「K A R Y Y N」と一致するもの

BJ The Chicago Kid - ele-king

 ソウル/R&Bの名門レーベルである〈モータウン・レコード〉に所属し、現行ソウル・ミュージック・シーンを代表するシンガーである BJ the Chicago Kid が、自らの誕生日(=11月23日)をタイトルに付けた、3rd アルバム『1123』。元々、Kendrick LamarSchoolboy Q ら〈TDE〉の関連作や、Dr. Dre 『Compton』などへのゲスト参加によって注目を浴び、シンガーとしての高い実力を知られるようになっていった彼であるが、前作『In My Mind』リリース後の約3年半だけでも、Anderson .PaakChance The RapperSolangeCommonTalib Kweli、PJ Morton、Rapsody など、実に様々なアーティストの作品に客演しており、音楽業界内でも引く手あまたな存在である。ヒップホップとソウル、両方のシーンとも強い親和性のあるシンガーという意味では、本作にも参加している Anderson .Paak にも共通のものを感じるかもしれないが、お互いの基本的な方向性は異なる。あくまでもヒップホップがルーツである Anderson .Paak に対して、BJ the Chicago Kid の場合は地元シカゴの教会でのゴスペルの経験や、あるいは伝統的なソウル・ミュージックがその根底にあり、彼が〈モータウン〉に所属しているというのも、その証(あかし)とも言えるだろう。

 そんなふたりが共演しているオープニング曲“Feel The Vibe”は、本作でもベストな一曲だ。Justin Timberlake のプロデュースなどで知られるヒットメーカー、Danja がプロデュースを手がけているこの曲は、現在進行形なサウンドの中に、スクラッチとホーンによって90年代的なノスタルジックなテイストが加えられており、そこに Anderson .Paak のラップと BJ the Chicago Kid の歌が絶妙に絡まって、極上のハーモーニーを生み出している。続く“Champagne”も Danja のプロデュース曲だが、こちらは Danja が得意とするシンセ・サウンドが全面に押し出され、キラキラとしたアーバン感と、BJ the Chicago Kid の色気のある歌声との相性は完璧だ。プロデューサーとしてもう一組、本作のキーとなっているのが Cool & Dre で、彼らが手がけた“Can't Wait”のほうはトラップの要素が入った R&B チューンでこちらも面白いのだが、注目すべきはもう一曲の“Playa's Ball”だ。60年代、70年代のソウルを強く意識したドライで温かみのあるサウンドに、BJ the Chicago Kid のヴォーカルが実に生っぽくソウルフルに響き、さらに後半に登場する Rick Ross の圧倒的かつ渋い存在感のラップも実に素晴らしい。かと思えば、Offset (Migos) をフィーチャした“Worryin' Bout Me”や、Afrojack がプロデュースを手がけた“Reach”などで、いまっぽく思いっきり派手にキメているのも、それはそれで BJ the Chicago Kid らしい。

 一枚のアルバムの中に、実にヴァラエティ豊かなサウンドが揃っており、トラックごとに変化する、BJ the Chicago Kid の多種多様なスタイルを十二分に堪能できる作品と言えるだろう。個人的にはプロデューサーを絞って、“Playa's Ball”のようなスタイルでアルバム一枚作っても、かなり面白いものができるのでは? とも思うが、今後、彼がどのような方向へ進むのかも楽しみだ。

Jenny Hval - ele-king

 卓越したサウンドのみならず、独特の歌詞で「BBCの社長を赤面させる」オスロのプロデューサー兼シンガー、ジェニー・ヴァルがニュー・アルバムをリリースする。高い評価を得た『Innocence Is Kinky』(2013)以降も、スザンナとの共作『Meshes Of Voice』(2014)や『Apocalypse, Girl』(2015)、『Blood Bitch』(2016)に「The Long Sleep」(2018)にと、コンスタントに良作を送り出し続けてきた彼女だけに、今回の新作にも期待が高まります。日本盤にはボーナストラック“Spells”のダウンロード・コードが付属するとのこと。発売は9月20日。

各雑誌の年間ベストに数多く取り上げられるノルウェーのシンガー・ソング・ライター Jenny Hval の新作が完成。
すでに先行シングル“Ashes to Ashes”は Pitchfork の BEST NEW TRACK に選出!

様々な媒体で絶讃された『Blood Bitch』から3年、新たな開拓地を求めて前に進んで来た最新作。暗闇に潜む美意識を音像化したような作品から一転、今作では90年代半ばのトランスを思わせるトラックから北欧の空気を取り込んだようなフレッシュなメロディーを取り込んだ作品。そしていつもの独特ながらも美しいヴォーカルと透明感のあるサウンドスケープが見事に溶け合い優しく包み込むような世界観を提示してくれました。今作には友人でありコラボレーターでもある Vivian Wang、Laura Jean Englert、Felicia Atkinson が参加し、アルバムの各楽曲でジェニーと会話をするように自然に溶け込んでいます。国内流通盤CDのみ“Spells”のDLコード付きです。

アーティスト:Jenny Hval
アーティストフリガナ:ジェニー・ヴァル
タイトル:The Practice of Love
タイトルフリガナ:ザ・プラクティス・オブ・ラブ
JANコード:4532813341941
商品番号:AMIP-0194
価格(税抜):2,200円
発売日:2019年9月20日
フォーマット:国内流通盤CD
ジャンル:ROCK
レーベル名:Sacred Bones Records

■国内流通盤CDのみボーナストラック“Spells”のDLコード付き

Track list :
1. Lions
2. High Alice
3. Accident
4. The Practice of Love
5. Ashes to Ashes
6. Thumbsucker
7. Six Red Cannas
8 .Ordinar

プロフィール
ノルウェー出身のシンガーソングライター/ヴォーカリスト。ゴス・メタルバンドなどを経て2011年にノルウェーの名門レーベル〈Rune Grammofon〉よりデビュー・アルバム『Viscera』をリリース。独特のヴォーカルスタイルと美声が話題となり Swans や St. Vincent、Perfume Genius などの北米ツアーに抜擢されるなど大きな注目を受ける。2015年には〈Sacred Bones Records〉と契約し3rdアルバム『Apocalypse, Girl』を完成させる。2016年に早くもアルバム『Blood Bitch』をリリースし Pitchfork で BEST NEW ALBUM に選出されたりノルディック・ミュージック・プライズを受賞するなど世界的に注目される存在。2017年には東京/京都での来日公演を成功させる。2019年9月に3年振りとなる新作『ザ・プラクティス・オブ・ラブ』をリリース。

interview with Kindness - ele-king

結局、音楽そのものはなんでもよくて、それがポップ・ソングでもいいし、カントリー・ミュージックでもいい。いっそ、音楽である必要すらないんです。Tシャツを作ったっていいし、本を書いたっていい。その過程が大切なのであって、結果はなんでもいい

 カインドネスことアダム・ベインブリッジの音楽にはアンビヴァレントなところがある。そこにはスタジオやベッドルームでひとりプログラミングやレコーディングに打ち込む姿とダンスフロアの熱や快楽が同時に刻まれている。その歌からは内省の陰影と艶やかで官能的なムードとが同時に吐き出される。

 Something Like a War──何か戦争のようなもの、というタイトルが掲げられたこの新しいレコードについてもそれは同様で、「何か」「のような」と断定を避ける言葉を重ねて用いた題も、ふたつの極の間で揺れ動く彼の作家性を物語っている。これは戦争ではないけれど、戦争でないこともない。

 前作から5年ぶりに発表されたこの新作には、少なくない数の音楽家たちがフィーチャーされている。特にシンガーの起用は際立っていて、パワフルなジャズミン・サリヴァン、ケレラ、幾度かのコラボレーションを重ねてきた(そして、この国ではまだ圧倒的に過小評価されている)ロビンなど、それぞれのシーンで知られたアーティストもいれば、新たな仲間たちも歌声を披露している(彼のコラボレーターには女性が圧倒的に多いが、それには「特に理由はない」とベインブリッジは言う)。様々な歌声が聞こえてきはするものの、だがどこをどう聞いてもカインドネスのレコードであることもまたユニークだ。その歌は、自他のあわいで揺れ動く。

 インタヴューに入る前に、『Something Like a War』が6月に事故で亡くなったフィリップ・ズダールとつくられた作品であることには言及しなければならないだろう。鋭敏な感覚とエレクトロニック・ダンス・ミュージックへの深い愛とを併せ持った、フレンチ・タッチを代表するプロデューサーである彼との最期の仕事について、その創造性について、ベインブリッジは言葉を尽くして語ってくれた。

 ソランジュやロビンとの共同作業、ニューヨークの文化風土、他者との共同作業、融和と分断、ソーシャル・メディア……こちらが投げかけたものについても、そうでないものについても、多岐にわたるテーマについて、カインドネスはひとつひとつ丁寧に自身の言葉を紡ぐ。

ティーンエイジャーの頃は、クラブやパーティに行って好きな音楽を聴き漁ったり、レコード・ショップに行って新しい音楽を見つけたり、友だちとDJをやったりして、音楽のすばらしさや楽しさに目覚めていくと思うんです。その過程が何よりも大切で、フィリップはその興奮を決して忘れない人でした。

あなたはいま、どこを拠点に活動しているんですか? その土地から受ける影響などはありますか?

アダム・ベインブリッジ(Adam Bainbridge、以下AB):いまはロンドンに住んでいます。ロンドンに戻って来たことは本当に嬉しいけれど、これまでの作品はニューヨークに住んでいたときにレコーディングしたもの。だから、ロンドンからの影響というよりも、ニューヨークのカルチャーから影響を受けているところが大きいと思いますね。

そうなんですね。では、新作の話題に入る前に、あなたのプロデューサーとしての活躍について聞かせてください。あなたはソランジュの『A Seat at the Table』(2016年)にプロデューサーやプレイヤーとして携わっていました。彼女との制作はどうでした?

AB:ソランジュと一緒に仕事をしたことは、その後の僕のレコード制作に直接的かつ多大な影響を与えたと思っています。様々なプレイヤーたちや、それぞれ個性を持つ最高峰のミュージシャンたちとのコラボレーションも貴重な体験でしたね。
 ソランジュはひとつの作品の世界観を軸にしながら、宇宙を創造するような作品づくりをする人。そんな風に世界を作り上げる人と一緒に仕事をしたのは初めての経験で、とても刺激になりました。彼女は視覚的にコンセプトを作る人で、そこは本当にすごいと思いましたよ。
 自分自身を律しながら、全体の隅々まで目を配る──あんな風に全体を統括できる人には初めて会ったし、その壮大なプロセスを目の当たりにすることは本当に刺激的で。レコード制作のプロセスがそのまま自分たちの関係性を投影している感じだったのも、大いにインスピレーションを与えてくれたと思います。

ソランジュはどんなアーティストですか?

AB:とても視覚的なアーティストだと思いますね。音楽的にもかなり幅広いことをやっていて、きわどいことにも挑戦しているし、それを視覚化することにも非常に長けている。常にメインストリームの音楽ばかりを作っているというわけでは決してないのに、それでもビルボード・チャートでナンバー・ワンを獲ったりするのは、本当にすごいことだと思いますね。
 僕はここ2作(『A Seat at the Table』、『When I Get Home』)がとても好きだけど、どちらも伝統的なポップ・レコードという感じではないですよね。かなり実験的なこともやっているんだけれど、それでいて商業的な成功を収めているというのは、素直に感動に値すると思います。
 良い曲を書いて演奏するだけではなく、その曲をどうプレゼンテーションするか、ときにはどういったファッションで視覚化するかということまで、総合的なパッケージとしての楽曲を生み出せる人なんです。

あなたがプロデュースで参加したロビンの『Honey』(2018年)も素晴らしいレコードでした。彼女とは以前もコラボしており、今作にも参加しています。ロビンはどんなアーティストですか?

AB:ソランジュのように外部から刺激やインスピレーションを受けている感じはないんですが、彼女もまた素晴らしいバランス感覚を持ったアーティストであることは間違いないです。とても良い曲を書くし、(プロデューサーの)マックス・マーティンとは23年も前から優れた音楽を作ってきています。
 ポップ・ソングを書く彼女のソング・ライティングの才能は、いまもまったく衰えていない──それはすごいことだと思うんです。ジョン・レノンでさえ、23年間もポップ・ソングを作り続けることができなかったんだから。長いキャリアがありながら、一度も下降線を辿ることがなかった。むしろ、ずっと上がり続けている人だと思います。
 人は歳を重ねるごとに守りに入っていくものだけど、彼女はより冒険的になっている感じがします。より実験的に、色々なことに挑戦していっていると思う。それは本当に素晴らしいことだと思うし、尊敬していますね。

優れたアーティストたちとのコラボレーションは、あなたの創作活動に直接的なインスピレーションを与えていますか? それとも、思想やアティチュードの面で影響を与えている?

AB:それについては、一緒にレコードを作っているときにはまだ答えが出ないんです。むしろ、何年か後、そのレコードを聴き直して振り返ったときに気づくことなのかもしれない。
 僕は、先日亡くなったカシアスのフィリップ・ズダールと長年一緒にやってきました。彼を失ってみて初めて、でき上がった音楽が全てではなかったことを悟ったんです。その音楽が素晴らしいかどうか、僕たちの創作活動が上手くいったかどうかは、本当はどうでもいい。僕にとっていちばん大切だったのは、彼と一緒に音楽をつくっていた時間や、僕たちの関係性だったんです。
 結局、音楽そのものはなんでもよくて、それがポップ・ソングでもいいし、カントリー・ミュージックでもいい。いっそ、音楽である必要すらないんです。Tシャツを作ったっていいし、本を書いたっていい。その過程が大切なのであって、結果はなんでもいいんですよね。
 だから、色々なインスピレーションを得たということが大切なのであって、結果的に生まれたサウンドそのものはそれほど重要じゃないのかもしれない。経験から何かを得るということが大事だと思うので。

フィリップの話が出ましたね。以前、あなたはデビュー・アルバムの『World, You Need a Change of Mind』(2012年)について、フィリップとのコラボレーション作品だと言っていました。それは今作も同じ?

AB:ファースト・アルバムは共同プロデュース作で、フィリップにはレコーディングのイロハを教わりました。僕はそれまでレコードを作ったことがなかったから。どういうふうに曲作りを進めればいいのか、どういうプロセスでレコーディングを進めるのか、どういったサウンドを取り入れるべきなのか──そういったことは全部彼に教わりました。だから、イチから彼と一緒に作り上げたレコードだと思っていますね。
 でも、新作ではミックスだけを担当してもらって、プロデュース自体は僕がひとりで手掛けています。でも僕は、ミキシングというのはもっとも重要なプロセスのひとつだと思っていて。だから、そこは絶対にフィリップに担当してほしかったんです。
 フィリップが出演している「Mix With the Masters」のインタヴューを観たんですが、何時間にもわたってミキシングの技術や秘訣をミキサーを前に話している映像でした。その中で、彼がミックスのプロセスは、実は非常に重要なんだと説明していて。ミックスによってそのアーティストをすごく助けることもできるし、完全に違う方向へと導いてしまうこともあると言っていたのが印象的です。
 特に、自分がレコーディングやプロデュースに関わっていないレコードをミックスするときはとても大胆になるし、すごく極端な方向転換をさせることが楽しいと言っていましたよ。例えば、自分がその曲でギターを弾いていたり、ピアノを弾いていたりしたら、そのときの自分の感情が乗っているし、愛着もあるから、大胆になりきれずに守ってしまうんでしょうね。でも、自分が演奏していなかったら、かなり大きく方向性を変えてみたり、大胆なアプローチができるんです。
 だから、彼がこのアルバムをミックスしてくれるのは、とても楽しみでした。彼はレコーディングにはもちろん参加していないし、事前にデモすら聴かず、いきなりミキシングの作業に飛び込んだんですから。彼には、僕のミックスに対するアイディアも伝えなかったし、僕がミックスしたデモもあえて聴かせなかった。彼には新鮮な耳と実験的な感覚でミックスしてほしかったので。
 最初にミックスしてもらったのは“Softness As A Weapon”でした。この曲のヴォーカルはオリジナルのものよりずっとラウドで、エキゾティックな雰囲気のディレイを多用していて、下手するとヴォーカルより目立っている部分もある。最初にこのミックスを聴いたとき、まるで出会ったことのないエイリアンの音楽みたいだって思いましたよ。こんなサウンド、いままで聴いたことがない、という新鮮な驚きがありました。僕だったらこんなに大胆にはなれないと思いましたね。
 だから、そんなふうに僕よりも勇気があって大胆で、実験的でおもしろいことをやってくれる人を求めていたんだと思います。

それほどフィリップのミックスが重要だったんですね。では、彼の人間性や音楽家としての特質を教えてもらえますか?

AB:ずっと、常に音楽と共にいる人でした。50歳を過ぎて、あんなに新しい音楽も古い音楽もこよなく愛して、DJをやったりパーティに出掛けたり──あそこまで音楽と一体になった生活を送れる人はなかなかいないと思います。フィリップはいつまでも19歳の少年のようにDJをやったり、音楽をつくったりしていましたよ。
 最期にパリで一緒に過ごしたときも、ずっとこんなふうでいたいねと話したところだったんです。音楽を愛して、音楽と共に歳をとって、ずっと音楽に囲まれていたいねと。
 音楽をつくる人間にとって、DJをやることってすごく大切なことだと思うんです。DJをやっていれば、たとえスタジオに籠もって音楽をつくっていても、ダンスフロアの熱狂を決して忘れることはないから。それを忘れなければ、素晴らしいダンス・レコードが作れるんだって、彼は言っていましたよ。
 誰もが若い頃からスタジオ・エンジニアとして、ましてやプロデューサーやミキサーとして活躍できるわけではないですよね。ティーンエイジャーの頃は、クラブやパーティに行って好きな音楽を聴き漁ったり、レコード・ショップに行って新しい音楽を見つけたり、友だちとDJをやったりして、音楽のすばらしさや楽しさに目覚めていくと思うんです。その過程が何よりも大切で、フィリップはその興奮を決して忘れない人でした。

彼の訃報を聞いたときにどんなことを思いました?

AB:訃報を聞いたとき、僕はパリにいたんです。道でばったり会った友だちが教えてくれました。彼は、僕がインターネットでこのニュースを知ることになったら嫌だと思って、わざわざ教えに来てくれたみたいで。最初はもちろん信じられなくて、本当に混乱した、というのが正直なところです。
 周りの人に元気を与えるエネルギーを持った人っていますけど、フィリップはまさにそんな人だったので。生きるエネルギーに満ち溢れていて、それを周囲の人々にも分け与えるような人だった。だから、まさか彼がいなくなるなんて思いもしませんでした。いまでも彼がいなくなったことが信じられません。彼のエネルギーは、まだ僕のまわりに漂っているような気がしてならないんです。

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僕が音楽をつくるのは、感動したい、新しい発見をしたい、音楽をつくる楽しさを体感したい──そういう思いに駆られるからなんです。それは、他のミュージシャンとのコラボレーションについても同じ。純粋にその人たちとやってみたいという、その思いだけで。

新作について教えてください。ビートが力強くて、すばらしいダンス・レコードだと思いました。ご自身ではどんな作品になったと思います?

AB:とても満足しています。ファーストとセカンドのいいとこどりみたいな作品になったと思っていますね。
 セカンド・アルバム(『Otherness 』、2014年)は、僕にとっては大きなチャレンジでした。フロア向けの4つ打ちを極力使わないように意図したレコードだったので。
 もちろん、僕はハウス・ミュージックもエレクトロニック・ミュージックも大好きです。ですが、ソング・ライティングの観点からいうと、そういう音楽を作っていると、曲を書くという作業がどうしてもおざなりになりがちなんです。4/4のビートが乗っていれば、体裁は整ってしまうので。だから、セカンド・アルバムでは、1曲を除いて4つ打ちを極力排除しました。商業的なエレクトロ・ミュージックに嫌気がさしていた時期だったというのもあって、もっとシンセの音を大切にしたり、ビートに頼らないレコードづくりをしたつもりです。
 それで、このサード・アルバムでは、「OK、そろそろダンスフロアに復帰するか」という感じで作ったんです(笑)。結果的に、とてもエキサイティングなダンス・レコードになったと思うし、すごく満足していますね。
 特に、色々なゲスト・シンガーに歌ってもらったのが大きくて。自分で曲を書いて、自分で歌うとなると、そのレコードを聴く回数が格段に減るから。自分の声を聴くのはあんまり気持ちのいいことじゃないですし(笑)。だから、他のシンガーに歌ってもらったことで、僕自身が純粋にこのレコードを楽しむことができました。繰り返し聴いていますよ。

前作とは対照的に、この『Something Like a War』では新しい友人たちとコラボレーションをしています。この変化の理由は?

AB:ニューヨークでレコーディングしたことが大きく影響していると思いますね。ニューヨークに住んで音楽をつくっていた時期は、とてもエキサイティングな経験でした。
 ニューヨークで録音されたアイコニックなレコードはたくさんありますよね。デヴィッド・ボウイ、ブロンディ、シック……。彼らの作品は、優れたミュージシャンや音楽シーンだけでなく、ニューヨークの持つ空気感そのものが作り上げたレコードだと思います。
 マスターズ・アット・ワークのレコードもそうですね。単なるニューヨーク・ハウスのレコードというだけではなくて、ニューヨークそのものを体現しているというか。ニューヨークには、ダンス・ミュージックひとつをとってみても、サルサやジャズ、ラテン音楽など、様々なジャンルの音楽が混在している。
ジャズ・ミュージシャンやラテン・ミュージシャン、それに若いミュージシャンとセッションしたことも、僕の作品づくりには大きな影響を与えていると思います。ホーン・セクションは若いジャズ・ミュージシャンに演奏してもらっているし、ピアノやシンセサイザーにも若い女性アーティストを起用しています。
 そういう未来に可能性を持った若いミュージシャンと一緒にニューヨークで作品を作ることはエキサイティングでした。ニューヨークで最高のミュージシャンたちとコラボすること自体、とてもロマンティックな体験でしたね。
 僕は8thアヴェニューにある「ザ・ミュージック・ビルディング」という建物にスタジオを持っていたんですが、そこは60〜70年代に多くのミュージシャンがレコーディングした伝説のビルとしても知られています。確か世界で唯一、ビル全体が音楽関連施設に特化した建物だったはず。ザ・ストロークスやビリー・アイドル、マドンナなんかも、このビルにリハーサル・ルームを持っていました。僕は2階にスタジオを構えていたんだけど、同じ階でブラッド・オレンジもレコーディングしたことがあるらしくて。
 そういう歴史や文化が息づく場所にスタジオを持てたこと、そこでレコーディングができたことも、とても甘美な経験でした。まるで映画の世界の話のような感じで。

なるほど。他者と音楽をつくるということは、あなたにとってどんな意味がありますか?

AB:前に言ったことに近いけど、色々なミュージシャンやアーティストとコラボレーションすることは、単純に曲をつくることに留まらないことだと思います。僕がつくる音楽はSpotifyで話題になったり人気が出たり、商業的な成功を収めるようなタイプではないですし。もしそういう音楽をつくる必要があるなら、いまとは全然違ったつくりかたをすると思いますね。
 僕が音楽をつくるのは、感動したい、新しい発見をしたい、音楽をつくる楽しさを体感したい──そういう思いに駆られるからなんです。それは、他のミュージシャンとのコラボレーションについても同じ。純粋にその人たちとやってみたいという、その思いだけで。コラボしたいからコラボする──それに尽きるかもしれません。
 そういう純粋な思いで一緒に作ったものは、まったく予想しなかった結果をもたらしてくれます。僕がざっくりしたアイディアを持っていって、他のミュージシャンたちが即興でセッションを重ねていって、ひとつの曲として完成する。ほんの小さなアイディアが、想像もしなかったような壮大な曲へと展開していくこともあります。
 例えば、「ちょっと使ってみたいな」と思ったサンプルがあって、それを中心に曲作りをしているときにふと、「あれ? もしかして、このサンプルが邪魔になっている?」と思うことがあって。それを取り除いたら、まるで森林の中の滝のように一気に音楽が流れ出してきて、素晴らしい曲へと進化を遂げたりもする。逆に、ひとつのサンプルが完璧なハウス・ミュージックを作り上げることもありますし。
 そこがコラボによる曲づくりの面白さなんです。意図せぬ流れに身を任せることで、色々なミュージシャンのアイディアのコラージュができ上がるんです。

その一方で、あなたは自分の音楽をパーソナルなものだと思いますか?

AB:そう思いますね。例えば、僕がソランジュのレコードに参加したり、逆にロビンが僕のレコードに参加したりして、お互いに、その人の曲に貢献しあうのがコラボレーションですよね。
 でも、感情的な部分や、自分の頭の中にある方向性に軸があれば、それはパーソナルな場所にい続けると思うんです。僕もロビンのアルバム『Honey』の曲に参加したけれど、それによってその曲が違った風合いや方向性を持つかもしれない。でも、その曲が持つ感情的な部分は、彼女のパーソナルなものであり続けると思います。
 僕のアルバムについても同じです。色々な人とコラボレーションして、サウンド的には広がりや厚みが出て、僕自身の予想していなかった意外性もはらんでいたりはするけれど、その根底にあるコンセプトや感情的な部分は僕のものですから。とてもパーソナルなものだと捉えています。

セイナボ・セイ(Seinabo Sey)、コシマ(Cosima)、バハマディア(Bahamadia)、ナディア・ナイーア(Nadia Nair)、アレクサンドリア(Alexandria)といった新しい友人たちとは、どんな経緯でコラボするに至ったのでしょう?

AB:ジャズミン・サリヴァンはすごく有名な人だから、正式なルートでお願いをしたけれど、彼女を除けば他のアーティストたちは、元々友だちだったり音楽仲間だったりと、ごく自然な流れでコラボレーションすることになった感じです。
 アレクサンドリアは僕がラジオでインタヴューしたことが縁で一緒にやることになったし、セイナボはミュージシャン仲間に紹介してもらって知り合いました。それぞれ別々のルートから知り合って、様々な流れでコラボをお願いすることになったんだけど、ある人は自分のアイディアを送ったところからはじまったり、ある人はとりあえずスタジオで何かを一緒にやってみよう、というところから曲ができ上がったり。すごく有機的な感じでしたね。
 ナディアとは、僕にちょっとしたアイデアがあって、それを彼女の前で演奏して、彼女が即興で歌を乗せてくれて、良い感じのメロディができ上がった。そのまま何か月か放置していたんですけど、改めて歌詞を書いてみて、ナディアに歌ってもらうように正式にお願いしました。すごく自然な感じでコラボレーションが固まっていた感じでしたね。

みんな Instagram や Twitter で、自分がいま抱えている問題や悩みやストレスについて包み隠さず話していますよね。一方で、そうしたソーシャル・メディアの存在が、ストレスを生んでいたりもするんですが。このタイトルは、そうしたごくパーソナルな悩みや問題を表現しています。

あなたがコラボする相手は、国も人種も、ジェンダーやセクシュアリティも、ジャンルもバラバラな人たちです。それはどうしてなのでしょう? 性格や性質上のものですか? それとも音楽的に追い求めるものがあるからですか?

AB:色々なバックグラウンドを持つ人や様々な音楽ジャンルで活躍する人とでなかったら、コラボレーションする意味がないし、ごく退屈なものしかできないと、個人的に思っているからですね。それに、意識することがなくても、自分の周りの環境がそもそもヴァラエティに富んでいるんです。僕が付き合う人たちは、音楽関係者であるなしにかかわらず、人種だったり性別だったりセクシュアリティだったり、何もかもがバラバラ。だから、自分にとってはすごく自然なことなんです。

それはニューヨークやロンドンを拠点に活動しているということの利点でもありますか。

AB:そうですね。日本に住んでいる人たちのほとんどは日本人だから、ちょっと状況が違うかもしれないけど(笑)。ロンドンもニューヨークも、本当に人種の坩堝という感じですからね。
 ニューヨークでは、最初ブルックリンに住んで、その後クイーンズのジャクソン・ハイツというエリアに住んでいたんだけど、そこは世界中のすべての人種や国籍の人が集まっているような場所でした。本当に面白い場所で、そこに住んでいるだけで、自分の行きたい場所のすべてに近づけるような感覚でしたね。

そんなニューヨークと相似形に、あなたの音楽やスタイルは、さまざまなサウンドがミックスされた、一言で表現できないものです。社会や政治的に融和よりも分断が進んでいるように感じる現在、カインドネスの音楽は特別な意味を持つと感じます。漠然とした質問ですが、こうした感想については何を感じますか?

AB:とても良い視点だと思います。僕自身の音楽について言えば、確かに一言でジャンルを説明するのは難しいと思う。なぜなら、ひとつのジャンルの音楽をつくろうとは思っていないんですから。より多様な音楽でなければつまらないと思ってレコードをつくっているので。色んなジャンルの音楽に寛容であることは、社会の多様性に関しても寛容であることに繋がるかもしれませんね。音楽という存在が、その媒介となってくれると嬉しいです。
 それに、若い世代はより音楽のジャンルに関してこだわりを持たなくなっているように思います。僕は自分のSNSでジャーナリストやアーティストを中心に色んな人をフォローしていますが、ときどき音楽談義が持ち上がることがあって。しかも、その中心になっているのは20代の若い音楽ジャーナリストだったりするんです。いつだったか、自分たちが高校生の頃に聴いていた音楽について話していたことがあったんだけど、エモ系のバンドを聴いていたことなんかも包み隠さず話していました。そういう過程を経て、いまは幅広い音楽について語るジャーナリストになっていたり、前衛的な作品をつくるアーティストになっていたり──そういう自分の音楽的な多様性や経歴についてとても正直だし、こだわりがないところが面白いと思うんです。
 僕が音楽をやりはじめた頃はインディー・ロックの全盛期で、その頃エレクトロニック・ミュージックは、はっきり違うジャンルに分けられていた。ホワイト・ストライプスやレディオヘッドについて評論を書くようなジャーナリストは、僕たちのやっていたような音楽については言及しなかったんです。それが、いまはミュージシャンにとっても、音楽ファンにとっても、どんどんその垣根がなくなっている。すごく良いことだと思います。

あなたのレコードからはソウル・ミュージックやファンク、エレクトロニック・ダンス・ミュージックからの影響を感じます。ただ、全体的なムードや手触りには享楽性よりも孤独や悲しみ、さびしさがある。それはどうしてなんでしょう?

AB:それはたぶん、僕の個人的な音楽性や嗜好によるところが大きいんじゃないかな。DJをするときはハウスやテクノを中心にかけるんだけど、ちょっとさびしくてメランコリックなサウンドが好きで、そういうものをプレイすることが多いんです。孤独な感じとは思わないけど、シカゴ・テクノなんかはアップテンポであっても、どこか切ない感じのサウンドが多いですよね。そういうのにマーヴィン・ゲイのような、ちょっとメランコリックなものを混ぜたりもします。もちろん、合間にアップリフティングな曲もかけるけど……。
 例えば、ファーリー・“ジャックマスター”・ファンクの“Love Can’t Turn Around”(1986年)なんかはビートがかっこよくて踊りたくなるのに、どこか影のある曲じゃないですか? そういう、踊りたくなるビートがあって、かつどこかにさびしさを感じさせるような曲が好きなのかもしれません。

なるほど。本当にたくさんの質問にお答えいただいてありがとうございました。最後に「Something Like a War」というタイトルに込めた意味を教えてください。

AB:これはもしかすると、さっきあなたが言ったように、社会的な分断といったことにも捉えられるかもしれません。テクノロジーやソーシャル・メディアの発達で、いまの人たちは自分たちの感情や思考を発信することにとてもオープンになった。みんな Instagram や Twitter で、自分がいま抱えている問題や悩みやストレスについて包み隠さず話していますよね。一方で、そうしたソーシャル・メディアの存在が、ストレスを生んでいたりもするんですが。
 このタイトルは、そうしたごくパーソナルな悩みや問題を表現しています。それは目に見えるものである必要もないし、言葉にできない、表現できないものでもあって。言葉を持たない自分の中の葛藤のようなもの、と言えばいいのでしょうか。「war」といっても、視覚的に暴力的なもの、アグレッシヴなものを指しているわけじゃなくて。もっと、現代人のひとりひとりが抱えている心の葛藤のようなものなんです。

KINDNESS

待望のNEWアルバム『SOMETHING LIKE A WAR』
インディーロックファンを魅了する
ハウス〜ディスコ・モードの傑作が目立つ2019年
その決定打となる問答無用の最高傑作が本日リリース!
11/18にはタワレコ渋谷に登場!11/19には一夜 限りの来日公演も決定!


公演概要
2019年11月19日(火) 渋谷 WWW X

OPEN 18:30 / START 19:30
オールスタンディング:¥6,500(税込/別途1ドリンク代)
※未就学児(6歳未満)入場不可

企画・制作・招聘:Live Nation Japan
協力:Beatink

お問い合わせ:info@livenation.co.jp
公演リンク:www.livenation.co.jp/artist/kindness-tickets

チケット詳細
一般発売:9/7(土)10:00~

カインドネス サイン会
タワーレコード渋谷店にてスペシャル・インストア・イベント開催決定!
待望の最新アルバム『Something Like A War』の発売と、4年ぶりとなる来日公演をして、スペシャル・サイン会の開催が決定した。

開催日時:2019年11月18日(月)20:00〜
場所:渋谷店 6F特設イベント・スペース
出演:カインドネス
内容:サイン会
詳細:https://towershibuya.jp/2019/08/29/137608

参加方法:
タワーレコード渋谷店にて9月6日(金)より、カインドネス最新作『Something Like A War』(日本盤CD/輸入限定盤LP)もしくは来日公演前売りチケットをご購入いただいたお客様に、先着でイベント参加券をお渡し致します。

※ CD/LP をご予約いただいたお客様には優先的にイベント参加券を確保し、対象商品ご購入時にお渡しいたします。なお、チケットの販売(予約・取り置き不可)は9月7日(土)より1Fのぴあカウンターで開始いたします。ご注意ください。

配券対象店舗:渋谷店

対象商品:
Kindness『Something Like A War』日本盤CD (BRC609) / 輸入限定盤 LP (FEMNRGLP3C1)
来日公演前売りチケット 11月19日(火) 東京 WWW X 公演前売チケット(Pコード:162-759)
※9月7日(土)より1Fぴあカウンターで販売開始

Danny Brown - ele-king

 デトロイト出身の異色のラッパー、ダニー・ブラウンが3年ぶりの新曲“Dirty Laundry”をリリースした。驚くべきことに、プロデューサーはQティップである。来るべきアルバムのほうにも注目が集まっているが、そちらにはお馴染みのポール・ホワイトに加え、ジェイペグマフィア(!)、フライング・ロータス、スタンディング・オン・ザ・コーナーがプロデューサーとして参加、さらにラン・ザ・ジュエルズ、オーボンジェイアー、ブラッド・オレンジらがゲストとして招かれているという。続報を待とう。

DANNY BROWN

Qティップがプロデュースした新曲“DIRTY LAUNDRY”をドロップ!
ニュー・アルバム『UKNOWHATIMSAYIN¿』には豪華プロデューサー/ゲストが集結!

異彩を放ち続ける人気ラッパー、ダニー・ブラウンが、エイフェックス・ツインやフライング・ロータスを擁する〈Warp Records〉との電撃契約も話題となった前作『Atrocity Exhibition』から3年振りとなる、新曲“Dirty Laundry”をリリース!

現在トークバラエティー番組「Danny's House」でホストも務めるなど、セレブリティーとしての地位も築いているダニー・ブラウンだが、ファンの間では、かねてより新作の大物プロデューサーが誰になるのかが噂されていた。本人のSNSや最近のインタビューで、ア・トライブ・コールド・クエストのQティップが、エグゼクティブ・プロデューサーであることが明かされ、期待が高まり続けていた中、彼らしいユーモア溢れるミュージック・ビデオと共に、新曲“Dirty Laundry”が解禁された。

Danny Brown - Dirty Laundry
https://youtu.be/1okqvhq7ZaI

自身やア・トライブ・コールド・クエストの作品を除けば、Qティップが他アーティストをプロデュースするのは、1995年のモブ・ディープ『The Infamous』以来とあって、大注目が集まっている新作のタイトルは『uknowhatimsayin¿』。そこにはQティップの他に、ポール・ホワイト、ジェイペグマフィア、フライング・ロータス、スタンディング・オン・ザ・コーナーがプロデューサーとして名を連ね、ラン・ザ・ジュエルズ、オーボンジェイアー、ジェイペグマフィア、ブラッド・オレンジがゲストとしてフィーチャーされている。

label: Warp Records
artist: Danny Brown
title: Dirty Laundry
release date: 2019.09.06

iTunes: https://apple.co/2kx16Yh
Apple Music: https://apple.co/2lF6qJi

For Tracy Hyde - ele-king

 もちろんこれまでの作品も音質/テクスチャへの強いこだわりを感じさせるものだったが、本作を一聴してまず感じるのは、それにもまして断然音がいい(整頓されている)、ということだ。時に出現するシューゲイザー的ノイズの中にあっても、そのノイズは丁寧にコントロールされ、理知的に配置されているふうだ。これはエンジニアリングやアンサンブルにおける音域統御が精度を増したことによるものであろうが、もっと根源的なレベルにおいてのことにも思える。J-POPまでをもパースペクティヴに収められながら、それぞれの音が文化的所与物としての性格を完全に把握された上で、そこにあることを統御されている感覚。いわゆるバンド・サウンドであることに違いないのだが、本作でそれを駆動する志向/思想は、60年代以来敷衍されてきた、ロック・バンドたるものメンバー各人が個性的存在として偶発的にパッショネイトしあうべし、という前提とすれ違うようなのだ。それはしかし、いま一番味わってみたい類のスリルにみちたすれ違いでもある。

 For Tracy Hyde は、2017年に夏bot (メンバーの名前です)の宅録プロジェクトとして U-1 (メンバーの名前です)とともに始動した。2014年には、現在はソロ・アーティストとしても大活躍のラブリーサマーちゃんをヴォーカルに迎え、女声をフィーチャーしたバンドとしての形が整った。その後ラブリーサマーちゃんの脱退を経て、新たに女性ヴォーカリスト eureka が加入、さらには前ドラマーの脱退に伴い、今作から草稿(メンバーの名前です)が加わった。いわゆるドリーム・ポップやシューゲイザー・サウンドに根ざしつつも、近作では、一見すると同時期に勃興してきた2010年代シティ・ポップの潮流に呼応するようなアンサンブルを取り入れたりもしたのだった。かといって、同時期の少なくないバンドがそうしたようなアップリフティングでストレートな都市生活礼賛に陥ることはなかった。前作『he(r)art』に色濃く反映されていた、周囲で沸き起こるムーヴメントを内側からクールに指弾するようなそうした手つきは、したたかでそこはかとない批評性を匂わすものだった。その時期から、このバンドが一筋縄ではいかない(好ましい)ねじれを孕んでいることに強く興味を惹かれたのだった。

 そして本作に至り、その好ましいねじれはさらに洗練を究めたように思われる。3本のギターが音域とフレージングを分け合うアンサンブルや、Alvvays をレファレンスとしたというそのサウンドメイクは、ドリーム・ポップ/ギター・ポップの系統を深く消化したものながらも、楽曲構造自体、特にメロディーが極めて確信的にJ-POPめいているのだ。(私のような)古式ゆかしいオルタナティヴ・ロック・ファンの感覚からすると、本来J-POP性からの逃避こそがオルタナティヴ・ロックの金科玉条だったはずであって、その逃避度合によってそのアクトが「本物」かどうかを決されるという死活的要件だったはずだ。しかしここには、そういった大前提すらがまず存在していず、ほとんどの曲で90年代のJ-POP黄金時代を彷彿とさせる(ごくウェルメイドでポップ極まりない)メロディーが横溢しているのだ。その驚き。そしてその新鮮さ。

 思えばこの10年ほどで、オルタナティヴ・ロックの他のシーン、例えば DTM と言われる小さくない文化圏ではこうした傾向は珍しいものでなくなっている。tofubeats らの活躍をみるまでもなく、例えばブックオフの280円コーナーに埋もれている過去のCDに収められたメジャーなポップスを自らの音楽の側へ主体的に引き寄せるという価値逆転的行き方は、いまでは既に珍しいことでなくなっている。For Tracy Hyde というバンドと本作は、そうした心性をオルタナティヴ・ロックというフィールドに持ち込んだとすると分かりいいかもしれない。いや、持ち込んだというよりはむしろ、ごく自然に彼らの中に胚胎している心性なのかもしれない。それを指して「インターネット世代的」とひとくくりにしてしまうことも可能かもしれないが、そういう大づかみの理解から漏れ出る魅力も本作は湛えてもいる。
 ロックが時代の先頭ランナーから脱落して久しいいま、さらには「新しい」音楽はもうこれ以降生まれえないのではないかという考えが多くの人に憑依しているいま、こうした心性をもって退行だとか保守化だとか指摘するのはたやすいかもしれない。しかしながら、ポップ・ミュージックがその前進を止めたようにみえるいまだからこそ、いま一度ポップ・ミュージックの歴史の中で前提とされていた事柄(例えば、J-POP性を嗅ぎ取れるロックは唾棄すべきものだ、とすることとか)を、自覚的かつ無垢な興味をもって相対化することは、決して保守的な仕草ということはできないだろうし、むしろドラスティックに批評的でもある。
 はっきりいっておくと、オルタナティヴ・ロックを含めたロック一般は、ポストモダン以降の状況に十分に対応できてこなかったのかもしれないのだ。相対主義が席巻して以降のいまにあって、J-POP性と(確信的に)はつらつと戯れる最新のオルタナティヴ・ロックが登場したということは、ロックの延命にとってのカンフル剤にはならぬにせよ、相当に痛快なことなのではないか。ロマン主義的なロックンロール個人主義から離れ、過去のアーカイヴに即時的にアクセス可能な環境の中でアンサンブルとサウンド全体を文化的構築物として強く統御せんとする心性は、こうした状況下によってさらに強くドライヴするし、インターネット空間的コミュニケーションの中でさらに強く純化されうるし、実際この作品はされているように思う。

 ところで本作のタイトルは『New Young City』である。「ニュー」と「ヤング」というのは同義反復でないかしらと一瞬思うわけだが、これまで論じてきたことに照らすと、律動する若い肉体を祝祭するロック用語としての「ヤング」(かつてグループ・サウンズに氾濫した「若い」という形容詞を思い起こして下さい)のその先へ、と読むこともできる(はちゃめちゃに壮大に読むなら、「New Young」とは、アーサー・C・クラークの名作『幼年期の終り』における「新しい子どもたち」のことなのかしら、とも思ったりする……)。いずれにせよ、このニューヤングたちは、甘み(J-POPも含めたポップス文化)を厳しく統御し、この連作短編めいたアルバムにまとめたのだった。青春の群像を物語ろうとする細やかな歌詞も含め、きわめて精緻な楽曲の組み上げぶりから、オルタナティヴ・ロック風のシンフォニーめいたなにかを作り出そうとした強い意志も感じる……とここまで書いて、(M5のように直接的な影響を感じさせる曲もあるし)ザ・ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』を思い起こしたのだが、実際バンドのプロフィールに「21世紀のTeenage Symfony for God」を作り出す、と書いているのを見て、得心。そういう意味で、前段までを費やしつらつらと述べてきたような現在における状況論的な価値を超え出て、未来にわたって聴くものの青春を寿ぐ音楽作品としてエバーグリーンな魅力も備えているのだった。極めて2019年的であると同時に、無時間的。この先どんなふうにこの作品が聴き継がれていのか、それを考えるのもまた楽しい。

ralph - ele-king

 馴れ合いなら首を吊ればOK──2017年の“斜に構える”で注目を集めたラッパーの ralph が、初のEP「REASON」をリリースする。すでに同作収録の“No flex man”が先行公開中だが、「服着たってモブキャラ/俺はパジャマ姿でも様になる」など、やはりリリックが印象的。そしてベースもビシビシ身体に響いてくる……なんと、「REASON」では全曲を Double Clapperz がプロデュース! これは期待大。

ralph - REASON

唯一無二のラップとハードなストーリーで注目を集める ralph のキャリア初となるEP 「REASON」が9月6日にリリースされる。

ralph が本作でフォーカスしたのはラッパーとしての自分とラップを始める前のストーリー。収録された5曲にはこれまでの彼自身の経験から生まれたパーソナルなメッセージが込められている。EPに収録された彼のストーリーを通じて、ralph の嘘偽りのない一貫した哲学を感じることができるはずだ。

制作陣には、グライムを軸に活躍するプロデューサー・チーム Double Clapperz が全曲をプロデュース。グライムやUKドリルといったラップ・ミュージックの最新トレンドを貪欲に取り入れながら、ダークで独特な世界を生み出している。

ralph / アーティスト
持ち前の声とストーリーを武器に東京のシーンを中心に着実に支持を集める。
2017年に SoundCloud で発表された“斜に構える”で注目を集めたことをきっかけに、2018年には dBridge & Kabuki とのスプリット・コラボレーションEP「Dark Hero」をレコード限定でリリースし、即完売となった。2019年6月にEPに先駆けて発表された先行シングル“No Flex Man”のミュージック・ビデオはすでに巷で話題となっている。
2019年9月、ファーストEP「REASON」を発表。今後のさらなる飛躍が期待される。

Instagram : https://www.instagram.com/ralph_ganesh/

Label : KERV
Artist : ralph
Title : REASON
リリース : 2019.9.6

トラックリスト
1. BLACK HOODIE
2. Hungry Dogs
3. piece of cake
4. No Flex Man
5. REASON

Streaming : https://hyperurl.co/ralph_reason
Music Video : No Flex Man https://youtu.be/nOeOYxvr7t4

Gilles Peterson - ele-king

 少し前に告知されていた10月12日のジャイルス・ピーターソンの来日公演だけれど、あらためてその詳細が発表された。Studio X にはジャイルス本人に加え、昨年アルバムをリリースした松浦俊夫と、同じく昨年コラボレイトを果たしたGONNO × MASUMURAが出演する。Contact にはDJ KAWASAKI や SOIL&"PIMP"SESSIONS の社長、そして MASAKI TAMURA、SOUTA RAW、MIDORI AOYAMA の「TSUBAKI FM」の面々が登場! ヴェテランと若手の共演をとおして、現在進行形のUKジャズやハウスと出会い直す、素晴らしい一夜になりそうだ。

Gilles Peterson at Contact
2019年10月12日(土)

Studio X:
GILLES PETERSON (Brownswood Recordings | Worldwide FM | UK)
TOSHIO MATSUURA (TOSHIO MATSUURA GROUP | HEX)
GONNO x MASUMURA -LIVE-

Contact:
DJ KAWASAKI
SHACHO (SOIL&”PIMP”SESSIONS)
MASAKI TAMURA
SOUTA RAW
MIDORI AOYAMA

Foyer:
MIDO (Menace)
GOMEZ (Face to Face)
DJ EMERALD
LEO GABRIEL
MAYU AMANO

OPEN: 10PM
¥1000 Under 23
¥2500 Before 11PM / Early Bird
(LIMITED 100 e+ / Resident Advisor / clubbeia / iflyer)
¥2800 GH S Member I ¥3000 Advance
¥3300 With Flyer I ¥3800 Door

https://www.contacttokyo.com/schedule/gilles-peterson-at-contact/

Contact
東京都渋谷区道玄坂2-10-12 新大宗ビル4号館B2
Tel: 03-6427-8107
https://www.contacttokyo.com
You must be 20 and over with photo ID

Swans - ele-king

 これは驚きのニュースだ。オルタナティヴ~エクスペリメンタルの大御所バンド スワンズが、なんとインダストリアル~ドローンの俊英ベン・フロスト(ちなみに彼はかつてイアン・バンクスの小説『蜂工場』のサウンドトラックを手がけてもいる)を新たにメンバーに迎え、ニュー・アルバム『Leaving Meaning』を10月25日にリリースする。いやもちろん、彼らはすでに5年前に共演しているし、そもそもいまはレーベルメイトだし、00年代以降のドローンの動向を考えてもこの合流はなんら不思議なことではないのだけど、まさか同じバンド・メンバーになってしまうとは。現在、アルバムより“It's Coming It's Real”が先行公開中。

 今年はディー・テートリッヒェ・ドーリスの再発をした新潟の〈SUEZAN STUDIO〉レーベルが、今度はジャーマン・ニューウェイヴ(ノイエ・ドイッチェ・ヴェレ)の伝説のレーベル〈ZickZack〉作品を再発する。
 〈ZickZack〉はポストパンクの影響を受けて1981年にハンブルグに設立されたレーベルで、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンをはじめ、地元のバンド、パレ・シャンブルク(そしてホルガー・ヒラーとトーマス・フェルマン)、ディー・クルップスやアンドレアス・ドーラウなどのリリースで広く知られている。ラジカルであり、ユーモラスであり、とにかく面白いレーベル。この夏8時間プレイをした石野卓球さんも大好きなレーベルです。
 再発計画の第一弾はアンディ・ジョルビーノ((Andy Giorbin)の2枚のアルバム。ハンブルグのアンディ・ジョルビーノの音楽は、ジャーマン・ニューウェイヴらしいコミカルさ、子供っぽさとアートへの情熱が籠もった面白いサウンドで、〈SUEZAN STUDIO〉らしくマニアックなはじまりです(笑)。そしてこれはかなり期待できる再発なのはじまりなので、注目しましょう。


アンディ・ジョルビーノ/歓喜の歌
(Andy Giorbino / Lied an die Freude)

1981年のファースト・アルバム。エイフェックス・ツインも顔負けの子供っぷり満載のプリミティヴ・エレクトロ・ミュージック。ボーナストラック付き。

アンディ・ジョルビーノ/優美と尊厳
(Andy Giorbino / Anmut und Würde)

1983年のセカンド・アルバムで、ホルガー・ヒラーも参加。80年代ドイツ・エレクトロのマスターピース。ボーナストラック付き。

https://suezan.com/newrelease.htm

Thom Yorke - ele-king

 彼のことを見直したのは2017年だった。例のテルアヴィヴ公演をめぐるごたごたである。かの地で演奏することはパレスティナへの弾圧に加担することにほかならない、とイスラエルにたいする文化的ボイコットを推奨する団体「アーティスツ・フォー・パレスチナ・UK」がレディオヘッドを非難、5人それぞれに公演の中止を要請したのだ。それにたいしトム・ヨークは「ある国で演奏することは、そこの政府を支持することとおなじではない」と一刀両断、バンドはそのまま予定されていた公演を敢行する。ちなみに糾弾側にはロジャー・ウォーターズやサーストン・ムーアなども名を連ねていたのだけれど、もっとも手厳しかったのは映画監督のケン・ローチで、「弾圧する側に立つのか、弾圧されている側に立つのか」と容赦のない二択を迫った。
 この混乱はアンダーグラウンドにまで飛び火し、翌2018年、「イスラエルにたいする学問・文化ボイコットのためのパレスティナ・キャンペーン(PACBI)」による協力のもと、ベンUFOやカリブー、フォー・テットやローレル・ヘイローなどが「#DJsForPalestine」というハッシュタグを共有、つぎつぎとボイコットへの賛同を表明していった(ちなみにフォー・テットはトム・ヨークとコラボ経験がある)。そのような対抗運動は「BDS(Boycott, Divestment, and Sanctions:ボイコット、投資引きあげ、制裁)」と呼ばれているが、かのブライアン・イーノもその強力な支持者である。
 それらの経緯や各々の意見については『RA』の特集が詳しいので、ぜひそちらを参照していただきたいが、このボイコット運動の最大の問題点は、それがあたかもこの地球上に、「良い国家」と「悪い国家」が存在しているかのような錯覚を撒き散らしてしまうことだろう。イギリスやアメリカ(や日本)では大いにライヴをやるべきである、なぜならイギリスやアメリカ(や日本)はイスラエルとは異なり、そこに生きる「すべての」人間にたいし何ひとつ、いっさいまったく抑圧的なことをしない善良な国家だから──ある特定の国家のみを対象としたボイコット運動は、国家そのものにたいする疑念を覆い隠してしまう。

 とまあそういう「音楽に政治を持ち込もう」的な混乱のなかで、いつの間にかその存在さえ忘れかけていたトム・ヨークのことを思い出すにいたったのである。彼の音楽について考えなくなってしまったのはいつからだろう、むかしはレディオヘッドの熱心なファンだったはずなのに──もちろんトム・ヨークはずいぶん前から果敢にエレクトロニック・ミュージックに挑戦し続けてきたわけだけど、どうにもロックの呪縛から逃れられているようには思えなかったというか、正直なところ『The Eraser』も『Tomorrow's Modern Boxes』もいまいちピンと来なかった。
 ソロとして通算3枚目となる新作『Anima』は、しかし、素直に良いアルバムである。彼はようやくロックの亡霊を振り切ることに成功したのだろうか? ジョニー・グリーンウッドの活躍から刺戟を受けたのかもしれない。あるいは『Suspiria』のサウンドトラックを手がけたことがなんらかのトリガーになったのかもしれない。いずれにせよトム・ヨーク(とナイジェル・ゴッドリッチ)によるこの5年ぶりのアルバムは、彼が長年エレクトロニック・ミュージックを享受してきたことの蓄積がうまい具合に実を結び、ストレートにアウトプットされているように聞こえる。

 今回の新作は、かつてツアーをともにしたフライング・ロータスがライヴでループを用いて即興していたことからインスパイアされているそうなのだけど、たとえばハンドクラップのリズムと「いーいー」と唸る音声がユーモラスに対置される冒頭の“Traffic”や、いろんな声のアプローチが錯綜する“Twist”といった曲によくあらわれているように、その最大の独自性はさまざまな音声とリズムの配合のさせ方に、そしてストリングスとシンセの融合のさせ方にこそ宿っている。
 とくに素晴らしいのは後半の5曲で、ご機嫌なベースと崇高なコーラスのお見合いから、ライヒ/メセニー的なミニマリズムへと移行する“I Am A Very Rude Person”も、遠隔化されてふわふわと宙を漂うレトロフューチャーなブリープ音に、重厚なチェロとコントラバスが喧嘩を吹っかける“Not The News”も、虫の羽音を思わせる電子音の足下で強勢が複雑に変化し、次第にポリリズミックな様相を呈していく“The Axe”も、どれも細部を確認したくなって何度も聴き返してしまう。“Impossible Knots”におけるドリルンベース的なハットの反復と、そこから絶妙に遅れて爪弾かれる生ベースとの不一致もいい感じに気持ち悪くてクセになるし、“Runwayaway”のブルージィなギターのうえでぶるぶると震える声のサンプルはベリアルの発展形のようで、ポスト・ポスト・ポスト・ダブステップとでも呼びたくなる印象的なビートがそれを補強している(この曲もまたチェロとコントラバスがいい)。

 あとはトム・ヨーク本人が歌うのをやめれば……と思う曲もなくはないけど、こういう素朴に良い内容のアルバムを送り出されると、もう彼のことを無視できなくなるというか、これからはまたしっかり彼の動向を追いかけていくことになりそうだ。

 おまけ。アルバムのリリースから一月ほど経って“Not The News”のリミックス盤が登場、3年前にコラボを果たしたマーク・プリチャードイキノックスクラークの三組が存分に腕をふるっているのだけれど、それぞれかなりおもしろい解釈を聴かせてくれるので(とくにクラークがすごい)、そちらもおすすめ、というかマスト。

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