「K A R Y Y N」と一致するもの

interview with !!! (Nic Offer) - ele-king

 ぶん殴る。それがタイトル『Wallop』の意味だ。直球である。アティテュードにかんしていえば当時のニューヨーク市長、ジュリアーニを痛烈に批判した2003年の出世作「Me And Giuliani Down By The School Yard (A True Story)」のころから何も変わっていない。
 とはいえもちろん、チック・チック・チックはもう20年以上活動を続けているバンドである。細部のサウンドは幾度も変化を重ねてきた。もろにディスコに傾斜した前作『Shake The Shudder』から2年、今回の新作はだいぶヴァラエティに富んだ内容に仕上がっている。不穏でいかめしげな1曲目から、アコースティックなギターとエディットされた音声のかけ合いが最高の快楽をもたらすハウス調の“Couldn't Have Known”を経て、先行シングル曲“Off The Grid”へといたる序盤の流れや、80年代の歌謡曲のような主旋律とアレンジに、それとは正反対の強烈なドラムスが覆いかぶさる“Serbia Drums”もおもしろいのだけれど、このアルバムの醍醐味はそれ以降の展開にある。もの憂げな“Slow Motion”も新鮮だし、「5万ドルでは俺の心は変えられない」と歌われる“$50 Million”では、ベースがなんとも不思議な動きを見せている。あるいは、チャイルディッシュな電子音が特徴の“Domino”も、チック流ダーク・エレクトロを聴かせる“Rhythm Of The Gravity”も、ともに加工された音声が印象的で、いつもとはちょっと異なる彼らの表情を垣間見させてくれる。1枚のなかにこれほどさまざまなアプローチが同居しているのは、彼ら史上初めてのことではないだろうか。
 それら種々の試みすべてに共通しているのはそして、やはりダンスである。どれほど細部に趣向を凝らそうとも、彼らがダンスを忘れることは絶対にない。どんなに社会や政治の状況が絶望的であろうとも、彼らは踊り狂うことでそれを笑い飛ばす。それこそがチック・チック・チックというバンドの本懐であり、また今回の「ぶん殴る」という「反撃」の支柱でもあるのだろう。どこまでもほとばしる熱いパッション……いやはや、秋の来日公演が楽しみでしかたない。

前回の大統領選挙では、共和党からびっくりするようなパンチをくらった気がした。このアルバムは俺たちの反撃を意味している。俺たちもやつらにたいして「Wallop」をお見舞いしたいと思ったんだ。

今回の新作のアートワークでは、ネコが目を光らせて境界を渡っています。これは、ネコはヒトが決めた境界を軽々と越えていく、というようなメッセージなのでしょうか?

ニック・オファー(Nic Offer、以下NC):(笑)。そうじゃないけれど、その解釈は最高だね。俺のお隣さんが引っ越して出ていったんだけど、俺はその部屋の開け方を知っていたからドアを開けて入った。俺はパーシーという名の子猫を飼っていて、パーシーは基本的には俺の家の部屋という世界しかいままで知らなかった。そのとき、パーシーも隣の家に入ってきて、突然パーシーにまったく新しい世界が開けた。パーシーはとても昂奮して、全神経を研ぎ澄ましていたよ。パーシーが隣のアパートメントに入ったところの瞬間の写真を撮ったんだ。アートを作るとき、俺はそういう感覚でいたい。まったく新しい世界に入り込んだ子猫のような感覚。

ちなみに、ネコ好きですか?

NC:(笑)。好きかどうかがわからない、というのが問題だよね。ネコは、人間の脳をおかす病気を持っていて、その病気にかかると人間はネコの中毒になってしまうという。そうなるんだよね? よくわからないけど、俺もその病気に感染していることはたしかだ(笑)。俺は初めて会ったときからネコが大好きだ。今回のアルバム・カヴァーの主役となったパーシーも大好きだ。ちょうどこのアルバムの制作に入るときに、子ネコのパーシーをもらってきたから、パーシーは今作に本質的に関連していたのさ。

今回の新作はチック・チック・チックにとって8枚目のアルバムとなります。もうそろそろヴェテランの仲間入りと言ってもいいかと思うのですが、これまでの歩みを振り返ってみてどう思いますか?

NC:苦労の連続だったよ。でもこれは、つねに俺がやりたかったことなんだ。これに勝る重要なことはいままでに一度もなかった。他のバンド活動をしていたときも、アウト・ハッドを同時進行していたときも、このふたつのバンドは俺たちの子どもみたいなもので、両方ともいちばん大事だった。いままでずっと、この活動は、俺がいつもやりたいと思っていたことだから、あまり立ち止まって考えるということはしなかったね。俺がやってきたことは、つねに、バンドにとって最高のアルバムを次も出せるようにしてきた準備だった。チック・チック・チックというバンドの枠のなかで、俺たちがうまくなって、より良いバンドになっていくというのがつねに課題としてある。

5枚目の『Thr!!!er』でパトリック・フォードとスプーンのジム・イーノをプロデューサーに迎えて、音が変わりました。その後パトリックとはずっと組んできて、今回も参加しています。彼のどういうところがあなたたちと合うのでしょう? ジムとの違いは?

NC:ジムは昔からいる典型的なプロデューサーという感じで、パトリックは新しいタイプのプロデューサーという感じだね。パトリックは単刀直入にものを言うから、俺たちをムカつかせるときもあるが、そこが俺たちと合っているんだと思う。でも冗談を言い合ったりできる関係性だから、彼は何かが良くないと「それは良くない」と言い、同時に俺たちのことをバカにできる。それは良いことだと思う。核心に触れることができるから。俺たちにたいしてなんでも言えるような人が欲しいからね。彼はその役に適している。パトリックは、俺たちが尊敬できるような、素晴らしい耳を持っている。それに彼とスタジオにいるのは楽しいから、彼と一緒に時間を過ごすのが俺たちはたんに好きなんだ。

今作にはホーリー・ファックのグラハム・ウォルシュも多くプロデュースで参加していますね。彼が今回あなたたちにもたらしたものとは?

NC:グラハムはホーリー・ファックのメンバーで、そこで彼はホーリー・ファックのやり方で活動している。今回は彼がチック・チック・チックのメンバーとして何週間か加わったような感じだったからクールだった。だから俺たちとはちがうキャラクターやアイデアをバンドにもたらしてくれたよ。俺たちが提案しないようなことを提案してくれる人が好きなんだ。彼の活動しているシーンは俺たちと近いけれど、俺たちとはべつのことを提案してくれる人だったからそれが良かったな。

“Couldn't Have Known”や“Domino”、“Rhythm Of The Gravity”などでは声が加工されたりチョップされたりしています。あなたたちの音楽において「声」はどのような位置を占めるのでしょう? 特別なものなのか、数あるサウンドのなかの1種類にすぎないのか。

NC:ヴォーカルは特別なものだと思うね。ヴォーカルは映画で言うとスクリーンの中央を占めているものだ。まわりでいろいろなことが起こっていて、メインとなるアクション。だが同時に、サウンドの1種類として扱うのも好きだ。俺たちが好きなダンス・チューンで聞こえるヴォーカルは、リズム楽器のように使われている場合が多い。そういう使い方も好きだね。だからヴォーカルでもなんでも、柔軟性を持って取り組むやり方が良いと思う。

今後オートチューンを使う予定はありますか?

NC:過去に使ったことはあるよ。オートチューンは俺にとって、フルートやピアノと同じ、ひとつの楽器にすぎない。ピアノも、これから先のアルバム6作に使うかもしれないし、もう二度と使わないかもしれない。オートチューンもそれと同じ考え方だよ。

“Serbia Drums”の上モノは80年代のポップスを想起させるのですが、それとは対照的にドラムが強烈です。歌詞もビジネスのダーティな側面を暗示させる内容ですが、なぜ「セルビア」なのでしょう?

NC:曲が、セルビアでおこなわれたサウンドチェックの音をもとに作られたからだよ。とても独特に響く空間で、ドラマーのクリス(・イーガン)が「この部屋の響き方は最高だ」と思い、あのビートをドラムで演奏して「これを使って曲にできないか?」と俺たちにファイルを送ってくれた。それは携帯電話で録ったビートだったんだけど、それを使ってラファエル(・コーエン)がこの曲にしたのさ。最初からこの曲は“Serbia Drums”というファイル名で、曲を完成させたときも、「それが曲名だな」と思った。ドラムの響きが特有なのを聴いてもらいたかったからこの曲名にしたというのもあるね。

西洋の世界において昔は、 聖書だけが人びとにとってのエンターテインメントだった。いまの時代はポップ・カルチャーやニュースがエンターテインメントになった。クレイジーな人たちはそれにインスピレイションを受けてクレイジーな行動に出ている。

7曲目の“Slow Motion”からアルバムの雰囲気ががらりと変わり、“Domino”や“Rhythm Of The Gravity”と、いろんなタイプの曲が続きます。後半はかなりヴァラエティに富んでいると思うのですが、全体をこのような構成にした理由は?

NC:俺たちはアルバムを通しで聴くという世代の人間だ。最近はプレイリストなんかが人気で、音楽の聴き方が、アルバムよりも曲のほうが大事にされていて、シングルや45 rpmの時代に戻ったようで、それはそれでエキサイティングだと思うし、俺たちも気に入っているけれど、同時に俺たちはアルバムを聴いて育ってきた。だからアルバムをつくるというのは、俺たちにとっては夢が叶ったのと同じことだから、アルバムはリスナーが存分に体験できるものにしたいと思っている。映画のように山があり谷があり、サスペンスを感じる瞬間があるようにしたい。だから俺たちは、豊かで、バランスの良いアルバムを作ろうとしている。

“$50 Million”は、「5万ドルでは僕の心は変えられない/でも、5000万ドル積めば変わるかも」「4900万ドルで手を打つ」というフレーズが印象的です。もし私が「4900万ドルあげるから、トランプ支持者になれ」と言ったら、なりますか?

NC:(爆笑)。たぶんならないだろうね。俺が寝返ると思ったかもしれないけど、俺はそんなことはしないよ。

素朴に、お金は欲しいですか? ちなみに私は欲しいです。

NC:(爆笑)。いらないよ。ただバンド活動を続けられればいい。“$50 Million”は、「俺は絶対に寝返らないぜ」とやけに聖人ぶった感覚について歌っている曲で、寝返ったやつらを非難している内容なんだけど、同時に自分は絶対に寝返らない、とも言っている。だって絶対にもらえない額を提示しているからね。だから両方の意味があって俺は気に入っている。誰にでも、自分が手を打つ金額というものがある。歌詞にもあるけど、俺は誘惑されたこともあるけど、そんなに頻繁にじゃない。5万ドルでは俺の心は変えられない。
 また、チック・チック・チックにとって「寝返る」ということがなんなのか俺にはよくわからない。俺たちはべつに寝返らない。自分たちに合わないと感じたCMの依頼は断ってきたけど、そんなに悪くないなと思ったCMの依頼は受けてきた。複雑で微妙なテーマではあるけれど、俺たちはまだ自分たちのパンクのルーツを主張して、そういう曲を書いてもいいと思っている。

先週はテキサスとオハイオで立て続けに銃の乱射事件がありました。エルパソの方の事件は、移民にたいするヘイト・クライムだったとも言われています。トランプは自分は差別主義者ではないと言っているようですが、これはトランプが大統領になったことで引き起こされた事件だと思いますか? それとも彼はとくに関係なく、合衆国では以前からずっとそういうレイシズムにもとづく犯罪が多かった?

NC:その両方だと思う。レイシズムにもとづく犯罪はアメリカの歴史の一部として昔からあったことだ。だが、アメリカに住んでいる人なら誰でも明確に感じているのが、ここ数年でアメリカの雰囲気は変わったということ。レイシズムがアメリカに前からあったのはたしかだけど、トランプはそのレイシズムという火に油を注いでいる。その火をかき立てて、より大きなものにしている。あの乱射事件を起こしたやつは狂っていて、精神が病んでいることは間違いない。西洋の世界において昔は、 聖書だけが人びとにとってのエンターテインメントだったから、それをもとにクレイジーなことをするやつがいた。クレイジーなヴィジョンを持って、それをやる必要があると思って実行するやつがいた。いまの時代には、クレイジーなことをするためのインスピレイション源が聖書以外にもたくさんある。ポップ・カルチャーやニュース、そういうものが人びとのエンターテインメントになった。クレイジーな人たちはそういうものにインスピレイションを受けてクレイジーな行動に出ている。

アルバム・タイトルの『Wallop』には、そういう暗い状況を打ちのめしたい、という想いが込められているのでしょうか?

NC:もちろんだよ。タイトルにはいろいろな意味があるんだけど、「Wallop」という言葉を調べたときに、まずはその言葉じたいに惹かれた。「なんておもしろい言葉だろう!」と思った。少し古臭い言葉で、最近はあまり使われない。でも使うときは、独特な意味を持って使う。「Wallop」という特有の打たれ方として使う。調べたら、「簡潔明瞭で、相手を驚かせる打ち方」とあった。このアルバムも簡潔明瞭に響くものにしたかった。そして驚かせるようなパンチのあるものにもしたかった。前回の大統領選挙では、共和党からびっくりするようなパンチをくらった気がした。俺たちはみんな驚いたよ。このアルバムは俺たちの反撃を意味している。俺たちもやつらにたいして「Wallop」をお見舞いしたいと思ったんだ。

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ジェントリフィケイションは悪で、俺たちはそれを嫌っているけど、同時にジェントリフィケイションによって治安は良くなるし、街もきれいになる。だからどういう意見を持つべきなのか、よくわからなくなる。

いまオカシオ=コルテスの名が日本でも広まってきていますが、やはりすでに合衆国では多くの支持を集めているのでしょうか? まわりのアーティストたちの反応はどうですか?

NC:彼女はアイコン的人物になりつつあるよ。いままで民主党があまり上手にはやってこなかったことを彼女はやれていると思う。トランプがヒラリーに勝利したのは、トランプのほうが芸能人として上だったからだと俺は思っている。トランプのほうが、人びとの想像力を掻き立てるのがうまかったんだ。トランプの方がヒラリーより興味深い人物だとみんなは思ったんだろう。民主党は、人びとが共感できないような人ばかりを候補者に立てている。だが、人びとはオカシオ=コルテスのことを英雄のように見ている。彼女にたいしては、多くの人が強い共感を持てて、インスピレイションを感じることができる。それはエキサイティングなことだ。彼女は過激なヴィジョンを持っていて、俺は個人的にそこが好きで魅力を感じる。でも彼女が人気である理由は、彼女の気の強い性格と、早い対応や、いまの時代に合っているというところだと思う。

10曲目の“Domino”は今回のアルバムのなかでもとくに異色です。IDMっぽくもありますし、昔の電子音楽のようでもあり、どこか子ども向けの音楽のような雰囲気もあります。なぜこのような曲を入れようと思ったのでしょうか?

NC:俺たちはつねにちがうスタイルの音楽をつくってみたいと思うし、いろんなものからインスピレイションを得ている。この曲は、さまざまなパーツが徐々に集まっていってできあがった。ラファエルはキーボードでフルートの音を出して実験していて、「このフルートの音でどうやって曲を作るんだろう?」って言って、あのメロディの部分を俺に送ってくれた。それを聴いて、ビートなどを加えたりしていじっていたら、そこに遊び心を感じた。それがドミノみたいだと思った。そこから「ドミノ・シュガー」という砂糖会社の工場を連想して、ここ15年間、その工場がブルックリンで物議を醸していることを思い出した。そこには嬉しさと悲しさが同時に感じられた。そして遊び心も。まるであの砂糖のパッケージを見たときに感じるように。ドミノ・シュガーの、黄色い紙パック。それはセンティメンタルな気持ちと悲劇の両方を感じさせる。ドミノ・シュガーの象徴だった工場、そしてブルックリンの象徴だった工場が消えてしまったんだ。

歌詞にある「1917年の工場」というのがそれですか?

NC:(笑)。俺たちは、じっさいの曲に入りきらないくらいの歌詞を書いていたんだ。言いたいことがたくさんあったからね。リリック・シートを提出するときに、思いついた歌詞のすべてを気に入っていたから、ぜんぶ提出した。「1917年の工場」の部分は、曲では歌われていない部分なんだけど、気に入っているから残した。当時の事件をウィキペディアで調べたんだけど、あの歌詞の部分は、ほぼウィキペディアからの受け売りだよ。でもあの文章は、ブルックリンで物事が変化していく様子を、うまく捉えていると思ったから引用した。1917年に工場で火災が発生したとき、5万人が、工場が燃え尽きるのを見物していたという。それがすごく魅惑的なイメージだと思った。その瞬間のエンターテインメントはそれだったんだよ。テレビより前の時代、映画が生まれて間もないころ、人びとはストリートに出て、出来事を見物していた。ニューヨーカーたちが巨大な火災を見物して、砂糖工場が崩壊するのを見ている、というシーンを想像するのが楽しかった。とてもパワフルなイメージだったから、歌詞として残したいと思った。俺たちが現在見ている景色を象徴していると思ったから。

その出来事がドミノのように、現在まで繋がっていると。

NC:もちろんあるよ。物事が倒れて、変化していくという意味だから。それは、原因と結果という自然なことなのかもしれないし、自然現象なのかもしれない。ただ遊び心があるだけなのかもしれない。

いま東京はオリンピックのせいで再開発が尋常ではないペースで進み、数週間単位で道が変わったりしているところもあるのですが、この曲はジェントリフィケイションの問題とも関係しているのでしょうか?

NC:そうだね。でもこの曲では、ジェントリフィケイションにたいして批判しているわけではないんだ。ただ、そういう変化に混乱している、と歌っている。工場は資本主義を意味する。資本主義の象徴だったものが、「公園」という人びとの象徴になるというのは、フェアじゃないかもしれない。クソみたいな工場だったから、閉鎖されて当たり前だったかもしれない。このような土地開発が意味することはすべてを理解できない、という意味合いの内容なんだ。ジェントリフィケイションは悪で、俺たちはそれを嫌っているけど、同時にジェントリフィケイションによって治安は良くなるし、街もきれいになる。だからどういう意見を持つべきなのか、よくわからなくなる。

人びとが集まり、考えを共有する。孤立していた人たち同士が、互いを見つける。ダンス・ミュージックには今後もそうであってほしい。

今回のアルバムを作るうえで、とくに意識したり参照したりしたアーティストや作品はありますか?

NC:今回のアルバムのインスピレイションとなった音楽のプレイリストを今度出す予定だけど、俺たちは聴くものすべてにいつも影響されているし、新しい音楽をつねに聴いている。じっさいに新しい音楽と、俺たちにとって新しい音楽という意味でね。でも今回のアルバムはほか作品と比べると、さまざまな機材に影響を受け、その機材を使っているうちに発見したことなんかがインスピレイションのもとになっている。

今年は〈Warp〉の30周年です。あなたたちが契約してからおよそ15年が経ちますけれど、あなたから見てレーベルの変わったところと、逆に変わっていないところを教えてください。

NC:変わっていないのは、エキサイティングで新しいと感じる作品をリリースし続けている点だと思う。俺たちが〈Warp〉と契約したとき、〈Warp〉はIDMから離れはじめていて、それは俺も変だなと思ったけれど、IDMは当時、勢いがなくなってきていて、あまりおもしろいものではなくなっていた。俺たちのほうが、よりおもしろいグループだった。〈Warp〉は、古いIDMのような音楽ばかりを出しているレーベルではなく、おもしろくて、新しいグループと契約するレーベルなところが良い。 だってIDMは、同じことを繰り返しやっていたら、インテリジェントじゃないだろ? 〈Warp〉は新しい音楽に傾倒しているからそれはエキサイティングだと思う。

では変わったところは?

NC:レコード業界全体が変わったから、その影響で変わった点はある。アルバムをリリースするたびに、レコード業界は変わっていく。今回リリースするアルバムのためには何をしないといけないんだろう、と考える。マイスペースでこれをやって……とか、そういうトゥールが毎回ちがったりする。だから、〈Warp〉の何が具体的に変わったかというのを答えるのは難しいけれど、レコード業界が変わったからその変化が〈Warp〉にも反映されたとは思う。〈Warp〉の反映のさせ方は間違っていなかったと思うよ。俺たちが初期に関わっていたレーベルの多くはもう店じまいしてしまったからね。その一方で〈Warp〉は、いまでも時代を先どりして新しい音楽をリリースし続けているしね。

〈Warp〉のタイトルでベストだと思う作品を3つ挙げるなら?

NC:おもしろいことに、俺たちにもっとも影響を与えたのは、〈Warp〉が10周年を記念してリリースした『Warp 10: Influences, Classics, Remixes』だった。俺たちは当時、ダフト・パンクや初期のシカゴ・ハウスなんかを知ったばかりで、それまではエレクトロニックな音楽やハウス・ミュージックをいっさい知らなかった。だから、あのアルバムが出たときはいつもそれを聴いていたよ。あのアルバムがハウス・ミュージックを知るきっかけになった。
 それから、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの『R Plus Seven』。あのアルバムは大好きだね。俺がよく聴くアルバムだ。彼はとてもユニークなことをあの作品でやったと思うし、アルバムを聴いて、その世界に迷い込むことができる。すごく気に入っているアルバムだよ。
 あとは、オウテカの「Peel Session」。俺たちがまだサクラメントに住んでいた初期に、俺たちが所有している数少ないエレクトロニック・ミュージックのレコードだった。すごく大好きで何回も聴いていたね。

NTS で放送された〈Warp〉30周年の番組で、チック・チック・チックは「Why Can't All DJs be as Exc!!!ting as Nic & Mario?」というミックスを提供していましたよね。とにかくずっとダンサブルな曲が続くミックスでしたが、最近もっとも打ちのめされた曲を教えてください。

NC:最近は、スワンズをたくさん聴いているね。最近もっとも打ちのめされた曲の名前は“In My Garden”だよ(註:1987年のアルバム『Children Of God』に収録)。

あなたたちの音楽はとにかくダンスを忘れません。それは2000年のファースト・アルバムのころからそうですし、ヴァラエティに富んだ今回のアルバムでもそうです。なぜ私たちにはダンスというものが必要なのでしょう? それは人間にとってどのような意味を持つのでしょうか?

NC:ヴィヴィアン・ウェストウッドのインタヴューを読んでいたとき、彼女はパンクについて文句を言っていて、こんなことを言っていた。「パンクは、ただみんなが集まって走り回るための口実だった」と。それは馬鹿げた見方だなと思ったよ。だって、それこそが、すべての芸術運動のエキサイティングなところだと思うから。人びとが集まり、考えを共有する。いままでは孤立していたかもしれない人たちが、似たような考えの人たちと集まる。ダンス・ミュージックには、そのようなアンダーグランドとの繋がりがつねにあったと思う。孤立していた人たち同士が、互いを見つける。ダンス・ミュージックには今後もそうであってほしい。人びとが集まる方法のひとつとしてね。

あなたにとって史上最高のダンス・レコードを教えてください。

NC:ザップの「More Bounce To The Ounce」だね。


!!! - WALLOP JAPAN TOUR -

東京公演:2019年11月1日(金) O-EAST
OPEN 18:00 / START 19:00
前売¥6,500 (税込/別途1ドリンク代/スタンディング) ※未就学児童入場不可
主催:SHIBUYA TELEVISION
INFO:BEATINK 03-5768-1277 / www.beatink.com

京都公演:2019年10月30日(水) METRO
OPEN 19:00 / START 20:00
前売¥6,500 (税込/別途1ドリンク代/スタンディング) ※未就学児童入場不可
INFO:METRO 075-752-2787 / info@metro.ne.jp / www.metro.ne.jp

大阪公演:2019年10月31日(木) LIVE HOUSE ANIMA
OPEN 18:00 / START 19:00
前売¥6,500 (税込/別途1ドリンク代/スタンディング) ※未就学児童入場不可
INFO:SMASH WEST 06-6535-5569 / smash-jpn.com

[チケット詳細]
一般発売:7月13日(土)~

!!! (Chk Chk Chk) - ele-king

 たとえば『ミス・テイクス』(2007)やEPの「テイク・エクスタシー・ウィズ・ミー」(2005年)のジャケットを思い出してほしい。ニューヨークの地下から頭角を現し始めたころの !!! は、得体のしれない猥雑さ、不気味さ、ダーティさが何よりの魅力だった。それは音もそうだ。『ミス・テイクス』などはいま聴くと、ごった煮のジャム・セッションの跡がかなりの部分で残っており、ぐちゃぐちゃと言えばぐちゃぐちゃなのだけど、世界にはまだいろいろなところにワイルドな連中がいるのだと感じさせてくれた。何かと知性派揃いの〈Warp〉のイメージのなか、より現場感を持っていたのが彼らだった。
 その後もバンドはパーティを続けたわけだが、そのなかで、より音の洗練を目指していったというのが基本的な方向性だろう。いかに「ダンス」への忠誠を保ちつつ、また反骨精神を失わないまま、サウンドを整えていくか。モダンな感覚を持ったプロデューサーを迎えたり(『スリラー』)、妙に爽やかなギター・ポップを取り入れたり(『アズ・イフ』)して、変革は続けられた。そのどこかで、初期のいかがわしさが失われた部分はある。が、音をよりポップに開かれたものにしつつ、どちらかと言うとメッセージで自分たちのアウトサイダー性を誇示してきたと言える。

 トランプ・ショックに対するかなり直接的なリアクションだった『シェイク・ザ・シャダー』を経て――ダンスをすることで飼いならされることに抵抗する――、8作めとなる『ワロップ』は !!! 史上もっとも音のヴァラエティに富んだアルバムとなった。元アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティのコール・M・グライフ・ニール、ホーリー・ファックのグラハム・ウォルシュ、そしてこれまでもともに作業してきたパトリック・フォードといった複数のプロデューサーを迎えていることもあるだろう。インダストリアル的な高圧的なビートを持つ“Let It Change U”から始まり、カッティング・ギターとシンセ・リフのコンビネーションで聴かせるファンク・チューン“Couldn't Have Known”、ノイジーなテクノ・トラックでダークなトーンとなる“Off The Grid”と、!!! らしさを覗かせながらも序盤から様々な展開を見せる。プロダクションはやはり整っている。
 だが、とりわけ驚くのは5曲め“Serbia Drums”以降の流れだ。キラキラしたシンセ・フレーズと切ないメロディのギター・ポップが合体したこの曲では、独特のワイルドなドラムとチャーミングなパーカッションが聴けるし、どこかR&B的なグルーヴを感じさせる“My Fault”を過ぎて、音数を絞った“Slow Motion”はぐっとアダルトなムードのミドルテンポだ。!!! がこれほど大人びた横顔を見せたことはかつてなかった。ずっと踊り続けながら、そしてひとは年を取っていくのだ。
 洗練と成熟はある。しかしそのなかで耳を引くのが、初期のテクノやハウス、初期エレクトロやオールドスクール・ヒップホップといったそのジャンルの生まれたときの原初的な感触だ。アルバム中もっとも抽象的なトラックとなっている“Domino”のシンセやサンプリングのフレーズにしてもそうだし、“Rhythm Of The Gravity”の声ネタなどもそうだろう。ストリートで新しいダンス・ミュージックが誕生するときの高揚、その猥雑なムードを彼らはいま、思い出しているのではないだろうか。結局、何度でもそこからやり直すしかないのだと。軽やかなハウス・トラック“This Is The Door”からダブ・ハウスへとそのまま突入する“This Is The Dub”で迎えるエンディングも洒落ている。アレンジを変えながら進化してきたダンス・ミュージックの歴史を愛でるようだ。

もしも余裕があるのなら
このリズムで自分を変えてみないか
アレンジし直すんだ
一つ、二つ、三つ、四つ、もっといっぱい
(“Let It Change U”)

 個人的なことを書くと、ディスコ・パンクは高校とか大学のときによく聴いていた音楽で、なかでも !!! は、何ともいえず不潔な佇まいが感じられて好きだった。いまや !!! は音のほうでは不潔とは言えないけれど、姿を変えながらも地下の空気を忘れていないことに僕はいまでも勇気づけられる。アレンジを変化させ続け何度でも生まれ変わり、ときどき自分がどこから来たかを思い出して、そして、死ぬまで踊り続ける。

Shapednoise - ele-king

 イタリア出身で現在はベルリンを拠点に活動しているシェイプドノイズことニーノ・ペドーネが、2015年以来となるフルレングス『Aesthesisis』をリリースする。レーベルはラスティソフィーなどの作品で知られるグラスゴーの〈Numbers〉で、マーク・フィッシャーの言う「ハードコア連続体」を意識した作品になっているようだ。〈NON〉のマイシャや、ここ数週間しょっちゅう名前を見かけるジャスティン・ブロードリック、ラビットや元コイルのドリュー・マクドウォールも参加している。
 なお、シェイプドノイズはこれまで〈Opal Tapes〉や〈Type〉といったレーベルから作品を発表してきており、マムダンスロゴス(彼も今年『TMT』のインタヴューで「ハードコア連続体」について語っている)、マイルズ・ウィテカーとのコラボ経験もある。他方で彼はエイフェックス・ツインのお気に入りアーティストでもあり、リチャードは最近の《Field Day Festival》などのフェスで彼の曲をかけている。さらに付け加えるなら、ニーノは〈Repitch〉というレーベルの運営にも関わっており、スリープアーカイヴやソートなどの12インチを送り出してもいる(そのサブレーベルの〈Cosmo Rhythmatic〉からは今度、シャックルトンの新プロジェクトがリリース)。
 とまあこのように、アンダーグラウンドで陰日向なく重要な活動を続けている彼だけに、今回の新作も要注目です。

artist: SHAPEDNOISE
title: AESTHESIS
label: Numbers
catalog #: NMBRS62
release date: 8 October 2019

Tracklist:
01. Intriguing In The End feat. Mhysa
02. Blaze feat. Justin K Broadrick
03. Elevation
04. Rayleigh Scattering
05. The Foolishness Of Human Endeavour
06. CRx Aureal
07. Blasting Super Melt
08. Unflinching
09. Moby Dick feat. Drew McDowall & Rabit

https://nmbrs.net/releases/shapednoise-aesthesis/

Boomkat / Bandcamp

Sote - ele-king

 音楽はプレイリストで聴く時代──そう主張されるようになってからしばらく経つけれど、でもじっさいは Spotify や Apple Music に加入していればぜんぜん良いほうで、そもそもストリーミング・サーヴィスにお金を払う気などない人たちのほうが圧倒的に多いのではないだろうか。だって、ちょいちょいっと YouTube を漁るだけで滝のように音楽が流れてくるんだから。ふと思いついた単語を検索窓にぶち込んだり、アルゴリズムによってはじき出された「次の動画」を延々と辿っていったり……。おそらくそれこそが今日、もっとも支持されている音楽の聴き方だろう。それが良いことなのか悪いことなのか、現時点ではよくわからない。体系的な聴取が廃れることによって、新たに革命的な何かが生まれてくる可能性だってある……にはある、のだけれど、基本的にはただ文脈や歴史が消失していくだけ、のような気もする。わからない。

 そんな時代にレーベルというものを意識して聴いているリスナーがどれほどいるのか不安だけれど、たとえば〈PAN〉や〈Planet Mu〉や〈RVNG〉や〈Hyperdub〉といった以前から名のあるレーベルは、しっかりと自分たちのカラーを維持しつつ新しい動きにも対応し、「なるほど」と唸らされるようなディレクションをねばり強く続けている。もう少し最近だと、〈Arcola〉や〈Whities〉あたりが芯のある展開を見せている好例と言えよう。パウウェルとジェイミー・ウィリアムズによって設立された〈Diagonal〉も、そうした健闘を続けているレーベルのひとつだ。彼らが今年リリースした作品がどれも良かったので、まとめて紹介しておきたい。

 まずはテヘランのアタ・エブテカールによるソート名義の新作を。いや、これがほんとうに素晴らしい内容で、個人的には今年のベスト3に入るアルバムだ。丁寧に爪弾かれる弦楽器を前面に押し出しつつ、その背後でうっすらとシンセ・ドローンが自己主張する“Modality Transporter”や、細やかなノイズが徐々に絡み合っていく“Brass Tacks”も惹き込まれるが、圧巻なのは“Atomic Hypocrisy”だろう。種々の電子音とイランの民族楽器がこれでもかというくらい暴れまわる様はまさに狂宴といったあんばいで、何度聴いても飽きが来ない。エスニックな音階と加工された音声、呪文のような言葉の反復がトランス状態を生み出す“Pipe Dreams”や、トラディショナルとインダストリアルを両立させてしまう“Pseudo Scholastic”もおもしろい。
 生楽器とエレクトロニクスの融合だとか、西洋とオリエントの出会いだとか、そういった皮相なレヴェルをはるかに超えたところで生み出されるこの複雑さと混沌は、それこそ幼いころに初めて音楽と出会ったときのような、音同士の戯れそれじたいを聴くことの歓びを、ありありと思い出させてくれる。イランでは音楽が統制下に置かれていることを考えると、このあまりに冒険的で特異な試みは、表現規制にたいするエブテカールの、全身全霊の抵抗なのかもしれない。

 もう1枚は、かつて〈Kompakt〉からリリースしていたウォールズの片割れであり、ノット・ウェイヴィング名義で多くの作品を発表している、イタリアはヴァスト出身のアレッシオ・ナタリーツィアと、ご存じジム・オルークによるコラボレイション。アレッシオが用意した素材をジムがいじるかたちで制作されたらしい。軸となる高音ドローンにさまざまな電子ノイズが絡み合い、次第にきらびやかさを帯びていく“Side A”は、00年代後半から10年代にかけて勃興した寂寥的ノイズ・ドローンの文脈に乗っかりつつも、感傷には寄りすぎない絶妙なバランスで実験を展開していく。よりアグレッシヴな“Side B”も秀逸で、ラフなビートとノイズが戯れ合う序盤、種々の電子音の乱舞をとおしてかろうじてメロディらしきものが形成される後半、いずれもなかなかに聴き応えがある。

 そして最後は、これまでプロスティテューツ(売春婦)名義で〈Diagonal〉や〈Spectrum Spools〉からコンスタントに良質なテクノを送り出してきたクリーヴランドのヴェテラン、ジェイムス・ドナディオによるスタブユーダウン名義のアルバム。“Wizard Upholstery”や“Neu Ogre”のウェイトレスなシンセによくあらわれているように、大枠としては90年代、カール・クレイグ以降のデトロイトやUKのテクノがベースになっているのだけれど、良い意味でどこか嘘っぽいというか、トムジェリないしバッグス・バニーのごとき動物のキャラ(ウサギ?)がばらばらに解体されて再配置されたアートワーク同様、サウンドのほうもコラージュ感が漂っていて、ストレートにリヴァイヴァルとして消費するのをためらわせるところがある。音同士の間隙やドラムの微妙な遠さなんかはむしろ、それこそパウウェルのポストパンクに近いかも。

 以上3枚、それぞれ方向性は異なれど、〈Diagonal〉というレーベルの底力を教えてくれる、優れた作品たちである。

Floating Points - ele-king

 これまた2019年の重要作となりそうなタイトルの登場だ。フローティング・ポインツが待望のニュー・アルバム『Crush』を10月18日にリリースする。4年前のファースト・アルバム『Elaenia』以降、「Kuiper」や『Reflections』ではバンドを結成し、ロック的なアプローチに取り組んできたフローティング・ポインツだけれど、この7月にリリースされたシングル「LesAlpx / Coorabell」で彼は一気にダンスへと回帰している。今回公開された新曲“Last Bloom”もエレクトロのビートが効いている。ベリアルやテンダーロニアスがそうであったように、UKのアンダーグラウンドはいまテクノへの傾斜を強めている感があるが、フローティング・ポインツのこの新作はその流れを決定づけるものになりそうだ。それに、トラックリストを眺めていると、何やら意味深な言葉が並んでいる。タイトルも「粉砕」だし、テーマも深く練られているにちがいない。この秋最大の注目作である。

Shuta Hasunuma & U-zhaan × ZOMBIE-CHANG - ele-king

 さまざまな分野で活躍する音楽家の蓮沼執太と、タブラ奏者のユザーンによるユニット、蓮沼執太 & ユザーンが、シンガーソングライターのメイリンによるプロジェクト、ZOMBIE-CHANG と対バン・イヴェントをおこなう。この共演は、2016年に催された蓮沼執太の音楽活動10周年記念ライヴ《蓮沼 X 執太》以来、3年ぶりだという。ZOMBIE-CHANG のほうはエレクトロのセットだそうで、いったいどんな内容になるのか楽しみだ。11月17日は WALL&WALL へゴー。

11月17日(日)に蓮沼執太 & ユザーンと、ZOMBIE-CHANG -Electro Set- の対バンイベントが開催決定!

音楽シーンだけでなく、映画や広告でも目覚ましい活躍を見せる音楽家、蓮沼執太とタブラ奏者として日本の第一人者的存在である U-zhaan という異なる領域のスペシャリストがタッグを組んだ不定形ユニット“蓮沼執太 & ユザーン”。
ジャンルに捉われないオリジナルティ溢れる音楽性と、独自の世界観を放つライブ・パフォーマンスは中毒性が高く、今最も注目される女性アーティストのひとりシンガーソングライターであるメイリンのソロプロジェクト“ZOMBIE-CHANG”(ゾンビーチャング)は Electro Set で出演。
蓮沼執太 & ユザーンと ZOMBIE-CHANG は、2016年に開催された蓮沼執太の音楽活動10周年を記念して行われたワンマンライブ「蓮沼 X 執太」以来、約3年ぶりの競演となる。

ジャンルに捉われない/括り切れない2組のLIVEをお見逃しなく!

【公演情報】

- 蓮沼執太 & ユザーン × ZOMBIE-CHANG -
開催日:11月17日(日)
開場/開演 17:00

出演者:
蓮沼執太 & ユザーン
ZOMBIE-CHANG -Electro Set-
...and more!

Ticket:
前売り ¥2,500 + 1Drink ¥600
https://t.livepocket.jp/e/1117_wallandwall (8月28日正午より販売開始)

会場:WALL&WALL (https://wallwall.tokyo/
東京都港区南青山3-18-19 フェスタ表参道ビルB1F(表参道交差点)

INFO
WALL&WALL PRESS
〒107-0062 東京都港区南青山3-18-19 フェスタ表参道ビルB1F
TEL 03-6438-9240
Mail press@wallwall.tokyo
Web Site: https://wallwall.tokyo/
Facebook: https://www.facebook.com/wallandwalltokyo/
Twiter: https://twitter.com/WALLWALLTOKYO
Instagram: https://www.instagram.com/wallandwalltokyo/

■ 蓮沼執太 & ユザーン

蓮沼執太と U-zhaan による不定形ユニット。2015年5月に U-zhaan がナビゲーターを務めた J-WAVE「RADIO SAKAMOTO」へ蓮沼がゲスト出演した際のスタジオセッションを耳にした坂本龍一氏から「あれ、もったいないから続けたほうがいいよ」と言われたことにより調子に乗って始動し、様々な形で共演や共作を続ける。2016年公開の映画『マンガをはみ出した男~赤塚不二夫』では音楽を手がけ、同作のサントラ盤『マンガをはみ出した男~赤塚不二夫オリジナル・サウンドトラック/U-zhaan + Shuta Hasunuma』もリリースした。2017年にはゲストにアート・リンゼイ、デヴェンドラ・バンハート、坂本龍一を迎えたアルバム『2 Tone』を発表。翌2018年に同アルバムのアナログ盤が世界発売され、ニューヨークでリリースライブを行った。

https://www.shutahasunuma.com
https://u-zhaan.com

■ ZOMBIE-CHANG

メイリンのソロプロジェクト、ZOMBIE-CHANG(ゾンビーチャング)
作詞作曲、トラック、リリック全てを彼女が手掛け、2016年に配信「恋のバカンス E.P.」でデビュー。その後、1stアルバム『ZOMBIE-CHANGE』をリリース。2017年3月には2ndアルバム『GANG!』をリリースし、リリースパーティーを青山の PIZZA SLICE で開催。また、SUMMER SONIC 2017、WORLD HAPPINESS、コヤブソニックなどのフェス出演や、TAICOCLUB 主催のサンリオ43周年パーティー、sacai と UNDERCOVER による Party へのライブ出演など、活動範囲は多岐に渡る。2018年からは3ピースバンド体制で始動。3rdアルバム『PETIT PETIT PETIT』をリリースし、フジロックへの出演、初のツアーを国内3都市と、中国、台北、香港のアジアツアーも決行し盛況に終える。今年、同アルバムをUKのレーベルから Vinyl でリリース予定。昨年、カナダのR&Bシンガー The Weeknd が、自身で選曲した Apple music の Radio Program "beats1" に「イジワルばかりしないで」を選曲、またインスタグラムの告知ティザーのBGMでも使用され大きな話題に。音楽プロジェクト以外にも、モデル、執筆業などでも活動。ジャンルに捉われないオリジナルティ溢れる音楽性と、 独自の世界観を放つライブ・パフォーマンスは中毒性が高く、今最も注目される女性アーティストのひとり。

Carl Gari & Abdullah Miniawy - ele-king

 ようやく涼しくなったと思ったら九州で災害、そしてまた猛暑……気が滅入るね。なんにもやる気が出ない。ただぼーっとしていたい。そんなときのための最高の桃源郷音楽が〈Whities〉からリリースされる。ドイツ人のCarl Gari(ミュンヘン)とエジプト人のAbdullah Miniawy(カイロ)とのプロジェクトは、2016年に〈The Trilogy Tapes〉にて初登場しているが、ドローン・テクノなどと形容された衝撃作だった。乾いた熱風は、まるでJGバラードの世界のように幻覚を与えている。その新たなる調べが〈Whities〉からお目見えというわけだ。
 日本にも9月上旬には入るのかな。Lanark ArtefaxやRupert Clervaux、Avalon Emersonなどといったひとたちに続く注目のリリースです。

interview with The Comet Is Coming - ele-king

ものをつくるプロセスって、宇宙ができあがったそもそもの経緯なんじゃないかなと思う。だから音楽をつくるということは、この宇宙という神聖なものにどこかつうじるところがある。 (マックス)

 今年もそろそろ、年間ベスト入り確実となるだろう候補作が出揃いはじめている。ザ・コメット・イズ・カミングの『Trust In The Lifeforce Of The Deep Mystery』もその最右翼の1枚だ。むべなるかな、フジでのパフォーマンスも圧巻だったそうだけれど、細やかなエレクトロニクスと重厚な低音とセクシーなシャバカの管が鮮やかなコントラストを織り成す“Birth Of Creation”や“Blood Of The Past”、ロックの躍動を最大限に活用した超絶クールな“Summon The Fire”に“Super Zodiac”、あるいは“Timewave Zero”のブロークンビーツや“Unity”のアフロ・パーカッションなど、縦横無尽にさまざまな音楽を食い散らかし、もはやジャズという言葉を用いるのもためらわれるほど独自の試行錯誤が繰り広げられる同作は、その宇宙的なモティーフによって不思議な統一感を与えられてもいる。
 興味深いことに彼らは、音にたいする想像と他人にたいする想像とをおなじ地平で捉えている。まさにそのような想像こそ政治に欠落しているものなわけで、楽曲制作のプロセスをそのまま世界情勢と重ねて考える彼らのあり方は、何もかもが悪化の一途をたどっているこの悲惨な惑星において、文字どおり希望と呼ぶべきものだろう。彼らの宇宙とは、実践なのである──とまあそのように、最上の実験と、最上の雑食と、最上のスピリチュアリティを同時に響かせるザ・コメット・イズ・カミング、苗場へと発つ直前の3人に話をうかがった。


言おうかなと思ったんだけど、(ボリス・ジョンソンの名を)口にするだけでも口が汚れると思ったから、言いたくなかったんだ。 (ダン)

私たちは1年前に、UKジャズの特集号を出したんですよ(『別冊ele-king』を差し出す)。

シャバカ・ハッチングス(Shabaka Hutchings、以下SH):(ぱらぱらめくりながら)ヘンリー(・ウー)とは友だちなんだ。あいつ、いつも写真が変なんだよ(笑)。

(笑)。まず、ザ・コメット・イズ・カミングというプロジェクトの成り立ちですが、ダン・リーヴァーズさんとマックスウェル・ホウレットさんのふたりがサッカー96をやっていて、そこにシャバカ・ハッチングスさんが加わるかたちではじまった、という認識でいいでしょうか?

マックスウェル・ホウレット(Max Hallett、以下MH):ダンと僕は16年くらい一緒にやっているんだけど、サッカー96は10年前からふたりでやっているね。そういう意味ではチームとして深い関係があるんだ。僕たちは基本的にベッドルームで、生楽器を使って、テープマシーンを使って、マイクも自分たちで置いて、すべてのレコーディング・プロセスを自分たちの手でやる、というのがはじまりだった。だから長い年月を重ねてやっていくことでプロセスじたいもできあがっていったんだ。だからシャバカが入ったときは、そのプロセスの上に、その瞬間瞬間に、いかにインプロヴィゼイションとかジャムとかを乗っけていくかという感じだった。もともとそれが好きだったしね。ものをつくるプロセスって、けっきょく、宇宙ができあがったそもそもの経緯なんじゃないかなと思う。だから音楽をつくるということは、広い意味で、この宇宙という神聖なものにどこかつうじるところがあると思うんだ。そういう、自分たちにとってのプロセスがあるんだよ。

曲づくりの際に、誰かが主導権のようなものを握ることはあるのですか?

ダン・リーヴァーズ(Dan Leavers、以下DL):このバンドかんしていえば、リーダーはいないね。スタジオで直感で生まれるものを実践しているからね。けっきょく、人間がいかに互いに協力しあって何かを想像していけるか、っていうのが大事だから、スタジオのなかではあえて会話もあまり交わさない。「レス・トーク、モア・リッスン」というか、聴きあうという感じだね。プレイヤー3人それぞれが演奏するときも、カオスになるようなことはしない。混沌と統制みたいなもののバランスを考えてる。それぞれがマックスの演奏をしつつ、互いを聴きあう。それを同時に実行しあってやっているんだ。いまそれが地球において人間にとっても必要なことじゃないかと思うよ。このままいくと、もしかしたら地球はなくなってしまうんじゃないかというくらい、いまは破壊的な状況にあると思う。そんな地球のなかでいま、男のリーダーたち、ブラジルの新しい大統領が熱帯雨林を切り刻んだり、トランプが人種差別的なことを言ったり。トップダウン式のリーダーがいることによって物事は崩壊していくから、みんながひとつになって何かを作るということのほうが、世界にとっても音楽にとっても良いと思うよ。

なるほど。

DL:でも、けっしてリーダーシップの資質を出してはいけないということではないよ。たとえばシャバカが「ここをこういうコードにしたらどうだろうか」とか、その瞬間においてリーダーシップを発揮することはあるし、マックスが「このビートはこうしたい」とかいうこともあるわけだから、その瞬間瞬間のそれぞれの意見をコレクティヴにしたのが僕たちなんだ。

ボルソナーロやトランプの話が出ましたけれど、まさにあなたたちの首相も……

DL:イグザクトリー。いま言おうかなと思ったんだけど、(ボリス・ジョンソンの名を)口にするだけでも口が汚れると思ったから、言いたくなかったんだ。

ははは。ブレグジットなど、いまのイギリスの状況についてはどうお考えですか?

MH:その話をしだすときりがなくなっちゃうから言わないけれども、いま物事をふたつにわけて、それぞれの宗派みたいなものがカルチャー的に互いを嫌いあっているような、そういう状況だと思う。アーティストとしての責任は、そこにひとつになる場を提供することじゃないかな。少なくとも自分たちの音楽はそういう音楽でありたい。互いを信じ、そこからユニティみたいなものをつくる。だから僕たちは、みんなのための音楽をつくっていると思っているよ。ボリス・ジョンソンさえ含めてね。分断のための音楽ではなく、みんなそれぞれ平等で、「他人だったらどう思うだろう?」と自分を他人の目に置き換えて考えるような想像力を使って、相手を理解しようとするような、そういう音楽をつくりたいと思っている。音楽を含めて、世界にたいしてそういうふうに感じているね。

ザ・コメット・イズ・カミングというグループ名は、BBCレディオフォニック・ワークショップの作品からとったそうですけれど、これにはどういう思いが込められているのでしょう?

DL:物事にはいろんな意味があるし、ザ・コメット・イズ・カミングにもいろんな意味があるんだけど、イメージとしては彗星(コメット)がやってくるということ。じっさいに彗星がやってくれば、地球は滅亡するわけだしね。彗星が来たからこそ恐竜たちは死に、マンモスは消え、いまこういう人類の時代になっているわけだよね。もしかしたら明日にも彗星が来るのかもしれないし、それはある意味毎日来ているのかもしれない。毎日、1日が終わるのは、彗星が来ているからかもしれない。人間が死んだらどうなるのかっていうのを考えるときに、地球が一度滅亡したらそこで人類すべてがなくなるわけだから、死ということにかんして人間は忘れてはいけないと思う。死を忘れないことによって、いま生きている人生の尊さ、いまというものの尊さがわかると思うんだ。ある意味警鐘を鳴らしているというか、彗星はやってきてしまうから、いまできることをやらないと、明日はもうないかもしれない。そういう意味も含めている。

グループ名もそうですし、前作にも今回の新作にも宇宙を想起させる曲名が多くあります。宇宙をモティーフにする理由は?

DL:(回答を促すようにシャバカを見る)。

MH:僕の父親が言っていたのは、コミュニケイトできるアーティストがいちばん素晴らしいアーティストだということ。たんに音だけではなくて、その音をどう自分たちが聴いてほしいように聴いてもらえるか、どうコミュニケイトできるかということで、それを考えたときに、宇宙は真っ白なキャンヴァスだと思うんだ。地球を離れた宇宙、いま自分が生きている社会や状況とはまったく異なるところに、一度でもいいから離れてみる。そこではいろんな想像力を発揮することができる。自分たちつくる側もそうだけど、聴く側もそれはおなじだと思う。そこにはいろんな色があり、いろんな新しいあり方があり、言葉がある。それぞれのイマジネイションを働かせて使うことができるし、そのなかにいることもできる。だから、音をただ聴かせるだけではなくて、そういったみんなの想像力が使える場を提供するということが、もっともコミュニケイトできる方法のひとつなんじゃないかなと思う。

DL:いまこの現代社会ではすごく個が尊ばれていて、その結果としてたとえば自殺する人の数がすごく増えたりしているよね。かつてはそこでキリスト教だったりほかの宗教だったり、いろんなものが人間たちをある種ひとつにまとめるコミュニティとして役立っていたわけだけど、いまのこの時代はそういうスピリチュアリティみたいなものがすごく欠落していて、どうしたらみんなひとつになれるかという、つながりがない。それは、そういう自殺の問題にも関連していると思うんだ。そんなときに宇宙という考え方は、僕たちの日常や自我をも超えたところで存在しているから、自分は宇宙のなかのたったいちパートにすぎないんだと思うことで、ヒーリング的な、心が癒されるような……自分を自分じゃないもの、宇宙のひとつと思えるんじゃないかな。

ザ・コメット・イズ・カミングの音楽にはテクノの要素もあり、デトロイトを思わせる瞬間もあるので、その影響もあって宇宙的なイメージをとりいれているのかなとも思ったのですが。

DL:(回答を促すようにシャバカを見る)。

MH:僕らはエレクトロニック・ミュージック全体からすごく影響を受けている。もちろん、テクニック的な部分でそれを使っているところもあるかもしれないけど、それ以上にエレクトロニック・ミュージックの何に自分たちが惹かれるのかといえば、意識のトランス的な状況に人をアクセスさせるところなんだ。そこに興味があるんだよ。

テクノロジーに恋をさせてしまえば、人間をコントロールすることができる。人間はすぐそういったものに中毒になって夢中になってしまうわけだから。 (マックス)

マックスさんとシャバカさんはほかのプロジェクト(サンズ・オブ・ケメット)でアフロフューチャリズムを扱っていますけれど、ザ・コメット・イズ・カミングにその要素はない?

SH:うーん。イエス・オア・ノーだね。アフロフューチャリズムの定義にもよると思う。アフリカを起源とする音楽をどのように人びとが見ているのか、それがどういうふうに定義されているかによるね。

たとえばサン・ラーやジョージ・クリントン、あるいはデトロイト・テクノの人たちはよく宇宙のイメージを用いますけど、そういうブラック・ミュージックにおけるSF的な想像力みたいなものが、ザ・コメット・イズ・カミングにも込められているのかなと。

SH:そういった意味でアフロフューチャリズムを定義しているのであれば、それはあると思うね。自分たちは互いのあり方、接し方において……さっきザ・コメット・イズ・カミングにはリーダーがいないという話が出たけれど、自分たちはグループとして、いかに互いのあり方をはかるかということにすごく想像力を使っている。そういう意味では、あるね。

ザ・コメット・イズ・カミングの音楽は、大枠としてはジャズに分類されることが多いと思いますが、とりわけ今回のアルバムはいわゆるふつうのジャズとはかけ離れていて、むしろパンクやテクノを思わせる瞬間も多いです。あなたたちにとってジャズとはなんでしょう?

DL:ジャンルって、レコード店で早く盤を見つけるためのグループ分けにすぎないと思う。そこに置いておけばいいという、ただそれだけのことで。だって、テリー・ライリーがミニマル・ミュージックだと言われたら、それだけじゃないって思うよね。そもそも音楽にはそういうジャンル分けみたいなものに抗うようなところがあるし、いまはさらに進んでいる世の中なんじゃないかな。いろんな音楽が……社会もそうだけど、ジェンダーにしろセクシュアリティにしろ、服だってすごく流動的だ。ひとつには決められない。人びとは日々学んでいるんだと思う。先入観をもつと、ちがいだけがあらわれるようになってしまう。他人と自分とのちがいだけが浮き彫りになる。でも、そういう目で見ないようにすれば、自分たちは一緒なんだということのほうが逆に見えてくると思う。だから、ブラックメタルとスカンディナヴィアの音楽がおなじなのかちがうのか、テクノとスピリチュアルがおなじなのかちがうのか、それは言葉の問題であって、ようはいかに自分たちのヴィジョンを音楽として表現したいかという欲求それだけじゃないかな。

テクノロジーについてはどう考えていますか? たとえば昨今はA.I.が話題ですけれど、そういうものは音楽にとってどういう意味をもつでしょう?

MH:テクノロジーはバイオロジーを超えたところにある自然だと思う。生物学を超えて生まれた木みたいなもの。僕は昔のほうがテクノロジーに適応できていたけど、もう年齢かな、テクノロジーは人間を操作しようとしている部分があると思うんだ。たとえばハンマーは有用な道具だけど、これも技術なわけだよね。このハンマーが中毒的に人間を支配していくようなものになってしまったら、それが怖い方向に使われていくわけで、どっちがどっちを使っているのかということをつねにチェックして、どちらがコントロール権をもっているのかということを自分自身で見直していく必要がある。ただ、テクノロジーがすごいのは、そうできないように、人間が100%テクノロジーに恋をするようにつくられているところだ。テクノロジーに恋をさせてしまえば、人間をコントロールすることができる。人間はすぐそういったものに中毒になって夢中になってしまうわけだから、テクノロジーの欲望の部分が増えてきて、それがとてもパワフルになっているような気がするよ。音楽面では、僕たちは音楽をつくるときコンピューターは基本的には使わないんだ。使わないというか、使い方をつねにリマインドしながら使っているね。

DL:コンピューターを使わないわけではなくて、最初はアナログテープでレコーディングするんだけど、最終的に現代のものであるコンピューターを使って、両方を合体させる。古代のテクノロジーであるアナログテープといまのテクノロジーの、両方を使っているんだ。古いものを捨てればいいというわけではないからね。捨てずに、新しいテクノロジーのなかで呼吸させればいいんだよ。呼吸って人間にとっての瞑想だから。古い時代、人間の先祖たちがマッシュルームを植えて、そこからある種の感覚を得ていたというようなことだね。そういう古いものから新しいものまで、その両方を持っているということが僕たちの音楽にかんしては正しいと思うんだ。

SH:テクノロジーはプリミティズムと相反するものだと考えがちだけれど、そうではない。ほんとうの意味でのテクノロジーは、すべての人間を反映させるものであって、滅亡させるものではあってはいけない。テクノロジーによってごく一部の人間だけが潤って、それ以外のものがなくなってしまうというのは正しくない。滅亡することなく、正しいかたちで人類が続いていくためには、プリミティズムを含んだうえでプログレッシヴなものでなければいけない。相反してはいけないんだ。


Ziúr - ele-king

 ベルリンを拠点に活動するプロデューサーの Ziúr (どう発音すればいいのかしら?)が、11月に新たなアルバムをリリースする。彼女は、2016年に発表した2枚のシングル「Deeform」と「Taiga」で注目を集め、翌年〈Planet Mu〉からアルバム『U Feel Anything?』を送り出しており(Aïsha Devi も参加)、今回の新作は同レーベルから2枚目のフルレングスとなる。本人の弁によれば「日々、自らの実存のために闘っている人びとのため」の作品だそうで、タイトルの『ATØ』は「世界征服同盟(THE ALLIANCE TO TAKE OVER THE WORLD)」を意味するらしい。フォーマットはLP、CD、ディジタルの3種類で、11月15日に発売。この暗く圧政的な時代に抗う力強い1作となっているようなので、しっかりチェックしておこう。

artist: Ziúr
title: ATØ
label: Planet Mu Records
catalog #: ZIQ415
release date: November 15th, 2019

Tracklist:
01. ATØ
02. It's Complicated
03. I Vanish
04. Fancy Handbag, Broken Zipper
05. F.O.E. (feat. Ash B)
06. Catch Me Never
07. Life Sick
08. All Lessons Unlearned (feat. Samantha Urbani)
09. Laniakea
10. Unclaim

https://planet.mu/releases/ato/

Boomkat / Bandcamp

Moor Mother - ele-king

 先日、JKフレッシュ&ザ・バグによる新プロジェクトへの参加がアナウンスされたばかりのムーア・マザーが、ついに自身のセカンド・アルバムをリリースする。アクティヴィストとしても活動している彼女らしく、やはりブラックや奴隷にまつわるあれこれがテーマになっているようで、バンドキャンプのタグには「アフロフューチャリズム」や「ブラック・アンビエント」といった語が並んでいる。ゲストとしてフィラデルフィアのラッパー、リーフ・ザ・ロスト・コーズや、ソウル・ウィリアムズ(!)が参加、プロダクションには件のジャスティン・ブロードリックやキング・ブリット(!)などが力添えしているとのこと。これは今年の最重要作になる予感がびんびんだわわ。発売日は11月8日。

artist: Moor Mother
title: Analog Fluids Of Sonic Black Holes
label: Don Giovanni Records
catalog #: DG-190
release date: November 8, 2019

Tracklist:
01. Repeater
02. Don't Die
03. After Images
04. Engineered Uncertainty
05. Master's Clock
06. Black Flight (feat. Saul Williams)
07. The Myth Hold Weight
08. Sonic Black Holes
09. LA92
10. Shadowgrams
11. Private Silence (feat. Reef The Lost Cauze)
12. Cold Case
13. Passing Of Time (feat. Jucara Marcal)

https://www.dongiovannirecords.com/products/649373-moor-mother-analog-fluids-of-sonic-black-holes

Rough Trade / Boomkat / Bandcamp

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