
今なら見えるだろ? 何が必要か
"Resurrection"

 音楽的には、本作『 B級映画のように2』は総合度の高い作品である。ヤング・Gの作曲とプロデュースは、トラックとしてはサンプリング・ベースからバンド演奏まで、そして趣向としてはサウス・アレンジから中南米情緒まで、というように、本作にオムニバス作品ほどのふり幅を与えている。だが、前作『作品集 JUST』(2008 )と本作を重ね、透かして見てみると、そこにはやはり、主題という点でも大きな膨らみが見受けられる。ごく抽象的に言えば、富田が『サウダーヂ』で点描し、忌野清志郎がかつて歌ったバラバラ、言わば剥き出しのディスコミュニケーションと、田我流には向き合う準備があるのだ。

 さて、こういう典型の物言いをすると、反発や失笑があるだろうが、言わせてもらう。田我流は基本的には地方都市のレプリゼンターである。山梨県旧一宮町という、実に「見えにくい」場所の告発者として、彼はそもそもマイクを握っている。例えば、市町村合併、 TSUTAYA、BOOK-OFF 、ドン・キホーテ、乱立するショッピング・モール、大量の車を吸い込むパチンコ屋、閉ざされるシャッター、客よりもキャッチが多い夜の繁華街、何をするでもなく駅前にたむろするヤンキー......現在の渋谷を細かく因数分解したような繁栄の断片が、いま地方都市にはなし崩しにばら撒かれている。シネマテークたかさき( https://takasaki-cc.jp/)で『サウダーヂ』を観た後、私は人通りのない夜の高崎市が醸す映画世界との既視感で完全にバッド・トリップしていた(目の前をチープな単車が騒音をまき散らして走り去る......)。田我流はいち生活者として、そうした類型的な地方都市の退屈さを否定しないが、『サウダーヂ』での主演(あるいは 3.11の経験)は、その個人的な回路から、その背後に潜むより大きな社会圏へと接触していくための経験だったと言える。

 そして、この『 B級映画のように2』は、田我流というラッパーの二律背反するモチベーションを反映した複雑な作品でもある(それはブックレットの巻頭言としても綴られている)。 stillichimiyaを逆フィーチャーした"やべ~勢いですげー盛り上がる"を、仮に表題どおりの乱痴気騒ぎとするなら、インダストリアル・ロック調の"ロンリー"の深刻さは同一人物とは思えないほどの距離を跨いでいる(実際、田我流は声色をかなり使い分けるラッパーでもある)。現在分裂中のSIMI LAB から3人が参加した"ハッピーゲーム"はサラリーマン社会の緩やかな風刺。アルバム冒頭の"パニックゲーム"は、もはやナイーブな正義がいっさい成り立たないという、映画『ダークナイト』(2008)が抱え込んだ帝国の苦悩を楽曲内に移植しつつ、ヒップホップの戦闘性の中で愉快犯を気取るが、 ECD と組んだプロテスト・ラップ" Straight outta 138"ではその戦闘性を外に向けている。敗戦の象徴、世界戦争のアイコン、そうした核を平和的/科学的に克服しようとする二十世紀的(成長願望的)な想像力に対して、ハッキリとその有効期限切れを宣告する。某昭和歌謡曲からバトンを一方的に受け取る"あの鐘を鳴らすのは、、俺"は、分厚いシンセが高揚するヒップホップのチャンピオン・ソングだが、さらに深く掘り下げていくと、物語は"夜に唄えば"の内省に行き当たる。ひとりのヒーローとデカい愛ではなく、無数の小さな愛、その孤独な誠実さを想って、アルバムは終幕する。

これ以上は嘘はいらない 捨てよう
手探りで別の道をさ 探そう
きっと何かが変わりだす そっと
きっと何かが変わりだす そっと
"夜に唄えば"

 3.11後の「急速に失われていく社会」と、 3.11以前から「緩やかに失われていた社会」が互いに浸食し合っていく、 2012年というこの微妙なポイントで、実際的、物理的、行政的な復興の他に、希望はどのようにして回復しうるのか? そう、緩慢かつ急速に枯死していくこの風景のなかで――。田我流が立ち上げた問題意識はたぶん、そのようなものだと思う。結局のところ、アートは問題提起性以上のものを提出できるのだろうか? 教育に対する具体的な言及があるとはいえ、本作も基本的には問題提起役に徹している、それこそ爆弾魔のように。「たまに思うよこの世は地獄で」"夜に唄えば"、田我流はだが、そこをどうにかして破りたがっているように見える。彼が操守に生きるというのなら、それは長い戦いになるだろう。ボーナス・トラック"教訓・"(加川良、 1971)のカヴァーは、希望を語ろうとすれば摩耗することがあまりにもわかり切った時代に、それでもストラグルすることを選んだ人たちに対する彼の優しさだろうか。

 ここでいちど、冷静にピンを打つなら、ほぼすべてのMCで反射的・爆発的に盛り上がるあの夜のライヴの非日常的な一体感には、少しばかり危うさを感じたのも事実だ。そこでは、このアルバムの抱える複雑な感情が、良くも悪くも吹っ飛ばされていたように思たのだ。やや欄外になるが、すでに17万再生を超えている"ゆれる( EVISBEATS feat. 田我流)"のミュージック・ヴィデオ、その4分43秒過ぎが秀逸だ。ゼロ年代、前野健太が「だれかのいとなみ/ぼくはしらない」"だれかの"と歌った、断絶された他者への想像力を、彼らは再び強く掻き立てている。日本語ラップという文化圏の外側、その圏外に暮らす人たちとの終わらない対話にこそ、田我流の目指す未来はあるのだと思う。私が期待するのはその一点だ。例えば、地方の片隅から都市のざわめきに耳を傾けること。異なる物語を生きる人びとに、届くかわからない手紙を出し続けること。繋がりの時代におけるディスコミュニケーションに、より大きな寛容さで挑み続けること。田我流の表情を見ていると、何だか前向きな予感さえしてしまう。これは何かの達成ではないが、少なくとも何かの始点、辛抱強い再出発だ。そう、多義的な作品集『 B級映画のように2』は、決定的に変化したはずの、だが驚くほど変わらないこの時代に、どこかにいるハズの仲間(それは地球の裏側にしかいないかもしれない)を探して強くもがいている。底知れぬ分断、バラバラ、あるいは泥の河の底で――。


文:竹内正太郎

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ティス・イズ・ア・レベル・ミュージック 文:中里 友

田我流
B級映画のように2

Mary Joy Recordings

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無理っていっそ言っちまいな
もうダメって認めて行くぜ、一から
"Straight out 138"

 昨年夏に公開されてから実に長いあいだロングランを続けている映画『サウダーヂ』。東京はGWの渋谷オーディトリウムでのアンコール上映最終回をもって一応の終了を迎えた......のだが、この回は早々に完売、遅れて観に行った僕は2時間半強、立ち見するハメに......(7月より再度上映する予定)。知らない人のために簡単に記しておくと、『サウダーヂ』は、富田克也監督によって、地方都市・山梨県甲府市を舞台に生活を送る日雇い労働者や移民を描いた作品で、登場人物は皆ここではないどこかに叶わない夢を託し、心の郷愁を求めている。

 そんな『サウダーヂ』でもひときわ存在感のある演技が素晴らしかった、田我流の『B級映画のように2』について。率直に言うと、僕は震災以降というタームの日本語ラップ作品のなかでは、今作は重要なコンセプトを持った作品だと思う。映画主演を経たことは彼に大きなインスピレーションを与えたらしく、トレーラーやらタイトルもそのものズバリで、物語性のある作品構造を持ち、同時に批評的ともいえる。B級という考え方やセンスもヒップホップと親和性は高く、これも重要なポイントと言えるかもしれない。

 コンセプトは何かと言えば、「自分殺し」だ。社会や周囲との対立や屹立を描くとともに、自分の弱さ――それまで国にお任せ、無関心で突き通していたのが3.11以降、初めて命が危険に晒されることによって露わになった自分たちの愚鈍さ、無力感のようでもあって......これは彼のインタヴューでも確認できるのだけど、彼は本作をつくることで、なかばセラピーのような浄化作用を自身にもたらしたようだ。
 本作のちょうど中間に並ぶ楽曲は、後半にかけて展開されるカタルシスを生むための重要な役目を果たしている。グロテスクな描写が印象的な"ロンリー"、実際に「自分殺し」を決行する"Resurrection(復活)"、そして"愛のテーマ"だ。これらの並びは、ある種の苦難を経験したからこそ表現できる内容だ。
 例えば"Straight out 138"。自身をアナーキストと称し、かつて「言う事聞くよなヤツらじゃないぞ」とラップしていたECDが、具体的な目的を持った反原発デモを継続中の現在では「言う事聞かせる番だ、オレたちが」とラップしていることにも言える(2月20日に行われた経産省前原発再稼働抗議で、ECDはこのバースをラップした)。「自分殺し」とは何なのか。言い換えて言うならば、まずは「自分を認めること」なのだということを田我流は強調し、繰り返す。冒頭の一節もそのなかのひとつだ。

 こうしたテーマを説得力をもって聴かせるのは難しい。たんに言葉を乗せるだけでは説教じみてしまうし、メタファーもときとしてメッセージを薄めてしまう。そこを『サウダーヂ』で天野猛という微妙な役柄を演じきった彼が、自らを自作自演し、エモーショナルにまとめあげたところに、彼のアーティストとしての地力を感じる。
 同時に、彼はレベル・ミュージックとしてのヒップホップの可能性を3.11から1年を経たいま、再提起している(この部分においてはTHA BLUE HERBの最新作にも同じことを感じ得たのだけど)。今作において言うならば、"Resurrection"を経たからこそ、"あの鐘を鳴らすのは、、俺"は感動的なクライマックスとなっている。貧しさのなかから生まれて隆盛を極めたヒップホップ・カルチャーと自分を重ね合わせながら、「ヒップホップにはやっぱ栄光が似合う」と高らかに歌うラインに泣けてくるのも、その曲が表現している葛藤があったからこそだ。

 本作にはひとつ仕掛けがある。それは隠しトラックとして収録されている加川良の代表曲なプロテスト・ソング"教訓I"のカヴァーだ。これはボーナストラックながら、田我流という表現者の本質を掴むキモだと思っていて、あくまで現実から目をそむけずに理想を掲げる本編を補完するかのように、「死んで神と言われるよりも/生きてバカと呼ばれましょうヨネ/きれいごと ならべられた時も/この命 捨てないようにネ/青くなって しりごみなさい/にげなさい かくれなさい」と、逃避もひとつの手段だとしっかり意見し、バランスをとっている。楽曲と彼の歌声とが素晴らしくマッチしていて、ブルージーで味わい深い曲に仕上がっている。
 賞味50分、カオスを経てネガポジ逆転、自分自身に戻るという流れをもった本作は、ひとつのストーリーテリングとしても素晴らしく、社会的関心を高めることの契機としても、僕は評価したい。大きな岐路に立たされている僕たちが聴くべき、エモーショナルで、清々しく、美しいアルバムだ。


文:中里 友

Interview with shonen knife - ele-king


少年ナイフ
Pop Tune

Pヴァイン

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 昨年、結成30年を迎えた少年ナイフの新作『ポップ・チューン』は、タイトルどおりのポップなアルバム。これだけではなにも言ってないか......。
 どんなに浮き足立った時代にもどん底にも思える暗い時代にも、少年ナイフはいつも目の前にある現実を歌ってきた。それはいまも変わらない。おいしいもの、おかしいこと、つらいこと、ふしぎなことーーソングライターのなおこの体験や目にとまったものが、彼女独特のイマジネーションを加えて、それが少年ナイフのチューンになる。
 かわいいものはただかわいいのではなく、つらいことはただつらいのではなく、おいしいものは......これだってただおいしいってだけじゃなくなる。「私たちの音楽で楽しんでほしい」と少年ナイフは言う。覚えやすいメロディとシンプルな言葉、むずかしいことなんてなにも言っていないのに、なおこの視線にはすごく醒めたところがあって、そのクールさが少年ナイフを少年ナイフたらしめ、そのロックンロールに巻き込んでゆく。
 「ロマンは苦手」となおこは言う。以前のインタヴューで訊いた「命がどうしたってことにロックを感じない」という言葉は、大震災後のいまも変わらず少年ナイフの作品を支えている。へそ曲がりだけど偏屈でもシニカルでもない。そんなのは彼女たちにとっては平凡すぎて「ロックじゃない」んだろう。
 新作を聴くたびにそうなるのだけど、今回もまた、少年ナイフ的「世界の見方」に笑って楽しんでドキッとして、それから(文字どおり)ハングリーでロックなーーなんというか、「暮らしの基本」のようなところに立ち返らせられてしまった。
 では、インタヴューをお楽しみください!

実体験を歌にすることが多かったんですね。想像をふくらませて、想像の世界でおおきくして。ロマンじゃないんです。ロマンは苦手なので(笑)。現実主義なんで、そういう現実から少しふくらませていくんです。(りつこ)

りつこさんとえみさんは今度のアルバムは少年ナイフとしては何作め?

りつこ:わたしは今回が3枚めです。加入してからアルバムとしては4作品めです。オリジナルとしては。

えみ:わたしはひとつ前の『大阪ラモーンズ』からですが、オリジナルとしては今回が初めてです。ライヴは一昨年からですね。4月でまる2年になりました。

なおこ:だけどもう昔からいる感じです。もう10年はいる感じ(笑)。

りつこ:わたしは何年めだったかな。数えてないんですけど......。

なおこ:5年め。

りつこ:ああ、5年めです。今回の『ポップ・チューン』では、少年ナイフというものがどういうものかということをはっきりと言えるようになったと思っていて、自分の自然体でやれました。やっぱり入ったばかりの頃は「少年ナイフ」という名前にかまえていたところもあったし、いろいろ慣れない部分もあったけど、やっとここにきて少年ナイフというものを楽しめるようになりました。もともとファンだったので、責任感というわけじゃないですけど、自分のせいで悪くなったらイヤだとか、そういうのもあるじゃないですか。そういうのからはじまって、いまになって、今回の作品はほんと、いいものができたと自負しております。

なおこ:ははは。

えみ:わたしももともと少年ナイフに憧れて、少年ナイフに入ったんで、背中に大きな看板背負ってるという気持ちはあったんですけど、でももっといいバンドにするという気持ちもあったし、今回のアルバムにはそういうのが出せたと思います。

なおこさんから見ていまの少年ナイフはどうですか?

なおこ:もう最高にいい状態だと思います。最初のオリジナル・メンバーのときは原初的な狂気もはらんでいたかなとも思うし、そのあとに参加してくれたメンバーやサポートの人たちもそれぞれの持ち味があって、そのときは面白かったけど、いまのメンバーというのはすごく、りつこさんもさっき言ったけど、自然に合わせて、そうしたらそれがすごく相性のいい演奏になると言うか、そういうことが自然にできるメンバーなので、いまのメンバーはいまの少年ナイフとして最高じゃないかと思います。

去年、たくさんのライヴをこのメンバーで回ったということですが、その時のことを聞かせてください。

なおこ:去年は日本でもたくさんやったし、北米とヨーロッパ・ツアーと2回大きなツアーをやりました。やっぱり1回大きなツアーに行くと、それでバンドのグルーヴができるというか、まとまりが出てくる。えみさんが入ってからも海外のツアーを4回、一昨年には中国や台湾にも行ったし、去年は1ヶ月以上のツアーを2回もできたんで、それがバンドにとってすごくよかったですね。

えみ:年間80本くらいはやってると思いますよ。

りつこ:国内でもそこそこやってて、海外には1回行けば30本くらいはやりますから。

少年ナイフとしてはそんなにハードにやる年ばかりではなかったですよね。

なおこ:ははは。そうなんですよ。4月に大阪の難波ベアーズっていうライヴハウスで少年ナイフ結成30周年記念イヴェントをやって、1部がライヴ、2部がトークだったんですけど、そのトークショーのために昔の資料を調べて日記とかを見てたら、1年目は10数本、2年目3年目になったら年間24回ライヴやった、というときもあれば、年に4回しかしなかったこともあった。海外ツアーに関しても、1989年に初めてアメリカに行って1回だけライヴをやって、2回目は91年にアメリカの4都市で、同じ年にニルヴァーナの前座でイギリスに行った。そのあたりから急に増えたけど、98年から2002年はぜんぜん海外は行かなかったりして......。ものすごくたくさんやってる年とやってない年があるんだなあと......。ただ、えみちゃんが加入してからは一昨年も去年もアメリカ・ツアーやヨーロッパ・ツアーがあるから、ものすごく密度が濃いと思います。

りつこ:えみちゃんが加入して間もない頃に750回だったんですよ、たしか。ほら、高知で712回目だって言ってませんでしたっけ?

なおこ:そうだ。高知で。

りつこ:そこからでもずいぶんやってるから、もう800回になってるかもしれない。

えみ:ええ、わたしも200回はかるく超えてる気がします、あれよあれよという間に。

りつこ:ここ数年でめっちゃライヴ増えたね。

ツアーの思い出と言えば?

なおこ:そうですねえ。やっぱり食べ物がおいしかった。スペインの食べ物がおいしかったなあとか。

えみ:よく食べて、私は前回のアメリカ・ツアーで5キロ太りました。

りつこ:ははは。今回は太らへんと言いながら途中で崩壊していくんですよ。

えみ:ピザ7切れ食べました。

りつこ:ちょっとえみちゃんやりすぎよ、って言って。

ははは。やっぱりお腹すくんだ。

えみ:すきますねえ。

体力いるわけで。

えみ:ええ、やっぱりいるんでしょうね。いるということにしておきましょう(笑)。

りつこ:ははは。そう言っときましょ。

なおこ:でも車ばっかりですから、歩かないんですけどね。

えみ:そうなんですよね。

なおこ:あと、おととし中国に初めて行ってすごく面白かった。

中国のどこですか?

なおこ:北京と上海と、台湾の台北の3本で大きめのライヴハウスでやったんですけど、「わあ!」となりましたよ。しかもお客さんが若かったんです。北京は中国人でしたが、上海は白人のお客さんばっかりで、ここはどこなんだろうって感じでした。もちろん初めて行くし、お客さんがどんな感じかまったく分からなかったんですけど、ステージに上がった途端、びっくりした。しかもみんなナイフを待ってたっぽい感じだったし。ナイフは中国でCDのリリースはないのにどうやって手に入れるのかはわからないんですよ。

りつこ:ここがいちばん印象的、というのはないんですけど、どこの国に行ってもナイフを待っててくれるお客さんがいるというのがつねにありましたね。

むかしと変わった印象はありますか? わたしは92年に初めてニューヨークで拝見したんですが、楽しそう、というか、すごく笑ってるお客さんが多かったですね。

なおこ:そうですか。いまもおんなじですね。お客さんけっこうにこにこして笑ってくれてる人が多い。それは日本でも外国でも。それでこっちも元気を与えられて。

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北京と上海と、台湾の台北の3本で大きめのライヴハウスでやったんですけど、「わあ!」となりましたよ。しかもお客さんが若かったんです。北京は中国人でしたが、上海は白人のお客さんばっかりで、ここはどこなんだろうって感じでした。(なおこ)


少年ナイフ
Pop Tune

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30周年ということであらためて感じたことはありましたか?

なおこ:そうですねえ。いままでぜんぜんうしろを振り返ったりしなかったんですけど、かといって未来を考えてああしようどうしようということもなくて、とにかく目先のこと目先のことしか見てなくて、なんにも反省もしないし、なまけものなのか計画性もなくやってきたんで、だから30年っていう感覚はないんです。「いま」が積み重なるばっかりで。それで「いま」がつみ重なるとだんだん過去が消去されていく。上書き上書きになってる状態。

いつも新鮮な気持ちで。

なおこ:ええ。そうしてます。

今作はどんな作品ですか?

なおこ:今回のアルバムはポップな感じにしたいと思っていたんです。前のアルバムは『大阪ラモーンズ』でちょっとパンクで、その前の『フリータイム』というアルバムもパンキッシュな曲が多かったんで、今度はポップな感じにしたかった。なんでポップかというと、メンバーみんなポップな音楽が好きで、いちばん好きなジャンルとか音楽がポップだったんです。たとえばポール・マッカートニーみたいな世界とか。バンドによってはハードコアが好きな人のバンドの中心はハードコアになるように、少年ナイフの中心はポップだなあと思って、つぎは30周年やし、少年ナイフもはじまりはポップやと思うし。

なおこさんはふだんの生活の中で少しずつ書きとめていると以前うかがいましたが。

なおこ:そうですね。ふだんからネタ帳に例えば単語だけ書きとめたりしてて、いざ曲を書こうという時に、それを歌詞にしつつ曲をつけていったりするんですが、まあ1ヶ月に1曲ずつでも地道に作っていけばあわてなくてすむけど、わたしはそうでなくてレコーディングのスタジオを予約した段階であわてて曲を書くんです。今回も3月からスタジオで、曲は1月に書きはじめました。

そういう日常生活のなかで作られる少年ナイフの曲はかなり具体的なエピソードがもとになっているんですよね。今回はどんなエピソードがあったのか教えていただけますか?

なおこ:はい。1曲目は"ウェルカム・トゥ・ザ・ロック・クラブ"で、日本だとライヴハウスっていうけど、アメリカとかだとクラブ。この曲はライヴでお客さんに楽しんでほしいなあと思う曲で、どっちかというとアメリカのライヴ会場をイメージしてできた曲ですね。ツアーのことを思い出して......。

日本のライヴハウスとなにが違うんですか?

なおこ:アメリカは地方の町にでも何軒かロック・クラブがあって、人があんまり住んでないようなところでも、夜な夜な人が集まってきて、横にレストランやバーが併設してあるから、そこでゆっくり飲みながら、ビリヤードの台が置いてあるのでそういうのもやりながら、で、時間になるとライヴがはじまるので今度はそこに見にいって、という具合に、そこで半日遊べるような施設が多くて、それがすごい楽しい。日本はわりと土地がせまいからバーとステージもひとつの部屋のなかに限られてるし、ライヴが終わったら「もう出て行ってください」みたいな感じだけど、アメリカだとライヴが終わっても好きなだけ飲んで飲んでという感じなんです。レストランもあるからお腹いっぱいになってからライヴを見たり。やっぱり土地があるから、あとよく飲む人が多いというのもあるのかも。

でも車で来てるんですよね。

えみ:うん、そうですね(笑)。

なおこ:ああ、そうだね。そのへんがどうなってるのかは、わたしたちにはわからない。来てる人の年も幅広い。日本ってだいたい30代か40代かな。

少年ナイフはわりと広いですよね。

りつこ:広いです。日本でも広いですけど、海外はもっと広い気がします。

なおこ:それこそ親子三代みたいなね。おばあちゃん、息子、孫って。

それは楽しそうな場所ですね。そういう場所で『ポップ・チューン』とつながるんですね。

なおこ:ええ。音楽を楽しもうと。で、ちょっと最後のところに「政治家もいらないし、心配もいらない」って、ちょっとそういうのも入れといて。

そこ、少年ナイフらしい言いかたですよね。最後の2曲にも、この1年のいろいろな日本の困難な事態や気分に対しての歌かなあと感じたんですが......。

なおこ:最後の曲を作ったのは2年くらい前なんです。

あ、そうなんですか。

なおこ:ええ、だからほんとに関係ないんですけど(笑)。スポーツで金メダルをとろうって。

ああ、金メダルってどういう意味だろうなあと思ってたんですけど、ストレートな意味なんですね(笑)。

なおこ:自分もテニスをするので、うまくなれたらいいなあと思って書いたんです。

じゃあ最後から2曲目の"サンシャイン"は? わたしは寒そうな避難所の光景を思い出したりしたんですが。

なおこ:無意識のうちにそういう影響はあるかもしれないですけど、日本で大震災があったからどうのっていうようなことはとくにないです。聴く人がいろいろ感じてくれたら嬉しいなあと思いますけど。地震があったことに、少年ナイフとして曲をとおしてなにかしなければ、ということは考えないです。個人的に募金したりというのはありますけど。

すごくあったかくて、でもクールでもあって、大きなできごとのなかでも日常生活から離れずにいるというようなところが少年ナイフらしいと感じたんです。

なおこ:やれることは、音楽を演奏して、それが誰かが楽しくなってくれたらうれしいなあと思って。

この"サンシャイン"はりつこさんが歌ってるんですよね。

りつこ:たぶんわたしは、自分は雨女だと思ってて、なおこさんがあたし向けに曲を作ってくれたときに、そういう歌になったんだなあと思いました。だから歌ってるときはそういうことはなにも考えませんでした。ただ私はビートルズのような雰囲気の曲やなあと思って。このアルバムのなかであったかい色あいを出せたらいいなあと思って歌いました。

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日本で大震災があったからどうのっていうようなことはとくにないです。いろいろ感じてくれたら嬉しいなあと思いますけど。地震があったことに、少年ナイフとして曲をとおしてなにかしなければ、ということは考えないです。個人的に募金したりというのはありますけど。(なおこ)


少年ナイフ
Pop Tune

Pヴァイン

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なるほど。ところでえみさんもヴォーカルを担当している曲がありますね。

えみ:ええ。"サイケデリック・ライフ"(笑)。

なおこ:あははは。

えみ:なんで笑うんですか(笑)。

なおこ:ははははは。歌詞はギャグで書いたもんで。えみさんは、サイケな服とかいつも着てはるから、ばっちりだよねと思って。ペパーミント・ティーも飲んでるし。

えみ:瞑想もするし。はははは。

りつこ:ボヘミアンチックな服で。

ああ、ちょっと不思議な歌詞なんですけど、事実そのままということなんですね(笑)。話が最後の曲に飛んでしまったんで、"大阪ロックシティ"にもどりたいのですか......。

なおこ:これはロビン西さんが原作の『ソウル・フラワー・トレイン』という映画の主題歌を少年ナイフにやってほしいということで、面白そうだから作ったんです。舞台が大阪だからこういう歌に。自分ら通天閣とか大阪城とか好きだから、アメリカやヨーロッパでもリリースがあるし、外国の人にも大阪の魅力を知ってほしいと思って。

わたしはつぎの曲が頭にこびりついてしまったんです。「食べ放題のレストラン」なんですが。

三人:(ざわめく)

なおこ:これは、去年、アメリカ・ツアーに行ったときに車で移動中に昼ご飯の時間になったので「ここが美味しいよ」と連れていってもらった店のことです。ゴールデン・コーラルという店なんですが、そこに行ったら、チョコレート・ファウンテンもあるし、ミートローフみたいな巨大なハンバーグもあったね。
りつこ・えみ:あったあった。

えみ:食べ過ぎました(笑)。

なおこ:日本ではいま食べ放題がたくさんあるけど、アメリカで食べ放題といったらラスベガスのバフェみたいなとこしかなくて、「こういう店もあるんだ」と感動してばくばく食べて。

えみ:おいしかったね。

なおこ:それで作った。食べ放題にいくときは、先にお皿を持って順番に取っていくよりも、まず全体を見渡してから選ぼうということを言いたかった。

美味しいんですか?

なおこ:ええ、おいしいですよ。

アメリカのレストランって......。

三人:あー(笑)。

なおこ:ヨーロッパは好きですよ(笑)。

どこが好きですか?

りつこ:スペインが...。

なおこ:スペインのごはんは好きです。

えみ:ヨーロッパはどこ行ってもおいしいです。

なおこ:おいしくないことの方が少ない。でもわたしが行ってた最初のころのイギリスは、たとえばサンドイッチにマヨネーズがかかってなくて、パサパサのパンにハムが挟んであるだけで、イギリスに行くときはいつもマヨネーズを持っていってたくらいなのに、最近、ちゃんと味がつけてあって、日本のコンビニのサンドまではいかないけど、まあおいしいです。

りつこ:チーズとかバターとかパンはおいしいですよ。

手をかけなければ...

なおこ:2、30年前のイギリスだと、スパゲティは柔らかく茹でてあって、缶詰のミートソースをかけたみたいのしかなかったのに、最近は日本のイタリアンで食べるようなものがパブで出てきたりとか、フィッシュ・アンド・チップスの店なんかも......。

やっぱり食べ物の歌は重要ですね。そしてアルバムではさっきの"サイケデリック・ライフ"から"ミスターJ""ゴースト・トレイン"とちょっと不思議な曲へとつづいていくんですが。

なおこ:"ゴースト・トレイン"というのは、家の近所を電車が走ってて、最終電車が行ったあと、回送列車が車内灯をつけずに走ってくるんですね。先頭のライトだけついててあとは真っ暗なのでおばけの列車みたいなんです。それにインスパイアされました。"ミスターJ"は、地下鉄の駅のベンチにいつもおじいさんが座ってはって、携帯をいじったりしてるんです。ほんとにいっつもいるの。

ああ、実在の人なんだ。一日中、そこに座っているんですか。(笑)全曲に渡ってありがとうございました。少年ナイフの曲って、こうやって種あかしを聞いても、それに影響されずに聴けるのでつい聞きたくなってしまうんです。

三人:ははははは。

なおこさんがインスパイアされたというもとの体験がとても楽しいし、おもしろいんですよね。ささいなできごとなんだけど、それがこんな歌になるんだって。

りつこ:いっしょに体験していることが、歌になって出てくるときに、すごく感動します。

えみ:ほんとにそうですね。

りつこ:「あの時の歌」というのは聞いてないけど、そこにいた人間ならわかる。「ああ、チョコレート・ファウンテンおいしいゆうてはったなあ、おいしいおいしいって食べてはったなあ」って。そういうのが、聞かなくてもわかる。

ああ、なるほど。だから、そこにいなかった人も、そこでの話を聞いてから歌を聞くともっと楽しくなるんですね。

なおこ:昔から、実体験を歌にすることが多かったんですね。想像をふくらませて、想像の世界でおおきくして。

ロマンじゃないんですよね。

なおこ:ああ、ロマンじゃないんです。ロマンは苦手なので(笑)。現実主義なんで、そういう現実から少しふくらませていくんです。

Shop Chart


1

Ruf Kutz

Ruf Kutz Ruf Kutz #5 Ruf Kutz / UK / 2012/5/31 »COMMENT GET MUSIC
推薦盤!LTD.250pcs.!!絶好調<RUF KUTZ>第5弾!こちらシリーズ史上最高傑作なのでは・・

2

Kenny Dixon Jr

Kenny Dixon Jr Ultra Rare Jan Remixes & Edits 3 Unknown / FRA / 2012/5/30 »COMMENT GET MUSIC
入手困難なMOODYMANNレア・ワークスをコンパイルしたMOODYMANN公認と思われる「ULTRA RARE JAN REMIXES & EDITS」第3弾!今回も垂涎級の極上レア・トラックが並びます。謎の初アナログ化トラックも!?

3

Craig Huckaby

Craig Huckaby Black Music / Child Of The Sun Sound Signature / US / 2012/5/23 »COMMENT GET MUSIC
推薦盤!<SOUND SIGNATURE>新作はあのMIKE HUCKABYの実兄CRAIG HUCKABYにフォーカスした興味深い一枚。黒人音楽愛に満ちたその名も"BLACK MUSIC"の初アナログ化&PIRAHNAHEADとの共作"CHILDREN OF THE SUN"をカップリング!

4

J Dilla

J Dilla Jay Dee's Revenge / Birthright Ruff Draft / US / 2012/5/31 »COMMENT GET MUSIC
間もなくリリースされるJ DILLA未発表音源を集めたニューアルバム「REBIRTH OF DETROIT」から先行10"シングル!リミテッド・クリアヴァイナル!

5

Mental Remedy feat. Carlos Roberto

Mental Remedy feat. Carlos Roberto Children From Bahia The Remixes Sacred Rhythm Music / US / 2012/5/20 »COMMENT GET MUSIC
JOE CLAUSSELLバンド=MENTAL REMEDYによる極上ラテン・フュージョン・ハウス!アコースティックなオリジナルは勿論、密林アマゾンを駆け抜けるB面テイクも◎

6

V.A.

V.A. Deep Classics Amour / FRA / 2012/5/30 »COMMENT GET MUSIC
推薦盤!第1弾/2弾共に絶好調の注目新興レーベル<AMOUR>第3弾!"LOVE & HAPPINESS"使いのA-1を筆頭に5 KING'S a.k.a. MR. K ALEXI SHELBY、DJ AAKMAELらによる極上ハウス・トラック搭載。

7

Nick Sole

Nick Sole Flower Soil Mojuba / GER / 2012/5/30 »COMMENT GET MUSIC
<MOJUBA>看板NICK SOLE新作!ダビーな陶酔感に包まるメディテーショナル・スロー・トラック"MISSION OF LOVE"◎

8

Will Sessions

Will Sessions True Story / Dub Rock Funk Night / US / 2012/5/30 »COMMENT GET MUSIC
BLACK MILKインスト・カヴァーにて恐らくキャリア初(?)となるレゲエ/ダブ・アプローチの"DUB ROCK"!USのヒップホップ/生音ファンクなグッド・レーベル<FUNK NIGHT>から主軸WILL SESSIONS新曲カップリング7"。

9

Girls We Like / D Bo

Girls We Like / D Bo The Do-Over Vol.4 The Do-Over / US / 2012/5/17 »COMMENT GET MUSIC
推薦盤!上質ビートダウンをカップリングした話題作。LAのサンデーアフタヌーン・パーティー代表格「DO-OVER」より派生したアナログ・ レーベル第4弾!

10

Los Miticos Del Ritmo

Los Miticos Del Ritmo Los Miticos Del Ritmo Soundway / UK / 2012/5/11 »COMMENT GET MUSIC
QUANTIC指揮の元、現地凄腕ミュージシャンからなる"QUANTICと神話の打楽器隊"、待望のフル・アルバム!伝統的な演奏形態を踏襲し つつも豊潤な音楽観と洗練のアレンジでアップデートした2012年型ハイブリッド・クンビア極上盤◎

Chart by JET SET 2012.06.04 - ele-king

Shop Chart


1

Calm Presents K.F.

Calm Presents K.F. Dawn Ep (Music Conception) »COMMENT GET MUSIC
4月発売のCalm Presents K.F.名義でのアルバム『From Dusk Till Dawn』からシングル・カット第二弾。本作もハーフスピード・カッティングを施した珠玉の一品です。

2

Beck

Beck I Just Started Hating Some People Today (Third Man) »COMMENT GET MUSIC
Jack WhiteのThird Manからの限定7インチ!!

3

Pacific Horizons

Pacific Horizons Re-Illumination Series Volume 1 (Pacific Wizard Foundation) »COMMENT GET MUSIC
Laのニュー・バレアリック人気ユニット、Pacific Horizonsによる2011年リリースの最新オリジナル・トラック2作をDj Cosmo & Yam Who?、Split Secsがリミックス。

4

Still Going

Still Going Walk That Shit Party (Still Going) »COMMENT GET MUSIC
Eric Duncan(Rub N Tug) x Liv Spencer(House Of House)の最強コンビStill Goingが手掛ける注目のレーベル第2弾作品!

5

Keep Shelly In Athens

Keep Shelly In Athens In Love With Dusk / Our Own Dream (Forest Family) »COMMENT GET MUSIC
チルウェイヴ~エレクトロニカ~ダウンビートの枠を超えるサウンドで絶大な人気を博すギリシアの男女デュオ。2枚のレアEpがForest Familyから嬉しすぎる再登場!!

6

Sweatson Klank

Sweatson Klank Elevate Me (Project Mooncircle) »COMMENT GET MUSIC
L.a.名門Alpha Pupからのリリースでもお馴染みTakeによるダブステップ通過以降の新プロジェクトSweatson Klank第1弾。当店大人気Project Mooncircleからの超話題作です!!

7

King Midas Sound

King Midas Sound Without You (Hyperdub) »COMMENT GET MUSIC
レジェンドThe BugことKevin Martinと日本人女性ヴォーカルHitomiのBlack Chowコンビに詩人のRoger Robinsonを加えた人気トリオの楽曲を、これ以上ない豪華メンバーが仕立て直した超話題盤です!!

8

Ital / Magic Touch

Ital / Magic Touch Anywhere You Want Me / From A Dream (100% Silk) »COMMENT GET MUSIC
100% Silkを代表する2人がソロで初顔合わせ。それぞれのオリジナルとお互いのリミックスを披露。どちらも気合の入りまくったミュータント・ディスコです!!

9

Arsenal

Arsenal One Day At A Time Ep (Play Out!) »COMMENT GET MUSIC
Hendrik Willemyns & John Roanからなるブリュッセルの古株ユニット、Arsenalによる昨年リリースの4thアルバム『Lokemo』から豪華リミックス・カットが新着!!

10

Lord Of The Isles

Lord Of The Isles Unthank003 (Unthank) »COMMENT GET MUSIC
Eneからリリースされた"Pacific Affinity"でも話題となったスコティッシュ・プロデューサーLord Of The Islesによる新作10インチ。

Black Dice - ele-king

 アヴァンギャルド・ミュージックでも実験音楽でもなんでもいいけれど、いわゆるマイナーな音楽には快楽的とは言いがたい音楽が少なくない。快楽の定義も千差万別だろうし、ポップ・ミュージック=快楽的とも限らないので、そこが対立軸ではないはずだとはいえ、それにしても意図がよくわからない音楽が多い。多すぎる。そもそも何を実験しているのか。何と戦っているのか。もしかして聴いた自分が悪いのか。売った店員の責任か。盤を割って中身を調べてもやっぱり理由はわからない。教えて、クルト・ゲロン。なぜなの、ジェームズ・ホエール......(どっちも死んでるか)

 しかし、ときにはあっというほど明快に諧謔的だったり、ユーモラスであることが狙いだとわかるアンダーグラウンド・ミュージックも世にはけっこう存在している。ピエール・アンリやジャド・フェアーは結果的にそう聴こえるだけなのかもしれないけれど、ノイ!やレジデンツ、ホルガー・ヒラーやジャックオフィサーズは笑いを意識していないとはとても思えないし、トム・ハミルトンやナーキー・ブリランなど、どっちでもいいからとりあえず笑いが欲しくて再生してしまう音楽もそれなりの量はある。メルテイブル・スナップス・イット、コズモナウテントラウム、スーパーライフ、GCTTCATT、ビューボニーク......笑いの数が一種類ではない以上、各種取り揃えたくなるのも仕方がない。

 ゼロ年代以降のUSアンダーグラウンドにもこの系譜はしっかりと混在していた。ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!からドゥームなりノイズ・ドローンには流れなかった系統がそれで、それはどこかでクラウトロック・リヴァイヴァルと重なる傾向だったといえるところもある。ヴァス・ディフェレンス・オーガニゼイションからブラン(...)ポス、そして、何よりもブラック・ダイスの軌跡にそれははっきりと顕れている。かつてのハードコアは、デビューから5年も経つ頃には見る陰もなくなり、前作『リーポー』でそのメソッドは確固たるものとなった。さらに『ミスター・インポッシブル』ではいささか様式美といえるほど諧謔性はフォーマット化され、VDOがノイ!で、ブラン(...)ポスがホルガー・ヒラーなら、ブラック・ダイスは明らかにマウス・オン・マースとフザケ方が似てきた。ミニマルというよりも嫌がらせのような反復、ノイズが減って全体にビート指向となり、急にテンションを上げたり下げたりする構成も一歩間違えばクリシェになりかねない。彼らの資質からしてリズムでこれ以上、面白くするには限界があるだろうから、この次が難しいとは思うけれど、いまのところはまだ笑かしてくれる(レジデンツでいえば『インターミッション』(82)の辺りだろうか。新鮮味は薄れたけれど、笑うには充分......みたいな)。

 全曲試聴→https://soundcloud.com/ribbonmusic/sets/black-dice-mr-impossible

 解散したイエロー・スワンズのピート・スワンソンやウルフ・アイズのネイト・ヤングなど、ゼロ年代中期にはノイズ・ドローンの中核にいた人たちがこのところ相次いでエレクトロニック・ミュージックに手を出したり、ノイエ・ドイッチェ・ヴェレもかくやと思えるバク・バク・ビガップスからkplrのような諧謔系ミニマルが目立ってきたことも、ブラック・ダイスの影響によるものなのだろう。マウサスやカルロス・ジッフォーニがノイズを鳴らしはじめたときとはもう季節感が変わったのである。ここへ来てエアリアル・ピンクがVDOを復活させたことが、その証といえる。

 同じようにしてアヴァンギャルド・ミュージックのバック・カタログをユーモアの文脈で再生させようとする試みもある。スクウィーの中心的存在であるランディ・バラクーダとメシャクがコンパイルしたペッカ・アイラクシネンの発掘音源がそれで、78年から85年までに録音された8曲はどこか現在のスクウィーに通じるものばかりが選ばれている。60年代からスペルマとしてフィンランドのフリー・ジャズを牽引してきたアイラクシネンは、03年に『マダム・アイム・マダム』がコンパイルされてから再評価の気運にのり、昨年はドローンをメインとしたファースト・ソロ『ワン・ポイント・ミュージック』(72)が39年ぶりに復刻された。このまま待望のセカンド・アルバム『ブッダズ・オブ・ゴールデン・ライト』(84)も再発されちゃうのでは......とワクワクしていたら、ファーストからセカンドまでの時期に録音されたマテリアルが陽の目を見るのだから、世のなか、何が起きるのかわからない(アイラクシネンといえば、国内なら京都のメディテイションズか栃木のアート・イントゥー・ライフが扱ってきたものなのに、両者とも完全にスルーで、まさかダンス・カルチャーからこのようなアプローチがあるとは誰も予想していなかったことが如実に窺える。アイラクシネン本人だって、きっとまだ文脈を呑み込めているとは思えない。DJカルチャー=聴く力の勝利だと考えたい)。フリー・インプロヴァイゼイションが往時の基調だたっとはいえ、いわゆる緊張感のある演奏という当時の様式美には習わなかったところがアイラクシネンの存在をこれほど長く闇に葬り去った理由であり、ここへ来て蘇る理由でもあるのだろう。そのユーモアによって。ダンス・カルチャーの文脈から→https://soundcloud.com/perzza/simhaghosha-1983

トクマルシューゴ - ele-king

 ディー・ヴイ・ディー(d.v.d)もおもしろかった。なるほどそれは「みる音楽」であって、動画サイトで静止した画像を観ながら音楽を聴くというあの奇妙な「きく絵」体験と不思議な対照をなすように思われた。

 この日はトクマルシューゴのDVD作品『トノフォン・フェスティヴァル&ソロ2011』の発売を記念したライヴだった。ステージには2台のドラム・セットが左右に配置されていて、真ん中には大きなモニター(ドラムス・ヴィジュアルズ・ドラムス=d.v.d)。2台で構築するコンピュテーショナルなドラミングに連動して、プログラムされた映像が動いていく。映像は音と独立したものではなく、音に反応して展開するもので、一打されるたびにマルやサンカクが増えたり変形したりをくりかえしている。

 音の信号性を強調するようなそうした設計は、メカニカルなドラミングと協調しながらオーディエンスを別次元のライヴ空間へと導くかに思われた。モニターの向こうにあるマルやサンカクの世界へだ。あれだけ卓抜でビート感のあるドラミングであるにもかかわらずほとんど誰も踊っていないのは、われわれがほぼ全員でそのサイバーなフロアへと移動させられてしまったから、だろう。われわれはおそらく身体を置きざりにして、マルやサンカクの世界で踊っていたのである。そのフロアには終わりがなかった。
 そもそも抽象的にデザインされているから、出口・入口もなく、直線は伸びつづけ、波形はうねりつづけ、マルは増えつづけ、空間はひろがりつづける。それがすこしこわいようにも思われた。なんともいえない微量の不安がドライに砕かれ、顆粒状にふりまかれていると言えばいいだろうか。音もインフレーションしつづけるが、その先に当然迎えるはずの破滅をまるで感じないこと、そして当然破滅がやってこないこと、こうしたことがなにかおそろしいのである。エレクトロニックな上もの自体はとてもかわいらしい音だ。だがあの平板なピコピコ音には小児的で傲岸な無邪気さとともに、つめたい批評性が圧縮されているようでもある。「ほんとうは怖いにこにこぷん」、というか。家で聴くというわけにいかない。生演奏という価値のためではなく、インスタレーションであるからして会場に足を運ばざるをえない、不思議な種類の音楽である。DVDで観るのもいいだろうが、おそらくそこにはいま体験している即興性とは別のレヴェルの即興、別種の仕掛けがなされているはずだ。と思った。

 次号『ele-king』掲載の金田淳子氏を迎えた座談会の収録が終わったところだが、音楽には明るくないという氏にも教えてさしあげればよかった。ディー・ヴイ・ディーは音楽性の高さに比して非常にリスナーへの敷居が低いというか、アート的な文脈を持っているぶん音楽ファンにかぎらない広い層に受け入れられるプロジェクトではないかと思う。かつ、おそらくメンバー諸氏はイケメンと呼ばれる種類の人びとであり、ドラムとラップトップというストイックなフォルムをまとった電子男子として、多大な想像力の供給源となるのではないだろうか。MCも軽妙。噺家がせんすで話の間をとるように、しゃんとハットを鳴らしていたのがおもしろかった(ジマニカ氏)。

 トクマルシューゴはとても親密な空気のなかではじまった。ドラムス、その他パーカッション、アコーディオン、ベース、ギターと歌。"リンネ"のミュージック・ヴィデオ(https://www.youtube.com/watch?v=PfgB3bX0sLg)のつづきのように、楽器を持ってみんなでここまで歩ってきたといったふうのたたずまい、ステージという場所の異質さを中和するくだけた雰囲気がつくられている。それはオーディエンスにも確実に共有されていて、多くの人がとてもリラックスしながら、ほどよい緊張のなかで音を待っている。人の音楽を聴こうというときに、考えられるかぎりもっとも好意的なムードだ。なるほどこれがトクマルシューゴかと開始早々に敬服してしまった。みなビールさえ持っていない。

 しかし演奏じたいもややカジュアルであったというか、録音物としてのトクマルシューゴの緻密さはほとんど目指されていないように感じられた。全体にアコースティックなセットだったが、トクマル自身の演奏はやや埋もれがちで、セッションのダイナミズムを優先したということかもしれないが、もう少しくっきりと聴きたかったという思いがある。そもそもセッション(合奏、というほうが的確か)それじたいというより、それぞれの音の非常に繊細なつながり、行き届いたプロダクションがトクマルシューゴの魅力だ。それをライヴで再現するかどうかは考え方によるが、初めて観るものとして個人的には期待していた点ではあった。

 とはいえ、このがちゃがちゃとした合奏にはひとつの理想やテーマ性が織り込まれているのかもしれないとも思う。ひとりユニットや夫婦デュオなどが繚乱と生まれてくる一方で、3人以上のファミリーを形成することの意味は想外に大きい。もちろん単純に音数が必要だということもあるだろうが、それこそどのようにでもプログラミングは可能であって、人間が数人寄り集まって合奏をするというスタイル、とくに"リンネ"的なパーティのイメージは、ただ生音志向だという以上のなにかを持っているように思われる。ここに集まっているオーディエンスにも、アコースティックな合奏へのオーガニック幻想や一種のファミリー幻想が上質なフィクションとして機能しているのではないか。これを率いるのがギター弾きだというのがまたクリティカルである。「父」ではなく、しなやかにやせた青年の風貌が、ここで奇妙な説得力を持ってせまってくる。

 8分の6拍子で祝祭性を生み出すシーンも多かった。アニマル・コレクティヴのような、混沌として多幸的、どこの土地のものとも知れない架空的なフォークロアが奔出し、高揚感をあおる。ベイルートなどがやろうとしていることを日本で実践していると言いかえてもいいかもしれない。驚いたのは、幕間やアンコールを求めての拍手まで8分の6拍子になっていたことである。これは偶然ではなく、オーディエンスの側に明確にその手拍子を合わせ打つ意志があった。あれだけの会場でかなりの人数でそれを合わせることのむずかしさは、高校時代に応援団に従い、気ののらない3、3、7拍子を打った記憶のある人にならだれにでもわかるだろう。気持ちが重なり、いちリスナーを超えるファミリーのムードがあるからこそそれは可能であったと言える。

 またここに参加している人びとには、音楽の好みにも強い共通性があるようだ。イントロ・クイズのようなトクマルのギターの誘いに応じ、会場にはサケロックの合唱が起こったりしていた。ギターで人をその気にさせるのもうまい。筆者にはシンプルな弾き語りがとてもよかった。6月9日には町田の簗田寺にてソロでの出演を控えている(https://blog.shugotokumaru.com/)ようだが、ロケーションといい規模といい音響といい、かなりすばらしい演奏が聴けるのではないかと思う。

Georgia Anne Muldrow - ele-king

 長いあいだの圧迫から、古いレコードのジャケには、なかに入ったレコード盤の型が出てしまうことが多々ある。これをレコードファンはリングと呼ぶが、ジョージア・アン・マルドロウの『シーズ』には、あらかじめリングがデザインされている。また、長い歳月を経るなかで生じうるジャケの汚れや剥がれ、中古のランクで言えば、very good-、もしくはgoodのコンディションの状態が、あらかじめデザインされている。デジタル環境で育ったミネリニアルズである彼女はオーティス・ジャクソン・ジュニアすなわちマッドリブの名前で知られるプロデューサーの手を借りて、60年代のニーナ・シモンや70年代のカーティス・メイフィールドのレコードに針をおろしているかのような、ノイズを注いでいる。2006年、〈ストーンズ・スロー〉から彼女が最初のアルバムをリリースしたときのことだった。まだ渋谷のレコード店で働いていたヨーグルトに「これを聴かないと後悔する」といわんばかりに、なかば脅迫的に買わされたことをよく憶えている。そして2012年、下北沢のジェットセットの店長から同じように買わされた。
 70年代初頭のスティーヴィー・ワンダーのような民族衣装を身にまとうジョージアは、ジャズ・ギタリスト父に持ち、そしてアガペ・スピリチュアル・センター(誰も入れる教会のようなもの)で音楽を担当する母のあいだにロサンジェルスで生まれ、育っている。ファラオ・サンダースとアリス・コルトレーンが両親の仲間だった。ジョージアのソロ・デビュー・アルバム『オレシ: フラグメンツ・オブ・アン・アース』を特徴づけるのは、1970年代のソウルやファンクのサイケデリックな再構築感だ。そのサイケデリックな感性は、フリー・ジャズの引用によって強調されているが、彼女のバイオがそのまま彼女の音楽を表しているかのようである。〈ストーンズ・スロー〉一派のディクレイムとの共作を経て、彼女はデトロイトのPPP、そして昨年はロンドンのディーゴのアルバムでも歌っている。

 ジョージア・アン・マルドロウと比較されるアーティストがいるとしたらエリカ・バドゥだが、音楽的に言えば、ジョージアはエリカ以上の急進派だ。『シーズ』は1970年代のスピリチュアル・ジャズの再構築のような趣のストリングス、そして歪んだビートを有した、この暗黒時代におけるソウル・ミュージックである。メッセージ的には、カーティス・メイフィールドの『ゼアズ・ノー・プレイス・ライク・アメリカ・トゥデイ』(1975)なのかもしれない。嘆き、悲しみ、愛、言葉の端々から察するに、とくにこのハードなご時世を生きる子供たちへの慈愛が歌われているのだろう。メロディは豊富で、歌は力強い。彼女の歌声は、実に奇妙なムードを表している。トラックは――マッドリブのファンにはお馴染みなのかもしれないが――ヴィンテージ・サウンドを使いながら、温かみのあるループを展開する。美しい精神に導かれた、美しいアルバムである。

casette player chillout - ele-king

 先日、千駄木の養源寺で開かれたコンサート、「LIVE AT YOUGENJI」において最安値のテレコとカセットテープが大活躍したように、もっとも手頃で安価なこの再生装置とメディアは、デジタル全盛の今日に再発見され続けている。福岡のカセットテープ・レーベルの〈ダエン〉はこの度、「カセットテープをMP3に変換するプレーヤー」というUSB付カセットプレーヤーを発売した。その名も、「USB CASSETTE PLAYER "CHILL OUT"」。税込みの3980円で、限定100台。ステッカー、付属音源として「duenn feat NYANTORA」も付きます。カセットをUSBに取り込めるので、デジタル音源としても楽しめるわけです! これは嬉しいですね!
 

■商品概要
・サイズ 幅110×奥行き77×高さ30(mm) 重量 214g
・対応OS Windows XP / Vista / 7 電源 USB給電 電池駆動(単三乾電池×2) インターフェース USB2.0
・付属品 本体、日本語マニュアル、アプリケーションCD、USBケーブル USBケーブル長 80cm
・オーディオ変換フォーマット wav,mp3,wma (128kbps) *ご注意 単三乾電池は付属しません。別途ご用意ください。

Gonno - ele-king

■2012.6.9 "Carte Blanche to Redbox" with JD TWITCH (Optimo) , HAJIME INOUE etc... @ 渋谷WWW
■2012.6.15 ENESPNO.1 ROOM FULL OF RECORDS KICK OFF PARTY @ eleven LIVE:MANDOG / KAORU INOUE
DJ:LOVEFINGERS / THE BACKWOODS aka DJ KENT / 5IVE / CHIDA
■2012.6.19 MANDOG LIVE & DJ GONNO @ DOMMUNE
■2012.6.21 "Shop 12th Anniversary" with DJ DYE (Tha Blue Herb), JUN-GOLD @ MORROW ZONE (Sapporo)
■2012.6.22 "HYBRID" @ UNDERSTAND (Kitami)
■2012.6.28 "FAAM" @ WOMB (Shibuya)
■2012.6.30 @ 蜂 (Aoyama)

May 2012 Chart


1
Actress - R.I.P - Honest Jon's

2
House Mannequin - B2 of 5 - House Mannequin

3
J Greenspan - Guu - Jiaolong

4
Mandog - Guitar Pop (Gonno Remix) - Room Full Of Records

5
Yoshio Otani - Strange Fruits (Gonno Remix) - Black Smoker Records

6
Italojohnson - ITJ005 A - Italojohnson

7
Iori - Spread - Phonica

8
Fushiming - All Set To Go (Fresh Remix) - Hole And Holland

9
Szare - Red Desert - Krill Music

10
Tc Studio - Waste - All Inn Black
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