「K A R Y Y N」と一致するもの

hyunis1000 - ele-king

 神戸の新世代ラッパー hyunis1000 (ヒョンイズセン)がファースト・アルバムをリリースする。彼は相棒の Ratiff とともにラップ・デュオ Neibiss を組んでいて、一見脱力的だけど真剣というか、ユーモアとメッセージを両立させた素敵な音楽をやっているのだ(まずは YouTube で「Neibiss」と検索してみて)。
 紙エレ夏号でも取り上げたように(p137)、hyunis1000 はソロとしても配信でEPをリリースしてきたわけだけれど(おすすめは “ダメ人間” や “お先真っ暗やね!元からやけど(^_^;)” などを収録した『1001』)、このたびついにアルバムが完成したとのこと。題して『NERD SPACE PROGRAM』。リリースは年明け1月26日。いまから楽しみです。

hyunis1000
"NERD SPACE PROGRAM"

2000年生まれ、神戸を中心に活動する新進気鋭のラッパー、hyunis1000の待望のファースト・フル・アルバム『NERD SPACE PROGRAM』がリリース!!
瑞々しい類い稀なセンスが本作によってシーンに衝撃を与える!!

この作品は2022年のラップ・ミュージックの最前線の一つのあり方を提示する。ゲーム音楽、健全な上昇志向とメイク・マネーの願望、ある種のインディ・ロック的な感傷、ラッパーの必須条件である安定感のあるヴォイスとフロウ、複数のビートメイカーによる多彩なビート。本作の背景に、豊饒なエレクトロニック・ミュージック、ヒップホップ、実験、ダンス・カルチャー、ネット文化、その他さまざまな経験と現場があることは想像に難くない。聴けば間違いなくその一端に触れることができる。
『NERD SPACE PROGRAM』というタイトルは、hyunis1000が所属するコレクティヴの名でもある。悪ふざけとナンセンスと繊細さと純情の絶妙なバランスをふくめ、NSPの音楽と表現には未来への可能性しかない。

あの作品の内側には地図があって、そこにはまだ何も記されていなかった。結局のところ、ヤンキーとオタクは極地という点で似通っているように思う。初めて出会った彼の精神と身体の釣り合い方はとても Strange に見えた。約束は、たかが口約束かもしれないけど、果たすことで確信が深まる。早くてもいいことばかりじゃないけど、急ぎたくなるのは何故なのか。彼らはいま新しいところに向かっている。確かに全てはタイミングなんだけど、今回そのタイミングは必然に思えた。完璧に近かった。"走り続ける限り青春は死なない" 誰に審査されずとも輝き続ける存在がここにいる。確信がなければ、誰が何を言ってても無駄だ。このアルバムは hyunis1000 への信用を更に確固たるものにするだろう。
by NGR (CLUTCH TIMES)

アーティスト:hyunis1000 (ヒョンイズセン)
タイトル:NERD SPACE PROGRAM (ナード・スペース・プログラム)
レーベル:RCSLUM RECORDINGS
品番:RCSRC026
フォーマット:CD
バーコード:4988044869950
発売日:2022年01月26日

ソングリスト
1. Intro by ratiff
2. RUN (prod by 残虐バッファロー)
3. Highway (prod by Ballhead)
4. Kobe young zombie (prod by Uokani)
5. 2020薔薇 (prod by caroline)
6. ドッペルゲンガー (prod by ratiff)
7. Skit by ratiff
8. khao nashi (remixed by ratiff)
9. Student (prod by DJ HIGHSCHOOL)
10. Sad rain (prod by UG Noodle)
11. Angel (prod by caroline)
12. IDC (prod by caroline)
13. hyunis1000 in Earth (acappella)

【hyunis1000 プロフィール】
2000年生まれ、神戸を中心に活動するラッパー。2018年から活動を開始し、トラックメイカー/DJ/ラッパーのRatiffとのユニットNeibissや、同世代のコレクティブNerd Space Programのメンバーとしても活動中。コンスタントな楽曲リリースと、年間100本ほどのLIVEを行うなか、Shibuya PARCO ANNIVERSARY FESTIVALへの出演や、Neibissとしてアルバム『HELLO NEIBISS』(2020)、『Sample Preface』(2021)をリリースするなど、着実に実績を積み重ねていく。SPACE SHOWER TV『BLACK FILE』でのインタビュー動画の公開やRed Bullが企画するマイクリレー『RASEN』への抜擢など、いま一躍注目を集めている。

liquidroom presents NEW YEAR PARTY 2022 - ele-king

 LIQUIDROOMの年越しパーティが2年ぶりに開催される。うっぷんをはらすかのように、これがまたじつに強力なラインナップなのだ。
 1Fでは石野卓球、Seiho、Licaxxx が、2Fではいま注目のユニット=どんぐりずをはじめ、釈迦坊主、Maika Loubté、gato が2021年の終焉と2022年の開始をサウンドで包み込む。これは行くしかない。

NON BAND - ele-king

 日本のポスト・パンクの名盤の1枚に数えられる『NON BAND』(1982、テレグラフ)から40年。ノン・バンドがセカンド・アルバム『NON BAND II』を12月22日にリリースする(アナログ盤は2022年1月下旬予定)。
 2017年にドイツのレーベルから再発された『NON BAND』は、あの時代、レインコーツの『オディシェイプ』とザ・スリッツの『大地の音(リターン・オブ・ザ・スリッツ)』と共振したアルバムだった。プリミティヴなドラムと自由奔放なアレンジ、空間的な音響にファンク、祭り囃子やジャズなどが放り込まれ、ノンの圧倒的なヴォーカルがこの独創的な音楽に輪郭を与える。ほとんどオリジナル・メンバーで録音された40年ぶりの新作にも、その方向性は受け継がれているが、40年分の大きなスケールが広がっている。バンドのサウンドに合ったアートワークも素晴らしい。今年はNON BANDの初期の名曲「Vibration Army」もありがたいことにシングル発売されたが、このバンドの素晴らしい躍動感は、まずは日本でもっと広く知られるべきだ。
 なお、この録音を最後にオリジナル・メンバーでありバンドの要でもあったドラム担当の玉垣満は1年前に永眠した。彼に捧げられた『NON BAND II』は、前作同様、地引雄一の〈テレグラフ〉からのリリースになる。

NON BANDO
NON BAND II

CDは2021年12月22日Telegraph Records
アナログ盤は2022年1月下旬 Mangalitza Records
*配信は2022年2月上旬予定
https://nonband.exblog.jp/

Maika Loubté - ele-king

 いまにおいて、「洋楽」なるタームは非常に曖昧なものだ。そもそもある音に類似性を見出し、まとめてラベルを貼る行為自体に懐疑的な人もいるのではないだろうか。あらかじめ断っておくと、僕はある音に対してあるジャンル用語を付することは、好奇心が刺激されて嫌いじゃない。レコード屋のポップで見かける、その場限りで使い捨てられるようなタームも、逆に気になってしまうタイプだ。

 とはいえ、使い古された便利な「洋楽」というジャンル用語が、少し難儀な存在になりつつあるとも個人的に感じる。宇多田ヒカルクリス・デイヴやA.G.クックらと協業している時点で、何が「邦楽」もしくは「洋楽」かなんてかなり曖昧だ。「邦」ではないが、韓国に目を向けるとそれはもっと顕著で、コールドプレイとBTSがコラボレーション、あるいはカーディ・Bとブラックピンクが出会う時代だし、Kハウス(これもまた、使い捨てジャンル用語!)におけるヤエジは「K」ではあるものの、彼女は多くの人生をアメリカで過ごしている。つまり、色々な意味で国同士の境が融解しつつあるなか、必然的に「わたし」対「その他」と分けるようなやり方は無意味になってきている。

 マイカ・ルブテは、そんないまの時代だからこそ出現し得たミュージシャンだろう。幼少期を日本、パリ、香港で過ごした彼女は、サウンドにおいても「邦楽」とは言えない、しかし「洋楽」とも言えない実に面白い音楽を展開している。『Lucid Dreaming』と名付けられた今作は、シンセ・ポップ的なメロディアスさと実験的なエレクトロニクスが並存し、日本語、英語とフランス語を組み合わせながら、まさに彼女にしか作れない音楽に仕上がっている。「地元っていうのに憧れを持っていた」とも語る彼女だが、しかし地元がないゆえに、彼女は特定の空間や土地を想起させない、ある意味では現代的とも言えるサウンドを鳴らせたのではないか。

 テンパレイのメンバーでありソロでも活動するエイミー(AAAMYYY)を招聘した “It’s So Natural” は、もうすでに何度もリピートしている。足回りをハードなドラムンベースのリズムで固めながらも、メロディにはチャーチズやM83ばりのポップ・センスも垣間見える。非常に聴きやすいが、ただ右から左に流れる感じはなく、しっかり聴きごたえもある。無論、UKのジャンルであるドラムンベースに影響を受けた点で、少なくとも日本的な「邦楽」の感触はない。しかし同時に、日本のRPGゲームである『moon』に着想を得たとも語る。そのサントラにあったポップなビート・ミュージックも重要なインスピレーションだったと。やはり、純粋な「邦楽」ではないが、「洋楽」めいたものへの単なる模倣でもない。簡単なラベリングを拒むこの曲は、マイカ・ルブテのサウンドの面白さを表す上ではひとつの象徴と言えそうだ。

 エレクトロニクスを軸にしたそのメロディアスなポップ・センスにおいて、たったいま僕はチャーチズを引き合いに出したが、いやしかし正確を期するならば、マイカ・ルブテの音楽性はもう少し暗く、より実験的と言ったほうがいいかもしれない。ウェブや紙媒体においてチェックする限り、彼女はジャスティン・ビーバーだって聴くが、同時にポーティスヘッド、あるいはノイ!カンなどのクラウトロックも好んでいるのだ。実弟と共作した “Flower In The Dark” やクローザーの “Zenbu Dreaming” など、素晴らしいシンセ・ポップがアルバムの大半を占めているが、同時に、“Demo CD-R From The Dead” や “Broken Radio” など、ノイズを織り交ぜた実験的なインストのインタールードが時折挟まれてもいる。それは、『Lucid Dreaming』が決して一筋縄ではいかない作品だということも示している。

 『Lucid Dreaming』(明晰夢)とあるように、今作は、彼女が夢の中で聴こえた音楽を再現して作られたという。夢の中の想像的な産物であることを知ると、「邦楽」か「洋楽」、日本的であるのかそうでないのか、そんなジャンル分けやラベリングの類はもはやどうでもよく思えてくる。先ほど触れたドラムンベースがそうであるように、あるいは現在進行形のアマピアノもそうであるように、ある土地に根ざしたローカル発展型の音楽に名前が付与されることには大きな意味があるだろうが、同時に、そういったこととは真逆の音楽が生まれているのも事実なのだ。マイカ・ルブテがそうであるように、音楽は人の想像力が作り上げるものであり、つまりはmusic is musicだということ。

interview with Kinkajous - ele-king

 世界中でもっとも新陳代謝の激しい音楽シーンといえばイギリス、特にロンドンだろう。現在のジャズの世界でもそれは当てはまり、サウス・ロンドンはじめマンチェスターやブリストルなどから続々と新しいアーティストが登場している。キンカジューもそんなイギリスから生まれた新進のグループだ。キンカジューというユニークな名前は南米に住むアライグマ科の珍獣のことで、どうしてこれをグループ名にしたのかは不明だが、その名前どおりほかのバンドとは異なるユニークさを持ち、また自然界の音を巧みに取り入れている点も印象的だ。
 メンバーはサックス/クラリネット奏者のアドリアン・コウとドラマーのブノワ(ベン)・パルマンティエのふたりが中心となってセッションを重ねる中、そこへアンドレ・カステヤノス(ベース)、マリア・キアーラ・アルジロ(ピアノ)、ジャック・ドハーティー(キーボード)が加わって現在に至る。もともとロンドンではない場所に住んでいたアドリアンとブノワだが、その後ロンドンに出てきてキンカジューを結成している。従って、いわゆるサウス・ロンドン周辺のバンドとは異なるテイストがあり、アコースティック・サウンドとエレクトリックな質感のバランスなど、マンチェスターのゴーゴー・ペンギンあたりに通じるものも感じさせる。また、ジャックを除いてイギリス人ではないメンバー構成も、ロンドンのバンドの中において異色さを感じさせるところかもしれない。
 2019年にリリースした初のフル・アルバムとなる『ヒドゥン・ラインズ』がジャイルス・ピーターソンによるレコメンドを受け、またUKを代表する老舗レコード・レーベル&ショップである〈ミスター・ボンゴ〉の「トップ・オブ・アルバム2019」でベスト10内にセレクトされる。さらにはブルードット・フェスティヴァル、マンチェスター・ジャズ・フェスティヴァル、EFGロンドン・ジャズ・フェスティヴァルなどへ出演し、ロンドンの名門クラブであるジャズ・カフェでのショウがソールド・アウトするなど各方面から注目を集めるようになる。
 そして、2年振りの新作となるセカンド・アルバム『ビーイング・ウェイヴズ』は、ゴーゴー・ペンギン、ダッチ・アンクルズ、ウェルカーらを手掛けたマンチェスターを代表するプロデューサー/エンジニアのブレンダン・ウィリアムが制作に参加し、エレクトロニクスやオーケストレーションがクロスオーヴァーしたUKジャズの新たなる進化を予兆させるハイブリッドなジャズ・サウンドとなった。グループの中心人物であるアドリアン・コウとブノワ(ベン)・パルマンティエに、キンカジューの結成からファースト・アルバムにリリース、そして新作の『ビーイング・ウェイヴズ』に至る話を訊いた。

僕たちはふたりともフランス出身だけど、もうイギリスに14年住んでいる。他のメンバーはイングランド出身者もいれば、イタリアやコロンビアから来ている者もいる。でも、やっぱり僕たちのルーツはロンドンだと思っているよ。

まず、キンカジューの成り立ちから伺います。最初はサックス/クラリネット奏者のアドリアンさんとドラマー/プロデューサーのブノワさんが出会い、音作りをはじめました。そこから徐々にいろいろなメンバーが集まり、グループとなっていったと聞いています。そのあたりの経緯をお話しください。

ベン:まず、僕とアドリアンは数年前に出会ったんだ。そのときちょうど彼のバンドで新しいドラマーを探していて、この新しいプロジェクトをはじめる前の間は一緒にそのバンドでプレイしていた。僕たちはもっと柔軟にコラボレーションしたり、実験的にプロダクションを作れるような環境を作りたくて、そのときに生まれた土台こそが最終的にはキンカジューになった感じかな。僕たちはいくつかのライヴ・メンバーと一緒にプレイしてきたんだけど、デビュー・アルバムの『ヒドゥン・ラインズ』をリリースして以降は現在のメンバーで落ち着いているよ。ベースのアンドレとは音楽大学で知りあって、彼がピアノのマリア・キアーラを紹介してくれた。そのマリアがシンセサイザーのジャックを紹介してくれたんだ。それぞれのメンバーの繋がりがあってこそ生まれたバンドなんだ。

グループとして最初はマンチェスターで活動していて、その後ロンドンに拠点を移したのですか? ロンドンに移住するには活動していく上で何か理由などあったのですか?

アドリアン:誤解されることが多いけど、このバンドとしてはマンチェスターを活動拠点にしてたことはないんだ。最初からロンドンを拠点にしている。ロンドンに来る以前のことはもうだいぶ昔のことだから思い出すのが難しいなあ。マンチェスターには親しい友人はいるんだけど、キンカジューがスタートした場所ではないんだ。それに僕たちの故郷はバラバラだしね。バンドというか個人的な話になるけど、ロンドンの活気のある生活やスタイルは僕にとっては魅力的で、新しい経験やチャレンジを見つけるには完璧な街だったんだ。いまのところここでの出来事すべてが最高だし、望んでいた通りの街だよ。

そうですか、マンチェスターの話をしたのはゴーゴー・ペンギンの拠点の街であり、あなたたちとゴーゴー・ペンギンには共通する要素もあるかなと感じ、それがマンチェスターという土地柄にも関係するのではと考えたからです。話を少し変えますが、ゴーゴー・ペンギンが有名なマンチェスター、サウス・ロンドン・シーンが注目されるロンドンと、同じイギリスの都市でもそれぞれ違う個性を持つジャズ・シーンかと思いますが、あなた方から見てそれぞれ違いはありますか?

アドリアン:UKには世界の最前線で音楽を新しい方向に発展させてきた長い歴史があって、その中でここ数年間はジャズというジャンルはクリエイティヴィティーがピークを迎え、そこから多くの恩恵を受けていると思うよ。僕が考えるにいまのサウス・ロンドンのジャズはアフロビートからルーツが来ていて、マンチェスターはもっとエレクトロを軸にしたアプローチをしていると思う。しかしながらストリーミングが誕生したことやイギリス全体のとても活発的なシーンのおかげで、それぞれの地域のインスピレーションがミックスしてもっと面白いものが誕生していると思う。だからこそ自分たちなりのジャズと定義できるような新しいモノを作ることにいつも挑戦しているんだ。

ブノワさんとアドリアンさんは名前から察するにフランスとかベルギーあたりの出身のようですね? ほかのメンバーもイギリス的ではない名前が多いのですが、やはり世界の様々な国から集まってきているのですか?

ベン:僕たちはふたりともフランス出身だけど、もうイギリスに14年住んでいる。他のメンバーはイングランド出身者もいれば、イタリアやコロンビアから来ている者もいる。でも、やっぱり僕たちのルーツはロンドンだと思っているよ。もうここをホームにしてから長いからね。

別のインタヴューでそうしたメンバーの多国籍について、「作曲や演奏をする上で出身地はあまり関係がない」という旨の発言をしているようですが、とは言えほかのロンドンのバンド、イギリスのバンドとは違う個性がキンカジューにあると思います。その個性のもとを辿ると、そうしたほかの国の音楽や文化の影響もあるのではないかと思いますが、いかがでしょう?

ベン:アドリアンと僕はオーケストラにいたバッググラウンドを持っていて、ふたりともフランスでは大きなアンサンブルの中で演奏していたんだ。地域的なことよりも、そうした経験が僕たちの音楽に何かしらの影響を与えていると思うね。個人的にはプログレをたくさん聴いたり演奏したりして育ったから、すべての音楽的なテクニックにも興味があるんだけど、オーケストラでの経験がバンドという場所をエゴ表現する場所ではなく、グループ全体のサウンドとして表現するように向かわせたと思う。個々のプレイヤーではなく、指揮者/プロデューサーとしてバンド・サウンドを一番に考えるようにアプローチできるようになった。だから僕とアドリアンがある程度曲を作り上げてから、ほかのバンド・メンバーにそれを伝えていくという手法を取っているんだ。
僕たちの音楽は必ずしも地域や文化から影響を受けているとは的確には言い切れないけど、メンバーそれぞれがロンドンのシーンに参加する前の音楽体験は、どこかの部分で他にはない僕たちらしさを作り出していると思うよ。

そうして2019年にファースト・アルバムの『ヒドゥン・ラインズ』をリリースします。この中の “ブラック・イディオム” を聴くと、アドリアンの重厚なクラリネットに雄大なオーケストレーションが交わるオーガニックな作風ながら、随所にスペイシーなエレクトロニクスや動物の鳴き声のようなSEも混ざり、たとえばシネマティック・オーケストラなどに通じるものを感じさせます。ミニマルな質感を持つ “ジュピター” についてはゴーゴー・ペンギンに近い部分も感じさせます。変拍子を多用したブロークンビーツ調のリズム・セクションなど、クラブ・ミュージックのエッセンスも取り入れたジャズ~フュージョン作品というのが大まかな印象です。そして、ドラムやパーカッションの鳴り方に顕著ですが、ところどころに自然界の音を想起させるような仕掛けもあり、それがキンカジューの個性のひとつになっていたように思います。あなたたち自身は『ヒドゥン・ラインズ』についてどのような方向性で作っていったのですか?

ベン:『ヒドゥン・ラインズ』を作ったときのプロセスは、まだ自分たちが作りたい音楽を理解して、磨き上げている段階でもあったんだけど、その挑戦はとてもおもしろいプロセスだったよ。この制作はオーケストラ的なアプローチを目指した第一歩だったし、シンセを使ったのも野心的な試みだったんだ。このアルバムがリリースされるまでに多くのことを学べたし、その後のクリエイティヴ・ディレクションに対するヴィジョンも明確になったよ。そしてこのレコードを引っさげてツアーしている最中に、それはさらに明確になったとも言えるね。いまこのアルバムを聴くとまた面白いね。遠い昔の作品にも思えてくるけど、いまでも愛情を持てる大好きな作品だよ。とにかくいろんなコトを僕たちに与えてくれた作品だからね。

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サイレントを作ることでいちばん爆発してほしいところの威力が跳ね上がるからね。僕たちは自分たちの音楽で本当の意味で人を動かしたいと思っていて、この強弱の対比はとっても重要なんだ。

先ほども話したゴーゴー・ペンギンとの関係性について述べると、エンジニアを務めるブレンダン・ウィリアムスがあなたたちの作品制作にも関わっているとのことなので、自然と共通するテイストが生まれるのかなと思いますが、いかがでしょう? 彼は新作の『ビーイング・ウェイヴズ』についてもエンジニアをやっているのですよね?

ベン:ブレンダンとは僕たちがキンカジューとしてレコーディングするようになったときから一緒に仕事をしているんだ。彼は以前の作品をミックスしてくれたのと、『ビーイング・ウェイヴズ』でももうひとりのエンジニアのリー・アストンと一緒にエンジニアを担当しているよ。彼は洗練された素晴らしいエンジニアだからいつも一緒に仕事ができて光栄だよ。彼は僕らのクレイジーなアイデアにも付き合ってくれるし、それでいて全体のバランスを取るようにコントロールもしてくれる。ブレンダンは本当に素晴らしい仕事仲間であり友達でもあるんだ。もう家族のようなものだね。

そして、『ビーイング・ウェイヴズ』のストリングス・アレンジをするのは、先にリリースされたゴーゴー・ペンギンのリミックス・アルバムにも参加するシュンヤことアラン・ケアリーとここでも繋がりを感じさせるわけですが、こうした人たちとはどのように繫がっていったのでしょう?

ベン:アランはリーとブレンダンから紹介されたんだ。確か彼らはもともとマンチェスターの音楽仲間で一緒に仕事をしてたんだよ。アランは今作のストリングス・パートを去年のロックダウン中にリモートで彼のスタジオで録音してくれた。彼は僕らのヴィジョンをすぐに理解してくれたからレコーディングも早かったし、僕たちの予想を遥かに超えた素晴らしいアレンジで仕上げてくれた。僕たちは音楽で共通のセンスを持っていると確信したね。

『ヒドゥン・ラインズ』に続くセカンド・アルバムとして、『ビーイング・ウェイヴズ』は何かコンセプトやテーマなど設けて作りましたか? 基本的にはファーストの世界観を継承しているようですが、逆に何か変えてきたところなどあるのでしょうか?

ベン:『ビーイング・ウェイヴズ』は前作以上にオーケストラ的にプロデュースされた質感のサウンドを目指すアプローチを目指したよ。このアルバムのアイデアの核になっているのは、人それぞれが世界を違った風に認識すると同じように、僕たちのアルバムも人それぞれのリアルな感覚で聴いてほしいということだね。だから普段は合わさらないレイヤーを重ねて楽曲を作っている。僕たちは様々なプロダクションやサンプリングのテクニックを取り入れてリスナーにとって魅力的なモノを作り、いままで聴いたことのない幻想的で不思議な音だけど、なぜか再生してしまうようなサウンドを目指したよ。今回の制作はいままでと違ったから楽しくもあったけど、チャンレンジでもあった。いろんな方向性のサウンドがひとつにまとまったことを誇りに思うよ。

ジャズというよりもかなりインストゥルメンタルと呼ぶのに近づいた作品になったと思う。ジャズはプレイヤーに焦点をあてることが多いと思うんだけど、僕たちの音楽はもっとサウンドや質感や音の空間、そして楽曲の流れとかにフォーカスしているからね。

「前作以上にオーケストラ的にプロデュースされた質感のサウンド」という点でいくと、“イット・ブルームズ/ゼン・ナッシング” や “ジ・アイズ” などに見られるようにストリングスがより大きくクローズアップされ、強化された印象があります。それによって楽曲に有機的なイメージが増幅されていきます。先に述べたアラン・ケアリーがそのアレンジを担当するのですが、彼にはどのようなイメージを伝えてアレンジしてもらったのですか?

アドリアン:アランは僕たちが送った簡単な下書きやアレンジからストリングスのイメージを膨らませてくたんだ。僕たちは彼にヴィジュアルが浮かぶような質感のサウンドを作りたいとお願いした。レコーディングをするにあたって楽曲の長さやアルバムの中での立ち位置や意味、そしてヴィジョンもそれぞれ話し合ったよ。その後、彼が自分自身で自由に試行錯誤できるように十分な時間を与えたんだけど、それも今回のプロセスにとっては重要だったと思う。とても上手くいったね。

“ノームズ” や “ア・クワイエット・カオス” など、アンビエントなイメージの曲も印象的です。こうしたアンビエントやニュー・エイジ的な要素を取り入れるジャズ・ミュージシャンやバンドも昨今はいろいろ増えていて、たとえばイスラエルのリジョイサーがいたり、イギリスではアルファ・ミストがそうした作風のものを作ることもあります。キンカジューとしてはアンビエントについてどのように捉え、演奏や制作に取り入れているのですか?

ベン:僕たちの音楽は様々なモノが詰まった刺激的なスペースからできあがっているのだけど、ときには空白のスペースを作る作業が必要なときがあるんだ。その空白のスペースを作ることでそこから美しさ、脆さや静けさが浮き出てきてそれがエモーショナルに変わっていくんだ。ライヴでプレイするときにもサイレントな空白を作り出すのがいかに重要なのかがわかってきたし、音を空間として捉えて時間をかけて作っていくことが何よりも大事だと感じているよ。それがアンビエントの要素なのかもしれないね。サイレントを作ることでいちばん爆発してほしいところの威力が跳ね上がるからね。僕たちは自分たちの音楽で本当の意味で人を動かしたいと思っていて、この強弱の対比はとっても重要なんだ。

たとえば “クロークス” や “システム” などについて言えますが、今回のアルバムでもアコースティックな演奏とエレクトロニクスの融合が作品制作における大きな要素としてあります。イギリスのアーティストではポルティコ・カルテットリチャード・スペイヴンドミニック・J・マーシャルテンダーロニアスなど、こうしたアプローチをおこなうアーティストは多く、現代のジャズにおいてアコースティックとエレクトリックの融合はもはや抜きでは語れないものになっていると思います。キンカジューとして、アコースティックとエレクトリックの融合はどのようなバランスでおこなっていますか?

ベン:まず今作はジャズというよりもかなりインストゥルメンタルと呼ぶのに近づいた作品になったと思う。ジャズはプレイヤーに焦点をあてることが多いと思うんだけど、僕たちの音楽はもっとサウンドや質感や音の空間、そして楽曲の流れとかにフォーカスしているからね。今作では確かにそのポイントは重要で、アコースティックとエレクトロニックのサウンドのバランスをより細かく磨き上げるために、アコースティックのサウンドをより興味をそそるモノにして、エレクトロニックなサウンドをより親しみの生まれるようなサウンドにしたんだ。『ビーイング・ウェイヴズ』ではいくつかのアコースティックとエレクトロニックなサウンドの境目をなくすために、自分なりの手法をいろいろ試したんだ。

“ノームズ” で聴けるように、アドリアンさんの演奏ではバス・クラリネットが効果的に用いられています。現代のジャズ・シーンではバス・クラリネットを多用する人はあまり多くないと思うのですが、アドリアンさん自身はバス・クラリネットのどこに魅力を感じ、どのように用いているのですか?

アドリアン:僕はもともとクラリネット・プレイヤーで、そこからバス・クラリネットとテナー・サックスに転身したんだ。そして、バス・クラリネットはクラリネットとテナー・サックスの両方のアドヴァンテージを合わせ持っていると気づいた。それは奥行き、力強さ、臨場感を兼ね備えているのにもかかわらず、“ノームズ” でも表現できているとおり、柔らかく穏やかな音運びをサポートしてくれるんだ。僕たちはいつもどんな楽器でも使う準備ができていて、いつもその楽曲にどのようなサウンドが必要なのかを考えて、それにマッチするベストな楽器を選んでいるんだ。つねに新しいアイデアを試してみたいから、演奏する前にどの楽器を使うとかいうルールを楽曲制作の中では作りたくないんだよね。

ブノワさんのドラムに関しては、前作以上に複雑な変拍子の作品が多く、そうして生み出される多彩なリズムがキンカジューの特徴のひとつでもあります。ゴーゴー・ペンギンのロブ・ターナーはじめ、リチャード・スペイヴン、モーゼス・ボイドユセフ・デイズ、フェミ・コレオソ、トム・スキナー、ロブ・セッチフォード、エディ・ヒック、サラティ・コールワール、ジェイク・ロング、ティム・ドイルなど、現在のイギリスには優れたドラマーやパーカッション奏者が数多くいます。あなた自身は自分の演奏についてどのような特徴、個性があると思いますか?

ベン:面白いことにニュー・アルバムではほとんど変拍子を使用してはいないんだけど、それぞれのフレーズはいままで以上にイレギュラーにプレイされているんだ。僕のドラムのアプローチは自分がパーカッショニストとしてミニマルやシステム・ミュージックに強い関心を持っていたときのトレーニングに影響を受けていると思う。たくさんの細かいフレーズを作って、それぞれ重ねたり、並べたりしてひとつのモノにするようにリズムを組み立てて、それでいて、それぞれが最終的にはひとつの直線的な塊に聴こえるように目指しているんだ。僕はいつもお手本のようなプレイではなくて、自分らしいフレーズを繰り返したり、積み重ねるように心がけているよ。

今後の活動予定や目標などがあったら教えてください。

ベン:僕たちは既にいくつかのプロジェクトの準備を進めているよ。最近はVR空間をスタジオ ANRK と一緒に作っているんだ。来年公開できるように頑張っているところだよ。後はUKとヨーロッパで『ビーイング・ウェイヴズ』ツアーをするのが楽しみなんだ。パンデミックのせいで長らくツアーはできてなかったからね。あとは新曲も来年は作れたらいいなとはもちろん思っているよ!

Brian Eno - ele-king

 去る12月15日、ブライアン・イーノがロンドンのギャラリー、ポール・ストルパーと提携し、新たなアート作品を発表している。色彩の変化するLEDを搭載したアクリル製のターンテーブルがそれだ。署名入り&ナンバリング済みの、50台限定販売(すでに完売)。さまざまな色の組み合わせが発生するようになっており、すなわちこれまた彼が長らく探求しつづけてきた “自動生成” 作品のひとつということになる。
 インスタグラムに掲載されているイーノのコメントを紹介しておこう。「壁に絵がかかっているとき、とくにそれに注意を払わなかったからといって、なにかを見逃してしまったとは思わないでしょう。ですがそれが音楽や映像だった場合、わたしたちはついそこにドラマを求めてしまいます。わたしの音楽と映像作品は変化していきますが、あくまでゆっくりとした変化です。少しくらい見逃しても気にならない程度の変化なのです」。“非音楽家” の面目躍如。考えさせられます。



ELECTRONIC KUMOKO cloudchild - ele-king

 バルーチャ・ハシム&アキコの主宰するレーベル〈Plant Bass Records〉が、来年1月17日にコンピレーション『ELECTRONIC KUMOKO cloudchild』をリリースする。ふたりが創造した架空のキャラクター「KUMOKO」を、いろんなアーティストがエレクトロニック・ミュージックとして表現するというコンセプト。山口美央子&松武秀樹、サム・プレコップカルロス・ニーニョ、ジョン・テハダ、ロブ・マズレクマシューデイヴィッド、マニー・マーク、小久保隆など、USと日本から勢21人のアーティストが参加。あなただけのお気に入りの1曲を見つけよう。

[2022年1月13日追記]
 Spotify、Apple Music、Bandcamp などへのリンク先をまとめたページが公開されました。ご活用ください。
 https://plantbass.lnk.to/ELECTRONICKUMOKO

KUMOKOの世界とエレクトロニック・ミュージックの出会い。

『ELECTRONIC KUMOKO』は、2016年に初めてリリースされた『KUMOKO』コンピレーション・シリー
ズの第二弾。SunEye(アキコ&ハシム・バルーチャ)が考えた架空の雲の精霊、KUMOKOにインスパイアされた22曲のエレクトロニック・ミュージックが収録されている。

空の「大いなる目」から誕生したKUMOKOは、雲の子供であり自然界のクリエイター。KUMOKOは雲を使ってアートをクリエイトし、空を色鮮やかなに染め、雷を使って怒りを表現する。

アメリカと日本のアーティストがKUMOKOのストーリーを独自に解釈し、アンビエント、ミニマル、エレクトロ・ファンク、ダンス、エクスペリメンタル、環境音楽などあらゆるタイプのエレクトロニック・ミュージックが集結。

SunEyeが運営するレーベルPlant Bass Recordsから2022年1月17日にSpotify, Apple Musicなどからデジタルリリースが決定!

TITLE: ELECTRONIC KUMOKO cloudchild
ARTISTS: Various Artists
RELEASE DATE: January 17, 2022
FORMAT: DIGITAL
LABEL: Plant Bass Records
CATALOG NUMBER: PB005

https://plantbass.lnk.to/ELECTRONICKUMOKO

ELECTRONIC KUMOKO cloudchild Tracklist:
01. IMA & SunEye - Kumo Daisuki
02. Mioko Yamaguchi & Hideki Matsutake - KUMOKO Yume
03. Ray Barbee - Always Dreamin'
04. Sam Prekop - There is Kumoko
05. Jeremiah Chiu - Rocks Rise in Size
06. Carlos Nino & Friends - Found Scrolls of Hollow Earth (with Jamael Dean & Nate Mercereau)
07. TENTENKO - The Bug’s Dream
08. John Tejada - Kumoko’s Chase
09. BOY DUDE - KUMOKO - How can I reach you?
10. XL Middleton - Kumoko Takes To The Sky
11. YOKUBARI - Kumo Tono Kusen
12. Rob Mazurek - Future Energy Beam Song
13. Brin & Matthewdavid - imaginary creature clouds
14. Jira >< - Shores
15. lucky dragons - the wheel
16. r beny - Heart Leap
17. Yumi Iwaki & Eishi Segawa - Seed Cycling
18. Money Mark - Cloudy Kumoko
19. Takashi Kokubo - 雲を超えて-Kumo wo Koete-
20. Turn On The Sunlight featuring Thalma & Yohei - Kumoko Na Praia
21. SunEye - Yummy Cloud
22. IMA & SunEye - Kumoko Outro

参加アーティストについて:
80年代にリリースしたテクノポップ作品が世界的に注目されてい山口美央子とYMOとの活動で知られる松武秀樹、プロスケーター兼ミュージシャンのレイ・バービー、ザ・シー・アンド・ケークの活動で知られるサム・プレコップ、グラフィック・デザイナー兼ミュージシャンのジェレマイア・チュウ、ロサンゼルスの実験音楽シーンのキーパーソンであるカルロス・ニーニョ、アイドルから実験音楽家に転身したTENTENKO、LAテクノ・シーンのジョン・テハダ、ウェスト・コースト・ファンクの代表的アーティストであるBOY DUDEとXLミドルトン、ビジュアル・アーティスト兼ミュージシャンのYOKUBARI(ヒシャム・バルーチャ)、テキサス州マーファを拠点に活動するジャズ・アーティストのロブ・マズレク、Leaving Recordsのブリン&マシューデイヴィッド、新世代のジャズ・ピアニスト兼ビートメイカーのJiraことジャメル・ディーン、音楽とテクノロジーを追求するラッキー・ドラゴンズ、北カリフォルニアのアンビエント・アーティストr beny、日本で映画音楽の世界で活躍する岩城由美&瀬川英史、ビースティーボーイズやジャック・ジョンソンとのコラボで知られるマニー・マーク、環境音楽作曲家の小久保隆、フォークとエレクトロニクスを融合するターン・オン・ザ・サンライト、そして今作のキュレーターでもあるSunEyeが参加しています。

Instagram:
@kumokocloudchild
@suneyemusic
@plantbassrecords

Twitter:
@kumokosays
@suneyemusic
@Plant_Bass

ZEN RYDAZ - ele-king

 NITRO MICROPHONE UNDERGROUND の MACKA-CHIN と PART2STYLE の MaL、そして JUZU a.k.a. MOOCHY の3人から成るユニット、ZEN RYDAZ のセカンド・アルバムがリリースされている。
 ディジェリドゥや三味線、アラビック・ヴァイオリンなどが入り乱れ、ヒップホップやダンスホールやジャングルのリズムが揺らす大地の上を、多様なスタイルのラップや歌が駆け抜けていく。日本ラップのファンもベース・ミュージックのファンも要チェックです。

弛まぬ想像力によって昇華されたZEN RYDAZの2ndアルバムがリリース!

極東発HIP HOP x WORLD MUSIC!!!
新時代のベースミュージック・ユニット ZEN RYDAZ が豪華ゲストミュージシャン達と共に、廃墟の遊園地(宮城県・化女沼レジャーランド)にて満月の下繰り広げた1発撮りの奇跡のライブセッション! 朝陽へ向かう瞬間を捉えた貴重な映像作品とともにリリースされます。

https://www.youtube.com/watch?v=WnBh7LolsQw

映像制作は近年、絶景 x MUSICで話題を集めるTHAT IS GOOD。
ドローンによる風景美を得意とするチームとの連携により、独自の近未来感と映画的情緒を持つ唯一無二な作品が出来上がりました。

●ZEN RYDAZ
MACKA-CHIN, MAL, J.A.K.A.M. (JUZU a.k.a. MOOCHY)
●ゲストMC/シンガー
ACHARU, AZ3(RABIRABI), D.D.S, EVO, NAGAN SERVER, MIKRIS, RHYDA, 愛染eyezen, なかむらみなみ
●ゲストミュージシャン
GORO(ディジュリドゥ、ホーミー、口琴), KENJI IKEGAMI(尺八), KYOKO OIKAWA(アラビックバイオリン), 東京月桃三味線(三味線)

●発売開始日
2021年12月02日(木曜日)
CD: 2000円(税別)

各種サブスク、ストリーミング
https://ultravybe.lnk.to/zentrax2

CROSSPOINT bandcamp
https://crosspointproception.bandcamp.com/album/zen-trax2

NXS Shop
https://nxsshop.buyshop.jp/items/55581725

TRACK LIST
01. WISDOM 04:57
 Vocal: ACHARU / Digeridoo & Jews Harp: GORO
02. CLOUD9 03:19
 Voice: MIKRIS / Violin: KYOKO OIKAWA
03. CLOUDLESS MIND 04:22
 Voice: NAGAN SERVER / Shamisen: 東京月桃三味線 / Flute: GORO
04. KOKORO 04:33
 Voice: AZ3,EVO / Violin: KYOKO OIKAWA
05. QUEST 04:28
 Voice: RHYDA, ACHARU, NISI-P / Shakuhachi: KENJI IKEGAMI
06. SLOW BURNING 03:32
 Voice: D.D.S / Violin: KYOKO OIKAWA
07. CROSS-BORDER 04:01
 Voice: 愛染 eyezen / Turkish Flute & Jewish Harp: GORO
08. CANCANCAN 03:43
 Voice: なかむらみなみ
09. MIRRORS 04:21
 Voice: ACHARU / Violin : KYOKO OIKAWA
10. VEDA 05:36
 Voice: NAGAN SERVER & NISI-P / Shakuhachi: KENJI IKEGAMI

Total Time: 41:50

Arrangement: J.A.K.A.M.
Mix: J.A.K.A.M. (01,03,05,07,09) & MAL (02,04,06,08,10)
Mastering: Robert Thomas (Ten Eight Seven Mastering London / UK)
Logo, Illustration: USUGROW
Picture: NANDE
Photo: Nobuhiro Fukami
Design: sati.

PRODUCED BY ZEN RYDAZ (MACKA-CHIN, MAL, J.A.K.A.M.)

P&C 2021 CROSSPOINT KOKO-099
https://www.nxs.jp/

プロフィール
ZEN RYDAZ:

NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのMACKA-CHIN、PART2STYLEのMaL、JUZU a.k.a. MOOCHYことJ.A.K.A.M.
2019年、それぞれのフィールドで20年以上活動してきた同年代の個性派3人が、満を持してジャンルを越え“ZEN RYDAZ”としてWORLD MUSICをテーマに、メンバーが旅して得た世界観、常にアップデートされていく其々の感性、追及から生まれるスキルを結集し、21世紀的ハイブリッドサウンドver3.0としてここTOKYOでクラクションを響き渡らす。
MADE IN JAPANの島リズムが生み出すZEN SOUNDはバウンシーでドープそして自由な発想と飽くなき音楽魂を“禅FLAVA”に乗せ、大空高くASIA発のニューライダーズサウンドとして言葉を越え世界にアップデートされたWORLD MUSICを送信中。
https://zenrydaz.tumblr.com/

BANDCAMP
https://crosspointproception.bandcamp.com/
SHOP
https://nxsshop.buyshop.jp
WEBSITE
https://www.nxs.jp/label

daydreamnation - ele-king

 京都のレーベル〈iiirecordings〉が12月下旬にdaydreamnationによるアンビエント作品の7インチ「DAYDREAM_STEPPERS EP」をリリースする。7曲(1曲が1分〜1分半ぐらい)の、美しい無重力状態(ウェイトレス)を体験できるというわけだ。
 daydreamnationはハードコア・シーンで活動する.islea.のメンバーでもあるseiyaの別名義で、これまでにBushmind、DJ Highschool、StarburstによるBBHのアルバムや〈Seminishukei〉のコンピレーションへの参加をはじめ、福岡Genocide CannonのラッパーInnoとの共作『Funky Response』や、降神や志人のライヴ・トラックなども手掛けている。注目です。
 

.daydreamnation.
DAYDREAM_STEPPERS EP (7inch+DL)
7inchレコード/ダウンロードコード付
限定250枚プレス/ナンバリング入
¥1,540 (税込)
https://iiirecordings.com/main/

 ちなみに、BushmindまわりではChiyori×Yamaanによる『Mystic High』(もう売り切れだが、配信で聴けるし、CDは再プレス)もかなり面白い。真の意味でのヴェイパー、すなわち水パイプ的な陶酔とユーモアを求めている方には推薦したい。なお同作には、Bushmindの4/4ビートのハウス・ミックスも収録されている。

MONOS 猿と呼ばれし者たち - ele-king

「MONOS(猿たち)」というのは一般的に子どもを形容するのに不適切な単語だろうが、この映画においては、まったく見事な比喩として成立している。人間のように社会化されてはいないが、しかし彼ら独自の非人間的とも言える社会を形成している者としての「猿」。なぜ少年少女の姿をした「猿」が生まれるのか……『MONOS 猿と呼ばれし者たち』は、その背景にある混沌状態を獰猛に、しかし同時に神話的に描き出す現代の戦争映画である。

 冒頭の光景からして、ただならぬ空気に覆われた映画だ。舞台となるのは雲の上に浮かぶようなコロンビアの山岳地帯で、そこで「モノス」とのコードネームを持つゲリラ兵たる少年少女たちが厳しい訓練を受けている。幻想的な画面と抽象的だが感覚を研ぎ澄まさせるようなシンセ・ミュージックがいっそう異界性を強調する。ただ、銃を持って訓練を受ける子どもたちが兵士なのだと映画を観終わっている自分はわかっているが、とりわけ映画の前半では彼らは気ままに遊んでいるだけのようにも見える。ボールを蹴り、仲間同士で取っ組み合う。キノコを食ってトリップする。仲間内で認められた「パートナー」になるという独自のルールもあるようだがキスやセックスをするのにジェンダーやセクシュアリティの規範はないようで、異性愛の枠に囚われずに無邪気に性愛を交わしたりもしている。ただ同時に、そんな子どもたちの生活には人質のアメリカ人女性を監視する役目もあり、平和な国で育つ子どもたちとは異なる「仕事」が与えられている。そうした異様な日常は均衡が保たれていたが、ある事件をきっかけにして、ずるずると極限状態のサヴァイヴァルへと突入していく。映画の舞台はジャングルへと変わり、まるで『地獄の黙示録』からアメリカン・ポップ・カルチャー的な要素を削ぎ落して原初的な生存欲求を剝き出しにしたような様相を帯びてくる。そして「猿たち」は鬱蒼とした自然のなかで、ますます文明から外れた存在へと変容していくこととなる……。

 1980年生まれの気鋭アレハンドロ・ランデス監督(ブラジル生まれで、エクアドル人の父とコロンビア人の母との間に生まれたそう)の3作目となる本作は、映像体験としても圧倒的なものを見せてくれるが、主題としても気迫がこもったものだ。監督いわく映画はコロンビアの長く続く内戦状態からインスピレーションを受けて生まれたそうだが、より具体的には、キューバ革命後にラテンアメリカでゲリラ化していった左派組織がモチーフになっているという。コロンビアのサントス元大統領は主要ゲリラ組織のFARC(コロンビア革命軍)との和平合意に署名したが、大衆に歓迎されているとは言えない状況であり、ゲリラであることが常態となってきた者たちを今後どのように社会に包摂していくかが大きな問題になっている。そして本作は、誘拐や略奪が日常となっている者たち――しかも子どもたちだ――の生きる世界を理屈でなく感覚的に味わわせるのである。こんな風にどうにか生きてきた「猿たち」は、果たして「市民」へとなれるのか?と。いや、本作のヘヴィに乾いた映像を観ていると、そんな発想すら傲慢なものに感じられてくる。猿が人間よりも劣っているなど誰が決めた? 彼らは本当にたまたまゲリラとして生きることを余儀なくされたのだから。
 まだはっきり覚えているところで自分が近い感覚を味わったのは、映画の風合いこそ違えどブラジルのクレベール・メンドンサ・フィリオ監督による『バクラウ 地図から消された村』(2019)で、そこでは強欲な政治家に支配されようとする僻村の抵抗がきわめてヴァイオレントに立ち上がっていた。暴力が日常となった共同体ではどこか寓話的な語りが生まれてくるというのが興味深いが、それだけ常軌を逸した事態がいまここに存在するということなのだろう。『MONOS』はコロンビアの内戦という特殊な状況を出発点としながらも、それをリアルなドキュメンタリー風にではなく現代の神話として見せることで、土地を限定しない「混沌」を巡る思索となった。猿と人間を分かつものがいったい何なのか、わたしたちは考えることとなる。

 そして本作の超越した佇まいをぐいぐいと高めるのがミカチュウことミカ・リーヴィによる音楽であることは間違いない。空き瓶を笛代わりにし、ティンパニの打音とストリングスの唸り声、シンセの浮遊感を混ぜ合わせたおどろおどろしくも陶酔感を孕んだ音像は、『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』(2016)の際よりさらに異様な映画音楽として観る者の精神状態を不安定にする。今年はティルザの素晴らしい新作のプロデュースを手がけたことでも話題になった彼女が、映画音楽家としても最前線に立っていることは頼もしい限りである。

予告編

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