「K A R Y Y N」と一致するもの

Cavanaugh - ele-king

 J・G・バラードのことを久しぶりに思い出したのはジャム・シティ『クラシカル・カーヴス』を聴いた時だから4年も前のことになる。それはそれだけのことかと思っていたのだけれど、去年になって『マッドマックス 怒りのデスロード』はJ・G・バラードの世界観をストレートに映像化したものだという批評を目にしたり、B級映画しか撮らないと思っていたベン・ウィートリーが『ハイ・ライズ』をクローネンバーグばりにみっちりと映画化したりということが続くと、さすがにそれだけのことではないのかなという気分になってくる。そこへキャバノーである。

 スフィアン・スティーヴンスらとシジファスを組んでいたことでも知られるセレンゲティが同じシカゴのオープン・イーグル・マイクと新たに結成したヒップホップ・ユニットのデビュー作。これがまたタイトルからしてそれである。「時間と物質」が無尽蔵の記憶として蓄積された砂漠に緩慢な速度で向かうこと。いわばエントロピーの増大がエロチィシズムと結びつく時、J・G・バラードの「生」は異様な歓喜とともに呼び覚まされる。冷戦時代の再来とともに「終末感」も更新されつつあるということなのか。だとすれば、それは核戦争の予感なしに現代人は生きられないということであり、世界がフラットではなくなりつつあることを示唆しているのかもしれない。現代は「自由」ではなく「監視」、「平等」ではなく「格差」、「博愛」ではなく「ヘイト」だと指摘したのは西部邁だったけれど、「監視」も「格差」も「ヘイト」も生前のバラードがすでに作品のテーマとしていたことである。

 キャバノーのサウンドは妙に快楽性を伴っている。トラップをスクリュードさせたシカゴ南部のサウンドはチーフ・キーフ以降、ドリル・ミュージックと呼ばれるようになり、彼らはこれにもう少しヒネリを加えていく(セレンゲティもオープン・マイク・イーグルもソロではここまでトリップ・モードではなかった)。それによって与えられるニュアンスは逃避というよりセラピー的だとする評もあり、歌詞は断片的にしかわからないので、サウンドに的を絞ると、思い出すのはやはり〈アンチコン〉である。セレンゲティは〈アンチコン〉のホワイ?ことヨニ・ウルフともほぼ同時期にジョイント・アルバム『テスタロッサ』をリリースしていて、〈リーヴィング〉から新作を放ったオッド・ノズダムといい、マイク・パットンらと新たにネヴァーメンを組んだドーズ・ワンといい、少なくともセレンゲティが〈アンチコン〉のセカンド・レイズに歩を揃えていることは間違いない。スモーカーズ・デライトというよりはモゴモゴと燻るハッパが燃え尽きるのを見守るかのように、どこか儚く、何もかもが簡単に視界から消え去っていく(全部で26分しかないし)。

 ゼロ年代初頭に〈アンチコン〉と連動していたのもシカゴ周辺のアトモスフィアだった。カニエ・ウエストが去ったシカゴはここ数年、チーフ・キーフやチャンス・ザ・ラッパーによって新時代を迎え、ここにまたオープン・マイク・イーグルとセレンゲティがオルタナティヴの橋頭堡を築こうとしている。ミック・ジェンキンズも同じくで、こちらはもっと展開が派手。こういう人もいる。シティーズ・エイヴィヴ、フロストラダムス、ミック・ジェンキンズ、マンマンサヴェージ……実験的過ぎてもうひとつ浮上できなかったクウェルやモールメンといった過去の亡霊とイメージがダブるほど彼らの試行錯誤はどこまでも果てしない。シカゴという街はどうしてもそういう場所なのだろう。

 フライングぎみの予告だ。今年の夏に出る雑誌版の『ele-king』の表紙がKOHHに決定した。そのニュースに前後して自分のiPhoneに見覚えのないメモをみつけた。日付は去年の年末、リキッド・ルームでのKOHHのワンマン・ライヴの真っ最中の時刻だ。「これを否定する奴らは、進化への意志を捨てた連中だ。放っておけ」。もしこのメモが本当に、まだデビューから3年とすこしの日本人アーティストのことをいっているのだとすれば、さすがにちょっと狂気の沙汰だと思う。でもあのときは本気でそう思ったのかもしれない。

 そして『DIRT II』だ。昨年10月末に発表されたエイジアン・トラップの極北的な怪物作『DIRT』、その続編が6月17日に解禁される。アメリカやフランス、韓国やジャマイカといった海外勢とのコラボレーションにくわえ、2枚組のうち1枚はこれまでの楽曲のリミックスだそうだ。驚異的なリリース・ペース、ということになるのだろうけれど、KOHHについては正直なところもう感覚が麻痺してきていて、とくだんの驚きはない。KOHHはこの3年超のあいだにミックス・テープをふくめて6枚のアルバムを発表し、アンダーグラウンドな日本語のラップとしては異例のポピュラリティと、海を越えた熱狂的なプロップスを獲得した。直近でいえばフジロックへの出演アナウンス、そしてグローバルな意味ではそれよりずっと意義深いかもしれないボイラー・ルームでのライヴ・アクト。これはもはや事件だ。

 そうだ。言葉の正確な意味で、KOHHとはひとつの事件だ。ジョン・ライドンがマルコム・マクラーレンと出会い、セックス・ピストルズという事件が生まれたように、KOHHがGUNSMITH PRODUCTIONのプロデューサーである318と出会ったことで、現在も進行中のこの事件は生まれた。「ポップ・ミュージック」という言葉が事実上の死語になってずいぶんたつ。いつのまにかみんな好き嫌いによって分断された居心地のいいサークルでのおしゃべり以上のものを望まなくなった。しかし、「ポップ」という言葉がもしもチャートの順位やテレビへの露出頻度を超えたなにかを指すのだとしたら、KOHHという事件は、いまの日本で最強のポップ・カルチャーだ。中指を立てても目を背けてもいい。だが好むと好まざるとにかかわらず、その異形の声は分割統治された安寧な領土に侵入する。ポップとはある静的な状態のことではなく、既存の秩序を破壊していくダイナミズムそのものを意味する。それは暴力的な共通言語の創造だ。

 これはたんなる直感だが、『DIRT II』はトラップ・ラッパーとしてのKOHHの殺害現場になるだろう。ずば抜けたアーティストはそもそもジャンルのカテゴリーなどに束縛されない。ベンヤミンにならうなら、すぐれた表現というのは、ひとつのジャンルを創出するか、ひとつのジャンルを破壊してしまうか、つまるところそのどちらかであり、究極的な場合には、その両方だ。震災後の叙情の涙を蒸発させるかのような熱気で盛りあがる日本のトラップ・ミュージック。かつてそのシーンを牽引したKOHHは早々と、トラップ・アイコンとしてのセルフ・イメージをみずからの手で破壊しつつある。アーティストは作品の中で永遠に生き続けるが、同時に決定的な作品を完成させるたびに何度も自死する。死が生の燃え尽きる速度によって決定されるのであれば、才能とはそのスピードのことだ。身を削る圧倒的な精神的/肉体的な能力の発現は、ほとんど閃光や爆発といった現象に近い。それは批評家の言葉が追いつくことを許さない。しばしばアーティスト本人にさえすべてを完璧にコントロールすることなど不可能だ。

 そしてこの事件は、現在まさに激動のさなかにある日本という社会の地殻変動ともけして切り離せないはずだ。2011年の震災、そしてその後の社会的な混迷から、正体不明のなにかが生まれようとしている。この島国の住人、誰もが事件の目撃者だ。このさきも生きてさえいれば、アーカイヴ化された2016年の音楽をずっと後になって聴くことだってできる。だが明日があるなんて、いったい誰が約束した? 死ねば残るのは歯と骨だけで、いくら美しくてもそれは過去の遺物にすぎない。いま生きているのは引き裂けば血の溢れる肉と臓器だ。すでに惨劇の予感はみちみちている。列島よ、眠らずにこの暗い夜を待て。(泉智)

アーティスト名 : KOHH(コウ)
アルバム・タイトル : DIRT II(ダート 2)
発売日 : 2016年6月17日(金)

仕様 :
3枚組(CD2枚組+DVD) [初回限定盤] 3,100円+税 (品番 : GSP-10)
CD2枚組のみ [通常盤] 2,700円+税 (品番 : GSP-11)
(※オフィシャル・サイト "https://やばいっす.com" 限定盤は500セットのネックレス、超先行ワンマン・チケット付など 4/19(火) 19時より予約開始)

[Track List]

(DISC-1)
01. Die Young
02. I Don't Get It (feat. J $tash, Loota, Dutch Montana)
03. Business and Art
04. 暗い夜 (feat. Tommy Lee Sparta)
05. Born to Die
06. Needy Hoe (feat. Dutch Montana, Loota)
07. Hate Me

(DISC-2)
01. Dirt Boys II
02. Living Legend II
03. Mind Trippin' II
04. V12 II
05. Tattoo入れたい II
06. ビッチのカバンは重い II
07. Hiroi Sekai II

(DISC-3 [DVD])
1. Die Young[Music Video]
2. Business and Art[Music Video]
3. Dirt Boys II[Music Video]
4. Dirt Tour at F.A.D. Yokohama[Live]
5. Dirt Tour in Jammin' Nagoya[Live]
6. Behind the Scene in Jamaica

※収録内容は予期なく変更の可能性がございます。予めご了承ください。

■オフィシャル・サイト
https://やばいっす.com

■LINE公式アカウント
友達追加→公式アカウント→「@kohh_t20」でID検索

■夏の大型音楽フェス出演
7/22(金) FUJI ROCK FESTIVAL '16

金曜夜のロック・パーティ! - ele-king

 「あの頃起こっていたこと」──それぞれの記憶の中でもっともロックが輝いていた瞬間、そのつづきを追いかけながら、現在形のリアルなシーンにつないでいるレーベル〈KiliKiliVIlla〉。東京も地方も、若者も中年も関係ない。大好きな音について語り合いながらパーティやリリースをつづける彼らは、あらゆる音楽が横並びにアーカイヴされる時代だからこそかけがえのないつながりを生み出している。そしてNOT WONKらの活躍は、彼らが時代からずれていない……どころか、いまその真ん中に躍り出ようとしていることを証している。
 さて、その熱を感じたいなら〈KiliKiliVIlla〉が主催する週末パーティに繰り出そう。タイムレスな音をフレッシュな感覚で楽しむことができるだろう。

■KiliKiliVIlla presents Friday Night DANCEHALL
6月3日 新代田FEVER
出演:LEARNERS、井の頭レンジャーズ、JAPPERS、The Wisely Brothers
DJs:高木壮太 and more
18:30 open 19:00 start
前売り2,500+1D、当日3,000+1D
チケットはFEVER、e+、ローソン(Lコード:75471)で発売中

https://www.fever-popo.com
kilikilivilla.com

KiliKiliVillaが送る週末のパーティー!
時代を超えた名曲を独自のスタイルでカバーしているLEARNERSと井の頭レンジャーズを中心にウィークエンドを盛り上げるハンキー・ロッキン・パーティー!
For all the young music lovers, dancing rudies and rockers!

*LEARNERS
モデル・歌手のSARAと松田"CHABE"岳二によるユニットから発展した5人組ロックンロールバンド、LEARNERS(ラーナーズ)。
2015年BLACK LIPSとの共演などを経て、本格的に始動。エディ・リーダーをフューチャーした7インチ『RHODE ISLAND IS FAMOUS FOR YOU feat EDDI READER』や昨年11月の2タイトル同時に7インチも即完売、12月にリリースの1stアルバムで全国に旋風を巻き起こし中。
ニール & イライザやキュビズモ・グラフィコ・ファイヴ、そして数々のアーティストのサポートを担当してきたプロデューサー兼リーダーの松田"CHABE”岳二、オーディエンスとミュージシャン両方から愛されている彼の選曲はフロアを最高に楽しませてくれる。

*井の頭レンジャーズ
2013年春、井の頭公園に憩う地元の若者(ルーディー)たちによって結成されたジャマイカン・スタイルのインスト・ファンク・バンド。
ドラム佐藤メンチ、ベース藤村明星、ギター万助橋わたる、オルガンいせや闇太郎。
Soundcloudに公開された音源が話題となり、これまでに7枚の7インチをリリース、2015年にはアルバムを発売。
69年UK・スキンヘッド・レゲエ・スタイルでカバーされた「徹子の部屋のテーマ」や「ひこうき雲」は大きな反響を呼び、2016年ついにライブ活動を開始。

*JAPPERS
6人組ロックバンド。2009年頃高幡不動で結成。
2012年に「Lately EP」、2013年に3ヶ月連続7インチシングルのリリースを経て、2014年にDead Funny Recordsより1stアルバム「Imginary Friend」をリリース。 以降も東京都内ライブハウスを中心に活動中。

*The Wisely Brothers
2010年都内高校の軽音楽部にて結成。真舘晴子(Gt.Vo)、和久利泉(Ba.Cho)、渡辺朱音(Dr.Cho)からなるスリーピースガールズバンド。
2012年初ライブ開催。高校卒業とともに下北沢を中心に活動。
2014年10月に初の全国流通盤「ファミリー・ミニアルバム」リリース。2015年12月ライブ会場限定盤「オリエンタルの丘」リリース。東名阪ツアー「ファミリー旅行記」を大盛況に終える。さまざまなメディアでピックアップされる注目のガールズバンド。



Kaytranada - ele-king

 いまもっとも旬のプロデューサーと言っていいだろう。ケイトラナダことルイ・ケヴィン・セレスティンが初のアルバムをリリースした。ハイチ生まれで生後間もなくカナダのモントリオールに移り住んだ彼は、現在まだ23歳の若者だ。J・ディラ、マッドリブ、ア・トライブ・コールド・クエストなどの影響を受け、14歳でDJを、15歳で楽曲制作を始め、最初はケイタラダムス名義(シカゴのトラップ・プロデューサーのフラストダムスに憧れて命名している)で作品発表を行っていた。その頃はアンオフィシャルなリミックスものやミックス・テープが中心で、ヒップホップやトラップ、ビート・ミュージック系の作品が多かった。2013年からケイトラナダに名前を変えるのだが、その前後に手掛けたジャネット・ジャクソン、エリカ・バドゥ、ティードラ・モーゼスらのリミックスが話題を集める。姉の影響で幼少の頃からR&Bに慣れ親しんできた彼は、こうしたリミックスでR&Bやヒップホップ方面からの仕事をゲットしていくのだった。彼の手掛けたリミックスは公式、非公式も含めてビヨンセ、ファレル、ディスクロージャー、アルーナジョージ、ロバート・グラスパー、ミッシー・エリオット、アジーリア・バンクス、タキシード、フルームなど多岐に及び、プロダクションでもモブ・ディープ、タリブ・クウェリ、フレディ・ギブス、ミック・ジェンキンス、ジ・インターネットなどの作品制作を行っている。今年に入ってからもアンダーソン・パーク、ケイティ・B、チャンス・ザ・ラッパーと、彼が参加したアルバムには話題作が尽きない。

 ここ2、3年の間に大注目のプロデューサーとなってしまった彼は、ヒップホップ、R&B、ハウスなどあらゆるダンス・サウンドに通じ、ジャズ、ファンク、ブラジリアンなど多彩な音楽的モチーフを引き出しの中に持つ。メジャーとアンダーグラウンドの間を行き来できるプロデューサーで、ヒップホップを軸としつつもオールマイティな才能を持っている点では、マッドリブやDJスピナなどヒップホップの枠を超えた活動するプロデューサーを思い起こさせる。『99.9パーセント』では、そんなケイトラナダのプロダクションの魅力を十二分に満喫できるだろう。

 参加ゲストも豪華で、フォンテ、クレイグ・デイヴィッド、アルーナジョージ、ゴールドリンク、リトル・ドラゴン、ジ・インターネットのシド・ザ・キッド、同じカナダのバッドバッドナットグッドらがフィーチャーされる。トリッキーなエレクトリック・ブギーの“トラック・ウノ”、ドリーミーなジャズ・ファンクの“バス・ライド”、クレイグ・デイヴィッドのシルキーなヴォーカルが映えるR&Bナンバー“ゴット・イット・グッド”というオープニングからの3曲を聴いても、多彩なサウンドを操りながらもしっかりと自分の世界を構築していく能力が感じられる。アルーナジョージとゴールドリンク参加の“トゥゲザー”、リトル・ドラゴンをフィーチャーした“バレッツ”など、BPM110~120あたりのハウス系の作品が結構多いのだが、それでもヒップホップを出自とするトラックメイカーというのがわかるブレイクビーツのプロダクションだ。フォンテが歌う“ワン・トゥー・メニー”はハウスとヒップホップとR&Bの中間にあるような作品で、こうした全方向に通じるところがケイトラナダのいちばんの魅力ではないだろうか。フットワークにも通じるような“ライト・スポッツ”ではガル・コスタのトロピカリア期の作品を、“デスパイト・ザ・ウェザー”ではアンビエンスのスピリチュアルなボッサをサンプリングするなど、ジャズ系のネタ使いも多く見られる。そうした彼のジャズ・センスが発揮されたのがバッドバッドナットグッドをフィーチャーした“ウェイト・オフ”だろう。なお、ケイトラナダはこれからリリースされるバッドバッドグッドナットのニュー・アルバムにお返しとして客演している。

 ちなみに、アルバム発表に先駆けたインタヴューで彼はゲイであることをカミングアウトしている。最初、彼の母親にそのことを受け入れてもらえなかったのだが、だんだんと認めてもらえるようになり、いまは姉や弟とともにサポートしてくれているそうだ。そうしたことを含め、いままではどうしても自身を開放できないところを抱えていたケイトラナダだが、現在の心境はより100パーセントに近いハッピーなものへと変わってきているという。アルバム・タイトルの『99.9パーセント』には、そうした想いも込められているようだ。

interview with Holy Fuck - ele-king


Holy Fuck
Congrats

Innovative Leisure / ビート

ElectronicExperimentalPsychedelicPostrock

Tower HMV Amazon

 本インタヴューに応えてくれたブライアン・ボーチャードは、自分たちの音楽を他人に説明しなければならない場面では「うるさいけど楽しい音楽」「エクスペリメンタルで音はデカイけど、ダンサブルで楽しくもある」というふうに答えると述べている。これは、かつて彼らがそう呼ばれたという「エレクトロニカ」なるタグ付けではまったくたどりつかない見解だ。実験性を持ったエレクトロニックな音楽であることは間違いないけれども、彼らの場合「エレクトロニカ」と表現することで切り捨てられる要素はあまりに多い。

 対して「うるさくて、エクスペリメンタルで、ダンサブルで、楽しい」というのはホーリー・ファックの特徴をたしかに言い当てている。当初はみな、その強烈な個性を持ち合わせの言葉でどう形容していいかわからなかったのだ。ポストパンクとかネオ・エレクトロとか、サイケからクラウトロック、ハードコアにまで比較されていたし、レコード屋でもどこの棚に置いていいものか悩ましい作品だったことを思い出す。

 それでもあえて言うならば、ベア・イン・ヘヴンやブラック・ダイスにダン・ディーコンなど、2000年代半ばのブルックリンやボルチモアが持っていたエクスペリメンタルなムードをもっともダンサブルに咀嚼した存在というところだろうか。アナログシンセへのこだわり、卓越したテクニックに支えられた生アンサンブルを旨とするバンド志向、ミニマルで高揚をさそう楽曲構造……彼らの音のキャラクターは、その後バトルスの登場によってようやく少し整理されたのかもしれない。

 ホーリー・ファック。グラハム・ウォルシュとブライアン・ボーチャードという2つの中心を持った、トロントのバンド。2004年の結成、そして2005年のファースト・アルバム『ホーリー・ファック』以降、聴くものを盤で驚かせライヴで熱狂させてきた彼らは、3枚めのアルバム『ラテン』の後にしばしの休息をはさむこととなった。しかし、今般久方ぶりにリリースされる4枚め『コングラッツ』を聴けば相変わらずだ──古びない。今回は初めて「ちゃんとした」スタジオで録音したというが、少しへヴィで締まった印象がある以外、彼ら相変わらず楽しんでいる。

 そう、『ラテン』(2010年、サード)にほぼラテンの意味がなかったように、彼らの音楽は考える余地も要素もない。それは考えていないということではなくて、考えさせないということだ。感じて楽しむ、そこに純粋にエネルギーが注ぎ込まれている。今作でもそれは変わらず、ダサくならない理由はすべてそこにあると言えるかもしれない。

 時は移ろい、ポストロックへの再注目や、マシナリーなビートやプログラミングによる楽曲構築を「人力」で批評的に再現するような試みが、クラブ・ミュージックの文脈とも交差して受け止められる中、ホーリー・ファックの解釈にもさらに幅が生まれているかもしれない。しかし彼らが理屈ではなく感覚や演奏の中に自らの拠りどころを持つバンドなのだということ、そしてそのことが反復的に彼らの強度を高めていくのだということを『コングラッツ』はあらためて感じさせる。


■Holy Fuck / ホーリー・ファック
2004年にグラハム・ウォルシュとブライアン・ボーチャードによって結成。トロントを拠点として活動を展開している変則バンド。2005年のファースト・アルバム『ホーリー・ファック』が世界的な注目を浴び、ブロークン・ソーシャル・シーンのメンバーやオーウェン・パレットを迎えたセカンド・アルバム『LP』(2007年)では同国の主要な音楽賞ジュノ・アワードやポラリス・ミュージック・プライズにノミネートされた。翌2008年にはM.I.Aとツアーに出るなどさらに活躍の場を広げ、2010年にサード・アルバム『ラテン』をリリース。その後、ハードなツアーの疲弊を癒すべくしばしの休養期間が生まれたものの、2年の制作期間をかけて、本年2016年、4作めとなる『コングラッツ』が発表された。

共通しているのは、2人ともラップトップを使って音楽を作りはじめないということ。

みなさんはヴィンテージのシンセサイザーや、あるいはおもちゃのシンセなど、ラップトップではなく生の楽器で演奏することにこだわってこられたように思いますが、その考え方はいまも変わりませんか?

ブライアン・ボーチャード(G,Key/以下BB):前よりもよりハイテクなものを使ってはいる。サンプラーとか、あととくにグラハムはプログラミングを使ったりもするしね。でも、アナログのドラムマシンも使っているし、俺も自由なやり方で音楽を作っているんだ。俺たちの曲作りの方法は全く同じというわけではないけど、共通しているのは、2人ともラップトップを使って音楽を作りはじめないということ。「新しいギアを買えば」とよく人に言われるし、ソフトウェアを使った方が楽なときもある。でも、俺たちはそれをやらないんだ。それはいまだに変わらないね。

では、そのようにこだわる理由を教えてください。

BB:理由はたくさんあるけど、俺にとってのいちばんの理由は、そっちのほうが断然楽しいから。曲作りってせっかく楽しい作業なのに、スクリーンをじっと見ているんではもったいないからね。しかも、あんなに繊細で壊れやすいものだから、いちいち注意しなければいけないし、それをステージに持っていくなんて想像できないんだ。メールを打ったりするだけでも十分スクリーンを眺めてるんだから、それ以上画面を見ていたいなんて思わない(笑)。

トライしてみたこともないですか?

BB:ないね。エイブルトンとかコンピューターのソフトウェアとか、よく人に勧められはするんだ。そっちの方がもっと楽になるからって。そっちの方がもちろんサウンドもよくなるだろうし、もっと効率もよくなるかもしれない。でも俺は、ギターをプレイしているほうがいいんだよ。そっちのほうが、プレッシャーが少ないんだ。何より、楽しいしね。

たとえば“クラプチャー(Crapture)”において、ラップトップの中で完結できないものとは何でしょう?

BB:なんだろう……あの汚くてうるさいサウンドは、ラップトップでは作れないかもしれない。すごく変わった曲なんだけど(笑)。壮大で、うるさくて、醜いサウンドなんだ。あれは、俺たちの普通とはちがう自由な曲の作り方だからこそ生まれるサウンドなんだと思う。

『ホーリー・ファック』が2005年、『LP』が2007年です。2010年前後にクラウトロックのブームなどがありましたが、じつに約10年のあいだ、あなたがたはとくに流行に左右されるということもなく自分たちのスタイルを保持してこられましたね。実際のところ、トレンドを意識することはありますか?

BB:いや、それはない。モダンにも、時代遅れにも、ヴィンテージにも聴こえないサウンドを作りたいと思っているからね。ユニークさを意識している。いまから20年経っても聴きたいと思うサウンドを作りたいなら、トレンドを意識していてはそれは実現できないと思う。俺は「タイムレス」というアイディアが好きなんだ。


モダンにも、時代遅れにも、ヴィンテージにも聴こえないサウンドを作りたいと思っているからね。


それはいつ頃から考えるように?

BB:バンドをスタートしたときから、それがバンドのメインの目標だった。楽器をプレイして曲を作ることでリミットを定めつつ、慣習にとらわれないエクスペリメンタルなやり方で、いかにユニークでタイムレスな音楽を作り出すことができるかというのがいちばんの目標なんだ。さっき話に出たように、俺たちはヴィンテージとかおもちゃとかいろいろな種類のシンセを使うけど、それは、一つに限らないさまざまな時代感を出したいからなんだよ。

今作はスタジオ録音だということですが、設備や環境として影響を感じた部分があれば教えてください。

BB:そんなに影響はなかったと思う。レコーディングのときに4人でいっしょにライヴで演奏するのは変わらないから、そこまで変化は感じなかった。それよりも、今回ちがったのは、レコーディングの前にクラブやステージですべての曲をライヴ演奏したという点だね。今回は予算のかかるスタジオだったから、借りている日数が短かったぶん、スタジオに入る前にすべてを完璧にしておきたかったんだ。以前は、スタジオにお金をかけていなかったから、だらだらとスタジオにいて、スタジオの中で曲を作ったりもしていた。今回は、決まっていた3日間という短い期間の中でベストなものを録らなければいけなかったから、入る前の意気込みがちがったんだ。それは、レコードにも反映されているんじゃないかな。

そのやり方はよかったです?

BB:楽しかったよ。その後のミックスの作業はあまり楽しくないときもあったけど(笑)、いいスタジオに4人で入って、いっしょにバシっと演奏したのはすごく楽しかった。

あなた方の音楽にはつねにトランシーな高揚感がありますが、それはあなた方が音楽に求めるいちばん重要なものだと考えてもよいでしょうか?

BB:すごく重要。俺たちの音楽において大切なのは、メッセージ性や歌詞の内容とかではなくて、感情。曲を聴くことで他の場所に行ったような気分になれたり、ムードを作り出す音楽が、俺たちの音楽。俺たちのバンドは、テーマを持った曲やラヴ・ソングは書かないからね(笑)。自分で曲を作っているとき、どうやってその曲がいいか悪いかを判断するかというと、歩きながら聴いてみたりして、その音楽が特定のムードを作り出したり、自分に何かを感じさせたり、想像の世界につれていってくれるかを試すんだ。皆もそれを感じてくれてるといいけど(笑)。


「エレクトロニカ」には違和感があったね。俺たちの最初のレコードは2005年にリリースされたのに、エレクトロニカって言われるとなんか90年代みたいな感じがしてさ。


Holy Fuck: Xed Eyes (Official Video)


もしホーリー・ファックの音楽スタイルについて「ポストロック」と表現するとしたら、あなたがたにとっては違和感がありますか?

BB:ないよ。最初の頃は「エレクトロニカ」とか言われてたけど、自分たちはなぜそう呼ばれるのかわからなかった。俺たちの最初のレコードは2005年にリリースされたのに、エレクトロニカって言われるとなんか90年代みたいな感じがしてさ。「エレクトロニカ」には違和感があったね。だから、ポストロックでもポスト・パンク・ロックでもいいから、特定のエレクトロニック・ミュージックのジャンル以外の呼ばれ方であれば抵抗はない。エレクトロニック・ミュージックのステレオタイプのイメージを崩してくれる呼び名なら、俺たちは何でもいいよ。

どんな音楽やってるの? と聴かれたら自分ではどう答えます?

BB:ははは、よく飛行機で隣の席の人に聴かれたりするんだよな(笑)。やっぱり説明するのは簡単じゃない。あまり怖がらせたくないから、「うるさいけど楽しい音楽」って言ってるよ(笑)。「エクスペリメンタルで音はデカイけど、ダンサブルで楽しくもある」って普段は言うようにしてる。ジャンルよりも、サウンドがどんなものかを説明しようとするね。

7曲めのタイトルを“サバティクス(Sabbatics)”としたのはなぜですか? 少しトライバルなモチーフが感じられますが、どんなことを実践したかった曲なのでしょうか?

BB:「sabbatical(=有給休暇、研究休暇)」を思わせるタイトルになっているんだけど、なぜそうなっていたのか自分たちにもよくわからない。もしかしたら、俺たちもブレイクをとって、バンドの外の世界を旅して自分自身を見つめる期間があったから、それがサウンドに反映されたのかもしれないな。あまりスローな曲がないから、スローなものを作ろうと意識したのはあるね。とくにライヴでは、“レッド・ライツ”のような速くてアップ・ビートな曲が続いたときに“サバティクス”みたいな曲が入るとちょうどいいんだよね。演奏していて楽しい曲でもあるんだ。

曲作りの基本的なスタイルは、『ホーリー・ファック』の頃から変わりませんか?

BB:あまり変わらない。曲をつねに書くというのも変わらないし、変わったとすれば、前よりもそれが上手くなったことくらいだと思う。いまのほうが、よりメンバー同士がお互いを理解しているからね。

それぞれの曲は理論的に構築・演奏されているのでしょうか?

BB:俺たちは音楽を習ったことはないし、すべて独学なんだ。だから、答えはノー。耳で感じたままに曲を作ってプレイしている。曲の書き方はさまざまだから、少し理論的なときもあるかもしれないけど、大抵はちがう。構築、演奏のされ方に決まりはないんだ。


ライヴはもちろん楽しいけれど、バンドにとって何よりも大切なのはスタジオ・アルバムを作ること。


自分たちをライヴ・バンドとして定義しますか? 

BB:今回のアルバムは、前回のようにつねにライヴで皆の前で演奏しなければいけない、というよりは、アルバムを家で聴いて楽しんでくれたリスナーがそれを知りあいに勧めて、またその知りあいが自分の知りあいに勧めて……という感じで、家で聴いて楽しむというのも広がってくれたらうれしいと思う。でも、もちろんパフォーマンスも大好きだから、ライヴはたくさんやりたいけどね。ライヴ・バンドというか、自分たちにとってライヴが楽しいものであることはたしかだね。

あなたたちにとって、スタジオ・アルバム作品をつくる上で重要なことはどんなことなのでしょう?

BB:ライヴはもちろん楽しいけれど、バンドにとって何よりも大切なのはスタジオ・アルバムを作ること。俺は小さな街で育ったんだけど、好きなバンドが自分の街に来て演奏するということはまずなかった。だから、自分たちの音楽を知ってもらうため、聴いてもらうためには、まずレコードを届けることが大切になってくるんだ。時間が経っても永遠に残る物だし、いちばん重要だと思うね。

“シマリング(Shimmering)”はどのようにできた曲ですか?

BB:もともとの曲は、俺が10年前くらいに書いたんだ。ギターとヴォーカルをそのときに書いて、そのまま温めていたんだよ。それを数年前にメンバーの前でプレイしてみたら皆が気に入ったから、そこから皆がそれぞれのパートを自分たちなりにアレンジしてできあがったんだ。最初は、ソロでプレイするためのギター・ソングだったんだけどね。

あなた方の音楽では、人間の声もマテリアルのひとつとして器楽的に用いられていることが多いですが、そのような使い方をするプロデューサーやアーティストで、おもしろいと感じる人がいれば教えてください。

BB:たしかに。俺たちにとって声は楽器の一つって感覚だな。誰が似たようなアプローチをとっているかはわからないけど……俺自身が好きなのは、ヴォーカルの歌詞だけに頼りすぎていない音楽。ソニック・ユースなんかも、何を言っているかわからなくたってそれがクールな音楽だと感じることができる。俺たちの音楽もだけど、そういう音楽はラジオで流れてくるポップ・ソングみたいに、誰が何を歌っているかが明確な音楽ではない。フロントマンだけが主役の音楽ではないんだよ。カリブーもその一人だと思う。重要なのは、歌詞よりも音だから。

“クラプチャー”のようなマシナリーな16ビートと人力のドラムによる同様の演奏には、どのような差があると考えますか?

BB:あまり大きなちがいはないけど、マシン・タイプのドラムとたまに距離を置くことで、タイミングのずれが生じて、いいものが生まれる、という可能性は広がると思う。俺はジャズが好きなんだけど、ああいう感じの自由なリズムはやはり人の手で作り出されるものだからね。マシンに頼るとすべてがパーフェクトになってしまうから、最近はそういった要素が消えていってしまっていると思うんだ。パーフェクトも悪くはないけど、生演奏では感じられるソウルが感じられなくなってしまう。俺たちは、それは失いたくないんだ。

interview with Lust For Youth - ele-king

 何をきいても、きくだけ野暮になるのだ──。リズムボックスの規則正しいビートを無視して、右に左に奇妙に揺れながら、モリッシーを彷彿させるヴォーカリゼーションでオーディエンスを威嚇するハネス・ノーヴィドは、強くひとを惹きつけながらも近寄りがたいような緊張感をみなぎらせている。若く固く純粋で、土足で入ってくるものを許さない。こんなにロマンチックでドリーミーな曲なのに……いや、そうした曲でこそ彼の憮然とした表情と固い動作は美しく、聴くものの胸を打つ。

 4月某日、原宿のアストロホールでは、彼の一挙手一投足が意味を持ち、熱を生み、ひとびとの心を煽っていた。煽るといってもそれは威勢のいい掛け声やメッセージによってではない。そこで歌われていた言葉は、君に会いたいとかそんなような、きわめてささやかな、あるいは内省的なものにすぎない。音はきわめてロマンチックなシンセ・ポップ、生硬なポスト・パンク。
 そしてハネスはといえばリズムにもメロディにも、ホールの空気にすら乗ろうとしない。散漫に客を眺め、どうでもいいことのように歌い、拍を外して動く(踊るというより動き)。それは、自分の外にあるものすべてに向けての威嚇や挑発であるようにも感じられるし、ガーゼにくるまれた、純粋で傷つきやすいものを想像させもする。──わたしたちを強い力で陶酔させ、高揚させ、我を忘れようとさせていたものは、そんな繊細な姿をしていた。

 ロックにこんなふうにひりひりとしたものを聴き取るのは久しぶりだった。素晴らしく攻撃的で、ピュアで、ロマンチック。小器用なリヴァイヴァリストたちではない。ロックが説得力を失う時代を真正面から踏み抜いて、ブリリアントな曲を聴かせてくれる。ラスト・フォー・ユースは本当に特別なバンドだ。年長者が聴けば、なんだ、ニューオーダーやジョイ・ディヴィジョンのミニチュアじゃないかと言うかもしれないが、残念ながらそんなことは知らない。わたしたちが見ているのはそれではなく「これ」なのだ。そして、そこにいた人たちみなが切実に、かけがえのないものとして「これ」を感じていたからこそ、異様なほどの熱が生まれていた。わたしたちはいまここに、2016年にいるのだ。

 ラスト・フォー・ユース。ハネス・ノーヴィドを中心とする3人組。「いいバンドがいる地域」として数年来注目を浴びているコペンハーゲン・シーンの顔ともいえる存在だ。活動を開始した2009年当初はハネスの一人シンセ・プロジェクトともいえるスタートだったが、2014年の前作『インターナショナル』から現体制になっている。自分たちでレーベル活動も行う一方で、彼ら自身のアルバムはイタリアのノイズ・レーベル〈Avant!〉やエクスペリメンタルなサイケ・レーベル〈セイクリッド・ボーンズ〉などからもリリースされており、実際のところ、後者のように2010年代のシーンを賑わせたレーベル経由で世界に広く知られるところとなった。


Lust For Youth
Compassion

Sacred Bones / ホステス

Indie RockSynth Pop

Tower HMV Amazon

 先月、彼らは新作『コンパッション』を携えて来日した。先に述べた様子を思い浮かべていただければおわかりかと思うが、筆者が言葉でたずねるべきことなど本来なにもない。そこには、語らずにすべてを伝えてしまう、ハネス・ノーヴィドという名の心があるばかりだった。ライヴのあとに取材していたら、質問が変わっていたか、あるいは何もしゃべれなかったかもしれない……。

 しかしともかくもお伝えしよう。彼らはわずか30分足らずのインタヴュー中、注意力のない男子中学生のようにずっとふざけていたけれど、それはおたがいへの照れ隠しのようにも見えた。不真面目なのではない。真面目だからこそ言葉を接げないのだ。嬉々としてロックがアーティストの口からプレゼンされねばならない時代は不幸である。ジャケットには点字がならんでいる。


■Lust For Youth / ラスト・フォー・ユース
スウェーデン出身、ハネス・ノーヴィドによるシンセ・ポップ・プロジェクト。2011年にデビュー・アルバム『ソーラー・フレア(Solar Flare)』を発表。2011年に発表した2作め『グローイング・シーズ』はメンバーの脱退がありソロ・プロジェクトとして発表されたが、2014年リリースの前作『インターナショナル』よりマルテ・フィシャーとローク・ラーベクがラインナップに加わっている。自身のレーベルからの他、イタリアのノイズ・レーベル〈Avant!〉や、つづく作品はUSの〈セイクリッド・ボーンズ〉等からもリリースされている。2016年4月にニュー・アルバム『コンパッション』を発表、同月来日公演を行った。

掘り下げて掘り下げて、だんだんポップになっていった(笑)。 (ハネス・ノーヴィド)

ラスト・フォー・ユースは、歌詞が英語であることがほとんどですよね。スウェーデン語で歌わないのはなぜなんですか?

ローク:僕らの中でも2つの母国語があるからね。スウェーデン語とデンマーク語。でも世界から見れば、両方合わせてもごく少数の人数が話している言葉にすぎない。そんな中でより多くの人とコミュニケーションをしたいと思ったら、よりビガーな言葉を使うほうがいいよね。そして、僕らが知っているビガーな言葉といえば英語しかないんだ。

マルテ:英語はデンマークでも小さな頃から学校で教わるからね。

ハネス:音楽的な点からいっても、英語はいちばん通じやすいよね。ポップ・ミュージックの言葉だと思う。

マルテ:前のアルバム(『インターナショナル』2014年)は、イタリア語の曲が入っていたり、スウェーデン語の曲が入ったりもしているから、使ってはいるんだよね。でも歌うことにおいては圧倒的に英語ということになるかな。

なるほど。〈アヴァン・レコーズ(Avant! Records)〉からいくつかリリースがありますね。『サルーティング・ローマ(Saluting Rome)』(2012年)あたりはずいぶんダークで、ノイズやインダストリアル的な要素も強いかと思いますが、そこからくらべて現在はずいぶんポップなかたちになったとも言えるかと思います。そうなったことに何かきっかけや理由はありますか?

ハネス:あの頃も十分ポップだったと思うよ。

ローク:いや、最初につくっていたテープなんて、ただのノイズだったじゃん(笑)。

マルテ:ハネスがひとりでつくっていた頃でしょ? 初めて聴いたとき、「マジで?」って思ったもん。ほんとにこれをポップとして解釈することかできるのかなって。

ははは。とくにハネスさんだと思いますが、そういうノイズ・ミュージックに最初に触れたのは何がきっかけだったんですか?

ハネス:ウルフ・アイズ(Wolf Eyes)から入って、掘り下げていったかな……。10代の頃だから、何がきっかけだったかなんてあまり覚えてないんだけど。で、掘り下げて掘り下げて、だんだんポップになっていった(笑)。

僕にとってシンセ・ポップとか80年代の音楽のイメージは、「パンクのショウの後でかかってた、みんなで踊れる楽しい音楽」なんだ。(ローク・ラーベク)

それがラスト・フォー・ユースのポップの真実なんですね(笑)。一方で、ニュー・オーダーに比較されたりするように、ポスト・パンクだったりシンセ・ポップのような音楽は何が聴きはじめだったんでしょうか。それから、みなさんの国の同世代にとってそれらはポピュラーなものなんですか?

マルテ:いまでこそかからないけど、あの頃はラジオとかでかかっていたよね。ニュー・オーダーとかは。

ローク:僕にとってシンセ・ポップとか80年代の音楽のイメージは、当時僕が好きで通っていたパンクのショウ、それが終わったあとに飲みにいくところでかかってるって感じかな。パンクのショウではみんな暴れたりしていたけど、その後クラブのダンスフロアなんかに行くと、そっちから打ち上げで入ってきた男子がテーブルの上にのぼって、シャツを脱いで騒いだりしていた。そういう、みんなで盛り上がって楽しい時間を過ごしたっていう思い出が、あの手の音楽を聴くとよみがえってくるよ。「パンクのショウの後でかかってた、みんなで踊れる楽しい音楽」なんだ。

そうはいっても、みなさんは80年代当時がリアルタイムではないですよね。たとえばニュー・オーダーならどのアルバムから聴きはじめたんですか?

ローク:僕は映画『ブレイド』(1998年)のサントラとして収録されている“コンフュージョン”のリミックスだね。完全にレイヴの音楽って感じで……ニュー・オーダーの曲ですっていう感じではないけど、ニュー・オーダーの最初の思い出とかインパクトといえばそれなんだ。

マルテ:僕は「ブルー・マンデー」かな。ラジオでよくかかってたよ。

ハネス:僕は「クラフティ(Krafty)」(2005年)かな。その後は『ムーヴメント』に出会うまで気にならなかった。

私もそのアルバムが最初だと思います(『ウェイティング・フォー・ザ・サイレンズ・コール』2005年)。同世代ですね(笑)。でも、“ブルー・マンデー”がラジオでよくかかってたというのはなんなんでしょうね。さすがにオリジナルが出た当時じゃなさそう。

マルテ:そうだね。僕は32歳だから。

それは生まれたかどうかくらいですね。

実際には仲はいいんだよ。メディアが言うように、みんなオシャレな服を着て、みんなハンサムで、みんな才能があって……なんてことはないし、そうやって十把ひとからげにされるのは違和感があるっていうだけで。

コペンハーゲンのバンドについて、英米のメディアや日本でも話題になったりしたんですが、実際にシーンを呼べるようなつながりとか盛り上がりはあるんですか?

ハネス:僕らとしては、あまり「シーン」という実感はないんだけど、それぞれのバンドに友だち関係っていう結びつきはあると思うよ。

ローク:長くやっているバンドも多いから、そこには自然に友情みたいなものはできてくるかな。

なるほど。でもメディアがそう言っているだけってことでもない?

ローク:まあ、間違いなくコミュニティ的なものはあると思うよ。でも、(お菓子を食べてふざけあいながら)僕らが集まってやることなんてこんなことばっかりで、音楽の話なんてしてないよ(笑)。そんなふうに騒がれる前にとっくに僕たちのコミュニティはできてしまっていたから、いまさらって感じはあったけどね。だから「みんな仲がいいんでしょうね」っていうような質問を受けると、あえて「いや、仲良くないよ」「きらいだよ」って言いたくなっちゃうんだ。
 でも実際には仲はいいんだよ。メディアが言うように、みんなオシャレな服を着て、みんなハンサムで、みんな才能があって……なんてことはないし、そうやって十把ひとからげにされるのは違和感があるっていうだけで。それぞれに個性があるし、みんな音楽以外の興味も大きいから。

マルテ:それにみんなの音楽性もどんどん広がっているから、まとめて語るのはますます無理が出てきているだろうね。

基本的にはパンクとかロックとかって音楽が多いんですか? クラブ・ミュージックみたいなものとは混ざっていない?

ハネス:バンドが多いのは間違いないね。

マルテ:でも、テクノもわりとある気がするな。たしかに僕らのまわりではないけど、でもいろんな音楽があるよ。なんでも。ユニークなことをやっている人も多いし、そういう人たちもゆるやかにつながっているとは言えるんじゃないかな。

ミニマリズムを愛する感覚とか、歴史の古さとか。日本への共感みたいなものはあるよ。(マルテ・フィッシャー)

へえ。たとえばハネスさんはゴーセンバーグご出身かなと思うんですが、ゴーセンバーグは一時期、エレクトロニックなバンドやユニットがいくつも出てきて注目されていましたよね。JJとか、エール・フランスとか、タフ・アライアンスとか。彼らなんかとは交流があるんですか?

ハネス:ゴーセンバーグは以前しばらく住んでいただけなんだけどね。いや、友だちじゃないよ彼らは。じつは僕らのイヴェントに来たいってタフ・アライアンスのメンバーが言ってきたときに、断ってしまった経緯があるんだよね。僕は彼らが好きなんだけど、僕の友だちが、ああいう人たちを呼ぶのは日和ってるみたいなことを言って断ってしまったことがあって。
 じつのところスウェーデンの音楽はそんなにマジメに聴いてないんだ。スウェーデンは昔から、自分たちがいちばんの音楽の国だっていうようなことを外に向けて言ってきた。たしかに90年代にそういうことはあったかもしれないけど、いまはそんなことないと思うし、とにかくスウェーデンの人っていうのは、視線が内側に向いていて、外の音楽に対して無知なんだ。僕はそう思う。

マルテ:でもやっぱり、ポップ・ミュージックは強いよね。アバにはじまってさ……。あと、音楽の学校がすごく充実しているんだよ。デンマークだって、普通の学校に通っていてもけっこう音楽の教育はしっかりしていると思う。

北欧……と一括りにするわけにはいきませんけど、スウェーデンもデンマークも、福祉国家であり、合理的で進歩的な考え方を持つ国というふうなイメージがありますけれども、実際にみなさんもそう感じますか?

ローク:合理的っていうのはどうかなって思うところもあるけど、ほかの2つはそうだね。美意識みたいなところでは、スカンジナビアは日本と共通するところがあるんじゃないかって思うよ。

マルテ:そうだね、ミニマリズムを愛する感覚とかね。あとは歴史の古さとか。日本への共感みたいなものはあるよ。

基本的には音楽で生活できている人が多いよ。ただ、ひとつ言えるのは、音楽でリッチになっているやつはいない(笑)。(ローク)

なるほど、意外なものの造形が似ていたりもしますからね。……でも、若い人が絶望していたりしないんですか?

ハネス:それは世界中、みんなそうだと思うよ。

ははは、それは反論しにくいですね。

ローク:未来ってことを考えると、すごく恐ろしい場所のような気がする。もしかするとすごく楽しいこともいっぱいあるのかもしれないけど、不安の方が大きいよね。

ハネス:だから考えないでおくことにしたほうがいい。

あはは。金言です。でも、みなさんやお友だちは、みんな音楽で食べているんですか? それとも何か別に職業を持ちながら?

ローク:基本的には音楽で生活できている人が多いよ。個人差はあるけど。ただ、ひとつ言えるのは、音楽でリッチになっているやつはいない(笑)。なんとかやっていけてるってだけでね。

ハネス:僕らは例外だけどね。

では、いま聴いている音楽で刺激的だと思うものはどんなものですか?

マルテ:ブリアルとか。

へえ、意外なようで、みなさんにも相通じるようなダークさがあるかもしれませんね。

ローク:僕はコペンの仲間がつくっているのを聴くだけで手一杯だよ。

ハネス:僕も。


Lust For Youth “Sudden Ambitions”


ゴシックは嫌い。(ローク)

なるほど、音をシェアしているんですね。ところでLFYの作品は近年は〈セイクレッド・ボーンズ〉から出てたりしますけど、あのレーベルにはどんな印象を持っていますか? みなさんはカタログの中ではやや異質ですよね。

マルテ:たしかに僕らは異色かもしれないね。でもそれがいいことだとも言える。

ハネス:僕は同じくらいの規模の別のレーベルからのリリースの経験もあるけど、いい感じなんじゃないかな。必ずしも有名レーベルではないけど、おもしろいバンドのものを出してると思う。僕らからデヴィッド・リンチまでね(笑)。あとファーマコンとか。

ファーマコンはいいですよね。〈セイクレッド・ボーンズ〉の中には、特異な形でではありますけど、ゴシックの要素もあると思います。みなさんは自分たちの音楽の中にゴシックを感じることはありますか?

ローク:ゴシックは嫌い。

ハネス:ははは。

ローク:でも時間はかかったけど、僕らの音楽を理解してくれるレーベルが出てきたことはうれしいことだよ。僕も自分でコペンハーゲンでレーベルをやっているわけだし、やろうと思えば自分たちでも出せるけれど、そんな中で出そうと言ってくれる人がいるわけだから、いいことだよね。

そうですね。こうやってお会いしてみると、みなさんずいぶんやんちゃな印象なんですが、曲のなかで歌われていることはわりとどれもラヴ・ソングというか。それがちょっと意外でした。これはわざと意識しているというか、ポップ・ソングは恋愛を歌うものというような考えがあったりするんですか?

ローク:やんちゃはいまだけだよ(笑)。

ハネス:嘘をつくのがうまいというだけじゃないかな。

マルテ:曲の雰囲気にインスパイアされて歌詞を書くことが多いから、それで影響されるのかもしれない。曲自体がそんなムードを持ってるんだよ。

ローク:それがまあ、ゴスが嫌だっていうことにつながるんじゃないかな。もちろんラヴ・ソングを書いている人が恋愛をしているかといえばそうとは限らない。ゴスのひとたちもきっとそうで、彼らがつねにメランコリックでウィザラブルな自分たちを演じていて、それを見て周りの人も同じ気分になってしまうということがあるんだとすれば、僕たちも自分たちの世界を曲で提示して、聴く人たちをそんな気分にさせているということなのかなと思うよ。

点字って、つねづねおもしろいものだなって思ってたんだよ。デザイン的にとっても美しいものなのに、それを読める人には見えなくて、見える人には読めなくて、っていうのがね。(マルテ)

世界といえば、ジャケットの点字のモチーフはどこから?

ローク:まず、もとになる風景はあったよ。ハネスとマルテは同じアパートに住んでいたことがあって、そこが今回のレコーディングの場所でもあるんだけどね。それで、煮詰まってくると海を眺めて──海の色か空の色かちょっと区別がつかないような色をしてたよね──それを眺めて散歩したりしてたんだ。いい気分転換になった。

マルテ:で、点字については、僕がツアー中に飲んでいた薬があるんだけど、それについていた点字がヒントになってるんだ。その海か空かわからない色みたいに、何かがはっきり見えないひとのための字を使うというのは、おもしろいと思って。点字って、つねづねおもしろいものだなって思ってたんだよ。デザイン的にとっても美しいものなのに、それを読める人には見えなくて、見える人には読めなくて、っていうのがね。

それは、音楽も似たようなところがあるかもしれませんね。

マルテ:その通りだね。



KNZZ - ele-king

 「東京はグレーな街」誰が最初に言い出したのかわからないが、東京の色を表すのに「グレー」はしっくりくる。しかし、ここ数年東京の街に似合う色は「ネイヴィー」だと感じることが多い。夕方に目覚めた時に見える空の色。静かな夜明けが訪れるほんの少し前のあの色。それがこの街のいまの色ではないだろうか。

 そう思わせてくれたアーティストが2人いる。febbとKNZZ、2人のラッパー(彼らはいま、DJ J-SCHEMEとともにDOGGIESというグループを結成している)。febbはファースト・アルバム『the season(ザ・シーズン)』のその名も“NAVY BARS”という曲でその世界を見せてくれる。『the season』の話はまた別の機会にしたい。今回はKNZZの話。「もっともラッパーらしいラッパー」それがKNZZを表すのにいちばん適している。

 KNZZが満を持してリリースしたファースト・アルバムは「Z」と名付けられている。アルファベットの最後の文字からは「最後まで立っている男」の姿が頭に浮かぶ。ここで彼が徹底しているのは、「ラッパーであること」「ヒップホップであること」の2点に尽きる。自身の経験を交えて語られるのは、非常な世界で生きてきた中から生まれる現実的なストーリーであり教訓である。ところが、その一方で比喩や韻といった技術的な表現、ラッパーとしてラップをすることという人格的な表現、という2点に重点を置くことによって、現実と仮想現実が交錯する。この2つの世界は最終的には現実世界に着地するというSFさながらの超大作がこのアルバムである。

 いくつかのインタヴューでKNZZ自身が話している「ラップはまじかるバナナのようなもの」という発言。それはラップの韻にこだわることで連想していく世界の転換を上手くいいあらわしている。韻で連想して世界を広げるだけでなく、しっかりと始まりと落ちがある点も含めて、KNZZのラップはその最たるものであるのは楽曲で実証済みだろう。登場する表現にはユーモアもホラーもある。作品の度にそれを更新し、完成された世界は、膨張し、広がっていっている。シンプルでいてミニマルに紡がれていく韻は、TOO MUCHな悲劇が起こる日常と過度に表れる喜怒哀楽さまざまな感情に対し、そのスピードを変えずに動いていく現実の温度を見事なまでに描き上げていく。説明を不要とするまでの表現技法が「Z」という世界を作り上げている。ラッパーとしてその世界を作り上げている。

 KNZZにはさまざまな側面がある。それはすべて、そのラップで聴くことができる。その側面をキャラクターとするならば、KNZZの中には何人ものキャラクターが存在し、曲を作りあげていると言えるだろう。そのアルバムを紡ぐ人物は1人でありながらも、短編が集まった一つの物語が「Z」では描かれる。グレーからネイビーへと色を変えていく東京の街の話。大通りもあの短い路地も交差している東京の街の話。登場するキャラクターのすべてがKNZZにより一人一人描き込まれ、人格が与えられており、そこに迷いはない。問題作とも言われる“THIS IS DIS”で登場するKNZZはいっさいの迷いなくラップを通してDISを展開する。もはや清々しすぎて、この曲はDIS SONGなんかじゃないみたいに感じる瞬間すらある。ラップ/ラッパーという形で攻めるKNZZがそこにはいるのだ。一方、“GUN TRAP”ではKNZZの進む世界を淡々と絶望、葛藤、勝利への誓いがからみあうを現実世界をどこか別のところからKNZZを通して語りかけるようなキャラクターが登場する。ヒップホップという音楽/ライフスタイルに落とし込まれた世界が「Z」とともに広がっている。

 ミニマルでいてシンプルなラップという技術。作り描き込まれたキャラクター。それが紡ぎ上げる世界は、一歩間違えれば暴走し、破綻するような危うさを含んでいる。本体ともいえるKNZZ自身が技術/キャラクターが暴走するのを制御していることでこの壮大な「Z」という世界は成立している。歴史とストリートが作り出した脚本の監督であり、主演であるKNZZの作り出したこの一大ノワールを聴いてみない手は無いだろう。リリースから半年を待たずしてこの作品は時間も場所も超越した音楽としていま手が届くところに超然と存在している。

HOLY(32016,NO MORE DREAM) - ele-king

ロックンロール大使館”開始記念10選

interview with Frankie Cosmos - ele-king

 「(自分の音楽について)インディ・ポップってよく呼ばれている気がするな。それがどんな意味なのか、よくわからないんだけどね」──あけっぴろげに彼女は言う。フランキー・コスモスが愛されるのは、装わなくても美しいものがあるということを示してくれるからだ。それが不健康な価値転倒などでないことは、彼女の歌のみずみずしい呼吸の中に、そしてここに掲載するささやかな会話の端々にも、十分に感じとることができるだろう。

 フランキー・コスモスの名で活動をつづけている年若いシンガー・ソングライター、グレタ・クライン。彼女の音楽は、たとえば〈K〉レコーズのローファイな音……飾ることのない、とぼけたような味わいのインディ・ロックを思い出させる。それだけでも彼女が何に価値を置く人間かということがしのばれるけれど、ジェフリー・ルイスやモルディ・ピーチズに心酔し、10代にもかかわらず「なぜこんなに齢をとったのか」と儚んでみたり、ネットは時間の無駄とばかりに空いた時間に曲を書きまくったというようなエピソードからは、バンド小僧的でこそあれ、服やカバンや美容やゴシップ、きらびやかな女の子たちの遊びとは無縁な青春がしのばれる。昨年のEP『フィット・ミー・イン』のジャケットには自分と彼氏(ポーチズのアーロン・メイン)と思しきイラストが用いられているが、その恋愛にすらけっしてはしゃいだテンションは感じられない。まようことなく地べたを行くグレタは、しかし、閉じこもるのでも否定的になるのでもなく、物事に対してとてもひらかれた姿勢で向かいあっているようだ。

 新しい季節を呼吸する彼女の若い心が、シンプルなローファイ・ポップとなって放たれるとき、多くの人の胸にも何か「つぎのこと」を知らせる風が吹いてくる。2014年にリリースされたファースト・アルバム『ゼントロピー』はわたしたちの耳を爽やかに驚かせたが、先日発表されたばかりの2枚め『ネクスト・シング』にもまたあたらしく目を開かせられる。

 さて、フランキー・コスモスを聴くことの気持ちよさは、音源そのものから感じていただくことにしよう。ここでは言葉──インタヴューにおいても飾らず、歌と地続きでさえある彼女の素の言葉をお届けしたい。

■Frankie Cosmos/フランキー・コスモス
アメリカのオスカー俳優ケヴィン・クラインとフィービー・ケイツの愛娘としても知られるグレタ・クラインによるソロ・プロジェクト。2011年に本名義で音楽制作を始め、2014年にリリースした初のスタジオ・アルバム『ゼントロピー(Zentropy)』にて注目を浴びる。2015年にEP『フィット・ミー・イン』を、2016年に2枚めとなるアルバム『ネクスト・シング』を発表した。

まだロックが何なのかわからないうちから、よくライヴに行っているキッズだったわ。好きな音楽はライヴへ行ってチェックしなきゃって思っていたな。


Frankie Cosmos
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今年はヨーロッパとかも行くんだもんね。アメリカからまだ出たことないんだっけ?

グレタ・クライン(Greta Kline以下、GK):何年か前にドイツへ小さなツアーをしに行ったことはあるんだけど、あれはバンドってわけじゃなかったからなぁ。

グレタは生まれも育ちもニューヨークでしょう? ニューヨークは好き?

GK:うん、地元だし大好きよ。

たとえばどんなところ?

GK:ニューヨークの外の人たちは刺激的でクレイジーな街って思っているかもしれないけど、わたしはそういうふうには見たくない(笑)。だって自分の家族が住んでいるし、自分しか知らないことや、仲間内だけで流行っているバカっぽいトレンドがあるんだもん(笑)。

まぁたしかにバカっぽいかもね(笑)。

GK:もちろんヴェニューや地元のバンドも大好きよ。

10代の頃に家族でニッティング・ファクトリーへ行ったのが、初めてのライヴだったって記事を読んだんだけど、グレタは活動をはじめる前に、どういう音楽と接点があったの?

GK:まだロックが何なのかわからないうちから、よくライヴに行っているキッズだったわ。エクスペリメンタルなものやパンクとか、若い世代がやっているジャンルにハマってて、好きな音楽はライヴへ行ってチェックしなきゃって思っていたな。

じゃあ小さい時から音楽が大好きだったんだね。

GK:うん! 音楽が嫌いな時なんてなかった気がする。身の回りに音楽があって当たり前だったしね。

音楽が嫌いな時なんてなかった気がする。

ちなみに初めて観たショーでは誰が演奏していたの?

GK:ふたつのバンドが出ていたのを覚えている。ランタイム・エラってクレイジーなバンドが出てて、ステージ上でいっつもスイッチを切り替えてた。ホントに変でクールな音楽だったから脳裏に焼き付いてるな(笑)。あとノー・ワン・イン・ザ・サムバディが出ていたんだけど、これはいまでもお気に入りのバンド! すっごくフリーキーな音楽で……なんかこうやって振り返ってみると、私が好きな音楽ってクレイジーなのばっかね(笑)。そのバンドはフリーキーでエクスペリメンタル・ジャズ、パンクの要素があって、ライヴがとにかく最高なの。

ちょっと話が逸れますが、小さいときってどんな子どもでした?

GK:シャイな子だったわ。それから13歳まで制服にある学校に通ってた。それ以降はクレイジーな格好で学校に通って……(笑)、オーバー・リアクションをするような子に変貌して……(笑)。まぁ要するに外交的な見た目だったけど、ちょっと変な女の子に成長したって感じかな。

その頃って音楽以外に、どんなことに興味があった?

GK:趣味は読書だったな。当時はマンガにものすんごくハマってた。

えー、そうなの? どんなマンガ?

GK:音楽並みにいろいろ読んでたの! スーパー・ヒーロー系から、有名人のバイオグラフィーもの、グラフィック・ノヴェルとか、マンガだったら文字通り読み倒してたな。

それは誰の影響?

GK:お兄ちゃんから。抜群のタイミングで私にマンガを教えてくれた(笑)。

当時、憧れていた対象ってありますか?

GK:ジェームズ・カチョルカ(James Kochalka)っていうアーティストが当時の憧れだった。日常についての4コママンガを描いている作家で、自分の生活から描く対象を見つける姿勢からはソングライターとしても影響を受けたな。それから、彼は音楽も作っててね。そのほとんどが滑稽でフリーキーな子ども向け音楽だったけど(笑)。

神さまはちょっとだけ信じてたと思う。あと、お兄ちゃんが言ってたことは何でも信じてたのは間違いない(笑)。

いろんなものに不安を感じていたな。なんでこんなに年を取っちゃったんだろうとか考えてた。若すぎだよね(笑)。

抽象的な質問ですが、子どものときに信じていたものってありますか?

GK:神さまはちょっとだけ信じてたと思う。知り合いや亡くなった人々に対して、ちゃんとお祈りもしてたしね。いまはもう信じてはいないんだけど、当時は真剣だったな。家族は大して敬虔だったわけでもないんだけど。あと、お兄ちゃんが言ってたことは何でも信じてたのは間違いない(笑)。

お兄ちゃんは大きな存在だったんだ。

GK:うん。兄は私のふたつ上で、自分がかっこいいと思うものは何でも教えてくれた。

お父さんやお兄ちゃんから教えてもらったものじゃなくて、自分の意思で選んだ音楽って何かあります?

GK:うーん……。たぶん(ザ・)ストロークスだと思う。友だちが弾いてくれたのがきっかけで、バンドでもカヴァーした。それがはっきりと思い出せる、自分から進んで聴いた音楽かな。

当時のヒーローって誰だったの?

GK:ジェフリー・ルイスとモルディ・ピーチズ、この2つかな。何年も取り憑かれたように聴いていた。

僕が初めてフランキー・コスモスを聴いたときに、孤独みたいなものも感じたんだけど、それってグレタがこれまで生きてきた環境や立場をプレッシャーに思っていたことの表れだったりするのかな?(注:クレタは俳優の娘として生まれた)

GK:どんな人間にも暗い部分は必ずあるもの。私はいろんなものに不安を感じていたな。なんでこんなに年を取っちゃったんだろうとか考えてた。若すぎだよね(笑)。哲学的な子どもだったのかな。存在していることにも不安を感じていた。私はナードだったから、学校も退屈だったしな。それから、心がくじけそうになった経験からは、本当にたくさんの曲が生まれたと思う。生まれてはじめて絶望したとき、何百曲も書いた(笑)。だから、自分の暗い部分から曲が生まれるのは間違いないかな(笑)。

宿題の息抜きをするときは、インターネットで生産性のかけらもないことに身を投じるんじゃなくて、曲を書くことにしてた。

じゃあギターを手にしたのはいつですか?

GK:11歳か12歳のときだったと思う。最初はベースだったの。いとこのボーイ・フレンドから弾き方を教えてもらったの。

初めて曲を作ったときのことを覚えてますか?

GK:そのときだったと思う。兄の親友とバンドをやっていて4曲作った。

最初に作った曲の歌詞って覚えてますか?

GK:ジェフリー・ルイスの曲に“ホエン・アイ・ワズ・フォー”って曲があるんだけど、その曲で彼は自分のいままでの人生を歌いあげるのね。私はその曲がすごく好きだった。だから、その曲の自分バージョンを作ったわけ(笑)。そこで私はいままで自分がしてきた悪いことのリストを歌っていて、コーラスはこんな感じだったわ。「きっと私は地獄へ行くだろう」(笑)。

すごくベーシックな質問ですが、「フランキー・コスモス」という名前の意味を教えてください。

GK:もともとはアーロン(・メイン)が考えたニック・ネームなんだけど、好きな作家のフランク・オハラにも由来している。なんで「コスモス」にしたのかは覚えてないんだけどね。

通訳:「コスモス」って宇宙のことですよね?

GK:その通り!

ある時からグレタはバンドキャンプに曲をアップするようになったけど、それがいまではすごい数になってるよね。どうして曲作りに入れ込むようになったんですか?

GK:学校とは全然関係ないことをしたいって気持ちが強かったの。宿題の息抜きをするときは、インターネットで生産性のかけらもないことに身を投じるんじゃなくて、曲を書くことにしてた。気づいたら曲が増えてたって感じかな。

人によっては曲を作るのって難しいことだと思うんだけど、グレタにとっては簡単だった?

GK:ただの遊びだと思っていたから、「いい曲を書かなきゃ!」ってプレッシャーはぜんぜん感じなかった。いま当時の曲を聴き返すと「うわぁ、すごくバカなことやってたんだなぁ」って思うこともあるけど、あの頃はそれで問題なかったな。

ライヴはすごく特別なものだと思う。自分が発する音がオーディエンスの体を通過して、みんながそれを感じることができるんだから。

でもみんなが曲をバンドキャンプにアップできるわけじゃない。やっぱりそれがグレタに合っていたんだね。音楽に没頭することによって、グレタの人生がどのように変わったのか教えてください。

GK:たくさんの曲を聴いたあと、50曲作ってそれをバンドキャンプにアップしたんだけど、その時にこれが曲を集めることや、アルバムを作ることのゴールなんだって気づいたのは大きかったかも。それ以降、曲の完成度を上げて、他人に聴かれても恥ずかしくないものにしようって思うようになったわ。お母さんがプロデューサー的な立場から曲を見てくれたこともあったな(笑)。もっと音量を上げて、聴きやすくしてくれた。

フランキー・コスモスの歌の対象って漠然とした大きいものではなくて、かなり限定されていると思う。たとえば、グレタの書く詩って、友だちや生活がテーマになることが多いけど、その理由について教えてくれるかな?

GK:小さいことについて歌うことは、私にとってはすごく意味があることだからかな。コンセプトとしての愛について直接歌うんじゃなくて、私は身近なものを通して愛に歌っているというか……。同じテーマでいまでも曲は書いてるけど、そこで使う例はいつもちがうの。友だちと散歩することだってラヴ・ソングになりえるしね。

歌という表現で何を伝えられると思いますか?

GK:曲に表現されているフィーリングを、リスナーが好きに解釈してくれればいいと思う。うーん、でもこの考えって別にユニークなものでも何でもないよね(笑)。私が人とはちがったものの見方をしているとは思わないかなー。

音楽で人とつながりたいと思う?

GK:うん。メタファーを使って説明してもいい? 音楽を演奏することって、同じ海で他人とサーフィンようなものだと思う。この場合音楽が海で、あなたがする行為は他人に影響を与える。同じようにライヴハウスの中では、演者もオーディエンスも相互に影響を与えるし、音楽はその場にいるすべての人々の体に作用する。その点において、ライヴはすごく特別なものだと思う。自分が発する音がオーディエンスの体を通過して、みんながそれを感じることができるんだから。現場で得られるフィーリングは、何物にも代えがたい気がして最高ね。

曲を作ることによって自分が何者なのか知ることができた。曲を作って自分の感情に触れることによってこそ、自分はハッピーになれる人間なんだよね。


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昔はシャイだったグレタが人前に出て音楽をすることによって、いろんなものとつながっていったと思う。抽象的な質問だけど、音楽をはじめたことによって何を得たと思う?

GK:得たものが多いのは間違いない。音楽を通して確実に成長できたし、曲を作ることによって自分が何者なのか知ることができた。曲を作って自分の感情に触れることによってこそ、自分はハッピーになれる人間なんだよね。自分が音楽をやっていなかったら、たぶんいまごろ人生で迷子になっていたんじゃないかな(笑)。

去年いっしょにシューティングしたときに、グレタが前よりもポジティヴに生きられるようになったって言っていたのがすごく印象に残ってるよ。そこには何かきっかけがあったのかな? たとえば、自分の活動が調子にのってきたとか。

GK:私そんなこと言ったっけ(笑)? ポジティヴになったことは間違いないわよ。いま言ったようにそれは曲を作ることによって、自分の感情に触れるようになったからだと思う。それと、社会全体を見るようになって、自分がすごくラッキーな立場にいるって気づけたことも理由かも。だってアートで生活していて、しかもその活動を通して誰かをポジティヴにすることだってできるんだもん。日本でレコードを出せるのもすごく嬉しいことだしね。

『ネクスト・シング』という今作のタイトルや曲の感じから、すごくポジティヴな印象を受けました。グレタ自身にとって、『ネクスト・シング』はどのような作品ですか?

GK:見方によっては、過去についての作品だとも言えるし、未来がテーマだとも言える。何年も前から書いてきた曲と、つい最近できた曲が半分ずつ混在しているの。だから、未熟な自分も感情的な自分もここにはあるっていうか……。だから極端に言えば、過去と未来の両方がコンセプトにある。そうすることによって、いまはポジティヴだけどかつてはネガティヴだった感情も見せられるでしょう?

アルバムを作る上で意識したこととか、新しく挑戦したことってありますか?

GK:このアルバムは4ピース・バンドで作った初めてのアルバムだから、その点でいままでとぜんぜんちがうよね。そんな人数で制作を進めたことなんてなかったから、意見をまとめるのにすごく手こずったな(笑)。だから曲のアレンジも大変だったな。自分でひと通り考えてからバンドに演奏してもらうんだけど、自分で考えたキーボード・パートにメンバー全員が反対するってこともあったりした(笑)。話し合いとかを重ねて最終的にうまくいくんだけど、いまではその過程にも慣れてバンドの作業も好きになったな。

いつも曲はひとりで作っているの?

GK:バンドに曲を持て行く段階では、メロディと歌詞は完成しているかな。バンドでも意見を出し合って、それぞれのパートをみんなで作っていくけど、パートの基本的な部分を作るのは私の役割ね。

(自分の音楽について)本当はロックンロールって言いたいとこだけどね。インディ・ポップってよく呼ばれている気がするな。それがどんな意味なのか、よくわからないんだけどね。

“フィット・ミー・イン”はシンセがベースになった作品だったと思うけど、作る前にどんな方向性を決めたの?

GK:これは絶対にいいポップ・ソングになるって確信があったんだけど、アーロンがエンジニアのジョシュ(・ボナティ)に「よりポップな仕上がりにしてくれ」って頼んだんだよね。そういう感じで2年くらいかけて制作して、最終的に4曲収録されたってわけ。かなりルーズなコンセプトだったけど、いままでの自分の作り方とはかなりちがったものだったわ。

テイラー・スウィフトが好きって言っていたけど、それはつまりポップ・ソングが好きってことなのかな?

GK:ポップですごく変なものだと思うんだよね(笑)。カッチリしたやり方で作られていて、オーディエンスがどういう反応をするのかも完璧に計算されているっていうか。そういう意味では、まるでポップ・ソングを作っているのは科学者みたいだよね(笑)。リスナーから特定の感情を引き出すために、必ずしも音楽的じゃない方法をとることもあるでしょう? 
 テイラー・スウィフトは好き。あの人ってすごく変わり者だから、彼女と友だちになったらどんな思いをするんだろうって考えたりする(笑)。それに彼女ってものすごく働き者のビジネス・ウーマンだから、きっと寂しいんだろうなって思うときもあるわ。テイラーを見ていると、私もそうなるんじゃないかなって思うときがあって、悲しまないように友だちになってあげたくなるの(笑)。

僕もそう思うな。友だちになってあげなよ(笑)。

GK:ぜひとも(笑)。

グレタの音楽のジャンルって何に分類されると思う? 自分がジャーナリストだと思って答えてください。

GK:インディ・ポップかなぁ……(笑)。本当はロックンロールって言いたいとこだけどね。それにインディ・ポップってよく呼ばれている気がするな。それがどんな意味なのか、よくわからないんだけどね。

じゃあ最後の質問を。フランキー・コスモスってグレタにとってどんな存在?

GK:どんな人でも自分の弱い部分を出せて、どんな感情をさらけ出しても許されるし、いっしょに気持ちを共感できる「世界」っていうか……(笑)。少なくとも、ステージの上の自分はそうなっているし、人々に「フランキー・コスモス」を届けたいと思うのね。レコードでもそれができたらいいな。


十六小節 - ele-king

日本語ラップを変革したラッパー、
ジャパニーズ・ヒップホップ界のレジェンド、
TwiGyがはじめて明かす自身の歴史。

1980年代末、日本語ラップの黎明期に颯爽と登場した、当時まだ10代のラッパー、TwiGy(ツイギー)。
じつに多くの著名ラッパーたちにインスピレーションを与えてきたこの天才児は、どのように育ち、どのようにラップを考え、どのような人生を送ってきたのか。
初期のシーンの貴重な写真も多数掲載。
この本を読まずして日本語ラップは語れない。

■目次

第1章
おばあちゃん/テレビっ子/ヒーローは嫌い レコード/環境/神輿の猿/転校生

第2章
BREAKIN’ /1971/HAZU/スクール /進路/BEATKICKS /最初のリリック /認められた瞬間/増えていった現場 初の関西営業

第3章
新たな出会い/クラブGAS /チェック・ユア・マイク/前座/就職 /サーティー・ファイブ/DJコンテスト決勝 /HAZU、ニューヨークへ行く /トゥルー・ボイス/初めての音源 /スティービー・ワンダー / ウォーク・ディス・ウェイ/Audio Sports /LAST ORGY /TWIGY、ニューヨークへ行く /ジャマルスキー/シャオリン・マサ 初ジャメイカ/ニューヨークスタイル

第4章
大輔と/PAGER前夜/居場所 /MICROPHONE PAGER /現場/改正開始 /MASAO/PAGER、ニューヨークに行く /コンちゃんとの出会い /ニューヨーク・ミュージック・セミナー /トミー・ボーイ/アポロシアターで見たビギー ミューズのウータン

第5章
ZEEBRA/PAGERの終焉 /TWIGYの声/言葉をフォント化する /ブラックマンデー/雷の予感 /V.I.P CREW /ジャマルスキーと東京で /SNOOPの横顔/冬の時代/証言 煙にまけ~DJ AMEKENとの出会い/悪名

終章
エピローグ/スペルバウンド/レクチャー /二度目のJAMAICA/ロビーG /その国のマナー/帰国後の違和感 / 鬼哭啾啾/韻/えん突つ/Al-Khadir /DJ AMEKEN /七日間 /サウスHIPHOP/斬れる言葉 AFRIKA BAMBAATAA /SEVEN DIMENSIONS

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