「K A R Y Y N」と一致するもの

Lapalux - ele-king

 ティーブスに続いて、またまた〈Brainfeeder〉から嬉しいお知らせです。ロンドンのラパラックスもニュー・アルバムをリリースします。現在、アルバムから“Earth”が先行公開されていますが、なんだかとってもせつないトラックですね。でもしっかり〈Brainfeeder〉っぽさもあるからたまりません。いやー、こちらも楽しみっす。発売は11月8日とのことで、この日の星の動きにも注目です。

LAPALUX

フライング・ロータス直系のビートメイカーが、レイヴ、ブレイクビーツ、アシッド、アンビエント……といった欧州の今の要素が詰め込まれた最新作『Amnioverse』を11月8日にリリースすることが決定!
先行配信曲として“Earth”を解禁!

フライング・ロータス直系のビートメイカーとして登場し、〈Brainfeeder〉を代表するプロデューサーとして活躍するラパラックスことスチュアート・ハワードが4作目となるオリジナル・アルバム『Amnioverse』を11月8日にリリースすることが決定! 先行配信曲として“Earth”を解禁!

Lapalux - Earth
https://youtu.be/ze6t3W8Vf-c

解禁曲“Earth”では今作に影響を与えたというジェームス・タレルを彷彿とさせる霧がかった光の中に向かっていく人の姿を映し出したアルバムアートワークのイメージにも合致した、美しいブレイクビーツ・サウンドが展開されている。

2017年にリリースされた『Ruinism』が音による破壊と脱構築だとしたら、今作『Amnioverse』は全く違うアプローチをとっている。美しい音の粒子はそのままではあるが、それぞれのトラックは友人や恋人、昔のパートナー達の言葉の断片を切り取ったものを元に作り上げられており、非常に人間的な部分に迫った作品となっている。また、彼はアイスランドのヴォーカリストであるJFDRを“ThinAir”と“The Lux Quadrant”の2曲で迎え入れ、もうひとりのヴォーカリスト Lilla を“Limb To Limb”、“Voltaic Acid”、“Momentine”の3曲で起用している。

俺が本当に注力したのは作品全体の流れだった。それぞれのトラックを順番に仕上げていって、曲同士がうまく合って俺の伝えたいストーリーが伝えられるようにでき上がるまで曲作りをし続けていたんだ。 ──Stuart Howard (Lapalux)

そして、今作の最初のインスピレーションは、ジェームズ・タレルのテキサスで行われたインスタレーションの写真だったという。

今回の作品の制作をしている間、ジェームズ・タレルの作品を毎日観ていた。人々が紫色っぽい光に包まれた待合室のようなところで長方形の穴を通して真っ暗な夜空を見上げているんだ。その光景はすごいディープで俺にとって大きな意味を持っている。全ての人はその待合室にいて、どこかに行くのを待っているような感じがするんだ。それが俺がこのレコードで表現したかったことだ。 ──Stuart Howard (Lapalux)

ジェームズ・タレルの影響はアルバムのアートワークにも及んでおり、光と影、そして遠近法を駆使した画期的な手法に対するオマージュとなっている。デザインの構想と写真を、ペギー・グウなどの撮影を手がけた Dan Medhurst が担当し、イラストレーターとして知られる Owen Gildersleeve がラパラックスのヴィジョンを具現化した。

Pitchfork、Mixmag、FADER、FACT、Dazed、SPIN、The Wire といった海外メディアからの支持を受けるラパラックスの最新アルバム『Amnioverse』の国内流通仕様盤CDには、特典としてステッカーが付属される予定。また、現在 iTunes でアルバムを予約すると、公開中の“Earth”がいち早くダウンロードできる。

label: Brainfeeder
artist: LAPALUX
title: AMNIOVERSE
release date: 2019.11.08 FRI ON SALE

Tracklisting
01. Oblivion
02. Voltaic Acid
03. Momentine
04. Earth
05. Hellix
06. Thin Air
07. Limb To Limb
08. The Lux Quadrant
09. Amnioverse
10. Esc

Teebs - ele-king

 昨年10周年を迎え、好調なリリースの続く〈Brainfeeder〉から新たな情報が届けられた。ティーブスのニュー・アルバムである。独特の音響とノスタルジアでLAビート・シーンのなかでもひときわ異彩を放つムテンデレ・マンドワ、プレフューズ73とのコラボでも知られる彼の新作は、10月25日に世界同時発売。現在、パンダ・ベアの参加した“Studie”と“Mirror Memory”の2曲が公開中。ティーブス特有のドリーミーな感覚は失われていないようで、ただただ楽しみ!

[10月17日追記]
 いよいよ来週発売となるアルバム『Anicca』より、新たに“Black Dove (feat. Sudan Archives)”が公開された。いま〈Stones Throw〉がプッシュしているスーダン・アーカイヴスを迎えた、美しい1曲に仕上がっている。

 また、新作『Anicca』のタイトルについて、ティーブス本人から下記のようなコメントも到着している。

過去数年間に道を示してくれた、「わびさび」という日本語の非永続性には一種の哲学があり、それはアニッカ(無常)という言葉に由来しているように感じた。今回のアルバムとそのタイトルは、両方とも永続的なものは何もないことを自分自身に対して思い起こさせるものだ。 ──Teebs

 ティーブスのニュー・アルバム『Anicca』は10月25日リリース。

Teebs

フライング・ロータス率いる〈Brainfeeder〉を支えるマルチアーティスト、ティーブスが最新作『Anicca』を10月25日にリリース決定!
アニマル・コレクティヴのパンダ・ベア参加曲“Studie (feat. Panda Bear)”と“Mirror Memory”の2曲を先行解禁!

LAを拠点に、エレクトロニックやビート・シーンで注目を集めるプロデューサー/ビートメーカー、そしてアート・クリエイターでもあるティーブス。元ルームメイトでもあったフライング・ロータス主宰のレーベル〈Brainfeeder〉より、これまで『Ardour』(2010)、『Estara』(2014)の2作のアルバムをリリース。また、プレフューズ73とのコラボやLAビート・シーンを代表するイベント「Low End Theory」の出演でも世界的な注目を集めてきた。アート・クリエイターとしても活躍しており、ここ日本でも個展やライヴ・ペイントのイベントを開催するほどの実績を持つ。ストリート・カルチャー、そしてアート・シーンで絶大な人気を誇るマルチな才能の持ち主が、5年ぶりとなる最新作『Anicca』を10月25日にリリースすることが決定。合わせて先行曲“Studie (feat. Panda Bear)”と“Mirror Memory”の2曲を公開。

'Studie (feat. Panda Bear)’
https://youtu.be/B6ZhgzDXy_0

'Mirror Memory’
https://youtu.be/RzS5_tNOAPU

今作の​参加メンバーは、アニマル・コレクティヴの中心メンバーであるパンダ・ベア、名門〈Stones Throw〉で活躍をしているスーダンアーカイブスと MNDSGN、LAシーンの重要人物であるミゲル・アトウッド・ファーガソン、そしてケンドリック・ラマーとのコラボでも知られるアンナ・ワイズなどが名を連ね、彼自身の持ち味が発揮された色鮮やかなプロダクションとなった。

「今は音楽が違うところから舞い降りてくるような感じがする。作品のインスピレーションが変わって、選択肢も変わった。使ってたツールや楽器を探求したし、コラボレーションに対しても前よりもオープンになった」。5年間の変化を彼はこう振り返る。そして、最新作は様々なゲストの要素が彼のプロダクションにブレンドされており、ティーブス自身はゲスト達に対して賞賛を送っている。解禁されたリード・シングル“Studie”に参加しているパンダ・ベアについて「彼のしようとする全てが純金か上質なワインみたいだった」 と言及しており、“Black Dove”で共演しているスーダン・アーカイヴスに対しても「彼女は本当に怖いくらいの天才だ。世界はもっと彼女に耳を傾けるべきだね」と語っている。

ほとんどの楽曲が、サンプラーの SP404、 シンセサイザーの Mellotron M4000D、セプレワ(ハープに似たガーナの楽器)、そしてギターとパソコンを使用し、彼の自宅で制作された。「レコードに耳を傾けてよーく聞いてみると、俺の娘が妻に話しているところとか、妻がパソコンでタイピングしている時の音が入っているんだ」と彼は笑う。

そして、タイトルの『Anicca』は仏教でいうところの「無常」を意味する言葉だ。「全てのことは永遠には続かないという自分に向けたリマインダーでもあるんだよ」とティーブスは語った。

また、アートワークは今作でも前作と同様、彼自身の手によるものだ。母親と妻に関するドローイングをすることからスタートし、それがエナメルのブローチとなり、彼の友人のアーティスト、ミーガン・ギアによってステンドグラスのレプリカとなった。その後、それが写真に収められ、デジタル処理を行うことによって今回のアートワークは完成した。

この作品は色とその反射によって絶え間無く変化するものになった。いつも違って見える、だけど同じでもある……とてもナチュラルな作品になったよ。それは人生のように感じられるし、半抽象画のようでもあるし、アルバムのタイトル(Anicca、無常を意味する)のようでもあるんだ。 ──Teebs

待望の最新作『Anicca』 は、10月25日(金)に世界同時リリース。iTunes Store で今アルバムを予約すると、公開中の“Studie (feat. Panda Bear)”と“Mirror Memory”がいち早くダウンロードできる。

label: BRAINFEEDER / BEAT RECORDS
artist: Teebs
title: Anicca
release date: 2019/10/25 FRI ON SALE

TRACK LIST
01. Atoms Song (feat. Thomas Stankiewicz)
02. Black Dove (feat. Sudan Archives)
03. Shells
04. Threads (feat. Anna Wise)
05. Studie (feat. Panda Bear)
06. Mirror Memory
07. Prayers i
08. Prayers ii
09. Universe (feat. Daydream Masi)
10. Marcel
11. Mmntm (feat. Ringgo Ancheta and Former Boy)
12. Daughter Callin' (feat. Pink Siifu)
13. Slumber
14. Muted (feat. Thomas Stankiewicz)
15. Atoms Song (feat. Thomas Stankiewicz) [Video Capsule] *Digital Only Bonus Track

別冊ele-king Warp 30 - ele-king

エレクトロニック・ミュージックの時代を予見し、
大衆音楽に変革をもたらした、
イギリスの地方都市発祥のインディペンデント・レーベル、
その30年の軌跡

歴史的インタヴューを多数発掘、一挙アーカイヴした愛蔵版

エイフェックス・ツイン
オウテカ
ボーズ・オブ・カナダ
ザ・ブラック・ドッグ
プラッド
LFO
ナイトメアズ・オン・ワックス
スクエアプッシャー
トゥ・ローン・スウォーズメン
ミラ・カリックス
プレフューズ73
チック・チック・チック
レイラ
クラーク
フライング・ロータス
ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー
ブライアン・イーノ

いつもより大幅増量の272ページ!

【寄稿】
河村祐介、木津毅、小林拓音、佐々木渉、佐藤大、杉田元一、髙橋勇人、野田努、三田格、吉田雅史、渡辺健吾

■ intro
Warp 30

〈Warp〉30周年──そのはじまりを振り返る (小林拓音)
スタッフ・インタヴュー1:ジェームス・バートン
スタッフ・インタヴュー2:スティーヴン・クリスティアン

■ txt1
コラム1

1992年の〈Warp〉 (野田努)
1995年11月〈Warp Night〉の思い出 (渡辺健吾)
インターネットとその向こう側──〈Warp〉から学んだこと (佐々木渉)
選ばなかった道、これから選ぶ道──21世紀の〈Warp〉 (河村祐介)
〈Warp〉に見るエレクトロニック・ワールド・ミュージックの系譜 (三田格)
電子音楽だからこそ──ハイレゾと〈Warp〉 (杉田元一)

■ forgotten
隠れ名盤30 (河村祐介、小林拓音、野田努、三田格、渡辺健吾)

■ txt2
コラム2

アンチ商業主義と四角い箱の夢──〈Warp〉のヴィジュアル面について (佐藤大)
自由を思い出すために──〈Warp〉のロックが体現するもの (木津毅)
偽りのインテリジェンス──〈Warp〉流ヒップホップとは? (吉田雅史)
帰ってきた〈Arcola〉の軌跡と展望 (髙橋勇人)

■ memories
アーティスト・インタヴュー集

ele-king 1995年4月/5月号 エイフェックス・ツイン
ele-king 1995年1月号 ザ・ブラック・ドッグ
ele-king 1996年2月/3月号 LFO
ele-king 1996年2月/3月号 プラッド
ele-king 1996年11月/12月号 エイフェックス・ツイン
ele-king 1997年8月/9月号 スクエアプッシャー
ele-king 1998年8月/9月号 Warp 100
(レッド・スナッパー、スティーヴ・ベケット、ナイトメアズ・オン・ワックス、ミラ・カリックス、デザイナーズ・リパブリック、スクエアプッシャー、ジミ・テナー、プラッド)
ele-king 1998年10月/11月号 トゥ・ローン・スウォーズメン
STUDIO VOICE 1999年2月号 エイフェックス・ツイン
ele-king 1999年12月/2000年1月号 オウテカ
ele-king 1999年12月/2000年1月号 プラッド
ele-king 1999年12月/2000年1月号 スティーヴ・ベケット
remix 2002年4月号 ボーズ・オブ・カナダ
remix 2002年10月号 ナイトメアズ・オン・ワックス
remix 2003年1月号 ボーズ・オブ・カナダ
remix 2003年5月号 オウテカ
remix 2003年5月号 ミラ・カリックス
remix 2003年6月号 プレフューズ73
remix 2003年10月号 LFO
remix 2004年7月号 !!!
remix 2004年12月号 スティーヴ・ベケット
remix 2005年5月号 オウテカ
remix 2007年2月号 !!!
remix 2007年11月号 プレフューズ73
remix 2008年4月号 オウテカ
remix 2008年10月号 レイラ
remix 2008年10月号 フライング・ロータス
remix 2008年12月号 スクエアプッシャー
remix 2009年7月号 クラーク
ele-king 2013年秋号 ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー
ele-king 2017年冬号 ブライアン・イーノ

■ discography
Warp Records Discography 1989-2019

KASSAV’ - ele-king

[10月21日編集部追記]
 本日のカッサヴの来日公演は残念ながら中止となりました。詳しくはこちらhttps://www.facebook.com/saisonrouge/)をご確認ください。

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SAISON ROUGE presents KASSAV’来日公演
2019年10月21日(月)渋谷ストリームホール
https://saison-rouge.com

 KASSAV’(カッサヴ)がこの秋来日する。1979年にパリで結成されたカリブ海に位置するフランスの海外県マルチニーク、グアドループ出身のバンドで、80年代後半からカリブ海の島々、アフリカ、南米、ヨーロッパで人気を得て、世界のトップ・ミュージシャンとして活動し続けてきた。地元マルチニーク、グアドループのラジオではカッサヴがかからない日はないし、パリ公演では32000人規模の会場を満杯にし、アフリカの村では手作り楽器で一人カッサヴ・コピーを演奏する若者がいる。カッサヴの音楽は世界中に浸透し、ある人たちにとっては生活の一部になり、もはやこの地球になくてはならない存在と言っても過言ではない。

 ズークは、結果としてカッサヴが作ったひとつの音楽ジャンルと言えよう。ズークZoukは「祭り」「宴」「パーティ」を意味し、ズケzoukéは「みんなで踊ろう」という意味で使われる。ズークの語源は、入植者が19世紀に流行らせたマズルカMazurkaであるとか、クレオール語の「体を揺する」soukéから来ているという説もあるが、あまり定かではない(西成彦『クレオール事始』紀伊国屋書店、1999年)。1980年代半ば、マルチニークやグアドループでは、フランソワ・ミッテラン大統領下の文化政策によって自由ラジオが開局し、本国フランスが発信するラジオ番組だけではなく、地元の音楽も一般大衆に届けられるようになった。その頃、生バンドをともなわなくても気軽にできるレコードやカセットによるディスコ・パーティが頻繁に行われるようになり、アンティーユの人々の体に染み付いているリズムと最新のデジタル・サウンドの混淆が大衆の心を掴み、カッサヴの音楽はそうしたパーティの中心に据えられたのだ。それが、カッサヴがズークのオリジネーター・バンドと呼ばれる所以である。

 カッサヴは、デビュー当時から今まで自分たちの言葉であるクレオール語で歌う姿勢を貫いてきた。クレオール語とは、異なる言語の人同士が互いに意思疎通をはかるために自然につくられ、その話者の子孫に受け継がれて母語となった言語のことである。カリブ海に位置するマルチニーク、グアドループは、大航海時代にコロンブスによって発見され、フランス人入植者によって植民地化された。現在のフランス海外県となったのは第二次世界大戦後1946年のことだ。マルチニーク、グアドループのクレオール語は、植民地時代にアフリカから連れて来られた奴隷たちと、入植者であるフランス人との間で作られた話し言葉だが、公用語とは認められていない。マルチニーク、グアドループはあくまで「フランス」の海外県であって、公用語はフランス語なのだ。「ヨーロッパ人でもなく、アフリカ人でもなく、アジア人でもなく、我々はクレオール人であると宣言する」と、マルチニークの作家たちジャン・ベルナベ、パトリック・シャモワゾー、ラファエル・コンフィアンが高らかに宣言したのは1988年フランスのセーヌ=サン=ドニ県で開かれた第1回カリブ海フェスティヴァルにおいてだった(恒川邦夫訳『クレオール礼賛』平凡社、1997年)。カッサヴの世界躍進がこうした社会的動きと重なるのは興味深いことである。

 このように根本的に植民地時代の記憶を問い直し、生まれながらにしてクレオール(混交)化された音楽であるズークは、アンティーユのアイデンティティとして創られた音楽でありながら、パリ在住の移民たちにはもちろん、瞬く間にアフリカ、南米に広がり浸透した。それぞれ文化・言語に浸透して、リンガラ(コンゴ)、クドロ(アンゴラ)、キゾンバ(アンゴラ)、ランバダ(ブラジルなど)といった音楽に影響を与え、ポップミュージックにも拡散された。
 ゆっくりしたテンポのズークは「ズーク・ラヴ」と呼ばれ、男女のペア・ダンスのジャンルにも影響を与え、中にはかなり洗練された形式を持つものまでに発展している。ランバダ・ブームが終わった頃に日本のダンス界に流れ込んできた「ズーク」は、ブラジル経由の「ランバ・ズーク」だ。
 ブラック・ミュージックへも強い刻印を残している。ジャズ界の帝王マイルス・デイヴィスは、1989年のアルバム『Amandra』で、カッサヴの影響を大いに受けたことを明かしている(『マイルス・デイヴィス自叙伝』(1)宝島社、1999年)し、マーカス・ミラーやユッスー・ンドゥールといった大スターも彼らに賞賛を送る。(ベンジャミン・マルケ監督「Kassav’」ドキュメンタリー作品2019年)。近年はフランスのハウスDJ、ボブ・サンクラーによるカッサヴ・リミックスが話題になり、今年はトーゴのポップ・ミュージシャンToofanとジャコブの共演によるカッサヴの曲“Ou lé”のカヴァーが発表されるなど、次世代のアーティスト達からも高いリスペクトを受けている。アフリカのポップ・ミュージックへの影響も計り知れない。カッサヴ、ズークが世界のダンス・ミュージックに残した遺産は有形無形に巨大なものだ。
 また、再評価の流れとしては、いわゆる「レア・グルーヴ」を扱うパリのレーベル〈HEAVENLY SWEETNESS〉で、グアドループのバンド、レ・ヴィキング・ドゥ・ラ・グアドループ(カッサヴの創設メンバー、エドゥアール=ピエール・デシムスがカッサヴ結成前に在籍)など、ズーク以前のソウルやファンク的なグルーヴを持つアンティーユ音楽のいくつかのLPが再発されている。近年ダンスフロアーで新たな旋風を巻き起こしていようだが、それに続く初期カッサヴのサウンドは80年代の初期デジタル・サウンドの再評価の流れとも軌を一にする。
 新世代アーティストの例としては「音とリズムをその土地の文脈と切り離すこと」(https://www.vice.com/en_us/article/3dy3qy/lafawndahs-debut-made-on-an-island-interview)を信条として音楽制作をする Lafawndah (エジプトとイランを出自に持ちニューヨーク、メキシコ・シティなど世界各地で活動)が、アラブやアフリカの音楽と同様ズークも自分の音楽のひとつのエッセンスに入れるべく、ニューヨークで知り合ったアフリカ系アメリカの女性アーティスト、エミリー・キング(a.k.a. Garagem Banda)をつてに、グアドループのスタジオで、70歳のグアドループ在住エンジニア、ジャン=クロード・ビチャラ(実際にはズーク以前の世代)とEP「Lafawndah」を作っている。記事によると世代間ギャップのためにビチェラとの親密な共同制作には至らなかったようだが、このように「ズーク風味」を加えることは、グローバルな視点でビートを追求するテクノ音楽世代以降にも行なわれている。

 一方、日本ではカッサヴ空白の30年だったと言えよう。それにも関わらず、今回カッサヴが結成40周年ワールド・ツアー2019に東京公演を加えてくれたのはなんとも嬉しいことだ。これは奇跡かもしれない。フランスを起点に、近隣ヨーロッパ(ベルギー、ルクセンブルク、ポルトガル、オランダ)、アフリカ(コートジボワール、モザンビーク)、そしてインド洋(モーリシャス島、レユニオン島(フランスの海外県))、太平洋(バヌアツ、ワリス・フテュナ(フランス海外準県)、ニューカレドニア(フランス海外領土)、タヒチ(フランス領ポリネシア))、カリブ海(ギュイヤンヌ(フランス海外県)、トリニダード、グアドループ(フランスの海外県)、マルティニーク(フランスの海外県))の小さな島々……と描かれる彼らのワールド・ツアー・マップは、それだけで重要なメッセージが込められているように見える。彼らが自分たちの音楽を届けようとしているその先は、決して巨大な国ではない。40年間、自分たちの言葉、音楽、リズムを守りながら、グローバルな存在であることも拒まず、彼らが生み出した「ズーク」が今や変容して拡散されていくことも許容する彼らが、今、地球の裏側の島国に伝えることとはなんだろうか? この奇跡の日本公演で彼らの音楽、リズム、言葉を全身で受け止めたい。

 高津さんがEAST SIDE STORYを愛聴されているという噂を耳にしたのは、岡Zのお別れ会のあとにJAZZBO RECORD MARTの横山さんにお会いした時なので、2013年のことだと思う。先日BLADE/LRFのMIKIさんに頂いたWEST SIDE BOYS CHOIRのTシャツにしろ、東京と比べたら大阪には遥かに夢がある。届くべき人の元に文化がきちんと届いて、敬意と共に大切に扱われていることを感じることができる。
 黒人音楽とメキシコ伝統音楽の狭間で密かに生まれた至宝の音楽文化、チカーノ・ソウルを、バリオで育ったヴァイナル・ディガーのチカーノ、ルーベン・モリーナ氏がその膨大な鉱脈を紹介する入魂の音楽ガイドブック『CHICANO SOUL』の、翻訳・復刻を目論む宮田信(BARRIO GOLD RECORDS / MUSIC CAMP,Inc,)氏によるトークショーが、10/9下高井戸JAZZ KEIRINにて行われます。題して”CHICANO SOUL日本語版クラウドファウンディング応援決起集会"。

「チカーノ・ソウル」の起源や定義、その文化的背景など、未だ多くを知られざるチカーノ・ソウルの魅惑の世界の実態を、紐解くきっかけになって頂けたら幸いだと思っています。ぜひ抱えきれないほどの質問と共にお越し下さい。僕もとても楽しみにしています。
(今里/STRUGGLE FOR PRIDE)

☆「チカーノ・ソウル」を聴く、話す。~日本語版クラウドファンディング応援決起集会~ 
Presented by Trasmundo&Barrio Gold Records

10月9日(水)場所:下高井戸 JAZZ KEIRIN

開場:19時 /開演:20時

トーク出演&DJ:宮田信(発起人・翻訳者)、今里(Struggle For Pride)、浜崎伸二(Trasmundo)

2000円(うどん&1d&お土産(チカーノ音楽が好きになってしまう媚薬サンプラー・テープ))

予約:トラスムンド(店頭)/ MUSIC CAMP, Inc.(042-498-7531)

限定:30名さま(もし満員に達した場合は後日もイベントを企画しているので、そちらに是非ご参加下さい。)

「CHICANO SOUL」とは何か? 都市のチカーノ・バリオを舞台に密かに伝承されてきたR&Bの流儀。ローライダー・クルージング、バックヤードのBBQパーティ、深夜のラジオ・・・チカーノ・ソウルが聴かれてきた現場を80年代中盤から体験して来た宮田が、音源をかけながらその魅力を話します。

協力:黒沢さん C/S

special talk - ele-king

 空前の和モノ・ブームである。シティ・ポップの人気はいまだ根強く、竹内まりやのベスト盤は幅広く聴かれているようだし、中古市場では、相変わらず和モノ・コーナーには人がいる。最初にシティ・ポップを再評価したのは90年代初頭の東京のアンダーグラウンドのDJカルチャーだったけれど(初期のユーミン、シュガーベイブ、『風街ろまん』など)、21世紀には欧米のDJカルチャーもそこに目をつけ、そしてさらにまた近年は再々評価が高まっている。
そんな最中に刊行された『和レアリック・ディスクガイド』は、いまの和モノ・ブームの先を見据えた内容となっている。この造語は、もちろん90年代初頭のDJカルチャーに多大な影響を与えた、スペイン領のバレアレス諸島にあるイビサ島のDJスタイルに由来する。バレアリックとは、いまでは多幸性のあるものを指しているようだが、本来は、ロックでもディスコでもアシッド・ハウスでもなんでもアリのDJスタイルを指していた。まあつまり雑多なスタイルなわけで、“和レアリック”もまた、その雑多であることの魅力を和モノにおいて展開している。
『和レアリック・ディスクガイド』の監修者であり、コンセプトの発案者である松本章太郎氏と、DJとして国際舞台で活動中のCHEE SHIMIZU氏に、「“和レアリック”とはなにか?」について話してもらった。とあるベテランDJは、この“和レアリック”なるコンセプトをよくぞ捻り出したものだと感心していたが、ここには「まだまだ和モノはディグしがいがあるぞ」というメッセージのほかにも雑多な裏付けがあるのであって……なので、ぜひ、本を読みながら深読みものほうも楽しんで下さい。(疑似・和レアリック、欧州アジアの外国人DJによる和モノ・トップ3など、面白い企画ページもありますよ〜)


対談は下井草のCHEEさんのお店、「Organic Music 」でやりました。

わかりやすく言うと。その前も、もちろん松本さんはココナッツにいて、山のようなレコードと商売として格闘していたから、自分の身近には大量にあったと思うんですけど、たぶんそのくらいのときからちょっと接し方が変わってきたよね。(CHEE)

そもそも“和レアリック”とはなんでしょう?

CHEE SHIMIZU(以下、CHEE):いつから“和レアリック”って言い出したの?

松本章太郎(以下、松本):10年くらい前。和モノでミックスを急に作ったときがあったじゃないですか。あのときに思いたって。

10年前?

松本:まずはバレアリックというのが10年くらい前にあったんですよ。我らの共通感覚として。“オブスキュア”とかよりもちょっと前。

CHEE:“コズミック”とか言っていたあとだよね。

松本:あの辺の質感とやっていることがリンクしている頃だったので、たまたま耳で和モノをひっかけたらああなった。

CHEE:Flaticもそうだし、みんな元々はイタロとかにいって、“コズミック”にいって、飽きた頃になんとなくバレアリックって言い出したんだよね。

松本:たまたま和モノをみんな掘っていなかったんですよね。新しいジャンルだったんですよ。まだいくらでも見つけるチャンスがあった。

欧米のものをある程度堀りつくした感があったから?

CHEE:そういうところあると思うんですよね。ちょっと飽きたというか。あまり知られていないにしても、いままでは外国のすでにあった規定の何かを見つけて面白がっていたんですけど、それがなくなった。それからだよね。

松本:手元にいっぱいあったし。感覚として、違う質感の新しいものを見つけたという感じもちょっとあったと思うんです。

CHEE:ディスコの延長ではもちろんあったんです。

松本:メインはそうですね。

CHEE:アンビエントとかは別ですけど、和モノに関してはざっくり言ってディスコっぽいグルーヴが基本的にどこかにあるんです。それはいまもそんなに変わってないと思います。イタリアだったり、どこかを聴いたりでだいぶみんなシラーっとしてきた頃に、打ち合わせとかしていないけど、なんとなくみんな和モノを聴きだしたね。

松本:おもしろかったね。もうちょい前、あのときうちらはシェルターでやっていたじゃないですか。

CHEE:シェルターでずっとパーティをやっているんですけど、それで松本さんと当時ココナッツで働いていたRyota OPPとWataru(R)とDJを一緒にやったんです。俺はカミさんのお母さんが当時銀行の外交員をやっていて、お客さん周りをしていたときに、お客さんの家の玄関の前にレコードが捨てる寸前でおいてあったらしくて。うちの娘の旦那がレコード屋をやっているからってもらってきてくれたんですよ。そのなかにショーケンとか矢沢永吉とかサザンとかいっぱいあって。とりあえず聴いてみようと思って聴いたんです。そうしたらけっこういいのがあって。シェルターで松本さんとかを呼んでDJをやっているときにそれをかけたんです。「これはなんだ?」という話になって。

松本:CHEEさんの流れがおもしろかったんですよ。“オブスキュア”な流れでひょっとこうもってきた。あの感じがおもしろかった。

CHEE:うちらは基本的に体系とかはまったく気にしてないから。これは良いってなったときにだいたい体系を追ったり、作ったりするけど、うちらはそういうことが全くなかった。いままでもDJとして、そういう感じで音楽を聴いていたと思うんですよ。そのままの延長できちゃっているので、和モノがきたときにあんまりそういうことを気にしてなかった。

松本:目の前のやつを好きかそうでないかだけで判断していましたね。

CHEE:歌モノとか歌詞の壁ってあったんです。恥ずかしいって。

松本:最初にミックスをしたときにワタルが絶対にやめてくださいって(笑)。

CHEE:そうだね。やっぱり恥ずかしさがあったから。

松本:“レフトフィールド”とかかっこつけていた人が急にね(笑)。でも癖になるんですよね。声も全然ありだなって。

きっかけは矢沢永吉の曲だったんですか?

CHEE:わかりやすく言うと。その前も、もちろん松本さんはココナッツにいて、山のようなレコードと商売として格闘していたから、自分の身近には大量にあったと思うんですけど、たぶんそのくらいのときからちょっと接し方が変わってきたよね。

松本:和モノがYAS-KAZとかアラゴンとか最初に外国の音楽と同じ耳で聴いていた時期があって。それを5年くらい前からやっていたんですよね。

松本さんはココナッツディスクで働いていますよね。大量の中古レコードを目の前にして、通常100円コーナーで売られているような音楽を一生懸命片っ端から聴いていったら意外といいのがあるじゃんってなったんですよね?

松本:それが基本ですね。昔から知識がない分聴いてやっていくしかないので。そのあとは感覚でやるしかなかった。その楽しみがずっと昔からあるんです。

それをよく聴きましたね。

松本:でも“オブスキュア”とか“レフトフィールド”ってもともとそうですもんね。みんなが知らない曲を探したいという欲が私にはけっこうあったので。チャンスがいっぱいあるなら聴けって。あんな時間のかけ方は、ああいう仕事をしてなかったら無理かなと思うんですけどね。

“レフトフィールド”というのはわかるんだけど、“オブスキュア”ってどういう意味ですか?

CHEE:意味はないですよ。

松本:ほぼ一緒に近い。でも“オブスキュア”はCHEEさんが言い出しちゃいましたもんね。

CHEEさんが流行らせた言葉でしょ。

CHEE:全然そんなつもりないですけどねぇ。レアってあんまり言いたくないんですよ。日本でいうレアっていうキーワードがあんまりしっくりこない。値段と正比例しているような言葉に思えちゃうので、あんまり使いたくない。お店でレコードを売っていてもレアって言いたくないんですよね。誰がこれを高いって決めたのかという疑問が。それは昔からです。中古レコードを買い出した頃からそうなんですけど。なるべくレアという言葉を使いたくないなと思ったときに“オブスキュア”とかそういうことを言い出した。

松本さんに“オブスキュア”ってどういう意味ですかと聞いたら……。

松本:「めずらしいっ」て意味だって。

「みんながまだ価値に気が付いてない」とか? 「スルー、軽視されているもの」。

CHEE:それもあると思います。

松本:でももうちょっとこっちはゴミっぽいというか。

CHEE:そうゴミっぽい。

松本:“レフトフィールド”はもうちょいトンマぽいというか。

CHEE:でもだいたい同じような。だからレアとか言っちゃうとすでに価値づけされているものだから。実際に外国ではどういうふうに使われているのかは別にして。

外国人からすれば日本のシティ・ポップとかに気がつきたのはここ数年。だから見つけたという感覚があるんでしょうね。すごい勢いで外国ではシティ・ポップが広がっているので。

松本:まあでも外国人が日本のものを探したら嬉しいんじゃないですかね。うちらが知っているような外国人じゃなくて、もっと普通の人にも日本にはこんなものがあるっていうことが新鮮に映るんじゃないかなと思うんです。でも海外でもきっとあのラインが流行る要素がある。外国人のやっているAORとかああいうものに手を出せばいいのにと思うんですけどね。

CHEEさんは、清水靖晃とか高田みどりとかアンビエントの吉村弘とか、あの辺の人気に火をつけた人物でもありますよね。

CHEE:基本的には松本さんと一緒で、外国の音楽をDJとしてもリスナーとしても聴いていたので、日本の音楽を掘るようになっても、自分の感覚は一緒なんです。だから外国の音楽を聴いているのと同じ感覚で聴いている。唯一の違いは、日本人だから歌詞がわかっちゃうというところだけ。アンビエントとか、ちょっとコンテンポラリーなものとかも感覚としては外国のものを聴いているときとほとんど変わらないですよ。

矢沢永吉とかをかけた頃に同じように?

CHEE:時期的には同じくらいです。真剣に堀り出したのは、俺の場合は外国人の連中が「お前は日本人なんだから自分の国のレコードを掘って持ってこいよ」と言われたことも大きい。

そう言われたんですか? 

CHEE:言われましたよ。11年くらい前ですけど、レコ―ド屋をはじめて海外に買い付けに行って、向こうの連中のところにお世話になって、みんなで一緒に夜音楽を聴いていると、その段階で日本の音楽を掘っている連中が何人かいたんです。日本に行って、すごくいっぱい良い音楽を見つけてきたみたいな感じでみせられて。

それはどの辺の音楽を?

CHEE:吉村弘とか、日向敏文とか清水靖晃もそうですけど。そういうのを知ってるか? と言われて、知っているけどちゃんと聴いたことはなかったなって。たしかに実家の物置に子供の頃から買っていたレコードがたくさんあって、家を壊すから全部持っていけと言われ田舎に帰って箱を開けたら、そういうものが入ってるんですよ。えー俺こんなのいつ買ったんだって。

“和レアリック”とは雑多なものである、それは本来の“バレアリック・ハウス”の意味と同じなわけですが、CHEEさんが“和レアリック”っぽいと言うときはどういうイメージなんですか。

CHEE:あんまり気にしてないよね。とりあえず自分で本に載っているものを並べてみたんですけど、まったくめちゃくちゃですよ。統一性も何もない。だから基本的に何か音楽的に引っかかる部分があればもう良しなんですよね。最近はとくにイージーリスニングとかもっとこってりした歌謡曲とか演歌とかその辺までいっちゃっているので。

松本:やっぱいきますよね。この辺に慣れると次にいきたくなるというか。

CHEE:あとは基本的に僕らくらいの年代だとある程度知識、経験の蓄積がこの年なので増えてくる。そうすると歌謡曲を聴いても、サウンドのプロダクションだとか、アレンジャーはこの人だといいなと思うと、その人がアレンジしているものを聴いてみたりとかいう感じになってくるんです。だからそういう目線でみているところもある。

ちなみに“和レアリック”の魅力って何ですか?

CHEE:やっぱり雑多性。俺はちょっと悪ふざけしている感じがあるんです。

松本:それは間違いないです。ニヤリ感。

CHEE:俺はだいぶ悪ふざけしてる(笑)。

松本:ハハハ(笑)。

CHEE:普通だったら、こんなのかけたら、客に殴られるんじゃないかなみたいなやつも、ニヤッとしてこうね。

松本:以外とそういうものがウケたりするから、手から離してみないとわからないもんなんですよね。

CHEE:それをひとりでやる勇気がないから一緒にやっているようなもんですよ(笑)。

一同:(笑)。

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和モノがYAS-KAZとかアラゴンとか最初に外国の音楽と同じ耳で聴いていた時期があって。それを5年くらい前からやっていたんですよね。(松本)

松本:CHEEさんひとりでさぶちゃん投げればよかった(笑)。でもそうですよね。理解者がいると強くなってくる。こんなのもありだって。

“和レアリック”のディスクガイドを今回見ていて、ほとんどの曲がスポティファイとか配信で聴けないんですよね。それがすごくおもしろいなと思いました。それだけ“オブスキュア”ということでもあるのかな。

CHEE:レコード会社としてもこんなところをスポティファイに上げようなんて思ってないということですよね。眼中にもないと思いますね。

松本:誰かがいいと言わないとね。

シティ・ポップの中古市場は異常に値上がりましたけど、『“和レアリック”・ディスクガイド』に上がっているのは比較的安価なものが多いように思います。

CHEE:値段的には手に入りやすいものが多いですよね。

松本:そのかわり見つけるのもちょっとめんどくさいものが多いかもしれない。見つけたら安いんだけど、いざ探すとなるとなかなか出ないというタイプ。でもあったら絶対安いでしょってやつ。

CHEE:2割くらいは希少価値が付いているものも忍んでいるね。ただそういうのは当時も売れなかったやつですよ。回収されて破棄されたやつとか。でも、たとえばこういう本が出ると、情報が公開される。そうすると動きだすと思うんです。動き出さないとそのまま誰も見つけられないままで終わっていっちゃうから。重要なのはそういうことだと思うんです

松本:それでついでにいろいろと動き出すわけですね。

CHEE:本当に眠っていたやつが、動き出すので、そうするとみんな発見しやすくなるから健全な動きになってくる。僕も出てくるのを待っているんです(笑)。ヤフオクとかにポンと出てくるかもしれないから。地方のレコード屋さんにいってもいままで眠っていたやつをひっぱりだしてきて店頭に並べてくれるかもしれないし。

松本:そこは大きいですよね。出してこなかったものをね。

CHEE:出してこなかったというか、いままで意味もないものだったから、たぶん捨てられる運命にあったもの。救出するためには情報公開しないと、そのままもうゴミになっていっちゃうので。情報公開にはそういう重要性がはあると思う

あと、雑多といいながらも厳選されていますよね? 王道というか、わりとベタなところは避けていますし。

CHEE:雑多でも、かなり厳選されている。

松本:めちゃんこ厳選されているじゃないですか。

CHEE:たしかにしたけど。

松本:落とすのは泣く泣くでした。なんでこんなの選んでいたのかというのもけっこうあったので、ぽいぽい捨ててったんですけど。疑似和モノコーナーを最後にページの都合上つっこんだんですけど、あれで復活したものもちょっとあって。

この本はCD Eraで終わっていて、90年代前半で終わってるんですけど、“和レアリック”は90年代前半までという理由は何かあるんですか。

松本:全然ないです!

CHEE:僕はけっこうCDも買うんですけど、全然ないですね。

松本:私もCD大好きです。

CHEE:ポンキッキとか、みんなのうたとか、子どもむけのやつはおもしろいのが多い。

松本:一軍の人がやってますもんね。

CHEE:こっちにいくと収集がつかないので。

松本:でもチャンスですよね。おもしろいものがまだまだあるなって。ちょっと箱を開けて読み込むまでの待ち時間がめんどくさいというか(笑)。レコードより時間がかかっちゃうんですよね。レコードはいっしゅんで聴けるけど、CDは待つ時間がある。読み込み遅いなって。

CHEE:でも飛ばせるからいいですよね。

松本:でもレコードのほうが、溝みてこの辺聴けばわかるかなというところに落とせるから。

CHEE:視聴のスピードは、レコードのほうが早い。

松本:ぜんぜん早い。不毛率も高いし。

CHEE:CDはまだまだおもしろいものがいっぱいある。

松本:まだなんでもあると思うんです。カセットテープとかは絶対数が少なそうだけど。録音されている何かだったらひとまず聴いてみたいですけどね。

CHEE:カセットも面白いですからね。

カセットって?

CHEE:とくにCDシングルもそうなんですけど、カラオケ・ヴァージョンとかいわゆるインストが入っているんですよ。歌謡曲でもそれがいい。ヴォーカルいらねぇだろっていうやつはカラオケ・ヴァージョンを探すっていう。

松本:言っちゃった、カラオケ・ヴァージョン。

CHEE:インストじゃないね。カラオケ・ヴァージョン。

松本:でもチャンスなんですよね、カラオケが入っているやつ。

CHEE:ただカラオケだから主旋律が、歌のメロディが、楽器の演奏ではいっちゃっていたりするんですよ。

松本:すごくしょぼくなる場合もよくある(笑)。

CHEE:そうそう(笑)。それがちょっと悲しんです。

松本:たまにいいものがあったりね。でも何もないとすごくシンプルすぎて今度はつまらなかったり。難しいですよね。めったに当たらないですよね。

CHEE:まだまだほりがいがある。

松本:名前はただの冠であってね。

CHEE:基本なんでもいいっちゃなんでもいい。

松本:もうすでにそれに近くなってきてはいるんですよね。せっかくあった冠(かんむり)だったので、今回使っちゃったんだけど。

CHEE:言ったもん勝ちですよ(笑)。

松本:あの頃のCHEEさんは“和レアリック”とかさって(笑)。何にもしらなかったですからね俺らは(笑)。

(構成:野田努)

COCONUTS DISK EKODA
和レアリックの発信源、西武池袋線の江古田駅を降りて2分、松本章太郎さんが店長を務める「ココナッツディスク江古田」は、レジ前に大きく和モノコーナーがあります。ほかにもいろんな面白いものがあるので、ぜひ、お店まで行きましょう。
東京都練馬区豊玉上1-9-10
tel. 03-3948-2388
12:00~21:00 (年中無休)
contact
ekoda@coconutsdisk.com


和レアリックの拠点、COCONUTS DISK EKODAの店内

Organic Music + Planet Baby Physical Store
Chee Shimizuさんが運営する「Organic Music」は西武新宿線の下井草を降りて2分ほど歩くとあります。和モノコーナーには雑多にいろんなものが。山下達郎などの人気盤が都心の中古店よりも安くあります。また、古着を中心に、アクセサリー、Tシャツ、洋服なんかも売っています。
東京都杉並区下井草4-32-17第一陵雲閣マンション108
平日 15:00〜21:00
土日祝 13:00〜21:00
不定休
https://organicmusic.jp/

海外からの来客も多い、Organic Musicの店内(安いです)


和レアリック・ディスクガイド
松本章太郎(監修)
執筆:AZ、Chee Shimizu、Flatic (Cos/Mes)、Gokaine、Rockdown、Willie、浦元海成、松本真伍、吉村和弥
https://www.ele-king.net/books/007112/

消費税廃止は本当に可能なのか? (1) - ele-king

消費税が10%になり数日が経った。
本稿では「消費税廃止は本当に可能なのか?」と題し、その実効性が理論として正しいのか検証していきたい。

 i-Tunesで好きなアーティストの楽曲を買う際にも、Amazonで書籍を購入する際にも、コンビニでビールを買う際にも、誰でも買い物をする際には10%の消費税を支払うことが義務付けされた。

 30代以下の若い人たちにとっては、物心ついた頃から消費税は課されていて、あって当たり前のもの、税率は上がって当たり前のものとして認識されてきただろう。しかし、20,000円の財布を買う際には2,000円分の税が含まれ、パソコンを70,000円のものに新調する時には7,000円の税を支払うことになると聞いたら、大きなインパクトを感じるのではないだろうか。


画像:山本太郎氏・街頭演説より。池戸万作氏作成。

 そればかりか、上図のように、一か月に20万円消費する人にとっては、年間で22.8万円の消費税が課されるとする試算もある。総務省「家計調査」と比較するならば、年収400~500万円の人に相当するだろう。同調査によると年収が300~400万円だとしても消費税納税額は19万円とされ、消費性向(所得のうち消費に割り当てる割合)の違いにより、平均所得付近の層の納税額はさほど変わりないこともわかる。

 約20万円もあればちょっとした海外旅行にだって行けるし、服だっていろいろ買える。友達や恋人と食事に行く回数を増やすこともできるだろうし、子供がいるならその為の用立ても可能だ。自分にはそんな贅沢はできない、奨学金も返済しなければならないしローンや借金もあるという人だって、もしこの数十万円が浮くとなれば随分と生活が楽になるのではないだろうか。そう考えると、なぜこんなに多額の税金を払わなくてはならないのかと怒りさえ感じるのではないか。

 去る9月12日、共産党・志位和夫代表とれいわ新選組・山本太郎代表の党首会談が行われ、「5野党・会派と市民連合が合意した共通政策」をベースに「消費税廃止を目標にする」ことが政策合意として結ばれ、そのうえで「野党連合政権にむけ大事な合意が確認できた」とし共同会見を行った。消費税廃止を掲げる”影の”連合政権と呼べる存在が誕生したことにより、今まで非現実的だと思われてきた消費税廃止にも一定の現実味が帯びてきた格好となる。

 10月から施行された10%消費増税に関しては、これまでも国内外を問わない形で、スティグリッツやクルーグマンという複数のノーベル経済学賞受賞者を含む様々なエコノミストからも批判が投じられている。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは社説で、消費税増税が経済をさらに悪化させる「自傷行為」になるとの見方を示したほどだ。

 筆者もマクロ経済学初学者ながら、消費税は廃止にすべきだとの見方を強めている一人だが、一方でこの自傷行為と揶揄された消費税を、日本国の社会保障のために必要だと考える人たちも多い。本当に自傷行為になるかどうかは、今後の各種経済指標を注視する必要があるのだろうが、10月までのメディア各社の世論調査では、消費増税に反対する人が過半数を占めるものの、おおよそ賛成派と拮抗する形となっている。

 増税賛成派の多くには「増え続ける社会保障費を賄うためには増税はやむを得ない」「将来世代のツケとなる国の借金1100兆円をこれ以上膨張させてはならない」という意見が根強い。また、この10%増税に賛成したばかりか、財界を代表する団体、日本経済団体連合会(経団連)は19%への増税を、経済同友会は17%への増税をそれぞれ政府に対し提案している。

 しかし、このような仰々しい名称を冠した経済団体はあくまで企業経営者の集団だ。マクロ経済学や財政学の専門家でもなんでもないロビイスト団体が、その能力を超えて日本政府に経済政策の提言を行っているのだから酔狂にも等しいと言えるのではないだろうか。「経営」と「経済」はまったくの別物で、いうなれば、経営は「ビジネスを介して人々から富(貨幣)を取り上げること」、対して経済は「人々に富(貨幣)を生み出し分け与えるもの」というくらいの違いがある。「経済」の語源である「經世濟民」が、[世をよく治めて(經めて)人々を苦しみから救う(濟う)こと]とされるように、営利企業の「経営」とは真逆とも言って良いほどに質が異なるのだ。

 では、「富を取り上げる」とはどういうことか。企業経営者たちが業績を上げるために躍起になる「無駄の削減」や「イノベーション」というものは、人々が受け取るはずだった所得を奪う行為で、誰かの富を別の誰か(主に資本家)に移し替えるだけの行為に他ならない。これは、実体経済市場全体にとって特に良いことはないばかりか、富が偏在し過ぎた場合は、是正されなければならない対象ともなり得る。

 もちろん、民間で活発なビジネスが行われることによって貨幣の流通速度が速まり、経済発展に寄与するというメリットもある。しかし、例えば今までカメラや時計、音楽再生機、パソコン、電話というようにその特性別に分かれていたものが、スマホという商品に機能が集約されるようなイノベーションが起こると、それまでカメラ単体を製造していた業者は淘汰され、そこで生まれていた従業員の所得も失われることになる。この一点をマクロ経済の視座から見ると、実体経済市場を巡るはずだった貨幣が資本家の貯蓄や金融資産へと消えることになり、全体の富の損失に繋がることがわかる。

 「合成の誤謬」という概念がある。大辞林によると、「個々人にとってよいことも、全員が同じことをすると悪い結果を生むことをいう語。個人にとって貯蓄はよいことであっても、全員が貯蓄を大幅に増やすと、消費が減り経済は悪化するなど」とある。ミクロの視点では正しいことでも、それが合成されたマクロのスケールでは、意図しない結果が生じることもある。企業が「無駄の削減」などに勤しむと、かえってその分マクロ経済を巡る富(貨幣)が少なくなるということだ。

 一般的には、無駄の削減やイノベーションを通じて自身の収益となったことが、「富を創出した」のだと誤解されている。しかし実態は逆だ。多くの企業経営者も、自らの商行為を通じて国の経済に貢献したと誤解しているのではないだろうか。この行動様式や勘違いこそが「合成の誤謬」と呼ばれる類いとなるが、彼ら企業経営者たちは、国家財政やマクロ経済を企業会計と同一視してしまう「家計簿脳」に陥り、そのアニマル・スピリットは、デフレ状況下であればただただ富を食いつぶそうとする方向に働いてしまう。

 当コラムでも何度かお伝えしているように、反緊縮のロジックでは自国通貨建て国債を発行する国家が破産することはない。そして過度なインフレにならなければ、国債は額の多寡に関わらず、国民経済のために発行できる。しかし、この合成の誤謬や家計簿脳に執着する人々は、Pay As You Goの原則(支払った分だけ使える仕組み)に基づき、下図のように「国の借金1000兆円を返済しなければ」とか「社会保障費を消費税で賄おう」などという策に溺れることになってしまう。どうしても税が国家財政を支えていると考えるのである。


*上図は経済同友会の一次ソースを、ツイッターの有志が経世済民同好会(笑)の正しい認識と比較する形で二次創作したものとなる。

 自由放任的な資本主義体制は、放っておくと富の偏りが生まれてしまうので、政府がその財政的権力をもって是正すべく介入しなければならない。富の偏在、つまり経済的格差の拡大が経済停滞を招くことは、すでにIMFやOECDをはじめとする国際的機関や幾多の経済学者に指摘されるところだ。考えてみれば、中産階級が没落して消費額を減らせば、経済を回すための一番大きなエンジンである個人消費が落ち込むのは当たり前である。日本のGDPの約6割は個人消費で支えられているのだ。

 ところが、この資本主義の負の側面の拡張を放任するどころか、後押しし続けたのが日本政府であった。

 大雑把に言うと、私たちの暮らしが良くならないのは、政府が緊縮財政をしき、野放図な略奪型資本主義を認め、企業も実体経済市場に投資をしないからだ。政府や企業がお金を出さないから、私たちにもお金がない。当然のことじゃないか。

 消費税廃止は本当に可能なのか、廃止できるのならその代替財源はどうするのか。次回も続けたい。

Tenderlonious - ele-king

 昨年はザ・22アーケストラをフィーチャーした『ザ・シェイクダウン』に、今年に入ってルビー・ラシュトンでリリースした『アイアンサイド』と、よりジャズの生演奏にフォーカスした作品が続くテンダーロニアスことエド・コーソーン。これらのアルバムではジャズ・ロックやジャズ・ファンク、モーダル・ジャズやスピリチュアル・ジャズが組み合わされた音楽をやっていて、ユセフ・ラティーフなどに影響を受けたアフリカやラテン色の濃い演奏を見せたり、『アイアンサイド』ではポーランドの巨匠クシシュトフ・コメダのカヴァーもやっていた。その一方で、J・ディラやスラム・ヴィレッジのようなヒップホップ・ビートを咀嚼したリズムを作り出したり、ドラムンベースやブロークンビーツをジャズ演奏の中に取り入れるなど、もともとクラブ・ミュージックの世界からジャズへと進んだテンダーロニアスらしさも見せていた。

 今回リリースされた新作『ハード・レイン』は、『ザ・シェイクダウン』や『アイアンサイド』に比べてクラブ・サウンドやエレクトロニック・ミュージック寄りのもので、彼の初のミニ・アルバムとなる『オン・フルート』(2016年)やDJ/プロデューサーのデニス・アイラーと組んだ『ブリック・シティ(8rick Ci7y)』(2017年)の路線に近いものだ。ジャズの即興演奏やジャム・セッション的な演奏がベースとなるのではなく、最初にビート・プログラミングがあって、そこにフルートなりサックスなりの演奏を被せていくというものだ。テンダーロニアスは本来的なミュージシャンとは違うので、こうしたスタイルこそがそもそもの彼らしいものと言えるだろう。いろいろなミュージシャンが参加していた『ザ・シェイクダウン』や『アイアンサイド』と違い、『ハード・レイン』はテンダーロニアスのみで作られていて、録音も彼のベッドルーム・スタジオでおこなったようだ。1曲目の“ケイシー・ジュニア”を聴けばわかるように、あくまで基本は繰り返し反復されるマシーン・ビート。キーボードなどの演奏も極力ミニマルで、あくまで無駄を排したシンプルなものとなっている。

 この“ケイシー・ジュニア”はセオ・パリッシュに繋がるようなビートダウン系の曲だが、ほかにも“バッファロー・ガールズ”や“ブロークン・トム”のような1980年代風のエレクトロあり、URを彷彿とさせる抒情的なテクノ・サウンドの表題曲“ハード・レイン”あり、カール・クレイグの69的な世界が繰り広げられる“アナザー・ステイト・オブ・コンシャスネス”ありと、テンダーロニアスが影響を受けたエレクトロニック・ミュージックを総動員したアルバムとなっている。URやデリック・メイなどのデトロイト勢から、ハービー・ハンコックやウェザー・リポートなどのジャズ/フュージョンに影響を受けたカーク・ディジョージオ(アズ・ワン)やイアン・オブライエンが、1990年代のUKでジャズとエレクトロニック・ミュージックを結び付けたサウンドを切り開いていったが、“ハード・レイン”にもそうした匂いが感じられる。アルバム・ジャケットの雰囲気も、当時のアズ・ワンやイアン・オブライエンのように抽象性を感じさせるものだ。抽象性や抒情的な美しさという点では、ジャズに接近していた頃のラリー・ハード(ミスター・フィンガーズ)にも通じるものだ。

 そして『ハード・レイン』はテクノやハウスだけでなく、さまざまなタイプのリズムに溢れている。J・ディラを咀嚼したようなヒップホップ・ビートの“GU22”に、奇妙なズレ感がクセになる変則ビートの“ワーキン・ミー・アウト”があり、アブストラクトなムードの“ラヴ・ユー”のようなビートレス系のナンバーまで、特定のジャンルに縛られないクロスオーヴァーなアルバムとなっている。“オールモスト・タイム”や“エイソップ・ソウツ”などはジャズともハウスともヒップホップとも言えず、またそれら全ての要素を含んだ曲。かつてのパル・ジョーイのようなジャズ・ハウスとジャズ・ヒップホップの中間をいくようなプロダクションとなっている。いずれにしても反復されるビートの美学に貫かれた曲だ。全体的にフルートやサックス演奏も控えめとなっていて、『ハード・レイン』はテンダーロニアスのビートメイカーとしての側面に振り切ったアルバムと言えるだろう。

MUTE BEAT - ele-king

 これは嬉しいニュースだ。80年代、最高に格好良かったミュート・ビートの名曲が、HMVの新宿ALTA店3周年、渋谷店5周年として、2枚の7インチで再発される。
 まずはその1枚、「Organ's Melody / After The Rain」。 2曲とも言わずと知れた初期ミュート・ビートの代表曲で、“Organ's Melody”はこだま和文作曲、“After The Rain”は故・朝本浩一作曲。1986年に12インチでリリースされた傑作の7インチ盤だ。これからミュート・ビートを聴きたいという人には最良の2曲だろう。ちなみにトランペットのイラストはこだま和文。
 もう1枚は、「Something Special / Thread Mill Of Life」。“Something Special”は故・グラッドストーン・アンダーソンとミュート・ビートによるコラボ曲。アンダーソンは伝説的なジャマイカのピアニストで、ミュート・ビートとの共演はいまだ語りぐさになっている。この曲は7インチのみで発表されたレア音源。また、もう1曲の“Thread Mill Of Life”は、Kodama and the Dub Stationのライヴでも演奏されている“Beat Away”が元の曲で、NYのワッキーズ・スタジオでリー・ペリーがトースティングしたヴァージョン。この2曲は、ミュート・ビート(そしてリリース元のOVERHEAT)とジャマイカとの繋がりの記録であるばかりか、いかにミュート・ビートがすごかったかを改めて知らしめる。
 HMVの店舗およびOVERHEATのサイト(https://overheat.shop-pro.jp/)で買えます。限定発売なので、早めにね。


■ARTIST: MUTE BEAT
■TITLE:ORGAN’S MELODY / AFTER THE RAIN
■LABEL:OVERHEAT RECORDS
■CATNO.:OVE70134
■FORMAT:7
■税抜価格:¥1,500
■発売日:2019年10月2日(水)


■ARTIST / TITLE:
SIDE A:G.Anderson, MUTE BEAT / SOMETHING SPECIAL
SIDE B:Lee "Scratch" Perry, MUTE BEAT / THREAD MILL OF LIFE/
■LABEL:OVERHEAT RECORDS
■CATNO.:OVE70135
■FORMAT:7
■税抜価格:¥1,500
■発売日:2019年10月2日(水)

Kiefer - ele-king

 LAを拠点に活躍する、ジャズ・ピアニストでありビートメーカーでもあるキーファーが〈Stones Throw〉より、セカンド・アルバム『Superbloom』を9月20日にリリースした。

 LAの現行ジャズ・シーンやビート・シーンとも関わる一方で、アンダーソン・パークのアルバム(『Oxnard』&『Ventura』)にプロデューサーとして参加するなど、多方面で活躍し、昨年、〈Stones Throw〉よりリリースされたファースト・アルバム『Happysad』も非常に高い評価を得たキーファー。今回のアルバムはピアニストとしての面に強くフォーカスが当てられた作品になっており、ピアノおよびアナログ・シンセによる温かみのあるサウンドプロダクションによって、『Superbloom』(=砂漠などで大量の花が咲き乱れる現象)というタイトル通り、実にカラフルでオーガニックなイメージが完成している。

 なお、アルバム『Superbloom』のLPおよびCDには、2019年4月にデジタル配信でリリースされたEP「Bridges」を追加で収録。『Superbloom』と同じくピアノとシンセをメインにしながらも、よりローファイな質感である『Bridges』との微妙なテイストの違いを感じてもらいたい。

 また、今週末の10/8から、ニュー・アルバムを提げて、韓国(ソウル)と日本(大阪、静岡、東京)を巡るアジア・ツアーがついにスタート。10/12の《朝霧JAM 2019》および10/14のビルボード東京の公演ではバンドセットによるライヴが予定されており、こちらの初来日ツアーもぜひお見逃しなく!(大前至)


Kiefer『Superbloom』
Label: Stones Throw Records
※LP、CDには前作EP「Bridges」を追加収録

【TRACKLISTING】
Side A (Superbloom)
 01. Golden
 02. Frozen
 03. May 20
 04. 10,000 Days
 05. Good Looking
 06. Be Encouraged
 07. And Encourage Others
Side B (Bridges)
 08. Journey
 09. Island
 10. Orange Crayon
 11. Cute
 12. Sunny
 13. Green Crayon

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Album Info Page


KIEFER JAPAN / KOREA TOUR

10/8 (Tue) ソウル @Modeci
10/9 (Wed) 大阪 @Conpass
https://www.conpass.jp/7993.html
10/12 (Sat) 静岡 @朝霧JAM 2019 *バンドセット
https://asagirijam.jp/
10/14 (Mon/Holiday) 東京 @ビルボードライブ東京 *バンドセット
1st Stage Open 15:30 Start 16:30 / 2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
https://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=11610&shop=1

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Kiefer

LA出身のジャズ・ピアニスト兼ビートメーカーとして、アンダーソン・パークの最新アルバムにも3曲プロデュース参加、ケイトラナダともコラボ楽曲をリリース、マインドデザインのライヴ・バンド・メンバーとしても活躍する西海岸注目の次世代アーティスト。
幼少からUCLAジャズ学科までに培われてきたヒピアノの実力と、10代初期からLAビート・シーンで育まれてきたヒップホップのビートメイキングの才能が見事にクロスしたジャズ・ビート・ミュージックで開花。2017年リリースのデビュー・アルバム『Kickinit Alone』が米A2IMのベスト・ジャズ・アルバムにノミネートされ、2018年の〈Stones Throw〉からのアルバム『Happysad』はPitchfork、Bandcampといったメディアや、ドクター・ドレやDJジャジー・ジェフなどのキーパーソンたちにも称賛された。ニュー・アルバム『Superbloom』はロバート・グラスパー、カマシ・ワシントン、そしてJ ディラ、ノレッジにもリンクし、LAビート・シーンとジャズ・シーンを繋ぐ最重要作品で、これを聴かずに今のビート・ミュージックは語れない。

Kiefer - 10,000 Days - Superbloom
https://www.youtube.com/watch?v=9A7fmEehmxY

Kiefer - "Be Encouraged" - Superbloom
https://www.youtube.com/watch?v=SL0fXKNAd2c

Kiefer - Golden - Superbloom
https://www.youtube.com/watch?v=4tuvWY-wd0M

Be Encouraged: Kiefer Documentary
https://www.youtube.com/watch?v=83joMCFE5gE

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