「K A R Y Y N」と一致するもの

Zinc - ele-king

 DJジンクは彼がハウスに回帰した理由について語る。「初期のジャングルというのは、ハウスと同じエネルギーを持っていた。同じテンポで、同じエレメンツだった」――昨年の7月28日、奇しくも筆者の誕生日に『ガーディアン』はDJジンクの提唱するクラック・ハウスについての記事を掲載している。アシッド・ハウス、アンビエント・ハウス、メタル・ハウス、ラガ・ハウス、プログレッシヴ・ハウス、ディープ・ハウス、ファンキー・ハウス、テック・ハウス、ミニマル・ハウス、マイクロ・ハウス、エレクトロ・ハウス、フィジット・ハウス......、そしてクラック・ハウス。まあ、なにはともあれ、ドラムンベース界のパイオニアのひとりがハウスに向かったとは興味深い話だ。

 DJジンクといえば、ジャンプ・アップ・ジャングルのアンセム"スーパー・シャープ・シュート"によって傑出した経歴を築いた人物である。が、彼は2007年にそのジャンルに背を向けている。そしてDJジンクは2008年を息子と一緒に過ごしながら自身が前進するための術を思案したという。そこで生まれたのがクラック・ハウスである。DJジンクは初期のジャングルにしばしば見られたような4/4ドラム・パターンをブレイクビートにブレンドする。そのドライヴするベース音、くらくらするシンセ音、歌と陶酔、それは90年代初頭のレイヴのヴァイブを想起させる。そしてそれはプロデューサーのルーツをより鮮明にする。女性MCのノー・レイを起用した彼の"サブマリンズ"や"キラサウンド"にはジャンプ・アップ・ジャングルと同じようなエネルギーがあるのだ。彼は彼がかつて恋したハウスというルーツに立ち返ってジャングルを再発見したのである――と同紙は記している。

 で、まあ本当にその通りなのだよ、これが。昨年末にリリースされた10トラック入りの『クラック・ハウスe.p.』は90年~91年あたりのレイヴ・サウンドの現代版だと言える。これはノスタルジーから来たというわけではない。同紙の取材で、ジンクはこの再発見の契機となったのがスウィッチとシンデンだったことを明かしている。フィジット・ハウスのベースラインがジンクを20年前の倉庫の熱狂へと導いたというのだ。また、同紙でジンクはダブステップへの複雑な気持ちも告白している(UKガラージがドラムンベースを食ってしまうかと心配されたが、むしろ現在はダブステップに有能な新人が持っていかれている――そうだ)。いずれにしてもUKダンス・カルチャーの競争意識、しのぎ合いが新しいスタイルと新しい呼称を生み出しているわけだ。クラック・ハウスはたしかに面白い。シンプルな4つ打ちとベースラインの絡みにしても、ヴォイス・サンプリングにしても、レイドバックしているというよりもダンス・サウンドとしての説得力の強さを感じる。もちろんでっかい倉庫で浴びるように聴きたいけれど、家で流しているだけでも気分は良い。

 さて、2010年はUKファンキーの年だと言われているけれど本当にそうなるのだろうか。だが、その前にまだまだダブステップの快進撃も続きそうだ。スキューバのセカンド・アルバムも良かったし......。

CHART by JET SET 2010.03.08 - ele-king

Shop Chart


1

V.A.

V.A. 20 YEARS OF STRICTLY RHYTHM MIXED BY DJ NORI & TOHRU TAKAHASHI »COMMENT GET MUSIC
Strictly Rhythmから豪華すぎるアニヴァーサリー・アイテムが到着!DJ NoriとTohru TakahashiによるミックスCDに加えて、国内の気鋭なクリエイター陣が本作のためにRe-edit、Remixを施した未発表曲を収めた3枚組。

2

SOMBRERO GALAXY

SOMBRERO GALAXY JOURNEY TO THE CENTRE OF THE SUN »COMMENT GET MUSIC
Lovefingers新レーベル"ESP Institute"第1弾!!Discossessionのキーボード奏者Jonny NashとオランダCBS一派のTakoによる新ユニット、Sombrero Galaxyによる待望の1st.シングルが、噂のLovefingers主宰ESP Institute第1弾として登場!!

3

JOY ORBISON

JOY ORBISON SHREW WOULD HAVE CUSHIONED THE BLOW »COMMENT GET MUSIC
☆特大推薦☆ダブステップ・シーンから登場した超新星による美麗特大名曲!!デビュー曲"Hyph Mngo"が特大アンセム化、Four Tetの特大ヒット"Love Cry"でもリミキサーとぢして大抜擢された超新星が、待望過ぎる3rd.12"をリリース!

4

MENDO

MENDO ENCANTOS EP »COMMENT GET MUSIC
絶好調Cadenzaからの新作!!Michel Cleis"La Mezcla"の大ヒットと共に、近年のトレンドとなったアフロ・チャント系トライバルなモダン・ミニマルハウス作品!!

5

LINDSTROM & CHRISTABELLE

LINDSTROM & CHRISTABELLE BABY CAN'T STOP PT.2 »COMMENT GET MUSIC
Prins Thomas & Idjut Boysという鬼に金棒なリミックス!!アルバム国内版CDに先行収録されていてシングルカットを待ち望んでいた方も多かったはずのPrins Thomas、idjut Boysリミクシーズが遂に登場!!

6

QATJA S

QATJA S KROM EP »COMMENT GET MUSIC
☆大推薦☆これが当ジャンル'10年の一推しサウンド=フレンチ・テックだ!!当店お馴染みのベルジャン・ジャンパーDr. Rudeとのコラボ12"もリリースしているフレンチ・テック・マスターQatja Sによる特大傑作がこちら!!

7

ANDREW CEDERMARK / FAMILY PORTRAIT

ANDREW CEDERMARK / FAMILY PORTRAIT SPRIT »COMMENT GET MUSIC
Real Estate好きは絶対泣きます。Underwater Peoplesからの素晴らしすぎスプリット!!特大スイセン盤★Real EstateをリリースしたUnderwater Peoplesからの4枚目。Real Estate~Ducktails~Julian Lynchなロウファイ・ビーチ・ポップ・スプリット。完璧です!!

8

DOMINIK EULBERG

DOMINIK EULBERG DATEN UBERTRAGUNGS KUSSCHEN (REMIXES) »COMMENT GET MUSIC
美麗テックからディープなダビー・ミニマル・アレンジまでの好リミックスEP!!先ごろMassive Attackの過去名作"Taerdrop"のリミックスを手掛け話題となったMinilogueがリミックスを担当!!

9

DJ SPINNA

DJ SPINNA THIRST / SUMMER MADNESS »COMMENT GET MUSIC
これは間違い無し!その通りSide-B"Summer Madness"使いです!定番クラシック・ネタKool& the Gang"Summer Madnnes"をうまくバラしたSpinna印なトラックに4th・アルバムにも参加していたNYのラッパー、Fresh Daily、Daniel Josephをフューチャー。

10

GAPE ATTACK!

GAPE ATTACK! BURN THIS CITY »COMMENT GET MUSIC
どんどん出てくるBlank Dogsフォロワー・バンド。この人たちも超最高です!!シアトルのシンセ・パンク・トリオ、Gape Attack!のデビュー・7インチ!!ノイジーなダンス・ビートがCold Caveにも通じるキラー・チューン。絶対注目です!!

Nice Nice - ele-king

 ナイス・ナイスの音楽は非常にヴァーチャルな想像力を刺激する。そこで体験すること、見ることや聞くことは、この目この耳この手で感じることではない。それはなにかもっと間接的なもの、まるで自分自身の......アバターが体験しているもの、そんな気がしてくる。よく設計された音世界。隙間なくめぐらされた打ち込みの音ひとつひとつがこの世界のねじ釘だ。トライバルで多層的なビート、和太鼓を思わせるタムの乱れ打ちはその動力源、モーターだ。たとえば映画『サマー・ウォーズ』の舞台、あの可愛らしくクリーンにデコレートされた二次元の惑星を思い浮かべるとしっくりくるかもしれない。国境や国籍が一旦キャンセルされ、距離という概念が存在しない仮想世界に、あらゆる人種が思い思いの姿かたちで入り交じって生活している。鳥が飛び、車が走り、人が繋がり、金が動く。現実世界さながらの圧倒的な重層性と複雑な構造を抱えて稼働する、擬似世界。

 ギタリストとパーカッショニストによるポートランドのエクスペリメンタル・デュオ、ナイス・ナイス。活動自体は90年代半ばから続いているようだ。ファースト・アルバム『クローム』が〈テンポラリー・レジデンス〉からリリースされているが、それでさえ2003年に遡る。そしてふたりは2006年〈ワープ・レコーズ〉とサイン。バトルスの発掘以来さらに新たなフェイズに突入し、IDMという言葉の限界を拡張しつづける〈ワープ〉が2010年に提示するものは何か? 本作は、そうした期待と注目をもって迎えられたセカンド・フルということになる。

 擬似世界と言ったが、カオティックでありながらも緻密な重層性を抱え込んだナイス・ナイスの音には、だからメロディ、主題というものがない。そもそも主体がない。とにかくあらゆる効果音やらミニマルな反復を続けるギターやら打楽器やらが洪水のように渦巻いて、とことんハイパーに運動しつづける。音のインフレーションが止まらない。ある特定の主体の眼差しから捉えられた世界の描写(それがメロディ、主題というものだ)ではなく、誰かの意図や恣意では決定されない、世界の設計図=曼荼羅の完成を志向しているというふうだ。もちろん本作からはヴォーカル入りの曲もあるし、メロディらしきものもあるが、それは定点を持たず、どこからか立ちのぼった祝詞、礼拝の掛け声ででもあるかのよう。

 「身体性」という言葉で指摘されることの多い彼らのサウンドだが、実際に運動するのは身体ではなく脳だ。身体はむしろ固く緊張する。そして脳の奥が広がる。そう、踊り、動きまわっているのはアバターたちなのだ。世界はじつにノイジー。私はそこでかわいいカモメのような姿で日がな過ごすだろう。ようこそ擬似世界「エクストラ・ワウ」へ。入場にあたってはアカウントを取得し、ログインすることが必要です。パスワードを入力してゲートが開く、"One Hit"。大きな象に乗ってパレードが進む、"A Way We Glow"。ストリートでハリネズミと巨人のケンカがある、"On And On"。おや、雨だ、"See Waves"......。

 リアルの底が抜けた現在という時間を祝祭的に描き出す、彼らもまた新しいリアリティに生きる人びとのひとりだ。アーティスト写真がどれもノー・エイジのような、丸腰のインディ・ロッキン・テロリストといった雰囲気をたたえているのもいい。

プラスティック・オノ・バンド
プラスティック・オノ・バンド!(photo: Kevin Mazur/ Wire Image )

 プラスティック・オノ・バンドが、去る2月16日(木)に〈BAM〉で再結成しプレイした。「●●がゲストに来る」......など、私のまわりでもさまざまなうわさが回っていて、ショーはあっという間にソールドアウト! あまりにも早くて、この1日前にはリハーサルをパブリックに公開するショーも追加で催された(こちらもかなり競争率が激しかったらしい)。

プラスティック・オノ・バンド
プラスティック・オノ・バンド!
(photo: Kevin Mazur/ Wire Image )

このショーは、現在のオノ・バンド・メンバー(コーネリアス、ショーンレノン、本田ゆか)に加え、曲ごとに豪華なゲストが登場した。エリック・クラプトン、ソニック・ユースのサーストン・ムーアとキム・ゴードン、ポール・サイモン、ベティ・ミドラー、マーク・ロンソン、シザー・シスターズ、細野晴臣......この上ない豪華なショーである。年齢(77歳!)をまったく感じさせないパワフルなパフォーマ ンスはもちろん、彼らをこの場所に一同に集めることができるYoko Onoの存在はさすがというしかない。このショーを見た人は一同に「彼女はすごい!」と言うし、このゲストたちが、最後に一列に並んであいさつした時は、ニューヨークにおけるYoko Onoと言う存在を重要さを再確認した。

mi-gu
mi-gu
Ghost Of A Saber Toothed Tigers
Ghost Of A Saber Toothed Tigers

 ところで、私が今回ピックしたいのは、数日後に行われたmi-guのショー。mi-guはコーネリアスのドラマー、あらきゆうこさんのバンドで、昨年は〈HEARTFAST〉のCMJショーケースにも出演して頂いた。ショーン・レノンとガールフレンドのバンド、Ghost Of A Saber Toothed Tigers(Sean Lennon & Charlotte Muhl)の前座として出演。ギターのシミーとドラム&ボーカルのゆうこさんの息もぴったりなショーは、数日前のプラスティック・バンドと比べるとこじんまりして、タイプは違うが、雰囲気がとてもよく、観客もアットホームな感じで、声援を送ったりして盛り上げる。観客には、坂本龍一の姿もあり、私の友だち(アメリカ人男)は大興奮して、一緒に写真を撮ってもらったりしていた。最後の2曲にはゲストとしてショーン・レノン、本田ゆか、そしてコーネリアス本人が出演。そして次のバンド(Ghost~)が登場すると、先ほどと、メンバーがシャーロット以外全て同じ! ただ、そのシャーロットが、この世のものとは思えない程かわいい。ショーン・レノンが自慢したくなる気持ちもわかるが、かわいいだけでなく歌も歌えるしベースも弾ける。基本ショーンとシャ―ロットふたりのバンドなのだが、今回はメンバーがいたのでバンド編成になっている。フォーキーなロックで、サウンド的にはショーンのソロに女の子ヴォーカルが入った感じだ。

 2月、NYはファッションウイークでもある。うちの近所のウィリアムスバーグにもファッション・ショーが存在する。NYファッション・ウイークエンドに対抗したウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンド(WFW)だ。ローカルの若いデザイナーたちが斬新なアイディアや手法で洋服を作り、個性あるファッション・ショーを作っていく。 洋服はもちろんのこと、とくに面白いのはデザイナーのプレゼンの仕方。NYファッション・ウイークのように、洋服がメインで、モデルがキャット・ウオークをするだけではなく、こちらは、どちらかというとパフォーマンスがメイン。

フラウク
ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンドにおけるフラウク
トータル・クラップ
トータル・クラップ
ロボット・デス・カルト
ロボット・デス・カルト

 今回の2010年春夏のショー は、WFWでは初のサンフランシスコのデザイナーで、テクノロジーv.s.自然をテーマにしたライン、フラウク、グラムとパンク、アヴァンギャルドをミックスしたライン、トータル・クラップ、Lace & Voidをテーマにし、普段も着れるドリーミーさが売りのデシラ・ペスタ、主催者のラインであるKing Gurvy等々......。

 個人的にいちばん好きだった、ルフェオ・ハーツ・リル・スノッティはリーズ・ア・パワーズのミュージック・ヴィデオ"イージー・アンサーズ"のデザインも担当していて、メンバーはモデルで登場したり、アフター・パーティではDJをしたり大活躍。2010年の冬をイメージした野生の冒険のキャラクター、ガチョウ、イルカ、カエルをモチーフとし、カラフルな色を切り貼りしてリサイクルした洋服を着たモデルたちがラッパーに合わせてダンス・パフォーマンスを展開。ホットドッグやアイスクリームを、ウエブサイトの入ったフライヤーと一緒にオーディエンスに投げたり......。

 アートギャラリーでもある、シークレット・プロジェクト・ロボットのライン、ロボット・デス・カルトは、モンスター(ドラキュラ、フランケンシュタインなど)メイクのモデルたちが、ロボット・デス・カルト印の旗を持って、ステージに突如現れ大騒ぎ、そしてすぐに去る。5分ぐらいのショーだったが、存在感とインパクトは圧倒的。

 どのデザイナーもいまあるものを使い、いろんなアイディアを組み込んで、新しいものに変えていく。レイヤーだったり、コラージュだったり、リサイクルだったり。NYファッションウイークと規模はまったく違うけれど、DIY精神の面白いファッションショーだと毎回感心する。

 最後に、このファッション・ショーの主催者のアーサー・アービットに話を訊いてみた。彼は、元ツイステッド・ワンズという名前で、ライトニング・ボルト、ブラック・ダイス、ヤーヤーヤーズ、ライアーズなどを初めてウィリアムスバーグでブッキングした人で、最近では、DJ、イラストレーターとしても活躍している。また、普段もスーツでびしっと決めている人だ。


RNY:ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンド(WFW)はいつ、どのようにはじめたのですか。

アーサー・アービット:3年前、これから出てくる若手デザイナーにプラットフォームを作ってあげたいと思った。

RNY:NYのファッション・ウィークとは、どの辺が異なりますか?

アーサー・アービット:デザイナーたちはデザインをプッシュすること、それを創造する工程にとくに興味を持っていて、ビジネスは透明になっている。

アーサー・アービット
ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンドの主催者のアーサー・アービット

RNY:当日いろんなメディアのインタヴューを受けていましたが、WFWはどのようにプロモートしているのですか。

アーサー・アービット:いつも同じだけど、主要なメディアやブログサイト、ファッション業界の人たちだね。

RNY:WFWで何が大変で、何が楽しみですか。

アーサー・アービット:いまは楽しいことしか思いつかない。これが自分のやりたいことだからね。

RNY:あなたは主催者でもあり、デザイナーでもありますが、あなたの洋服ライン「King Gurvy」を紹介して下さい。

アーサー・アービット:エクスペリメンタル!

RNY:2010年おすすめのデザイナーは。

アーサー・アービット:フラウク(Flawk)だね!

CHART by TRASMUNDO 2010.02 - ele-king

Shop Chart


1

STRUGGLE FOR PRIDE『FELEM 15TH,AUG,2009.』LIVE DVD

STRUGGLE FOR PRIDE 『FELEM 15TH,AUG,2009.』LIVE DVD »COMMENT

2

SKUNK HEADS

ECD 『ライブ30分』CD-R »COMMENT

3

HAIR STYLISTICS

CE$ 『Steal da city』 »COMMENT

4

Dj Killwheel a.k.a.16flip

STRUGGLE FOR PRIDE BRAND NEW T-SHIRTS »COMMENT

5

SFP

ELEVEN(SEMINISHUKEI)VS BLACKASS(M.N.M/MEDULLA) 『DUB CITY OF CURSE』 »COMMENT

6

UG KAWANAMI

UG KAWANAMI 『DROP SCENE』 »COMMENT

7

LVDS CAP

CARRE 『SONIC BOOM』 »COMMENT

8

ELEVEN(SEMINISHUKEI)VS BLACKASS(M.N.M/MEDULLA)

MEDULLA CAP »COMMENT

9

PAYBACKBOYS SWEAT

K-BOMB 『TRIPLE SIXXX!-OLIVE OIL REMIX-』 »COMMENT

10

Eternal B

Eternal B 7inch »COMMENT

[Techno] #3 by Metal - ele-king

1 Clouds / Timekeeper --Dave Aju Remix--- | Ramp Recording(UK)

 いやー、本当に、ぶっ飛びすぎ!......てか、笑えてくる。壮大な"エイリアン・ミュージック"に出会ってしまったのかもしれないな。黒光りするシンセが痛いくらいにまぶしいぜ。

 ハウスを借り物にブラック・ジャズの更新をはかるサンフランシスコの奇才――それがデイブ・アジュだ。ベルリンのマイマイやモントリオールのギヨーム・アンド・ザ・クーチュ・デュモンツのリリースで知られる〈サーカス・カンパニー〉を拠点にしているため、いわゆるモダン・ミニマル/ディープ・ハウスの文脈から語られることが多いプロデューサーだが、彼のポテンシャルはそんなものではない。あのマシュー・ハーバートが期待をよせるヴォイス・パフォーマーのひとりでもある。

 少し振り返ろう。2007年に〈サーカス・カンパニー〉からリリースされた「Love Allways」はアリス・コルトレーンに捧げられたものだった。ルチアーノのリミックスが収録された、2008年に〈サーカス・カンパニー〉からリリースされたシングル「Crazy Place」はフロアヒットした。同年にリリースされた自身のスキャットとヴォイス・サンプルのみで作られたアルバム『Open Wide』はビート・ポートの年間ベストのうちの1枚にも選ばれた。サン・ラー、セロ二アス・モンク、バニー・ウォーレル、カール・クレイグ、グリーン・ヴェルヴェット......これらは彼がリスペクトするアーティストのほんの一部だが、彼の曲には必ずと言っていいほどブラック・ジャズの意匠が散りばめられている。

 そんな才人が、〈ディープ・メディ〉などからサイケデリックなエレクトロニカ/ダブステップをリリースするヘルシンキのユニット、クラウズが2008年にイギリスの〈ランプ・レコーディング〉に残したトラックをハウスに再構築する。オリジナルはメランコリックなヴィブラホンに優しいトーンのアコーディオンが絡むヒップホップ調のトラックで、ラス・ジーによるリミックスは当時コード9やフライング・ロータスのプレイリストにもあがり、ダブスッテップの側からの支持も得ていた。

 原曲のアコーディオンとジャジーなフィーリングは生かされているものの、もはやオリジナルといってもよいほどの出来だ。冒頭から入るローファイでぎらついたシンセサイザーの音色はまるでシカゴのジャマール・モスか、あるいは初期のラリー・ハードを髣髴とさせる。単純で無機質なアジッド・ハウスかと思えばブレイクで突如モーダルなジャズに変化して、原曲で使われているアコーディオンの調べがゆったりと流れだす。構成、展開もドラマチックで面白い。加工されているためわかりづらいが、シンセのリフを良く聴いてみるとファラオ・サンダースとレオン・トーマスがモダン/フリー・ジャズの最重要レーベル〈インパルス〉に残した名曲"The Creator Has A Master Plan"のピアノが元ネタになっていることがわかる。この曲もまさにモダン・ミニマルのふりをしたブラック・ジャズというわけだ。彼はあらかじめクラブを体験してしまったがためにハウスをやっているアーティストであって、前の世代とは逆のプロセスを辿ってジャズに行き着いている。

2 Mirko Loko / Seventynine --Carl Craig&Ricard Villalobos Remix-- | Cadenza(Ger)

 DJワダの〈イグナイト〉でのアンビエント・セットを終え、天狗食堂で開かれていたDJサチホがオーガナイズする〈リリース・シット〉に駆けつけると、週末の朝に特有のとても良い空気が流れていた。DJはサチホ~スポーツ・コイデ~イナホ~リョウ・オブ・ザ・デックス・トラックスの面子でのローテーションだった。グルーヴがキープされたまま新旧のディープ・ハウスがたんたんと続く。朝の9時をしばらく過ぎると天狗食堂のイナホがロングミックスを聞かせる。足の運びが軽やかだ。スネアに引っかかりがあるが、スマートなミ二マル・ハウスがじょじょに子供の声と水の音、透明感のあるシンセとともに広がっていく。誰も声を上げず首を振りながらその音楽をきいていた。そのトラックここに挙げた。ミルコ・ロコのリカルド・ヴィラロヴォスによるリミックスである。

 レイジー・ファット・ピープルのメンバーとして〈プラネット・E〉からヒットを飛ばし、ソロでは現在のプログレッシヴ・ハウスのリーディング・レーベルであるロコ・ダイスの〈デソラ〉からも傑作を放った期待の新星ミルコ・ロコ。その彼のリミックスがルチアーノの〈カデンツァ〉からリリースされた。リミキサーは言わずとも知れたデトロイトのテクノ・ゴッド、カール・クレイグとベルリンのテクノ・ゴッド、リカルド・ヴィラロヴォスである。

 カール・クレイグのリミックスはプリミティヴな質感の力強いダンス・トラックで躍動感のあるパーカッションにローランドの名器JUNOの音色と思えるシンセが絡んで、全体がじょじょにビルドアップしていく。まるで音のなかに吸い込まれるようだ。美しく、しかも引きが強いトラックだ。彼が何枚かに1枚だけ見せる本気のトラックなのだろう。デリック・メイの名曲"To Be Or Not To Be"(ゴースト・イン・ザ・シェルのサントラに収録)にも近い感覚とでも言えよう。

 いっぽうリカルド・ヴィラロヴォスのリミックスはメランコリックで美しいアンビエント・ハウスだ。スティーヴ・ライヒのミニマリズムを彷彿とさせるような自然音と子供の声が螺旋を描いていく。リカルドらしい抜き差しとダブ処理も効果的だ。ジェームス・ホールデンによって解体されたプログレッシヴ・ハウスのドラマ性とスピリチュアリティはこの曲をきっかけに見事に復活を遂げるのではなかろうか。両面とも大事に使いわけることができる盤だ。

3 Badawi / El Topo | The Index(USA)

 エルサレム出身でニューヨーク在住のパレスチナ人パーカッショニスト、ラズ・メシナイが率いるバダウイのニュー・シングルを紹介しよう。ラズ・メシナイとは......その名前とバダウイ、サブ・ダブ、ベドウィンといった4つの名義を使い分け、DJスプーキーのホームである〈アスフォデル〉、ビル・ラズウェルのリリースでも知られる〈リオール〉、DJワリーが率いる〈アグリカルチャー〉等から数々の傑作を放ってきた男だ。ニューヨークのアンダーグラウンドを象徴するアーティストであり、ユダヤの政治と宗教をテーマにしたサウンドと彼の芸術、そしてその超絶的なパーカッションのテクニックは多方面で高い評価を得ている。最近ではクロノス・カルッテットやジョン・ゾーンとの競演も話題になった。

 今回は自身が立ち上げた〈ザ・インデックス〉からの第1弾である。昨年リリースされたコード9とのスプリットで見せたダブステップへのアプローチはさらなる進化を遂げ、"ElTopo"では抜けの良いタブラとばっつり出た低音が絶妙にマッチしたダブステップを展開している。そして"Dstryprfts"のリミックスではシャックルトンがブライアン・イーノのリミックスとはまた違うところで興味深いトラックを響かせる。〈パーロン〉からのリリースでみせたミニマルへのアプローチはさらに研ぎ澄まされ、キックとハット、メロディではなく飛び音として使われるシンセとノイズがかったアシッド・ベースがトランシーにうごめき、時折入るディレイがかかったシンバルがリスナーの意識を遠くに飛ばす。原曲からのサンプルとトースティンによるポエトリーが最小限にキープされたグルーヴのあいだでゆらめいている。僕もよく経験することだが、暗闇のなかで右も左もわからなくなったユーザーに襲い掛かる強烈なバッド・トリップである。

 リッチー・ホーティンが2003年にリリースした"Closer"をダブステップに変換したようでもある。アシッド・ハウスのオリジンであるフューチャーの"Acid Tracks"そしてその裏面に収録されている"Your Only Friend"にも共通するような独特のムードを持った曲でもある。まー、手短に言うとこの曲こそが最先端のミニマル・テクノであると僕は思う。

intervew with Breakage - ele-king

「ダブステップ聴いた?」って訊かれて、「いや、そこまでちゃんと聴いてないけど」って答えたけど彼女が「マーラがそのダブステップの重要人物のひとりなんだよ」って教えてくれたんだ「へぇー」って答えたら「へぇー、じゃなくてマーラって彼よ、マリブ、あなたたち学校一緒だったでしょ!」って言ってきたんだ。

 俺たちはハードコア・ミュージックの最新版を聴いている
 音楽がすべてだ
 俺も君たちも音楽が大好きなんだ
 だから君たちがここにいて、
 俺もかけるのが大好きだからここにいる
 君たちが来なかったら俺はプレイができない
 もっとも重要なのは音楽それ自体
 だからスピーチはここら辺までにする
 いま聴いてもらったのは、
 ジャマイカから来たいちばん熱いハードコアなダブプレート
 ここからテンポとスタイルを変えていこう
 ひと晩通して、一緒に曲を変えて、聴いて、
 楽しもう David Rodigan"Hardcore Music"

 『ファウンデーション』は爆弾だ。この爆弾を東京のあらゆる場所にこっそり仕掛けてやりたい。そしていっせいに爆発させてやろう。情け容赦なく、ロンドンの貧民街でシェイクされ、爆発し続けるハードコアのあらゆる要素が含まれているこの爆弾を。激しい地響きが街をひっくりかえし、火傷しそうなほど熱いコンクリートが最高のダンスフロアとなるだろう。

 ブレイキッジのセカンド・アルバム『ファウンデーション』を聴いていると、この時代のUKのダンス・カルチャーの活気というものが伝わってくる。スピーカーから聴こえる音は体内に注入され、そして身体を熱くする。キングストン経由のベース・サウンド、ダブ、ジャングル、グライム、ダンスホール、あるいはハーフ・ステップや2ステップやダブステップ......まるでビートの見本市のようなこのアルバムには、素晴らしいゲストたちも参加している。大御所ルーツ・マヌーヴァをはじめ、ダブステップのスター、スクリームとキャスパ、グライムのMCのニューアム・ジェネラルズ、昨年メジャー・デビューした女性シンガーのザリフ、そしてブリアル(!)。

 リリース元は、グライムに多大な影響を与えたイノヴェイター、シャイ・エフェックスのレーベル〈デジタル・サウンドボーイ〉。アルバムの冒頭ではUKでレゲエをかけ続けている伝説的なラジオDJ、デヴィッド・ロディガンがスピーチをしている。「俺たちはハードコア・ミュージックの最新版を聴いている......」

『Foundation』はこれまでのあなたの10年のキャリアの集大成的なアルバムなのでしょうか?  

 完全にそうだよ。いままで伝えようとしてたこともすべてこのアルバムに凝縮してるね。過去、現在、未来全部含めて。曲によってははじめた当時の音のものもあれば、いま向かってる方向の音のものもあるから、そうだね、集大成だよ。

ジャングルもダブステップもグライムも混ざっているし、ダブやガラージもある。MCも出てくるし、ダブステップのプロデューサーとの共作もある。でも、最終的にはジャングル色が強いアルバムですよね。シャイ・エフェックス(Shy FX)の〈Digital Soundboy Recording〉からのリリースだからそうなったんでしょうか? それともやはりジャングルがあなたの帰る家だという認識なんでしょうか?

 両方だね。俺もシャイも、テンポとかbpmとかそういうくくりは関係なく、基本的にはジャングルを聴くんだよ。ジャングルのテンポの曲じゃなくてもその曲のバイブズの本質にジャングルがあると思ったら聴く。暴力的な要素とか感情、ディープなだけじゃなくて人を動かす力がないと駄目なんだ。基本的にはジャングルしか作れないんだよ。自分のキャリアのなかでもジャングルしか作ろうとしてないよ。俺のドラムンベースの曲やアルバムのなかでジャングルを感じてくれたのは嬉しいよ!

"Hard"では、ジャマイカ起源のベース音楽の変遷について喋っていますよね。スタイルは違っても同じだと。これはあなたの主張でもあるんですか? つまり、ブレイキッジの音楽もジャマイカ起源のベース音楽の現在形であるという。

 そうだね、俺はダブにはスゴく影響されてるからね。そして"Hard"における(デヴィッド・)ロディガンのあのスピーチを聴いたとき、プロデューサーとしてもそうだけど、DJとしても俺の姿勢を反映してると思った。デカい派手なステージ・ショーをやるわけでもないし、つねに腕を振り回して踊りまくるわけでもなく、良い曲をかけるだけなんだ。自分が良い音楽だと思うものをかけるためにその場に居るんだ。俺が見せたり語るより音楽に語らせたほうが良いんだよ。「俺たちはハードコア・ミュージックの最新版を聴いている。すべてが音楽だからだ。君たちは音楽が大好きで俺も大好きなんだ。君たちは音楽を聴きに来て、俺はかけるのが大好きだからここに来た。君たちがいなければ俺はかけられない......」、あのスピーチ全部が本当その通りだと思うんだ。俺もロディガンを聴いて育ったからね。そして彼の声を使うんだったら意味あること言ってるフレーズを使いたかったんだ。

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あなたの歴史を振り返ってもらいたいんですけど、生まれは?

 バークシャー州のスラウっていう町で生まれたんだ。5~6歳ぐらいのときにバッキンガム州のバッキンガムに引っ越した。そこで乳兄弟が来て、彼がダンス・ミュージックについて教えてくれたよ。遠い昔さ、プロディジーの『エクスペリエンス』が出るちょっと前とか。91年、92年で10歳ぐらいのときかな。その当時にジャングルがはじまり出してて、その頃にジャングル聴き出したんだ。それが俺の育ちかな。

そこからどうやってジャングルのシーンと結びついたのですか?

 多くの人も一緒だと思うけど、不思議にもいちばん最初に聴いたジャングルの曲がシャイの"Original Nuttah"だったんだ。当時学校に月曜日に行って、誰と話してもあの曲が話題だったよ。引っ越したりしてたからそのときは俺知らなくて、新しい家に入れる前にしばらくお姉ちゃんの家に泊まってたんだけど、彼女の家でMTVか何かで流れてて......。学校でみんなが歌ってたからすぐわかって「これがみんなが話してた曲なんだ」と思って、で、聴いたら衝撃受けたね。ハードコアを聴いたりして似た曲は聴いたことはあったけど、あれはまったく新しく聴こえたんだ。ハードコアと同じ基礎だったけどレゲエ色が強くて、やられたね。あの後どういう音楽が好きかはっきりわかったね。
 実は昔ギターを弾いてて、その数年後、14歳ぐらいのときかな、ギターをさらに勉強するために音楽芸術学校にいったんだ。そこではいろいろ違う音楽をやらされたり、楽譜を読めるようになる勉強とか、他の楽器の基礎を学んだりしてたんだけど、そのなかでパソコンの使い方の授業もあったんだ。ある日その授業でジャングルの作り方がわかったんだ。"Original Nuttah"とか"Terrorist"がどうやって作られたのか理解できたよ。ああいう曲を作りたかったら、このパソコンの使い方を勉強しないといけない、と思ったんだ。家には4トラック、キーボード、ドラムマシンを持っていて、それで作ろうとしてたんだけどなかなかうまくいかなくて、彼らが使ってるドラムが本物のドラムを使ってるのかすらわからなくて、全部ドラムマシンで叩いてるんだと思ってたんだ。すごいドラムマシンだな!って思ってたんだ(笑)。それでCubaseとそこにあったサウンド・モジュールを完璧に覚えて、その学校の先生がびっくりするぐらい使えるようになったよ。その学校にはスタジオもあったんだけど、年齢制限があって入れなかった。それでもその先生がサンプラーをパクって来てくれて、別室に学校が使ってないパソコンとサンプラーを設置してくれて他の生徒が使えないようにしてくれたんだ。だから毎日1時間ぐらい早く行って曲作って、授業行って、昼飯のときもそこで曲作って、授業終わった後も先生が帰るまでずっと曲作ってたよ。月曜日から金曜日まで毎日ね。そして土日はほぼ毎週のように従兄弟の家に行って、彼が持ってたトラッカーのソフト、FastTracker 2、をいじってたんだ。そのうち自分のパソコンも買ってひたすら作るようになった。まだ全部がどうやって形になるか学んでる最中だったけど、最初のリリースは17歳ぐらいのときだった。結局その学校退学になったけどね(笑)。で、その次の専門学校のコースも落ちたんだけど(笑)。だからいま音楽で食えてることがおかしく思うんだよね。もっと面白いのが、来月その専門学校に講演者として招かれてるんだ(笑)! 最初呼ばれた時に「元学生としてぜひ話をしに来て欲しい」って言われて「元学生って、自分らの学校は俺を落としたんだぞ!」って言ったらびっくりしててさ(笑)。

なははは。憧れのDJやプロデューサーはいましたか?

 14歳のときはみんなに憧れてたよ。買ったテープ全部最初から最後まで聴いて、全曲がヤバく聴こえて......。この曲はまあまあだけどリスペクトできる曲だな、とかそういうもんでもなかったんだ。そこまでぱっとしない曲でもこのDJがかけてる、ということは何かヤバい要素があるに違いない、みたいな感じだったんだ。そういう要素を見つけるのも楽しかったしね。ひとつあの学校で学んだのは、曲や音楽のすべての要素を聴く方法だね。聴いてどうそれが形になったのか、どういう流れでそうなったのか考える力とそれに必要な耳だよね。
 でも......強いて言えばランドール、ハイプ、アンディ・C......、当時買ってたテープパックで必ず参加してたDJたちだね。誰が曲を作ってたかはそこまで重要じゃなくて、どのDJがかけてるかが大事だったんだ。BAILEYも影響受けたね。ウチの近所出身だったのもあって、ホームタウン・キング、っていうか俺の育ったエリアのヒーローだったよ。近い存在だったからBAILEYがそこまで出来るんだったら俺でも出来る、と思わせる希望をくれたね。

UKガラージやジャングルの文化は、90年代末やゼロ年代初頭に、ロンドンの労働者階級の文化としてどんどん大きくなっていったんでしょうね。あなたの音楽のなかにはやはり労働者階級のガッツのようなものを強く感じます。

 そういうエネルギーの役割は大きいと思うよ。2~3年前まで全然気付かなかったけどね。階級によって音楽に求める物が違うように感じたんだ。最初に音楽を作り出すときの気持ちだったり姿勢が階級によって違うと思うんだよね。俺みたいな労働者階級は、経済状況や育ちが決して良かったわけではなかったけど、音楽を作ってるときがいちばん楽しかった。幸いなことにいま現在音楽で食えてるけど、音楽を作り続けるためにどこかで普通に就職するのも全然苦じゃないよ。最初から音楽で儲かるなんて考えたこともなかったよ。多少無知な部分もあるかもしれないけど、自分のスタイルを変える気はいっさいないんだ。金だけじゃないんだ。だから、こうしたほうが良い、ああしたほうが良い、って言われても聞いてらんないよ。
 でも中流/上流階級の人だと、第一に服装が全然違うよな。もっとビジネスライクっていうか。音楽が好きだからビジネスにしてるから別に悪いってわけじゃないけど、中流/上流階級の人はもっとビジネスがメインだよね。それは音楽自体にも反映されると思うんだ。売れるように作ることがあるんじゃないかな。別にこの人がそう、っていうわけじゃないけど、全体的にそういうもんだと思う。欲や原動力が違うだけだと思うけどね。もちろん多くの人の原動力は女だったりもするけどね(笑)。音楽が好き、女が好き、じゃあ何の仕事しようかな、ってなるとやっぱり音楽になるからね(笑)!

なははは。2001年に〈Reinforced Records〉からデビューしますが、どういう経緯だったのか当時の話を教えてください。

 専門学校に通ってるときに同級生でエイドリアンていう奴がいてさ、ミグエルっていう友だちもいて、彼は〈Reinforced〉からBug Nyne名義で出してて、俺とエイドリアンの曲や俺ソロの曲も聴いて気に入ってくれて、で、「じゃあ、〈Reinforced〉に話しようか」ってなった。最初は別そういうつもりで作ったわけじゃなかったから断ったんだけど、彼の家にちゃんと曲を聴くために呼ばれて、で、行ったら彼に「あと2駅行ったらドリス・ヒル駅で〈Reinforced〉はそこにあるから行こうよ」って言われたんだ。一瞬「マジか!」って思ったけど、とりあえずそこに行ってなか入ったらいちばん最初に会った人がアルファ・オメガだったんだ。「うぉー!」って思ったね。で、奥のスタジオに行ったら4ヒーローのマーク・マックがいて、正直固まっちゃったよ(笑)! 彼は全然普通の人だったけど俺のなかではダンス・ミュージックのプロデューサーのドンだったからさ、もう緊張しちゃって全然話せなかったんだよね。
 そこで彼にMDから再生した曲を聴かせたんだけど、聴いた後にすぐ「いいね、欲しい」って言ったんだ。エイドリアンは「よっしゃ!」って感じだったけど、俺はなんて言ったら良いかわからなかったんだ(笑)。外に出たときにフライトに電話して、「いまスゴいことが起きたよ!」って伝えて、そこで〈Reinforced〉から曲が出る、って実感したね。最初はSolar Motion名義で曲を出して、そのあいだ自分で作った曲も聴かせてたら俺のソロのEPも出してくれて......契約するのを目的に曲を人に聴かせることはなかったんだけど、本当に運良く出してもらえることになったんだ。ガツガツ営業してリリースができたわけではなく、たまたまそういう展開になったから、本当にラッキーだったよ。
 でも、すべてがラッキーだったわけでもないんだ。〈Reinforced〉から出てた『Enforcers』っていうコンピのシリーズがあって、それにはいろんなプロデューサーがリミックスで参加してたんだけど、何もリミックスのルールとかわかってなくて勝手にドック・スコットのリミックスを作ったんだ。それをマークに聴かせたらすごく反応よかったから、勝手にBaileyとか他のDJに渡しまくったんだ。クラブでかかり出したら、みんな「こいつは誰だ! 勝手にリミックスしてブートで出すなんてけしからん!」っていう反応がスゴくて、その曲を誰がやったかみんなが探してる時期があったんだ。俺はそういうリミックスやった後の作業とか、許可とか、まるで知らなかったから追われる立場になっちゃったんだ(笑)。結局解決して大丈夫だったけど。まだ新人で誰も俺の顔がわからなかったのも良かったけどね(笑)!

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ブレイキッジというネーミングについて教えてください。

 EPを完成させた後だったんだけど、同じ〈Reinforced〉から出してるEspionageっていう友だちと〈Reinforced〉に行く途中に彼に名前の相談をしたんだ。いま当時のDJの名前は言わないけど(笑)、まあ、とにかく気に入ってなくて、そのEPを出すときの名前をどうしよう、って相談したんだ。アートワークとかクレジットとか決めてるときで、けっこう急ぎで名前を決めなきゃいけなかったんだ。そうしたら彼が「いまいちばん番好きな曲は何だ?」って訊いて来て、「Noise Factoryの"Breakage 4(I'll Bring You The Future)"だ」って答えたんだ。そうしたら彼が「それ使ったら良いじゃん、Breakage」と言って、もっと良い名前を考えるまで「ま、いいか」と思ってそれにしたんだ。10年経ってまだもっと良い名前が思いつかないけどね(笑)。もう遅いよね(笑)。2分で決まったよ。

2006年には〈プラネット・ミュー〉から12インチを出します。ダブステップと深く関わるようになるのはこの頃からですか?

 あの当時ダブステップの話を良く聞いてたのは覚えてるよ。まだちょっとしか聴いたことなかったけど。当時アメリカに住んでいたんだ。俺の顔を忘れられないように、数ヶ月に1回はロンドンに帰ってたんだけど、ロンドンに帰っているときに友だちに「ダブステップ聴いた?」って訊かれて、「いや、そこまでちゃんと聴いてないけど」って答えたけど彼女が「マーラがそのダブステップの重要人物のひとりなんだよ」って教えてくれたんだ「へぇー」って答えたら「へぇー、じゃなくてマーラって彼よ、マリブ、あなたたち学校一緒だったでしょ!」って言ってきたんだ。住んでた場所がクロイドンのすぐ近くだったから学校も一緒で、ハチャ(Hatcha)も近くのレコード屋で働いてる頃から知ってて。とにかく彼らがみんないまダブステップをやってるって聞いてちょっとリサーチをしたんだ。そうしたら速攻ハマったね。テンポだけじゃなくて、曲の構成のなかの空間、ダブからの影響......とかが好きで、ちょうど当時作ってたドラムンベースもそういうハーフタイムのモノもあったりしたんだ。俺が音楽的に向かってる方向と一緒だ、って思ったんだ。当時ダブステップを作る、じゃなくてこんな偶然もあるんだ、って思ったぐらいだったよ。
 クロイドンがすごく誇りに思えたのも覚えてるよ。面白かったのが、ダブステップをやってる奴らはほとんど昔から知ってる奴らだった、っていう部分もあったね。ローファーは同じ近所のパブに行ってたし、そのパブでも働いてたし、MCのポークス(Pokes)は近くでやってたドラムンベースのイヴェントでMCやってたし、ベンガとスクリームはレコード屋のビッグアップルにしょっちゅういて、俺も良く弟を連れてったりしてたし......そういう小さい頃の知り合いがたくさんいて、イヴェントに行くと「あれ? 知ってるよね?」みたいな人がほとんどなんだよ。そこからイヴェントに顔出すようになったり、LAでもダブステップのイヴェントがあったらチェックしに行って、新しい曲を買ったり、ネットでダブステップのフォーラム行ってチェックしたりしてて......そのうち「自分も作ろう」っていう気持ちになっていちばん最初に作った曲をマーラに渡したら、「これアナログ切らして」って言われたんだ。初めて作ってみた曲でそうなるとは思ってなかったからびっくりしたよ。結局残念ながら出なかったんだけど、それで俺のなかではダブステップの存在がスゴく大きくなって、そればっか作り出したんだ。すごく楽に作れたのもあったんだ。頭のなかのアイディアが楽にダブステップのテンポだと実現できたんだ。2006年に出したファースト・アルバムの曲も頭のなかはそういうアイディアがあるときに作ったから、いま聴くとダブステップからそんなかけ離れてないんだ。

実際『Foundation』には、ブリアル、スクリーム、キャスパといったダブステップのスターたちが参加していますが、彼らとはいま言ってたように昔からの友だちなんですね?

 いや、昔はみんなと仲良い友だちっていうわけではなかったけどお互い同じエリアで活動しててお互いの顔を知ってる程度だった。いまとなればみんな仲良いよ、長いあいだ知ってる仲だしね。

とくにブリアルみたいな人が参加しているのに驚きました。

 ブリアルに関しては一緒に曲を作った後まで会わなかったけどね。会ったら実は住んでるのが結構近くて、ウチのすぐ近くにレコード屋があって実は彼は昔そこで働いてたんだ。「だからお互い顔がわかるんだ」って感じだったよ。同じエリア出身だから世間は狭いよ。不思議な感じでもあるよ(笑)。

ルーツ・マヌーヴァがラップするグライミーな"Run Em Out"も素晴らしい1曲で、これは昨年〈Digital Soundboy Recording〉からリリースされた曲ですが、UKを代表するラッパーとのコラボレーションについて話してください!

 怖かったよ(笑)。曲のアイディアを作った時に、狂ったトラックになったな、って思って、誰を乗せたら面白いかな、って考え出したんだ。そこで「ルーツ・マヌーヴァの曲っぽいな」って思って、ルーツに乗せてもらうことは可能なのかな、って思ったんだ。とりあえずフィーチャリングで参加して欲しいアーティスト達のリストに載せよう、と思ったんだ。そして最初の段階のループをシャイに持って行って、「ルーツのMCが聞こえてこないかな?」って訊いたら「そうだね、このループのアイディアをもっと広げて完成させないと駄目だけどバイブズはぴったりだね」って答えたんだ。だからルーツのMCが乗ることを想像して曲を作り込んだんだ。グルーブとかノリを変えたわけじゃなく、プロデューサー的な視点からのトラックの作り方を意識したんだ。そして彼に送ったんだけど、数回送らなきゃいけなくて、メールで送ってもリンクの期限切れたり、CD何枚か送ったりしたんだけど、やっと返事くれて、「デモ送るよ」って言ってきたんだ。ルーツが俺にデモを送ってくれるのも嬉しかったけど、ルーツ・マヌーヴァなんだからデモなんか送る必要ないじゃん、とも思ったね(笑)。デモが届いたら予想通り完璧だったよ。


UKが生んだ最高のラッパー、ルーツ・マヌーヴァと一緒に。

  理想ではルーツがサウンドシステム文化に関して何か歌ってくれたら良いと思ってたけど、ルーツだったら何歌ってくれてもありがたいとも思ってたんだ。そしてデモが届いて1バース目、2バース目を聴いたらサウンドシステムのテーマだったから完全に求めてたものそのまんまだったんだ。そこでレコーディングに進めよう、って話になったときにすごくエキサイトして「ルーツ・マヌーヴァとできるんだ!」って言う気分でいたのが当日になったら「本当にやるんだ」っていう緊張感みたいなものを感じて、実際スタジオで一緒に作業してて「いま書いてる歌詞を書き終わったら彼はヴォーカルブースに立って、俺はルーツ・マヌーヴァに指示しなきゃいけないんだ」っていう緊張感を感じたよ(笑)。それ以前にスタジオでちゃんとヴォーカルを録ったことなかったけど運良くシャイもいて、勉強しつつ初めてのレコーディングだったから余計緊張したんだよね。やり出したら慣れていったけど、何より彼が俺のトラックで歌ってくれたことが嬉しかったよ。

何故こうもUKではダンス・カルチャーが途絶えることなく、エキサイティングな状態を保ち続けているのでしょう?

 若い子にも浸透してるのもひとつの要素だと思うよ。例えば先週の月曜日に初めて18歳以下のパーティでプレイしたんだけどすごかったよ。〈Ministry of Sound〉が16~18歳で満員だったんだ。そういうイヴェントや動きもこの文化が生き続けるためにはすごく大事だと思うよ。その逆で、多少歳取ってても毎週土日遊んで、水曜日のイヴェントにも遊びに行ったりしてる人も大勢いるからね。ジャンルも関係ないと思う。ハウス、トランス、ダブステップ、ドラムンベース、いろいろあるけど、例えばヨーロッパではまだそこまで浸透してないけど、UKファンキーはすごく盛り上がってるからね! ここからはつねに新しいものが生まれてるんだよ。新しいジャンルだったり、新しい解釈だったり、そういう姿勢がクラブ・カルチャーの健康を維持してると思う。あとは単純にイギリス人は遊びにいくのが好き、っていうことだと思うよ(笑)。みんな出かけて遊ぶのが好きなんだよ。平日働いて、土日が来たらみんな出掛けて遊ぶんだよ、土日通して。

ジンクがやっているクラック・ハウスについてはどんな印象ですか?

 大好きだよ。俺はけっこう長いあいだハウスが好きだし、彼がやってるハウスもすごく興味深いと思う。ほとんどジャンルの名前とか違いとかはわからないけどね。ハウス内のスタイルの違いとかもそんなにわからないけどね。ジンクのDJは実は数ヶ月前に初めて聴いたんだけど、最高だったよ。Big up Zinc!  彼は伝説だよ。自分のセットでも彼のそのハウスの曲かけてるよ。好きだったらかけないのもおかしいしね。

いまあなたがもっとも共感しているDJは? 

 やっぱりシャイ・エフェックスだね。一緒にDJすることも多いし、音的にもお互い共感できる要素がたくさんあるんだ。例えばダブステップもかけるし、ドラムンベースもかけるし、ハウスもかけるし。気分によってはレゲエもかけるし、彼も同じスタイルなんだ。彼と一緒にプレイすることによってイヴェントとかその日のテーマとは関係なく幅広くプレイできることが分かったのもあるし。俺もシャイも、どういうスタイルをかけるか関係なく、自分たちが良い音楽だと思ってる物をかけるし、それ自体が俺たちのプレイ・スタイルだっていうのをわかってDJしてるんだ。その延長でプロダクション面もジャンルやスタイルは関係なくて、自分が良いと思ってる音を詰め込んだのがアルバムなんだ。

〈Naked Lunch〉から出したシングルでは、より実験的なアプローチをしていましたが、ああいうことは今後もやっていくんですか? あるいは、もっとよりダブステップよりのアルバムを作る予定はありますか?

 あれはとくに深く考えずに作った曲だよ。夜遅く作った曲だったから単純に"Late Night"っていうタイトルにしたんだ。一晩のセッションでできた曲なんだ。夜通してワイン一本飲んで出来た曲なんだ(笑)。次のアルバムに関しては現段階では全然わからないよ。前もって計画し過ぎるのも良くないと思うしね。「2012年に次のアルバムが出ます。その内容はダブステップ×カントリー×ハッピー・ハードコアになります」って言ってもおかしいからね(笑)。そういうアルバムを作れる保証もできないしね。でもいまこう言って笑ってるけど、2年後に実際やってる可能性もあるからね! 全然予想はできないよ。いつになるかもわからないよ。1枚目のアルバムは1年かかって、今回の2枚目は2年かかったから、次は4年かかるかもね(笑)! 自分の感性が思うままに進むだけだと思ってるよ。

 昨年末スクリームが発表した「Burning Up」を聴くと、あるいはゾンビーの『Where Were U In '92?』を聴くと、ロンドンのダブステッパーたちにとっての帰る家はジャングルなんだとあらためて認識する。ゾンビーにいたっては自らをジャングリストと名乗り、ダブステッパーと呼ばれることを否定する始末だ。実際の話、その境界線もいまでは曖昧なものになりつつもある。日本の〈ドラムンベース・セッション〉がまったくそうであるように、ジャングルとダブステップは活発に交流を続けているからだ(それこそ大物ではチェイス&ステイタス、あるいはネロなんかもそうだ)。

 いずれにしても、街を突き抜けるような激しいビートを身体に注入したい――そんな衝動に駆られたときは、ロンドンのハードコアにチューニングすればいい。そう、ハードコア、イギリス人に通じるように言うなら「ハーコー」......ジャングルという呼称で知られるダンス・ミュージックのことを、彼らはそう呼んでいる。20年も前からずっと、変わっちゃいない。

   なお、ブレイキッジはマッシヴ・アタック『ヘリゴランド』のリミックス・アルバムに参加したとのこと。きっと『ヘリゴランド』に生気を与えたのは、ここ数年のUKのジャングル/ダブステップのシーンなのだろう。

CHART by JET SET 2010.03.03 - ele-king

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1

COBBLESTONE JAZZ

COBBLESTONE JAZZ CHANCE EP »COMMENT GET MUSIC
最強のフリースタイル・テクノ・ジャムバンド!!Matthew Jonson、Tyger DhulaそしてDanuel Tateトリオに加え、今回よりThe MoleのColin de la Planteも参加しカルテットとなった彼らの最新作!!

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DIRTY JESUS

DIRTY JESUS DON'T FUCK WITH MY SHIT (BLACK COCK REMIXES) »COMMENT GET MUSIC
問答無用のマスト・バイ・アイテムに仕上げてきたBlack Cockリミクシーズ!!Gerry Rooney & HarveyのBlack Cockコンビが両面を分け合ったゴージャスなリミックス企画。それにしてもHarveyの飛ばしっぷりが危険極まりなし!!

3

 NUMBERNIN6 / STENCHMAN

NUMBERNIN6 / STENCHMAN BREATHE / LIL' SOMTHIN' 4 YA »COMMENT GET MUSIC
☆大推薦☆Ruskoもプレイし話題を集めたProdigyモロ使いボムがヴァイナル化!!ご存知Prodigy'96年リリースの特大アンセム"Breathe"をまんまダブステップ化してしまったウルトラ・ボムA1を搭載!!即完売必至です。急いでお求めください!!

4

 ANDREW CEDERMARK / FAMILY PORTRAIT

ANDREW CEDERMARK / FAMILY PORTRAIT SPRIT »COMMENT GET MUSIC
Real Estate好きは絶対泣きます。Underwater Peoplesからの素晴らしすぎスプリット!!特大スイセン盤★Real EstateをリリースしたUnderwater Peoplesからの4枚目。Real Estate~Ducktails~Julian Lynchなロウファイ・ビーチ・ポップ・スプリット。完璧です!!

5

HOTEL MEXICO

HOTEL MEXICO 3 SONGS E.P. »COMMENT GET MUSIC
Second Royal秘蔵中の秘蔵★ホテル・メキシコが遂にデビューです!!初回入荷分のみオリジナル缶バッヂ付き。今年1月にレーベル・コンピ最新作、2月にTurntable Films、4月にはSatoru Ono、5月にはHalfbyと過去最高のリリースが続き、2010年もっとも勢いづくSecond Royal。遂に噂の新人さんが超限定カセット・シングルでデビュー!!

6

STRONG ARM STEADY

STRONG ARM STEADY BEST OF TIMES »COMMENT GET MUSIC
Madlibとのジョイント作"Stony Jackson"からのシングルがついに!Phonte Colemanとの"Best Of Times"と、U-N-Iとの"Follow Me Now"のナイス・カップリング!特に、前者はMadlibとのジョイントでしか生まれ得なかったであろうソウルフルな仕上がりで、作中でも目立ってました!!

7

PETER VAN HOESEN

PETER VAN HOESEN ENTROPIC MINUS SIX »COMMENT GET MUSIC
相変わらずの攻めっぷりに惚れます。Time To Express新作です!!引き続きハード・テクノな鳴らしの新鋭ペルジャン"Peter Van Hoesen"が控えるアルバム・リリースからの先行カットをドロップ!!コレ聴いたらアルバム非常に楽しみになりますよ~

8

JOHN DALY

JOHN DALY MELTDOWN »COMMENT GET MUSIC
ohn Dalyがニュー・レーベル・ロンチ!!アイルランドの鬼才が自身のレーベルをフロア・ロックのドープ・トラックで始動!!ディープなアシッド攻めの猛攻に正しくメルトダウン必至のマスト盤!!

9

CARDOPUSHER

CARDOPUSHER SCHEMATIC BLOCKS »COMMENT GET MUSIC
Joy OrbisonやIkonikaファンにもお薦めの透明感溢れるアーバン・ステップ傑作!!HyperdubやLo Dubsなどからのリリースでお馴染み、ブレイクコア上がりのドレッド・ダブステッパーCardopusherによる洗練の1枚です~!!

10

COSMIN TRG

COSMIN TRG NOW YOU KNOW EP »COMMENT GET MUSIC
UKファンキー以降のカラフル&キュートな新型UKガラージュ傑作Wパック!!Hotflushなどからのリリースでもお馴染み、リミキサーとしても大人気のルーマニア出身ダブステッパーTRGが、名前をちょっと伸ばして老舗Tempaから初登場リリース!!

Various - ele-king

 明るい未来にツバを吐く男として知られる田中宗一郎はゼロ年代の重要項目の5本のうちのひとつにLCDサウンドシステムを選んでいたが、ジェイムス・マーフィのコンセプトにはポスト・パンク期におけるニューヨークのディスコ・カルチャー、通称ミュータント・ディスコがあったことは間違いない。70年代から80年代にかけてのニューヨークの創造的な不協和音めいたシーンの盛り上がりについては、長いあいだ気にはなっていた。だいたい......〈パラダイス・ガラージ〉がある一方で〈CBGB〉があり、ロフト・ジャズのシーンがある一方で〈キッチン〉のシーンがある。ディスコ、パンク、前衛、ジャズ、ミニマルとドローン、そしてサルサ......これらがマンハッタン島内部で交錯していたのが70年代のニューヨークだった。それは戦後の好景気が崩壊し、白人の中産階級が郊外逃亡を加速させ、アフリカ系やラテン系などの移民であふれ、そして商業施設が衰退した時代の産物でもあった。カネのないアーティストや音楽家などは、産業施設としては使い物にならなくなった天井の高い(しかも家賃が安い)ロフトに住むようになると、アメリカ中からも似た者たちが集まるようになった。むしろボロボロの都市だったからこそ、そこには移民もゲイも、貧しいアーティストも暮らしていけたのである――と、ティム・ローレンスはそんなようなことを綴っている。

 そうした文化的な猥雑性の高まりのなかで、ディスコは冒険心に富んだ異端児たちの使い勝手のよろしいフラスコとなって、まるで小学生が理科の授業を楽しむように、そのなかにいろんなものを放り込んでは掻き混ぜたのだった。ただしそれは、素人が意味もなくやったわけではない。音楽のスキルを持った連中が、そう、子供のように無邪気に遊んだのだ。それが今日で言うところの"レフトフィールド・ディスコ""ディスコ・ノット・ディスコ"、そして"ミュータント・ディスコ"と呼ばれる一群である。

 こうした急進的なディスコの遺産をこの10年のあいだ蘇らせたのは、ロンドンの〈ストラット〉レーベルが2000年に仕掛けた『ディスコ・ノット・ディスコ』シリーズなるコンピレーションだ。これを契機にいっきに再評価(というかようやっと評価)の機運が加速したのが、かのアーサー・ラッセルである。翌年にはシリーズの第二弾がリリースされているけれど、そこにはカンやイエローがアレキサンダー・ロボトニクスやザ・クラッシュとともに収録され、その後の〈DFA〉的な折衷主義の青写真といえる内容となっている。当時は異端視された"レフトフィールド・ディスコ"だが、現代の耳で聴けばエクレクティックなこちらのほうがソウルフルなオリジナル・ディスコよりむしろ親しみやすく感じるのである。

 このところ〈P・ヴァイン〉から〈ZE Records〉のバックカタログが再発されている。Z=ジルカとE=エステバーンによる〈ZE〉は、広くはジェイムス・チャンスやザ・コントーションズなどノーウェイヴで知られている。が、他方でレーベルはレフトフィールド・ディスコとも交錯していた。ありていに言えば、〈ZE〉はパンクとディスコを繋げたレーベルである。

 『ディスコ・ノット・ディスコ』の第一弾にはウォズ(ノット・ウォズ)のクラシック"ホィール・ミー・アウト"が収録されていたが、あたかもこのチャンスを逃すまいと、〈ZE〉は2002年に再活動をはじめ、2003年には自らも『ミュータント・ディスコ』と名乗ったコンピレーション(CD2枚組)を発売している。〈Pヴァイン〉からの再発では、すでに『Vol.1』と『vol.2』がリリースされ、そして最近は『Vol.3』も発売された。『Vol.1』と『vol.2』は......実は2枚組で発売された2003年の『ミュータント・ディスコ』の評判があまりにも良かったので、レーベルが2005年に2枚に分けてさらに再リリースしたものだと思われる。この2枚には、キッド・クレオール&ザ・ココナッツやウォズ(ノット・ウォズ)をはじめ、ガール・ディスコの先駆けとなったリジー・メルシエ・デクルーやクリスティーナ(......そしてマニアが喜ぶであろうオーラル・エキサイターズ)といったレーベルの顔役たちのフロア・ヒット曲が収録されているわけだが、結局のところ――良い悪い好き嫌いは抜きにして――ジェイムス・チャンス関連のニヒリズムよりもエクレクティックなこちらを掘ったほうが現代的だったのだ。だいたいレフトフィールド・ディスコにおける最大のヒット・メイカーと言えばトーキング・ヘッズであり、ここ数年のシーンの動向を見ていればデヴィッド・バーンとリディア・ランチとではどちらが必要とされているのかは問うまでもないだろう。

 『Vol.1』と『vol.2』は捨て曲なしの好コンピレーションだったが、今回発売された『Vol.3』も前2作に劣らぬ良い内容だ。なによりアルバムの最後にスーサイドの"ドリーム・ベイビー・ドリーム"が収録されているだけで価値があるってものだ。石野卓球から中原昌也、はてやブルース・スプリングスティーンまでもが愛する"ドリーム・ベイビー・ドリーム"は、深い闇のなかで錯乱するニューヨーク・アンダーグラウンドにおいて宝石のように輝けるトランス・アート・パンクの名曲である。また、アラン・ヴェガ(スーサイドのヴォーカリスト)の"アウトロー"のオーガスト・ダーネル(キッド・クレオール&ザ・ココナッツ)によるリミックス・ヴァージョンもある。これがまたロカビリーとディスコの煌びやかな融合となっている。

 オーラル・エキサイターズとボブ・ブランクによる"ラ・マラディ・ダムール"の退廃的なガール・ディスコも魅力的だ。マニアックなところではデトロイト・テクノのオリジナル世代からリスペクトされている先駆者ケン・コリアーとウォズ(ノット・ウォズ)とのコラボ、スウィート・ピア・アトキンスの"ダンス・オア・ダイ"もある。また、キッド・クレオール&ザ・ココナッツの"サムシング・ロング・イン・パラダイス"のラリー・レヴァンによるリミックス・ヴァージョンもある(それほど褒められた出来とは思えないが......)。レーベルのピークが過ぎた1983年以降に発売されたトラックが何曲か入っているけれど、ロン・ロジャースの"ノーティ・ボーイ"(1982年)や"ヤーヤ"(1983年)、ないしはコーティ・ムンディの"シー・ヘイ"(1984年)のような当時を物語るディスコとヒップホップのふたつからの影響を反映した曲もまた面白い。とはいえ、下手くそな日本語ラップをフィーチャーしたデイジー・チェインの"ノー・タイム・トゥ・ストップ・ビリーヴ・イン・ラヴ"は......ちと恥ずかしい。

Martyn - ele-king

 マーティンのMySpaceを見ると在りし日のヨハン・クライフ(70年代、世界を虜にしたオランダの天才フットボーラー)の映像が流れる。昨年の素晴らしいアルバム『グレイト・レングス』に収録された"ブリリアント・オレンジ"のデトロイティッシュ・テクノ・ダブステップに合わせて、クライフは長い足を使った華麗なフェイントで相手をかわし、華麗なドリブルで素早くペナルティ・エリアに接近して、そしてゴールを狙う。断っておくが、アヤックス時代のクライフとオランダ代表でのクライフの映像だ、バルセロナ時代も(当たり前だが)フェイエノールト時代もない......と、そんなマーティンだが、いまはアメリカのワシントンに移住した......という話だ。

 ハドソン・モホークの"ジョイ・ファンタスティック"(アルバム『バッター』に収録されたベスト・トラックで、ユニークなエレクトロ・ヒップホップ)からはじまるマーティンのミックスCDは、率直に言って好奇心を駆り立てられるには充分である。他にダブステップのシーンから、急進的で変わり者のゾンビー、〈ハイパーダブ〉所属の女性トラックメイカー、クーリー・G、知性派コード9,そして2562や彼自身のトラックを豊富に放り込んだこのミックスCD(全26曲)は、いまだ動き続けるダンス・カルチャーのもっとも新しい場面におけるドキュメント(記録)となっている。
 マーティンらしさは十二分にある。デトロイトのベテラン、DJボーン(渋い!)、アイルランドのアフロ・フューチャリスト、ヌビアン・マインズ、あるいはレディオ・スレイヴの〈リキッズ〉からリリースされたディープグルーヴ&ジェイミー・アンダーソン......などといったテクノ系のトラックを効果的に混ぜながら、ダブステップのエレクトロ・ファンクめいた側面を強調する。また、ゾンビーのような振り幅の広いアーティストから彼の耳障りの新しい実験的なトラックをチョイスしながら、ロスカやジョイ・オービソンによるUKファンキーまで挿入して、ダブステップなどたいして聴いたことのない"テクノ耳"に新世代のセンスをねじり込む。

 "ダブステップ・オールスターズ"シリーズは、たいていどのミックスも後半になればなるほどその真の正体=ジャングル/レイヴという姿を露わにするものだが、マーティンのこれははっきり言ってテクノだ。スペイシーでファンキーな(ときにドラッギーな)テクノの最新ヴァージョンであると言えるだろう。エンディングは、まるっきりURだし。
 あるいは......広大な一軒家に住むメタル君は彼のレヴューにおいて「最近のダブステップをかけて、逆説的にテクノのクオリティの高さも再認識した」と書いているが、果たして本当にそうだろうか。このミックスCDの20曲目を超えたあたりで、マンチェスターにおけるデトロイト/ディープ・ハウス系のレーベル〈プライム・ナンバース〉から発表されたアクトレスのトラックからゾンビー~2562~マーティンへと続くあたりは、たかがミックスCDであれど、テクノ・ダンスにおける眩しい瞬間が織りなす宇宙とともに新しいムーヴメント固有の猛然とした勢いがあって、そうしたジャンル(縄張り)の壁を意識するような態度を確実に溶解しているのだ。つまりこれは聡明な前向きさを持ったミックスCDなのである。

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